ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 連日投稿が間に合わなかったので初投稿です。


 何も考えずに投稿していたら120万字を超えておりました。ちょっぴり日間二次創作ランキングにも顔を出していたみたいで嬉しいですね。これからも皆様に読んでいただければ幸いです。

 ※8/17 みんなの等級が古いデータを参照していたため修正致しました。




セッションその16-10

 

 前回、うっかり迷宮探検競技が明日に控えていることを忘れていたところから再開です。

 

 

 リビングの隅で体育座りを始めてしまった妖術師さんをなんとか立ち直らせ迎えた冬至(ユール)当日。近頃の潤いぶりを聞きつけた人々が集まり、辺境の街は大いに賑わっています。大通りには出店が立ち並び、広場では吟遊詩人や大道芸人たちが己の技を競い合い、訪れた観光客たちを楽しませています。

 

 しかし今年の冬至(ユール)一番の目玉はやっぱり迷宮探検競技! ギルドの訓練場には噂を聞きつけた夢見る少年少女が大集合、来春から冒険者になろうと考えている彼ら向けに訓練場の施設見学や宿泊施設の説明などが開かれ、それにギルドの職員さんたちが駆り出されているみたいです。まぁ冬場は依頼の数が減り割と暇だったようで、忙しい忙しいと口にする職員さんたちの顔には笑みが浮かんでますね。

 

 

「……というわけで、女性の訓練生は短パンとブルマのどちらか好きなほうを選んで着用いたしますの」

 

 

 お、噂をすればなんとやら。ちょうど案内役の腕章を付けた令嬢剣士さんが冒険者志望の少女たちを引率していました! 小雪のチラつくグラウンドを走る訓練生を指し示しながら支給される運動服について説明しているみたいですね。判り易く丁寧な説明を受け、連れ添って歩いていた2人の少女は何度も大きく頷いています。熱心に聞き入る()()を見て、令嬢剣士さんが苦笑まじりに言葉を続けます。

 

 

「まぁ、()()()()にはあまり関係ないかもしれまんわね……」

 

 

「そんなことありませんわ! どのように税が使われているのか知るのも、私にとって大切な勉強ですもの!!」

 

 

 たゆんと揺れる胸を張りながらにこやかに笑う金髪の少女。その黄金にも負けぬ輝きを放つ太陽のメダルをたわわの上に乗っけている美少女は貧乏貴族の三男坊の妹一号ちゃん!……まぁ王妹殿下ですね。キョロキョロと物珍しそうに施設の内部を眺めては、ギルドの職員さんたちにアレコレ質問を投げ掛けています。査察官さんから予め話が通っているみたいですが、相手がこの国の王族ともなれば流石の監督官さんも普段のゆるーい態度ではなくデキる女ムーブで応対していますね。

 

 

「パンとスープはおかわり自由……ジャムも付け放題……!」

 

 

 王妹殿下の横で給食の内容を聞いて口の端から涎を垂らしそうになっているのは英雄雛娘ちゃん、今までずっと牧場での食餌療法と基礎トレだったため今日初めて訓練場にやって来ました。栄養豊富なごはんと適切な運動、それに吸血鬼君主ちゃん()()()ちゅーちゅーによってガリガリだった身体はもはや過去の話。身長は然程変わりませんが叢雲狩人さんに近いしなやかな筋肉を纏い、腰の左右にぶら下げた店売りの大小二刀に揺らぐことの無い体幹を会得したみたいです。

 

 ……なお、いっぱい食べて取り込んだ栄養が良い感じに胸部へ向かったようで、低身長でありながらも2人と同じように施設見学に来ている青少年たちの目が釘付けになる立派なトランジスタグラマーに成長しちゃってます。具体的に言うと、女神官ちゃんと妖術師さんが崩れ落ちるくらいですかねぇ……。「只人(ヒューム)が育つのは早いわねぇ」と言いながら彼女のたわわを揉みしだく妖精弓手ちゃんの味わい深い表情が印象的でした。

 

 

「ワン!」

 

  そんな2人の足元には視聴神さんたちも見慣れた白い毛むくじゃらの姿が。吸血鬼君主ちゃんにお願いされて護衛役としてついてきた狼さんですね。ナイスなたわわをお持ちの女性たちに尻尾をブンブン振りながら愛想を振りまく姿はとても使徒(ファミリア)には見え……主が吸血鬼君主ちゃんだから仕方がありませんね!

 

 


 

 

 さて、施設見学の後はいよいよ迷宮探検競技。訓練場内に用意された特別会場には参加者が集い、係員の案内に従って即席の一党(パーティ)を組んでいますね。1人で会場を訪れたボッチ一匹狼に躊躇うことなく声を掛け、妖精弓手ちゃんや叢雲狩人さんが手際良く迷宮へ送り出しています。

 

 

「さ、初めての冒険よ! みんなで力を合わせて頑張りなさい!!」

 

「万一の時には先程配布した音鳴り袋(クラッカー)を使い給え。救護担当が駆け付けてくれるからね」

 

 

 森人(エルフ)を見るのは初めてという人も多いことでしょう。物語の中から出てきたような麗しの美姫に微笑まれ男女問わず陶然となる挑戦者たち。故郷ではブイブイ言わせていた力自慢や己が大成すると信じて疑わない若者たちが、競技の後に自分と付き合うよう声を掛けてますが……。

 

 

「残念、私たちこう見えて子持ちの人妻なの。他をあたってちょうだい?」

 

「同じく。それに……悪いけど、キミたちでは私たちを満足させるのは無理だろうね」

 

 

 左の薬指に嵌めた()()()()()()の指輪を見せながら簡単にあしらわれてあえなく轟沈。未来の同業者、あるいは一党(パーティ)メンバーになるかもしれない逸材を見物しに来た冒険者たちの失笑を買っています。苦笑しながらそれを見ている令嬢剣士さんの左手にも同じ意匠の指輪がありますし、男避けと所有権を主張するのを兼ねてダブル吸血鬼ちゃんが作ったみたいですね。

 

 

「あら、やっと来たのね。先発組は迷宮に入り始めてるわよ」

 

 

 お、ヒラヒラと手を振りながら女魔法使いちゃんが来ましたね。ぴっちりスーツで強調されたたわわの間に挟まっている紅玉の認識票に、とんがり帽子と右手に装備したパイルハンマーのギャップも合わさって参加者たちの注目を集めていますね。

 

 ちなみに他のみんなの等級ですが、銀等級であるダブル吸血鬼ちゃんと妖精弓手ちゃんはそのままで、若草知恵者ちゃん、令嬢剣士さん、妖術師さんは女魔法使いちゃん、叢雲狩人さんと同じ紅玉に昇格。育児であんまり冒険に参加していなかった白兎猟兵ちゃんと偽装身分(カバー)に使うだけの剣の乙女ちゃんはこれまでと変わらず鋼鉄ですね。闇人女医さんは冒険に興味は無いみたいですが、登録しないと冒険に同行出来ないのでとりあえず登録だけ済ませてあるみたいです。

 

 

「あら、施設見学に時間を掛け過ぎてしまったみたいですね……」

 

「まだ出発の順番待ちしてるから問題無いわ。まぁでも丁度良かった。……2人とも、こっち来なさい」

 

 

 

「――はい、いま行きます! ……ほら、兄さん早く!!」

 

 

 おや? 女魔法使いちゃんの呼び声に応じて参加者と思われる2人組がやって来ましたね。年上っぽい男の子を引っ張ってきたのは八重歯が可愛い小柄な女の子、裾の短い法衣とミニのプリーツスカート姿で、ぺったんこな胸元には至高神さんの聖印が光っています。

 

 

「あだだだだ、もげるもげる!? 馬鹿力で引っ張るな!!」

 

 

 そんな彼女に引き摺られているのは吸血鬼君主ちゃんと同じ三白眼の長身、胸には女の子と同じ至高神さんの聖印が下がっており、彼女に捕まれているのと反対の手には魔術学院の生徒の証である紅玉の杖(ガーネットスタッフ)が握られていますね。呼びつけた女魔法使いちゃんに悪態を吐いて軽くあしらわれているあたり、もしかして知り合いなんでしょうか?

 

 

「コイツは私の学院時代の同期で愚弟の先輩筋に当たる魔術師。んで、隣がソイツの幼馴染の神官戦士見習いの子ね。どっちも迷宮探検競技に参加するために王都から来たんだけど、この性悪馬鹿のせいでまだ一党(パーティ)が組めてなくてねぇ……。悪いけど、組んでやってくれる?」

 

「誰が性悪馬鹿だこの冷血女(コールドブラッド)!? この偉大なる()()()()使()()に向かって……!」

 

「いい加減≪惰眠(スリープ)≫を遺失魔法って呼ぶの止めなさいよ……」

 

 

 ポンポン飛び交う罵倒と頭のおかしいパワーワードの数々、どうやら気の置けない仲なのは間違いなさそうですね。そんな遺失魔法使いさんをハラハラしながら見守っていた少女ですが、令嬢剣士さんたちの視線に気付き礼儀正しい挨拶を披露してくれました。

 

 

「はじめまして、至高神さまの導きに従い正義を為すことを目指しています! 本日はよろしくお願いします!!」

 

 

「「「おおー……!!」」」

 

 

 ビシッと敬礼を決めながらの挨拶に思わず拍手の3人。王妹殿下は彼女の性格に好印象を持ったみたいですが……令嬢剣士さんと英雄雛娘ちゃんは彼女のカラダから目を離せなくなっています。

 

 

「(なんて鍛え上げられた肉体……いえ、まだ成長の余地があるのですか……!?)」

 

「(うわ……すっごい力持ちっぽい……!)」

 

 

 ゴクリ、と唾を飲み込む2人を不思議そうに眺める少女……至高神の猛女ちゃんに慌てて挨拶を返す2人。彼女たちが何を考えていたのか察した女魔法使いちゃんがやれやれと首を振りながら言葉を紡ぎます。

 

 

「競技は最大6人までの一党(パーティ)で挑むルールだから、とりあえずこれで4人ね。……あなたを換算しても5人だから、もう1人くらい欲しいわねぇ」

 

 

 狼さんをわしわしと撫でつつ思案する女魔法使いちゃん。横で遺失魔法使いさんが「俺たちは犬並みかよ!?」と抗議してますが……ワンチャン狼さんのほうが上ですかねぇ、犬じゃありませんが。

 

 

「まぁ、単独(ソロ)で挑戦する物好きな方もおりますから、1人くらい足りなくても……あら?」

 

 

 ん? 残っている参加者たちを眺めていた令嬢剣士さんが誰かに目を留めてますね。相手も彼女に気付き、ゆっくりとみんなに向かって近付いてきました。堂々と歩く姿は独特な圧を醸し出し、彼の進む先から自然に人が避けていくほどです。やがて彼女の前に到着した大柄な人物が、その()を開きました……。

 

 

 

「カカカッ! 投資先の視察ついでに話題の訓練場に来てみれば、まさか赤枝(アカギ)の娘に出会うとは! これだから人生は面白いッ!!」

 

「ええ、お久しぶりですわ。御爺様もお元気そうで何より。……相変わらず殺しても死にそうにありませんわね」

 

「言うてくれる! 先に死んだのはお嬢のほうではないか!!」

 

 

 

 鋭い眼光に白い羽毛を後ろに流した総髪、()の相を持った老年とは思えないほどの強烈なオーラを放つ鳥人(ハルピュイア)の男性はどうやら令嬢剣士さんの知り合いみたいです。普段から礼儀正しい令嬢剣士さんには珍しく荒っぽい言葉遣いですが、男性のほうも気にしていない様子。暫く丁々発止とやりあっていた令嬢剣士さんですが、みんなのポカンとした様子を見て咳ばらいをひとつ、彼を紹介してくれました。

 

 

「――コホン。この方は数十年前に私の母と同じ一党(パーティ)で活躍されていた元冒険者で、今は王都を拠点に鉱山の運営や貴族の領地経営の相談役をされている……」

 

 

 

「馬鹿な貴族から金を毟り取り、民に贅沢の味を覚えさせる悪徳商人! ワシのことは尊敬と畏怖を込めて『鷲頭様(ワシズサマ)』と呼ぶが良い!!」

 

 

 

 ワシズ……アカギ……あっ(察し)

 

 


 

 

「えっと、勢いで案内しちゃったけど……ほんとうに参加していくの?」

 

「当たり前よ! 投資する先の動向を自らの目で確かめずして何が()資家か!!」

 

 競技の参加者記入用紙を差し出す女魔法使いちゃんにテンション高めに応じる鷲頭様(ワシズサマ)。元冒険者ということで参加はダメなのかと思いましたが、引退して認識票を返納してから随分と時間が経ってますし、お祭りイベントだからいいんじゃない?と監督官さんからオッケーが出たみたいです。……まぁ聞いた感じ訓練場に出資してくれるっぽいので断れなかったというのが正解でしょうか。職員さんたちがみんなおなか抑えて青い顔してますし。

 

 

「――はい、5人と1匹の参加を確認。これであなたたちは一党(パーティ)として登録されたわ」

 

「いよいよですね! 楽しみです!!」

 

 

 胸の前でギュッと拳を握り可愛らしく喜びを表現する至高神の猛女ちゃん。よく見れば上腕二頭筋がはち切れんばかりに隆起しています。腰に佩いた長剣(ロングソード)は背丈に合わせて通常より短いものですが、彼女の筋力に見合っているかと言われると……ねぇ?

 

 

「ふふ、『はじめてのぼうけん』、頑張りましょうね!」

 

「えっと、はい……頑張ります」

 

 

 王妹殿下に促がされ、彼女と拳を突き合わせる英雄雛娘ちゃん。ちょっぴり人見知りなので心配していましたけど、みんなダブル吸血鬼ちゃん一党(パーティ)に匹敵する強烈な個性を持っているので逆に馴染んじゃったみたいです。

 

 

 さて、みんなの職業ですが……ふむ、用紙に書き込まれた各自の経歴(ステータス)を見る限り、結構バランスは良さそうです。

 

 

 王妹殿下は先に『神官銃士』を名乗っていた通り、太陽神さんの奇跡と謎の単筒が使えるみたいですね。……何故か武道家まで持ってますけど、これは蟲人英雄さんに手ほどきを受けたからなんだとか。軽装にもかかわらず異常に装甲値が高いですし、やはり〇ボ形態なのでは???

 

 英雄雛娘ちゃんはお父さん譲りの大小二刀アタッカー。鍛冶神さんの信仰にも目覚めていますがまだ奇跡は授かっていない様子。これからの成長が楽しみです!

 

 遺失魔法使いさんは言わずもがなの魔術師(ソーサラー)。こっそり修得している野伏(レンジャー)は生まれに因るものですね。その相方の猛女ちゃんは……うん、ガチガチの神官戦士ですね。筋力に装備が見合っていないのが残念ですが、重戦士さん並の荷重にも耐えられそうな能力をしていますよ彼女。

 

 さて、気になる鷲頭様は……お、武道家(モンク)斥候(スカウト)の兼業ですね! 空を飛ぶ関係で華奢な体つきな人が多い鳥人(ハルピュイア)ですが、軽い身のこなしと鋭い爪で武道家(モンク)の適性は割と高め。鷲頭様の場合背中に翼を持ち手に鋭い鉤爪が生えた鷲人(アクィラ)なので、現役時代はさぞ大暴れしていたことでしょう。

 

 最後に狼さんですが……うん、これは可愛いマスコット! というのは冗談として、流石は吸血鬼君主ちゃんの使徒(ファミリア)。背中に装備した大剣と爪、牙による連撃はなかなかの威力、もしタイマンなら小鬼聖騎士(パラディン)くらい倒しちゃいそうです。ちょっとコミュニケーション能力に難はありますが、女の子の言うことならホイホイ聞いてくれるんじゃないですかね?

 

 

 

 

 

 

「あ、来た来た!」

 

「ふふ、次は此方の方々をお願い致しますわ」

 

 

 迷宮の入り口で挑戦者を送り出していた麗しの森人(エルフ)2人のところへ案内される一行。令嬢剣士さんから彼らを引き継ぎ、妖精弓手ちゃんがみんなに音鳴り袋(クラッカー)を配っていますね。見た目はまんまパーティグッズのアレですが、独自の音と発光によって不測の事態を報せる優れものなんだとか。全員が受け取ったのを確認し、競技の内容について説明を始めました。

 

 

「この地下階段を降りたところから競技はスタートよ。途中いくつかの試練(チャレンジ)があって、最奥に待つ迷宮支配者(ダンジョンマスター)の課題を乗り越えられたら達成(クリア)! あ、途中の試練は達成出来なくても進めるから安心してね?」

 

「もちろん、試練以外にも罠や仕掛けがあるかもしれない。引っ掛かったら死ぬようなものは無いけれど、怪我くらいは覚悟しておきたまえ」

 

 

 案内役(ガイド)の説明を食い入るように聞く一行。猛女ちゃんなんか鞄から取り出したメモ用紙(パピルス)に2人の言葉を一生懸命書き留めていますね。一通り説明が終わったところで、妖精弓手ちゃんが近くの机に準備してあったあるものをみんなに差し出しました。

 

 

「見た感じ暗視持ちは居ないでしょ。はいこれ、迷宮は暗いから持って行きなさい! ……ふふ、壊したら弁償よー?」

 

 

 ニマニマ笑う妖精弓手ちゃんの差し出した角灯(ランタン)に注がれる挑戦者たちの視線。おずおずと受け取ろうとした英雄雛娘ちゃんですが、横から伸びてきた別の腕に持っていかれてしまいました。

 

 

「見たところオマエ剣士だろ? こういうのは手の空いている中衛が持つもんだ。オマエとウチの妹分が前衛で、俺とそっちのネーチャンが中衛。鷲のオッサンが基本後衛で、罠を探したりするときにオマエと交代……そんなとこだろ。ワンコは……まぁ勝手になんとかするんじゃね?」

 

「鷲頭様と呼べ若造。だが悪くは無いな。……別にワシが前に出突っ張りでも構わんぞ?」

 

「アンタに任せっきりじゃ競技になんねぇよ。あくまでこれは『遊び』。遊びは手を抜かず、真剣に楽しむもんだろ?」

 

 

 角灯(ランタン)を弄びながら嘯く遺失魔法使いさんの言葉にニヤリと笑みを返す鷲頭様。言葉遣いこそぶっきらぼうですが、なかなか気配りが上手ですね。即席一党(パーティ)頭目(リーダー)としては及第点と言えるでしょう!

 

 

 男性陣の遣り取りに目を丸くしていた英雄雛娘ちゃんでしたが、別に彼が怒っているのではないと判りペコリと頭を下げてますね。お、キョロキョロと周りを見回していた視線がある一点で止まりました。幾つも並べてある貸し出し用の角灯(ランタン)の横に隠れるように置いてあった棒状の物体を手に取り、叢雲狩人さんへ尋ねています。

 

 

「あ、あの……! これも貸してもらえるんですか?」

 

「ん? ……フフ、良く気が付いたね! 好きに持っていって構わないよ」

 

 

 英雄雛娘ちゃんが抱える()()を見て小さく笑う叢雲狩人さん。角灯(ランタン)があれば不要に思えて、松明には松明の利点もありますからね! いそいそと腰帯(ベルト)に挟む彼女を微笑ましいものを見る目で見ていた妖精弓手ちゃんと目が合い、小さくウインクをしていますね。一行が装備の確認を終えたのを見計らい、妖精弓手ちゃんが軽やかに宣言しました!

 

 

「それじゃ準備は良い? ……君たちの冒険はここから始まる! いざゆけ冒険者ー!!」

 

「「「「おー!!!」」」」

 

 

 元気良く声を上げ、地下への階段を下りる少年少女たち。鷲頭様と狼さんがその後ろに続くのを見送り、妖精弓手ちゃんが呟きます。

 

 

「やる気は十分、才能の有無は関係無し。でも、貴方たちはまだまだ足りないものばかり。それに気付くのが、この競技の一番の目的よ? ……ま、頑張りなさい!」

 

 

 

 

 

 

「――最初から良く判らんモンが出てきたな……」

 

 

 石造りの階段を下り切った一行。目の前には土を掘って出来た洞窟のような通路が伸びており、10mほど進んだ先には道を寸断する空堀が。堀の中にはぬらぬらとぬめりを纏い卑猥に蠢く触手がみっちりと詰まっており、その上に木製の橋が架かっています。橋のたもとには高札が掲げられており、何やら文章が書かれていますね。競技の序盤ということもあり、罠や仕掛けが無いかと恐る恐る近付いた英雄雛娘ちゃんがその文を読み上げます。

 

 

「えっと……『このはしわたるべからず』……かな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしましょう兄さん!? これじゃ先に進めません!!」

 

 

「そんな……『わたしたちのぼうけんはこれでおわってしまった』なんて……!」

 

 

 

「クソッ、脳筋枠は1人じゃなかったのかよ!?」

 

 

 この世の終わりを迎えてしまったような叫び声をあげる2人を見て別の意味で頭を抱えてしまった遺失魔法使いさん。膝から崩れ落ち「せめて記念に……」と地面の土を持参した頭陀袋に詰め始めた2人を英雄雛娘ちゃんがオロオロしながら止めようと頑張っています。冗談のような光景を前に元冒険者である鷲頭様というと……。

 

 

「ほう、最初からなかなか良い試練(チャレンジ)ではないか!」

 

 

 ……ニカッと笑ってご満悦ですね。遺失魔法使いさんへと歩み寄り、その太い爪で彼を引っ掛け起こしながらノーキンズへ説明するよう促しています。

 

 

「ほれ若造、素直過ぎるお嬢さんたちに世の汚さを教えてやれ!」

 

「へいへい……。いいかオマエら、ありゃ『この橋を渡るな』じゃなくて『端っこ』……橋の手摺に近い場所を歩くなって意味だ」

 

「「なん……だと……?」」

 

 

 見てろよ?と言いながら橋に近付く遺失魔法使いさん。杖の先端で床板を突きパカッと開くさまを見せられ王妹殿下と猛女ちゃんが驚きのあまり硬直しています。橋の枠組みを挟んで愚か者が落ちてくるのを待つ触手の群れを英雄雛娘ちゃんが狼さんと一緒に恐々と覗き込んでますね。

 

 

「うわぁ……あれ? でも答えが書いてあるなら誰も引っ掛からないんじゃ……」

 

「わふ?」

 

 

 うーん、と首を傾げる英雄雛娘ちゃん。ですがそれは意外に難しいことなんですよねぇ。彼女の疑問に答えてくれたのは、手に小ぶりな石を持った鷲頭様です。

 

 

「そうでも無いぞ? もし一党(パーティ)の誰も文字が読めなかったらヒントの存在自体が無意味であるし、そんな連中は長くは生きられん。読めたとしてもそこの若造のように頓智が利かなければ、橋を渡る以外の方法を試そうとして……」

 

 

 そう言いながら手に持った石を前方に放る鷲頭様。触手の海を超える軌道を描く石は、堀の半ばあたりで素早く伸びてきた触手に絡めとられ、触手の海に飲み込まれていきました。

 

 

「もし飛び越えようと試みたり、堀に降りていたら……なかなか楽しい光景が見れたかもしれんのう!」

 

「せ、セクハラはダメです!」

 

「まぁそっちのネーチャンはともかくオマエが触手に纏わりつかれてても……グハっ!? おい押すな! 落ちる落ちる!?」

 

 

 ギリギリと手四つで押し切られ遺失魔法使いさんが堀に落とされかける一幕もありましたが、最後はみんな橋の真ん中を通って無事渡ることに成功! 最初の試練(チャレンジ)を突破しました!!

 

 おや? 荒く息を吐く遺失魔法使いさんに苦笑を向けつつ先へと進む一行に合わせて何か光る物が。……ふむ、どうやら迷宮のそこかしこに監視用の仕掛けが隠されているみたいです。せっかくなので妖術師さんたち迷宮支配者(ダンジョンマスター)側の様子も見てみましょうか!

 

 


 

 

 迷宮の最奥に設けられた大きな玄室(ボス部屋)。その裏には巧妙に隠された係員専用(スタッフオンリー)の扉を通じて迷宮支配者(ダンジョンマスター)の控室へと繋がる通路が伸びています。

 

 迷宮各地に配置された仕掛けを通じ挑戦者たちの動向を逐一把握できる監視装置(モニター)や非常用の通信設備が用意された一室には数人の男女の姿があり、その一部から発せられる湿った音と熱い吐息が部屋中に響いていますね。

 

 ふかふかの安楽椅子(リクライニングチェア)に腰を下ろす2人の迷宮支配者(ダンジョンマスター)。挑戦者が通るたびに(エネミー)(トラップ)を再生成する彼女たちのために軽食や飲み物が用意されており、競技の視察に赴いた陛下や査察官さんたちもそのご相伴に預かっているようです。

 

 

「ふむ、なかなかどうして見応えのあるものだな」

 

「ええ。私も初見ですが、陛下と同じ意見です」

 

 

 満足げに頷く陛下の横で葡萄酒(ワイン)を口に運ぶ査察官さん。その顔が赤みを帯びているのは酒精(アルコール)だけが理由では無いでしょう。大皿に山盛りのサンドイッチを貪っていた賢者ちゃんが呆れたように2人へツッコミを入れました。

 

 

「馬鹿言ってないで競技に集中するのです。いつまで義妹の濡れ場を見ているつもりなのですか」

 

 

 

 

 

 

「ん……ちゅ……ちゅっ……」

 

「んむ……ふぅ。主さま、ありがとうございます」

 

 

「ん……ぷぁっ! も、もう十分だから……んむぅ!?」

 

「ん~? ダ~メ、ちゃんと満タンまで補給するの……んちゅっ」

 

 

 

 背もたれを後ろへ倒し、仰向けに近い状態の妖術師さんと若草知恵者ちゃん。2人に覆い被さる姿勢でダブル吸血鬼ちゃんが魔力供給を行っています。食事で熱量(カロリー)は摂れるものの、呪文回数までは回復することは出来ません。そのためダブル吸血鬼ちゃんが魔力を送り込み、補給をしているわけですね! ……本当は()()を用いるのが一番効率的なんですが、流石に陛下たちの前ではちょっとというのと、火が点いて夢中になってしまうといけないので代わりに口づけで済ませているみたいです。

 

 

「その、想像以上に生々しいというか、情熱的というか……」

 

 

 なんとか目を逸らそうと試みるものの、幼い容姿に不釣り合いな情熱的行為から目が離せない査察官さん。一方で誰に憚る事無くガン見している陛下は……。

 

 

 

 

 

 

「――義母と呼べる女性と瓜二つな異母妹たちの艶姿、か。余、ちょっと好きかも……」

 

「妃に言いつけるのですよ???」

 

「ごめんなさい」

 

 

 

 日頃の激務に加え、昨日の告白で肩の荷が下りたのかフリーダムさに磨きがかかってますね陛下。火打石団を潰してからこっち、暴れん坊陛下が出陣する機会も無かったようなのでストレスが溜まっているのかもしれませんねぇ……。賢者ちゃんの脅しにキリっとした顔に戻った陛下が、英雄雛娘ちゃんたちを捕捉している映像に目をやりながら背後に向かって声を掛けました。

 

 

「しかし、御老体が参加するとは……当初はそなたが同行する予定だったのだがなぁ」

 

「まぁ良いじゃないか。彼の実力は疑いようも無いし、快く金を出してくれるなら万々歳さ。それに狼くんから枠を奪うのも悪いと思ってね」

 

 

 何時の間にか部屋の中に現れた銀髪侍女さんが、サンドイッチを摘まみながら肩を竦めています。どうやら鷲頭様も王妹殿下の正体に気付きつつも知らんふりをしてくれているみたいですね。

 

 

 ……お、どうやら次の試練(チャレンジ)に到着したみたいです! 次回は引き続き迷宮探検競技の模様をお伝えする予定ですので、視聴神のみなさんもご期待ください!!

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 





 もう1話、せめてもう1話……なので失踪します。


 評価、お気に入り登録ありがとうございます。ランキングに顔を出すと嬉しくて筆が捗りますね。

 感想も併せてお待ちしておりますので、お時間がありましたら是非に。可能な限り返信させて頂いております。


 お読みいただきありがとうございました。

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