ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 書き溜めは無くなったけど新しく書けたので初投稿です。




セッションその15 いんたーみっしょん

 

 うわーまさかダブル吸血鬼ちゃんにはそんな秘密が隠されていただなんてー(棒)

 

 とまぁ白々しい前置きは兎も角、キャンペーン開始前から太陽神さんと万知神さん、そしてこの可愛い無貌の神(N子)さんが仕込んでおいた伏線に視聴神のみなさんもドン引き……もとい、言葉を失っているみたいですねぇ!

 

 あ、先程の真実につきましては次のセッションで明かされますので、ライブでご覧になってた視聴神さん方は本放送までネタバレ厳禁! ()()板やSNSなどへの投稿もダメですからね!!

 

 もし、この注意を受けて尚情報をリークしようとする(ひと)がいた場合……ほら、あそこにセッションに参加することを禁じられ、発言すらも許されずにただみんなが楽しそうに遊んでいるのを見ているだけの死灰神が見えますよね?

 

 

 アレがソイツの末路だ。

 

 


 

 

 後付け設定を伏線と言い張る実況プレイ、はーじまーるよー。

 

 前回はこれからというタイミングで映像が途切れてしまい申し訳ありませんでした。

 

 個室で行われていた話し合いについて≪真実≫さんと≪幻想≫さん、そしてGM神さんと協議を重ねた結果、今後のキャンペーン進行に大きな影響を与える内容であったため、ネタバレ防止措置を行わせていただくことになりました。

 

 現状では太陽神さんと万知神さんがダブル吸血鬼ちゃんに≪託宣(ハンドアウト)≫を送り、次のセッションで2人の口からみんなに説明が行われる予定となっておりますので、視聴神のみなさんには彼らと同じタイミングで驚きの真相を目撃していただければ幸いです。

 

 

「あ、起きてきたわね」

 

「おはよう。シルマリルは大丈夫そうだけど・・・・・・ヘルルインはダメみたいね」

 

「おあ~……」

 

 

 さて、5人の密談の翌日、お肌ツヤツヤな銀髪侍女さんにお米様抱っこされた状態で干乾びている吸血鬼侍ちゃんを見て、夜戦の結果を確認した一行。同じくツヤツヤな賢者ちゃんから吸血鬼侍ちゃんを連れて王都に戻ることを告げられました。

 

 

「至急陛下に報告すべき案件が発生したのです。()()が深く関わっているので、ちょっと借りていくのです」

 

「なるべく原型を留めた状態で返すよう心掛けるよ」

 

 

 うーん、最早荷物扱いですね吸血鬼侍ちゃん。原型すら残らない可能性とは一体……。

 

 

「ではこちらはお弁当としてお持ちくださいませ」

 

「ありがと~。いってきま~す……」

 

 

 若草知恵者ちゃんが急ぎ包んでくれた鶏腿肉の麺麭挟み(チキンサンド)を受け取り、力無くお礼を言う吸血鬼侍ちゃん。密談の後、限界ギリギリまで絞られちゃったみたいですね……。

 

 

「いってらっしゃ~い!」

 

「陛下への報告、どうぞよろしくお願い致します」

 

 

 その一方で精気溌剌なのは吸血鬼君主ちゃん、『あの頃』形態な剣の乙女ちゃんの腰を抱き寄せながら反対の手で元気に手を振っていますね。ぺこりと頭を下げる剣の乙女ちゃんの肌艶も絶好調、た~くさん『ちゅーちゅー』させてもらって、い~っぱい『お返し』したんだろうなぁ……。

 

 

「少々慌しい朝になってしまいましたが、本日は日常業務のみで特別な予定はありませんし、朝食を済ませてゆっくりと準備を……」

 

 

 ≪転移≫の鏡に2人と荷物が消えた後、ポンと手を叩いて明るい声を響かせる若草祖母さん。残念ながら平和な日常というものは滅多に訪れないからこそ誰もが求めるものなんですよねぇ。

 

 

「……何かが慌しく近付いて来るんだけど……四つ足?」

 

「「「こわい!」」」

 

「あうー……」

 

 

 やっぱり一番最初に気付くのは妖精弓手ちゃんですね。長耳をピクピク動かしてその正体を確認しようとしてますが、イマイチ判断が付かない様子。杭を連続で地面に打ち込むような音が近付くにつれ大きくなる震動、怖がった子どもたちがママたちにしがみついちゃってます。両手をバンザイしたへそ天姿勢で寝ていた白兎四女ちゃんも驚いてベビーベッドから起き上がり、隣にいた白兎猟兵ちゃんに抱き着いてますね。

 

 

「まったく、朝っぱらから一体ナニよ……」

 

 

 やれやれといった様子で窓に近付く女魔法使いちゃん。その手にしっかりと杭打ち機(パイルハンマー)が握られているのは『今週の暴れ○○』とか『話の途中だが○○だ!』を警戒してのことでしょうか。撃鉄を起こしながら窓越しに視線を向けた女魔法使いちゃんが見たものは……。

 

 

 

 

 

 

「ぬおおおおぉぉぉぉぉ!!」

 

 

 

 二足歩行であることを忘れたかのようにヨツンヴァインで全力疾走する鱗で覆われた巨躯。そのまま減速すること無く一党(パーティ)宅の玄関口をぶち破ってダイナミックエントリー! 暴走に気付いた女魔法使いちゃんが全員にドアから離れるよう叫び、血族(かぞく)の前に飛び出した吸血鬼君主ちゃんが翼を広げて盾にしなければ粉々に砕け散ったドアの破片が誰かに当たっていたかもしれません。

 

 秋風とともに姿を現した蜥蜴僧侶さん。牙の隙間からフシューっと白い息を吐き、荒く肩を上下させているところに吸血鬼君主ちゃんがとてとてと近付いて行きます。豪快なお邪魔しますに目を白黒させている子どもたちが見つめる中、ふわりと浮かび上がり鱗で硬い頬に自分のもちもちほっぺをスリスリ。やがて落ち着きを取り戻したのか、蜥蜴僧侶さんの瞳に理性が戻ってきました。

 

 

「――ムゥ、拙僧としたことが焦りのあまり我を忘れていたようで。面目次第も御座らぬ……」

 

「だいじょうぶ、おちついて。なにがあったの?」

 

 

 触れた肌を通じて伝わる太陽の温もり、その熱を以て蜥蜴僧侶さんに普段の冷静さを取り戻させることに成功したみたいですね。深呼吸を繰り返し心を落ち着かせた蜥蜴僧侶さん、深々と頭を下げながら口にしたのは……。

 

 

 

「先程妻が産気付きました。どうかお力添え頂きたく……!」

 

 


 

 

「あ、来た来た! 2階の一番奥の部屋だよ!!」

 

「わかった! ありがと~!!」

 

 

 再びヨツンヴァインで爆走する蜥蜴僧侶さんに先導され神官技能持ちが向かったのは療養所、入り口で待っていた新進農婦さんの声に従い女将軍さんが待つ個室へと一行が駆けて行きます。2階の廊下では同じく出産予定日が近い蜥蜴人の戦士さんと交易神の侍祭さんや元砂漠の冒険者と兎人(ササカ)の男の子ら異種族カップルが心配そうに奥の部屋のほうを見ていますね。部屋の中には荒く息を吐く女将軍さんと、その手を握る只人寮母さんの姿がありました!

 

 

「ハァ、ハァ……なんだお前たち、廊下は走るなと教わらなかったのか?」

 

「おそわったかもしれないけど、おぼえてないかな~。……ぐあいはどんなかんじ?」

 

「昨夜陣痛が始まって、さっき破水を確認した。陣痛の周期も短くなってきてるから、もう間もなくだと思う」

 

「――フム、だが万一ということも考えられる。念の為緊急帝王切開の準備はしておくぞ!」

 

 

 額に脂汗を浮かべながら軽口を叩く女将軍さん。只人寮母さんの言葉から察するに状況はそんなに悪くないみたいですね。……お、闇人女医さんの号令で動き出したみんなを確認した吸血鬼君主ちゃんが、落ち着かない様子で尻尾を振っている蜥蜴僧侶さんの手をとって奇跡を行使しました!

 

 

「≪たいようらいさん! ひかりあれ!≫……ん、これでキレイになった!」

 

 

 ≪浄化(ピュアリファイ)≫の奇跡で自分と蜥蜴僧侶さんの手を清め、ニッコリと笑う吸血鬼君主ちゃん。そのまま何倍も体格差のある彼を吸血鬼(ヴァンパイア)の膂力で引っ張り、そっと女将軍さんの手を握らせました。

 

 

「これからママになるひとにゆうきをあげるのが、パパになるひとのたいせつなやくめ!」

 

「……そうですな。拙僧としたことが、大切なことを失念していたようで」

 

 

 鋭い爪の生えた大きな手で鱗の無い手を優しく包み込み、寝台(ベッド)に横たわる女将軍さんと視線を合わせるように床に座り込む蜥蜴僧侶さん。寝台の反対側に回り込んだ吸血鬼君主ちゃんがもう片方の手を握り、こっそり≪賦活(バイタリティ)≫を唱えてますね。疲労が抜けたことに気付いた女将軍さんが「余計なお世話だ」と言いながら悪戯っ子の頭を優しく撫でています。

 

 

貴女(きじょ)の感じる苦痛、雄である拙僧には推察することすら出来ませぬ。今も只こうやって手を握るのが関の山という有様……」

 

「馬鹿モン、そんな顔をするな。こうやって手を握ってくれるだけで随分楽になっている。それに……」

 

 

 そっと蜥蜴僧侶さんの手を自分の顔に近付け、固い鱗を確かめるように頬を当てる女将軍さん。愛する人に向ける笑みは、悪戯が成功した童女のように軽やかですね……。

 

 

「出産に伴う苦痛は、男の身では耐えられぬ程だそうだ。折角だから半分くらい背負ってみるか、ん?」

 

「はっはっは、拙僧鍛錬以外の苦痛は可能な限り避けたい所存、謹んで辞退させて頂きたく……」

 

 うーんこのダブル吸血鬼ちゃん一党(パーティ)とも一味違う馬鹿ップル。傍で聞いてる只人寮母さんも口いっぱいに砂糖を頬張ったような顔になっちゃってます。……おや? 夫婦揃って呵々と笑っていた女将軍さんの顔がなんだか引き攣ってきてますよ? もしかして……。

 

 

「あ、これは判る、間違いない。……産まれそうだ」

 

「!? 神官は全員集合! お湯とタオルの準備!!」

 

 

 俄かに慌しくなった療養所。そのドタバタは約二時間後、大きな産声が療養所いっぱいに響き渡るまで続くのでした……。

 

 


 

 

「おつかれさま~!」

 

「ああ、ありがとう。皆の協力にも感謝している」

 

 

 寝台(ベッド)から上体を起こし、丸めた毛布を背もたれ代わりにリラックスした体勢で寛ぐ女将軍さん。産後の処置も完了し、癒しの奇跡によってそのお腹はもとのゴリマッチョ……もとい、鍛えられたプロポーションを取り戻しています。また、例によって後産時に出て来た胎盤は吸血鬼君主ちゃんが美味しく頂いておりました。その場に居合わせた神官技能持ちである剣の乙女ちゃんと令嬢剣士さんもチラチラと視線を送っていたあたり、吸血鬼視点では生命力に満ちたご馳走に見えるのかもしれませんね。

 

 

「さぁ君主殿、是非抱いてやってくだされ!」

 

「いいの! ……えへへ、ありがとう!!」

 

 

 蜥蜴僧侶さんの掌に収まってしまいそうな赤ちゃんをゆっくりと受け取り、優しく抱き上げる吸血鬼君主ちゃん。豊穣の霊薬の効果で只人(ヒューム)の女の子であることは判っていましたが、その容貌にはしっかりとパパの特徴も顕れています。

 

 

 薄く生えた()()()()()()の下、おでこのあたりに見える小さな膨らみは蜥蜴人(リザードマン)が持つ皮膚に覆われた角の証。手首から先は硬質な鱗に覆われており、喉元にも一枚だけ煌めくものが。逆鱗っぽく見えますけど、あれもおそらくただの鱗でしょう。そして一番印象的なのは……。

 

 

「まるで宝石のよう……」

 

「ええ、とっても綺麗ですわ!」

 

 

 剣の乙女ちゃんと令嬢剣士さんが溜息まじりに見つめるのは、蒼玉(サファイア)の如き輝きを放つ大きな()()()。女将軍さんの瞳も同じ色ですが、より金属的な光を帯び自ら輝いているようにも見えますね。きめ細かなと合わさって将来美人さんになるのは間違いなさそうです!

 

 

「無事に産まれて良かったなァ旦那!」

 

「なに、次はそちらの番というもの。此処なら万全の体制で出産を迎えられましょうや」

 

「へへっ、待ち遠しいもんだ! ……にしても、なんつったかなぁ?」

 

 

 お、もう一組の美女と蜥蜴さんカップルがやって来ました! 大きく膨らんだおなかを愛おしそうに撫でる交易神の侍祭の隣で蜥蜴人の戦士さんが赤ちゃん――『半竜娘ちゃん』だと別の実況神さんが推している子と被ってしまうので、仮称『竜眼少女ちゃん』にしておきましょうか!――を覗き込んで首をかしげていますね。

 

 

「どうしたの?」

 

「いや、その赤ん坊を見た時何かを思い出しそうになったんだが……。額に印を刻まれた竜戦士じゃなくて、弓ひとつで数多の魔神を滅ぼした英雄と結ばれた竜の姫でも無くて……」

 

 

 ああ、竜と人の関わりを謳う伝説って四方世界にもけっこうあるんですね。グリグリと拳をこめかみにあてていた蜥蜴人の戦士さんでしたが、やがてポンと手を叩き晴れやかな顔になりました。

 

 

 

「思い出した! たしか王都の闘技場(デュエルスペース)で聞いた話だったか。凄腕の決闘者(デュエリスト)である只人(ヒューム)の神官と、その相棒の()()()()()()()()決闘者の王(デュエルマスター)と戦う冒険譚。その竜が人間形態になった時の姿っていう錦絵(ブロマイド)がちょうどこの子がでっかくなったような感じだったぜ!!」

 

 

 デュエリスト……ブルーアイズ……社長の嫁……あっ(察し)。

 

 

「はっはっは……可愛い娘をそんなどこの馬の骨とも判らんヤツに渡す気は無いぞ?」

 

「ううむ、いささか早すぎる話ではありませんかな???」

 

 

 (〇)馬(コ〇ポレーション)の(屋台)骨……ですかねぇ。額に青筋を浮かべる女将軍さんを必死に宥める蜥蜴僧侶さん。只人(ヒューム)と同じ成長速度なのかどうかは今後しっかりと記録していく必要がありそうですね。

 

 

 

「こらこら、あんまり騒がないで! 入所しているのはあなたたちだけじゃないんだよ?」

 

「えう……ごめんなさい」

 

「まぁまぁお嬢さん(フロイライン)、今日くらいは良いではありませんか。……御息女の無事な誕生、おめでとうございます」

 

 おっと、騒ぎ過ぎたために只人寮母さんに怒られちゃいました。腰に手を当てて「私、怒ってます」ポーズの寮母さんの後ろには苦笑を浮かべる軍服姿の男性が立っています。銅のような硬質な髪に鍛え上げられた長身の彼は金髪の陛下の下に集いし綺羅星の如き将星の1人、サラマンドルと名付けられた火竜を駆る騎乗兵にして、長銃の名手でもある竜騎将軍です!

 

 

「ああ、ありがとう。卿も腕の調子は良さそうだな」

 

「ええ、問題ありません。……まさか失った腕を取り戻し、再び銃を手に空を駆けられるようになるとは想像も出来ませんでした」

 

 

 そう微笑みながら袖に包まれた左腕を擦る竜騎将軍さん。混沌の勢力の差し向けた暗殺者によって左腕を失い、前線から下がることを余儀なくされていた彼ですが、闇人女医さんが構築した再生医療装置の被験者の話を聞いて真っ先に志願し、被験体第一号として粘体(スライム)の中で治療を受けていたんですね。

 

 毒短刀を受け肩口から先を切断せざるを得なかった為、再び手綱を握ることは出来ないと諦めかけていたところに陛下から齎された福音。粘体の中で少しずつ再生していく腕の違和感やガラス越しに記録を取られるストレスにも耐え、つい先日スライム風呂から出ることが出来ました!

 

 未だ掛かるコストの問題やメンテナンスに高度な知識が要求されるため量産は難しい状態ですが、奇跡による癒し抜きで四肢の再生が可能になれば戦争で傷を負った兵たちの治療に大きな進歩が見られるはずです。竜騎将軍さんと闇人女医さんのレポートが有意であると判断されれば、王国からの支援が受けられるようになるかもしれませんね!

 

 

 

 ……と、この辺りで察しの良い視聴神のみなさんはお気付きかもしれません。こういうイベントの時に必ずいる筈のあの子、彼女の姿が見えませんよね? そう、女神官ちゃんです。

 

 実は現在、女神官ちゃんは牧場に……というか、王国に居ません。塚人覇王(ワイトキング)の一件が片付いた後、金髪の陛下からの依頼で王妹殿下と一緒に砂漠の国へと出向いているのです。

 

 

 宰相一派を粛清し王国との併合に向けて内政に励んでいた砂漠の姫君でしたが、臣下たちの想像を超えて金髪の陛下にホの字だったらしく、なんと先日おめでたが発覚してしまいました。世継ぎを産むなら王国でという話になり、半森人局長さんらとともに王都を訪問、この時ちょうど同行していた彼女に結婚について相談していたみたいですね。

 

 その後、姫君の名代として砂漠の国に向かうことになった王妹殿下の補佐として、陛下が指名したのが女神官ちゃんでした。……王妹殿下の家出イベントが潰れていたために、実は2人が顔を合わせたのがこのタイミングが初だったという事実に驚きを隠せませんでしたね……。

 

 

 身体の一部以外が瓜二つな2人。最初はお互い戸惑いが見られたようですが、あっという間に意気投合。護衛に銀毛犬娘ちゃんと巡回力士さんたちを引き連れて世直し興行に取り組んでいるみたいです。巡回力士さんたちの荒々しくも神々しいぶつかり合いと、それを見事に引き立てる女神官ちゃんの実況は荒廃した砂漠の民たちの心とついでに土地を大いに潤し、今では実質的な砂漠の国の宗教のまとめ役みたいな扱いなんだとか。やっぱり人を惹き付ける魅力みたいなものがあるんですかねぇ?

 

 

 

「無事に産まれたか」

 

「わわ、かーわいいー!!」

 

「おお小鬼殺し殿に奥方も!」

 

 

 ……お、牧場夫婦も来たみたいですね! 吸血鬼君主ちゃんから竜眼少女ちゃんを受け取り、目を細める牛飼若奥さん。竜革鎧姿のゴブスレさんも興味深そうに彼女を見ていますね。

 

 

「ふむ、父親似だな」

 

「いやいや、鱗の部分しか見てないでしょ? 顔の輪郭とか、目元とかはおかあさんソックリだよ! ……じゃなくて、此処に来た元の理由忘れたの?」

 

「む……」

 

 

 牛飼若奥さんに指摘され口をつぐむゴブスレさん。……もしかしなくても戦友である蜥蜴僧侶さん夫婦の赤ちゃん誕生にテンション上がってたんでしょうか? 周囲からの生暖かい視線を振り払うように咳払いをすると、おもむろに吸血鬼君主ちゃんを抱え上げました。

 

 

「ふぇ?」

 

「お前を尋ねて客が来ている。家で待っているから早く行ってやれ、戦友」

 

「ん、わかった! ありがとう、しんゆう!!」

 

 

 コツンと拳を合わせた後、蜥蜴僧侶さんの大きな拳とも同じ挨拶を行いゴブスレさんの腕の中から抜け出す吸血鬼君主ちゃん。ぺこりと女将軍さんに頭を下げ、尋ね人が待っている自宅へと駆け出していきました。

 

 


 

 

「あ、帰ってきた! オルクボルグはちゃんと伝えてくれたみたいね」

 

「ただいま~!」

 

 

 一党(パーティ)宅まで帰ってきた吸血鬼君主ちゃんを迎えてくれたのは妖精弓手ちゃんですね。家の扉に背を預けた姿勢を崩し、胸元に飛び込んで来た吸血鬼君主ちゃんを両手で抱き止めました。気持ち良さそうに胸元に顔を摺り寄せる姿にほっこりしつつ、家の中へと入っていきます。

 

 

「今はおっぱい眼鏡たちが応対してるわ。……ふふ、シルマリルも驚くわよ~?」

 

 

 リビングへと続く廊下を歩きながら意味有り気に微笑む妖精弓手ちゃん。吸血鬼君主ちゃんはお客さんに心当たりが無いのか首をかしげてますね……と、そんな話をしているうちにもうリビングは目の前です。中からは談笑する複数の男女の声が聞こえてきてますが……お! その中に聞き覚えのある声があった吸血鬼君主ちゃんが妖精弓手ちゃんの腕の中から飛び出して行きました!

 

 

 

 

 

 

「……ム?」

 

「お?」

 

 

 突然大きな音を立てた開いたドアに驚き、リビングの入り口へ振り返る訪問者たち。首から下げられた認識票を見れば、彼らが冒険者であることは一目瞭然です。吸血鬼(ヴァンパイア)の鋭い聴覚で吸血鬼君主ちゃんたちの接近に気付いていた女魔法使いちゃんが机の対面から呆れた声を出しています。

 

 

「こーら、廊下は走っちゃダメでしょ。それもお客さんの前で、みっともない」

 

「えう……ごめんなさい」

 

「うわ、ちっちゃ。ホントにこの子がオタクらのご主人様なワケ?」

 

 

 軽く窘められてションボリな吸血鬼君主ちゃん。その様子を見ていた冒険者の1人が信じられないものを見たような声を出していますね。冒険者は合わせて4人。男女2人ずつの構成で、全員が銀等級の認識票を下げています。先程発言した冒険者は軽装の鎧姿で、腰に2本の刺突短剣(スティレット)を下げた何処かネコ科の猛獣を思わせる只人(ヒューム)の女性です。

 

 

「人を見かけで判断するのは良く無いお?」

 

「彼女からは強力な魔力と信仰を感じます。……貴女は凄まじい再生能力を持つと聞いてます、後で見せて頂いても?」

 

 

 軽戦士を諫めているのは小太りな男性、傍らに強い魔力を感じる杖を立てかけ、腰に呪文構成要素を入れたポーチを付けているところから考えて術師であることは間違いないでしょう。赤く染め抜いた軍服姿の女性は知的好奇心に満ちた瞳で吸血鬼君主ちゃんを見つめています。……先の軽戦士さんも立派なお山の持ち主でしたが、彼女はその上を行く大きさです。女魔法使いちゃん以上、もしかしたら剣の乙女ちゃんに匹敵する戦闘力を秘めているかもしれません。

 

 

 はい、視聴神のみなさんはもうお判りですね! 彼らはあの『悪魔殺し』の一党、魔神や来訪者などを狩る凄腕の冒険者パーティです! ということは勿論最後の1人は……。

 

 

「ハッハッハ! 子どもは太陽のように元気なのが一番!! ……久しぶりだな、貴公」

 

「うん、ひさしぶり! とってもあいたかった!!」

 

 

 太陽を描いた金属鎧に特徴的なバケツ兜(グレートヘルム)。首から下げた聖印は吸血鬼君主ちゃんと同じ、太陽神さんを信仰する証。みんな大好き聖騎士さん……だと、元新米戦士君と被ってしまうので、ここは原作をリスペクトして『太陽戦士』さんとお呼びしましょうか!

 

 

 暑苦しい熱い視線を交わし、スッとその場にしゃがみ込む2人を見てその場に居た他の大人たちは全てを察したことでしょう。同じ部屋の中で白兎猟兵ちゃんに遊んでもらっていた子どもたちがキラキラした目で見つめる中、もはや恒例となったポーズを決め……。

 

 

 

「「太陽万歳(たいようばんざい)!」」

\ Y  /

 

 


 

 

「……で、満足した?」

 

「むふ~!」

 

 

 久々に万歳出来てご満悦な吸血鬼君主ちゃん。女魔法使いちゃんのたわわに身体を預ける姿勢で悪魔殺し一党の対面に座っています。彼らが訪ねてきた目的は吸血鬼君主ちゃんらしく、まだ本題には入ってなかったみたいですね。

 

 

「――さて、では此度貴公を尋ねてきた理由を話すとしよう。俺たちは今、とある魔神を追っているのだ」

 

 

 そう来訪の目的を切り出す太陽戦士さん。先程までの軽い雰囲気は無くなり、重苦しい空気がリビングに満ち始めます。

 

 

「彼奴はこの四方世界にあらゆる病を振りまく存在。単なる風邪からあの黒死病、果ては精神を侵す心の病まで。地母神のと協力してその足取りを追っていたのだが、とうとう居場所が判明したのだ」

 

 

 ふむ、なかなかに恐ろしい魔神みたいですね。病気を司る存在となると、真っ先に思いつくのは黙示録の四騎士(フォーホースメン)青レンジャイ(ペイルライダー)ですが、≪死≫さんプロデュースのあの戦隊は5人目がなかなか決まらず空中分解したハズですし……。

 

 

「彼の者を滅ぼすには、あらゆる不浄を祓い清める太陽神への信仰が必要なのだ。貴公、手を貸しては貰えないだろうか?」

 

「えっと、ぼくはおてつだいしてあげたいんだけど……」

 

 

 太陽戦士さんの真摯な眼差しを受け、視線を泳がせる吸血鬼君主ちゃん。万聖節が終わったとはいえ、またすぐに冬至(ユール)のお祭りと迷宮探検競技が待っています。……そんな葛藤を察したのか、女魔法使いちゃんが膝上で俯いている吸血鬼君主ちゃんのほっぺを両側から引っ張り始めました!

 

 

「おあ~……」

 

「そんなに悩む必要なんか無いでしょうに。こっちは私たちに任せて、アンタはアンタのやりたいこと、アンタにしか出来ないことをやりなさい。しばらくしたらあの子も帰ってくるでしょうし、それなら何とかなるでしょ」

 

「!! ……うん、わかった!」

 

 

 女魔法使いちゃんの言葉に後押しされ、どうやら決心がついたみたいですね。周りのママたちも同じ気持ちなようで、吸血鬼君主ちゃんの視線に頷きを返しています。吸血鬼君主ちゃんの参戦を取り付け、悪魔殺し一党の表情にも安堵が見て取れます。そんなにヤバい相手なんですか……。

 

 

「そういえば、今回潰しに行く魔神ってなんて名前なの?」

 

 

 お、丁度良く妖精弓手ちゃんが聞いてくれてますね! ひとつ咳払いをした太陽戦士さんの口から隠し切れない敵意と僅かな畏れを孕んだ声で告げられた名前は……。

 

 

「ウム。肉体を蝕むだけに飽き足らず、人の心に入り込んでその思考と感情を操り、瞬く間に罹患者を増やしていく恐るべき魔神……」

 

 

 

 

 

 

「その名を、疫病撒き散らす拡大魔(インフルエンザー)というのだ」

 

 

 

 ……ちょっと? GM神さん???

 

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 

 





 ダイカタナとの設定の擦り合わせに難儀しているので失踪します。


 UA160000&お気に入り1111に到達致しました。たくさんの方に目を通していただき有難い限りです。

 評価や感想、お気に入り登録ありがとうございます。また、古い話の誤字報告をいただき申し訳なさとともに、新しく読んでいただけてるんだなぁと感じ非常に嬉しく思っております。

 評価や感想が更新の励みとなりますので、宜しければお願いいたします。


 お読みいただきありがとうございました。

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