ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 原作15巻までのプロットが組み上がったので初投稿です。



セッションその15.5-3

 前回、少女の暮らしていた集落を浄化したところから再開です。

 

 ≪疫病撒き散らす拡大魔(インフルエンザー)≫のばら撒いた病に侵され獣へと堕した村人たちを輪廻へと還した一行。僅かばかりの休息の後、遂に魔神が潜伏している遺跡跡へと到着しました!

 

 

「貴公ら、準備は良いか?」

 

 

 若干くぐもった声をした太陽戦士さんの問いに頷きを返す面々。毒・病気に対する完全耐性持ちの吸血鬼君主ちゃんを除くみんなの顔には治療師さん謹製の面頬(マスク)が付けられています。疫病を司る魔神が相手ですので、毒や病気に対しての備えは欠かせませんね。遺跡前に到着した時点で吸血鬼君主ちゃんが≪操疫(エピデミオロジー)≫の呪文を掛け直しておりますので、余程運が悪くなければポジる可能性は低いでしょう。あ、ちなみに狼さんは動物ではなく使徒(ファミリア)という扱いなので、吸血鬼君主ちゃんと同じく毒・病気は無効なんだとか。道端で拾い食いしても大丈夫な理由はそんなところにあったんですねぇ。

 

 

「うわ、きったな!?」

 

 

 おそらく元はゴブリンたちが住処にしていたのでしょう、汚物に塗れた通路を見て女剣士さんが顔を顰めています。僅かに残っていた食料を巡り互いに殺し合ったと思われるゴブリンの腐乱死体があちこちに転がり、目に悪い紫色のカビが死体を斑模様に変えていますね。もし面頬(マスク)無しで呼吸をしたら……肺がどうなるかはちょっと考えたくはありません。

 

 一行の見える範囲では散乱している死体はゴブリンばかりで人間のものは無さそうですね。例年では収穫を終え一所に集まった実りを奪いに集落を襲うゴブリンたちですが、今年はUSAGIさん率いる訓練場上がりの冒険者たちが徹底的に駆除していたおかげで著しく数を減らしたため、襲撃という手段が採れず山野の恵みで食い繋がざるを得ない状況だったみたいです。

 

 幸か不幸か数が減ったために採集だけで群れを維持することは出来ていたようですが、繁殖用の雌を手に入れられずジリ貧なのは間違いありません。少女に襲い掛かっていたゴブリンたちも、そんな限界集団の一つだったのかもしれませんね。

 

 通路を抜けた先には朽ちた武器が散らばる部屋が。衛兵かそれに準ずる人たちの詰め所だったのでしょうか、ゴブリンが使うには大きすぎる剣や槍が打ち壊され、ストレス発散のために殴られ続けていたと思われる歪んだ鎧などが放置されています。おや、力術師さんが何かを見付けたみたいですね。

 

 

「お、金槌の聖印(シンボル)があるってことは……」

 

「フム……この遺跡、元はどうやら鍛冶神の神殿であったようだな」

 

 

 叩き割られた瓶や食器が打ち捨てられている一画を物色していた力術師さんが見付けたのは鍛冶神さんの象徴である金槌を模した聖印(シンボル)。なるほど、セッション開始から鍛冶神さんがずっとしかめっ面だったのはこれが理由だったんですね! ……え、違う? この顔はいつも通り? アッハイ。

 

 

「あいつら、こんなによごして……うん、きれいになった!」

 

 

 床から拾い上げた聖印を力術師さんから受け取った吸血鬼君主ちゃん、袖口でゴシゴシと汚れを拭きとってご満悦な様子。鈍い金属の輝きを持つ聖印を胸に祈りを捧げていますが……おや、何かを感じ取ったのか聖印を少女へと差し出しました。

 

 

「あのね、これはきみがもってたほうがいいみたい!」

 

「……え?」

 

 

 満面の笑みを添えて差し出された聖印を反射的に少女が受け取ると……おお! 聖印の輝きが増しました!! 灯りとしても使えそうなほどに光る聖印は熱も持っているようで、かじかんだ指先に広がる温かさに少女の顔がほころんでいます。

 

 

「えへへ……きっと『がんばれ!』ってかじしんさまがいってるんだよ!!」

 

「うむ、鍛冶神が貴公の冒険を応援しているのだろう、大事に持っていたまえ」

 

「……はいっ!」

 

「では落とさぬよう首から下げられるようにしましょうか」

 

 

 治療師さんが持っていた革紐を使って首飾りのように加工された聖印を胸に微笑む少女。さぁ、決戦の場はもうすぐ先でしょう! みんなには頑張って欲しいですね!!

 

 


 

 

 遺跡の最奥に広がっていたのは祭壇の置かれた大広間。かつては戦や困難に向かう者たちが鍛冶神さんへと祈りを捧げていたであろう神聖な場所は、魔神によって見る影もなく穢されてしまっていました……。

 

 

「周囲に纏う病魔の気配。あれが≪疫病撒き散らす拡大魔(インフルエンザー)≫で間違いありません」

 

「うわぁ、なんかすっごい硬そうなんですけどぉ?」

 

 

 女剣士さんが嫌そうな顔で眺める先には罰当たりにも祭壇に腰掛けている東方風の全身鎧を身にまとった巨体。全身に矢や剣が突き刺さっており、穿たれた穴からはいかにも身体に悪そうな緑色の気体が流れ出しています。あれが今回の標的である≪疫病撒き散らす拡大魔(インフルエンザー)≫……『エキビョウ』ですね! 隠れ家に入り込んできた一行を対し、身の丈と同じほどの長大な湾刀(カタナ)を向け、挑発するようにクイクイっと手振りを。会話を交わすという選択肢がハナから存在しない者同士、相手を黙らせるには暴力しか無さそうです!

 

 

「長期戦は病気が怖いしぃ、速攻でカタを付けるよぉ? 呪文で援護ヨロシクぅ!」

 

「了解! ≪セメル(一時)≫……≪キトー(俊敏)≫……≪オッフェーロ(付与)≫っ!!」

 

 

 まず飛び出して行ったのは女剣士さん。魔神へと一直線に駆ける背中に力術師さんが≪加速(ヘイスト)≫を飛ばし、叢雲狩人さんに匹敵する速度で迫っていきます。顔面に付き込まれた切先を金髪が数本斬り飛ばされるほどのギリギリで躱し、カウンター気味に両手のスティレットをガラ空きの胴体へと突き込みますが……。

 

 

「ありゃ? 手応えが……うぷぇっ!?」

 

 

 鎧を貫通する一撃をお見舞いしたものの、手応えの無さに首を傾げる女剣士さん。ぶち抜いた穴から緑色の霧が吹き出し、慌てて距離を取りました。穴から覗く鎧の内側は……気体が充満しているだけで魔神の肉体は見えませんね。通常の視覚では見えないのか、それとも……。

 

 

「VIRUUUUUUUUUUUUUS!!」

 

「ヌッ!? 何という速さッ!!」

 

 

 今度は此方の番だと言わんばかりに動き出した魔神(エキビョウ)、背に空いた穴からジェット噴射のように内部の霧を噴出し、その巨体からは想像出来ない速度で太陽戦士さんへと斬りかかっています! 太陽戦士さんは直剣と盾を巧みに用いてなんとか攻撃を受け流しているものの、魔神は関節部分からも気体を噴出することで攻撃後の隙を加速に変じ、驚異的な連撃を繰り出していますね。そして気体を噴出しているということは……。

 

 

「その霧を吸ってはいけません! おそらくそれが村人やゴブリンを狂わせた感染源です!!」

 

 

 単筒を構え隙を伺っている治療師さんの言う通り、あの緑色の気体こそが魔神(エキビョウ)の持つ力、心身を蝕む病気の引き金です! そしてそれなりに広いとはいえ戦闘を行っているのは屋内、徐々にですが部屋の中に気体が満ちていっています。≪操疫(エピデミオロジー)≫で抵抗を上げているとはいえ、このままでは不味いのでは?

 

 

「うぅ……霧が邪魔で良く見えません……」

 

「クゥン……」

 

 

 霧中で戦う悪魔殺し一党を確認しようと目を凝らす少女。次第に濃くなっていく霧が視界を奪うとともに、徐々にですが彼らの体力を蝕んでいくのを狼さんと並んで見守っています。流石にこのままではいけないと判断した吸血鬼君主ちゃんが霧を祓うべく≪浄化(ピュアリファイ)≫の詠唱に入りましたが……!

 

 

「!! VI……RUUUUUUUUUS!!」

 

「あうっ!?」

 

「ひっ!? だ、だいじょうぶ・・・?」

 

 

 霧を取り除かれることを察知した魔神(エキビョウ)が悪魔殺し一党を霧中で引き離し、吸血鬼君主ちゃんへと突っ込んで来ました! すんでのところで湾刀(カタナ)による一撃は避けたものの、鎧から突き出た刃に引っ掛けられた吸血鬼君主ちゃんは一瞬でズタズタに。慌てて駆け寄ろうとした少女の襟を狼さんが咥えて放り投げなければ、少女も続く連撃に巻き込まれていたことでしょう。

 

 

「VIRUUUUUUUUUS!!」

 

「うるさいなぁ……!」

 

 

 両手持ちの円盾()魔神(エキビョウ)の連撃を凌ぐ吸血鬼君主ちゃん。全身の切り傷は再生するに任せ、相手の正体を見極めようと内なる瞳を凝らしている様子。やがて何度目かの湾刀(カタナ)の攻撃を正面から受け止めた時、何かに気付いたみたいです。

 

 

「クソが! 逃げんじゃねえよ!!」

 

「スマン抜かれた! 貴公、無事か?」

 

 

 霧の海を掻き分けて姿を見せた前衛2人、絶妙なタイミングで繰り出された一撃でしたが高速で回避する魔神(エキビョウ)に当てることは出来ず、荒く息を吐いています。突撃に巻き込まれないよう分散していた力術師さんと治療師さんも集まってきて再び両陣営が対峙する形となった状況で、吸血鬼君主ちゃんが口を開きました。

 

 

「あのね、さっきカタナのこうげきをうけとめたとき、あいてのうごきがちょっとだけにぶくなったの。それからあんまりカタナをつかわなくなった。だから……」

 

 

 

「たぶん、あのよろいはみたままのからっぽ。まじんのほんたいは……あのカタナ!」

 

 

 ほほう、とするとあの鎧は元々神殿にあったものか何かで、魔神が本体に偽装して操っていたって感じなんですかね? ……あ、もしかして鍛冶神さんの機嫌が悪いのって。……あぁやっぱり、あの鎧、神殿に鍛冶神さんの信徒が奉納していたものだったんですか。そりゃあ怒るのも無理ないですねぇ。

 

 

「VI……RUUUUUUUUUS!!」

 

 

 ヒヒイロカネ製の円盾()で何度も受け止められ、耐久性に不安を感じたのでしょう。再び前衛に高速で斬りかかってきた魔神(エキビョウ)ですが、吸血鬼君主ちゃんに対しては自慢の湾刀(カタナ)を振るわず、鎧から突き出た刃を向けるに留まっていますね。これは吸血鬼君主ちゃんの考えが合っているのかも!

 

  とはいえ太陽戦士さんと女剣士さんも傷を負い続けているため吸血鬼君主ちゃんの奇跡はそろそろ打ち止めですし、耐久力の低い後衛2人や少女が病に罹患する可能性はどんどん増している状態。何か反撃に転じるきっかけがあれば良いのですが……。

 

 

「VIRUUUUUUUUUUUUUS!!」

 

「グッ!?」

 

「ぎぃっ!?」

 

 げ!? 前衛を先に排除することにした魔神(エキビョウ)が背に突き立っていた矢を打ち出し、不意を突かれた太陽戦士さんと女剣士さんが被弾しちゃいました! たっぷりと霧に浸かっていた鏃は妖しく緑色に発光しており、無理矢理引き抜いた2人の顔色がどんどん悪くなっていってます!! 2人を治療すべく駆け出そうとした吸血鬼君主ちゃんの足元にも矢が次々に突き刺さり、なかなか近付けないみたいです。

 

 

「ど、どうしよう。このままじゃ……」

 

 

 吸血鬼君主ちゃんが劣勢に追い込まれているのをオロオロと見ている少女。何か自分に出来ることは無いのかと必死に考えを巡らせているようですが、残念ながら彼女には技術も知識も経験も不足しています。……そう、()()()()

 

 

「ふむ、あまり良い状況ではありませんね」

 

「まぁそれはいつもの事だし……」

 

 

 ザっと進み出たのは悪魔殺し一党の後衛2人。単筒を再装填しながら足場を確認している治療師さんの隣では、力術師さんが呪文構成要素ポーチから取り出した女魔法使いちゃんからの餞別を手の平で転がしています。気負った様子の無い2人の姿に少女が息を呑んでいる横で、狼さんが大きく欠伸をしていますね。

 

 

湾刀(カタナ)が本体という彼女の推察、確かめる価値はあるでしょう」

 

「申し訳ないのだけれど、君も協力してくれるかな? あ、そこの狼くんも」

 

 

 ベテラン冒険者から向けられる瞳に、ヒヨコどころかまだ孵ってすらいない冒険者未満の子どもに力を借りねばならぬ苦悩を感じ取った少女。2人のそんな気持ちを吹き払うように、決意を込めた瞳で大きく頷きました。

 

「……はい! わたしはなにをすれば良いでしょうか!!」

 

 


 

 

「VI、RUS!!」

 

「ああもう、じゃま……っ!」

 

 

 踏み込めば出鼻をくじく様に弓を打ち込まれ、足を止めれば刃に引っ掛けるべく突撃してくる魔神に苛立ちの視線を向けている吸血鬼君主ちゃん。ガチガチと牙を鳴らし、前衛を救うために周囲への被害を考えずに全力を出そうか考えているみたいですね。

 

 

「――足は私たちが止めますので、貴女は2人の救出と治療を」

 

 

 そんな吸血鬼君主ちゃんの背後から飛んできたのは、激情を鋼の意思に秘めた治療師さんの声と銃撃音。()()()()()()()()6発の弾丸は次々に魔神(エキビョウ)へと着弾。その動きを鈍らせています! 『チェーンファイア』と呼ばれる暴発現象を腕の力で抑え込み、しかも全弾バッチリ命中させる治療師さんの射撃の腕は素晴らしいですね!!

 

 背後に頷きを返し、即座に離脱する吸血鬼君主ちゃん。股の下をすり抜けられた魔神(エキビョウ)は忌々し気に視線を治療師さんのほうへと向けますが、すぐに湾刀(カタナ)を構え直しました。その理由は、緑色の霧の海に白い軌跡を残して疾走する狼さんと、その背に跨った少女を視認したからでしょう!

 

「ガルルルル・・・・・・ワンッ!!」

 

「や、やあぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

 唸り声を背後に置き去りにしつつ駆ける狼さん。その背に乗った少女も恐怖を忘れるためか、あるいは自らを奮い立たせるためか可愛らしい声を上げています。接近する1人と一匹を排除せんと矢が飛来してきますが、それらは全て狼さんが操る歪な金属球(勾玉)が迎撃しています。そして彼女たちに気を取られている魔神(エキビョウ)に向けて、霧越しに迫る幾つもの光弾が……!

 

 

「≪サジタ()≫……≪ケルタ(必中)≫……≪ラディウス(射出)≫ッ!!」

 

「VIRUS!?!?」

 

 

 湾刀(カタナ)を持つ右腕に着弾する魔力の矢。その衝撃は通常の比ではなく、頑丈な籠手(ガントレット)をベコベコに凹ませるほど。その理由は力術師さんの手に握られた物質要素にあります。

 

 

 「……鎧を貫通させるために硬い鋼の弾頭を用いるのではなく、あえて柔らかい弾頭にすることで着弾時の衝撃を増加させる。やっぱり都会の()はおっかねぇお……!」

 

 

 思わずお国言葉が出てしまってる力術師さん、≪力矢(マジックミサイル)≫大好き女魔法使いちゃんからの餞別はホローポイント弾じみた代物だったみたいです。四方世界において敵の指揮官狙撃や馬上の重装騎士をピンポイントで狙う際に用いられることの多い銃ですが、銃弾1発のコストが高いために貫通力と発射後の安定性を重視して鋼鉄を弾頭にすることが多いみたいです。そこをあえて貫通力を抑え殺傷能力を高めるとともに、着弾時の衝撃を増加させる柔らかい弾頭を選ぶのは至近距離での射撃に単筒を用いる暗殺者の考えですねぇ。

 

 ちなみに女魔法使いちゃんは銀髪侍女さん経由でこの弾丸の存在を知ったんだとか。おそらく出処は帽子をかぶった仕掛け人(ランナー)君あたりなんだろうなぁ……。

 

 

 半泣きになりながらも連続して≪力矢(マジックミサイル)≫を繰り出す力術師さん。3発目で魔神(エキビョウ)の親指が砕け、4発目で支えを失った湾刀(カタナ)が空中に投げ出されました。慌てて拾いに行こうとする魔神(エキビョウ)ですが、狼さんが体当たりをかまし、大きな音を立てて転倒。起き上がろうとしたところで顔に当たる部分に近寄ってきた狼さんが……。

 

 

「……わふぅ」

 

 

 嗚呼、あれこそは太陽神さんが生み出した最終奥義、大無礼講!

 

 無礼(ナメ)無礼(ナメ)きった態度と表情から繰り出された()()は美事魔神(エキビョウ)の顔面に着弾&大爆発! どんな知性の持ち主でさえ怒り狂うと言われるほどの超絶ヘイトコントロール技、是非とも吸血鬼君主ちゃんに修得して頂きたかったのですが……少々ビジュアル面に難があるため、≪幻想≫さんから「女の子は……ていうか、人型の子はゼッタイに使っちゃダメ!!」と禁止されてしまったそうです。残当。

 

 狼さんの身体を張った足止めによって動けない魔神(エキビョウ)の横をすり抜け、クルクルと宙を飛ぶ湾刀(カタナ)へ駆け寄る少女。限界突破(オーバーキャスト)からの5発目の≪力矢(マジックミサイル)≫を放ちながら、力術師さんが少女に向かって大きな声で合図を出しました!

 

 

「……刀身のど真ん中、思いっきり叩きつけるお!!」

 

「――はい! ……てやあぁぁぁ!!」

 

 

 両手で持ったヒヒイロカネ製の剣を大きく振りかぶり、湾刀(カタナ)の中心へと振り下ろす少女。彼女の顔を掠めるように飛来した≪力矢(マジックミサイル)≫が急激に方向を変え、彼女の一撃に合わせるように刀身の反対側から着弾! 同時に加えられた衝撃に耐え切れず、刀身には細かな罅が刻まれ、だんだんと大きく広がっていき……。

 

 

 ――パキィン

 

「VI、RUUUUUUS……」

 

 

 その悍ましい内面からは想像も出来ないほど澄んだ音を立て、≪疫病撒き散らす拡大魔(インフルエンザー)≫……『エキビョウ』の本体である刀身は、半ばから二つに分かたれました。

 

 

 

()ったぁ~。……ふひっ、あのジャリん子もなかなかやるじゃん」

 

「ウム、実に将来が楽しみだな!! ……で、これで終わったと思うかね?」

 

「いや~まだじゃな~い? だってほら、アレ……」

 

 

 吸血鬼君主ちゃんに≪治療(リフレッシュ)≫の奇跡をかけてもらい、なんとか動けるようになった2人が視線を向ける先。全身から緑色の霧を噴出しながらガクガクと不穏な挙動を見せる巨大な鎧の姿がありますねぇ。

 

 

「こういうのってさぁ、フツーは本体を倒したら一緒に消えたりするもんじゃない?」

 

「あるいは制御を失って暴走するかだな。……今回はどうやら後者らしいが」

 

「――ん、ちりょうはおしまい! あと、あれはぼくにまかせて!!」

 

 

 お、2人の治療を終えた吸血鬼君主ちゃんがスッと立ち上がり、自身に満ちた笑みで2人に宣言しました! おなかにそえていた手を頭上に掲げれば、そこには太陽の光を凝縮したような輝きを放つ一振りの(ケイン)。外套に変じさせていた翼を羽ばたかせ、矢のような勢いで鎧へと吶喊! 胴の中央に突き立った杖を通じて流し込まれた星の力に耐え切れず、鎧に空いた穴からは次々に光が溢れていきます……。

 

 すべてのエネルギーを注ぎ終わり、杖を引き抜いた吸血鬼君主ちゃんが一欠(決めポーズ)する背後で鎧は爆発四散! 吸血鬼君主ちゃんたちの勝利です!!

 

 

 

 

 

 

「やっぱり太陽神の信徒はみんなおっかないお……!」

 

「うむ! 貴公、相変わらず良い太陽っぷりだな!! ……ん? どうしたのだ?」

 

 

 ……おや? 派手な爆発をバックに吸血鬼君主ちゃんみんなのところへ帰還する感動のエンディングシーンの筈なんですが、なんだか様子が変ですね。(ケイン)を体内にしまった後そのままおなかをおさえてフラフラと頼りない歩き方をしています。「怪我ですか! それとも急性の病気ですか!!」とダッシュで駆け寄ってきた治療師さんのたわわに身体を預けるように倒れ込む吸血鬼君主ちゃん。その口から微かに漏れた言葉は……。

 

 

 

 

 

 

「おなかすいた……もううごけない……」

 

 

 

 ですよねー。リ〇ルクラッシュは全エネルギーを相手に注ぎ込む文字通りの『必殺技』、体内のエネルギーを使い切っちゃったんですね。しかもここは屋内、おひさまの光は届きませんし、自慢の核融合炉(星の力)も燃料となる魔力が無ければ動きません。となると誰かから魔力を分けて貰わなければいけないのですが……。

 

 

「あ、あの。わたしから……吸って、ください」

 

 

 誰がちゅーちゅーされるかで話し合っていた悪魔殺し一党のみんなに対し、なんと少女が自分が吸われると手を上げてくれました! あ、別に悪魔殺し一党のみんなも吸われるのが嫌だから押し付け合っていたのではなく、帰りの行程や現在の消耗具合から誰が適任かを話し合っていたということは彼らの名誉と吸血鬼君主ちゃんとの友情にかけてお伝えしておきますね。

 

 

「……良いのかね? その、年端も行かぬ君には少々刺激が強いと思うのだが……」

 

「いえ……帰りの道中で一番役に立たないのは私だから、私が吸われるのがみなさんの消耗を抑えるのに繋がると思います。それに……」

 

 

 太陽戦士さんの心配する声に首を振り、考え無しに申し出たわけでは無いことを説明する少女。そして、続く彼女の言葉は……。

 

 

 

「その、これからお世話になる方の生命を支えてあげられるなら、私にとっても嬉しいこと、です」

 

「わぁお、随分と大胆じゃな~い! ……これは帰ったら他のお嫁さんたちにしっかり説明しないとだねぇ?」

 

「おあ~……」

 

 

 少女の大胆な発言にチェシャ猫のような表情を浮かべ、抱き上げた吸血鬼君主ちゃんをうりうりと撫でまわす女剣士さん。彼女の汗と甘い体臭の混ざった蠱惑的な匂いに思わず牙を突き立てそうになった吸血鬼君主ちゃんが両手で自分の口を抑えていますね。やっと拷問から解放され地上へと降ろされた吸血鬼君主ちゃんが、改めて少女へと確認の視線を向けています。

 

 

「ほんとうにいいの? なるべくいたくはしないけど、ちょっとチクっとしちゃうかもだよ?」

 

「はい、わたしは大丈夫です。……あ。でも、その……やさしく、お願いします」

 

 

 そう微笑み、吸血しやすいようにブラウスのボタンを外し()()を露出させる少女。フラフラと近寄ってくる吸血鬼君主ちゃんの前で膝立ちの姿勢になり、迎え入れるように両腕を広げています。やがて彼女の元へと到着した吸血鬼君主ちゃんがそっと首筋に顔を近付け……。

 

 

「――え?」

 

 

 少女の甘い匂いを堪能しながら慣れた手付きでブラウスのボタンをすべて外し……。

 

 

「――あの?」

 

 

 まだ下着を付ける必要の無い少女の未発達な胸に顔を擦り付け……。

 

 

「――え? えぇ???」

 

 

 頬に当たった小さな突起へと、ぬらぬらと光る舌を覗かせた桜色の唇を近付けていき……。

 

 

 

「いただきま~す」

 

 

 

 

 

 

「ぴゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」

 

 

 

 

 

「これは……まるで太陽の如き神々しさ……!」

 

「う、美しいお……!」

 

「いや、涙流しながら拝んでんじゃないっつーの」

 

「男性は向こうを向いていてください」

 

 

 悪魔殺し一党が周囲を警戒する中、吸血鬼君主ちゃんが満足するまで少女の悲鳴にも似た声は続くのでした……。

 

 


 

 

「――で、故郷を失って心の弱ってる女の子を傷物にしてお持ち帰りしてきたわけね」

 

「はい、そのとおりです……」

 

 

 はい、ちゅーちゅー以外は何事もなく帰路は消化され、牧場へと帰還した吸血鬼君主ちゃん。早急に魔神討伐の報告をしたいということで、悪魔殺し一党とは辺境の街でお別れしました。……当初はダブル吸血鬼ちゃん宅で打ち上げの予定でしたが、ちゅーちゅー事件による家族会議が想定されたため、また別の機会にということになったそうです。

 

 

 自宅のリビングでは絨毯の上に吸血鬼君主ちゃんが正座し、血族(かぞく)のみんながそれを囲んで座っています。まだ吸血鬼侍ちゃんは王都から帰ってきていませんが、吸血鬼君主ちゃんがヘルプを送っても>「がんばれ~!」としか返信が送られてこなかったとか。まぁ、そうなるな。

 

 

 子どもたちはそれぞれのママの膝上に座り、パパのことを興味深げに眺めています。話の内容は判らないようですが、パパが何かやらかしたことはママの気配から察知しているみたいですね。

 

 

「あ、あの……っ」

 

「ああ、貴女はなんにも悪くないわ。みんな貴女のことを歓迎してるし、これから一緒に暮らしていくのが楽しみよ。悪いのはぜーんぶそこのスケコマシだもの」

 

 

 膝上で困惑しっぱなしの少女を優しく抱きしめ耳元で甘く囁く女魔法使いちゃん。その口から覗く牙にちゅーちゅーを思い出したのか、真っ赤な顔でモジモジしちゃってます。

 

 

「ねぇシルマリル、今回はなんで怒られてるか判る?」

 

 

 口調こそ怒ってる時のものですが、顔は緩みっぱなしの妖精弓手ちゃんからの問い。既に答えは判っていたのでしょう、吸血鬼君主ちゃんはすぐに言葉を返しました。

 

 

「えっと、だれもかぞくをつれていかないで、じぶんひとりでいくっていってたこと」

 

「そう。今回はあえて誰も言わなかったけど、せめて1人はちゅーちゅーする相手を連れて行くべきだったわね」

 

 

 ……あ、そういえば妖精弓手ちゃん、今回は冒険なのに「私も行きたーい!」って言ってませんでしたね。まさかみんなと示し合わせて吸血鬼君主ちゃんから誰かを連れて行くかと言い出すかを見定めていたとは……!

 

 

「彼方の面子はみんな良い方ですし、万が一ちゅーちゅーが必要になった時は吸わせてくれると考え、良い機会だと思っていたのですが……」

 

「いやぁ、ご主人様の手の早さを過小評価していたみたいだねぇ」

 

「えぅ……」

 

 

 次々と向けられる言葉によってどんどん小さくなっていく吸血鬼君主ちゃん。一通りみんなからの言葉を浴びたところで、咳ばらいをした女魔法使いちゃんが再び口を開きました。

 

 

「さっきも言ったけど、この子を迎え入れるのに反対する血族(かぞく)は居ないわ。だから、アンタもキッチリ責任を取りなさい? 眷属にするかどうかを含めてね」

 

 

 そう言って抱きかかえていた少女を解放する女魔法使いちゃん。正座の状態で見上げてくる吸血鬼君主ちゃんの隣に膝を付き、少女がそっと吸血鬼君主ちゃんを抱きかかえました。

 

 

「わわっ!?」

 

「えっと、まだ眷属に成るかとか、これからの事とかはあんまり想像出来ません。でも、そうやって未来を考えることが出来るのは、あたなが助けてくれたからなのは私にも判ります。だから……」

 

 

 そこまで言い、そっと自らの唇を吸血鬼君主ちゃんのそれと重ねる少女。淡い恋人のような口づけを交わした少女が頬を染めながら……。

 

 

 

 

 

 

「――だから、これからよろしくお願いします、マスター」

 

 

 

 

 

 

「うわ、破壊力高すぎでしょ……」

 

「あらあら、おふたりとも顔が真っ赤ですね」

 

「私から見ればみんな同年代って言いたいところだけど……あれは反則ね」

 

「ねーママー、あたらしいママがふえるのー?」

 

「ふふ、さぁどうだろうか。ママになるかお姉さんになるかは、これから次第だね」

 

 

 少女の言葉に口々に意見を交わす奥様戦隊。叢雲次女ちゃんの言葉に対しての叢雲狩人さんの返答が血族(かぞく)みんなの思っていることかもしれません。

 

 さぁ、これでダブル吸血鬼ちゃん一党(パーティ)もほぼほぼ完成! 春からの冒険が非常に楽しみ……おや? リビングの鏡の表面がぐんにゃりと……って、どうやら吸血鬼侍ちゃんが帰って来たみたいです! 驚いた表情を浮かべる少女を生暖かい目で眺める一行の前に、≪転移≫の鏡を抜けて吸血鬼侍ちゃんが……お、賢者ちゃんも一緒ですね! 五体満足で干乾びてもいませんし、ちゃんと約束は守ってくれたんですねぇ。

 

 

「ただいま~! おなかすいちゃった~!!」

 

「もう、あちらでも散々つまみ食いしてたのにナニを言ってるのです。……おや、そちらの頭目(リーダー)はまた新しい女の子を引っ掛けて……ッ!?」

 

「ん、ああこの子? お察しの通りそこのスケコマシが……って、なに、この子がどうかしたの?」

 

 

 ん? 吸血鬼君主ちゃんに抱き着いてゴロゴロと絨毯の上を転げ回る吸血鬼侍ちゃんに呆れの視線を向けていた賢者ちゃんの目が少女に釘付けになってますね。なんだか信じられないモノを見たような顔で固まっている彼女に女魔法使いちゃんが声を掛けてますが、それすらも耳に入っていないみたいです。ギリギリと油の切れた機械のようにゆっくりとダブル吸血鬼ちゃんに向き直り、絞り出すような声で問いかけたのは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一体何処から見つけてきたのですか、あのような規格外な存在を。あの子は、ウチの頭目(リーダー)に匹敵するほどの特異点なのです」

 

 

 

 

 

 

 ……え???

 

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 


 

 ふぅ、なんとかこれで12人。やっとダブル吸血鬼ちゃんを頭目(リーダー)にした2パーティが編成できますね!

 

 しかし流石は賢者ちゃん、まさか一目で彼女の素質に気付くとは……ホントはもうちょっと先でばらしたかったんですけどねぇ

 

 まぁ王都で会合はなんとか上手く纏まったみたいですし、次セッションでダブル吸血鬼ちゃんの真実(裏が無いとは言ってない)が明らかになるでしょう! 鍛冶神さんと太陽神さんのプレゼントも彼女に送る準備が出来ましたし、いやー楽しみですねぇ!!

 

 おや、どうしましたか万知神さん? やっと原作15巻までのプロットが組み上がったーって裸踊りしてませんでしたっけ?

 

 

 

 

 

 

 ……え? また別の外なる神(困ったちゃん)がこっち見てる???

 

 





 セッションそのXX.5シリーズのネタを探しに行くので失踪します。


 評価や感想、お気に入り登録いつもありがとうございます。皆様に読んでいただけたという実感が湧き非常に嬉しいです。

 また、誤字脱字のご報告も感謝しております。読み返しても気付かない辺り深刻で笑えませんね……。

 評価や感想が次話へのモチベとなりますので、お時間がありましたら頂けると幸いです。


 お読みいただきありがとうございました。

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