ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 東北弁が難解過ぎて諦めたので初投稿です。




セッションその17-2

 

 前回、吸血鬼君主ちゃんの光源氏計画がパパママ公認になったところから再開です。

 

 兎人(ササカ)の集落で歓待を受けた翌日。肌を刺す寒風と雲一つない青空の下、ダブル吸血鬼ちゃんたちが訓練組と一旦お別れして出発する準備を整えていますね。

 

 

「それじゃあ、かえりにまたよるからね!」

 

「うむ、宜しく頼む」

 

()()()()()()()()()()()()()()、君主殿も道中気を付けて下され」

 

 

 リラックスしながらちゅーちゅーさせてもらって吸血鬼君主ちゃんは元気いっぱい! 蜥蜴僧侶さんと女将軍さんにブンブン手を振って行ってきますのご挨拶をしていますね。雪で反射するおひさまの光の影響か、雲の多い日よりもテンション高めです。

 

 

「みんな、くんれんがんばってね!」

 

「ああ、勿論だともご主人様。期待していてくれたまえよ」

 

「むふ~……ふわふわ……」

 

 

 お、叢雲狩人さんのたわわに顔を埋めてスキンシップしている吸血鬼侍ちゃんも肌艶は良いですね。令嬢剣士さんもキラ付けが完了してますし、2人揃ってちゅーちゅーさせてもらっていたのでしょう。

 

 

「うぅ……あそこまでやって寸止めなんて……酷いです……っ」

 

「まぁまぁ。お兄様だって意地悪で清い関係でいろと仰ってるわけじゃありませんし、もう少しの辛抱よ!」

 

 

 おおう、王妹殿下1号2号こと女神官ちゃんと神官銃士ちゃんも真っ赤なお顔。どうやら吸血の副次的効果でムラっとしたままお預けだったみたいです。む~と膨れている女神官ちゃんを慰める神官銃士ちゃんはちょっぴりお姉さんっぽく見えますね!

 

 

「雪上で使う装備は用意してある。残りは荷馬車と一緒にしまっておけるか?」

 

「ん、だいじょうぶ。すぐとりだせるようにしておくね!」

 

「せっかく用意してきたんだもの、使わなくちゃつまらないものね!」

 

 

 此処から先は徒歩ということで大きな荷馬車をインベントリーにしまっている吸血鬼君主ちゃん。その隣でゴブスレさんが並べているのは……2枚1組で括られた細長い板ですね。先端が反り返った形をしたそれを妖精弓手ちゃんが拾い上げ、受け取った吸血鬼君主ちゃんがどんどんインベントリーに格納しています。あの形状、もしかして……。

 

 

「えっと、大丈夫ですか?」

 

「うぅ……だいじょばないぃ……なぐさめて……あまやかしてぇ……」

 

「ひゃん? ……もう、悪戯はだめですっ」

 

 

 お、うさぎさんたちのおうちの扉から英雄雛娘ちゃんが出て来ましたね。背中にはカタカタと震えている妖術師さんを背負っています。紅潮しツヤッツヤな肌とは対照的に、何故か死んだ魚のような目をしてますが……。

 

 

「あらあら、始める前はあんなに持久力(タフさ)を自慢していたのに……よわよわ過ぎません?」

 

「いやこっちは2人掛かりだったし……でも、頭目(リーダー)さんはいつもあんな気持ちだったんだ……」

 

「ふふ、今度頭目(リーダー)さんたちに()()()()してみましょうか」

 

「……うん」

 

 

 2人に続いて現れたのは、熱の籠った視線で妖術師さんを見る少女巫術師さんと下腹部に手をあててモジモジする少女剣士ちゃん圃人(レーア)コンビ。2人の首から下げられたチェーンには、見覚えのあり過ぎる()()が通されて……あっ(察し)。

 

 

「げに恐ろしきは圃人(レーア)の生命力か……アイツ、最後のほうは半分気絶してなかったか?」

 

 

 うーむ、闇人女医さんが呆れ半分畏れ半分で圃人(レーア)コンビを見ているあたり、だいぶ激しかったんだろうなぁ。まぁ英雄雛娘ちゃんに背負われながら彼女の成長著しいたわわをふにふにしていますし、妖術師さんも大概だと思いますけど。

 

 

 さて、「ふへへ……」とアレな笑みを浮かべる妖術師さんをイボイノシシ君の背に乗せたらいよいよ出発です! 徒歩でおおよそ3日の行程、いったいどんなイベントが一行を待ち受けているのでしょうか?

 

 


 

 

「Bmooooooooooooo!!」

 

「Bearrrrr!?!?」

 

「「Gigaaaaas……!?」」

 

 

 圃人(レーア)がすっぽり埋まってしまうほど降り積もった雪ですら吸収しきれぬ咆哮が響く山中。妖精弓手ちゃんの腰回りを越える太さの牙を用いたしゃくりあげが直撃し、純白の雪を朱に染めながら痙攣する灰色熊(Grizzly Bears)に対しイボイノシシ君がトドメの踏みつけをキメました。自慢のペットが一撃でやられてしまい、気軽な略奪のつもりで襲い掛かってきた単眼巨人(キュクロプス)たちも浮足立っていますね。

 

 原作では鉱人の城塞(ドワーフフォートレス)跡を通り抜けていた山越えの道のりですが、VIPの護衛依頼であり、戦力的にも物資的にも余裕があるため比較的安全な山間のルートを選択した一行。ダブル吸血鬼ちゃんや圃人(レーア)コンビが見上げるほどに積もった雪はイボイノシシ君がその巨体で掻き分けてくれ、足元に潜むクレヴァスも目視しやすくなり非常に快適な進み具合でした。

 

 

「――みんな注意して、何かが近付いてくる。……巨人(ジャイアント)かも」

 

 

 太陽神さんが傾きかけ、夜営の準備を始めていた一行。辺りに漂う獣臭にいち早く気付いたのは妖精弓手ちゃんでした。火起こしの手を止め武器を構える一行の前に姿を現したのは、ヘラジカ(ムース)の毛皮で局部を隠し、手に丸太にしか見えない巨大棍棒(グレートクラブ)を握った単眼の巨人(キュクロプス)がなんと12体。勲章のつもりなのか、襲った相手の鎧や兜に鎖を通して首飾りのように身に着けています。

 

 そして彼らに付き従い唸り声をあげる大きな熊。西方辺境に生息する個体よりも大型ですが、巨人の傍に居ては飼い犬サイズにしか見えません。ダブル吸血鬼ちゃん一行の持つ食料と女の子たちを狙いらしく、ニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべながら熊を嗾けてきたのです!

 

 

「てをだしてきたのはそっちなんだから、なにされてももんくはいわないよね?」

 

「すぐにおわらせるから、ちょっとまっててね!」

 

「連中手慣れてるみたいだし、中途半端はダメよ?」

 

「「は~い!!」」

 

 

 妖精弓手ちゃんからのGOサインを受け、サメのような笑みを剥き出しに単眼の巨人(キュクロプス)の集団へと飛び掛かるダブル吸血鬼ちゃん。体重を軽減させているおかげで雪に足を取られる事無く駆ける姿に巨体が慌てて巨大棍棒(グレートクラブ)を振り下ろしますが……。

 

 

「そんなおおぶり、あたらないよ~だ!」

 

「あしもとがおるすだよ!!」

 

 

 サイドステップで一撃を躱し、外套(マント)に偽装していた翼を展開して上空へと舞い上がる吸血鬼君主ちゃん。巨人の一体の顔面に両手で持った円盾()を叩きつけ、前が見えねぇ状態にしつつその頭を足場に次の獲物へと向かっていきます。顔を押さえて絶叫する仲間に気を取られている隙をついて、一際大きなボスと思われる巨人を村正と魔王剣(サタンサーベル)の二刀流で足元から順番に斬り刻み、解体していく吸血鬼侍ちゃん! ボスが倒され統率を失った巨人たちに令嬢剣士さんの放った魔剣の一撃が後方から降り注ぎ、集落(コロニー)一つを簡単に滅ぼす巨人の群れは3分足らずで物言わぬ屍へと姿を変えるのでした……。

 

 


 

 

「――ん、ぜんぶはいになるまでもやしたから、これでアンデッドになるしんぱいはないよ!」

 

「おつかれ~!!」

 

 

 女神官ちゃんが祈りをささげた後、血刀で巨人の死体を燃やし尽くした吸血鬼侍ちゃん。討伐の証として巨大棍棒(グレートクラブ)と悪趣味な首飾りは回収していました。ペットの熊は肉と毛皮が利用出来そうなので、入り江の民(ヴァイキング)のみなさんへのお土産にするつもりみたいですね。

 

 戦の始末をした後は中断していた夜営の準備。インベントリーから取り出した大きな帆布(キャンバス)を広げ、適当な場所に風よけを設営。同じく取り出した荷馬車を設置すればあっという間に今日のお宿の完成! やっぱり便利極まりないですねインベントリー、借りパクする形になった代価を身体で支払い続けているだけのことはあります。

 

 ほんじつのおゆはんは冒険中らしく簡単シチュー。雪を沸かして作ったお湯に牧場から持参していたスープストック(豚の脂身や皮を煮出した汁を小麦粉で練り上げた半固形物。ゼラチン質でプルプル)を溶かしこみ、乾燥野菜や干し肉を細かく刻んだものを投入。汗をかいて水分と一緒に失った塩分の補給を兼ねて塩味濃い目に味付けすれば出来上がり! 黒麺麭(パン)硬麺麭(ビスケット)の好きなほうを添えればディナーの準備はおしまい、妖精弓手ちゃんや神官銃士ちゃんにも作れるお手軽さがウリですね。

 

 

「それでは……地母神様、本日も命の恵みを頂きます」

 

「「いただきま~す!」」

 

 

 大鍋からよそったシチューを美味しそうに頬張る冒険者たち。各々が持参していたドライフルーツや干し魚、ナッツなんかを交換しあう温かなおゆはんの光景ですね。今日も頑張ってくれたイボイノシシ君もお皿に顔を突っ込むようにシチューを食べてますが……それ、共食いになりません?

 

 

「美味いな」

 

「はい、あたたかくておいしいです!」

 

「おかわりはいっぱいあるから遠慮しないで食べてね!」

 

 

 がっつくことなくシチューを口に運ぶゴブスレさん。あっという間に一杯目を食べておかわりをよそう英雄雛娘ちゃんを見る()()()()()()()()()()()()()()()。……まさかゴブスレさんが冒険中の食事の際に兜を外すとは予想外でした。長時間の着用は凍傷の危険性があるとはいえ、休息中に素顔を見せたことに以前の彼を知る古株の面子は唖然とした顔になっちゃってます。

 

 気を抜いているわけでも油断しているわけでも無く、ダブル吸血鬼ちゃんや妖精弓手ちゃんといった探知能力に長けた仲間を信頼し、精神的な余裕が生まれた結果なのかもしれませんね。

 

 

 おゆはんが終われば今日の疲れを癒し、明日に備えるために早目の就寝です。原則睡眠が不要な吸血鬼(ヴァンパイア)がゴロゴロいる一党(パーティ)ですが、使用した呪文回数の回復には休息が必要です。10人を3組に分け、順番に見張りをすることになりました。話し合いの結果、組み分けは以下のようになりました。

 

 

 早番 吸血鬼君主ちゃん ゴブスレさん 女神官ちゃん 神官銃士ちゃん 英雄雛娘ちゃん
 中番 吸血鬼侍ちゃん 令嬢剣士さん
 遅番 妖精弓手ちゃん 闇人女医さん 妖術師さん 

 

 

 人数に偏りがあるのは野営に慣れていない神官銃士ちゃんと英雄雛娘ちゃんを一番楽な早番に集めたからです。睡眠時間が短くても問題無い森人(エルフ)の2人には早起きしてもらい、中途半端な睡眠時間で一番きつい中番はタフな2人に任せる構成ですね。野営の経験を積んでもらうという意味でも早番の3人は指導員として適任と言えるでしょう。中番と遅番のみんなが馬車へ乗り込むのを見送った後、女神官ちゃんが硝子の小瓶を手に立ち上がり、馬車を中心に円を描くように瓶の中の透明な液体……聖水を振りまき始めました。10分かけて防御円(サークル)を作り上げ、最後に唱えられる聖句は範囲内の人を悪意から保護する≪聖域(サンクチュアリ)≫の奇跡を願うものです……。

 

 

「≪いと慈悲深き地母神よ、その御手にて、どうぞこの地をお清めください≫」

 

 

 女神官ちゃんからの真摯な祈りを受け、地母神さんが恍惚の表情でビクンビクンと震えながら奇跡を承認。みごと決定的成功(クリティカル)で発動した≪聖域(サンクチュアリ)≫によって、馬車の周囲は暖かな光に包まれました。これで悪意をもった存在が侵入してきた際に、寝ている人たちも自動的に目を覚ますことが出来るわけですね!

 

 

 焚火を中心に10フィート(だいたい3m)ほど距離を取って向かい合うように座る早番の5人。女神官ちゃんと神官銃士ちゃんは同じ毛布にくるまって暖を取り、ゴブスレさんはフゴフゴ(いびき)をかいているイボイノシシ君に背を預けて周囲を警戒していますね。

 

 

「寝ないように注意して、でもそれに集中してたら周りの警戒が疎かになっちゃうから……」

 

 

 初めての本格的な野営の見張りということで緊張した様子の英雄雛娘ちゃん、キョロキョロと落ち着きなく周りに視線を向けていますが、それだとあっという間に疲れちゃいますね。ゴブスレさんとアイコンタクトをとった吸血鬼君主ちゃんが彼女の背後からそろ~っと近付き、翼で包み込むように抱き着きました。悲鳴をあげかけて慌てて口元を抑える英雄雛娘ちゃんの顎に手を添え、ゆっくりと彼女の顔の向きを左右に動かしています。

 

 

「あのね、めをうごかすんじゃなくて、しかいぜんたいをうごかしてみて? それでいわかんをみつけたら、あらためてそこにちゅうもくするの……どう?」

 

「……あ、何か動きました! あれは……マスターの影?」

 

「せいか~い!」

 

 

 王妹2人の毛布包みの背後に視線を向けていた英雄雛娘ちゃんが指差した先には焚火によって生み出された影に紛れてユラユラと揺れる1本の触手。元を辿れば吸血鬼君主ちゃんの影から伸びているのが判りますね。同じようにゴブスレさんの背後に伸ばした触手に神官銃士ちゃんが気付いてガバっと毛布を跳ね除け、慌てて女神官ちゃんが回収しています。

 

 

「熟練の野伏(レンジャー)は視覚以外……聴覚や嗅覚で敵の存在を察知し、使い魔(ファミリア)と契約している術者はその使い魔と相互に感覚を共有し周囲の状況を把握することが出来る。そのどちらでもない俺たちは複数人で互いの死角を補うことが必要だ」

 

「なるほど、だから互いに向き合うような配置で座っているのね! お姉様たちと違って、後ろに目は付いていないもの」

 

「え……マスター、背中に目が付いているんですか?」

 

「ついてないよ!? なんとなくわかるだけ」

 

 

 ついてるのは背中じゃなくて脳に(比喩)なんだよなぁ……。それはさておき、どうしても疎かになりがちな背後を互いに補完しあうことで安全を確保することはとっても重要です。ギルドの訓練場が稼働してからは実地訓練として教官から教わるようになりましたが、それまではベテラン冒険者に師事したり生まれが狩人の冒険者に聞いたりしなければ判らなかったことです。

 

 何も知らずに1人ずつ野営番を決めていたら途中で寝落ちしてしまったり、最悪なのはアンブッシュから口を塞がれて1人ずつ消えていったりという恐ろしい目に遭う新人もしばしばいたんだとか。新人は4人以上、出来れば6人で一党(パーティ)を組むことを推奨されているのはそういう理由もあるみたいです。

 

 

「お前はまだまだ殻の付いた雛鳥だ。学ぶべきことは多い。そして、お前はいつでも冒険者を辞めることが出来る。何故ならば、冒険とは誰かに強制されて挑むものでは無いからだ」

 

「……はい」

 

 

 軽銀製の兜の奥に揺れる紅蓮の炎に見つめられ、身を固くする英雄雛娘ちゃん。彼に怒られていると思っているみたいですが、それは違いますね。クスクスと女神官ちゃんが笑っているのがその証拠です。

 

 

「ふふ……ゴブリンスレイヤーさん、貴女を教え子みたいに思っているんです。今の言葉も『学ぶ気概があるのなら積極的に聞くと良い、覚えることはいくらでもあるぞ』って言いたかったんだと思いますよ?」

 

「才能に溢れた教え甲斐のある後輩、すっごく期待しているけど自分は怖がられていそうだし、そもそも年の離れた少女にどう接して良いか判断が付かない……そんな感じがしますわね!」

 

「…………」

 

 

 あ、これは図星ですね。居心地悪げに身じろぎし、誤魔化すように焚火に枯れ枝を放り込むゴブスレさんを見て英雄雛娘ちゃんの顔に理解と安堵の色が現れました。頬擦りしながら笑みを浮かべる吸血鬼君主ちゃんに頷きを返し、ペコリと彼に向かって頭を下げて……。

 

 

「はい! これからもいっぱい勉強させてもらいます、先生!!」

 

「……先生は止せ」

 

「えへへ……しんゆうってば、てれてる~!」

 

 

 おやすみ中のみんなを起こさないよう密やかに笑う冒険者たち。中番の2人が馬車の陰から後方先輩面で覗いているのに気付くまで、ゴブスレさんは少女たちに弄られっぱなしなのでした……。

 

 


 

 

「おっはよ~! ほらみんな起きなさ~い!!」

 

「今日は良いお天気だよ~」

 

「朝食の準備は済んでいるぞ。黒豆茶(コーヒー)が欲しいものはコップを出せ」

 

 

 普段はなかなか起きないのに冒険中は寝起きが良いんですね妖精弓手ちゃん。遅番組は夜明け前から朝食の準備をしていたようで、大鍋にはミルクと蜂蜜で味付けされた麦粥がたっぷりと出来上がっています。熾火の傍には串を打たれた腸詰やベーコンが刺さっており、滴る脂が食欲を刺激する香りを放っていますね。灰の中には丸のままの豹芋(ジャガイモ)が埋められ、こちらからも良い匂いがしています!

 

 さて、馬車の中はどんな様子でしょうか……お、吸血鬼君主ちゃんは女神官ちゃんと神官銃士ちゃんに湯たんぽ代わりにされて3人纏まって毛布の海に呑まれていますね。妖精弓手ちゃんの呼びかけに目を覚ました女神官ちゃんが2人より先に起きだし、配膳の手伝いに向かいました。

 

 英雄雛娘ちゃんは……おやおや、ゴブスレさんの膝枕でグッスリです。ゴブスレさんは既に起きていますが、ギリギリまで寝かせてあげようと起き出すまでじっと動かずに待ってあげてたみたいですね。

 

 

「ん……んく……ぷぁ。えへへ……ごちそうさま」

 

「もう、朝食の前につまみ食いはダメといつも言ってますのに……」

 

 

 あーあー、吸血鬼侍ちゃんは令嬢剣士さんのたわわにむしゃぶりついてました。口では怒ってますけれど、令嬢剣士さんの顔には隠し切れない悦びの色が。ちゅーちゅーし終わって甘えるように胸元に頬擦りする小さな想い人を優しく撫でる仕草からはとびっきりの甘やかしオーラが漂っています……。

 

 

「んゆ……くぁ~……おはよ」

 

「はい、おはようございますお姉様! さぁ、今日も太陽神様にご挨拶しませんと!!」

 

 

 寝ぼけ眼の吸血鬼君主ちゃんを抱え上げ、馬車の外へと飛び出して行く神官銃士ちゃん。山間から顔を出した太陽神さんに向かって2人並んで太陽万歳! 今日もバッチリの角度です!!

 

 

 

 朝食を終え、火やゴミの始末を終えた一行。もうちょっとで山越えは終わり、あとは入り江の民(ヴァイキング)が暮らす街まで下るだけといった感じです。イボイノシシ君が踏み固めた雪道をゆっくりと踏破し、一気に視界が開けたのがお昼前。冬場では珍しい晴れ間が広がる冬空の下に見えるのは……。

 

 

「――あれが、『海』か」

 

「ひろ~い!」

 

「おっきい!」

 

「うわぁ……あれがぜんぶしょっぱい水なんですか?」

 

 

 ――荒々しく白波をたてる大海原。初めて海を目にした子たちはみんな瞬きすら忘れた様子で眼前に広がる雄大な景色に見入っています。海から吹いてくる風に乗って漂ってくる潮の香りも新鮮さを感じさせるのに一役買っていることでしょう。

 

 

「――さて、此処で眺めているのも良いのですが、私たちの目的地はあの湾のあたりですわ。頭目(リーダー)、アレを出して頂けますか?」

 

「ん、いまだすね! よっ……と!!」

 

 

 令嬢剣士さんの言葉に頷きを返し、吸血鬼君主ちゃんがインベントリーから取り出したのは例の木の板。真ん中あたりにいくつか穴の開いたそれをブーツに宛がい、ずれないように革紐でしっかりと固定すれば……。

 

 

「「できた~!!」」

 

 

 雪上を飛ぶように滑走する、スキー板の装着完了です!!

 

 

 

 

 

 

「せっかくだから、雪上でしか楽しめない遊びをやってくるのです」

 

 

 依頼の封書を持ってきた際に賢者ちゃんが用意してくれていたスキー板、貴族階級の間ではウインタースポーツとして行われることもあるようですが、どちらかといえば冬季の狩猟の際に用いられることが多いアイテムですね。移動補助用の(ストック)を使わない、分類的にはスキーボードなどと呼ばれる短めのスキー板を装備した一行。飛行可能な人員が4人いるので他の全員を運ぶことは可能ですが、冒険は楽しむもの。みんなで斜面を下って入り江の民(ヴァイキング)の集落まで行くつもりみたいです。

 

 

「それじゃ、しゅっぱ~つ!」

 

 

 吸血鬼侍ちゃんの掛け声でゆっくりと滑り出した一行。はぐれたり転んだりしないように全員の腰にはダブル吸血鬼ちゃんの触手が巻き付いています。いざという時には触手をアンカー代わりに氷へと打ち込んで強制的に止まるつもりなのでしょう。

 

 

「いやっふ~! コレ楽しいわねぇ!!」

 

 

 まず先頭に躍り出たのは妖精弓手ちゃん。天性の身のこなしであっという間にコツを掴み、グングンと加速していきます。雪原の凹凸を柔軟な身体で吸収し、時には華麗にジャンプ! 前に出過ぎたと思ったら勢いそのままにUターンして戻ってきたりとその振る舞いはまさに雪の妖精。比類なき美貌も合わさって生ける芸術品のようです。

 

 

「お、お姉様! ゆっくりですよゆっくり!?」

 

「わかってるって! ……そ~れ!!」

 

「あわわ……は、速いですよ~!?」

 

 

 王妹殿下1号2号は腰に巻き付いた触手を掴み、吸血鬼君主ちゃんに引っ張られる形で滑走中。何度かバランスを崩して転びそうになりましたが、触手が支えてくれてセーフ! 段々速さに慣れてきて自分からカーブしてみたり2人で手を繋いだまま滑ったりと楽しんでいるみたいです。

 

 

「ふむ。……嗚呼、そうか」

 

「んゆ? どうしたの?」

 

「いや、昔姉さんと一緒に納屋の戸を外したものに乗って、雪の積もった裏山を滑り降りたのを思い出した。あの頃から変わり者だったな……」

 

 

 お、吸血鬼侍ちゃんとゴブスレさんは幅広い一枚板に両足を固定したスノボースタイルですね。危なげなく滑る2人の視線の先には橇に乗った闇人女医さん、妖術師さん、英雄雛娘ちゃんの姿が。令嬢剣士さんの跨ったイボイノシシ君の胴回りに幾重にも触手を巻き付け、犬橇のように引っ張ってもらう算段だったようですが……。

 

 

「あばばばば……ぶつかるぶつかる!?」

 

「大丈夫! あの程度の木、正面からブチ折りますわ!!」

 

「ええい、早く正気に戻れ! 痛みは祝福だが、不運(ハードラック)と踊るのは御免だぞ!?」

 

「ひぁぁぁぁ……」

 

 

 ……驀進の波動に目覚めてしまったイボイノシシ君が盛大に加速。ジェットコースターなみの速度で木々の間をすり抜け、時にはへし折りながら降るエクストリームスポーツに妖術師さんが悲鳴を上げ、使徒(ファミリア)の興奮が伝染したのか令嬢剣士さんも妙にハイテンション。闇人女医さんの声も届いていない様子。半泣き状態の英雄雛娘ちゃんは吸血鬼侍ちゃんが伸ばした触手で回収してあげてますね、これで一安心!

 

 


 

 

『……ん? あれは……』

 

 

 嫁取りの狂騒が落ち着き、祭りの齎した被害を確認して回る1人の女性。手に槍を持ち、厚手の鎖帷子でも隠し切れぬたわわを揺らし山間に向ける瞳はただ一つ。妖精弓手ちゃんに匹敵する美貌の持ち主が疑問の呟きを漏らす先には珍妙極まりない集団の姿が。あ、入り江の民(ヴァイキング)の方たちの言葉は盤外(こっち)に送られる際に自動的に翻訳されてますのであしからず。……決して変換するのが難しかったわけじゃありませんよ?

 

 

『なんだなんだぁ?』

 

『馬鹿でっけぇイノシシだぁ』

 

『後ろに橇がくっついてるぞ?』

 

『ゴブリンか、ゴブリンなのか?』

 

 

『みんな落ち着いて。山の向こうからの旅人でしょう』

 

 

 祭りの興奮冷めやらぬ戦士たちを制し、ほっそりとした指を顎に宛がい考え込む女性はこの地を治める頭領(ゴジ)の妻……奥方(フースフレイヤ)ですね。イボイノシシ君と橇の後ろから雪原を滑走してくるダブル吸血鬼ちゃんたちを見て『あらまぁ可愛らしい』と目を丸くしています。

 

 

『随分面白い人たちのよう。……もしかしたら旦那様の言ってた王国の使いの方々かも』

 

 

 ぱん、と手を叩き戦士たちの注目を集める奥方(フースフレイヤ)。にっこりと誰もが見惚れる笑みを浮かべ、桜花の花弁の如き色の唇から紡いだ言葉は……。

 

 

『どのような方々であれ、旅人は()()()()()()()のが我らが習わし。先ずは"挨拶"からです』

 

 

 高々と槍を掲げながらの、なんだか物騒な予感を伴うものでした……。

 

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 





 『』内の台詞をなんJか論者にするかで悩んでいたのは内緒なので失踪します。


 評価や感想、お気に入り登録いつもありがとうございます。

 おかげさまで頂いた感想数が500件にまでなりました。読んで頂いた反応が目に見えると嬉しいので、引き続きお待ちしております。

 また、誤字の報告も頂き感謝と申し訳なさが半々。なんとか無くしていきたいところです……。


 お読みいただきありがとうございました。
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