ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 今月中にその16を終わらせたいので初投稿です。




セッションその16-4

 

 前回、査察官さんがエントリーしてきたところから再開です。

 

 子猫がじゃれつくように甘えてくるダブル吸血鬼ちゃんを膝上に乗せ、祭祀場跡の階段に腰掛けた査察官さん。優しい手つきで2人の頭を撫でる姿は受付嬢さんや監督官さんが見たら腰を抜かすこと間違いなしです。銀髪侍女さんが記憶映像を再開させたのを見て、ゆっくりと口を開きました。

 

 

「――私が初めて彼女と出逢ったのは≪死の迷宮≫の地下四階、地下五階への階段が見つからず攻略が停滞していた時期の事です」

 

 

 査察官さんの声をバックに再生される迷宮探索の映像。白い輪郭線(ワイヤーフレーム)がぼんやりと浮かぶ通路を冒険者たちが進んでいますね。飛び出してくる徘徊する怪物(ワンダリングモンスター)を蹴散らしながら何か地下五階への手掛かりはないかと床面や壁を探索する光景が続いています。

 

 

「この時、殆どの冒険者は≪死の迷宮≫の攻略を諦めていました。宿の窓から見えるのは毎日のように送られてくる即席冒険者たち。迷宮を軽んじた結果、最初の遭遇(エンカウント)で半数が死に、残りの半数も命からがら逃げかえってくる始末。間近で感じた死の恐怖に怯え、二度と迷宮に足を踏み入れず城塞都市のゴミ漁りや売春婦に身をやつす者も多かったのです。そんな彼らを嘲笑い、上層でそこそこの稼ぎを得て散財する暮らしを繰り返す……真剣に攻略に臨んでいた一党(パーティ)は片手で数えるほどしかおりませんでした」

 

 

 ああ、原作やその元ネタの映像作品(OVA版)でもそんな感じでしたねぇ。怪物を倒して手に入る財貨は庶民の年収の何倍もあり、それを目当てに集まった商人たちによって城塞都市は歪な経済構造になっていたとかなんとか。

 

 初心者からの需要が高く、死体から拾って来たものが平気で売られている数打ちの長剣(ロングソード)の価格が外界の半額なのに対し、治癒の水薬(ヒールポーション)の価格は驚きの50倍! 冒険者たちの『いのちだいじに』の精神は理解出来ますし、輸送中に瓶が割れたりする恐れがありそれが値段に反映されるのも判りますが……流石にちょっとボッタクリ商店過ぎでは???

 

 

「私の所属していた一党(パーティ)は後者でした。陛下……もとい、金剛石の騎士(K・O・D)の率いる一党(パーティ)が探索を終えた後も、隠された落とし穴(ピット)や階層飛ばしの転移の罠(テレポーター)がないかを探し続けていたのです」

 

 

 うむむ、地下四階から先へ進むには地下一階の昇降機(エレベーター)を使う必要がありますが、乗るためには暗黒領域(ダークゾーン)を通り抜けなければいけません。進んだ誰もが戻ってこないと噂されるエリアに踏み込む前に他の場所を虱潰しに調べるのは間違いではないでしょう。……おや、映像が進むにつれて査察官さんの腕にかかる力が強くなっているみたいですね。たわわに顔を押し付けられる形になったダブル吸血鬼ちゃんが幸せそうな顔になってます。

 

 

「……ですが、私達も大多数の冒険者のように油断していました。迷宮とは決して心を許して良い相手では無いのですから」

 

 


 

 

「ガッ……!?」

 

「――ッ、しまっ……!?」

 

 

 査察官さんの呟きと同時、映像が激しく乱れています! 左右に大きく揺れる映像が捉えたのは喉元から夥しい血を流して崩れ落ちる僧侶と思しき男性と、その背後に立つ虎面の人影……あれは間違いなくニンジャですね!

 

 アンブッシュを仕掛けてきた3体のニンジャは迷宮の壁面を足場に高速で立体的に動き回り、呪文で迎撃しようとしていた女魔術師を巧みに攪乱。そのうちの1体が狙いを定められず視線を泳がせる彼女の背後を取り、その口を塞ぎながら短刀で喉元を掻っ切りました! ヒューヒューと空気を漏らす彼女を打ち捨てた後、短刀を抜き放った盗賊(シーフ)を次なる獲物に定め、駆け寄ってきた戦士と2人同時に相手取っています。

 

 残りの2体は査察官さんを脅威であると認識したようです。1体が前に立ち、その影に隠れるようにもう1体が東方の飛具(クナイダート)を構え相対している状態ですね。査察官さんがジリジリと動くのに合わせ背後の後衛に対する射線を自分の身体で塞いでいるあたり、相当なカラテの持ち主でしょう。

 

 

「不意を突かれなければ……というのは()()()()の話。2体を相手に防戦一方であった私の前で盗賊が倒され、残った戦士も敵と相打ちになってしまいました。崩れ落ちる2人を見て動揺し隙だらけの私に、後方の1体が毒を縫った飛具を投擲してきたのです……」

 

 

「ぐあぁ……!?」

 

 

 映像に迫る粘性の高い液体を塗布された東方の飛具(クナイダート)。視界いっぱいに広がったそれは映像の右半分を紅に染め、残る左半分も涙によって滲んでいます。片膝を付いた姿勢なのでしょうか、先程よりも低い視点から見える敵は弄ぶように飛具を回し、近付くことなく彼女を失血死、あるいは毒による衰弱死に追い込もうとしてるようです。

 

 

「まだ……まだこんな所で死ぬわけにはいかない。……来い、戦ってやる!」

 

 

 映像越しに響く査察官さんの咆哮。重傷を負っているとは思えぬその迫力に怖気付いたのか、ジリジリ後退し飛具を取り出す2体のニンジャ。指の間に挟んだ合計16本の毒刃を彼女に向かって構えた瞬間……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いただきます」

 

「!? ――――――ッ!?!?」

 

 

 ――通路の反対側から飛翔してきた小さな影が1体を翼で薙ぎ払って壁面に叩き付け、浮足立つもう1体の喉元にその牙を突き立てました!!

 

 

 喰らい付かれた瞬間に恐るべき膂力で頸椎を圧し折られ、力無く崩れ落ちるニンジャ。仰向けに倒れたその身体に馬乗りとなり、喉を鳴らしながら血と魂を喰らう『吸血鬼侍』ちゃんを呆然と眺めていた査察官さんですが、仲間が無残に貪り食われているのを見た残りの1体が震える手で飛具を構える姿に警戒の声を上げています。

 

 

「――危ない! 後ろ……ッ!?」

 

 

 しかし警戒を促す彼女の声は一瞬遅く、音も無く飛来し次々と『吸血鬼侍』ちゃんの小さな身体に突き刺さっていく毒に塗れた恐るべき飛具。その隙だらけな姿に虎面の奥で嘲りの声を上げる暗殺者でしたが……。

 

 

「……ぷぁ。もう、しょくじのじゃまをするのはマナーいはん!」

 

 

 その殆どが皮一枚貫き通すことが出来ずパラパラと床に墜ちる飛具に虎面のニンジャは声にならない悲鳴を上げ、一目散に逃走を図りました! 勝ち目が無いと見るや即撤退する判断は英断と呼んで良いものですが……残念ながら相手が悪過ぎました。

 

 

「えっと、こうかな……イヤーッ!」

 

「グワーッ!?」

 

 跳躍したタイミングで力任せに投げつけられた自分の飛具が直撃、着弾の勢いのまま迷宮の壁面に縫い留められた姿はまさにモッズ=サクリファイス(百舌の早贄)! 脱出しようと無様に藻掻くその背に近付く、おなかを空かせた恐ろしい吸血鬼(ヴァンパイア)……!! 恋人同士がじゃれ合う如くニンジャの首元へとその小さな手を伸ばし……。

 

 

「そのぎじゅつとちしき、ぼくがもらうね?」

 

「アイエエエ……」

 

 


 

 

「――2体の忍者を吸い尽くした後、彼女は私へと近付いて来たのです。口元を紅に染めた姿を見て、私は『いったいどれ程この吸血鬼(ヴァンパイア)は飢えているのだろう?』という場にそぐわぬ疑問しか浮かんできませんでした。そして、自分もすぐに彼らと同じ最期を迎えるのだと。ですが……」

 

 

 2人を撫でる手を止め、そっと自らの右眼を抑える査察官さん。若干顰められた顔は当時の痛みを思い出しているからでしょうか。映像では『吸血鬼侍』ちゃんがゆっくりと彼女に近付く姿が映し出されていますね。手を伸ばせば届くような距離まで近付いたところで『吸血鬼侍』ちゃんが床に座り込んでいると思われる査察官さんに目線を合わせるようにしゃがみ込み……。

 

 

「――ごめんなさい、もっとはやくこられれば、みんなをたすけられたかもしれないのに……」

 

「……は?」

 

 

 ……うん、まぁそんな反応になりますよねぇ。どう見てもヤバい級怪物(モンスター)吸血鬼(ヴァンパイア)がションボリした顔で頭を下げ、あまつさえ目に涙を浮かべてるんですから。僅かに視界の中心から外れた『吸血鬼侍』ちゃんの見ている場所は、たぶん傷付いた査察官さんの右眼ですね。この時はまだ思い出してはいないのでしょうが、かつて凄惨な責め苦の果てに潰された記憶が素体である圃人侍女ちゃんの身体に刻まれていたのかもしれません……。

 

 

「あのね……ぼく、どくとかびょうきにならないから≪げどく(キュア)≫のきせきをおぼえてないの。このままだとみぎめからどくがまわっちゃいそうなんだけど、だれかげどくやく(アンチドーテ)をもっていなかったですか?」

 

 

「えぇと……僧侶の彼が持っていると思いますが、転倒の衝撃で無事かどうか……」

 

 

 戸惑いまじりな査察官さんの言葉に急いで僧侶の荷物を改める『吸血鬼侍』ちゃん。ですが残念ながら解毒薬の瓶は割れてしまっていたようです。粉々になった瓶の欠片を手にトボトボと戻って来た『吸血鬼侍』ちゃんでしたが、何か決意したように査察官さんに向き直りました。

 

 

「このままだと、いりぐちにもどるまでもたないかもしれないの。でも、どくにおかされたみぎめをじょきょして、しゅうへんをきれいにすればもしかしたら……!」

 

 


 

 

「まさか、人を餌にする吸血鬼(ヴァンパイア)にそんなことを言われるとは想像も出来ませんでした。ですが、このまま何も為せずに死ぬよりは生き残る目に賭けるべきだとあの時の私は考えたのです」

 

 

 真剣な眼差しで訴えてくる映像の中の『吸血鬼侍』ちゃんを懐かしむように眺める査察官さん。躊躇うように下がっていた視点が真っすぐ『吸血鬼侍』ちゃんに向けられ、決断的な査察官さんの声が祭祀場跡に響きます……。

 

 


 

 

「――判りました。()()()()()()()()()()

 

「! いいの?」

 

「はい、このまま確実な死を待つよりは、貴女という不確定要素に賭けるべきと判断しました」

 

 

 驚きを浮かべる『吸血鬼侍』ちゃんの頭に手を伸ばす査察官さん。ゆっくりと頭を撫でる手付きは映像を観ている彼女と同じものです。気持ち良さそうに眼を瞑っていた『吸血鬼侍』ちゃんでしたが、まずは治療が先決と若干名残惜しそうではありますが頭に乗った手を抑え、そっと外しました。僧侶の鞄を漁った際に見つけた清潔な布を器用に裂いて包帯を作り、ちょっと持っててねと査察官さんに握らせていますね。

 

 

「それじゃあ、まずはいたみをやわらげるためにからだをまひさせるね。ちょっとだけチクっとするけど、がまんできる?」

 

「ふふっ、問題ありません。私は()()()()()()()()()()。どうぞご遠慮なく」

 

 


 

 

「あ、私この後どうなるか判っちゃった」

 

「あら奇遇ね、私もよ」

 

 

 映像を観ながらボソリと呟く妖精弓手ちゃん。女魔法使いちゃんも隣で頷いています。半目の2人に睨まれたダブル吸血鬼ちゃんがヘタクソな口笛で誤魔化そうとしてますが……駄目みたいですね。

 

 映像では麻痺噛みつきの効果が出てきたのか、視界がユラユラと揺れ始めました。ガクガクと震え始めた2人に苦笑しつつ、査察官さんが当時の心境を語ってくれています。

 

 

「――ええ、はい。私もてっきり右眼を抉り出されるものだとばかり。彼女にその外見からは想像出来ないほどの力で頭部を固定された時は、せめて苦痛に悶える情けない姿は晒すまいと固く決意したものです。しかし、実際の治療は私の創造を遥かに超えるものでした……」

 

 

 

 

 

 

「まさか、あれ程までに激しく身体の内側を蹂躙されるなんて……ね?」

 

 


 

 

「――んむっ!?」

 

 

 査察官さんが暴れないよう両頬を挟むように添えられた『吸血鬼侍』ちゃんの小さな両手。その左手の親指がそっと査察官さんの口に挿入された時点で彼女の決意はあっけなく崩壊しました。

 

 舌を噛まぬよう咥えさせられたソレは根元近くまで入り込み、舌だけにとどまらず敏感な内頬の粘膜も刺激していきます。本来であれば異物を感知し痛覚として警告を発するべき神経は『吸血鬼侍』ちゃんの噛みつきの作用で痛覚を快感と誤認。口腔を保護するために唾液が次々と分泌され、溢れた一部が口の端から糸を引く様に零れ落ちていますね。

 

 十分に彼女が麻痺しているのを見た『吸血鬼侍』ちゃんは顔を抑えていた右手のロックを外し、リラックスさせるように査察官さんの耳裏やうなじをマッサージ。身体から力が抜けたのを確認した後、次なる段階へと治療を進めます。

 

 

「ん……れる……っ」

 

「ふっ!? ふむぅ……っ!?」

 

 

 血溜りと化した査察官さんの右眼に舌を近付け、表面の血を除去。露わになった潰れた眼球と下瞼の境目に、ゆっくりと舌先を差し込んでいきます……。

 

 

「ちゅ……ちゅる……じゅるぅ……」

 

「――!? ふぁっ……!?」

 

 

 眼窩脂肪と下直筋の狭い隙間を奥に向かって進んでいくピンク色の蛇。同時に優しく吸引が行われ、毒に侵された眼球が体外……『吸血鬼侍』ちゃんの口内へと引き摺り出されていきます。眼球を支えていた筋組織が牙によってプツリ、プツリと切断されるたび跳ね上がりそうになる査察官さんの身体を、上半身に馬乗りになった『吸血鬼侍』ちゃんがロデオのように乗りこなしていますね。

 

 

「じゅるるぅぅぅ……ん、きれいになった」

 

「はっ……はっ……はぁ……。こ、これで終わりですか……?」

 

 眼球の摘出を終え、眼窩に溜まった血を残らず舐め取る『吸血鬼侍』ちゃん。舌の抜き挿しを繰り返し内側を綺麗にしたところでそっと口を離し、何度も上り詰めて息も絶え絶えといった様子の査察官さんとガチ恋距離で向き合っています。その口元から査察官さんの顔に生まれた窪みへと伸びる白いものは……もしかして視神経でしょうか? 荒い呼吸を繰り返し縋るような目で終わりの言葉を求めている査察官さんに対し、小さく首を横に振り、熱を帯び紅潮した頬を優しく撫でながらトドメとなる一言を放ちました……。

 

 

「……いままでがんばってたえてくれてありがとう。あとは、がんきゅうとからだをつないでいるせんをきればおしまい。ただ、これをきるとき、すっごいしげきをかんじちゃうとおもうの。いままでとはくらべものにならないくらい」

 

 

「ウソでしょ……?」

 

 

 散々味わってきた以上の刺激と言われ、上気した顔のままプルプルと震える査察官さん。ですが「でも、このままだと≪小癒(ヒール)≫がかけられないの」と言われ、覚悟を決めたようです。ギュッと残った左目を瞑り、耐衝撃防御を整えた査察官さんの決意に応えるように『吸血鬼侍』ちゃんは再びゆっくりとその艶めかしい舌を右の眼窩へと挿入していきます。行為の果てに誕生した空洞の最奥、舌先に骨の硬さを感じながら()()()()()をゆっくりと絡めとり……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ぷつん

 

 

 

「――――――――――――ッ」

 

 

 

 ……声にならない査察官さんの声を最後に、映像は途切れてしまいました。

 

 


 

 

「――シルマリル、ヘルルイン」

 

「「はい」」

 

「正座」

 

「「……はい」」

 

 

 グロテスクな映像の筈なのに何故か違う感想しか出てこなかった査察官さんの記憶映像。王妹殿下と女神官ちゃんや英雄雛娘ちゃんなど初心(うぶ)な女の子の脳を破壊するのに十分過ぎる威力のそれによって過去回想はまたしても中断。現在ダブル吸血鬼ちゃんがみんなの前で正座させられちゃってますね。

 

 熱暴走してしまった英雄雛娘ちゃんは剣の乙女ちゃんのひんやりたわわで絶賛冷却中。妖術師さんは見聞きした内容を一言一句逃さぬ勢いでパピルス(メモ紙)に書きなぐってますし、査察官さんは女騎士さんと女将軍さん、魔女パイセンの奥様戦隊に包囲され対応に追われているようです。

 

 

「それで、とびきり凄いのをお見舞いされた後はどうなったんだ?」

 

「あのおちびちゃんのことだ、目覚めた時にその立派な胸部装甲に顔を埋めて一緒に寝ていたくらいはありそうだが……」

 

「むしろ、堂々、と、ちゅー、ちゅー……してたり?」

 

 

 うーんこの信頼っぷり。圧の強い3人に査察官さんが迫られてますけど、実際のところどんな感じだったんでしょう?

 

 

「ええと……。目が覚めた時、私は迷宮の地下一階……暗黒領域(ダークゾーン)すぐ近くに寝かされていました。右眼を覆うように包帯が巻かれ、手には仲間たちの冒険者認識票。枕代わりの頭陀袋には驚くほどの金貨や宝石。そして、ここに一枚の紙片(ハンドアウト)が挟まれていたのです」

 

 

 当時の状況を語る査察官さんの示す場所はその豊かな胸の谷間。妖精弓手ちゃんが凄い顔で犯人2人を見ている中で当時の映像が再生されています。右半分が暗い視界の中、上質な羊皮紙に流麗な筆致でしたためられた内容は……。

 

 

 

 

 

   いま しのめいきゅうはまじんにのっとられています   

 

   そいつは しをせかいじゅうにばらまくために ほんとうのあるじをころしました   

 

   どうかこのことをこんごうせきのきしにつたえてください   

 

   そえているかみのけとあわせてぼくのすがたをいえば   

 

   たぶんわかってくれるとおもいます   

 

   ふくろのなかみは そのいらいりょうです   

 

 

 

   ぼくはモンスターがめいきゅうからあふれないようにかりつづけているので   

 

   ここからでることができません   

 

   ダークゾーンのおく しょうこうきでおりたさきで まっています   

 

 

 

 

 

   みぎめをもとにもどしてあげられなくてごめんなさい   

 

   もっともっとつよくなって いつかかならずなおしにいきますので   

 

   どうかそれまでげんきでいてください   

 

 

 

 

 

 ふむふむ、折り畳まれた手紙には一房の金髪が挟み込まれていますね。金糸のような髪は自らの素材となった圃人侍女ちゃんと同じ色、それを以て自らの証明とするつもりだったんでしょうね。

 

 

「私は急ぎ地上へと帰還し、金剛石の騎士(K・O・D)一党(パーティ)を探しました。しかし、彼らは折悪く王都へ戻っており、城塞都市から離れていたのです」

 

「――同時期、王都では喰屍鬼(グール)吸血鬼(ヴァンパイア)が跳梁跋扈する魔都となっていたのだ。魔人が≪死の迷宮≫の主から奪い取った吸血鬼化の禁術を民を材料に実験していたものだが、軍を投入するわけにもいかなくてな。太陽神や地母神の神殿と協力して、夜な夜なアンデッドを狩って回っていたのだ」

 

 

 ウンザリといった様子で当時を思い返している陛下。まぁ王と不仲が噂される王子が軍を率いて王都に乗り込んだりしたら……傍から見ればクーデターにしか見えないでしょうねぇ。陛下にその気は(まだ)無くても、内乱勃発の引き金になりかねません。だから冒険者としての身分で動き、軍では無く神殿に協力を依頼したんですね。

 

 

「駅馬を何頭も乗り潰しながら駆けつけてきた査察官殿の言葉に余も己の耳を疑ったものよ。伝え聞いた吸血鬼(ヴァンパイア)の姿は疑いようも無く侍女のそれ。だが、王都の状況を鑑みれば彼女もまた魔人の走狗の可能性があったのでな……すぐには判断出来なかった」

 

 

 たしかに。魔人が吸血鬼(ヴァンパイア)を生み出している以上、『吸血鬼侍』ちゃんもその支配下にあると考えるのは自然です。王都から陛下を引き剥がす罠ということも十分にあり得る話ですね。

 

 

「だが……粗方吸血鬼を片付けた後、合流した一党(パーティ)の魔術師が同封されていた髪の毛を用いて占いを行ったところ……なんと吸血鬼の象徴である『月』と、アンデッドを滅ぼし夜明けを告げる『太陽』。()()()()()()()()()()()()()()()

 

「占いってのは結構馬鹿にできなくってね、特に彼のものは。世界の持つ情報に接続(アクセス)するという点では、万知神の奇跡に通じるものがあるかもね」

 

 

 吸血鬼(ヴァンパイア)の身体の素材である圃人侍女ちゃん(太陽)と、その身体を動かす『吸血鬼侍』ちゃん()。あるいは魂の一部として融合していた赤ちゃんが『太陽』の暗示だったのでしょうか。いずれにしても、後に同族殺し(キンスレイヤー)吸血鬼希少種(デイライトウォーカー)として()()する未来はこの時点で暗示されていたんですねぇ。

 

 

「王都を神殿や他の冒険者に任せ、急ぎ城塞都市へ向かったのだが……残念ながら地下九階への一番乗りは逃してしまったのだ」

 

 

 おや、なんだかちょっぴり悔しそうに呟いている陛下。彼の視線の先を辿る一行の目に飛び込んできたのは……映像を観て当時の記憶に引っ張られてしまったのでしょうか、エロエロ大司教形態(モード)でもロリロリ省エネ仕様でもなく、女司教……口さがない連中が『鑑定』などという蔑称で呼んでいた≪死の迷宮≫に挑んでいた頃の姿をしている剣の乙女ちゃんです。

 

 眼帯こそ無いものの現在とはかけ離れたつるぺたな胸に手を当てて映像に見入っていた彼女ですが、みんなの視線に気付き慌てて向き直りました。どうやら陛下の様子を見て何の話題だったかを察したようで、当時の状況について話し始めました……。

 

 

「へい……金剛石の騎士(K・O・D)一党(パーティ)から地下五階へ続く階段が無いことを聞いた後、私たちも改めて他の階を探索しておりました。その最中で、ある噂を聞いたのです。『一階の暗黒領域(ダークゾーン)へと消えていく小さな人影』。そして『即席冒険者たちが全滅の危機に瀕した際、単独(ソロ)で活動している圃人(レーア)らしき少女が現れ、彼らの目の前で敵を駆逐していった』というものでした」

 

 

 ふむ、わざわざ昇降機(エレベーター)を使っていたとなるとまだ≪転移(マロール)≫は使えなかったんでしょうか? あるいは呪文の節約のためかもしれませんね……っと、そういえば地下十階は≪転移(マロール)≫での移動が禁じられていましたっけ。

 

 

暗黒領域(ダークゾーン)を抜けた先の昇降機(エレベーター)に乗り、地下四階の未探索区画へと至った私たち。進む道に敵の姿は無く、途中の部屋には『このさきでまっています』という書置きと共に青いリボンが置かれているだけでした。最奥にあったもう一基の昇降機(エレベーター)を乗り継いで未踏の地である地下九階へと辿り着いたのですが……探索を開始した直後に頭目(リーダー)(E8-N2)を踏み抜き、全員が最下層である地下十階に落ちた時は『わたしのぼうけんはこれでおわってしまう』のかと思いましたの……」

 

 

 胸元のブルーリボンを手で弄びながら何処か遠い目で語る剣の乙女ちゃん。"君"はおっぱい星人なだけで無く、ドジっ子属性まで持っていたのか……。

 

 万知神さんに確認をとったところ、迷宮に取り込まれた者たちの成れの果て(マーフィーズゴースト)でレベル上げを行っている際、魔人に唆されてやって来た女司教ちゃんを放置していた4人組冒険者と遭遇。話し合いの余地無く襲い掛かってきた彼らを返り討ちにし、美味しく頂いちゃったんだとか。

 

 先生ではなかなかレベルアップしなくなったところで外道冒険者という非常にうまあじな相手を知った『吸血鬼侍』ちゃん。死霊術師(おとうさん)から言われていたように、祈らぬ者(ノンプレイヤー)に堕した者や問答無用で襲い掛かってくる冒険者、迷宮内で死にたてホヤホヤな死体なんかを迷宮に喰われるより先にちゅーちゅーしてしまうことを学んだみたいです。

 

 なので4人組冒険者は"君"の一党(パーティ)と女司教ちゃんを賭けて争うことも無く、モンスター配備センターのガーディアン役には採用されなかったとのこと。魔人が用意していたガーディアンは配置するそばから『吸血鬼侍』ちゃんにちゅーちゅーされ、どんどん迷宮のリソースが削られてしまったために途中から置かれなくなってしまったそうです。

 

 

「敵襲や罠を警戒しつつ迷宮を進んでいた私たち。ですがこの階もまた敵の姿は無く、不気味な静謐を保っていました。そして何者とも遭遇しないまま幾つもの転移床(ワープポータル)を通り、最奥の玄室に辿り着いた時……私たちはその理由を知ったのです」

 

 

 剣の乙女ちゃんが指差す先では、"不在"(プレート)が掛かっている扉を蹴破り、"君"と女戦士さんを先頭に一党(パーティ)が雪崩をうって薄暗い玄室へ飛び込んでいく映像が流れて始めました。

 

 薄ぼんやりとした輪郭線(ワイヤーフレーム)の部屋。むせかえるような血臭に従姉さんが口元を覆い、築かれた屍山血河に半森人の斥候が顔を引き攣らせる中で、女司教ちゃんが一番最初に『吸血鬼侍』ちゃんの存在に気付きました。そしてそこから続くのは、総大主教(グランドビショップ)が引き起こした騒動の際に剣の乙女ちゃんが語ってくれた記憶そのままの光景です。

 

 

 上位魔神(グレーターデーモン)とんがり帽子(ハタモト)、ドラゴンゾンビなどの死体に囲まれた状態で、おなかいっぱいでウトウトしている場違いすぎるちいさな人影。温かな血の通う生命体の接近に吸血鬼(ヴァンパイア)の鋭敏な知覚が反応し、うっすらとその目を開けました。

 

 てっきり査察官さんにお願いしていた金剛石の騎士(陛下)が来たんだと勘違いしたんですね。武器を構え警戒する冒険者たちを見て驚きのあまり硬直している『吸血鬼侍』ちゃん。

 

 ですが、今まで返り討ちにしてきた連中とは違い、問答無用で斬りかかったりしない彼らに対話の可能性を見出したのでしょう。ぴょんと座っていた魔神の死体から飛び降りると、隊列の真ん中で松明を掲げている女性、女司教ちゃんへゆっくりと近寄っていき……。

 

 

 

 

 

 

「――ねぇ、おひさまってどんないろをしているの? ランタンのひかりよりもあかるいの? たいまつのほのおよりもあったかいの? ……ぼくをころすまえに、おしえてほしいな!」

 

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 





 『吸血鬼侍』ちゃんを遍在させる理由を考えるので失踪します。


 ご感想いつもありがとうございます。バラまいてあるネタや伏線らしきものに反応して頂けると悶えて喜ぶので、一言頂けると幸いです。

 お気に入り登録もありがとうございます。UAと並び一番判り易い皆様に読んで貰えているという数値ですので、まだの方もよろしければ登録、評価して頂けると嬉しいです。


 お読みいただきありがとうございました。

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