ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 あとちょっと、あとちょっとで終わるから!なので初投稿です。




セッションその16-6

 

 前回、王都と異界の同時攻略に挑むところから再開です。

 

 

 狂王と魔人、どちらとの戦いを先に流すか関係神さんたちと協議した結果、まずは圃人侍女(おかあさん)サイドをお届けすることになりました! ダブル吸血鬼ちゃんの百合性癖の源流ともなった伯爵夫人さんとの遣り取りにも注目したいところですね!!

 

 

 さて、映像には王都に急ぐ一頭の白馬が映っていますね。手綱を握る金剛石の騎士(金髪の殿下)を騎手に背には銀髪侍女さん、前に圃人侍女(おかあさん)を乗せ、戦女神さんの使徒と同じ名を冠する駿馬(ブリュンヒルト)は速度を落とすことなく街道をひた走っています。

 

 

「――良かったのか? 迷宮組に残り、愛娘と共に最後の時間を過ごすことも出来たろうに」

 

 

 愛馬に指示を出しながら胸元にしがみつく圃人侍女(おかあさん)へと問いかける金剛石の騎士(金髪の殿下)。沈みゆく夕陽を見つめていた彼女が首を横に振って言葉を返しています。

 

 

「あの子なら大丈夫。素敵なお友達があの子を支えてくれるだろうから。それに、僕には果たさなければいけない約束があるの。……アイツが彼女を自分の傍から離すわけないもん」

 

「……ああ。双子の片割れは産まれて間も無く地母神のを通じて辺境に落とした。もう1人は此度迷宮を訪れる前に太陽神の神殿に預けた。たとえ招かれようとも立ち入ることは出来ぬだろう、あの吸血鬼(ヴァンパイア)どもにはな」

 

「実際貴族たちに攫われる寸前だったからね。間一髪ってところだったよ。……でも君の言うとおり、既に伯爵夫人の姿は無かった。他の後妻や寵姫、女官たちとともに、煙のように王宮から姿を消してしまっていたんだ。おそらくは……」

 

 

 むむむ、どうやら後の王妹殿下である妹ちゃんにも危機は迫っていたみたいですね。自らの娘である彼女を眷属として迎え入れるつもりだったのか、あるいは……。狂王の性格を考えると、あんまり楽しい考えにはなりませんねぇ。

 

 

「僕のことはいいから、殿下にはあの子のことをお願いしたいの。今は体内に宿したみんなの(ソウル)から知識や経験を借りてなんとか動いているけれど、その魂を開放したら半分眠ったような人形みたいになっちゃうと思う。もういちどあの子が祈りを得るまで、護ってあげて欲しいの」

 

 

 既に覚悟完了している圃人侍女(おかあさん)にとって、残る心配は愛娘である『吸血鬼侍』ちゃんのこれからについてだけ。真摯な顔で見上げてくる彼女の願いに、暫し瞑目していた金剛石の騎士(金髪の殿下)がゆっくりとその瞳を開き、深く頷きました。

 

 

「そうか……判った。あの幼子が祈りし者(プレイヤー)として目覚めるその日まで、揺り籠を護り続けよう。……なに、よくよく考えれば彼女もまた私の腹違いの妹のようなものだからな」

 

「ふむ、確かに。そうすると君は彼の義理の母親ということになるね」

 

「えへへ、それもそうだね! ……ありがとう、これで心置きなく彼女との約束を果たせるの」

 

 

 あ、そっか。その経緯はどうあれ、圃人侍女(おかあさん)の胎に宿ったあの子は王の血を継ぐ存在ではあったんですよね。ただ生まれる前に母体とともに死を迎え、死霊術師(おとうさん)の手で吸血鬼(ヴァンパイア)に変ぜられちゃいましたけど。まぁそのあたりは関係者の心の持ちようで如何様にも変わることでしょう。……ダブル吸血鬼ちゃんが女神官ちゃんに手を出さなかったり、王妹殿下に妙に紳士的に振る舞っていたのは、本能的に血の繋がりを感じ取っていたからなのかもしれませんね。

 

 

「――さて、王都が見えてきたけれど……すぐそこに夜が迫っている。これからは奴らの時間だけど、どうするんだい?」

 

 

 遠くに見えてきた夕焼け色に染まる王都を見据え、何でもないように呟く銀髪侍女さん。黒々と浮かび上がる王城のシルエットは何処か不吉さを感じさせるものですね。既に道中で話し合っていたことを再確認するような彼女の言葉に、互いに目を合わせ笑う3人。これから狂王の待つ魔穴に向かうとは思えない軽さで言い放つのは……。

 

 

 

 

 

 

「決まっているだろう? 『()()()()()()()()()()()()()』という代々我が家に伝わりし言葉。あの男がそれを歪め実行するのなら、此方も真正面から叩きつけてやるまでよ」

 

「勝ちを確信しているヤツの顔が歪むのを見るのって、とっても気持ち良いよね? 特にソイツが嫌いなヤツだったりすると」

 

「『最高のタイミングで横合いから思い切り殴りつける』。私の好きな言葉だね」

 

 

 

 とても良い子には見せられない笑みを浮かべ、それぞれの思いが込められた言葉を口にする悪魔が3体。狂王とその取り巻きがどんな目に遭うのか、今から楽しみですね(震え声)。

 

 


 

 

 ――王城の地下深くに秘匿されし魔穴。何処とも知れぬ大穴の先から吹き込む瘴気を孕みし風は壁面に擦れ、歓喜か悲嘆かの区別も付かぬ声を地下空間に響かせています。

 

 魔穴の淵に見えるは一組の男女。人骨で組み上げられた玉座に腰掛け、離れた場所で跪く取り巻きを面白くない顔で睥睨している狂王の傍には人形のように表情を失った伯爵夫人が俯き座り込んでいますね。

 

 

 取り巻きたちの表情が蒼白なのは吸血鬼(ヴァンパイア)と成った影響だけではありません。地上からこの魔穴へと繋がる地下通路に現れた侵入者がもうすぐ目の前まで来ているからです。やがて狂王がその視線を石造りの頑丈な扉へと向けた瞬間、眩い閃光と共に扉が内側へと吹き飛びました!

 

 

「――人間の配下に護りを任せ、自らは安全な場所に籠るとは。≪死≫を超越したと嘯くわりに随分と臆病なものだな?」

 

吸血鬼(ヴァンパイア)に成りたいがために尻尾を振る連中を使ってやったまでよ。所詮は我らが眷属にも餌にもなれぬ塵芥(ゴミ)の集まりに過ぎん」

 

 

 視線をぶつけ合う父と子。その間には温かみを感じさせる成分は微塵も含まれておらず、ただただ互いを否定する冷え切った感情が占めています。爪や牙を誇示し即座に侵入者を八つ裂きにせんと飛び掛かろうとする取り巻きを制し、狂王がその傲慢さを露わにします。

 

 

「散々邪魔をしてくれたな。双子の片割れを何処へと隠し、残りを忌々しい太陽神の従僕に渡しおって。……だが良い。父に頭を垂れ、その血を捧げることですべてを許そう。我が血を継ぐ者の血を取り込むことで、我は真なる不死、不死王(ノーライフキング)へと位階を上げるのだ!」

 

「話にならんよ老害。貴様は只の怪物(モンスター)で、怪物(モンスター)は人に滅ぼされるが必定。貴様は狂王として名を残すことも無く、歴史の闇の中へ消えるだけよ」

 

 

 狂王の戯言を一刀両断にし、聖剣(ハースニール)の切先を向ける金剛石の騎士(金髪の殿下)。祈りを捨てた王は、彼にとって最早父とは呼べぬ存在に成り果ててしまったのでしょう。狂王へと向ける感情には怒りすらなく、必滅という決断的な意志のみが感じられます。その視線を不快に感じた狂王が辛うじて引っ掛かっていた人間性をかなぐり捨て、吠えるように声を荒げます。

 

 

「つくづく忌々しいヤツよ。貴様は昔からそうだった! 我に向ける視線には微塵も敬意を感じず、いつも見下すような目で見ていた!! 貴様が簒奪を考えていたこと、我が気付かぬと思っていたか!?」

 

「気付いていながらも排除出来ぬから貴様は愚かなのだ。もっとも、排除していれば王国はとうの昔に滅び去っていただろうから、最初から無理な話であったろうがな。……ああ、今更親殺しがどうとか言ってくれるなよ? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 うーんこの限界国家感。腐敗しきっていた王国がなんとか体裁を維持出来ていたのは、混沌の軍勢に立ち向かうための多種族連合の旗頭としてもっとも数の多い只人(ヒューム)が選ばれ、軍が精強を保てていたからなんですかね。迂闊に軍を掌握していた王子を粛清してしまっては連合が瓦解し、秩序の勢力は敗北していたことでしょう。そういう意味ではナイスな立ち回りをしていたんですね当時の殿下は。

 

 

「我を滅ぼすなどという戯言を! 貴様の周囲には誰が居る? ≪解呪(ディスペル)≫を唱えられる僧侶も、炎を操る魔術師も、破邪の力を秘めし銀の剣を振るう剣士も居らんではないか!!」

 

 

 そこまで口にしたところで、漸く傍に居る2人の少女に気付いた狂王が蔑みの笑みを深め、粘りつくような声色でかつて凌辱の限りを尽くした相手へと言葉の刃を振るい始めました。

 

 

「おお、其処にいるのは我が妻の足元に纏わりついていた地べた摺り(ロードランナー)ではないか。聞いておるぞ、胎の赤子ともども兵たちに()()()()()()そうではないか」

 

 

 彼の言葉によって起きた反応は3つ。嘲笑を浮かべるかつて圃人侍女(おかあさん)を嬲った貴族たち。赫怒の炎を瞳に宿す金剛石の騎士(金髪の殿下)と銀髪侍女さん。そして……。

 

 

 

 

 

 

「――嘘。どうして……」

 

「――君に逢いに来たよ。約束を果たすために……ね?」

 

 

 弾かれるように顔を上げ、幼い頃からずっと傍に居た存在を信じられないといった顔で見つめる伯爵夫人。変わり果てた姿でありながらも変わることの無い笑みを浮かべる圃人侍女(おかあさん)に口元を抑え堪え切れずに涙を流す彼女に対し、圃人侍女(おかあさん)の言葉は強く響いたみたいですね。

 

 

「……我を無視するとはなんと罪深い。だが遅かったな! 既にこの者は我が眷属と成った!! そこに居る愚息も、我が手の内より逃げ出した娘ももう要らぬ!」

 

 

「この吸血鬼の花嫁(ヴァンパイアブライド)は我のモノだ、我だけのモノだ!!」

 

 

 そう咆哮し、優越に満ちた瞳を向ける狂王。見ればその足元には無数の干乾びた亡骸が転がっています。彼の言葉から察するに他の寵姫や女官たちのものでしょうね……。

 

 

「貴様の手札は己と侍女が2人、とても勝負にはなるまい。……諦めよ。諦めて跪き、己の無力さを噛み締めながら魔穴の解放されるその瞬間を見ておれ!」

 

「「「諦めろ!」」」

 

「「「「「諦めろ、人間(ヒューマン)!」」」」」

 

 

 己の絶対的優位を妄信し、嘲りの声を響かせる吸血鬼(ヴァンパイア)たち。その悍ましい合掌に伯爵夫人は耳を塞ぎ、縋るような視線を圃人侍女(おかあさん)へと向けています。地下空間に充満する絶望の声に対し、3人が出した返答は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「それがどうした!!!」」」

 

 

 ――祈りを持つ者(プレイヤー)なら誰もが心に秘めている、絶望を打ち払う魔法の言葉です!!

 

 

 

「『諦めろ』だと? 諦めなかったからこそ人間(ヒューマン)は此処まで歩いて来られたのだ」

 

「あまり人間を無礼(なめ)るなよ死にぞこない(アンデッド)ども。人は気合いと根性で≪死≫さえ退けられることを証明してあげよう」

 

 

 兜を脱ぎ捨て豪奢な金髪を露わにする金剛石の騎士(金髪の殿下)と、両手の指をパキポキと鳴らし据わった目で吸血鬼(ヴァンパイア)たちを一瞥する銀髪侍女さん。2人の間から歩み出るのは、()()()()()()輝く瞳で祈るように手を組む小さな姿です。

 

 

「フン、どうやら低能な貴様等には我の高尚な言葉は理解出来ぬようだな。それに、その地べた摺り(ロードランナー)も仮初の肉体しか持たぬ亡霊の成り損ないではないか。只の侍女でしかない貴様に何が……!?」

 

 

 そこまで口にしたところで異変に気付き、訝し気な視線を向ける狂王。やがてその視線が驚愕と恐怖を秘めたものへと変貌していきます。

 

 祈るように組まれていた圃人侍女(おかあさん)の手が解かれ、その間には光り輝く小さな太陽が。ゆっくりと瞳を開きながら、祝詞を唱えるように可愛らしい唇から言葉が紡がれていきます。

 

 

「そうだね。僕には剣を握ったり盾を持ったりすることは出来ない。この身体はガワだけの偽物だし、戦い方を知っている(ソウル)はみんなあの子のほうについてってもらったから」

 

 

「だから、僕の中にいる(ソウル)はみんなどこにでもいる人たちのもの。毎日を懸命に生きていた、当たり前の人生を送っていた人たちのもの。いきなり連れて来られた迷宮で何も出来ずに死んでいった人たちのもの」

 

 

「そ……そんな無価値な連中の(ソウル)に何が出来るというのだ! 我らの糧にすらなれず、せいぜいが迷宮の糧になる程度の(ソウル)に……!?」

 

 

 徐々に輝きを増し、地下空間を照らし始める光に後ずさりながら威嚇するように声を荒げる狂王。このまま圃人侍女(おかあさん)を放置しては致命的な何かが起きると本能的に察知した取り巻きの眷属たちが一斉に飛び掛かっていきますが……ちょっと遅いですね。

 

 

「でも、みんな日々の暮らしの中で神様に感謝の祈りを捧げてたの。好きな人と結ばれたり、取引が上手くいったり、今日も()()()()()()()()()。そんな小さなことでも、みんな神様に感謝しているの」

 

 

 肉体を失い、迷宮で磨り潰されるのを待つばかりだった魂たち。圃人侍女(おかあさん)の中という仮初の安住の地に集った彼らは確かに1人ひとりは無力かもしれません。ですが、肉体を持たずとも彼らに出来ることがあるのです。

 

 

 ――それは、祈ること。

 

 

 泣きたいことがあったり、怒りを感じたり、互いに笑い合ったり。愛を紡ぐ日もあれば、悲しい別れの日もあるでしょう。暗い夜が訪れ、恐怖を感じることがあるかもしれません、ですが、それでも、太陽と一緒に必ず明日はやってくるのですから!

 

 

 

 

 

 

「太陽礼賛!光あれ!」

 

 

 

 

 

 

「ギャアアアアア!?!?」

 

「か、身体が崩れ……!?」

 

「燃える……燃えてしまう……」

 

 

 太陽神さんへの祈りの聖句とともに発現した浄化の輝き。太陽神の信徒にのみ許された≪浄光(サンライト)≫と≪聖光(ホーリーライト)≫の同時詠唱は、襲い掛かってきた吸血鬼(ヴァンパイア)に致命的なダメージを与え、着地する前にその姿を灰へと変えていきます。即座の滅却を免れ岩陰に退避した運の良い取り巻きもいましたが、金剛石の騎士(金髪の殿下)によって遮蔽ごと両断されてますね。……お、向こうでは銀髪侍女さんが出口へと駆け出す吸血鬼(ヴァンパイア)の1体を組み伏せてます。両腕を奇妙に捩じくれさせ地面を無様に這いずる男は……圃人侍女(おかあさん)を嬲っていた連中の1人ですね。

 

「クソッ、俺の腕が……!? なんで治らないんだよぉ!?」

 

「おや、知らなかったのかい? 吸血鬼(ヴァンパイア)の再生能力は恐るべきものだけど、肉体が怪我と判断しないもの……例えば綺麗に外された脱臼なんかは再生しないんだよ」

 

 

 切り落としたほうが早く再生するね、と呟きながら男の首根っこを掴み、人外の膂力で輝きの中へと放り込む銀髪侍女さん。悲鳴を上げながら男の姿は光に融け、地面に僅かな灰を残すばかりになりました。 

 

 

糞ッ(ガイギャックス)、忌々しい地べた摺り(ロードランナー)め……」

 

 

 間一髪のところで伯爵夫人を抱え、光の範囲外に逃れた狂王。一瞬だけ浴びた輝きによって身体のあちこちから白煙を燻らせ、狂眼と呼ぶに相応しい瞳でゆっくりと近寄る圃人侍女(おかあさん)を睨みつけています。

 

 

「我が妻まで巻き込む所業、ど許せぬ! この者は貴様の主……否、想い人では無かったのか!?」

 

「そうだよ、だから取り戻すの。――その子はもう、吸血鬼の花嫁(おまえのもの)なんかじゃない」

 

「? 何を訳の判らぬことを……」

 

 

 訝しげな狂王の言葉を閉ざしたのは腕の中に感じた忌々しい温もり。まさかという視線を向けた彼の目に飛び込んで来たのは、潤んだ瞳で圃人侍女(おかあさん)を見つめる、()()()()頬の伯爵夫人さんです。

 

 

 ≪浄光(サンライト)≫と≪聖光(ホーリーライト)≫の同時詠唱が持つもうひとつの効果。それは光が照らす範囲内に存在する全ての対象が受けている呪いや呪文の効果から、()()()()()全てのものを取り除くというもの。つまり、伯爵夫人さんが吸血鬼(ヴァンパイア)であることを否定すれば、それは打ち消されるわけです。

 

 

「馬鹿な、奴が齎した眷属化の儀式はそう簡単に解呪出来るものでは……」

 

「僕ひとりだったら無理だよ。でも、みんなが応援してくれてるからね」

 

 

 圃人侍女(おかあさん)の言う通り! 彼女の中に居るたくさんの人たちの(ソウル)、その無数の祈りが束ねられ、≪聖歌(ヒム)≫のように奇跡の効果を押し上げているんです! 彼ら1人ひとりは無力かもしれませんが、その祈りは決して無力なんかじゃありません。『祈りは力なり、力は祈りなり』ってことですね!

 

 

「それじゃ、彼女は返してもらうよ?」

 

「グァッ!? こ、この灰鼠が……ッ!!」

 

 

 あ、圃人侍女(おかあさん)に気を取られていた狂王の隙を狙った銀髪侍女さんが美事に伯爵夫人さんを奪還しましたね! 両の肘を砕かれ唸る狂王、痛覚は無いかあっても鈍い筈なのに、その顔は苦々しいものになっています。

 

 

「さ、感動の再会というやつだね」

 

「あ、ああ……っ」

 

 

 軽々と人ひとりを抱き上げて戻って来た銀髪侍女さん。彼女に背中を押され、呪文を維持している圃人侍女(おかあさん)の傍に降ろされた伯爵夫人さんが堪え切れないように小さな想い人を横から抱きしめ、耳元で囁くようにその想いを口にします……。

 

 

「――本当に、貴女なのですね……!」

 

「もちろん。約束したでしょ? 僕たちは、ずっと一緒だって!」

 

 

 

「ふむ、どうやら上手くいったようだな。であれば、後は奴を滅ぼすだけよな」

 

 

 お、取り巻き連中を粗方斬り捨てた金剛石の騎士(金髪の殿下)もやって来ましたね! 疲れた様子も見せず宙に浮く狂王を見上げる様はまさに全盛期といった感じです。以前銀髪侍女さんが陛下はだいぶ(なま)っているみたいなこと言ってましたけど、比較対象がコレだと今でも十分やっていけそうな気がするんですが。

 

 さて、殿下の言う通りあとは狂王を始末すればおしまいなのですが……おや? ただでさえ青白い顔を真っ青にしてプルプルと震えてますね。何かを言おうとして怒りのあまり声が出ないようにも見えますが……。

 

 

「貴様……自分が何をしたのか判っているのか!? 吸血鬼化は不可逆な術式、ひとたび解呪してしまえば……ッ」

 

「つまらないこと聞かないでくれる? ()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 指を突き付け吠える狂王を一瞥し、溜息まじりに応える圃人侍女(おかあさん)。片手で呪文を維持したまま反対の手を伯爵夫人へと伸ばし、ほっそりとした顎へと添えています。彼女の意図を察した伯爵夫人が目線を合わせるように屈み込んだところで……。

 

 

「ん……ちゅ……れる……」

 

「ん……ふぅ……はぁ……」

 

 

 狂王へ見せつけるように濃厚な口づけを交わす2人。重ねられた唇と絡み合う舌。粘膜の接触を介して送り込まれる魔力によって()()()伯爵夫人の身体に一時の熱が宿っていきます……。

 

 

「ぷぁ……すぐに終わらせるから、もうちょっとだけ待っててね?」

 

「ん……はい、待っています……貴女を……!」

 

 

 銀糸の橋を舌で絡めとりながら微笑む圃人侍女(おかあさん)と、顔を真っ赤にしながらコクリと頷く伯爵夫人さん。濃厚な百合に殿下と銀髪侍女さんも「いい……」「いいね……」とご満悦な様子。ですがこの場でただ1人、2人の愛を認められない存在がいるわけで……。

 

 

「……らぬ」

 

 

 

「……要らぬ」

 

 

 

「もはや何もかも要らぬ! 愚かな民も、役に立たぬ息子も、穢れた売女(ばいた)も!! 皆等しく魔穴の(ウロ)へと堕ちてしまえ!!!」

 

 

 おーおー、振られ間男が逆ギレしてますねぇ。背より展開した翼で魔穴の上空へと舞い上がり、再生した両腕の肘を脇腹に沿え、手を左右に大きく開いた支配者のポーズで呪文の詠唱に入る狂王。膨大な魔力を感じさせるそれは、魔術師の最大火力として名高い例の呪文です……!

 

 

「魔術師を連れてこなかったのが貴様の敗因よ! この呪文を止めるには≪抗魔(カウンターマジック)≫で打ち消すか、同じ呪文を以て相殺するほかは無い!! ……それとも尻尾を巻いて逃げるか? この地下空間から簡単に抜けられるとは思えんがな!」

 

 

 自らの勝利を確信し高らかに謳う狂王。こんな閉鎖空間でブッパしたら彼自身も只で済むわけは無いのですが、そこは≪邪な土≫の効果で自分だけ助かるつもりなのでしょう。詠唱を終え、万物を等しく滅ぼす核の一撃を放つ彼の顔は、しかし間もなく驚愕の色へと染まっていきます……。

 

 


 

 

 上空より迫る滅びの光を見据え、金剛石の騎士(K・O・D)はその手に握りし聖剣を大地に突き立てた。しかしそれは敗北を認めた諦めの境地でも、運を天に任せた捨て鉢な行動でもなく、掴み取るべき勝利への第一歩。

 

 愛しき伯爵夫人を侍女に託して隣に歩み出た小さな戦友と視線を交わし、背中合わせに立つ2人。その構えは実に奇怪なものであった。

 

 盾持つ側の金剛石の騎士(K・O・D)は右足を上げ、膨大な魔力を放つ籠手(ガントレット)を左の肩口で重ねた構え。呟かれる真言(トゥルーワード)は狂王が唱えし核の一撃とまったくの同一。

 

 剣持つ側の圃人侍女(太陽の使者)は両足を大きく開き、咲き誇る向日葵のように縦に合わせた両手を右腰に沿える構え。紡がれる聖句は何時如何なる時でも変わることの無い太陽賛美の祈り。

 

 籠手(ガントレット)に秘められし禁断の力と不浄なるものを滅ぼす聖なる稲光。青白と黄金、ふたつの光は螺旋を描いて一条の閃光に変じ、狂王の放つ破滅の光すら取り込み彼のものの命脈を断たんと突き進むのであった……。

 

 


 

 

「馬鹿な……我は……死を超越した……」

 

 

 ――伝説の籠手(コッズ・ガントレット)の特殊能力である≪核撃(フュージョンブラスト)≫と、太陽神さんの専用奇跡である≪霹靂(パニッシャー)≫の合体技。狂王もまさか君主(ロード)である金剛石の騎士(金髪の殿下)が≪核撃(フュージョンブラスト)≫を使えるなんて想像もしていなかったでしょうね。自身で語っていたように同じ呪文で相殺を取られ、詠唱後の硬直に≪霹靂(パニッシャー)≫が直撃。≪邪な土≫の発動なぞ許される筈も無く、狂王は灰すら残さずに消滅してしまいました。

 

 うーん、まさに『この威力!』。アンデッド絶対滅ぼすビームの異名は誇張でもなんでもなかったですね!! あと何気に陛下の≪核撃(フュージョンブラスト)≫発動モーションが野菜王子の〇ャリック砲なのは中の人繋がりなんですかね???

 

 天井にDB的な巨大クレーターを刻み込んでその役目を終えたごんぶとビーム。攻撃の余波で魔穴の周辺に溜まっていた瘴気も吹き飛び、一帯には静寂が戻ってきましたね。後の封印は赤毛の僧侶……枢機卿にお任せする流れみたいです。封印の要として地母神さんの杖が使われていましたから、ひょっとしたら聖人尼僧さんも協力していたのかもしれません。

 

 

「どうだったかな、僕の活躍?」

 

「えっと、すごく……すごかったですよ」

 

「えへへ……ありがとう!」

 

 

 不浄の一切を清める光を食い入るように見つめていた伯爵夫人さんのところへ圃人侍女(おかあさん)がぽてぽて近寄り、ふふんと薄い胸を張っています。ちょっと語彙力の低下した想い人からお褒めの言葉を貰い嬉しそうに笑みを浮かべる姿を見ていると、先程ゲロビをぶっぱしたうちの1人であるとはとても思えません。

 

 

「……おまたせ。それじゃ、そろそろいこっか?」

 

「――はい。何処までも、ずっと一緒に……」

 

 

 そう言葉を交わす2人の身体が徐々に光に包まれていきます。≪浄光(サンライト)≫と≪聖光(ホーリーライト)≫の複合効果である解呪、これは吸血鬼化を解くものではありますが、イコール人間に戻るというわけではありません。先程注がれた魔力によって辛うじて保っていましたが、伯爵夫人さんの身体は既に生者のものではないのです……。

 

 

義妹(いもうと)たちのことは心配無用。大っぴらに支援は出来ぬが、理不尽な待遇にはさせぬと約束しよう。安んじて逝かれると良い……2人の義母(はは)上」

 

「!! 私たちを、義母(はは)と呼んでくださるのですね……」

 

「えへへ、ちょっと恥ずかしいかも! ……みんなのこと、お願いします」

 

「良き旅路であることを祈っているよ。いつか、また……」

 

 

 たくさんの(ソウル)が抜け出し、2人の身体が徐々に透明に変わっていく中で旅立ちの挨拶を交わす4人。義母(はは)と呼ばれ感極まった伯爵夫人さんが殿下へと抱き着き、圃人侍女(おかあさん)が面白がって真似するのを銀髪侍女さんが(ウォトカ)の肴にしています。やがて2人の身体が掬い上げられるようにふわりと浮かび、他の(ソウル)とともに消えていきました……。

 

 

 

 

 

 

「さて、あとは向こう次第だけど……どうかな、彼らは勝てると思うかい?」

 

「言うまでも無かろう。たかが魔人の1体で世界が崩壊するなら、この世はとうの昔に暗黒に包まれている」

 

「まぁね。――世界の半分よりも姫との爛れた生活を選んだ背中で語る勇者に乾杯」

 

 

 スゴイ=シツレイなことをのたまいながらスキットルを傾ける銀髪侍女さんを半目で睨みつつ、騒がしくなってきた入口へと歩き出す金剛石の騎士(金髪の殿下)。包帯を巻いた赤毛の僧侶や犬人の戦士に手を挙げることで応じながら、既にその思考は今回の事後処理へと向けられているみたいです。

 

 

 さぁ、残るは魔人との決着のみ! 果たして六英雄(オールスターズ)with『吸血鬼侍』ちゃん&道化師(フラック)はどんな活躍を魅せてくれるのでしょうか? 次回、決着予定!!

 

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 

 





 やっと終わりが見えてきたので失踪します。


 評価、お気に入り登録ありがとうございます。また、誤字のご報告につきましても有難く思っております。どんどん発掘されてお恥ずかしい限り。

 感想を頂けると更新に対するモチベが上がりますので、お時間がありましたら是非に。可能な限り返信させて頂きますので、よろしくお願いいたします。


 お読みいただきありがとうございました。


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