ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 わー夏休みらーなので初投稿です。




セッションその16-8

 

 前回、とうとうダブル吸血鬼ちゃんのルーツが明らかになったところから再開です。

 

 長い長い記憶映像が終わり、徐々に明るさが戻りつつある祭祀場跡。誰ともなく深い溜息が漏れる中、"六英雄(オールスターズ)"と『吸血鬼侍』ちゃんのその後の軌跡が映されています。

 

 魔人討伐の功績で金等級に任ぜられたのち、王都を拠点に冒険を行い数多の混沌の野望を打ち砕く"六英雄(オールスターズ)"の輝かしい活躍。その裏では万知神さんからの託宣(ハンドアウト)を受け取るたび休眠状態(スリープモード)から覚醒し、野良や逃亡していた先王派の吸血鬼(ヴァンパイア)を狩り混沌の勢力の名前有り(ネームド)を殲滅し続ける人形のような『吸血鬼侍』ちゃんの密かな活動があったみたいです。

 

 お、映像では身体を維持する吸血をすべて狩りの対象で賄う不安定さを心配し、銀髪侍女さんや"六英雄(オールスターズ)"の面々が血を吸うよう促しても頑なに拒否する様子が流れていますね。王宮の一室に用意された小さな寝台(ベッド)で上体を起こした格好の『吸血鬼侍』ちゃんを従姉ちゃんが抱きしめ、自分からちゅーちゅーするよう説得していますが……ギュッと口を一文字に閉じて断固拒否の構え。少しでも処理を軽くするべく会話機能が制限されていたため意思疎通はジェスチャーだけですが、どうやら一度口を付けたら歯止めが利かなくなるのを恐れていたみたいですね。

 

 

 さて、映像ではおおよそ3年ほど時間が経過した辺りでしょうか。斬首戦術が徐々に効果を発揮し混沌の勢力の足並みが崩れ、秩序側の多種族連合が形に成り始めた頃。"六英雄(オールスターズ)"は一党(パーティ)を解散することになりました。といっても喧嘩別れや誰かが死んでしまったというわけでは無く、むしろおめでたい理由だったんですけどね!

 

 

「スマン! 流石にガキを産む時くらい傍に居てやりたいんや!!」

 

「フム……では俺もそろそろ故郷(くに)へ戻るか」

 

「うーん……残念だけど、『いつまでもみんな一緒』ってわけにはいかないもんね!」

 

 

 城塞都市で口説き落とした奥さんのおなかが大きくなったことで半森人の斥候さんが冒険者を引退する決意を固めたのを切っ掛けに、それぞれの道を歩むことになったそうです。

 

 蟲人僧侶さんは故郷である砂漠の国へと戻り、冒険のなかで"灯"の存在を知った従姉ちゃんは王国の南方にある港町(トーチ・ポート)という貿易港を拠点に知識の探求を続けることにしたみたいです。なお剣の道を追い求める"君"と彼についていく形で女戦士さんはラブラブ2人旅に出発したんだとか。

 

 そうやって皆が己の道を進む中、至高神の神殿から大司教の地位を提示された女司教ちゃんはその招きに応じ、拠点にしていた王都から水の街へと移ることに。映像では王宮の一室に寝かされている『吸血鬼侍』ちゃんを囲って新たに王となった金髪の陛下や銀髪侍女さん、そして女司教ちゃんが話し合っている映像が流れています。

 

 

「流石に吸血鬼(ヴァンパイア)入りの棺桶を持参して神殿に引っ越すわけにもいかないしね。休眠状態(スリープモード)の彼女は王宮に寝かせておいて、恋する乙女の地固めが終わってから引き渡す予定だったんだ」

 

 

 スキットル片手に事の顛末を語る銀髪侍女さん。この後起きる喜劇を想起し既にニヤニヤ笑いを浮かべています。記憶映像では女司教ちゃんが『吸血鬼侍』ちゃんの頭を撫でて退出した後、彼女を見守る定点カメラみたいな映像に切り替わっています。画面に付随する時刻が徐々に進んでいき、女司教ちゃんが出発して数日が経過したある日の夜明けが近付いた頃……。

 

 

「……んゆ?」

 

 

 寝台(ベッド)から上体を起こし、ゆっくりと目を開く『吸血鬼侍』ちゃん。その圃人侍女(おかあさん)譲りの三白眼には僅かに"灯"が煌めいています。キョロキョロと不安げに周りを見渡し、誰もいないことに気付いたその目に涙が浮かび始めました。

 

 

「グス……ヒック……」

 

「――ん? おや、こんな夜更けにどうしたんだい?」

 

 

 幼子がぐずるような声を聞きつけ、やって来たのは銀髪侍女さん。泣きじゃくる『吸血鬼侍』ちゃんを見て目を丸くしましたが、そっと寝台(ベッド)に近付き小さな身体を抱きしめました。うーうーと言葉にならない声を上げ続ける『吸血鬼侍』ちゃんの様子から只事では無いと感じ取り、ちょっと困った顔になってますね。その一方で撫でられている『吸血鬼侍』ちゃんも目の前の彼女の匂いがいちばん大好きなものではない事に気付き。スンスンと鼻を鳴らしていますね。

 

 

「うー……」

 

「……もしかして、彼女を探しているのかい? 困ったなぁ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 『暫くして向こうが落ち着いたら君を連れて行ってあげよう』と続く言葉は残念ながら『吸血鬼侍』ちゃんの耳には入らなかったみたいですね。『置いて行かれた』『捨てられた』と思い込んだ彼女の涙腺は完全に決壊、ギャン泣きまであと2秒といったその時……。

 

 

 

 

 

ギィ……ガシャン!!

 

 

「んなっ!?」

 

「……ふぇ?」

 

 

 突然音をたてて弾け飛ぶ鎧戸。『吸血鬼侍』ちゃんに日光が当たらぬよう厳重に固定されていた筈の防壁が部屋の内側へと落下し、ぽっかりと口を開けた虚から吹き込むまだ肌寒い春の空気が部屋の中に満ちていきます。風によってはためくカーテンの向こう、西()()()に設けられた窓から、まるで『吸血鬼侍』ちゃんを導く様に()()()()()()()()が差し込んでいます……!

 

 

「うー……うー!!」

 

「ちょっ、待ちたまえ!?」

 

 

 スルリと腕の間から抜け出し光に向かって進む『吸血鬼侍』ちゃんに制止の声をかける銀髪侍女さんの顔が驚愕の色に染まります。死霊術師(おとうさん)によって生み出された特異な存在であるとはいえ、吸血鬼(ヴァンパイア)である以上日光は最大の弱点の筈。しかし眼前の小さな吸血鬼(ヴァンパイア)はまるで()()()()()()()かのように光の海の中を進んでいるのですから。

 

 窓枠をよじ登り、背中から翼を展開した『吸血鬼侍』ちゃんが顔を出したのは王宮の外れにある古い塔。かつては罪を犯し、しかしその血を保つために死を与えられなかった王族の罪人が囚われていたという暗黒の塔から、西に向かって一筋の光が伸びています。その光が指し示す先に求める人物がいると確信する『吸血鬼侍』ちゃんが、躊躇せずに空へと羽ばたいていきます……。

 

 

「やれやれ、陛下にはどう伝えたものか。……まぁ、上手くやりたまえよ?」

 

 

 

 

 

 

「ん……」

 

 

 王都を西に2日ほどの距離にある、王国最大の至高神の神殿を擁する水の街。着任の挨拶や街の有力者との顔合わせを終えやっとまともに休むことが出来た女司教ちゃん――いえ、もう剣の乙女ちゃんと呼んだほうが相応しいでしょうか――が眠る神殿の寝室。シーツに包まれた肢体は未だ幼さを感じさせるもので、今のエロ……ドスケベ……蠱惑的なプロポーションからはかけ離れたものです。心身ともに疲労しているものの習慣というものは怖ろしいもので、夜明けとともに目が覚めてしまったみたいですね。

 

 シーツを身体に巻き付け寝室のテラスから外へ出る剣の乙女ちゃん。肌に感じる空気は少々冷たく、彼女の意識を覚醒へと導いていきます。眼帯を外し薄ぼんやりとした視界の中、顔を覗かせ始めた太陽の光がゆっくりと身体を温めていく中で、物凄い速度で接近してくる何かに剣の乙女ちゃんが気付きました。

 

 太陽の光を背に自らを目指して飛翔する強大な魔力。月と、そして太陽の香りを纏ったその小さな人影は、彼女がとてもよく知っている相手です。衝突する直前で勢いを殺し、胸元に飛び込んで来た『吸血鬼侍』ちゃんを、驚愕の表情で受け止めました。

 

 

「そんな、どうして。いえ、それよりも……日光を浴びても平気なのですか?」

 

「うー♪」

 

 

 胸元に頬擦りする『吸血鬼侍』ちゃんに戸惑いながら問いかける剣の乙女ちゃん。返答が無いことに首を傾げていましたが、彼女の幼い振る舞いと嬉しそうな声にその正体に気付いたみたいです。

 

 

「そう……ですか。貴女が産まれることなく死を迎え、そして彼女の中で眠り続けていた子なのですね……」

 

 

 はじめての飛行で疲れてしまったのか、翼を格納しウトウトと頭を揺らす『吸血鬼侍』ちゃんを愛おし気に抱きしめ、そっと寝室へ運ぶ剣の乙女ちゃん。彼女を寝台(ベッド)に寝かせ、自らもその隣で横になりました。

 

 

「もう……勝手に飛び出して来たのでしょう? いけない子。……でも、嬉しいです」

 

 

 ひんやりとした小さな身体を抱き枕に穏やかな表情で夢の世界へと旅立った剣の乙女ちゃん。起きて来ない彼女を不審に思った侍女さんが抱き合うように眠る2人を見て大騒ぎになるまで、束の間の逢瀬は続くのでした……。

 

 


 

 

「いやぁ、駆け付けてみたら2人並んで正座させられているんだもの。アレには思いっきり笑わせてもらったね」

 

「えへへ……」

 

「お恥ずかしい限りです……」

 

 

 ドヤ顔の吸血鬼君主ちゃんの横で顔を赤くしてイヤンイヤンと首を振る剣の乙女ちゃんをチェシャ猫の笑みで揶揄う銀髪侍女さん。暴力的に揺れるたわわを見て鼻の下を伸ばしていた槍ニキが石段から蹴り落とされ、戦闘力の違いをまざまざと見せつけられた何人かが膝から崩れ落ちているのはきっと気のせいでしょう。

 

 新任の大司教の寝室に侵入したこと、身に纏う気配が明らかにアンデッドであることから神殿の聖騎士団に討伐されかけた『吸血鬼侍』ちゃんでしたが、剣の乙女ちゃんの必死の説得と巨漢の魔術師さんに≪浮遊(フロート)≫で抱えられながら駆けつけた銀髪侍女さんからの説明でなんとか疑惑は解消。首狩りで仕留めてきた名前有り(ネームド)吸血鬼(ヴァンパイア)の数々や、吸血鬼殺しで名高い牙狩りを壊滅させた"不死王"を喰らった"同族殺し(キンスレイヤー)"ことが判明すると逆に畏敬の目で見られるようになってしまいました。

 

 あ、ちなみに"不死王"を名乗っていた吸血鬼(ヴァンパイア)ですが、大方の視聴神さんが予想していた通り狂王によって吸血鬼(ヴァンパイア)に変じた貴族の生き残りだったみたいです。あの決戦からこっそり逃げ延びた後、自らの領地には戻らず辺境を渡り歩きながら少しずつ配下を増やしていたんだとか。逃げ足の才能は有ったみたいですが、調子に乗って勢力を拡張し過ぎたのが悪かったんですねぇ。

 

 

 

 

 

 

「至高神の神殿には彼女が大司教の剣であり、王国の抱える戦力であることを説明。万知神からの託宣(ハンドアウト)が届くたびに混沌の勢力の首狩りに勤しむ彼女の存在をなんとか許容させることに成功したんだ。もっとも託宣(ハンドアウト)が無い時の彼女は幼い子どもそのものだったから、そのうち聖騎士たちからも可愛がられることになったみたいだけどね。()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……!?」

 

「ヒューッ……痛ってぇ!?」

 

「ちょっ!? 男どもは目を瞑る!!」

 

 

 わーお。妖精弓手ちゃんの大声で一斉に目を背ける男性陣。一瞬遅れた槍ニキがふたたび魔女パイセンに杖で石段から突き落とされてますね。陛下の妹2人や英雄雛娘ちゃんといった初心な女の子たちが真っ赤な顔を覆う指のガバガバな隙間からガン見しているのは……。

 

 

 

「ん!……もう少しゆっくり……」

 

 

 

「ふふ……上手になりましたね……?」

 

 

 

「ん……はぁ……っ。駄目、気持ち良くなってはいけないのに……っ」

 

 

 

 ――『吸血鬼侍』ちゃんにちゅーちゅーされるにつれどんどん今のエロエロ大司教の姿へと育っていく、剣の乙女ちゃんの愛と成長の記憶映像です。

 

 

 魔人との決戦時に≪降神(コールゴッド)≫を唱えたことで至高神さんとの繋がりが生まれていた剣の乙女ちゃん。代償として削れた魂を補うために至高神さんがはっちゃけ、幻影を通じての直接接触(キス)によって濃厚な神気(フレア)を送り込まれていたんですね。

 

 ゴブリンに穢されたトラウマで女性らしい成長を止めていた剣の乙女ちゃんの肉体でしたが、体内の神気(フレア)によって徐々に至高神さんの似姿に近いものへと変わりつつありました。それが『吸血鬼侍』ちゃんへのちゅーちゅーによって加速され、驚きの成長を遂げたわけです! 最初はぺたーんと胸にくっついていた薄布があっという間に押し上げられ、僅か数年でたわわが横から零れ落ちんとするまで育つとは……至高神さん、恐るべし!!

 

 うむむ、まさか剣の乙女ちゃんの急激な成長にはそんな秘密があったなんて……ん? 記憶映像はまだ続いているみたいですね。剣の乙女ちゃんが映像を中断させようとしているのを銀髪侍女さんと賢者ちゃんが妨害していますけど……お、また剣の乙女ちゃんが映りましたね。どうやらちゅーちゅーしてそのまま眠ってしまった『吸血鬼侍』ちゃんを寝台(ベッド)に寝かせている場面みたいですが……。

 

 

 

「ん……ふぅ……っ。ちゅ……れる……」

 

 

 シーツの海に仰向けになった『吸血鬼侍』ちゃんに覆い被さり、そのひんやりとした身体に己の肢体を絡みつかせる剣の乙女ちゃん。ぷにぷにのほっぺたやすべすべの首筋、そしてぺったんこな胸に長い舌を這わせ、もじもじと太股を擦り合わせる姿はあまりにも卑猥過ぎます。男性陣は目だけでなく耳まで塞がれ、自らの痴態を暴露された剣の乙女ちゃんは両手で顔面を覆いプルプルと震えています。そんな彼女の両肩に手を置くのは、とても良い笑顔を浮かべた女魔法使いちゃんと妖精弓手ちゃんです……。

 

 

「まぁ、みんな色々言いたいことはあるけど、とりあえずは私からね」

 

 

 最初に斬り込んだのは妖精弓手ちゃん。左手で剣の乙女ちゃんの右肩を抑えつつ、右手で彼女のたわわをたぷたぷしながら耳元で囁くのは……。

 

 

「――シルマリルとヘルルインがおっぱいのサイズに拘らないのは、間違いなく貴女のおかげね。感謝するわ。……はむっ」

 

「ひぁっ!?」

 

 

 純白のヴェールと金糸のような髪を掻き分け、露出した耳を舌で嬲りながらの告白にビクっと反応する剣の乙女ちゃん。駆け巡る快楽に震える身体を抑えるように女魔法使いちゃんの両腕が腰に絡みつき、反対側の耳にその口が寄せられて……。

 

 

「――神殿の浴場(サウナ)で私にあんな啖呵を切らせるくらいうじうじしてた癖に、あーんなことまでしてたなんて……このエロエロおっぱい乙女……ん……」

 

「んむぅ!?」

 

「あ、じゃあ私も……んちゅ……」

 

「――!?!?」

 

 

 いつぞや新鮮な屍人(フレッシュゾンビ)を解体した後の行為のような濃厚なスキンシップ。2人の触れ合いを見た妖精弓手ちゃんまで参戦し、剣の乙女ちゃんは息も絶え絶えといった様子です。腰砕けとなった彼女を満足げに見ていた2人に促がされ、剣の乙女ちゃんがその後について話し始めました。

 

 

「ふぅ……はぁ……。えぇと、この後は神殿に住むことになったので、王都と行き来がしやすいよう寝室に≪転移≫の鏡が設置されました。神殿の中だけでしたが自由に歩き回ることも出来、言葉こそ話せなかったものの神殿騎士や神官とも交流を深めていったのです」

 

「普段は甘えん坊の子どもみたいだったけど、私や局長が依頼を持ち掛けた時や託宣(ハンドアウト)が下った際にはあの人形じみた正確に切り替わっていたよ。今思えばあの時既に君たち2人の人格が生まれつつあったのかもしれないね」

 

 

 ほほう、死霊術師(おとうさん)が生み出した吸血鬼としての精神が『分身ちゃん』を経由して『吸血鬼侍ちゃん』に、圃人侍女(おかあさん)から産まれるはずだった圃人(レーア)の赤ちゃんの精神が『本体ちゃん』から『吸血鬼君主ちゃん』へと成長していったんですね! ひとつの身体にふたつの人格……魂があった理由がやっと判りました!!

 

 

「そしてある朝、私が目覚めた時にあの子は既に寝台(ベッド)から抜け出していました。窓が開いているのに気付いた私がテラスに出ると、そこにいた彼女が振り返り、太陽の光を全身に浴びながらこう言ったんです……」

 

 

 

 

 

 

「おはよう! きょうもおひさまがみんなをてらしてくれてるよ!!」

 

 

 なるほど、2人の魂がある程度育ち、互いを認めあえるようになった段階で祈りを持つ者(プレイヤー)へと至ったわけですか。その後は混沌の勢力狩りに精を出し、その功績を以て冒険者になる許しを得て『はじめての冒険』に繋がると……。

 

 


 

 

「いやぁ、なんつーか、もう言葉も無ェって感じだよなぁ」

 

 

 両の頬を真っ赤に腫らした槍ニキの言葉が祭祀場跡に集った冒険者たちの心境を代弁しているでしょう。想像を超えた悲劇の連鎖と四方世界の常識を打ち砕く物語のような戦いによって紡がれたダブル吸血鬼ちゃんの過去。咀嚼して飲み込むには時間が掛かるかもしれません。互いに感想を語る冒険者たちを見ながら、ダブル吸血鬼ちゃんが頷き合い、本来の目的を果たすために動き出しました。

 

 先に動いたのは吸血鬼侍ちゃん、眼球を抉り出された時の感想を細かに聞き出す闇人女医さんとその痛々しい描写にガクガク震えながらメモを取る妖術師さんと話している監察官さんへとぽてぽて近寄っていきました。

 

 

「……ん? どうかしましたか?」

 

「えへへ……」

 

 

 手を差し出せば何も言わず抱き上げてくれた監察官さんに頬擦りしながら微笑む吸血鬼侍ちゃん。その口から出てきたのは、かつての約束を果たすための祈りの聖句です……。

 

 

えいちもとめしわがちちよ(叡智求めし我が父よ) みちみうしないしがっきゅうのとに (道見失いし学究の徒に)にいまひとたび(いま一度 ) ちをおうひとみをさずけたまえ(知を追う瞳を授け給え)……!」

 

「――熱っ!?」

 

 

 奇跡を乞い願う祈りの後、そっと監察官さんの瞼に口づけを落とす吸血鬼侍ちゃん。にわかに熱を持った右眼を抑える彼女を吸血鬼侍ちゃんがぎゅっと抱きしめています。やがて彼女が手を離すと、そこには吸血鬼侍ちゃんと同じ紅に染まった瞳を持つ眼球が再生しています!

 

 

「えへへ……やくそくはちゃんとはたさないとね! ……ちょっといろがかわっちゃったけど、だいじょうぶ?」

 

「え、えぇ。まだ慣れていないからだと思いますが、皆の身体が靄のようなものに包まれて見えます……」

 

「んとね、それはそのひとがもつせいめいのちからなの! たぶんもうひとりのぼくとか、あのことかすごいことになってるんじゃないかな」

 

 

 吸血鬼侍ちゃんの言葉に従い吸血鬼君主ちゃんと勇者ちゃんを見た監察官さんが唖然とした顔になってますね。2人とも体内に太陽をもっているようなもんですし、下手に直視すると大佐状態になっちゃいそうです。……というか、ダブル吸血鬼ちゃんにはそんなふうにみんなが見えてたんですねぇ。効率良くちゅーちゅーするために備わった機能なのかもしれません。

 

 

「ふむ、10年以上経過していながら欠損部位を癒せるとは。実に興味深い」

 

「た、たぶん迷宮内で彼女の一部を摂取していたから、修復する際の手助けになったんじゃない……?」

 

 吸血鬼侍ちゃんの行為を見守っていた2人も興奮した様子で再生した監察官さんの瞳を覗き込んでいます。ひょっとしたら粘体を利用した再生槽に応用出来るかもしれませんし、闇人女医さんにとっては貴重なサンプルなのでしょう。妖術師さんは本来とは異なる機能を付与出来たことに何やら感動しているみたいですね。どうも最近魔力供給による人体改造についての研究にのめり込んでいるらしく、英雄雛娘ちゃんの成長をつぶさに観察している姿が目撃されています。彼女自身の眷属化も近いですし、何やら面白いことが起きる予感がしますねぇ!

 

 

 さて、吸血鬼君主ちゃんのほうは……お、どうやら蜥蜴僧侶さんのところに向かっているみたいです! 女将軍さんや陛下と一緒に混沌の軍勢との大規模戦闘の記憶映像を観ながら「恐らくこのタイミングで首狩りがおこなわれたのであろう」とか「成程、左翼が崩れたのはそれが原因か」みたいな感想戦を行っていますね。ぽてぽてと近付く小さな姿に気付いた蜥蜴僧侶さんが巨体を縮こませるように視線を下げ、吸血鬼君主ちゃんを迎えてくれました。

 

 

「如何しましたかな君主殿。拙僧に何か御用ありとお見受け致しますが」

 

「うん! あのね……やくそく、おぼえてる?」

 

 

 もじもじしながら問いを投げかける吸血鬼君主ちゃんを見て、首を傾げる蜥蜴僧侶さん。やがて思い出したのか、ポンと大きな拳を打ち付けながら口を開きます。

 

 

「フム、肌を重ねる……というのはお互い無理な話であります故、もしや『手合わせ』の約束ですかな?」

 

「せいかい! えへへ……おぼえててくれたんだ!!」

 

 

 ああ、そういえばいつか手合わせしたいって話してましたっけ蜥蜴僧侶さん。結構時間が経ってしまいましたが吸血鬼君主ちゃんも覚えていたんですねぇ。ですが戦いともなればテンションMAXな蜥蜴僧侶さんが、なんだかちょっぴり乗り気でない感じ。何か問題でもあるのでしょうか?

 

 

「ウムム……この身一つであれば迷うことなく頷くのですが、今の拙僧は家庭を持つ身。偉大なる竜に至るべく研鑽を積むが蜥蜴人(リザードマン)の生なれど、今この時ばかりはおいそれと誘いを受けるわけにもいきませぬ……っ!」

 

 

 ……ああ、妻子である女将軍さんと竜眼少女ちゃんが居ますものね。全力を尽くし戦の中で斃れるのが誉れと言えど、今の蜥蜴僧侶さんは只人(ヒューム)の社会で生きる身。自分の信念に従い戦った末に彼女たちに苦労を掛けるのは……という蜥蜴人(リザードマン)としては異端の、只人(ヒューム)としては頷くしかない考えに囚われてしまっているみたいですね。

 

 

 懊悩する蜥蜴僧侶さんを楽しそうに眺める一行を横目にトントンと彼の腕を叩く吸血鬼君主ちゃん。揺れる彼の意思を後押しするかのように、魔法のような言葉を囁きます……。

 

 

「だいじょうぶ! ぼくはしんでもだいじょうぶだし、とかげさんがしんじゃうことはぜったいにないから!! みててね……!」

 

「ん? 余に何か……」

 

 

 陛下のほうへと向き直り、ニッコリと笑う吸血鬼君主ちゃん。陛下が彼女の視線に気付き視線を向けた瞬間、吸血鬼君主ちゃんの翼の裾を握った手が翻りました。硬質化し名のある名剣に匹敵する切れ味を秘めたエッジが過たず陛下の首筋へと吸い込まれ……。

 

 

 

 

 

 

 ――黄金の鬣の如き髪を蓄えた首が、すぱんと宙に舞い上がりました。

 

 

 

 

 

「「「「「あ」」」」」

 

「「お、お兄様!?」」

 

「んなななななな、ナニやっちゃってんのよシルマリルぅぅぅぅぅ!?」

 

 

 コロコロと石造りの床を転がる首。あまりに鋭い切れ味故か、一滴の血も吹き出さずにうつ伏せに倒れる身体。突然の凶行に呆然とする一行の中で王妹殿下と女神官の悲鳴が響き、妖精弓手ちゃんが吸血鬼君主ちゃんのところへすっ飛んできました。

 

 

「い、いくら自分のお母さんを凌辱して孕ませた挙句クソ兵士たちの慰みものにまで貶めた男の息子だからって、殺しちゃダメでしょうが! それに一応2人の異母兄にあたるヤツなんだからもっとこう……」

 

「おあ~……」

 

 

 片手で吸血鬼君主ちゃんを掴み上げ、もう片方の手で地面に転がる首を指し示しながら捲し立てる妖精弓手ちゃん。色々本音が漏れてますが、流石にここまでやるとは思ってなかったみたいです。恐る恐る顔を下に向けて落ちている陛下の首へと近付いて行き……。

 

 

「はっはっは、スマンが上の森人(ハイエルフ)の姫よ。頭の向きを変えては貰えぬだろうか」

 

「喋ったー!?」

 

 

 くぐもった声で喋り出した陛下の首を、美しいフォームで蹴り飛ばしてしまいました……。

 

 

 

「まったく、最初に言った筈なのです。この空間は通常とは異なる法則で運営されている場所。時間の流れも、生死さえも生み出したものの能力次第で何とでもなるのです」

 

「しなないぼくたちがつくったから、このばしょではだれもしなないの! あ、でもたましいごとけしとんじゃうとふっかつできないからきをつけてね!!」

 

「そういう大事なことは最初に言いなさいよぅ……!」

 

 

 腰に手をあてて滔々と語る賢者ちゃんを恨めしそうに睨む妖精弓手ちゃん。その向こうでは「長年の肩こりが消えた!」と陛下が満面の笑みで2人の妹に笑いかけ、クロスボンバーで再び沈められています。ですが女神官ちゃんに「お兄様」と呼ばれた陛下は現在無敵状態、あっという間に復活していますね。

 

 

「……だが上の森人(ハイエルフ)の姫が言うことも至極真っ当。王国を運営する都合まことに死んでやることは出来ぬが、この場所でなら何度か殺されるのも仕方なきことだと思うが」

 

「むぅ……しないよそんなこと! ぼくたちがキライなのはあのクソッタレなおとこだけ、へいかはわるくないもん。それに……」

 

 

 怒った口調でそう言い放ち陛下の背後に視線を向ける吸血鬼君主ちゃん。こっそりと近寄っていた吸血鬼侍ちゃんが後ろから陛下にハグし、その耳元で囁きます。

 

 

「それに、ぼくたちにとってもへいかはたいせつなひとだもん。えへへ……"おにーいちゃん"?」

 

「ふぅ……どうやら余の可愛い妹は4人であったようだな!」

 

「も、もう! 陛下……っ」

 

 

 キメ顔で言ってのける陛下を見て慌てたように首を横に振る女神官ちゃん。残念ながら先程の『お兄様』発言はみんなにバッチリ聞かれており、もはや逃げることは出来ない様子。

 

 ……おや、女魔法使いちゃんや勇者ちゃんに揶揄われて顔を真っ赤にしている彼女を満足げに見ていた吸血鬼君主ちゃんでしたが、腹を抱えて笑っている女将軍さんへと抱き着き、その隣で宇宙蜥蜴顔でフリーズしていた蜥蜴僧侶さんのほっぺを小さな手でぺちぺちと叩き、意識を四方世界に呼び戻すのに成功したみたいですね。

 

 

「みてわかってもらえたとおもおうけど、ここではしんじゃうしんぱいはいらないの。だから、ぜんりょくでしょうぶ! もしとかげさんがかったら、ぼくからとっても()()()()をあげる!!」

 

「――ふむ。それは楽しみですな。ですが賭けとは互いに己の所有物を賭けるが道理。拙僧は何を賭ければ宜しいかな?」

 

 

ようやく事態を飲み込むことが出来、本来の思考が戻って来た蜥蜴僧侶さん。吸血鬼君主ちゃんの言う「とってもいいいもの」に釣り合うモノに見当が付かないのか、吸血鬼君主ちゃんに何が欲しいか尋ねています。どうやら勝っても何かを要求するつもりは無かったっぽい吸血鬼君主ちゃんですが、うんうん唸りながら何かないか考えています。その様子を微笑ましく眺めていた蜥蜴僧侶さんと女将軍さんですが、吸血鬼君主ちゃんが満面の笑みとともに出した答えに真顔になっちゃいましたね……。

 

 

 

 

 

 

「じゃあぼくがかったら……むすめさんがおっきくなったらちゅーちゅーさせて?」

 

 

 

 

 

 

「亭主殿……この戦い、決して敗北は許されんぞ?」

 

「うむ……負けられぬ戦いが、此処に在る!」

 

 

 

「あ、あれれ~?」

 

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 


 

 

 いや~真っ赤になって悶える剣の乙女ちゃんは可愛いですね!

 

 それにしても至高神さん、信徒の降神(コールゴッド)に応えるだけじゃなくて、傷ついた魂の治療までしちゃうんだから優しいですよねぇ。

 

 ……まぁでもその優しさの裏には、至高神さんの本心が隠されているわけで。ねぇ至高神さん?

 

 おや? なにをそんなに憤慨していらっしゃるんですか? え? そんな邪な考えは無い? なるほどな~……。

 

 ところで此処に一冊の薄い本(ウス=異本)がありまして。今回の(カミ)ケットで販売されていたものなんですけど、なんと吸血鬼君主ちゃん攻め×剣の乙女ちゃん受けの砂糖まみれダダ甘本!

 

  参加神さんたちにも大好評で速攻完売だったんですが……ホラ、ここよーく見てみて下さい? 細かな服装や体型が、剣の乙女ちゃんとは微妙に違うと思いません?

 

 おやおや? どうしたんですかぁ至高神さぁん。泣きそうな顔になっちゃって。まるで『自分を題材に描いたナマモノ系薄い本(ウス=異本)をみんなの前で暴露されちゃったような顔』じゃないですか!

 

 いやまぁ個人の性癖をどうこう言うわけじゃありませんし、N子さんも大概他人には言えない性癖の持ち主ですけどね。……それにこの薄い本(ウス=異本)、ちょっと引くくらい出来が良いんですよねぇ。もしかして知識神さんあたりに手を借りました? え? 地母神さんにも? 

 

 

 

 ……えっと、そうしたら次は是非吸血鬼君主ちゃん×賢者ちゃん×吸血鬼侍ちゃんのみつどもえ本でお願いします。

 

 

 





 この連休中に〆まで持っていきたいので失踪します。


 評価、お気に入り登録ありがとうございます。週一ペースはなかなか厳しいですが、読んでくださる方がいる間は頑張っていきたいです。


 感想も併せてお待ちしておりますので、お時間がありましたら是非お願いいたします。


 お読みいただきありがとうございました。

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