ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 読み返して名作であることを再確認したので初投稿です。



セッションその16.5

 

 グルメスピンオフの様相を呈してきた実況プレイ、はーじまーるよー。

 

 兎人(ササカ)の少年たちからのお願いに頭を悩ませていた一行の前に現れた救世主、なんとそれは牧場夫婦のお義父さん! 牧場を義娘夫婦に譲って肩の荷が下りたのでしょう、眉間の皺は綺麗さっぱり消え去り、兎人(ササカ)のおちびちゃんたちをはじめとする牧場の従業員に日々農作業の指導を行う姿は精神的余裕に満ちていました。

 

 セッション外での様子を観察している無貌の神(N子)さんからの情報によると、ちょっと前から只人寮母さんと良い感じになっており、休みの日を合わせては2人で釣りに出掛けたり辺境の街でデートしたりしているんだとか。そう遠くない未来、彼らにも春が訪れるかもしれませんねぇ。

 

 では、そんなお義父さんとともにおちびちゃんたちの願いを叶えるべく牧場からすぐの川へと集まった勇者たちを紹介いたしましょう!

 

 

「うぅ、さぶ……シルマリル、あっためてよぅ……!」

 

「いいよ~。ぎゅ~……」

 

 

 まずはガタガタと震えながら吸血鬼君主ちゃんを懐炉代わりに抱きしめている妖精弓手ちゃん。昨年浮遊神殿(フロートテンプル)調査用に準備していた防寒着に身を包み、風邪を引いて参加出来なかった蝲蛄(ザリガニ)釣りのリベンジと息を巻いていましたが……開始前から「こんな寒いとは思わなかった」って顔ですね。体脂肪が控えめなのも寒さの原因なのかもしれません。

 

 

「毎年のことだから仕方ねぇとはいえ、同じモンばっかり喰ってるのも飽きてきたしなぁ」

 

「寒空の下で塩をきつめに効かせた焼き魚で一杯ってのも悪かねェな。テメーもそう思うだろ?」

 

「ああ、そうだな」

 

 

 続いては我らが辺境三羽烏三勇士! 手には円匙(スコップ)を持ち、傍らに直径20cm程ある丸木の杭を転がしていますね。彼らを含め誰も釣り竿を持っていませんが、今回は竿を使わないで魚を獲るんだとか。うーむ……いったいどんな方法なんでしょう? 楽しみです!

 

 

「うぇぇ……生きてる魚とか触ったことないのに……」

 

「これもくんれん! がんばって!!」

 

「は~い……」

 

 

 体操着(ブルマ)からいつものフード付きローブ着替えた妖術師さんは魚と聞いて浮かない顔。死霊術を学んでいるということで死体と接する機会は多そうですが、生き物が苦手とは意外ですね。獲れた魚を入れる大きな木桶を抱えた吸血鬼侍ちゃんに応援され、なんとかモチベを保っているって感じですね。

 

 ちなみに妖術師さんのローブは他の眷属のみんなとおんなじで自らの魔力で編まれた特別製。彼女の場合不浄本から学んだ影の触手を操る呪法を利用しているようで、袖口や裾からほつれのように触手がチラチラと顔を見せています。

 

 眷属のなかで最も身体能力が低い妖術師さんですが、操影術と再生力に関してはずば抜けて高く、その再生速度はダブル吸血鬼ちゃんの一分(1ラウンド)につき14点を超える驚きの20点(盤外(サークル)調べ)! 半身を吹き飛ばされるような一撃を受けても半ば身体と融合している触手で穴埋めし、あっという間に元通りになっちゃうんだとか。攻撃に転用した場合の恐ろしさは……ちょっと太陽神さんの高いうちは口に出来ませんね!

 

 残りの面子は釣りの歓びに目覚めた英霊さん2人に狼さん、そしてお義父さんといういつもの顔ぶれ。おちびちゃんたちも来たがっていたのですが、あんまり泳ぎの得意でない彼らが万が一冬の川に落ちたら大変なので、お義父さんに説得されておうちでお留守番してもらっています。

 

 

 

「さて、みんな集まってくれてありがとう。今回は釣りというよりは、この雪を利用した漁になる。互いの安全に注意して臨んでもらいたい」

 

 

 牧場夫婦のお義父さんの言葉に頷きを返す一行。みんなが居る場所は川の本流から少し離れた場所、流れによって地形が浸食され盲腸から飛び出た虫垂のように行き止まりになっているところです。分厚く雪に覆われた川縁から覗き込めば、ほとんど水の流れが無いことが見て取れますね。

 

 

「冬場は魚にとっても厳しい季節。水は冷たく動きは鈍り、餌も少ない。だからこういう流れの緩やかなところに集まって、じっと動かないことが多いんだ。餌に対しての反応も悪いから、普通の方法で魚を獲るのは難しい。そこで……」

 

 

 判り易く冬場の説明をしながら、手に持っていた円匙(スコップ)を掲げるお義父さん。みんなが興味深そうに見守る中、本流との境界の部分に近付き水上に迫り出した雪を突き崩し、流れをせき止めていきます。

 

 

「さ、力自慢の男子諸君は手伝ってくれ。流れを完全にせき止めたら、そのまま雪をどんどん川の中へ投げ込んでいくんだ」

 

「判りました、義父さん」

 

「よっしゃ、任せろ!」

 

「冷えた身体があったまるってモンよ!」

 

「「……!」」(エイエイオーのジェスチャー)

 

 

 お義父さんに続いて雪と格闘を始めた辺境三勇士&英霊さん。冒険や牧場での作業で鍛えられた身体能力に物を言わせ、雪のブロックを切り出しては次々に川の中へと放り込んでいきます。本流から完全に切り離され、溜池のようになったところでダブル吸血鬼ちゃんも参戦。翼を器用に使って自分よりも大きな雪の塊を川に向かって押し出してます。

 

 

「みんな、がんばりなさ~い」

 

「が、頑張れ~!」

 

「わふぅ」

 

 

 妖精弓手ちゃんと妖術師さんは……2人とも狼さんをハグしながら完全に観戦モード。双璧に暖房代わりにされている狼さんはそこはかとなく物足りなさそうな表情を浮かべているような気がしますね。おおよそ30分ほどで前準備は完了し、円匙(スコップ)の腹で叩き固められた雪で川は地面と変わらない高さまで均されました。

 

 

「みんな、おつかれさま~!」

 

 

 額に汗を浮かべた男性陣に振る舞われているのは蒸留酒(ブランデー)入りの紅茶ですね。インベントリーに入れておいたおかげで温かさを保っていたそれを口にするみんなの顔には笑みが浮かんでいます。一息入れたところでいよいよ本番。懐炉代わりの吸血鬼君主ちゃんを抱えたままの妖精弓手ちゃんが固められた雪の上を歩き回り、耳を澄ませて何かを探っていますね。やがて雪上のある一点で立ち止まり、お義父さんへと視線を向けました。

 

 

「ん、ここね。ここに力が集まってる!」

 

「ああ、ありがとう。これがこの漁で一番重要なところなんだ。上手くヘソを見つけられないと失敗してしまうからね」

 

 

 妖精弓手ちゃんの立っていた場所に翼で印をつけ、杭を担いだゴブスレさんと入れ替わりにその場を離れる2人。周りから十分にみんなが離れたのを確認したゴブスレさんが、両手で持った杭を大きく振り上げ、尖らせた先端を印目掛けて勢いよく突き刺しました!

 

 

「……ッ!?」

 

 

 執拗に叩き固められた雪は非常に硬く、思うように刺さっていかないみたいですね。槍ニキと重戦士さんを交え代わる代わる杭を突き刺すこと数十回。半ば以上が雪中に埋もれるようになったあたりで……。

 

 

「……お? これはいったか!?」

 

 

 持ち前のタフネスっぷりを発揮し3人の中で一番回数を稼いでいた重戦士さんが感じる手応えに歯を見せる笑みをみんなに向けてますね。グリグリと杭を回し貫通したのを確認すると、勢いよく雪中から抜き取りました!

 

 

「「ほわぁ~!!」」

 

「うわ、なにこれ凄い!」

 

 

 穿たれた穴から川の水とともに飛び出てくる大小様々な魚たち。雪上で跳ね回るそれを手で捕まえ、みんなで木桶へと放り込んでいきます。直接触れるのがイヤなのか、妖術師さんは両の指の数を超える触手を袖口から展開して圧倒的な速度でピチピチと跳ねる魚たちをゲットしてますね。

 

 

「――そうか。雪で押し固めたことで水圧が増し、それが穿たれた穴から吹き出てきたのか」

 

「ほー、意外と理に適ってたってワケか!」

 

「なかなか少人数では難しいからね。皆の手を借りなければ出来なかったよ」

 

 

 ありがとう、と腰に手をあてながら義息子とその親友にペコリと頭を下げるお義父さん。どうやら魔女の一撃が腰を掠めたようで、吸血鬼侍ちゃんが後ろで≪小癒(ヒール)≫をかけてますね。只人寮母さんとのナニもあるかもしれませんし、腰をいわしてしまったら大変ですから気を付けないといけませんねぇ。

 

 

「あるぇ~?」

 

「出てこないわねぇ……」

 

 

 おや? 吸血鬼君主ちゃんと妖精弓手ちゃんの言う通り、水も魚も出て来なくなっちゃってますね。触手で詰まりを取り除こうとする吸血鬼君主ちゃんに≪小癒(ヒール)≫による治療を終えたお義父さんが声を掛けました。

 

 

「ああ、そうしたらみんなで一斉に跳躍して皆底に圧を加えてみるといい。絞り出すように残っていた水が出てくるだろうからね」

 

「は~い! みんな、あつまれ~!!」

 

「それじゃいくよ~? せ~のっ!」

 

 

 冒険者一同に英霊さん2人が加わり、総勢9人による跳躍&踏みつけ。二度三度と繰り返すうちに内部の圧力が高まり……。

 

 

「キャン!?」

 

 あ、鼻を鳴らしながら穴を覗き込んでいた狼さんに平べったい何かが命中しました! のたうち回る狼さんの傍に落下したのは……冬眠中だった(すっぽん)です!! メリメリと穴を広げながら飛び出して来たその大きさは40cm越えの大型、それ以外にも30cmほどの大きさのものが何匹も雪上に姿を現しました。どうやらこの場所は彼らの冬眠地でもあったみたいですね。穴を塞いでいた栓が抜けたことで残りの水も吹き出し、持ってきた木桶は獲物でいっぱいです!

 

 

(すっぽん)は病み上がりや妊娠時に特に良いとされている。運が良かったね」

 

「……え、コレ食べるの……?」

 

「多少見た目は異なるが、魚や蛙と変わらん。何も問題無い」

 

「ドラゴンだって喰っちまうのが俺たち只人(ヒューム)だからなぁ……」

 

 

 予想外の獲物に頬を緩ませるお義父さんにマジで……?という顔を見せる妖精弓手ちゃん。亀やその仲間を見たことはあっても肉食文化の無い森人(エルフ)には食べるという発想は無かったのでしょう。ゴブスレさんや槍ニキのいうように割となんでも食べちゃうのが只人(ヒューム)の強みでもあり、度し難い点でもあるわけで。あと蜥蜴僧侶さんがいたらゴブスレさんの発言には異議を唱えるかもしれませんね、進化論的な意味で。

 

 

「魚は食べやすいように臭み消しを行うし、(すっぽん)は泥を吐かせないといけないからね。食べるのは数日後になる。後は……」

 

「明日へ繋がる糧を分け与えてくれた自然に感謝を……」

 

「「ちぼしんさま、ありがとうございます……!」」

 

 

 使用した道具を片付け川縁に並ぶ一行。貴重な恵みを頂いた感謝を自然と地母神さんに捧げています。森人(エルフ)の里の奥にあった城塞を巡る冒険、その最中に≪模倣(イミテーション)≫を経由してダブル吸血鬼ちゃんから≪聖歌(ヒム)≫の奇跡を乞われてからこっち2人に熱っぽい視線を送っていた地母神さんでしたが、先日の女神官ちゃんの告白によって2人に対する好感度は天元突破。『亡者(アンデッド)諸君、命あるものを無礼(なめ)るなよ。ただしダブル吸血鬼ちゃんは別だ』という迷言とともに虹色に発光し、知識神さんと一緒に尊死しかけていたのは記憶に新しいところです。

 

 さぁ、あとはおちびちゃんたちのお嫁さんに食べてもらうだけです! ちょっとだけ時間を進めてみましょうか。万知神さん、お願いしまーす!!

 

 


 

 

「それでは調理を開始します。皆、しっかりと手は洗いましたね?」

 

「「は~い!」」

 

「よろしい、終わったら頭を撫でてあげましょう」

 

「「わ~い!!」」

 

 

 療養所の調理場に集まったみんなの前に立っているのはエプロン姿が素敵な半森人夫人さん。令嬢剣士さんから事情を聞き、王都で干し魚をかき集めて≪転移≫の門で駆け付けてくれました! 只人(ヒューム)森人(エルフ)、どちらの料理も知っている彼女が中心となって悪阻に苦しむ女性向けの料理を作るみたいです。

 

 

「食欲不振の原因は食材のにおいが多くを占めています。なので、生臭さや血の匂いを極力取り除いた調理方法が必要なのです」

 

 

 調理台の上には数々の食材。先日川で獲った獲物以外にも牧場産の豹芋(ジャガイモ)や近くの森で採取された香草類が所狭しと並んでいます。西方辺境ではあまり見かけない食材としては長葱がありますね。森人(エルフ)の食文化では大蒜(ニンニク)(ニラ)と同様に薬草扱いの葱をどう調理するのか、妖精弓手ちゃんも興味津々な様子です。

 

 

「まずは魚のほうから始めましょうか。事前に下準備をしておいたものが此方です」

 

 

 そう言いながら半森人夫人さんが取り出したのは黄色い半透明の液体に浸された魚の切り身。漂う香りから考えると、蒸留酒に柑橘類の果汁を絞ったものに酢や香草を加えたマリナード(マリネ液)みたいですね。果汁に含まれる酸と酒精(アルコール)の力で淡水魚特有の臭いを打ち消し、ついでに風味を付ける一石二鳥の方法です!

 

 

「漬け汁を綺麗に拭き取ったらお皿に並べ、それを蒸し器に入れて蒸しあげます。この後追加で熱を加えるのであまり長く蒸さなくても大丈夫ですよ」

 

「ん……けっこう難しいわね。身が柔らかくなっているから崩しちゃいそう」

 

「ふふ、多少形が崩れても問題ありませんよ? それにゆっくりやっても手から熱が移る心配もありませんし」

 

「あー……まぁそっか、アンデッドだものねぇ」

 

 真剣な表情で漬け汁を拭き取る女魔法使いちゃん。マリナード(マリネ液)には食材を柔らかくする効果もあり、無理な力が加わると身切れしてしまうため慎重になっているみたいです。一緒に作業をしている若草祖母さんが力を抜くよう話してますが……うん、流石はおばあちゃん。手早く正確に鱒の身をお皿に並べてますね。

 

 

「魚を蒸している間に(すっぽん)も火にかけてしまいましょう。捌くのは……ふむ、素晴らしい出来栄えです」

 

「ああ、言われた通り部位ごとに切り分けたぞ。胆嚢も潰さないよう取り除いてある」

 

「「ちはおいしくいただきました~!」」

 

 

 フンス!と立派なたわわを張る闇人女医さんの前には綺麗に処理された(すっぽん)が並んでいます。亀の仲間でありながら柔らかな甲羅を持つ(すっぽん)は殆どの部位が食べられるのですが、捌く際に「苦玉」と呼ばれる胆嚢を潰してしまうと身全体に苦みが移ってしまうため、生物の構造に詳しい闇人女医さんが下処理を引き受けてくれました。沸騰しない程度の熱湯に潜らせ表面の薄皮を剥がしてある身は爪や甲羅を除けば鳥肉と変わらない見た目と匂いですね。

 

 ……なお、野生の(すっぽん)の生き血には有害な微生物が含まれている可能性があるため、視聴神のみなさんはダブル吸血鬼ちゃんの真似をしないようお願いいたします。

 

 

(すっぽん)だけでも良いのですが、今回は香りづけに生姜と葱の青いところも一緒に入れましょうか。強火で一気に煮るのがコツです」

 

 

 身や内臓、えんぺらと言われる甲羅の柔らかい部分を鍋に入れ、強火で煮ることしばし。芳醇な香りが漂い始めたころに鍋の蓋を開ければ、そこには黄金色に輝く極上のスープが出来上がっているではありませんか! 塩胡椒で味を調え、一口味見した半森人夫人さんの顔を見てみんなゴクリと唾を飲み込んでいます。

 

 

「見た目で嫌がるといけませんので、彼女たちにはスープだけにいたしましょう。……なので、残りの具は美味しく頂いてしまいましょうか」

 

「「「「「ヒャッハー!」」」」」

 

 

 妊婦さんたち用に溶き卵を入れた汁を取り分けた後、肉や内臓が浮かぶ大鍋をみんなに向ける半森人夫人さん。食いしん坊たちが差し出された器へと群がり、一斉に口へと運びます……。

 

 

「うっま!?」

 

「なにこれ……なにこれ……?」

 

「なんていうか、すごく、すごいです!」

 

 

 口に含んだ瞬間、爆発するように広がる快楽。極上のコンソメ・ドゥ・ブフ(コンソメスープ)に勝るとも劣らない複雑な旨味に脳を焼かれ、みんな語彙力が著しく低下しちゃってますね。舌の上で崩れるほどに柔らかくなった身もけっして出し殻などではなく、ゼラチン質なえんぺらとともに部位ごとに異なる味を提供してくれています。まったく臭みの無い肝臓(キモ)には肉食を好まない妖精弓手ちゃんすらほっぺたが落ちそうな顔を見せています。

 

 

「さぁ、どんどん作っていきますよ。次は豹芋(ジャガイモ)のパンケーキ。これはとっても簡単です」

 

 

 すりおろした豹芋(ジャガイモ)に薄力粉と卵、塩を入れて混ぜたタネをフライパンで焼いていく若草祖母さん。地域によっては砂糖を入れて甘くすることもあるみたいですが、今回は付け合わせということで薄い塩味に仕上げているみたいです。表面カリッと中はサクサク、作り方も簡単ですし、これなら兎人(ササカ)のおちびちゃんたちにも作ることが出来そうですね!

 

 ……お、そうこうしているうちに魚が蒸しあがったみたいです。ふっくらと蒸された切り身の上に剣の乙女ちゃんが白髪葱と生姜ををたっぷりとのせたところで、小鍋片手に叢雲狩人さんが近付いていきます。鍋の中身は……煙が上がるほどに熱された油です! ジュジュっと音をたてる油が身に触れた瞬間、鮮烈な香りが立ち昇りました!

 

 

「おぉ……こりゃまた美味そうな……!」

 

「油を多く使うので少々高くつきますが、王都の高級店でも提供されている調理法なのです」

 

「へぇ、食い意地が張ってるぶん詳しいのねぇ……って、いつの間に現れたのよ!?」

 

「最初からいたのです。……というか、私が≪転移≫の鏡を起動していたのですよ???」

 

 

 重戦士さんの隣で涎を垂らしながら食い入るように料理を見つめる賢者ちゃんに驚きの声を上げる妖精弓手ちゃん。言われてみれば、王宮にある≪転移≫の鏡を起動出来るのは賢者ちゃんか銀髪侍女さんですもんね。先程から響いていたゴゴゴゴゴ……という地鳴りのような音は、彼女のおなかに生息する妖精さんの出す音だったんですね。

 

 盤外(こちら)では清蒸(チンジョン)と呼ばれる魚の調理法。まるまる一匹を用いることが多いですが、切り身でやってもじつにうまあじに仕上がります。東方の交易商人から伝わり、魔法で鮮度を保った状態で運ばれた大型の海水魚を用いたそれは王都でも最高級の料理なんだとか。ちなみにお刺身に類する食べ方は無いみたいです。鮮度と寄生虫が怖いですからねぇ……。

 

 

「はい、これで完成です。……さぁみんな、奥様たちのところへ持っていってあげてくださいな」

 

「「「ありがとうございます! おねえちゃんのだんなさまのおかあさま!!」」」

 

 

 鱒の清蒸と(すっぽん)のスープ、そして豹芋(ジャガイモ)のパンケーキ。心を尽くした料理の数々が乗ったお盆を受け取り、慎重な手付きで運んでいく小さなおとうさん候補生たち。やがてお嫁さんたちが入院している大部屋から驚きと歓喜の合わさった声が響いてきました。調理場から漂ってくる馥郁たる香りに久しく抱いていなかった食欲を刺激され、何が出てくるのかとワクワクしていたらしく、運ばれてきた料理に目を輝かせていますね。甲斐甲斐しく口元に運ばれてくる美味なる料理に夫婦みんな笑顔になってます。良かった、上手くいったみたいですね!

 

 

 

「悪阻と上手く付き合うコツは無理に食べようとしないことと、一度に食べる量を減らし、代わりに回数を増やすことです。個人差はあるかと思いますが、それで解決することが多いですね」

 

「成程ねぇ……。雇い主(オーナー)んトコはみんなあっという間に産んじゃってたから悪阻は無かったし、勉強になるわぁ……」

 

 

 今後に備え、半森人夫人さんの助言をメモ紙(パピルス)に書き留める只人寮母さん。ダブル吸血鬼ちゃんたちは追加の魔力供給で成長ブーストしちゃってましたし、銀等級ママたちや牛飼若奥さんはケロっとした顔をしてましたからねぇ……一般的な夫婦の場合のモデルには程遠いです。それに……今後彼女自身もそうなるかもしれませんし、ね?

 

 

 

「いやぁ美味かった! この米を入れた粥みてェなのも汁の旨味を吸って最高だよな!!」

 

「冬の間は暇だし、また今度捕まえに行くか?」

 

「はは……あまり繁殖力は強くないから、ほどほどにしておいたほうが良いだろうね」

 

 

 身を綺麗に食べ尽くし、〆の雑炊まで堪能して満足そうな一行。槍ニキの誘いに同意していた重戦士さんですが、牧場夫婦のお義父さんの言葉にそういうものかと頷いています。冬眠期間の長い(すっぽん)は成長速度が遅く、今回美味しく頂いた大きさになるまで3年から4年、一番大きい個体はそれ以上の時を重ねていたと考えられます。欲望のままに乱獲してしまっては、あっという間に姿を消してしまうことでしょう。

 

 

「フム……養殖という手もあるな」

 

「あはは、面白そうだね! せっかくだからやってみる? 療養所のごはんにも向いてそうだし」

 

「ああ。だがそのためには生息環境や餌についてもっと詳しく知らねばならん」

 

 真剣な表情でメモ紙(パピルス)片手に考え込むゴブスレさん。彼を背後から抱きしめ、柔らかな肢体を押し付けながら覗き込む牛飼若奥さんの顔には苦笑の色が見て取れます。ガンギマリな顔でゴブリンゴブリン言ってた頃を思わせる昔の彼を思い出しているのでしょうか? ……ほんの数年前までそうだったんですよねぇ……。

 

 

「まーたオルクボルグが夢中になってる。……ねぇ、親戚として何か知らないの?」

 

「いやぁ、拙僧只人(ヒューム)の社会に染まった後、親戚付き合いを疎かにしておりましたからなぁ」

 

「しんせきってことは、とかげさんからもおいしいおだしが……」

 

「じゅるり……」

 

「こらこらおちびちゃんたち、私の亭主をそんな目で見るのは止めてもらおうか」

 

 

 女将軍さんにガッチリとホールドされ、たわわに顔を押し付けられるダブル吸血鬼ちゃん。鋼のように鍛え上げられた筋肉の上に搭載されている胸部装甲は、剣の乙女ちゃんの『ふかふか』や女魔法使いちゃんの『ふわふわ』、闇人女医さんの『どたぷ~ん』とも異なる『むっちむち』な触り心地。触れれば弾き返すような感触に負けた2人が骨抜きにされちゃってますね。

 

 

「まったく2人して……ああそうだ、アンタもご飯を集りに来ただけじゃないんでしょ? さっさと本題に入りなさいな」

 

「げふぅ、御馳走様なのです。……もうちょっと食後の余韻に浸っていたいところなのですが、仕方が無いのです」

 

 

 半目で睨む女魔法使いちゃんをいなしつつ、ぽっこりと膨らんだおなかを満足そうに擦りながら向き直る賢者ちゃん。四次元ポシェットから取り出した封書には陛下直々の案件の証明である封蝋が施されており、金等級以上への依頼であることが伺えます。封筒の宛名に書かれているのは……ゴブスレさんの名前ですね! そういえば昨年末に陛下が遊び視察に来た帰り際に依頼の話をしてましたっけ。

 

 封蝋を砕きながら開封し、中の手紙に目を通すゴブスレさん。一通り読み終えた後、賢者ちゃんに視線を向けコクリと首肯。彼に頷きを返した賢者ちゃんが、依頼の内容について話し始めました……。

 

 

「彼の了承も得られたので、依頼の内容を伝えるのです。――依頼内容はまず第一に要人護衛。陛下の妹君2人を北方辺境に暮らす入り江の民の頭領、彼女たちの叔父の元へと連れて行くことなのです」

 

 

 ほほう、王妹殿下1号と2号を伯爵夫人(おかあさん)の弟である頭領(ゴジ)に逢わせてあげるんですね! 原作(ほんへ)では父親の負債を返済するために北方辺境へと赴いていましたが、この物語(キャンペーン)でも同様の理由なんでしょうかね?

 

 

「第二に顔合わせ。新しき金等級である『辺境最優』と秩序の護り手たる『辺境最悪』に、北狄と戦う彼らと交流を深めてもらいたいのです」

 

 

 なるほど、ダブル吸血鬼ちゃん一党(パーティ)の活躍で王国の財政、戦況は安定していますし、支援を求めるというよりは有能な人材を紹介する感じなんでしょうか。近い将来城塞都市近郊を領地として貴族の家を立ち上げるダブル吸血鬼ちゃんにとってはご近所さん(近いとはいってない)になるわけですし、仲良くしておくのは大切でしょう。

 

 冒険者ギルドがない北方辺境において認識票は意味をなしませんが、逆に言えば実力を認めてもらえば出自でとやかく言われることもありません。ダブル吸血鬼ちゃんたち吸血鬼(ヴァンパイア)を新たな秩序の種族として認めてもらう良い切っ掛けになれば良いですね!

 

 

「第三に調査。昨年秋口から入り江の民によってもたらされる交易品が減少しているのです。香辛料や装飾品など嗜好品が多いので直ちに日常生活に支障が出るわけではありませんが、商人たちの間で不安の声が上がっているのです。状況を把握し、可能であれば原因を排除して欲しいのです」

 

 

 ふむふむ、これまた重要な案件ですね。喫水の浅い船を駆り、漁業や交易を生活の糧にしている勇敢なる蛮族である入り江の民(ヴァイキング)。彼らの交易が滞ることは流通全体の流れが停滞することを意味します。放置していれば生活必需品にも影響が出かねませんので、しっかりと原因を突き止める必要がありそうです。

 

 

「――頭領とその奥方との親交を深める都合上、『辺境最悪』の正妻2人は同行願いたいのですが、それ以外の細かな人選は『辺境最優』に任せるのです。……誰が行くのかで喧嘩しないよう、しっかりと考えて欲しいのです」

 

「……ああ、判った」

 

 

 ヒソヒソと声を交わす賢者ちゃんとゴブスレさん。正妻2人ということは妖精弓手ちゃんと令嬢剣士さんは確定ですね。ダブル吸血鬼ちゃんに王妹2人、ゴブスレさんを合わせて現在7人が選出済み。戦闘能力以外にも移動や交渉能力なんかも考慮しないといけませんし、あまり人数が多くても動き辛くなってしまうかも。これはなかなか難しそうな予感がします。栄養満点なご飯を食べたばかりなのにキリキリと痛むのか、ゴブスレさんが胃のあたりを押さえてますねぇ……。

 

 

「……ふぅン、妹姫(いもひめ)様と後輩君は確定。そうなる同行者はあと2、3人てところかなぁ?」

 

「北方辺境では嗜虐神信仰が盛んと聞く。……実に興味深い」

 

「流氷に極光(オーロラ)……見てみたいなぁ……」

 

 

 ――さぁ、聴覚の鋭い森人(エルフ)吸血鬼(ヴァンパイア)のお嫁さんたちが内緒話を聞きつけ、場は既に混沌が溢れてきています! 英雄雛娘ちゃんもチラチラと視線を送ってますし、一党(パーティ)面子ではない圃人(レーア)コンビまでワンチャンあるかもという顔をしていますよぉ!! 

 

 

「……!!」

 

 

……あ! 緊張感に満ちた場に耐えかねてゴブスレさんが戦略的撤退を選択しました!! 断固たる決意で駆け出したゴブスレさんを見目麗しい女の子たちが追いかける光景を前に、槍ニキがボソリと呟きます……。

 

 

「カワイ子ちゃんたちに追いかけられてるっつーのに、なんて羨ましく無ェ光景なんだ……」

 

「変わってやったらどうだ? 英雄になる夢を叶えた『辺境最強』さんよ」

 

「絶っ対にノウ! お前こそ変わってやれよ、『辺境最高』の頭目(リーダー)?」

 

 

 

 

 

 

「「……いや、俺は遠慮しとく……」」

 

 

 エロエロ大司教モードの剣の乙女ちゃんによって大蛇に巻き付かれた獲物の如く拘束されたゴブスレさんを眺め、晴れやかな笑みを浮かべながら彼を見捨てる決意を固めた2人。麗しい男の友情を確認したところで、次回は試される大地への冒険です! いったい誰が残りの席を確保するのでしょうか? 私も楽しみです!!

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 

 




 同行者を決めるダイスを振るので失踪します。


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