ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 とりあえず山場は越えたので初投稿です。




セッションその16-7

 

 はぁ……尊い……。何度観てもあの2人の関係は堪りませんねぇ! 秘密は甘いもの、アカシックレコーダーから引っ張り出した記憶映像の編集に全力を尽くした甲斐があったというものです!!

 

 ――フフ、万知神さんにとっても予想外だったんですよね。彼女が『吸血鬼侍』ちゃんから分離して王城へと向かったこと。本来は『吸血鬼侍』ちゃんの外付け記憶装置としてお母さんの(ソウル)を使う筈でしたもんね。

 

 映像記憶で死霊術師(おとうさん)吸血鬼(ヴァンパイア)と言っていましたが、あれはあくまで通過点。吸血も本来の生体維持に必要な機能ではなく、当時の技術でもっとも効率的な方法を採用しただけでしたし。吸血鬼稀少種(デイライトウォーカー)と見做されている吸血鬼君主ちゃんも、まだまだ発展途上の存在ですからねぇ。

 

 だって、万知神(おとう)さんが目指していたのは……光と、水と、そして人との絆で成長する新たな祈りを持つ者(プレイヤーキャラクター)。人々に寄り添い歴史を紡いでいく『永久に咲く花々(オートマチックフラワーズ)』なんですから!

 

 

 それが何故かお母さんが独立して動き出しちゃったもんだから、この後処理が追い付かずに『吸血鬼侍』ちゃんの活動に制限が掛かっちゃって。ほんへ開始直前まで機械的に秩序の敵と吸血鬼を狩る同族殺し(キンスレイヤー)モードと、戦うことを知らない甘えん坊さんモードの切り替え方式で過ごすことになったんですよねぇ。お互い我が子を想う母親の強さってのを、ちょっと過小評価しちゃってたかもしれませんねぇ……。

 

 まぁ、それに目を付けた太陽神さんの協力で1つの身体に2つの魂を搭載した前期型『吸血鬼侍(本体&分身)ちゃん』が生まれ、様々な出会いや交流を通じて成長、そして彼女たちと愛を育んだことで……お二方の愛し子である『吸血鬼君主ちゃん』『吸血鬼侍ちゃん』として新生したんですから、結果オーライってヤツですね!!

 

 ――っと、可愛いN子さんともあろう者がちょっと語り過ぎちゃいましたね。そろそろ実況も再開するみたいですし、振り返りはまたの機会ということで!

 

 


 

 

 前回、魔穴組の決着がついたところから再開です。

 

 『吸血鬼侍』ちゃんから分離し、大切な約束のために魔穴へと赴いた圃人侍女(おかあさん)。伯爵夫人さんと再会を果たし、狂王を塵ひとつ残さず消滅させて彼女とともに円環へと還っていきましたね。

 

 さて、残るは迷宮組による魔神討伐です。『吸血鬼侍』ちゃんと道化師(フラック)の加入?により原作に比べて戦力はアップしているように思えるかもしれませんが、実はそうでもありません。

 

 『吸血鬼侍』ちゃんが先着してしまったため、コントロールセンターにおける女司教ちゃんを置いてけぼりにした冒険者一行(ガーディアン)との戦いがまるまるスキップされてますし、魔人との顔合わせもしていないので女戦士さんの槍も神聖なる樫の木(ハードウッド)ではなく、上質な魔法の武器ですが単なる店売りのもの。分割詠唱による呪文節約術は会得しているみたいですが、個々の戦闘力は本来のものより若干低下していると考えるべきでしょう。

 

 そのため、魔人の待つ最奥を目指す曼荼羅を模した迷宮の探索は彼らの消耗を抑えるべく『吸血鬼侍』ちゃんが積極的に前に出ているのですが……。

 

 

「――なぁ、ワイらの力を温存するためっちゅうのは判るんやけどな?」

 

 

 通路は全て暗黒領域(ダークゾーン)、四辻には念入りに回転床の(トラップ)、玄室には死霊術師(おとうさん)『吸血鬼侍』ちゃん(ヴァンパイアロード)の劣化コピーがぎっしりという、そびえ立つクソのような迷宮の造りに辟易とした様子の半森人の斥候さんが遠い目をしながら呟いていますね。≪核撃(フュージョンブラスト)≫や≪吹雪(ブリザード)≫が飛び交い、硬質な剣戟の音が響く光景を前に呆れた様子で現在の心境を吐露しています。

 

 

 

「もうアイツだけでええんやないか???」

 

「ンンン~、実はそうも言ってられないんですよねぇ!」

 

 

 彼の呟きに反応したのは道化師(フラック)。必中である筈の≪力矢(マジックミサイル)≫を腰のグラインドで躱すという絶対に真似をしたくない神業を披露し、女戦士さんと従姉ちゃんからの絶対零度の視線を心地良さそうに受け止めながら、冒険者たちに『吸血鬼侍』ちゃんの欠点を告げています。

 

 

「今のあの()は底に穴の開いたバケツみたいな状態でして。ああやって斃した相手から(ソウル)を奪っている間は辛うじて動けますケド、それが尽きればあっという間に燃料切れ。赤子が眠りに落ちるようにいきなり活動を停止してしまうでしょう」

 

 

 呪文の詠唱に入った魔術師の首を村正で斬り飛ばし、撃ち込まれる魔法は呪文無効化と再生の能力で強引に突破。自分と同じ姿の吸血鬼(ヴァンパイア)の喉元に喰らい付き血液ごと(ソウル)を取り込む戦い方はあまりに痛々しいもの。思わずといった様子で天秤剣を握り駆け出そうとした女司教ちゃんの肩を頭目("君")が押さえ、黙って首を横に振っていますね。

 

 

「それに、いくら個としての力が皆さんより上であっても、この先で戦う魔人はそのさらに上! 個の力で敵わぬ以上、皆さんこそが勝利の鍵を握る存在なのデース!!」

 

 

 たしかに。たとえ相手が自分たちより強くとも、囲んで棒で叩いて打倒するのが弱者の戦法。そういう意味では対魔人戦における『吸血鬼侍』ちゃんの役割は露払い兼肉壁あたりが妥当ですね。

 

 

「えっと、じゃあなんであなたは動かないの? あの子を援護してあげたら?」

 

 

 うむ、従姉ちゃんの指摘はごもっとも。まるで最初の白金等級の冒険者一党(D〇3勇者御一行)にいたという遊び人ばりに何もしない道化師(フラック)にみんなの瞳が集中しています。疑惑の視線に応えるように仰け反りながら放たれた言葉は……。

 

 

「いえ、ワタクシこう見えて徘徊する怪物(ワンダリングモンスター)的存在でして。自分から()を出すのは禁じられているのですよ!」

 

「……やっぱりここに埋めていこうかしらねぇ、この変態はぁ……ッ」

 

 

 「いやん、こわ~い!」と野太い悲鳴を上げながらダバダバと駆けまわる道化師(フラック)を青筋を浮かべた笑顔で追い回す女戦士さん。他のみんなも呆れ顔ですが、いい感じに悲壮感や緊張は次元の彼方に吹き飛んでしまったみたいですね。

 

 

「けぷっ……ふぅ、おなかいっぱい!」

 

「あ、待って。……ほら、口元に血が付いてますよ」

 

「わわ……えへへ、ありがとう!」

 

 

 お、死体から血液と(ソウル)を補給していた『吸血鬼侍』ちゃんが戻って来ましたね! 女司教ちゃんに口元を拭ってもらい感謝のハグをしているのを頭目("君")がガン見して……あ、ニコッと笑う従姉ちゃんに見付かって「邪ッ」と鉄拳制裁されました。ロリ百合は尊いからね、仕方ないんです。

 

 

「ハァ……なんかアレコレ考えるんが馬鹿らしゅうなってきた。サッサと終わらせて冷えた麦酒(エール)で優勝するで!」

 

豹芋(ジャガイモ)と鶏の揚げ物もな。檸檬汁はかけておいてやろう」

 

「戦争の火種作るのやめーや!?!?」

 

 

 ……うん。やっぱりいいなぁ、冒険に挑む冒険者は――っと、どうやら決戦前の装備確認が出来たみたいですね。扉の奥から漂う怪しい空気と血の匂い。見た目は今までの玄室と違いはありませんが、間違いなく魔人はこの先に待っています。互いに顔を見合わせ、決意に満ちた表情で頷く一行。半森人の斥候さんと頭目("君")が両開きの扉を蹴り開け、決戦の場へと突入しました!

 

 


 

 

「前衛は一度後退、分割詠唱でアイツの≪抗魔(カウンターマジック)≫を削りにいくよ! おちびちゃん、暫く前をお願い出来る?」

 

「ん、まかせて!」

 

 

 絶対的価値観の相違から決裂した戦闘前の会話。≪死≫を体現したような黒傘を相手に『吸血鬼侍』ちゃんたちは驚くほど優位に戦闘を進めています。

 

 頭目("君")と女戦士さんが前衛となり黒傘の妖刀を2人掛かりで防ぎ、疲労が蓄積してきたタイミングで半森人の斥候さんと蟲人僧侶さんにスイッチ。後退する2人への追撃を妨害したタイミングで『吸血鬼侍』ちゃんが防御を捨てた一撃を黒傘に叩き込み、反撃を貰いつつ間合い(エンゲージ)から離脱。

 

 追加攻撃(セカンダリー)で防御の薄い中衛を狙う黒傘に向かって分割詠唱による≪核撃(フュージョンブラスト)≫が飛び、苦虫を噛み潰したような顔の魔神が≪抗魔(カウンターマジック)≫で呪文を打ち消し。機会攻撃回数(迎撃の備え)を使い切ったのを見計らって、呼吸を整えた頭目("君")と女戦士さんが前線に復帰。床に転がっていた『吸血鬼侍』ちゃんを女司教ちゃんへと放り投げつつ再び斬り結ぶサイクルが確立しています。

 

 

「ひゃんっ!? もう、わたくしみなさんのようなクッションは持っていないんですよ?」

 

「ん~? でもいいにおい……。ヨシ、なおった! いってきます!!」

 

「い、いってらっしゃい……?」

 

 

 深く抉られた脇腹をあっという間に修復し、むふ~! と漲った様子で黒傘の間合い(エンゲージ)に突っ込んでいく『吸血鬼侍』ちゃんを戸惑いながら見送る女司教ちゃん。一見巫山戯ているように思えますが、黒傘の表情を見る限りなかなか効果的みたいですね。

 

 自らの負傷を無視して重い一撃を繰り返す『吸血鬼侍』ちゃんを何故黒傘は放置しているのか。初撃(プライマリー)だけで彼女の生命力を削り切れていないという点もありますが、もっとも影響を与えているのは……。

 

 

 

「ええい鬱陶しい! 先刻から邪魔ばかり……君、やる気はあるのかねぇ!?」

 

「おお、こわいこわい! こわいからそれも打ち消しちゃいましょうねぇ!!」

 

 

 ――奇妙に身体を捩り、手に持つ杖を名状しがたい動作で振るう、道化師(フラック)による呪文妨害です。

 

 

 近接攻撃と呪文を両立させた上級職である『侍』。魔人『黒傘』の核となっている職業のため、奴もまた強力な呪文を唱えることが可能です。現に今も剣戟の合間に後衛に向け≪稲妻(ライトニング)≫を唱えようとしていますが……。

 

 

「ンンー……それは通せませんねぇ! マナ漏出(Mana Leak)!!」

 

 

 ぷしゅーという気の抜ける音とともに発動すること無く消費される呪文回数。≪力矢(マジックミサイル)≫は途中で進路を変え、まるでブーメラン(Boomerang)のように術者である黒傘自身に命中し、アンブッシュ狙いで展開された≪魔霧(マジックフォッグ)≫は雲散霧消(Dissipate)。打ち消し必須な≪核撃(フュージョンブラスト)≫にはもちろん、伝統と信頼の対抗呪文(Counterspell)! フルパーミッションとしか言いようのない嫌がらせに黒傘はストレスでマッハ。トレードマークのにやにや笑い(Grinning)も忘れ、道化師(フラック)に向かって怒鳴り散らしています。

 

 

「君、いい加減にしたまえ! 君は決闘をなんだと……ぬわーっ!?」

 

「すきあり~! ていっ!!」

 

「グワーッ!?」

 

 

 前衛を無視して道化師(フラック)を狙おうと踏み込んだ瞬間、足元に出現したぐるぐる(Twiddle)によって無様に転倒。直後上から降ってきた『吸血鬼侍』ちゃんにお返しとばかりに腹部に村正を突き立てられ、苦悶の声を上げています。床に縫い留められる形となった黒傘にクネクネと歩み寄る道化師(フラック)。黒傘の顔そばにしゃがみ込み、他のみんなからは顔が見えない角度で何事か囁いてますね。ちょっと音量を上げてみて、と……。

 

 

 

 

 

 

「おやおやぁ? よりにもよってアナタが『決闘』を口にするのですかぁ? ≪豊穣≫さんと一緒になってはっちゃけた挙句、四方世界(この卓)に総力戦という概念を持ち込んだ、他ならぬアナタが!」

 

 

 

 

 

 

「――個人の生命と誇りを賭けて行われていた『決闘(デュエル)』を単なる≪死≫の蒐集場所に貶め、己の信仰を獲得する場に無理矢理作り変えた無作法。ワタクシ(N子)、そういうの一番嫌いなんですよ」

 

 

 

 

 

 

 ヒエッ……表情、というか顔のパーツ全てが消失した暗黒フェイスで見下ろす道化師(N子さん)怖っ!?

 

 四方世界の理から外れたその言葉に相手の正体を見出したのでしょう。怒りを浮かべていた黒傘の表情が呆気にとられたものに変わり徐々に笑みへと移り変わっていきます……。

 

 

 

 

 

 

「――ハ」

 

 

 

「ハハハ……」

 

 

 

「ハァーッハッハッハ!!」

 

 

 

 魂を直接鑢掛(やすりが)けするような哄笑。その悍ましさを感じ取り、無意識に黒傘から距離を取る『吸血鬼侍』ちゃんと"六英雄(オールスターズ)"。腹部を貫通し迷宮の床面に突き刺さっている村正を置き去りに、漆黒の影がゆらりと立ち上がりました。

 

 

「そうか、それはたしかに私たちに非があるねぇ。だがいつまでも同じ遊び方ではいずれ飽きてしまう、違うかい?」

 

 

 謝罪ともとれる言葉を紡ぐ黒傘の足元には沸き立つように蠢く影。そこから次々に赤黒い輝きを放つ無数の霊体(闇霊)が立ち上がり、戦の歓喜に狂った瞳で冒険者を見つめています。

 

 

「それに、このまま何もせず逃げ帰っては()()に何を言われるか判ったものではない。だから……最後にひとつ遊戯(ゲーム)をしようじゃあないか!」

 

「……遊戯(ゲーム)やて?」

 

 

 周囲を警戒しながら集合し、油断せずに装備を確認していた半森人の斥候さんの呟き。それを耳聡く聞きつけた黒傘が楽しくて仕方が無いといった声で遊戯(ゲーム)規則(ルール)を話し始めました……。

 

 

規則(ルール)は簡単、すべての闇霊があるべき場所へ還るまで立っていることが出来たら君たちの勝ちだ! 死して尚心躍る闘争に興じる彼らを殺すことは絶対に不可能、彼らを消滅させるには神官による≪解呪(ディスペル)≫、そして……!」

 

「!? あぶないっ!」

 

 

 危機を察知した『吸血鬼侍』ちゃんの視線の先には、混沌の海から這い出した闇霊が彼女の背後に立ち上がり、手に持つ巨大な刃物(肉断ち包丁)を女司教ちゃんへと振り下ろす光景が!

 

 

「……え?」

 

 

 急転直下の事態が続き判断力が低下してしまったのでしょう。眼前に迫る錆びだらけの刃を呆けたように眺める女司教ちゃん。間に合わぬと知りながらも必死に手を伸ばす『吸血鬼侍』ちゃんの意思に応えるように、彼女の身体から暗月の蒼き光を纏った人影が飛び出して行きました!!

 

 

「――――!!」

 

「――――!?」

 

 

 女司教ちゃんをすり抜け、分厚い刃にその身を両断されながらも愛用の武器である突剣(レイピア)を闇霊へと突き立てる暗月霊。組み合うように倒れた2体の身体が光に包まれ、あるべき場所へと還っていきます。それを見た神官の顔は青褪め、視線で人が殺せたらという表情で黒傘を睨みつけていますね。

 

 

「なんて、酷いことを……っ」

 

「相手の実弾数が不明な状態での競りか。他人の命が賭けられていなければ面白いと笑うところだが……」

 

 

「もうお判りだろう、その吸血鬼(ヴァンパイア)が貯め込んでいる(ソウル)ならば彼らと相討ち、双方この迷宮から解放される。……彼我の(ソウル)の総量はほぼ同じ。私が確保していた(ソウル)は全て解き放った! ――さぁ、その忌み子が倒れる前に全ての闇霊を救ってみせたまえ!!」

 

 


 

 

「だめ、もっと一か所に闇霊を集めて!」

 

「ンなこと言われても……大将後ろ!?」

 

「――――!!」

 

 

 ――どれほどの時間が経ったでしょうか。長時間の戦闘で冒険者たちの動きは精彩を欠き、闇霊を≪解呪(ディスペル)≫する神官の呪文も尽きかけた状態。大ダメージを与えれば闇霊が一時的に混沌の海に還ることに気付き周囲を囲まれる恐れは無くなりましたが、その代償として前衛が浅くない傷を負ってしまいました。闇霊自体の数も減り、漸くの終わりが見えてきた冒険者たちの顔は一様に暗いものです。

 

 

「ていっ! ……あ、あれ?」

 

「!? もう無理に動いてはいけません!!」

 

 

 その理由は『吸血鬼侍』ちゃんの変調。危険な一撃からみんなを護るために暗月霊を用い、戦闘不能者を出さないよう立ち回っていたことで内包する(ソウル)はほぼほぼゼロ。なんとか根性で動いているものの限界なのは誰の目から見ても明らかです。これ以上の消耗は避けるべきだと考えた蟲人僧侶さんが≪解呪(ディスペル)≫の詠唱体勢に入りますが……。

 

 

「グッ……!?」

 

「ちょ、ちょっとぉ、これ以上の限界突破(オーバーキャスト)は魂が耐えられないわよぉ!?」

 

 

 既に常の回数を使い切り、限界突破(オーバーキャスト)まで行っていた蟲人僧侶さんが崩れ落ちるように膝を付き、女戦士さんが慌ててその身体を支えています。彼女自身も度重なる酷使で得物を失い頭目("君")から借り受けた短刀で戦っていたほどですので、その消耗っぷりが判っていただけるかと。

 

 

「どうしよう……あとちょっとなのに、どうしても手札(リソース)が足りない……っ」

 

 

 魔法では闇霊に有効な手が無く、≪粘糸(スパイダーウェブ)≫で前衛の援護を行っていた従姉ちゃんが爪を噛みながら必死に思考を巡らせていますね。蟲人僧侶さんがダウンし、女司教ちゃんも残る手段は限界突破(オーバーキャスト)という状況。生半可な方法では覆すことは出来ません。

 

 

「アナタがた一党(パーティ)が生き残るだけならば、あの()に全ての闇霊を押し付けるのが一番確実でしょうネェ」

 

「うっさい、ちょっと黙って! ……というか、貴方は何か出来ないの?」

 

「ンンン~、ワタクシ発動する呪文を打ち消すのは得意ですが、既に発動している儀式を消去するの苦手なんですよ」

 

 まぁ、青ですからねぇ。従姉ちゃんの見る前で闇霊をバウンスしてますが、すぐに何事もなかったかのように現れる姿を見て従姉ちゃんが溜息を吐いてますね……と、おや? 悩まし気に腰を揺らしていた道化師(フラック)がなんだか「ヤベッ」って顔に……って。

 

 

「かっ……はぁ……っ!?」

 

「――いやぁぁぁぁぁ!?!?」

 

 

 悲鳴の先には闇霊の持つ大槍(グレートスピア)に腹部を貫かれ、高々と掲げられている『吸血鬼侍』ちゃんと、転倒した姿でそれを見上げる女司教ちゃん。どうやら彼女の≪解呪(ディスペル)≫に抵抗した闇霊が突撃してきたのを『吸血鬼侍』ちゃんが突き飛ばして庇ったみたいです。

 

 

「く……うううぅ……っ!」

 

 

 宙に掲げられたまま闇霊へと小さな手を伸ばす『吸血鬼侍』ちゃん。その手から浮かび上がるように暗月霊が顕現し始めますが、同時に彼女の身体から一気に力が抜けていくのが見て取れます。うむむ、活動限界はとっくに過ぎているのに今まで良く保ったというべきなんでしょうが……。

 

 

 

 

 

 

「……か」

 

 

 ……ん?

 

 

 

 

 

 

「……すか」

 

 

 

 

 

 

「何処かの誰かの幸せの為に、その身を、魂を、全てを削って抗う幼子ひとり救えずして何が英雄ですか!!」

 

 

 

 ――それは、初めての冒険で失敗し、ゴブリンに穢された少女の原点。

 

 『鑑定』と呼ばれ、邪険に扱われ、傷モノと蔑まれながらも迷宮を踏破する者に助力しようと抗ってきた冒険者の声。

 

 暗闇に怯え、他人の視線に恐怖し、それでも前に進もうと決意した、かつての自分を呼び覚ます再誕の叫びです……!

 

 

 手に握る天秤剣を一振りすれば幻のように消える闇霊。支えを失い落下する『吸血鬼侍』ちゃんを優しく抱きとめたその腕は、女司教ちゃんのものではありません。

 

 

「ンな……!?」

 

「ほう……!!」

 

「「綺麗……」」

 

「(デッッ!!!)」

 

 

 彼女の背後に現れし至高神さんの似姿。同性すら魅了する蠱惑的な肢体を薄衣で包み、眼帯とヴェールで顔の上半分を隠した美しい半透明の女性が、その豊かな胸元に『吸血鬼侍』ちゃんを抱きしめているのです……! あ、"君"は後で≪真実≫さんと一対一で面談です、イイネ?

 

 

「……んゆ?」

 

 

 (ソウル)まで蕩けるような柔らかな感触と温もり、そして甘い香りによって意識を呼び起こされ、たわわに顔を埋めたままキョトンした顔で女性を見上げる『吸血鬼侍』ちゃん。口元しか見えぬ女性が何かを囁き、それを聞いた『吸血鬼侍』ちゃんは安心したようにふたたびたわわへと顔を擦り付け始めました。

 

 

 一党(パーティ)の反応と背後のイチャコラに苦笑しつつ、黒傘へと向き直る女司教ちゃん。その顔には一切の迷いはなく、決断的な意志に満ち満ちています……!!

 

 

 

「生まれた命を祝福せず、あまつさえ賭博(ギャンブル)に巻き込むなど言語道断! 大人のすることではありません!!」

 

 

 天秤剣を肩に担ぎ、ゆっくりと黒傘へ歩み寄る女司教ちゃん。彼女が歩を進める度、足元の混沌が音をたてて蒸発していきます。彼女から発せられる神気(オカンちから)に当てられた闇霊たちも赤黒い顔を真っ青にして光となって消えていってますね……。

 

 

「ハハハ……まさかこんな形で盤面をひっくり返されるとはねぇ。これも君たちの脚本(シナリオ)通りなのかい?」

 

「まっさかぁ! 彼女が骰子(ダイス)を投じ、その目が決定的成功(クリティカル)だっただけですよぉ? ……それよりも、後ろ後ろ~!!」

 

「……え?」

 

 

 勝敗を認め、最後はつよつよムーブで退場しようとする黒傘。しかし世間はそんなに甘くないんだよなぁ。道化師(フラック)の声に振り返った黒傘の目に飛び込んで来たのは、天秤剣をフルスイングする女司教ちゃんの美しい一本足打法です!

 

 

 

 

 

「いつまでも遊んでないで、さっさと(盤外)に帰りなさいッ!!!」

 

 

「ガッ!?」

 

 

 側頭部をジャストミートされ、口からキラキラしたものを放出しながら吹き飛んでいく黒傘。玄室の壁にぶつかる前にその身体は消滅し、同時に床に広がっていた混沌の海も消え去りました。コツンと床に天秤剣の先端を打ち付け鼻を鳴らす女司教ちゃんに女性陣が笑顔で駆け寄り、男性陣が怯え交じりの表情でそれを眺めていますね。

 

 

「女とは、強いものだな」

 

「こっわ……ワイ、絶対にアイツを怒らせんようにしよ……」

 

「(――コクコク!!)」

 

 

 男性陣が心を入れ替えているその一方、女性たちのほうにも動きがありますね。黒傘を盤外ホームランした女司教ちゃんのところへ幻影の女性がゆっくりと近付き、抱きかかえていた『吸血鬼侍』ちゃんをそっと差し出しています。おずおずと手を伸ばした女司教ちゃんが彼女を受け取り、未だ成長前の胸元にしっかりとホールドしたところで……。

 

 

「んむ!?」

 

「「きゃー!!」」

 

 

 ――唐突な柔らかい感触に硬直する女司教ちゃん。口内を蹂躙する蛇に圧倒され、まったく身動きが取れなくなってます。暫くして満足したのか幻影の女性(至高神さん)が唇を離し、悪戯っ子のように微笑んでますね。アワアワと再起動した女司教ちゃんの頭をひと撫でし、その姿はゆっくりと消えて……あ、冒険者一党面していた道化師(フラック)に蹴りを入れて無言で何かアピールしてます! ヒンヒン泣きながら首肯する彼を満足そうに見て、今度こそ消えていきましたね……。

 

 

「えっと、あの人……人? 何を伝えようとしてたの?」

 

「アタタ……いえ、ワタクシがこの迷宮の後始末を押し付けられただけですよ? そんなことより、その()についてですが」

 

 

 蹴り上げられたケツを擦りながら立ち上がり、冒険者たちを見回す道化師(フラック)。今まで通りの巫山戯きった態度の中に僅かばかりの真摯さを滲ませた口調で『吸血鬼侍』ちゃんの今後について話し始めました。

 

 

「残存(ソウル)量は記憶(メモリー)を維持出来るギリギリのところ。おそらく記憶障害が残るでしょうねぇ。それに母親の(ソウル)が抜けた影響で、先程までのような性能は発揮出来ない可能性が高いです。なにより強制休眠状態(スリープモード)に入ってしまったので、次に何時目を覚ますかは……」

 

 

 矢継ぎ早に突き付けられる悲観的な情報の数々。ですが『吸血鬼侍』ちゃんを抱く女司教ちゃんの顔にはマイナスのそれは一切ありません。寝息を立てずに胸元に頬を寄せる小さな身体をギュッと抱え直し、眉を立てた強い笑みで宣言するのは……。

 

 

「この子は、私が冒険者として一番最初に抱いていた想いを呼び起こしてくれました。今度は、私がこの子の願いを叶えてあげます! だって……」

 

 

 

 

 

 

「だって、この子は私の大切なお友達(ひと)ですから!!」

 

 

 

 ――大切な想い人(ひと)の間違いなんだよなぁ……。

 

 

 

 さて、記憶映像はこれで終了ですね! 次回はダブル吸血鬼ちゃんの過去を知ったみんなの反応と、この祭祀場跡でダブル吸血鬼ちゃんがやりたかったことの2本をお送りする予定です!!

 

 ――え、肝心の迷宮探検競技はどうしたんだって? そ、その後に連続しての実況になりますから……たぶん、きっと、メイビー(震え声)。

 

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 





 本来の予定ではここからがセッション16だったので失踪します。

 評価、お気に入り登録ありがとうございます。読んでくださった方の反応が感じられますと、やはり更新速度が上がりますね!


 ご感想もあわせてお待ちしております。感想の内容によって、だだ甘やねっとり、甘酸っぱい感じなど次話の方向性が変わったり変わらなかったりするかもしれません。よろしくお願いいたします。


 お読みいただきありがとうございました。

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