ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 のんびり日常回は筆が進むので初投稿です。




セッションその16 いんたーみっしょん

 

 平穏な日常で人間性(ヒューマニティ)を回復させる実況プレイ、はーじまーるよー。

 

 冬至(ユール)が過ぎ、新しい年を迎えた四方世界。年末よりチラついていた雪が本格的に降り始め、西方辺境は一面の銀世界へと姿を変えています。厳しい寒さから身を護るために屋内で過ごす時間が多くなり、にわかに読書や刺繍の趣味に目覚める人が増える時期でもありますね。

 

 ですが、冒険者には冬の間に引き篭もるような暇はありません。依頼の数がグッと減り、冬越しの資金を稼げなかった冒険者たちは内職で糊口を凌いでますし、懐の温かい者は身体が鈍らないよう鍛錬に勤しむ毎日。

 

 もっとも、今年は訓練場が雪かきと街道整備の日雇い仕事を手配しているため、例年見受けられる橋の下などで冷たくなっている冒険者は幸いなことに発見されていないとのこと。身体を鍛えられて三食しっかり食べられると、駆け出したちには好評みたいです。

 

 

 数日前にささやかな新年を祝う宴を催していた牧場も、昨夜降った雪によって美しい雪化粧姿に。そんな純白の光景に一筆書きで線を引くように、声を張り上げながら走り回る一団が見えてきました!

 

 

「そら、声を出せ! いざという時仲間に危険を報せることが出来なければ、一党(パーティ)全滅の危機に直結するぞ!!」

 

 

 先頭に立ち良く響く声で発破をかけているのは運動着(ジャージ)姿の女騎士さん(ゴリウー1号)。力強く雪を踏みしめながら、後ろに続く小さな冒険者たちの通り道を作り上げています。一番キツイ立ち位置のはずなのに普段と比べて殆ど速度が落ちていないのは、普段から重装で冒険していることで下半身が徹底的に鍛え上げられているからでしょうか。

 

 

「多くの荷を抱えたまま、より早く、より長く、より遠くまで走れるものこそが戦場(いくさば)で生き残る! それは兵士だろうと冒険者であろうと変わらん!!」

 

 

 最後尾から参加者を監督している女将軍さん(ゴリウー2号)も同じく運動着(ジャージ)姿。拳大の石をパンパンに詰め込んだ背嚢(ランドセル)を背負い、歯を食いしばって走る雛鳥たちの背に容赦無く怒声を浴びせていますね。白い湯気を立ち昇らせる体操着姿の彼女たちに向ける表情と纏うオーラは、何処からどう見ても鬼教官そのものです。

 

 

「いやぁ懐かしいですねぇ。ちっちゃな頃お父さんたちの後を追って走ってたのを思い出しますよぉ」

 

「ハッ、ハッ……そ、そうなんだ……っ」

 

 2人のゴリラに挟まれて走る集団は全部で7人。女騎士さんの後ろについている1人は他の子よりも頭ひとつ大きい英雄雛娘ちゃん。真剣な表情で女騎士さんの教えを身体に刻み込んでいるみたいですが、その体操着(ブルマ)背嚢(ランドセル)の組み合わせはちょっとえちえちすぎやしませんかねぇ?

 

 彼女の隣で雪と同じ真っ白い毛で覆われた長耳を揺らしながら走る白兎猟兵ちゃんはまだまだ余裕そうです……。他の子よりも大きな背嚢(ザック)を背負っているにも関わらず、パパから教わったと思しき卑猥ソングを鼻歌で歌ってるくらいには。

 

 

「ぐぬぬ……これが根発子(コンパス)の差……!!」

 

「あんまりほはばをひろげてはしるとつかれちゃうし、すべってあぶないの。むりせずにこまかくきざんでこ?」

 

 

 流石に雪は冷たいのか、珍しくブーツを履いている圃人の少女剣士ちゃんが前を行く2人を羨ましそうに見つめています。体操服を押し上げるナイスなたわわと、短パンとブーツの間に顔を覗かせる健康的な生足がとっても魅力的です。種族の違いによる体格差に焦って足を速めようとする彼女を抑える吸血鬼侍ちゃんは、いつぞやのブートキャンプの時と同じくブルマ装備。後方の吸血鬼君主ちゃんと違い、体操服の裾はブルマに入れるタイプみたいですね。

 

 

「はぁ……ふぅ……こんなに、走るのは、久しぶりかもです、ね……っ」

 

「まほうつかいもたいりょくがだいじ。もしものときにいきぎれしてじゅもんをとなえられなかったらたいへん!」

 

 

 普段のおっとりとした表情はそのままに、頬に浮かんだ汗を拭いながら走る圃人の少女巫術師さん。あんまり寒いのは好きじゃないのか、短パンとブーツに厚手のストッキングを合わせ、下半身をがっちりガードしています。体操服の裾から可愛いおへそをチラリズムさせながら並走する吸血鬼君主ちゃんの言葉に頷きを返しつつ、薄い笑みを浮かべながら背後に顔を向けました。

 

 

「――だそうですよ? 吸血鬼(ヴァンパイア)の身体を手に入れたのに元の体力不足でドベを驀進しているエセ圃人(レーア)ちゃん???」

 

 

 

 

 

 

「ハァ……ヒィ……も、もうむ~りぃ……おっぶぇ!?」

 

「……体格が大きく変化したとはいえ、これは酷いな。腰を据えてかからねばならんかもしれん」

 

 

 ちょっと映像に出すにはアレな表情で雪原に倒れ込む妖術師さん。眉間に皺を寄せた女将軍さんが首根っこを引っ掴んで持ち上げ、やれやれといった様子で白目を剥く彼女を敷物の上へと放り投げました。

 

 自らの望む姿を手に入れた妖術師さんですが、やっぱり無理には代償がくっついてくるというもの。眷属になった後に行われた身体能力の測定では見事に筋力、敏捷、持久力で眷属中ワーストを獲得していました。また、只人(ヒューム)から圃人(レーア)へと元の種族が変化して事で背丈や手足の長さが大きく変わり、感覚との齟齬も浮き彫りに。肉体と精神の差を埋めるためにこうやってトレーニングに強制参加させられていたのですが……まだまだ時間は掛かりそうですね。

 

 

 

 

 

 

「オーイ!」

 

「あ、お父さんたちが帰って来ましたよぉ!」

 

 

 お、走り終わってクールダウンを行っているみんなに向かって上空から声が。ロリ形態(モード)の女魔法使いちゃん、剣の乙女ちゃん、令嬢剣士さんに抱えられた白兎猟兵ちゃんのパパと友人たちが大きく手を振っています。みんなにインベントリーから取り出したタオルを配っていた吸血鬼君主ちゃんが雪塗れの6人にもタオルを手渡してますね。

 

 

「どう? けっこうみつかった?」

 

「ん、昨日今日合わせて18箇所くらいかしら。予想通り生きた人間は居なかったわ」

 

「巣穴に籠っていたゴブリンはドイツもコイツもガリガリだったからね。想定通り飢えてると思うよ!」

 

 

 受け取ったタオルで顔を拭きながら吸血鬼君主ちゃんの問いに答える女魔法使いちゃん。尻尾に付着していた雪をプルプルと払い落としていた垂れ耳のおじさんも同意するように頷きを返しています。……察しの良い視聴神さんなら彼らが何をしていたのかもうお判りですね。

 

 

 夏の終わりから始まったゴブリンの駆除作戦。ベテラン兎人(サカカ)3人の参加によって西方辺境から一時的にゴブリンを駆除し、その後も他の地方から流入してくる群れを狩り続けていたわけですが、収穫を終え食料が倉庫に仕舞われた後は少々事情が変わってきます。

 

 秋口までは繁殖を目論んで農作業中の女性が攫われたり、街道を行き交う行商人が荷を狙われるケースが多いのですが、それ以降は厳しい冬を乗り越えるために収穫され集落の中に保管されている食料を狙って集団で人家を襲う可能性が高くなります。孕み袋に喰わせるほど食料に余裕は無いため、攫われた人の多くがゴブリンの胃袋に収まるのもこの季節の特徴と言えるでしょう。

 

 事態を見越してギルドでは偽の輸送隊を組織し、ゴブリンを誘引して駆除する依頼を出していたのですが、雪に閉ざされてしまった今の状態ではそれも難しいもの。年を越し知恵を付けたゴブリンが来春動き出したら、また被害が出てしまうかもしれません。

 

 そこで、探索能力に優れた元陸軍特殊部隊群(グリーンベレー)の3人とダブル吸血鬼ちゃんの眷属が協力し、巣穴に籠り寒さに耐えているゴブリンたちを潰して回っていたんですね!

 

 雪に埋もれた糞や食べかす、捨てられたゴミなどから白兎猟兵ちゃんのパパや友人2人が的確に巣穴の位置を割り出し、囚われた人がいないことを確認した後に眷属たちと一緒に巣穴を制圧。凍り付いた死体や共食いなどで辛うじて命を繋いでいたゴブリンを徹底的に潰して回っていたみたいです。ネックだった兎人(ササカ)の燃費の悪さも力持ちでたくさんの食料を持ち運べる吸血鬼(ヴァンパイア)とタッグを組むことで克服した殲滅チームはその恐ろしさを遺憾なく発揮し、冬の終わりを待っていたゴブリンに永遠の眠りをプレゼントして回っていたわけですね。

 

 

「技術を継承させなければ、アイツらはいつまでも同じ事しか出来ないし、考えられない。何年か続けていれば、ゴブリンっていう種族全体の質が低下してくるハズさ!」

 

 

 可愛く胸を張りながらなかなかに恐ろしいことを言ってますね垂れ耳兎人(サカカ)さん。横で聞いていた女将軍さんも「局地での探索能力に戦略的思考、あの猪にも見習ってもらいたいものだな」と頷いています。まぁ彼の良いところはその圧倒的な攻撃力と旺盛な戦意にありますから、ね?

 

 

 

「ふへ~。みんな頭を使ってるんだなぁ……へぷちっ!?」

 

「あらあら、風邪をひかないうちにお風呂で温まったほうが良さそうですね」

 

 おや可愛いくしゃみ。身体が冷えてきちゃったのか少女剣士ちゃんが鼻を啜り上げてますね。寒そうに二の腕を擦る姿を見た吸血鬼君主ちゃんが背後から首筋に顔を埋めるように抱き着き、翼で身体を包み込みながら星の力(核融合炉)の出力を上げ、冷え切った彼女の身体を温め始めました。

 

 

「どう? あったかいかな?」

 

「あ、あったかいですけど……その、いま汗かいてるから……っ」

 

 

 恥ずかしそうに翼の中で身体を捩る少女剣士ちゃんを不思議そうな顔で見る吸血鬼君主ちゃん。彼女の言わんとしていることを理解し、その上で……。

 

 

「みんなのあせのにおい、ぼくはすきだよ? だって、それはみんながいきてるってあかしだもの! ……ぺろ」

 

「ひゃん!?」

 

 

 首筋に舌を這わせながら囁かれ、可愛い声を上げる少女剣士ちゃん。その頬が紅潮しているのは翼の向こう側で吸血鬼君主ちゃんの手が腋やたわわの南半球の汗を拭きとっているからでしょうか。彼女の甘い香りとほんのりしょっぱい味を楽しむ吸血鬼君主ちゃんを女魔法使いちゃんが呆れた顔で見ていましたが、好奇心が勝ったのか女魔法使いちゃんもその鼻を彼女へと近付けていきました。

 

 

「――あらほんと。なんていうか、美味しそう?」

 

「でしょ? せいめいりょくにあふれててとってもみりょくてき! ……はむっ」

 

「ひぁぁ……」

 

 

 あらあら、女魔法使いちゃんも一緒になってprprし始めちゃいましたね。周りを見渡せばバッチコーイな白兎猟兵ちゃんに吸血鬼侍ちゃんが頬擦りしてますし、エロエロ大司教モードの剣の乙女ちゃんに抱え上げられ真っ赤になってる英雄雛娘ちゃんを令嬢剣士さんが苦笑しながら眺めています……お、敷物の上で潰れたカエルみたいに伸びていた妖術師さんがいつの間にか起き上がり、チラチラと視線を少女巫術師さんへと向けてますね。

 

 

「ふへへ……わ、私もprprしたいな~なんて……」

 

 

 

 

 

 

「なに勘違いしていやがりますか? prprされるのは貴女のほうですよ???」

 

「ヒエッ……」

 

「……それだけ元気ならお前だけ追加で走るか?」

 

 

 ……うん、今日も牧場は平和ですね!(メソラシー)

 

 


 

 

 朝風呂に入ってさっぱりし、ご機嫌な朝食を済ませたダブル吸血鬼ちゃんたち。ごちそうさまの声を上げた子どもたちが競うように防寒具へと身を包み、既に外で待っていた牧場の双子ちゃんや新進夫婦の姉弟たちのところへ駆け出していくのをパパママたちが見送ってますね。護衛兼遊び相手に英霊さん二柱と狼さんがいるので安全対策もバッチリです。

 

 

「あ、そうだ。さっき樽っ(ぱら)の2人が来て『頼まれてたブツが出来た』って言ってたわよ」

 

「! やった……!」

 

 

 良かったわねぇ、と妖精弓手ちゃんの蜂蜜を垂らした紅茶を口に運びながらの言葉に喜色を露わにする英雄雛娘ちゃん。新年早々から鍛冶場を備えた工房は稼働し、金属を鍛える音が響いていました。昼夜問わずの音に騒音の訴えが出るかもと思っていましたが、そこは夜営に慣れた冒険者たちと赤ちゃんの泣き声で鍛え上げられたママたちなので特に問題は無かったみたいです。

 

 ソワソワしている英雄雛娘ちゃんに注がれるみんなの視線は優しく、命を預ける相棒を迎える喜びを祝福しているように感じられます。子どもたちが遊んでいる間にみんなで行きましょうかという女魔法使いちゃんの声で工房へと向かい始めました。

 

 

 

 

 

 

「「おはよ~!!」」

 

「応、待ってたぜ」

 

「なんだ、耳長も来たんか。ちょいとそこに横になったら金床と区別が付かなくなりそうだの」

 

「むむむ……自分だって酒蔵にいたら並んでる樽と区別が付かない癖に~!」

 

 

 いつものやりとりを交わしつつ、工房へと足を踏み入れた一行。様々な工具や製作途中の武具などが所狭しと並ぶ鍛冶場にはほのかに太陽炉の熱が残っており、上着を着ていなくても問題無い室温となっているようです。挨拶もそこそこに一同が眼を向けた先には、未だ熱を放ち続ける二振りの剣の姿がありました。

 

 令嬢剣士さんがおかあさんである半森人夫人から譲り受けた大小二刀とも、悪魔殺し一党(パーティ)の女剣士さんが愛用している揃いのスティレットとも異なる一対の剣。片手で振るうには大きすぎるように見える右手の特大剣と、敵対者の剣を受け止め砕き折る左手のパリングダガーの組み合わせは牙狩りであった英雄雛娘ちゃんのお父さんの戦い方を受け継ぐためのもの。

 

 

「嬢ちゃんの親父さんが使っていた『直剣の柄』と魔神(デーモン)の本体だった刀を素材に、太陽炉の聖なる熱で鍛え上げた双剣。素材の持っていた疫病の呪いは病気や毒に対する祝福へと変わり、牙狩りの業は不死や異界由来の存在に対する特攻に昇華されとる筈だ。……ほれ、ぼさっと見とらんで握ってみんか!」

 

「は、はいっ!」

 

 

 隻眼鍛冶師さんの岩のような拳で背を叩かれ、剣のもとへと近付く英雄雛娘ちゃん。熱を帯びた柄に躊躇いがちに手を伸ばしますが、その熱は彼女を焼くことなく新たな使い手を受け入れているかのよう。重さを感じさせない様子で右手の特大剣を真っすぐ伸ばした右腕の延長、地面と平行になるよう構え、逆手のパリングダガーを右腕に交差させるよう握った姿は歴戦の冒険者が息を呑むほどに完成されています。……さ、鍛冶神さん! いい加減意地張るのをやめて、可愛い推しに一言送ってあげて下さい!!

 

 

「!? ……はい、やってみます! ≪鍛冶神さま 私の息吹が鋼を輝かせるところ どうぞご覧ください≫!!」

 

 

 特大剣の刀身にダガーを研ぐように擦り付けながら唱えられたのは鍛冶神さん専用奇跡である≪赤熱(ヒートメタル)≫。本来は金属を溶かしたり、相手の装備している鎧や武具にかけて熱によるダメージを与える奇跡ですが、英雄雛娘ちゃんが対象に選んだのは自らが持つ特大剣。赤熱化する刀身はやがて炎を纏い、かつて雷鳴とともに現れ世界を救ったと言われている伝説の騎士が所持していた三種の神器のひとつ『炎の剣』を彷彿とさせる姿へと変わりました!

 

 

「ね、ねぇ。それ、熱くないの?」

 

「えっと、はい。大丈夫です。おひさまの光を浴びている時みたいな温かさは感じてますけど、熱くはない……です」

 

 

 恐る恐る尋ねる妖精弓手ちゃんに向き直り、首を傾げながら答える英雄雛娘ちゃん。どうやら鍛冶神さんの加護によって、金属を通して伝わる熱は彼女に害を与えることは無いみたいです。剣と一緒に用意されていた鞘に二刀を納め、背中と腰に装備した姿で嬉しそうに微笑んでますね。

 

 ……ん? あの鞘なんか見覚えのある光沢と色をしてる気が。もしかして……。

 

 

森人(エロフ)姉とおっぱい娘のだけじゃなくて、その子の装備にまでシルマリルの身体が使われてるのよねぇ……」

 

「えへへ……みんなのやくにたててうれしいし、きょうしんはんのうでどこにあるかもわかるおやくだちきのうつきなの! ……ほしかったらあげようか?」

 

「うーん、遠慮しとく。使う当ても無いし、あったまるだけならこうやって抱き上げれば良いんだしね!」

 

「ふわぁ……すべすべ……いいにおい……」

 

 

 あ、やっぱり。セッション外の映像を記録している無貌の神(N子)さんに確認したところ、みんなからちゅーちゅーさせてもらいながら吸血鬼君主ちゃん身体の一部を一党(パーティ)の装備強化に使用してたみたいです。今回の鞘以外にも魔女パイセンの研究素材として提供したり、叢雲狩人さんの火炎放射器(インフェルノ・ナパーム)や令嬢剣士さんの魔剣(アヴェンジャー)の動力源として組み込むために星の力(核融合炉)を用いていたんだとか。なるほど、祭祀場跡で心臓を抉り出した際に一党(パーティ)のみんなが慌てる素振りを見せなかったのは、既に何度も実践していたからだったんですね!

 

 

 

「それと……オイ、そっちのちっこいの2人。お前さんたちにも渡すモンがある」

 

 

 ……と、おや? 隻眼鍛冶師さんが圃人コンビに声を掛けてますね。鍛冶場の奥から戻って来た隻眼鍛冶師さんの手には大振りな湾刀(カタナ)と金属片を繋ぎ合わせて作られた外套(クローク)のような物が握られています。駆け寄ってきた2人に手渡すそれは、浮遊神殿(フロートテンプル)で倒した魔神の意匠が色濃く現れた魔法の装備のようです。

 

 

 隻眼鍛冶師さんの説明によると、少女剣士ちゃんの背丈と変わらぬほどの長さの真紅の刀身を持つ大型の湾刀(オオタチ)牛の魔神(赤カブト)の甲冑と湾刀(カタナ)を素材にして鍛えられたものだそうです。その特徴はなんといってもその頑丈さ。特殊な機能は無い代わりに刀身の腹で甲冑を叩いても歪むことは無く、刃を立てれば一刀両断。洞窟や屋内など狭い環境で振り回しても障害物ごとぶった切る切れ味の良さも持っているんだとか。切れ味を恐れ鍔迫り合い(バインド)に持ち込まれても相手の武器ごと切断出来ると隻眼鍛冶師さんの太鼓判付きです。なお魔神(デーモン)を素材としているため非実体に対しても物理ダメージを与えられるらしいです。なにそれこわい。

 

 少女巫術師さんの受けとった外套(クローク)は予想通り双魔神を素材としていました。黄金魔神(モシレチク)の核をベースに白銀魔神(コタネチク)の翼の破片を組み込んだことで限定的な時間制御を可能とし、なんと自身を狙う攻撃の速度を半分に、自身の反応速度を2倍にすることが出来るんだとか! ただし反動で身体にダメージが入るため、乱用は禁物だそうです。体格の小ささに似合わず頑強な圃人(レーア)でなければ自滅するほうが早いかもしれない、一癖ある逸品に仕上がったみたいですね。なお外套(クローク)に仕立てられたのは時計(クロック)と掛けたからだという噂が囁かれてますが……きっと偶然でしょう。

 

 

「えっと、いいんですか? こんな凄いものを貰っちゃって……」

 

 

「いいの! ふたりはぼくたちにとって、はじめてできたレーアのおともだち!!」

 

「たいせつなはじめてをくれたおれいでもあるし、これからいっしょにぼうけんをするのにもっててほしいの!」

 

「「――だから、うけとってくれる?」」

 

 

 

「もう、そんな顔で言われたら断れませんよ? それに……」

 

「うん、こんな良いものを持ってるのに訓練場卒業で認定された黒曜のままじゃカッコつかないもん! いっぱい食べて、いっぱい鍛えて……」

 

 

 

「「い~っぱい魔力を注いでね、我らが愛しの頭目(リーダー)!!」」

 

 

 あらあら、2人からほっぺにちゅーされてダブル吸血鬼ちゃんが赤くなってます。普段はもっとエロイこと平気でやってるのに、こういう時だけ妙に初心なダブル吸血鬼ちゃんなのでした……。

 

 


 

 

 丸三日寝てないという鉱人2人にお礼を言って工房を後にした一行。久しぶりにお日様が顔を覗かせた青空の下では子どもたちが雪遊びに興じていますね。

 

 

 牧場長女ちゃんと星風長女ちゃんは真っ白な白毛に生え変わっている白兎猟兵ちゃんの弟妹たちと一緒にかくれんぼ。雪の中に隠れたおちびちゃんたちを探し、2人手を繋いで雪原を駆けまわっています。もぞもぞと身じろぎしている一か所だけ目立つ金毛をそっと後回しにしているのは、白兎四女ちゃんに対する優しさの表れかな?

 

 

 牧場長男くんと泣き黒子長男くんは雪の山をくり抜いてかまくらを作ろうとしているみたいですね。もうちょっとで完成……というところで雪山の登頂を目指していた太眉長女ちゃんが見事に天井を踏み抜き、内部へと落ちていきました。不意打ち気味に現れた彼女にビックリして半泣き状態の牧場長男くんでしたが、慌てた様子の太眉長女ちゃんに抱きしめられてなんとか涙は流さなかったみたいです。……なんというか、盤外(こっち)から見てても守護ってあげたいオーラが漂ってるんですよね彼。先程から地母神さんと知識神さんが鼻から神気を垂れ流しっぱなしですもん。

 

 

 おや、何処からか見つけてきたのでしょう。橇に立ち乗りしているのは叢雲次女ちゃんですね。若草三女ちゃんと新進長男くんを同乗者に、精霊さんにお願いして手に持ったシーツを帆代わりに風の力で雪原を楽しそうに爆走しています。お守りを引き受けてくれた英霊さんたちが追い付けてないってことは、結構な速度が出てますねアレ。その後ろを新進長女ちゃんを背に乗せた狼さんが必死になって追いかけてますが、寒くなってからの食っちゃ寝が祟ったのか、少々肥えた身体では厳しそうですね……。

 

 

「あはは! みんな楽しそうだね」

 

「ああ、そうだな」

 

 

 小高い丘の上では牧場夫婦を始めとするパパママたちが集まっていますね。身を切るような寒さの中元気にはしゃぐ子どもたちを、みんな優しい目で眺めています。蜥蜴僧侶さんの腕の中でみんなを見ていた竜眼少女ちゃんが自分も遊びたいといった感じでむずがっていますが、ま~だちょっと早いかな?

 

 

 

「あ、おねえちゃんのだんなさまといもうとさまだー!」

 

「ほかのみんなもいっしょだー!」

 

 

 お、ダブル吸血鬼ちゃんたちに気付いた兎人(サカカ)のおちびちゃんたちがわらわらと集まってきましたね。何か言おうとしてもじもじしている男の子たちのケツを長女ちゃんが引っ叩き、何事か促しているみたいです。ヒリヒリと痛む尻を擦りながら、長男くんが口を開きました。

 

 

「おねえちゃんのだんなさなといもうとさま! おねがいがあります!!」

 

「「いいよ~! あいたっ」」

 

「こら、ちゃんと話を聞いてから返事しなさいっていっつも言ってるでしょうが。……で、どうかしたの?」

 

 

 うーんこのいつもの光景。ダブル吸血鬼ちゃんの頭にでっかいたんこぶを拵えた女魔法使いちゃんの問いに顔を見合わせていた兎少年たちでしたが、意を決したように「お願い」を切り出しました……。

 

 

「あの、どうしてもおさかながひつようなんです!」

 

「パンもおにくもみんなたべられなくなっちゃって……!」

 

「ミルクをのんでもすぐにきもちわるくなっちゃうみたいなんです!」

 

 

「……もしかして、キミらの奥さんたちか?」

 

 

 闇人女医さんの言葉にコクコクと頷くおちびちゃんたち。もしかして……おめでた? 必死になって説明するおちびちゃんたちの言葉を繋ぎ合わせた結果、なんとなく事態の全容が浮かび上がってきました。

 

 

 忙しい収穫期を乗り越え牧場全体が落ち着いた頃、大好きなお嫁さんたちとイチャコラしていた結果見事におめでたとなった3組の可愛いカップル。最初は問題無かったのですが、お腹のふくらみが目立つようになって例のアレが襲い掛かってきました。……そう、悪阻です。

 

 人によって症状に差異はありますが、彼らのお嫁さんたちの場合はまず動物の肉とその加工品がダメに。血の匂いを連想して吐き気を催してしまったそうです。次に普段食べている硬麺麭。どうやら発酵による僅かな酸味がダメだったみたいです。野菜の類は食べられるみたいですが、コクを出すために使う牛乳がアウトなため単なる水煮に近いものに。蛋白源が不足して体重が落ちてしまったお嫁さんたちになんとか食べてもらおうと考えた結果、残るは魚しかないという結論に至ったみたいです。

 

 

「ほしたさかなをこまかくちぎって、ふわふわにしてスープにうかべたのはたべてもらえたけど、もうぜんぶなくなっちゃったの……」

 

「しおづけはにおいとしょっぱさがダメで、たべてもすぐにもどしちゃった……」

 

「できればクセのない、たべやすいさかながほしいんです……!」

 

 

 必死の訴えに対し考え込む一同。悪阻の辛さはママたちが良く知ってますし、なんとかしてあげたいところですが……。

 

 

「うーん……時間を頂ければ入手することは可能でしょうが、今は時期が……」

 

「どの店も『悪くならないうちに』って年末に売り切っちゃってるから、在庫が残ってるかどうか……」

 

 はい、冬至(ユール)のお祭りには、あまり日持ちのしない保存食の処分という側面もありまして。出店なんかで安く売られている軽食の材料はそんなところが出処なんですね。令嬢剣士さんが実家を当たって見ると言ってくれてますが、どうしても時間はかかってしまいそうです。なんとかして魚を手に入れられないものかと頭を悩ませる一行の前に現れた救世主は……。

 

 

 

 

 

 

「――話は聞かせてもらったよ。もしかしたら力になれるかもしれない」

 

 

 牧場を義娘夫婦に譲り、悠々自適の釣りキチ生活を満喫しているお義父さんのエントリーだ!

 

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 

 





 釣りキチ三平を見返す作業に入るので失踪します。


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