ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 やっぱり7月中には終わらなかったので初投稿です。


 皆様にお読みいただき、UAも170000まで伸びました。

 あとちょっとだけダブル吸血鬼ちゃんのお話しは続きますので、お付き合い頂ければ幸いです(まだまだ続くフラグ)。




セッションその16-5

 

 うんうん、互いに愛し合う2人が初めて出逢った場面(シーン)、何度観ても初々しさに溢れてますねぇ!

 

 ……にしてもこの時の『吸血鬼侍』ちゃん、なんで真っ先に女司教ちゃんに向かっていったんでしょう?

 

 当時から素晴らしいたわわをお持ちだった従姉ちゃんや女戦士さんと違い、まだつるぺったんだった女神官ちゃん。

 

 この後、≪死≫さんの化身(アバター)との戦いの最中に唱えた≪降神(コールゴッド)≫によって至高神さんとの繋がりが深まり、『このおっぱいで乙女は無理でしょ』と言わんばかりのわがままボディへと成長したわけですが……。

 

 ――ほほう、女心に精通した地母神さん曰く、ゴブリンによって深く心身を傷付けられていた女司教ちゃんに運命的な何かを感じ、寄り添ってあげたいと考えたからだとか。この頃からスケコマシの兆候が見え隠れしてたんですねぇ。

 

 あ、ちなみに≪六英雄(オールスターズ)≫の頭目(リーダー)であるおっぱい星人()による格付けチェックでは問答無用の『映す価値ナシ』だったみたいです『吸血鬼侍』ちゃん。胸部を一瞥して残念そうに首を横に振り、それを見た従姉ちゃんに鉄拳制裁されてました。

 

 

 ……っと、そろそろ金剛石の騎士(K・O・D)一党(パーティ)が到着する場面(シーン)ですね! 可愛いN子さんによる迫真の演技にも是非ご注目下さい!!

 

 


 

 

 前回、運命の出逢いを果たしたところから再開です。

 

 無防備に女司教ちゃんへと近付き邪気の無い笑みを浮かべる『吸血鬼侍』ちゃんに≪六英雄(オールスターズ)≫もどう接して良いか判断出来ず、2人を囲むような陣形で固まってしまってますね。躊躇いなしに松明の火へと手を伸ばす小さな怪物を慌てて制止する女司教ちゃんの映像に、祭祀場跡で観ているみんなの間に気の抜けた空気が漂い始めました。

 

 

「なんと言いますか、とても『子どもらしい』反応をしていますわね」

 

「外見は母親譲りですが、中身はよちよち歩きの幼児とどっこいなのです。製作者(生みの親)によって必要な知識や一般常識は焼き付けられていても、実物を見聞きする機会は無かったはずなのです」

 

 

 感想を交わす令嬢剣士さんと賢者ちゃんの視線の先では、瞳がしいたけになっている『吸血鬼侍』ちゃんが蟲人僧侶さんによじ登って硬い外殻をペタペタ触ったり、半森人の斥候さんの耳をツンツンしたりと好奇心の赴くままにはしゃぎまわる姿が。それぞれ趣の異なる女性3人の胸部を見比べ、興味深そうに頬擦りしているのを見た頭目("君")が無言で血涙を流しているのが印象的です。

 

 

 ……お、どうやら一頻り好き勝手して満足した『吸血鬼侍』ちゃんが、自分のことや死霊術師(おとうさん)のこと、それに現在の≪死の迷宮≫などについて話し始めたみたいです。身振り手振りを交えての拙い言葉遣いから放たれる闇深案件と糞みたいな王国の腐敗、そして全ての元凶である魔人の存在を聞いた冒険者たちは全員揃って現場猫顔になっちゃってますねぇ……。

 

 

「――ちゅうことはアレか。この国のお偉いサンたちは、手前ェの有り金ぜぇんぶ纏めて叶うかも判らん永遠の命につぎ込みおったんか!?」

 

「自分の資産だけ溶かすなら自業自得だが、他人の懐に手を突っ込んで心臓まで引っこ抜くのは公正な取引とは言えんな」

 

 

 金で苦労してきた半森人の斥候さんのキレ芸に交易神の信徒らしい言い回しで応じる蟲人僧侶さん。国民、領民は国や貴族の管理下にあるとはいえ、その生命まで勝手に賭けられては当人たちは堪ったものではありません。税を代償に彼らの庇護下にある人々ですから、生命の保証が無くなれば土地を捨てて逃亡待ったなしです。……と言っても、当時の王国に安住の地など無かったわけですが。

 

 

「……それで、あなたはどうしたいのですか? 魔人の支配から逃れているとはいえ、あなたは生者を餌とする吸血鬼(ヴァンパイア)。こうして会話が成り立っていること自体奇跡的なものでしょう」

 

 

 胸元に抱えている天秤剣を握り直し、静かに尋ねる女司教ちゃん。彼女の立場からすれば、生者を憎むアンデッドは在るべき場所に還すのが当然ですからね。ですが問答無用で襲われたのならばともかく、こうやって会話が出来る相手を無理矢理浄化するのには抵抗があるみたいです。そんな彼女の葛藤を感じ取ってか、『吸血鬼侍』ちゃんがゆっくりと口を開きました。

 

 

「――あのね、いまぼくのなかにはたくさんのたましい(ソウル)がしまわれてるの。めいきゅうでしんだぼうけんしゃ(PC)のもの、めいきゅうにとりこまれたいのらぬものたち(NPC)のもの。かれらのたましいをつかってしょうかんされたモンスターのものもたくさん。それをあるべきばしょにかえすのは、ぼくもさんせいなの」

 

「でも、いまここでかいほうするとまためいきゅうにとりこまれちゃう。そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。みんなのたましいをかいほうするには、まじんとクソッタレなおうのりょうほうをたおさなきゃダメだから」

 

 

 うーん、どうやら支配こそされていないものの、支配者の許可なくして≪死の迷宮≫からは出られないよう縛られていたみたいですね。そして今は幸運にも多くのソウルを貯め込んでますが、死に続けてロストしたら再び迷宮へと還元されてしまう可能性があると。難しいところですねぇ。

 

 

「つまり……王都とこの迷宮、両方を攻略する必要があるのね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その通り!!」

 

「……誰ッ!?」

 

 

 突如部屋中に響いた胡散臭い大声。玄室の入り口に眼を向けた一行の前に姿を見せたのは……。

 

 

 

「――さぁ、ワタシがこの迷宮(ダンジョン)のボスですよ! カモンカモン!!」

 

 

 顔に白粉を塗りたくり、上から紅をさした道化の化粧。小柄な体躯にカラフルな衣装を纏った迷宮にはまったくそぐわない異質過ぎる存在。自分以外の全てを嘲笑うような表情に()()()()()()()()()を添え、卑猥な腰振り(グラインド)を繰り返す……。

 

 

 

 

 

 

「喧しいぞ道化。感動の再会を邪魔するでないわ」

 

「アフン!? ひどぉい……」

 

「よく言うよ、聖剣(ハースニール)で斬られてもピンピンしてた癖に……や、久しぶり」

 

 

 

 ロープでグルグル巻きにされた不死の蛞蝓(フラック)と、結ばれたロープの反対を握りながら彼を蹴倒す金剛石の騎士(K・O・D)。そして床に伸びた道化師を敷物に女戦士さんへアイサツする銀髪侍女さんの姿でした。

 

 


 

 

「うわ……うわぁ……」

 

「なにこの……なに……???」

 

「あれ? あの道化師、何処かで見たような……」

 

 

 〇クソシストも真っ青な仰向け姿勢で玄室中を這いまわる道化師(フラック)の映像にドン引きな一行。首を傾げている王妹殿下は当時の吸血鬼侍ちゃん、現吸血鬼君主ちゃんと〇ーマの休日ごっこをしている時に遭遇してましたっけ。……あ、「あなたと王都で逢瀬(デート)を楽しんでいたときでしたわ!」なんて大声で言うもんだから吸血鬼君主ちゃんが別室送りになっちゃってます。そんなドナドナされていく吸血鬼君主ちゃんにゴッドスピード!と敬礼を送っていた吸血鬼侍ちゃんが、曖昧な笑みを浮かべながら記憶映像に合わせて彼との関係をみんなに説明し始めました。

 

 


 

 

「……道すがらそこな道化に話は聞いていたが、やはり彼女(侍女)では無いのだな、お嬢さん(フロイライン)

 

「うん。おかあさんのきおくはやきつけられてるから、でんかのこともおねえさんのこともわかるけど、ぼくはおかあさんじゃないの。……ごめんなさい」

 

「君が謝ることじゃあないよ。彼女を救えなかったのは私たちの落ち度だからね」

 

 

 映像のほうでは新たに2人と1匹?が合流した迷宮の一室。『吸血鬼侍』ちゃんを見た陛下と銀髪侍女さんは驚きと悔悟の入り混じった複雑な顔をしています。

 

 狂いし王の凶行によって人としての尊厳を踏み躙られ、最期は1人迷宮の片隅で死んでいった圃人の侍女。道中で道化師(フラック)から事の顛末は聞いていたみたいですが、実際に吸血鬼(ヴァンパイア)に変じた姿を目の当たりにしたら曇ってしまうのも無理はありませんね。しかも今こうやってみんなと会話をしているのは圃人侍女ちゃん本人ではなく、再構成された身体を動かしている吸血鬼としての人格なんですから。

 

 圃人侍女ちゃん(おかあさん)の記憶を頼りに金剛石の騎士(王子殿下)へ言伝を頼んだものの、本人ではないため信用してもらえるかずっと不安だったのでしょう。俯く『吸血鬼侍』ちゃんの頬からはポタリポタリと雫が落ち、迷宮の床を湿らせています。その小さな身体を後ろからそっと抱きしめ、女司教ちゃんが未だに床上でピチピチトと跳ねている道化師(フラック)へ確認の問いを発しました。

 

 

「つまり、貴方はこの子を創造した死霊術師(ネクロマンサー)の知り合いであって、今迷宮を支配している魔人とは無関係ということですか?」

 

「ンンン~! だいたいそんなところです。まぁ『友人(とも)』を名乗ると彼が怒りそうなので……『親友(マブダチ)』の関係と主張しておきましょうかぁ!!」

 

「ほんとだよ。よくおとうさんのけんきゅうしつにやってきて、おやつをぬすみぐいしたりチャトランガ(盤上遊戯)をやってなぐりあいのケンカしてた。……なかよしだよね!!」

 

「フフーフ、そんなに褒めても粘液ぐらいしか出ませんよぉ?」

 

「いちいち言動が気持ち悪いわぁ……」

 

 

 床上をのたうち回りながら自慢のペラも回し続ける道化師(フラック)にスライムを見るのと同質の眼を向ける女戦士さん。まぁ有り体に言ってキモいですし、なによりも彼が纏う雰囲気(オーラ)はまともなものじゃありません。『吸血鬼侍』ちゃんも同じく『(イービル)』の雰囲気(オーラ)を発していますけど、何処かドライな死生観を感じさせる彼女のものと異なり身体中に纏わりつくような粘性の高いものであることが女戦士さんの嫌悪感を煽っているのかもしれませんね。

 

 

「皆様に判り易いように説明しますとぉ……迷宮を乗っ取っている魔人はこの階層の処女領域(E11-N19)の先にある転移門(ゲート)を使い、王都の地下に穿たれた魔穴と行き来して王やその取り巻きと接触していまぁす! 残念ながら支配者の証である護符(アミュレット)が無いと別の転移床(ワープポータル)に阻まれてしまうので、皆様が使う事は出来ませんが!!」

 

「今は彼の愛し子が横取りし続けたおかげで迷宮の資源(リソース)が枯渇し、怪物(モンスター)の配備が滞っている状態ですが……王都の魔穴とこの迷宮が繋がってしまったら、王都の住人は老若男女の区別無く魔穴へと放り込まれてしまうでしょうねぇ! そうなれば迷宮は全力稼働、あっという間に二穴から大量の怪物(モンスター)が溢れ出すこと間違いナシ!!」

 

「彼らの陰謀♂を止めたくば、二穴を同時に塞いでしまわねばなりません! どちらかが空いていれば彼らの逃亡を許すことになるでしょう!! さぁ、ここは皆様の力を合わせ彼らを苛烈に攻め立て……アフン!?」

 

「言い方が卑猥過ぎるのよぉ……!」

 

 

 顔を真っ赤にした女戦士さんに槍の柄を捻じ込まれ恍惚の表情を浮かべる道化師(フラック)は映像越しでもキモいですね! ですが彼の言い分を信じるならば残された時間は少ないでしょう。此処に集いし冒険者はみな一騎当千の強者ですが、圧倒的に数が足りません。それを分割して王都と迷宮を同時に攻略するのは至難の業と言わざると得ないでしょう。

 

 

「王都の魔穴は我らに任せるが良い……と言いたいところだが、此方の一党(パーティ)も損耗が激しくてな。此処に居る我ら以外は負傷しているため万全とは言い難いのだ」

 

 

 済まぬ、と冒険者たちに頭を下げる金剛石の騎士(K・O・D)銀髪侍女さん(7人目)のおかげで巨漢の魔術師がガォン!されたり赤毛の僧侶がドッバァー!!されることはなかったみたいですが、みんな相応に消耗しているみたいです。元気だったら迷宮まで同行している筈ですからねぇ……。

 

 

「ちゅうても、ワイらも6人で一党(パーティ)やさかい、誰か1人でも引き抜かれたら迷宮(こっち)の攻略がヤバいでぇ?」

 

 

 半森人の斥候さんが渋面で呟いていますが、連携の取れた一党(パーティ)の戦闘力は同じ能力の個人6人とは比較にならないほど高いもの。逆を返せば誰か1人でも欠けてしまうとそこから崩れる危険性も孕んでいます。そのリスクを負ってでも、消耗を抑え迷宮を探索出来るメリットを選んだからこそ冒険者の一党(パーティ)は6人が適正と言われているわけですね。

 

 

「となると、そっちに同行出来そうなのはおちびちゃんだけど……」

 

「うん、ぼくもそれがいちばんいいとおもうんだけどね……」

 

 

 女戦士さんが視線を向けるのはやはり『吸血鬼侍』ちゃん、ですが先程『吸血鬼侍』ちゃんが言っていたように、彼女は迷宮に縛られているために地上へと出ることが出来ません。

 

 ――そう、()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん、だから……僕が代わりについていくね!!」

 

 

 

 

 

 

「ふぇ? ……ふわぁ!?」

 

 

 

 

 

 

 ――玄室に響いたのは、場違いなほどに明るい可憐な少女の声。

 

 己の内側から発せられた声に驚く『吸血鬼侍』ちゃんの身体が眩い光に包まれ、輪郭線(ワイヤーフレーム)の浮かび上がる薄暗い部屋を明るく照らしていきます。

 

 やがて光が収まり、眼前を手で覆っていた冒険者たちが目にしたのは……。

 

 

「えへへ……吃驚させちゃったかな?」

 

 

 呆然とした表情で目の前に現れた自分と瓜二つ……いいえ、自分の身体の基となった姿の人物を見つめる『吸血鬼侍』ちゃんと、そんな彼女を優しく抱き寄せゆっくりと頭を撫でる1人の少女。鏡写しのようにそっくりな姿ですが、新たに現れた『吸血鬼侍』ちゃんの顔には溢れんばかりの母性と慈愛が満ちています。驚きのあまり声が出せないのを察し、そっとハグを解いて一歩二歩ステップ。外套(マント)の裾を摘まみ繰り出すカーテシーが、言外に彼女の正体を物語っています。

 

 

「よもや、このような形で再び相見えるとは思わなんだな……」

 

 

 その立ち居振る舞いで彼女が何者であるか悟ったのでしょう。様々な感情の入り混じった声で呟く金剛石の騎士(金髪の殿下)に深々と頭を下げた後、未だ再起動していない『吸血鬼侍』ちゃんを見てクスクスと笑う彼女。ようやく目の焦点が合ってきたところで、ニッコリと微笑みながら告げるのは……。

 

 

 

「こんにちは、僕の可愛い赤ちゃん。僕があなたのおかあさんだよ。 ……生まれてきてくれてありがとう!」

 

 

 ――生前、伝えることの叶わなかった、愛しい我が子に対しての生誕の祝福でした。

 

 


 

 

「――では、あまり長くは保たんということか」

 

「うん。あの子が蓄えていた迷宮の魔力(リソース)を使って構成された仮の身体……霊体だから、頑張って一戦闘が限界かなぁ」

 

 

 再開の挨拶もそこそこに圃人侍女(おかあさん)から告げられた時間制限に眉を顰める金剛石の騎士(金髪の殿下)。たしかに、受肉せずに霊体で活動する場合、活動時間や能力に制限が掛かってしまうことが多いですね。もしフルスペックで顕現しようものなら秒で内包エネルギーが尽きて霊体が崩壊してしまいますし(BASTAR〇!!並感)。

 

 

「それに、僕が分離したせいであの子にも負担が掛かっちゃうの。今は体内の魔力で無理矢理稼働してるけど、それが無くなったら一時的に行動不能……冬眠状態になっちゃうかも」

 

 

 ははぁ、本来吸血鬼ボディを動かすには『死霊術師(おとうさん)の作った吸血鬼の魂』『圃人侍女(おかあさん)の魂』『赤ちゃんの魂』の3つが必要なところ、圃人侍女(おかあさん)の魂が抜けたぶん諸々の処理に負担が掛かっちゃうのかな。その後はCPU()を休ませるために冷却期間が必要だと。

 

 では急がねばなるまいという金剛石の騎士(金髪の殿下)の声で攻略の準備を始める一行。やけに友好的(フレンドリー)道化師(フラック)曰く「魔人が拠点にしているのはこの迷宮と薄皮一枚隔てた場所に存在する異界でぇす!」らしく、迷宮に縛られていない彼が案内してくれるとのこと。つまり魔人討伐組は六英雄(オールスターズ)with『吸血鬼侍』ちゃん&道化師(フラック)という色物軍団になったわけですね!

 

 

「それじゃあ此方は先に地上へ向かわせてもらうよ」

 

「判ったわぁ。……気を付けてね」

 

「それはこっちの台詞だよ。君たちのほうが危険だろうからね」

 

 

 互いの無事を祈るように言葉を交わす女戦士さんと銀髪侍女さん。その向こうでは『吸血鬼侍』ちゃんと圃人侍女(おかあさん)がギュッと抱き合っています。

 

 

「まだ君の中で眠っているもう1人の子にもよろしくね?」

 

「うん……」

 

 

 頷きながらも手を放そうとしない『吸血鬼侍』ちゃん。心のどこかで()()()()()()()()()()()()を感じ取っているのかもしれません。背の変わらぬ我が子の頭を撫でながら、優しく諭すように圃人侍女(おかあさん)が口を開きました。

 

 

「ごめんね、母親らしいことを何一つしてあげられなくて。僕にはどうしても果たさなくちゃいけない約束があるの」

 

「……おひめさま?」

 

「うん。あの子はきっと魔穴にいる。あのクソッタレがあの子を傍らから離すわけないもん」

 

 

 そう牙を剥く笑みを見せる圃人侍女(おかあさん)の姿に、同じく鮫のような笑みを浮かべる『吸血鬼侍』ちゃん。やられたまんま泣き寝入りするほど大人しい性格の2人じゃありませんものね。

 

 

「あのまじんはぼくたちがやっつけるから、おかあさんたちもがんばって!」

 

「もちろん! ……大丈夫、あなたは1人じゃない。あなたの中にいるもう1人のあなたが、いつも一緒だから」

 

 

 そう言って頬に口づけをして、他の2人とともに地上行きの転移床(ワープポータル)へと消えていく圃人侍女(おかあさん)。ブンブンと手を振りながらそれを見送っていた『吸血鬼侍』ちゃんの背後から女司教ちゃんが声を掛けています。

 

 

「あの、なんだかもう逢えないような口ぶりでしたけど……」

 

「うん。ちじょうのたたかいがおわったら、おかあさんのたましいはほかのみんなのものといっしょにあるべきばしょへかえるの。ぼくのなかにしまってあるたましいもぜんぶたびだつから、ぼくもしばらくおやすみしちゃうかな」

 

「!? それでは……」

 

 

 何気ない口調に秘められた残酷な話に言葉を失う女司教ちゃん。他の六英雄(オールスターズ)も俯いたり天を仰ぎ見たりと様々な反応をしていますね。重苦しい空気に包まれ始めた一行を奮い立たせたのは、底抜けに明るい道化師(フラック)の声です。

 

 

「ンンン~? 何をそんなに沈んでいるんですかぁ? 先のことで悩むのは目の前の障害を排除してからのほうが建設的ですよぉ……アフン!」

 

「正論だけど貴方に言われるとなんだか腹立たしいわねぇ……!」

 

 

 蹴り倒され、股間の当たりを踏み躙られてもなお蠢くのを止めない道化師(フラック)の姿に青筋を浮かべる女戦士さん。男子諸君は股間を抑えてガタガタと震えています。沈鬱な空気は消え失せ、何処か楽観的な雰囲気になったのはきっと良いことでしょう、たぶん。お、女戦士さんの美脚からぬるりと抜け出した道化師(フラック)が汚れても居ない服の裾をはたきながら一行へと向き直りました。

 

 

「んではぁ、此方もそろそろ出発しましょうかぁ! 今入り口を作りますので少々お待ちくださいねぇ」

 

 

 そう言って彼が股間のポケットから取り出したのは1本の白墨(チョーク)。一行の訝し気な視線を軽く受け流しながらそれを『吸血鬼侍』ちゃんに差し出し、床に扉の絵を描くよう促しています。言われたとおりに彼女が玄室のそれと同じくらいの大きさの扉を描いたところで、おもむろに床面へと手を添えて……。

 

 

「そぉい!!」

 

 

 気の抜ける掛け声とともに、膨大な魔力を秘める実体化した扉を引き起こしました!!

 

 

「デタラメや」

 

 

 かいてもいない汗を拭う仕草を見せる道化師(フラック)にジト目で呟く半森人の斥候さん。これも迷宮の機構(システム)を応用した技術なんですかねぇ……? 突然現れた重厚な扉の周囲を警戒する冒険者たちに落ち着けとジェスチャーをしつつ、道化師(フラック)が扉について話し始めました。

 

我が友(マイフレンド)が精魂込めて構築したこの迷宮と違って、魔人が後付けで用意した異界はひっじょ~に甘い造りでしてねぇ。座標さえ判っていれば出入り自由なんですよ。ホントは全部で10ある異界を順番にクリアして戴くつもりだったんですが……彼女の時間制限もありますからねぇ。出血大大DIEサービスでボス部屋直行の転移門(ワンダーゲート)をご用意しましたぁ!!」

 

 

 追加10面……微妙な造り……ワンダーゲート……あっ(察し)。彼が転移門(ワンダーゲート)と呼んでいる扉には人体の縮図を表す曼荼羅(AMIDA)が描かれてますし、まさかWS版とはたまげたなぁ……。

 

 

「では皆様、出立の準備は……っと、アレ? 小さなレディは何方に? もしかしてお花摘みですかぁ!?」

 

 

 ……え? あ、言われてみればいつの間にか『吸血鬼侍』ちゃんの姿が見えません。現在のダブル吸血鬼ちゃんと違い、フラフラと1人で遊びに行っちゃうような精神的な成長……成長?はまだしてないでしょうし、何か気になることでもあったんでしょうか……お! 玄室の入り口から入って来ました! まったく、何処に行ってたんでしょう? 顔を見合わせる冒険者たちを代表して女司教ちゃんが話しかけていますね。

 

 

「あの、今何方へ行ってたのでしょう? みんな心配していたのですよ?」

 

「えう……ごめんなさい。モンスターにやられそうなひとたちがいたからたすけにいってたの」

 

 

 ……ん?

 

 

「なんやチビ、オマエ怪物(モンスター)のいる場所が判るんか?」

 

「めいきゅうになじむとわかんなくなっちゃうけど、さいはいちされたばかりのやつはなんとなく。まほうつかいっぽいおとこのひとがグレーターデーモンにやられそうになってた」

 

 

 あっ(全知)。

 

 

「はなしかけてもボーっとしててへんじがかえってこないから、みんなをまたせちゃいけないとおもってかえってきちゃった。……なんだかハァハァあらいいきをしながらぼくのことをジッとみてたけど、やっぱりちゃんとちじょうまでおくってあげたほうがよかったかなぁ?」

 

 

 やっぱりそのままにしてきたことが不安なのか、背後をチラチラと振り返る『吸血鬼侍』ちゃん。自分に迫ってきた危機にまったく気付いていない彼女に対する女性陣の反応は……。

 

 

 

 

 

 

「いいえ、何の問題も無いわ!」

 

「さ、早く魔人のところに向かいましょうねぇ?」

 

「よく……無事に帰ってきてくれました……っ」

 

 

 

 うん、まぁ、そうですよね。今までは何処か『吸血鬼侍』ちゃんへの警戒心を払拭出来ていなかった従姉ちゃんと女戦士さんでしたが、圃人侍女(おかあさん)との会話や先程の反応から彼女が幼い子ども同然の精神構造であると気付いてくれたみたいですね。そのたわわに『吸血鬼侍』ちゃんを抱きしめつつ、汚れた大人の視線を拭い去るように頭や頬を撫でています。突然のスキンシップに目を丸くしていた『吸血鬼侍』ちゃんでしたが、味わいの違う三種のたわわにすっかり骨抜きにされちゃった様子。……もしかしてこれが後のソムリエとなるきっかけだったのでは???

 

 

「……なぁ、えぇと……そろそろえぇか? 出発しても?」

 

 

 女性たちの目に毒な光景にチラチラと視線を向けていた半森人の斥候さんの咳払いで落ち着きを取り戻す冒険者たち。なお頭目("君")は女性たちに囲まれた『吸血鬼侍』ちゃんを血の涙を流さんばかりの表情で見つめていました。どんだけおっぱい星人なんですかねぇホント。

 

 

 すっかり意気投合?した冒険者と化物な2人。次回はいよいよ魔人、そして狂王との決着ですかね? 同時に進む王都の戦いも気になるところですが……どうやって進行させるかは次回までに決めることにしましょうか!

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 

 





 どんどんお話しが伸びるので失踪します。


 誤字のご報告ありがとうございます。ご指摘を受けて気付く恥ずかしさと、読んでいただけた嬉しさの両方でテンションが激しく変動する今日この頃でございます。

 お気に入り登録や評価、感想お待ちしております。特に感想はダイレクトに読んでくださった方々の意見をお聞き出来ますので、よろしければお願いいたします。


 お読みいただきありがとうございました。


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