ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 家の前の道路が渋滞していてお出掛けする気力が無くなったので、2日連続で初投稿です。

 何時の間にやら原作:ゴブリンスレイヤーで文字数が一番多くなっていました。このまま続いて話数も一番になれたらいいなぁ(願望)。


 ※前話と違い、今回はだいたいいつものちょいグロ&ちょいエロって感じです。



セッションその16-3

 

 ふっふっふ、漸く始まりの物語まで辿り着いたみたいですよ≪幻想≫さん、≪真実≫さん!

 

 ダブル吸血鬼ちゃん誕生に関わる前日談というだけあって、皆さん気合いの入り方がダンチですねぇ。

 

 ……向こうでは≪豊穣≫さんや≪死≫さんが法被に鉢巻きでバッチリ決めてますけど、そもそもダブル吸血鬼ちゃんを四方世界に誕生させた原因はあの()たちのはっちゃけなんですよねぇ……。「ちょっと頑張り過ぎちゃった(てへぺろ)」で混沌の勢力をマシマシにしたり「そろそろ混ぜろよ!」で死を振りまくもんだから、帳尻合わせのために可愛いN子さんまで化身(アバター)を送り込む羽目に……(トオイメー)。

 

 まぁ過ぎたことをあれこれ言ってもしゃーないですし、それよりも万知神さんに聞きたいことがあるんですよねぇ。

 

 

 ダブル吸血鬼ちゃんの生みの親(おとうさん)であるあの死霊術師(ネクロマンサー)、元ネタって多分某博士ですよね? 死霊術師ならもっと似つかわしい外見(ガワ)は幾らでもあると思うんですけど、なんでまたあの姿をチョイスされたんです?

 

 ……『アマテラス(太陽神さん)の推しを生み出すなら彼が一番相応しい』?

 

 なぁるほどぉ、確かにそれならあの姿が一番適任でしょうねぇ。元ネタでも人を超えた生命体の創造に自分の全てを賭けていましたし、創り出した娘たち(ファティマ)には深い愛情を抱いてましたから。

 

 ……それに彼、『アマテラス(太陽神さん)にとって()()()()()()()()()()()()』ですもんねぇ(ねっとり)。

 

 まったく、そうやって少数の友()にだけ甘い顔をするから、覚知神さんや死灰神が拗らせちゃうんですよ?

 

 


 

 

 前回、ダブル吸血鬼ちゃんによる『おとうさん』発言が炸裂したところから再開です。……まぁ他にも連鎖的に爆発はしていましたが。

 

 

 『〇の章(闇堕ちビデオ)』ばりに悪趣味極まりない映像を延々と視聴しだいぶグロッキーな一行。流石にこの状態で一気見は宜しくないということで休憩を挟むことにしたみたいです。みんなにインベントリーに収納していた軽食や飲み物をサーブするダブル吸血鬼ちゃんの表情は明るく、早く続きを観たい気持ちが見て取れますね。

 

 

「ぷはっ。……そういえばご主人様、結構長い間記憶映像を観ていたけれど、おゆはんまでには観終わるのかな?」

 

「あー……そうねぇ、あんまりあの子たちを任せっきりにするのも申し訳ないわよねぇ」

 

 

 香草や糖蜜入り炭酸水(ルートビア)で焼菓子を流し込んでいた叢雲狩人さんの言葉に相槌を打つ妖精弓手ちゃん。2人とも先程までは青白い顔をしていましたが今は大分良くなっていますね。2人の会話を聞きつけ、みんなにお菓子を配り終えたダブル吸血鬼ちゃんがぽてぽてと2人に駆け寄り、それぞれ好みのお山にダイビングしちゃいました。

 

 

「ん~……まだはんぶんくらいかな?」

 

「でもだいじょうぶ! ほとんどじかんはけいかしてないから!!」

 

「先程言ったように、この空間は独自の法則が適用されるのです。おそらく外界では一刻と経っていないのです……げふぅ」

 

 

 ほほう、確かにこの空間では長編映画2本分くらいの時間が経過してますけど、牧場では子どもたちが鬼ごっこの最初の鬼決めをしているところですね。まるで精〇と時の部屋みたいだぁ……。

 

 森人(エルフ)の纏う甘い香りを堪能する2人におかわりを要求しながらこの空間について補足説明する賢者ちゃんの顔色は視聴前から然程変わっていません。おそらく銀髪侍女さんと一緒に記憶の編集作業をしていた関係で、内容を先に観ていたからでしょうね。……お、吸血鬼君主ちゃんが丸ごとホールケーキを取り出すのを横目に、吸血鬼侍ちゃんが銀髪侍女さんのほうに歩いていきました。キャンディーをガリガリと噛み砕いていた彼女と二、三言葉を交わし、みんなに向かって声を掛けてます。

 

 

「それじゃあそろそろさいかいするけど、ここからはぼくがおはなしするね!」

 

 

 妖精弓手ちゃんの太股の間に座り、背面からハグされてリラックス状態な吸血鬼君主ちゃんと目配せ。再生を開始した記憶映像は、『吸血鬼侍』ちゃんが生まれ、成長していく過程を克明に映し出すものです……。

 

 


 

 

「――意識レベルの上昇を確認……目を開けられるか?」

 

 

 真っ暗な世界に響く男性の声。死霊術師(おとうさん)の呼びかけによってうっすらと(視界)が広がっていくところから映像は始まりました。『吸血鬼侍』ちゃんは簡易的な寝台(ベッド)と思しき場所に寝かされていたようで、その傍らには椅子に腰掛けた男性の姿が映っていますね。上下左右に顔を動かし部屋の中を見回す彼女を観察していた男性……死霊術師(おとうさん)が、落ち着きのある声で『吸血鬼侍』ちゃんに話しかけました。

 

 

「基本的な常識と一般教養は最初から身体に組み込んである。……何か話してみろ」

 

 

 じっと自分を見つめ、無言のままの『吸血鬼侍』ちゃん。死霊術師(おとうさん)はそれに対し、急かすことも無く彼女の反応を待っています。やがて何か思いついたのか、頷くように視界が縦に動き……。

 

 

 

 

 

 

はろー(Hello,)わーるど(world!)!」

 

「……上手いこと言ったつもりか馬鹿者。あとそのドヤ顔は止めろ」

 

 

 ……うん、まぁ、初回起動時のアイサツには相応しいとは思いますけど。クソデカ溜息を吐きつつ、ついてこいと踵を返す死霊術師(おとうさん)寝台(ベッド)からぴょんと飛び降りた『吸血鬼侍』ちゃんが連れられたのは大きな姿見の前。鏡に映る一糸纏わぬ『吸血鬼侍』ちゃんの身体は傷一つなく、血色が悪いことを除けば圃人侍女ちゃんと瓜二つですね。ん? 鏡に映ってるってことは……あ! もしかして既にこの段階で太陽神さんと万知神さんは協力してたんですか!?

 

 

「何処か違和感などは有るか?」

 

「ん~……」

 

 死霊術師(おとうさん)の問い掛けに従いペタペタと自分の身体を確認していた『吸血鬼侍』ちゃん。真剣な眼差しで彼を見上げ、答えを返します。

 

 

「このからだはおとうさんのしゅみ? あとなんではだかなの? おとうさんのせいへき?」

 

「お前を作るのに用いた身体の特徴なだけだ。全裸なのは服のデザインが決まっていないのと、お前の羞恥心の有無を確かめるためだ。性癖などでは無い」

 


 

「――うん、アレは間違いなくご主人様だね」

 

「えへへ……」

 

「いえ、決して褒められてはおりませんのよ???」

 

 

 うーんこのダブル吸血鬼ちゃんクオリティ。叢雲狩人さんの言葉に照れ顔な吸血鬼侍ちゃんに令嬢剣士さんが的確なツッコミを入れてます。映像の中では青筋を浮かべた死霊術師(おとうさん)にシーツを投げつけられた『吸血鬼侍』ちゃんがいそいそと身体に巻き付けていますね。

 

 

「このあと、おとうさんにいろんなことをおしえてもらったの。ぼくがつくられたりゆう、ぼくをたすけるためにおかあさんがじぶんをささげてくれたこと。それから……」

 


 

「――お前の魂は、あの瀕死の圃人(レーア)が最期まで護ろうとしていた胎児が基盤(ベース)となっている。だが、それだけではその身体を駆動させるには性能が足りん。不足を補うため、≪死の迷宮≫に取り込まれる前に回収していた母親の魂を併せて組み込んである。理解出来るか?」

 

「……あ~そういうことね。かんぜんにりかいした!」

 

「良いか、判らなければ判らないと言え。知識を焼き付けてあるとはいえ、お前は生まれたばかりの赤子。学ぶべきことは幾らでもある」

 

「はい! ぜんぜんわかりませんでしたおとうさん!!」

 

 

 シーツを身体に巻き付けた姿で寝台(ベッド)の縁に腰掛け、死霊術師(おとうさん)の説明を聞いていた『吸血鬼侍』ちゃん。やっぱり難しい話は理解出来ないみたいですねぇ。

 

 やれやれといった様子で慣れない手つきで『吸血鬼侍』ちゃんの頭を撫でる死霊術師(おとうさん)。いいか?という前置きの後に、彼女でも理解出来るように判り易い言葉で教えてくれました。

 

 

「お前の中にはあの圃人(レーア)の……母親の魂が眠っている。今は夢を見ているような状態だが、お前の成長とともにその意識は浮かび上がり、いつか目を覚ます。その関係は母娘では無いだろうが……まぁ姉妹のようなものだろう」

 

「おかあさんじゃなくて、しまい……?」

 

「ああ。だが覚えておけ。状況からの推測だが、お前の中に眠る圃人(レーア)は筆舌にし難い経験をしている可能性が高い。彼女の記憶を覗き、共感するのは良い。だが決してそれに呑まれるな。お前の母親は、日の当たる世界でお前が生きることを望んでいた……それだけは覚えておけ」

 

「……うん」

 

 

 薄い胸に手を当て頷く『吸血鬼侍』ちゃん。その時はまだ感じることの無かったもう1人の存在に想いを馳せているみたいです。

 

 なるほど、これが『吸血鬼侍』ちゃん誕生秘話! キャラ作の段階でここまで凝った設定を考えるなんて、やっぱり万知神さんはマニアックですねぇ……。

 

 


 

 

「へぇ……なかなか立派なお父さんじゃない」

 

「あの方が2人をお創りになられたのですね」

 

 

 日々のお祈り、礼儀作法、そして吸血の仕方……再生の続く記憶映像を観ながら女魔法使いちゃんと若草祖母さんが感心したように頷いています。死霊術師(おとうさん)の『吸血鬼侍』ちゃんに対する接し方はまごうこと無き父親のそれ、今のところ戦い方などの訓練は一切出て来ていません。

 

 ……お、丁度映像では顔が割れていないことを良いことに時折≪転移(マロール)≫の呪文でこっそり外出し、何食わぬ顔で城塞都市でお買い物をしてきた死霊術師(おとうさん)が帰って来ましたね。迷宮では自給できない食料や嗜好品と一緒に縫製に用いる素材や道具を調達し、『吸血鬼侍』ちゃん用の衣服を縫っています。ダブル吸血鬼ちゃんが大切に保管している典雅な衣装は彼のお手製だったんですねぇ。

 

 

「――こんなかんじで、ぼくはおとうさんにたくさんのことをおしえてもらってたの。たぶん、たたかいかたなんかはもっとあとにするつもりだったんじゃないかなぁ」

 

「ねぇシルマリル、シルマリルはこの時のこと覚えてるの?」

 

「んとね、まだねてたころだからちょくせつはしらないかな。このあとめをさましてからきおくのきょうゆうでおしえてもらったの。だから、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……」

 

「え? それって……」

 

 

 どういう意味?と言いかけた妖精弓手ちゃんの言葉が途中で途切れた理由。それは胸に抱く吸血鬼君主ちゃんの身体から発せられる熱と怒りを感じ取ったからでしょう。篝火の傍に立つ吸血鬼侍ちゃんの瞳にも炎の赤とは異なる攻撃色が宿っているのが見て取れます。牙をガチガチと鳴らし、抑えきれぬ怒りを滲ませた声で、吸血鬼侍ちゃんが告げるのは……。

 

 

「あのクソッタレがけいやくした()()()があらわれて、おとうさんをころしたんだ……!!」

 

 

 ――≪死の迷宮≫を()()()()、四方世界に≪死≫を蔓延させようと企み、そして"六英雄(オールスターズ)"によって滅ぼされた邪悪なる()()の登場です……!

 

 

 

 

 

 

「かの魔人の説明をする前に当時の王国の状況を説明する必要がある。少し長くなるぞ」

 

 

 変形サム8語録は止めてもらえませんかねぇ陛下……と、どうやら次は王国内部の記憶映像みたいですね。混沌の軍勢との戦を終え、王都に帰還した陛下の視点のようですが……。

 

 

「……なんか、随分と荒んで見えるんだけど」

 

「みんな……なんだか疲れているみたいです」

 

 

 ふーむ、煌びやかな現在の王都しか見たことの無い妖精弓手ちゃんが指摘していますが、たしかに街並みに何処か荒廃の気配が感じられます。道行く人々はみな肩を落とし、身体を縮こませて目立たないように努めているようです。陛下たちに向ける視線も何処か卑屈さと諦観を感じるもの。それを英雄雛娘ちゃんは『疲れている』と表現したんでしょうね。

 

 

「当時の王国の状況は控えめに言って最悪であった。圃人侍女の一件から王の精神の均衡は徐々に失われ、王国の藩屏たる貴族たちの増長は高まるばかり。民たちは奴らの目に付かぬよう息を潜めるしかなかったのだ」

 

 

 何せ軍の総司令官であった余に直接武力革命(クーデター)の必要性を訴える将軍すらいたほどであるからな、と皮肉気に笑う陛下。うーんこの元ネタに忠実な状況、当事者たちには全く笑えませんね……。

 

 

「軍部に漂う空気は流石の王も感じていたようでな。旗印になる余を疎み軍から遠ざけ、冒険者として活動するよう命じてきた。まぁそれが金剛石の騎士(K・O・D)の始まりなのだから面白いだろう?」

 

「いや全然笑えないからね? あれが原因で軍との連携が絶たれ、あの男を始末するのが遅くなったんだから……」

 

 

 はっはっはと半ばヤケクソに笑う陛下に冷静なツッコミを入れる銀髪侍女さん。こういうところを見ると2人の絆の深さを窺い知れますね。周囲からの冷ややかな視線に咳払いで誤魔化を入れ、陛下が話の続きを語り出しました。

 

 

「――そして、王の精神にトドメを刺したのは側室である伯爵夫人の出産だ」

 

「それは何故でしょう? 陛下ご本人の前で申し上げる事ご容赦頂きたいのですが、有能で野心のあった陛下を排斥するならば、代わりの後継者が必要では?」

 

 

 陛下の言葉に訝し気に問うのは令嬢剣士さん。貴族の家に生まれた彼女ならではの視線ですね。

 

 

「うむ、卿の言い分もっともである。王とその取り巻きが望んでいたのは、現状を保つ程度に優秀で、既得権益を破壊しない程度に保守的な後継者。余など以ての外であっただろう」

 

 

 もっとも、腐れ墜ちる寸前の果実を維持することなど余にも不可能であったがな、と続ける陛下。王妹殿下と女神官ちゃんに視線を向け、王の脳を破壊するきっかけをみんなに告げました……。

 

 

「王が人の道を踏み外し、外道となった最大の理由。それは『産まれてきた子が()()()()()()()()()』こと。そして貴族の間に『男子が産まれなかった理由は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』という噂が流れたことだ」

 

 

 あー……ゴブスレさんや牛飼若奥さん、それにダブル吸血鬼ちゃんたちはまったく気にしてませんでしたが、社会的に、特に権力者にとって双子は忌み嫌われることが多いです。おまけに期待していた男児が産まれず、2人とも女児であれば倍率ドン!更に倍!!ってもんです。

 

 

「地母神からの≪託宣(ハンドアウト)≫によって出産に立ち会っていた神殿長と、私が個人的に仲良くしていた仕掛人(ランナー)の協力で殺される筈だった妹を辺境に匿い、出産現場にいた全員に口止めはしたんだけど……その後侍女の1人が行方不明になってね。おそらく拷問の後に消されたんだと思う。」

 

 

 映像では今と変わらぬ姿の聖人尼僧さんが産まれたばかりの赤ちゃんを抱き、伯爵夫人さんへと最初で最後のスキンシップのために優しく受け渡しています。額に汗で髪を貼り付かせた疲労困憊の顔で赤ちゃんを受け取り、喜びと悲しみの入り混じった複雑な顔で優しく愛娘の頬を撫でる伯爵夫人さん。

 

 やがて躊躇いがちにその手は離れ、聖人尼僧さんから部屋の隅に控えていた仕掛人(ランナー)……クソマンチ師匠へと託され、赤子を抱いた彼の姿は煙のように消えていきました。部屋に残る人々の瞳には固い決意が見え、伯爵夫人さんへの強い忠誠心を感じさせるものです。

 

 

「みんな王の変わりように危機感を感じ、伯爵夫人の境遇に共感していた者ばかりだった。説得や買収に応じたとは考えにくい。彼女を責めることは出来ないよ」

 

 

 帽子で視線を遮り、そう呟く銀髪侍女さん。秘匿が破られてしまったことに対する悔悟の念か、或いは消された侍女に対する後悔か。努めて平坦な声で語る銀髪侍女さんにとって、彼女に許しを請う資格など自分には無いと思っているのかもしれません。

 

 

「――侍女から真実を暴いた何処ぞの貴族は伯爵夫人を排斥し、今一度王の寵姫を自らの家から出そうとして噂を流したのだろう。だが、それは逆効果であった。事ここに至り自らの老いと衰えと自覚した王は、()()()()()()となる選択肢を選んだのだ。即ち、()()()()()()()()()()()()()……そんな愚かな選択をな」

 

 

 記憶映像が切り替わり、映し出されたのは……おそらく潜入していた銀髪侍女さんの視点でしょうか。王宮地下深くに存在する、奈落へと通じると噂される魔穴。その縁で一心不乱に何かに祈り続ける王の姿が遠めに見えています。周囲には門閥貴族と思しき男女が同じように頭を垂れ、邪悪なる儀式を執り行っているようです。

 

 

「迫る≪死≫を恐れ、≪死≫に媚びへつらい、自らから≪死≫を遠ざけるために民を≪死≫への供物として捧げる……これを邪悪と言わずして何が邪悪であろうか。そしてその悍ましき祈りの果てに、魔人は現れたのだ」

 

 

 ――奈落の穴から浮かび上がってきたのは、黒傘を被った魔術師風の男。彼の足元に跪き祈る男女からは、一国を治める権力者としての誇りなど微塵も感じられません。

 

 

「魔人が王に持ち掛けた契約は、自らを≪死の迷宮≫の主として認めることと、定期的に養分となる冒険者を送り込み続けること。その対価として、王とその取り巻きを≪死≫を恐れる必要の無い存在、人間を餌に仮初の永遠を保つ青褪めた血(ブルーブラッド)……吸血鬼(ヴァンパイア)へと再誕させることを提案した。その後は……ご想像通り、みんな我先とばかりに己の領地の民に無理矢理罪を被せ、即席冒険者として送り出し始めたよ」

 

 

 やれやれ、といった様子で肩を竦める銀髪侍女さん。永遠の生命という誘惑から逃れられるものは少ないですが、その代価として民を供物に捧げられる精神性はまっこと恐ろしいものがあります。長命種であるが故に冷笑的に聞こえた闇人女医さんの言葉ですが、善にも悪にも傾き易いのが只人(ヒューム)の特徴。『最高の聖人も最低の悪人も只人(ヒューム)から誕生する』とは良く言ったものです。

 

 

 

 ……どうやら、映像は黒傘の男……()()()()()()()()()()()()魔人が父子のところへアンブッシュを仕掛けた場面になったみたいですね。吸血鬼侍ちゃんが話し始めたので、そちらに注目してみましょう!

 

 


 

 

「んん~なかなかの感触。≪死≫の手招きを散々跳ね除けてきただけのことはあるじゃあないか」

 

「チッ、想定よりも早い登場だな……っ!」

 

 

 父と子の教育の場に突然乱入してきた殺戮者(マローダー)。ゆらりと≪転移≫で死霊術師(おとうさん)の背後に出現し、反応の遅れた彼に躊躇いなく背後致命(アゾット)。『吸血鬼侍』ちゃんに向かって彼を蹴とばすことで刀を引き抜き、血の滴る刀身に己の舌を這わせる男の手には強大な魔力を秘めたアミュレットが握られています。辛うじて即死はしなかったようですが重要臓器を貫かれた傷は深いようで、みるみる青褪めていく死霊術師(おとうさん)の顔を見た『吸血鬼侍』ちゃんは必死に傷口を抑え止血を試みていまね。

 

 

「おとうさん、しっかり……!」

 

「いや、無駄だ。この傷では最早助からん。それよりも……」

 

 

 胸元で泣きじゃくる『吸血鬼侍』ちゃんを抱きしめる死霊術師(おとうさん)。閉ざされた視界のなか、彼と襲撃者との問答が繰り広げられているようです。何事か言葉を交わした後、彼と『吸血鬼侍』ちゃんの身体が光に包まれていきます。次に視界が明るくなった時、『吸血鬼侍』ちゃんの眼前に見えたのは、今まさに生命の灯が消えようとしている死霊術師(おとうさん)の力無い微笑みです。

 

 応急処置をしようと動こうとする彼女を制し、その両肩を握る死霊術師(おとうさん)。瀕死の状態とは思えない力強さに驚く彼女に、ゆっくりと彼が語り掛け始めました……。

 

 

「……よく聞け。()()は≪死≫の化身。この世界に遍く死を撒き散らさんとする≪死≫の代弁者だ。おそらく……私の研究室である≪死の迷宮≫を乗っ取り、生者の悉くを滅ぼす算段だろう……」

 

「いいか、"迷宮に生者を喰わせるな"。ひとたび迷宮に取り込まれれば、その生命は死を増幅する原動力となる。だが……それを防ぐ方法は既に用意した」

 

 

 血の混じった咳をしつつ、ゆっくりと語る死霊術師(おとうさん)。いつの間にかその手には、見覚えのある刀が握られていました。

 

 

「『怪物(モンスター)を喰らい、己の糧にしろ』。『人を救い、迷宮を飢えさせろ』。お前の成長に比例して迷宮は痩せ細り、ヤツの企みは遅延する。もし生命を救えなかったとしても、迷宮に呑まれる前にお前が喰らうのだ……」

 

 

 血にまみれた手で『吸血鬼侍』ちゃんのサイズに合わせて鍛えられた湾刀……『村正』をそっと握らせ、不器用に微笑む死霊術師(おとうさん)。残された僅かな時間を使い、彼女に生きるための知識を与えているのでしょう。『吸血鬼侍』ちゃんもそれを察しているのか、涙が流れるまま泣き腫らした瞳でじっと彼の言葉を胸に刻んでいます。

 

 

「お前に戦い方を教えるのを後回しにしたのは失敗だったな……ゴホッ。断言しよう、お前はこれから死ぬ。何度も、何度も、数え切れぬほど。だが、お前は何度でも蘇る。奴に奪われたアミュレット……迷宮の制御装置ですら、お前を支配することは出来ない。そう、お前を造ったからな」

 

 

 その湾刀(村正)も、お前が強大なる吸血鬼(ヴァンパイアロード)になるまでは紛失(ドロップ)しないから安心しろ、と続けてますが……あの、(エネミー)ごとにドロップ品が異なるのってそういう意味じゃ無いと思うんですけど。……っと、そろそろ彼も限界の様子。残された力を振り絞り、『吸血鬼侍』ちゃんを抱き寄せて己の首筋に彼女の顔を押し付けていますね。あ、ちなみに視聴神さんたちが見ている映像に一人称視点以外の映像が混ざっているのは、万知神さんが映像記録装置(アカシックレコーダー)から別視点の映像をチョイスしているからですのであしからず。

 

 

「では、試しにやってみろ。このままでは私も迷宮に取り込まれるのでな……」

 

「……うん、わかった」

 

 

 死霊術師(おとうさん)の言葉に従い、そっと口を付ける『吸血鬼侍』ちゃん。ゆっくりと生命の熱を失い眠るように目を瞑る彼が、最期に『吸血鬼侍』ちゃんに掛けた言葉は……。

 

 

 

 

 

 

「……ずっと、お前の()()を見守っているよ」

 

「うん。ありがとう、おとうさん。……ばいばい」

 

 


 

 

「それで、おとうさんにいわれたようにつよくなろうとしたんだけど……」

 

 

 吸血鬼侍ちゃんの苦笑まじりの声が響く祭祀場跡。でも事情を知る何人か以外の視線は流れている映像に釘付けです。みんながあんぐりと口を開けてまま見ているその内容は……。

 

 

 

 

 

 

 

「ンンーーーーーーーーーー!?」(スライムに飲み込まれ溶解死)

 

「ちょ、やめ、ヤメローーー!?」(コボルトに囲んで棒で叩かれミンチ)

 

「アッーーーーーーーーーー!?」(落とし穴+槍衾のコンボから抜け出せず自決)

 

「ぷぎゅっ」(吊り天井に潰されてぺっちゃんこ)

 

「おなかすいてうごけない……」(満腹度ゼロで餓死)

 

 

 

 

 

 

 ――16分割&7.2倍速で上映される、『吸血鬼侍』ちゃんの死亡シーン集でした……。

 

 

 

「いや、いくらなんでも死に過ぎでしょ……」

 

 その死亡理由の種類と数の多さに思わず感想を口に出す妖精弓手ちゃん。時折グロシーンやR18なのも混ざっていますが、そんなの全然気にならないくらいのYOU DIED数に呆れかえっているみたいです。

 

 

「だって、おとうさんがおしえてくれたなかにかたなのつかいかたなんてなかったんだもん」

 

「いのらぬもののサムライやあのひと("君")からちゅーちゅーするまで、にぎりかたもわからなかったんだもん」

 

 

 ふふん!と自慢げに薄い胸を張るダブル吸血鬼ちゃん。それは万知神さ……もとい、死霊術師(おとうさん)の落ち度かもしれませんねぇ。映像では度々ソウルをロストしながらも少しずつ戦い方を覚えている『吸血鬼侍』ちゃんの何処か微笑ましい成長記録が続いています。

 

 

「それで、ちょっとずつつよくなって、めいきゅうがほんのすこしだけどちからをうしなってきて……!」

 

「めいきゅうでしにかけているひとをたすけて、いりぐちまでおくりとどけられるようになったころに……!」

 

 

 分割画面だった記憶映像を元に戻し、停止させた2人。お嫁さんの胸元から抜け出し、そこに映る人物の元へと2人揃って駆けて行きます。砲弾の如く突っ込んできたダブル吸血鬼ちゃんの勢いを難なく殺し、ふわりと抱きとめたその人は……。

 

 

 

「――はい、私が『彼女』と出逢いました」

 

 

 細身のスーツに鍛え上げた身体を包み、愛らしく頬擦りしてくる2人に対し怜悧な美貌を綻ばせて微笑む大人の女性、査察官さんのエントリーです! これはまた一波乱ありそうな予感!!

 

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 


 

 

 いや~、なかなか良いパパっぷりでしたねぇ万知神さん! でもちょぉぉぉぉっと盛り過ぎじゃありません?

 

 ほら見て下さい、アレな場面を編集で誤魔化してるって≪死≫さんが猛抗議してますよ?

 

 ほんへ(本編)では実況神さんが綺麗にスルーしてくれてましたけど、黒傘とパパの問答だって本当は……。

 

 ちょっ、レギュレーション違反はいかんでしょ?

「まったく、禁忌に手を染めてご満悦かね?」

  うっさい、お前らが先に好き勝手始めたんだろうが!

「どの口がほざく、天秤を傾けたのは誰だか忘れたか!」

 

  ……とか、

 

   キャラクターデータベースがお前らのチラシの裏書きで圧迫されてるんだよ、判る?

「密かにこのような場所を設けるなどと……それほどまでに四方世界に介入したいと?」

 推しの子の設定はどれだけ盛っても良い、古事記にそう書かれている

「見解の相違だな。私はこの子たちの成長を見守りたいだけだ」

 

 ……って感じだったじゃないですか!

 

 ほら、≪幻想≫さんも苦笑いしてますよ? いい加減に見栄を張るの止めて、みんなの推しの子を応援しません? そのほうがきっと楽しいですから!

 

 

 





 セッションの終わりが見えてこないので失踪します。


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