ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 最新刊の匂い立つWiz臭に歓喜していたので初投稿です。


 ※いつにもまして残酷な描写、R17.9な表現が多いため、読まれる際にはその旨ご承知おきください。


セッションその16-2

 

 ……ハッ!? もしかしてもう配信始まってます?

 

 コホン、お待たせしました。前回、陛下が厄さマシマシな台詞を紡いだところから再開です。

 

 

「――ソレは、いったイ、どういう意味でしょうカ?」

 

 

 陛下からの突然の告白に理解が追い付かず呆然とする一行。ダブル吸血鬼ちゃんに両袖をクイクイされて女魔法使いちゃんが一早く再起動したみたいです。必死に感情を制御しようとしているようですが、いつぞやの元屑冒険者(福本モブ)新鮮な屍人(フレッシュゾンビ)解体(バラ)した時のように、瞳を攻撃色に染めガチガチと歯を鳴らし始めちゃってますね……。

 

 

「あのね、ここだとちょっとせまいからいどうしてもいい?」

 

「だれにもじゃまされずにおはなしできるばしょがあるの!」

 

「……いいわ。そっちの訳アリっぽいお姉さんについても一緒に話して貰うわよ?」

 

 

 ふぅ、左右からステレオで説得された女魔法使いちゃんがゆっくりと陛下から視線を外しましたね。……よく見たら吸血鬼君主ちゃんが抑えていた右腕の杭打ち機(パイルハンマー)引き金(トリガー)に指が掛かっています。まさに一触即発だったみたいですね……。

 

 

 

「あ、おはよう! 朝からお客様が大勢ねぇ」

 

 

 未だに瞳を煌々と輝かせている女魔法使いちゃんを森人義姉妹(エルフしまい)に預け、みんなを家の外へと連れ出したダブル吸血鬼ちゃん。外ではツヤツヤお肌の新進農婦さんが目覚まし代わりに演舞を行っていますね。肌を刺す朝の寒さもなんのその、ノースリーブのインナー姿で躍動する肢体は実に健康的且つエロいです。

 

 

「えっと、みんなでおでかけするから、こどもたちをみててほしいんだけど、いいかな?」

 

「ん、大丈夫よ。今日はお休みを頂いてるし、()()()()()()()()()()()()()アイツも昼間で起きてこないもの」

 

 

 ほら、みんなおいでー!という新進農婦さんの呼びかけに一斉に群がる子どもたち。真っ先にたわわに突撃して顔を埋める星風長女ちゃんに苦笑しつつ、スヤスヤと寝ている白兎四女ちゃんと竜眼少女ちゃんをママから預かっています。おゆはんまでには帰ってくるから~!というダブル吸血鬼ちゃんの声から察するに、そんなに遠出するわけでは無さそうですね。

 

 

 子どもたちに見送られながら出発した一行。向かった先は……あれ? おうちの裏庭ですね。令嬢剣士さんの相棒であるイボイノシシ(ワートホグ)の小屋を作ろうとしていたのですが、手乗りサイズになれることが判明したために整地した段階で中止。子どもたちのどろんこ遊び用に土が剥き出しになっている場所ですけども……。

 

 

「まんなかのあたりでいいかな~?」

 

「そうだね、まんいち()()()()()()()()()()たいへん!」

 

 

 綺麗に草が刈り取られ、丸く土が露出した地面の中心に近付くダブル吸血鬼ちゃん。みんなが見守る中、吸血鬼君主ちゃんがインベントリーから取り出したのは……。

 

 

「……薪?」

 

「うわぁ、師匠それまさか……!?」

 

「ふふ、みんなで沢山拾い集めましたものね」

 

 

 袖口から零れるように取り出されたのは女魔法使いちゃんの言うように薪にも見える白い棒状の何か。カラカラと音をたてながらどんどんと量が増し、大人が一抱えで持てるくらいになったところでダブル吸血鬼ちゃんが楽しそうに積み上げているそれを見た妖術師さんの顔が面白いように引き攣ってます。若草知恵者ちゃんが頬に手を当てながらニコニコしてるということは、彼女はブツの正体を知っているということでしょうか?

 

 やり遂げた顔で手招きをする2人に近付く一行。山から崩れ落ちていた小さな欠片を拾い上げた剣の乙女ちゃんの表情が驚きに変わりました。どうやら欠片が持つ微量な()()()()からその正体に辿り着いたみたいですね。

 

 

「これは、アンデッドの骨……?」

 

「せいか~い!!」

 

「ワイトキングやそのトークンをやっつけたときにあつめてたの!」

 

 

 ああ、そういえば各地で拾い集めてましたっけ。てっきり死霊術の触媒に使うものだとばっかり……いや、一度アンデッドになった存在は再び死霊術で操ることは出来ないんでしたっけ。そうすると、最初から使い方は決まっていってこと……?

 

 

「卿ら、準備は良さそうだな。……では、アレを2人に」

 

 

 お、陛下の呼びかけに賢者ちゃんが頷きを返してダブル吸血鬼ちゃんに近寄っていきます。四次元ポシェットに手を突っ込み、ズルリと取り出したのは1本の長剣。およそ実用的とは思えない()()()()()()で、火の粉のようにチラチラと魔力が漏れていますが……って。もしかしてその剣!?

 

 

「では、2人の魔力と意思を剣に込め、その力を解放するのです」

 

「「うん! ……いっせ~の、せっ!!」」

 

 

 賢者ちゃんの言葉を受け、2人掛かりで逆手に持った長剣を勢いよく()()()()()へと突き立てるダブル吸血鬼ちゃん。その瞬間、周囲を霧にも似た光が包み込みました! その粘性の高い光はどんどんと広がり、驚きで動けないみんなを飲み込んでいき……。

 

 

 

 ……

 

 

 

 …………

 

 

 

 ………………

 

 

 

 

 

 

 ……あの、すいませんGM神さん。みんな何処に消えちゃったんです?

 

 ただいま全力で捜索中? ってことは四方世界には居ないんですか!?

 

 ま、まさか次元の彼方に消えちゃったとかそういうことは……え、見つかった!?

 

 ふぅ~。よ、良かったぁ……! まさかこんな形で実況プレイ完!は流石に勘弁して欲しいですから!!

 

 それじゃすぐに座標を送って、撮影担当の無貌の神(N子)さんに向かってもらいましょう!

 

 


 

 

「……ん。あれ、此処は……?」

 

「朽ちた、祭祀場のようですが……」

 

 

 ――お、映像が来ましたね! 一行が転移したのは古い祭祀場の跡地みたいです。階段のような構造物が同心円状に遺り、見下ろす中心には牧場に設置したものと同じ篝火。すり鉢状の建造物の各所にみんなが呆然と立っています。

 

 

「――此処は『何処でもない場所』。『裏世界(アナザーワールド)』や『理想郷(アヴァロン)』、『妖精の隠れ里(フェアリーガーデン)』や『箱庭宇宙(ポケットユニヴァース)』などと呼ばれることもある、我々が生活している四方世界とは異なる法則で運営されている異界なのです。今回のものは呪物を媒介に、2人の力を使って生み出された一時的なものなのです」

 

「≪死王(ダンジョンマスター)≫の呪文と似たようなものか」

 

 

 ゴブスレさんの呟きに大体そんな認識で良いのですと応じる賢者ちゃん。その言葉を聞いて、周囲を警戒していた一行にも安堵の表情が浮かんでいますね。星ひとつ無い暗く重苦しい空の下でめいめいが適当な場所に腰を下ろすのを見て、祭祀場の中心にある篝火の傍へと歩み出た銀髪侍女さんが懐から取り出したのは、例の決闘騒ぎの時に空中に映像を投影していた宝玉でしょうか?

 

 

「――さて、百聞は一見に如かずという。今からみんなに観てもらうのはこの王国の消された真実であり、私や陛下、そして彼女たち2人の知る光景を繋ぎ合わせた記憶を映像にしたものだ。……かなり衝撃的なものだから、観ないという選択は十分アリだと思うよ?」

 

 

 そこまで言うと言葉を区切り、一行をぐるりと見回す銀髪侍女さん。その顔に浮かぶ表情は憐憫、そして悔悟の色です。バラバラに頷きを返す一行に席を立つ意思が無いのを確認すると、手に持つ宝玉へと魔力を流し、起動させました。

 

 

「途中で言いたいことや問い質したいことが出ると思うけど、どうか最後まで観て欲しい。そして……願わくば、全てを知った後、それでも王国に、秩序の勢力に絶望しないことを……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――Now Loading...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――Not Skip Movie――

 

 

 

 

 

 

「――ふふ、なんだか変な感じですね。自分よりも年上の息子がいるなんて」

 

 

 暗い空をスクリーン代わりに投影された映像。最初に映ったのはまだ10代半ばほどに見える1人の少女。慈愛と知性を秘めた瞳にゆるふわな金髪と明るい口調、その容姿は女神官ちゃん、そして王妹殿下と良く似ていますね。一人称視点の映像に驚く一行、最初に言葉を発したのは金髪の陛下です。

 

 

「先王……当時に合わせて以後は王と呼ぶが、奴が先妻である王妃を無くした後、門閥貴族たちはこぞって一門の子女をその後釜に収めんと蠢いていた。政治が腐敗し、腐り墜ちる寸前の王国とはいえ未だに王の力は絶対。縁戚関係になることで自らも権勢を振るわんと思うのは当然だろう」

 

 

 吐き捨てるように過去を語る陛下。幼少時から門閥貴族の在り様を見続けてきた彼だからこそ、王国の腐敗を取り除く決意を早々と固めていたのかもしれません。

 

 

「密約や裏切り、暗殺が縦横に糸を張り巡らせる陰謀劇が繰り広げられ、上級貴族の一門の女が後妻として王妃となった。だが、王がその偏愛を向けたのはとある下級貴族の長姉だった。王が側室として娶り、後に余の妹()()を孕むこの女性こそ、王国全体を巻き込んだ災渦の中心(Heart of the Maelstrom)にいた者なのだ」

 

 

 ははぁ、じゃあこの女の子―知識神さんがくれた資料によれば後に爵位を賜り伯爵夫人になるみたいなので以後はそう呼ぶことにしましょうか―が王妹殿下と女神官ちゃんのお母さんなんですね……って、どうやらこの物語(キャンペーン)では女神官ちゃんはロストロイヤルで確定なのかー……。

 

 

「王の寵愛を娘が受けるのは、貴族にとって栄誉であると同時に厄介なことでもある。他の貴族からのやっかみを受けることもあれば、露骨にすり寄ってくる輩も増えるのでな。彼女の父親は王宮という魔窟に娘を嫁がせるにあたり、傍仕えとして1人の侍女を一緒に送り出した。幼少時から遊び相手として宛がわれ、主従の関係を超えた繋がりを持つに至ったその少女が……」

 

 

 陛下の言葉に反応したかのように視点は伯爵夫人の横へと動き、その後さらに()()()()()。そこに映っているのは……

 

 

「えへへ……これから()しくお()()します!」

 

 

 

 

 

 

「嘘……アレ、どうみたって……っ!?」

 

 

 主の胸元までしかない身長に細く華奢な肢体をお仕着せに包み、太陽のように明るい笑顔で笑う圃人(レーア)の少女。おでこ全開の可愛らしい髪型と金髪に艶が有るか否かの違いこそありますが、特徴的な三白眼は見間違えようが無いほどに吸血鬼君主ちゃんにそっくりです。

 

 膝上に座る吸血鬼君主ちゃんに問いかけるような視線を向けた妖精弓手ちゃんでしたが、伯爵夫人さんを見て涙を流す彼女の表情に言葉を失いただギュッと抱きしめるばかり。篝火を挟んだ反対に目をやれば、吸血鬼侍ちゃんも叢雲狩人さんに抱きしめられながら無言で涙を流しているのが見えますね……お、どうやら視点が違う人物に切り替わるみたいです。一瞬の映像の乱れの後、映し出されたのは……。

 

 

 

「――大丈夫? やっぱりまだ身体に対する負担が大きすぎるんじゃ……」

 

「でも、陛下の寵愛を受け止め、世継ぎを産むことが側室の役目だもの。心配しないで? 私は大丈夫だから……」

 

 

 ふむ、どうやら圃人侍女ちゃんの視点みたいですね。青白い顔で寝台(ベッド)に横たわる伯爵夫人さんが画面いっぱいに映し出されています。心身の疲労が激しいのでしょうか、寝台(ベッド)横に置かれた机の上の食事は僅かに手を付けられた程度で、とても必要な量を食べたとは思えません。

 

 

「――王の伯爵夫人に対する入れ込みは常軌を逸していた。以前より漁色家の気はあったのだが、その欲望が1人に向けられた結果、正妻や他の側室たちの不満は高まり、彼女に対する嫌がらせは増す一方であったらしい。夜の務めと他の女たちからの憎悪……彼女が潰れずにいられたのは侍女の綱渡り的な立ち回りがあったからだ」

 

 

 うむむ、正妻からすれば自分こそ王の子を産むのに相応しいと思っているでしょうし、他の側室たちも王の寵愛を失えば実家の権勢が失われてしまいます。王宮で生き残るのに必死ならば伯爵夫人に対する攻撃は激しいものであったと考えられますね。映像では俯いていた圃人侍女ちゃんの顔が伯爵夫人さんによって持ち上げられ、少しずつ彼女の顔が近付いていますが……え、もしかして……!?

 

 

「ごめんね。僕がもっと上手くやれれば君にこんな辛い思いはさせずに……んむっ!?」

 

 

 うわ、うわわ……!? 画面いっぱいに広がる伯爵夫人さんの頬を染めた顔と絶えることなく響く湿った音。視点はそのまま女神官ちゃんと王妹殿下の中間位のたわわに吸い込まれ、祭祀場跡には伯爵夫人さんの甘い吐息が響いています……。

 

 

「貴女が傍に居てくれさえすれば、私はどんなことがあっても耐えられます。だから、ずっと一緒に……」

 

 

 

 

 

 

「「あわわわわ……!?」」

 

「「はぇ~すっごい大胆……」」

 

 

 まるで家族と茶の間でドラマを見ていたらいきなり濡れ場になった時の少年みたいに慌てる妖術師さんと英雄雛娘ちゃんに、自分と同じ顔をした少女の蕩けた顔を眼前に翳した両手の指の隙間からガン見する推定娘の2人。まるで王都で大人気な淑女草紙(レディコミ)の一幕のような展開に、他の面々は生暖かい笑みをダブル吸血鬼ちゃんへと向けています。

 

 

「幼少期から長い時間を共に過ごし、主従を超えた関係を育んできた2人。お互いしか頼れる相手がいない環境で何も起きない筈はなく……といったところかな」

 

「シルマリルねぇ……ホントにねぇ……っ」

 

 

 銀髪侍女さんのニヤニヤ笑いをバックに吸血鬼君主ちゃんのほっぺをむに~と引っ張る妖精弓手ちゃん。三つ子の魂百までとは言いますが、アンデッドに成る前からこんなんだったんですねぇ。いつもと変わらない雰囲気に一息入れる一行。しかし、笑うのをやめ真剣な眼差しになった銀髪侍女さんの言葉が場の空気を重苦しいものへと変えていきます。

 

 

「さぁ、ほんの小さな幸福の場面(シーン)は此処まで。この先は延々と続く人の悪意に満ち満ちた悲劇ばかり。……覚悟はいいかい?」

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()で宝玉を操作し、映像を再開させる銀髪侍女さん。流れ始めたのは僅かに膨らんだお腹に手を添え、安楽椅子に腰掛ける伯爵夫人さんを見る圃人侍女ちゃんの視点みたいですね。子を宿したことで過酷な夜の務めは終わり、血色もかなり良くなっているみたいですが……。

 

 

「寵姫が孕んだことで嫉妬の炎に焼かれ、直接手段に出ようとした正妻とその家が見せしめに潰された後、側室たちの嫌がらせも止み2人には束の間の平穏が齎された。だが、王は気付いていた。自らが抱く寵姫の愛は自分には向けられておらず、夜ごとの交わりが彼女にとってただの義務でしか無いということに、な」

 

 

 陛下の憎々し気な声とともに、映像では王の付き人に呼ばれた圃人侍女ちゃんが何処かへと連れられている映像が流れています。能面のように無表情な付き人に通された場所は薄暗い寝所。突き飛ばされるように部屋の中に入れられ、背後の扉がガチリと施錠される音が響きました。キョロキョロと不安げに視点が部屋中を彷徨う中、豪奢な寝台(ベッド)のほうから人影が近寄って来ます……。

 

 

「ヒッ!?」

 

 

 圃人侍女ちゃんが出掛かった悲鳴を噛み殺しながら見る先に居たのは、かつて偉大な王であったことを感じさせぬほどに変わり果てた男の姿。戦場を縦横無尽に駆けていた体躯は加齢とともに弛み、獅子の如きと謳われた瞳は酷く落ち窪んでいます。その洞に灯る光は、嫉妬と憎悪の入り混じった見る者に強い嫌悪感を与える悍ましい輝きを放っています。

 

 

「我が寵姫の周囲を騒々しく駆け回り、その心を乱す地べた摺り(ロードランナー)め。貴様のような塵芥(ゴミ)が、あの者に愛を注がれるなど……」

 

 腰を抜かして動けない圃人侍女ちゃんの襟首を掴んで寝台(ベッド)へと放り投げ、仰向けの彼女のお仕着せを乱暴に剥ぎ取る姿はただの暴漢にしか見えません。自らも乱雑に服を脱ぎ捨てた王の裸体が視界いっぱいに広がった後……。

 

 

 

 

 

 

 

「嫌ぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「痛い痛い痛い痛い痛い!!」

 

「おごっ、うっぶ、うげぇぇぇ!?」

 

 

 

「ギャアアアアアアアアアア!?!?」

 

 

 

「ぎぃ……あ……う……」

 

 

 

 

 

 

 

 涙で滲む映像。響く悲痛な叫び、激しく揺れ動く視点。生々しい肉のぶつかり合う音に女性たちが顔を青褪めさせ、何人かは口元を抑え蹲ってしまっています……。男女の交わりと呼ぶにはあまりにも惨たらしいソレは、互いを尊重し愛を育む一行にとって信じられない光景でしょう。

 

 

「なんつー酷ぇことしやがる……っ」

 

「――奴にとっては寵姫の愛を横取りする侍女など、憂さ晴らしと性欲処理を兼ねた玩具程度の認識だったのだろう。この日から、侍女は昼夜問わず奴の呼び出しによって拷問じみた責め苦を味わい続けることになる。……余とその仲間が混沌の勢力の攻勢に拘束されていなければ、気付いてやれたかもしれぬ……」

 

 

 悔悟の念強く首を振る陛下。王が色に溺れている間、軍を率いて混沌の勢力と対峙していたのは若き陛下だったのでしょう。嫌悪と怒りの色を滲ませる槍ニキの呟きにそう漏らし、銀髪侍女さんに手振りで続きを促しています。

 

 

 映像の中では少しずつ大きくなるおなかを優しく撫でる伯爵夫人との幸せなひと時と、王の欲望を受け止める地獄の時間が交互に流れ続けています。口に出すのも憚られるほど悲惨な目に遭わされているというのにそれをおくびにも出さず、伯爵夫人に悟らせない立ち回りは流石としか言いようがありません。王が飽きるまで耐え抜けばこの地獄は終わる、そう信じることで耐えていたのかもしれませんね。

 

 

「――だが、骰子(ダイス)の出目はもっとも残酷な結果を導いた。卿らも知っているだろうが、只人(ヒューム)森人(エルフ)以外の種族の間に子どもが産まれる可能性は皆無か、或いは非常に低い。奴もそう考え無遠慮に侍女を凌辱していたのであろう。……彼女を穢す際に、その腹が僅かに膨らんでいることに気付くまでは……な」

 

「まさか性欲処理の玩具が妊娠するなど彼も考えていなかっただろうさ。さて、御令嬢。こういった場合、普通はどのような方法で対処するか……君なら判るだろう?」

 

「……王宮から密かに退去させ、神殿に預けるか。或いは……堕胎させるか、でしょうか?」

 

 

 最早素面では見ていられないとばかりに(ウォトカ)を煽り、問いを投げかけてくる銀髪侍女さんに対し考えを述べる令嬢剣士さん。その顔にはやるせなさと嫌悪感が満ちています。既に側室が子を宿している以上、お手付きの侍女が孕んだ子など後継者争いの火種にしかなりません。令嬢剣士さんの回答にうんうんと頷く銀髪侍女さんですが、その口から酒精(アルコール)の香りとともに吐き捨てられたのは王の採ったもっと悍ましい対処法です……。

 

 

「まぁ、常識的に考えればその辺りが穏当だろうね。万一側室の子どもに何かがあった際の()()としても使えるし、後継者争いから遠ざける意味もあるからね。でも、彼の採った方法は違った」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「取り巻きである門閥貴族たちに彼女を散々嬲らせた挙句、王宮で彼らを誘惑し、風紀を乱した淫売として()()()告発したんだよ」

 

 

 

「何よソレ……そんな一方的な言い分が通ったっての……っ!?」

 

「勿論通ったさ。なんせ国王陛下と国の重鎮たる貴族たちの連名によるものだからね」

 

 

 令嬢剣士さんと剣の乙女ちゃんに左右から腕を抑えられた女魔法使いちゃんの絞り出すような声が響き、ソレを嘲笑うように銀髪侍女さんの声が被さる祭祀場跡。彼女が本当に嘲笑っているのは当時の腐敗した王国の在り方なのか、それともそんな腐敗を早々に切除出来なかった、当時の陛下を始めとする自分たち星屑の十字軍(スターダストクルセイダース)の無力さでしょうか。

 

 

「上辺だけの慈悲として、本来は即刻死罪であったところを税の未納者や重犯罪人と一緒に即席冒険者として≪死の迷宮≫送りとなった彼女。伯爵夫人と再会することも無く、馬車で城塞都市へと連れて行かれてしまった」

 

 

 また映像は切り替わり、薄暗い馬車の中に押し込められた人々を映し出しています。ガタガタと不規則に揺れる車内には先行きが見えず不安げにしている者、欲望にギラ付いた瞳で輝かしい未来を夢想する者、感情が抜け落ちたように呆けた表情の者など様々な表情の人が乗っており、その顔を舐めるようにゆっくりと視線が移ろっているみたいです。

 

 

「そんな……じゃあ、2人の原型になったこの子は、おなかに赤ちゃんがいる状態で≪死の迷宮≫に挑戦させられたの!?」

 

 

 信じられないといった顔で映像を眺めながら悲鳴にも似た声を上げる妖精弓手ちゃん。経産婦だからこそ判るその無謀さ、母子の生命に対する危険に長耳を震わせ、否定して欲しいというように腕の中の吸血鬼君主ちゃんに視線を向けています。ですが、篝火を挟んで向かい合うダブル吸血鬼ちゃんの顔には諦観じみた微笑みが。もしかして、まだ続くんですか……?

 

 

「あはは……」

 

「そのほうが、まだよかったんだけどね~……」

 

 

 映像には馬車から降ろされ、兵士の読み上げに応じて移動する人々が映し出されています。名前を読み上げるために紙片と睨めっこしていた兵士の顔が、ある一点を見た瞬間に厭らしく歪むのが圃人侍女ちゃんの視界に見えてますね。

 

 

「……おい、其処の圃人(レーア)のガキ! お前はこっちだ!!」

 

 速足で歩み寄り、問答無用に彼女の腕を掴んで何処かへ連れて行こうとする兵士。辿り着いた場所は兵たちの詰め所のようです。非番と思しき賭けカードを握っていた男たちの前に圃人侍女ちゃんを押し出した兵士が告げるのは――。

 

 

 

 

 

 

「こんなナリだがお貴族サマの懐剣をさんざん咥え込んできた淫売らしい! 冒険に出る前に、俺たちが剣のイロハを教えてやれだとさ!!」

 

 

 ――地獄の続きを告げる、あまりにも無慈悲な宣言でした。

 

 

 

 

 

 

「おねがい……もう、やめ、て……?」

 

 

 いつも泰然としている魔女パイセンが出したとは思えない、掠れた声が虚しく響く祭祀場跡。バキリという音に視線を向ければ、歯を食いしばり映像を睨みつけてる重戦士さんの握った石壁の一部が粉々に砕けています。

 

 首に力が入らずガクガクと揺れる視点。視界は醜悪な笑みを浮かべる男たちに埋め尽くされ、最早悲鳴すら出せず掠れた圃人侍女ちゃんの息遣いだけが響いています。何度も映像は暗転し、眼前に広がる男の下腹部が離れていったところで周囲の男たちが動きを止めました。

 

 

「オイオイ、乱暴に扱い過ぎだ。何処も彼処も裂けて血塗れじゃねえか」

 

「もうユルユルで締まりなんか微塵も感じねぇぞ」

 

「首絞めても反応しなくなってきたな……」

 

 

 ドサリという音とともに地面に打ち捨てられ、微かに揺らぐ映像。好き勝手己の欲望を放ち続けた男たちは未だ満足していないようで、獣欲を露わにしたまま圃人侍女ちゃんの周囲に群がっています。突き込み、握らせ、擦り付け、穢す。延々と続いていた()()が変化したのは、1人の男の悪魔的行為によってです……。

 

 

「チッ、もうこっちの穴も使えねぇ。そろそろ捨てて来るか?」

 

「馬鹿だなぁお前、()()()()()()()()()()()()()()()()? ちょっとソイツの頭持ってろ」

 

 

 映像の左右から伸びてきた指によって固定された視点。瞼を閉じられないように食い込んだ指の痛みに微かに声を上げる圃人侍女ちゃんですが、その眼前に迫る男の分身にただ絶望の吐息を漏らすばかりです……。

 

 

「ちょっと、嘘でしょう? まさか()()()()()しないわよね……?」

 

 

 イヤイヤと首を振り、この後訪れるであろう光景を必死に否定しようと叫ぶ妖精弓手ちゃん。しかし映像は既に規定された過去のモノ。興奮するケダモノたちの歓声だけが響く中……。

 

 

 

 

 

 

 

「ぎゃあああああアアあああああ亜あああああ嗚呼ああああああAAあああああああアアあああああ亜ああああああ嗚呼あああああああAAあああああ!?!?!?」

 

 

 

 

 

 

 

 ――ぶちゅり、という葡萄を潰したような音とともに、映像の右半分が血の色に染まりました。

 

 

 

 

 

 

「っぷ、うぇぇ……!」

 

「――貴様等地上の者は我らを邪悪なる種族と蔑むが、貴様等のほうが余程邪悪ではないか……」

 

 

 頭陀袋のようなものに押し込まれ、汚物でも見るような兵士の顔を最後に口を閉じられ真っ暗になった記憶映像。過去のトラウマを刺激され、蹲り嘔吐する若草知恵者ちゃんを介抱しながら淡々と呟く闇人女医さんの声に、誰1人として言葉を返すことが出来ません……。

 

 兵士たちの交わす声がした後、連続した衝撃とともに響く激突音。恐らく≪死の迷宮≫の入り口階段から放り捨てられたのでしょう。今にも途絶えてしまいそうな微かな呼吸音だけが、まだ圃人侍女ちゃんが生きていることを表しています。暫くすれば腹を空かせた追剝(ブッシュワーカー)たちによって骨も残さず解体されると考えたのでしょう。彼らの予想通り、血の匂いを嗅ぎつけた祈らぬ者(ノンプレイヤー)たちが血の滲む頭陀袋を見付けたようで、周囲が俄かに騒がしくなってきました。

 

 

「どうして? どうしてあの子があんな目に遭わなきゃいけないの……」

 

「……っ」

 

 

 最早立っていられずに崩れ落ちそうになる牛飼若奥さんを支え、瞳に真紅の輝きを灯しながら映像を睨みつけるゴブスレさん。彼のお姉さんがゴブリンにされた凌辱に匹敵する行為に憤りを隠せず、握りしめた拳からは血が滴り落ちています。……おや? お嫁さんに強く抱きしめられているダブル吸血鬼ちゃんの顔がキラキラと輝いてますね。僅かに身を乗り出し、何処かソワソワした様子にみんなが気付き、不思議そうな顔になっています。

 

 

「……ねぇアンタ、こんだけ酷い映像(過去)が続いたのに、なんでそんな顔してられるの?」

 

 

 妖精弓手ちゃんの膝上に座る吸血鬼君主ちゃんへと視線を合わせるようにしゃがみ、その瞳を覗き込みながら訪ねる女魔法使いちゃん。吸血鬼君主ちゃんの小さな瞳に映る彼女の顔は怒りと悲しみに満ち溢れ、目は泣き腫らした真っ赤なものになっちゃってます。

 

 

「ん~? えへへ、それはね……」

 

 

 愛する女性からの問いにニンマリとした笑みを浮かべ、そっと妖精弓手ちゃんの腕から抜け出す吸血鬼君主ちゃん。反対側では吸血鬼侍ちゃんも叢雲狩人さんのたわわから抜け出しており、2人はクルクルと篝火の周りを楽しそうに回り始めました。

 

 

「だって、これははじまりだから!」

 

()()がしんで、()()()()がうまれる、そのはじまり!」

 

「しにながらいきるみちをくれた、あのひととのであい!!」

 

「みんなとであい、いのちをつなぐことができるようになった、あのひととのであい!!」

 

 

 2人の声が響く中、映像のほうでは大きな爆発音が連続し、追剝(ブッシュワーカー)たちの断末魔の叫びが途絶えています。石の床を歩く足音が段々と近付き、何者かがしゃがみ込む布の擦れる音が続きました。やがて頭陀袋の口が開かれ、左半分しか見えない圃人侍女ちゃんの視界に見えたのは、1人の男性の顔。

 

 若い青年にも、年老いた老人にも見える不思議な顔立ち。深い叡智を秘めた瞳は金属的な(クロームの)輝きを帯び、袖に汚物が付着するのも構わずそっと圃人侍女ちゃんを抱き上げました。無残に潰された瞳や凌辱の限りを尽くされた肢体。そして必死に護っていた腹部の膨らみに手を当て、思案するように瞳を閉じています。

 

 やがて開かれた瞳とともに発せられた彼の声は外見に違わぬ高い知性を感じさせるもの。ゆっくりと語り掛けるように紡がれた言葉は、半ば機能していない彼女の耳にもハッキリと届くものでした……。

 

 

 

 

 

 

「――そのような姿になってもなお胎の子を護る、か。実に興味深い。……その胎の子、お前を()()とすれば救うことが出来るといったら、どうする?」

 

 

 それは、とても残酷な問い掛けでしょう。「お前を救うことは出来ない」と言っているようなものですから。ですが、()()の出す答えは最初から決まっています。

 

 

 

 

 

 

「――良いよ、こんなボロボロでもいいのなら、僕の全部をあげる。だから、この子に世界を……()()()()()()()を見せてあげて……?」

 

「――ハッ。私は死霊術師(ネクロマンサー)で、お前を外殻にこの子どもの魂を封じて創り上げるのは吸血鬼(ヴァンパイア)だぞ? なのに()()()()()()()とは……これは難題だな……!」

 

 

 そうハッキリと言い切り、力尽きて暗転していく視界。きっと彼女の顔には太陽のような笑みが浮かんでいたことでしょう。微かに聞こえる男の声には苦笑が混じっています。

 

 

「えっと、今のって……わひゃあ!?」

 

 記録映像の中に突然エントリーしてきた死霊術師(ネクロマンサー)を名乗る男に困惑を隠せない様子の妖術師さんの呟きは、此処に居る全員の気持ちを代弁しているでしょう。彼女の言葉を聞きつけ、クルクルと篝火の周りを周回していた2人が妖術師さんにダイブし、そのほどよいサイズのたわわに左右から頬擦り。一頻り素晴らしい感触を味わった後に、荒く息を吐く上気した顔の妖術師さんに次々と放った言葉は……。

 

 

 

 

「いだいなるまほうつかいにして、()()()()()()()()()()をうみだすことをめざすたんきゅうしゃ!」

 

「アミュレットのもちぬしにして、≪しのめいきゅう≫をつくりだした、()()()()()()()()()()()()()()!」

 

 

 

「「ぼくたちをうみだしてくれた、()()()()()()()()()()!!」」

 

 

 

 どれもこれもみんなの常識を粉砕する、パワーワードだらけでした……。

 

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 

 





 慣れない描写の連続に消耗したので失踪します。


 ちょっぴりランキングに入っていたらしく、お気に入り登録や評価が頂けて大変嬉しく思っております。あわせて誤字脱字もお伝えしていただき非常に有難い限り。

 次話の執筆速度に繋がるかもしれませんので、感想や評価、お待ちしております。


 お読みいただきありがとうございました。

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