ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 何故『ゴブリンスレイヤーのそり乗り(Goblinslayer Sledder)』にしなかったのか反省中なので初投稿です。


 UAが180000まで伸びました。多くの方に目を通して頂き嬉しく思っております。これからもダブル吸血鬼ちゃんたちの冒険を楽しんで頂ければ幸いです。




セッションその17-3

 

 前回、奥方(フースフレイヤ)に補足されたところから再開です。

 

 

 入り江の民(ヴァイキング)が暮らす港町と向き合うように純白の肌を陽光に晒す小高い丘陵。その斜面を軽快……軽快?に滑走し、ダブル吸血鬼ちゃん一党(パーティ)は防護柵に覆われた街の入り口まで……。

 

 

「いかん、このままでは突っ込むぞ!?」

 

「いやぁぁぁぁ死にたくないぃぃぃぃぃ!?」

 

「安心なさって! 私と貴女は既に死んでおりますわ!!」

 

「えぇ……?」

 

 

 ……どうやら勢いが付き過ぎたのか、減速しきれずに突き進んでいくイボイノシシ君と後ろの橇。街の周囲は除雪され岩肌が剥き出しになっているため速度は低下しましたが、その代わり激しい震動が橇に乗った3人を襲っているようです。

 

 少しでも速度を落とそうと妖術師さんが自分の影から展開した触手を地面に突き立て制動をかけようと試みていますが……ちょっと重量差があり過ぎますかねぇ。突き立てたそばから抜け落ちてしまい、妖術師さんの顔がちょっと視聴神のみなさんには見せられない感じになっちゃってます。

 

 

「――シルマリル、ヘルルイン! ……なんとかして!!」

 

「わ~いムチャぶりだー!」

 

「ぼくたちムチャぶりだいすき~!!」

 

 

 あ、妖精弓手ちゃんの号令に応えてダブル吸血鬼ちゃんまで突っ込んで行きました。ブーツに板を固定していた革紐を爪で切り、背中の翼をはためかせて飛来した2人は砂煙を上げながらイボイノシシ君の前方に左右に分かれて着地。互いに頷き合いタイミングを見計らって、無数の触手を影から生み出しランディングネットのように編み込みました!

 

 

「プギィィィィィィ!?」

 

「橇と乗員は頭目(リーダー)に任せましょう! 私たちは……!!」

 

 

 令嬢剣士さんの指示に従い、ネットにぶつかる寸前で方向転換に成功したイボイノシシ君。4本の足を巧みに使いスピンターンを決める様は流石元神の乗騎と言うべきワザマエ。イボイノシシ君が進路を空ければ残るは暴走する橇だけです! 追加の触手を地面に打ちこんで固定具代わりにしたダブル吸血鬼ちゃんが、段差に乗り上げ橇から放り出された3人をネットで絡めとることに成功しました!! ……あ、もちろん橇も一緒に回収してますね。そのまま街に突っ込ませたら襲撃と間違えられちゃいますし。

 

 

「全員無事のようだな」

 

「だ、大丈夫ですか~? もう、()()()ですよゴブリンスレイヤーさんっ」

 

「殿方に向かって()()()だなんて、ちょっとはしたなくありません???」

 

「はしたないのは貴女でしょうに……まぁいっか。2人ともえらい!」

 

「「ふわぁ……ほかほか……いいにおい……」」

 

 

 お、後続も到着しましたね! ゴブスレさんが先行して進みやすいルートを探し、その後ろを王妹殿下1号と2号がおっかなびっくり追従してきたみたいです。スキー板を外した妖精弓手ちゃんは頑張ったダブル吸血鬼ちゃんに駆け寄ってご褒美のハグ。運動後の熱を帯びた頬と沸き立つ林檎の如き甘い香りに2人ともメロメロですねぇ……。触手ネットに引っ掛かっていた3人も自力で脱出し、これで全員の無事が確認出来ました!

 

 

 

「――さて、そろそろ向こうさんとお話ししましょうか。なんか待っててくれてるみたいだし」

 

 

 両脇に抱えるダブル吸血鬼ちゃんを二度三度とキュン死させて満足した妖精弓手ちゃんがクルリと向きを変え、歩を進めるのは街の門のほう。門前には手に武器を携えた鉱人(ドワーフ)を一回り大きくしたような屈強な戦士たちが、奇妙な生物を目撃してしまったような顔で一行を眺めています。妖精弓手ちゃんを先頭に、無防備に歩み寄ってくる異邦人たちに警戒する彼らでしたが……。

 

 

『おい、まさかアレ……』

 

『間違いねぇ、アールヴ(エルフ)だ!』

 

『あっちには黒曜石(オブシディアン)みてぇな肌をしたアールヴ(エルフ)もいるでねぇか!?』

 

『なんちゅう美しさじゃ……』

 

『(結婚したい……)』

 

 

 絵巻物の中から抜け出してきたような2人の森人(エルフ)、天上の美とエキゾチックで危険な魅力に心を奪われ半ば放心状態ですねぇ。我に返ったあとも誰が話しかけるのか後ろ手で牽制し合い、会話はなかなか始まろうとしません。女性に免疫の無い男子高校生のような反応に妖精弓手ちゃんが首を傾げていると、彼らの後ろから若い女性の声が響いてきました……。

 

 

『こら、いい年した男が何照れてるの! ……すみません、ウチの連中が失礼を』

 

「「ほわぁ……」」

 

 

 妖精弓手ちゃんに抱えられたまま、感嘆の溜息を漏らすダブル吸血鬼ちゃん。妖精弓手ちゃん以外の女性陣も戦士たちの間から現れた女性に目を奪われているようです。みんなが言葉を失っているのは彼女の口から飛び出した独特な方言を理解しきれていないだけではなく、剣の乙女ちゃんや今目の前で頭に?を浮かべている妖精弓手ちゃんに匹敵するその美しさに因るものですね。

 

 

「「きれいなおね~さんだ……」」

 

『あら、ありがとう可愛い旅人さん。良かったらこの街を訪れた理由を教えてもらえる?』

 

 

 ニッコリと微笑む奥方(フースフレイヤ)の言葉にコクコク頷き口を開きかけたダブル吸血鬼ちゃんですが、ハッと大切なことを思い出し可愛く両手で口を押さえました。言わざるのポーズで顔を向けた先に見えるは黒と紅に彩られた禍々しい鎧に身を包んだ金等級冒険者。そう、今回の依頼を引き受けた特別一党(パーティ)頭目(リーダー)は2人ではなく、ゴブスレさんですからね!!

 

 

「王国からの依頼で、この国の頭領の姪にあたる者を護衛してきた冒険者だ。依頼の詳細は此方に記してある」

 

『ああ、これはどうもご丁寧に』

 

 

 ゴブスレさんが取り出した王家の蝋印が刻まれた封書を見て納得したように頷く女性。自らを頭領(ゴジ)の妻……奥方(フースフレイヤ)であると名乗った片目を布で覆い隠した彼女は、差し出された封書を受け取り……中を確認しようとせず、そのまま一行を眺めていますね。

 

 

「えっと、中身を見なくて良いの? それとも頭領に直接見せるつもり?」

 

『いえいえ、ちゃんと確認させてもらいますよ? でも、それよりも重要なことがありますから』

 

 

 おや、なにやら剣吞な雰囲気になってきましたね。奥方(フースフレイヤ)の言葉に続き戦士たちが分厚い刃を備えた斧や槍を構えるのを見て、令嬢剣士さんや英雄雛娘ちゃんが同じように武器に手を掛け……ゴブスレさんに無言で制止させられました。刃を抜かなかった一行を見て、奥方(フースフレイヤ)が先程の続きを話し始めます。

 

 

『王国とは違い、ギルドの無いこの地では冒険者という職業は信用がありません。何色の認識票を身に着けていようと、それは単なる飾りでしかないのですよ』

 

 

 この手紙も本当の使いから奪い取ったもので、皆さんも本当は野盗か旅芸人に扮した詐欺師かもしれませんし、と冗談めかして笑う隻眼の麗人。……先の醜態を見られた以上、何も否定出来ませんね!

 

 

「――では、何を以て証とする」

 

『この地はただ生きるだけでも【力】が求められる厳しい土地。険峻なる道を踏破しこの地まで辿り着いた【力】を示し、己の証とするのが習わしなのです』

 

 

 ああ、腕っぷしでも頭の回転でも良いから、自分の力を示せってことでしょうか。奥方(フースフレイヤ)がさっと手を振り上げれば一斉に進み出る5人の戦士。どうやら彼らを相手に力を示すことを求められているみたいですね。嫁取りの余韻で良い感じに猛っている入り江の民(ヴァイキング)の戦士たち、本来ならばここで友情を育むための殴り合い開始なんでしょうが……。

 

 

「丁度良い。戦友、()()を出せ」

 

「は~い。あ、みんなちょっとはなれてね!」

 

 

 森人(エルフ)の小脇に抱えられた圃人(レーア)?の娘に促がされ、門前にスペースを確保する戦士たち。彼らが十分離れたところで吸血鬼君主ちゃんがインベントリーから取り出したのはもちろん……。

 

 

「てれれってれ~! キュクロプスのぶきとペットのくまさん!! ……それと、あいつらがじまんげにぶらさげてた、おそわれたひとたちのいりゅうひんもあるよ」

 

『んなっ!?』

 

『こりゃあ山に住み着いてた巨人どもの……』

 

 

 黒く変色した血のこびりついた12本の巨大棍棒(グレートクラブ)とイボイノシシ君にKOされた灰色熊の死体、それから巨人がトロフィーのように身に纏っていた犠牲者たちの装備です。虚空から突如出現した物騒な品の数々に入り江の民(ヴァイキング)の戦士たちも驚きを驚きを隠せない様子ですね。蛮用の跡も生々しい巨大棍棒(グレートクラブ)に触れ、紛い物でないことを認めた戦士の1人が吸血鬼君主ちゃんに問い掛けます。

 

 

『嬢ちゃん、あの山に陣取っていた単眼巨人(キュクロプス)をやっつけちまったんか?』

 

「そうだよ。たびのひとをおそってたみたいだし、()()()()()()()()()()にいやらしいめをむけてきたから、ぜんいんやっつけた!!」

 

『うん? ()()()って……お前さんたち、双子の嬢ちゃんじゃなくて坊主だったんか?』

 

「??? ぼくたちはおんなのこだよ?」

 

 

 吸血鬼君主ちゃんの『俺の嫁』発言に首を傾げる戦士たち。まー普通はそういう反応ですよねぇ。入り江の民(ヴァイキング)の困惑した表情に一様に苦笑を浮かべた一党(パーティ)、妖精弓手ちゃんが吸血鬼侍ちゃんを令嬢剣士さんに手渡し、ふふんと薄い胸を張りながら高らかに宣言します。

 

 

「2人とも女の子だけど、()()()の大切な旦那様よ!」

 

「一応こちらの上の森人(ハイエルフ)の姫と私が正室という扱いになっておりますが、実際には両手の指以上の女性を平等に愛してくださってますの」

 

「あ、ちなみに既に子持ちが4人いるわ。私もそうだけど」

 

 

 うーんこの砂漠の国の王様もビックリな大所帯。てれてれと頬を赤くした英雄雛娘ちゃんやまんざらでもなさそうに頬を掻く闇人女医さん――アレな笑みを浮かべている妖術師さんは平常運転ですね!――たちの表情から嘘ではないと悟ったのでしょう。幾度も死線を乗り越えてきた歴戦の戦士たちが次々に膝から崩れ落ちていきます……。

 

 

『済まねぇ奥方(フースフレイヤ)様……俺たちは此処までのようだ……』

 

『心の中の(オス)が敗北を認めちまったよ……』

 

『(子持ち人妻百合森人(エルフ)……うっ! ふぅ……)』

 

 

 悔し気に拳で地面を叩く者、両手を組み祈るように頭を垂れる者、欲望を解き放ち賢者モードに突入する者……。反応は様々ですが、闘争の空気は霧散してしまいましたね。後方親友面していたゴブスレさんが決着を見届けた後、ほのかに頬を朱に染めている奥方(フースフレイヤ)に向き直りました。

 

 

「――これで良いか?」

 

『え? ええ……山越えの交易路を塞いでいた単眼巨人(キュクロプス)を退治したとあれば、勇者の証として十分でしょう。……その、都会の方は進んでいらっしゃるのですね?

 

「……あいつらが特殊なだけだ」

 

 

 ほう、と熱っぽい吐息を伴った奥方(フースフレイヤ)の言葉を即座に否定するゴブスレさん。ダブル吸血鬼ちゃんたちを王国の標準だと思われたら大変ですからね。あと後方彼女面している王妹殿下1号2号は自分たちがこの冒険の主役であることを思い出して???

 

 

 

 

 

 

『本音を言うと、とても有難かったんですよ。みなさんが単眼巨人(キュクロプス)を退治してくださったのは』

 

 

 頭領(ゴジ)の待つ石造りの御殿を目指し小高い丘陵を歩く一行。案内してくれている奥方(フースフレイヤ)がチロリと舌を出すお茶目な仕草とともに語ってくれたのは、近頃交易が滞っている原因の一端について。

 

 昨年の冬あたりから単眼巨人(キュクロプス)が現れるようになり、あの辺りを縄張りに狩人や商人を襲い始めていたそうです。なんでも()()()()()()()()()()()がいなくなったために地域に棲息していた怪物(モンスター)の統制が失われ、次第に好き勝手し始めたんだとか。

 

 ……はい、もうお判りですね。封印され身動き出来ない状態でありながらも配下を使って山を支配していた氷の魔女が、ダブル吸血鬼ちゃんに美味しくいただかれちゃったのが原因でした!

 

 そんな事情なぞ露知らず、感謝の言葉を紡ぐ奥方(フースフレイヤ)に味わい深い表情で笑みを返すダブル吸血鬼ちゃん……おや? 隠し切れない好奇心を全身から発し、奥方(フースフレイヤ)の護衛の戦士に矢継ぎ早に質問を投げ掛けていたゴブスレさんがグリンと首を奥方(フースフレイヤ)に向け、新たに浮かんだ疑問を口にしました。

 

 

入り江の民(ヴァイキング)の交易は海路が主と聞いていたが、違うのか?」

 

「ええ。多くは港まで自分たちの舟でやってきて、直接商人と交渉されるものですが……」

 

 

 ああ、確かに。入り江の民(ヴァイキング)といえば喫水の浅い舟で何処までも漕ぎ出し、川を遡上したり時には舟を担いで陸路を進んだりというイメージが強いです。丘から海岸を眺めれば何艘もの舟が港に繋がれているのが見えますし、嫁取りに押し掛けてきた親戚一同も舟で乗り付け、そして帰っていきましたからね。家の関係で商売にも詳しい令嬢剣士さんも同様の疑問を感じているみたいです。

 

 2人の視線を受けた奥方(フースフレイヤ)は苦み走った顔で『それに関しては旦那(おど)様……頭領(ゴジ)が話してくれますよ』とだけ口にし、一行を御殿の大扉の前まで導いてくれました。うーむ、なかなか深刻な事態に陥ってそうな気がしてきましたよ!

 

 

 

 薄暗く、炉から立ち昇る煙によって見通しの悪い母屋(スカーリ)に通されたダブル吸血鬼ちゃんたち。護衛の戦士たちとは大扉で別れ、ひとり残った奥方(フースフレイヤ)が一行を案内してくれています。キョロキョロと異文化の歴史を見落とさぬよう観察するゴブスレさんに微笑ましいものを見る目を向け、彼に合わせるようにゆっくりと進んでくれているので、コンパスの短いダブル吸血鬼ちゃんや妖術師さんでも遅れずについていけてますね。

 

 

「わぁ……!」

 

 

 おや、英雄雛娘ちゃんの可愛らしい声が。煙る視界の向こう、太い柱に刻まれた浮き彫り(レリーフ)の中に鍛冶神さんの姿を見つけたからですね。独眼独脚の厳めしい姿、炉から取り出した鋼を見つめ、今まさに槌を振り下ろそうという瞬間をダイナミックに切り取った彫刻は見る者を圧倒する迫力に満ちています。

 

 

「む、あれは嗜虐神様か! ……伝わりしそのお姿は異なれど、やはりこの地域でもかの女神は崇められていたのだな」

 

『おや、貴女()闇の慈母さまを信仰していらっしゃるのですか?』

 

()、ということは奥方もか! 自身の在り方に迷い、また兄を止められず悪戯に自分を傷付けていた私を、我が主へと導いてくださったのだ」

 

『それは……とっても素敵ですね! 私も旦那(おど)様と初めて逢ったのは……』

 

 

 同じ嗜虐神さんの信徒である闇人女医さんと奥方(フースフレイヤ)は予想通り意気投合。互いの伴侶との出会いについて乙女トークを繰り広げています。苦痛を尊び人を傷付ける混沌の神である嗜虐神さんで盛り上がる2人に女神官ちゃんは困り笑顔。

 

 まぁ吸血鬼侍ちゃんや若草知恵者ちゃんが信仰している万知神さんもバッチリ混沌に属する神ですし、色々と因縁のある覚知神さんだって、ゴブスレさんのお姉ちゃんが信仰していましたからねぇ。神の善悪ではなく、神を信じる者を見て判断しようという考えは四方世界では理解され難いと思いますけど、これから多くの種族、信仰と出会うみんなにはその気持ちを忘れないでいて欲しいですね。

 

 

 

『あー……奥方(かが)? 盛り上がっているところに水を差すようで申し訳ないが、そろそろ客人を紹介してもらえないだろうか』

 

『ひゃん!? ……これは失礼をば、すぐに参りますっ!』

 

 

 炉床の反対側からの声に可愛らしい反応を示し、しずしずと玉座に向かう奥方(フースフレイヤ)。赤い顔で俯く彼女の髪に触れ、優しく撫でるのは、群れを率いる狼王の如き精悍な若者です。玉座から立ち上がりゆっくりと歩み寄る体躯はゴブスレさんを越え、重戦士さんと肩を並べるほどの堂々たる美丈夫ですね! 煙越しにも互いの顔がハッキリ判るほどに近寄った彼が、その見た目を裏切る少年のような笑みを浮かべながら訛りの皆無な共通語を紡ぎます……。

 

 

「やぁ。遠いところをようこそ、冒険者諸君。彼の右腕たる忍びから話は聞いているよ」

 

「……どうやら立て込んでいるところに来てしまったようだな」

 

「ははは、構わないさ。交易路を復活させるために助力を願ったのは此方だからな。それに……」

 

 

 一党(パーティ)の代表たるゴブスレさんと挨拶を交わし、歓迎の意を示す頭領(ゴジ)。言葉を区切って向けた視線の先には、緊張した面持ちの女神官ちゃんと神官銃士ちゃん。ゆっくりと近付き、視線を合わせるように膝を屈めて2人の顔を交互に見つめています。

 

 

「――うん、良く似ている。きっと笑った顔なんかはそっくりなんだろうね……はじめまして。君たちの母親の弟……叔父を名乗るには少々威厳が足りないかな?」

 

「そ、そんなことないですっ。こちらこそはじめまして!」

 

「はじめまして、伯父様。……それとも、お義兄(にい)様のほうがいいかしら?」

 

「はっはっは! 可愛い義妹は大歓迎だが、奥方(かが)は見た目に因らずやきもち妬きでね。叔父で勘弁して欲しい」

 

『もうっ、旦那(おど)様ったらっ!』

 

 

 ぷくーと頬を膨らませながら否定しても説得力はありませんねぇ……。ぽかぽかと頭領(ゴジ)の肩を叩く奥方(フースフレイヤ)の可愛らしさに一行もニッコリ。同盟関係にあるとはいえ、ある種弱みともいえる場面を見せてくれているのは信頼の証なのかもしれません。

 

 

 

 

「……さて。もう2人、挨拶をしなければいけない子がいるね」

 

 

 一頻り笑った後に表情を真面目なものに変え、土間に片膝を着いて大きく屈む頭領(ゴジ)。女神官ちゃんと神官銃士ちゃんの後ろに見え隠れしている小さな姿に手招きをすれば、記憶に刻まれた人物と瓜二つの顔の2人がおずおずと彼に近寄っていきます。

 

 

「はじめまして、で良いのかな?」

 

「うん、おかあさんからうけついだきおくのなかに、おねえさんといっしょに3にんであそんだおもいではのこってるの」

 

「でも、それはおかあさんたちのたいせつなおもいで。ぼくたちじしんのきおくじゃないから……」

 

 

 俯く2人の頭にポンと手を乗せ、不器用に撫でる頭領(ゴジ)。2人の顔が僅かに顰められたのは、右腕から漂う血の匂いのためでしょう。心配そうに見上げる2人に大事ないと首を横に振り、彼がゆっくりと語り出します……。

 

 

「姉が狂王に嫁ぐことが決まった時、俺は止めることが出来なかった。王宮の風紀を乱した売女(ばいた)として彼女が告発され、姉の傍仕えとして王宮に送った父が連座で処刑された時も、俺はこの地で傭兵紛いの出稼ぎをしていた。忍びが新たな王の即位とそこに至るまでの顛末を語ってくれるまで、何も知らずに剣を振るっていたんだよ……」

 

 

 なるほど、乱れに乱れていた当時の王都に彼が戻っていたら、狂王や取り巻きの貴族たちの良い餌食になっていたことでしょう。すべてが終わるまで何も報せず、北領に留めておいたのは英断ですね。でもそれは金髪の陛下や義眼の宰相の都合であって、伯爵夫人の弟である彼にとっては除け者にされたと感じてもおかしくないことです。

 

 

「姉も、彼女も救えなかった俺に出来るのは、代替わりの隙を狙う混沌の軍勢を王都に近付かせないことだけだった。ひたすらに剣を振るい、戦場を駆け抜ける間に……素晴らしい伴侶を得ることが出来た」

 

 

 そう言って視線を向けるのは麗しの奥方(フースフレイヤ)。『もう、人前で恥ずかしい……』と頬を染める彼女に微笑みかける姿は幸せに満ちています。王国から遠く、試される大地で幸せを見つけることが出来た彼の姿にダブル吸血鬼ちゃんも安堵の笑みを浮かべてますね。そっと頭上の手を取り胸元に抱き寄せ、2人が想いを口にします……。

 

 

「きっと、おかあさんもおねえさんも、ふたりのしあわせをしゅくしてくれてるよ!」

 

「だから、およめさんをかなしませるようなまねはしちゃダメ! このケガもすぐになおすの!!」

 

「う、うむ。強引なところまで彼女にそっくりだな……」

 

 

 そう言い放ち、返事を待たずに癒しの奇跡を唱え頭領(ゴジ)の傷を癒すダブル吸血鬼ちゃん。戦士たちを優先し自分を後回しにしていた彼ですが、ずっと堪えていた痛みが消えたことで僅かに寄っていや眉間の皺が無くなり、どこか少年めいた幼さが見えて来ましたね。腕を擦る彼を満足そうに見た後、目を丸くしている奥方(フースフレイヤ)の手を取り眉を立てた笑みを見せました。

 

 

「あのね、まちをまわってけがをしているひとをなおしてもいい?」

 

「いやしのきせきをつかえるひとはいっぱいいるし、それいがいにもみんな『げかてきしょち』ができるよ!!」

 

『それは……ほんとうなの?』

 

「ああ、我が主を筆頭に変わり者だらけでな。今冒険者ギルドの訓練場では、傷口の切開や縫合を含んだ応急手当を教えている。それに、こんなものまで自分たちで作るぐらいだ」

 

 

 奥方(フースフレイヤ)の問いにニヤリと笑みを返し、鞄に手を入れる闇人女医さん。取り出したのは硝子の瓶に入った無色透明の液体です。促されるままに瓶の口を開け鼻を近付けた奥方(フースフレイヤ)の顔が驚きの色に染まりました。

 

 

『これは……まさか……!?』

 

「ああ、蒸留を繰り返して度数を高めた高純度の酒精(アルコール)だ。他の酒と混ぜて飲むのも良いが……奥方なら別の使い道があるだろう?」

 

 

 液体の正体は牧場で仕込まれた鉱人コンビ渾身の逸品である(ウォトカ)! 銀髪侍女さんも太鼓判を押すその味もさることながら、特筆すべきはその度数の高さ。初年度に作られたうちの殆どをお土産にするべくインベントリーに詰め込んでいた吸血鬼君主ちゃん、頭領(ゴジ)奥方(フースフレイヤ)もあんぐりと口を開けたまま積み上がって行く瓶の山を眺めています。瓶の金字塔(ピラミッド)が完成したところで令嬢剣士さんが進み出て、吸血鬼君主ちゃんの頭を撫でながら頭領(ゴジ)へと切り出したのは……。

 

 

「今回は試供品としてお持ち致しましたの。是非、私たちの自信作の味と効果をお試し頂きたいのですが……」

 

「――はは、ならば(ドレッカ)の準備をせねばいかんな! 奥方(かが)、一先ず客人を休める場所に案内してくれ。その後は……」

 

『はい、皆に声を掛けて盛大な(ドレッカ)にしませんとね!』

 

 

 頭領(ゴジ)の張りのある声に、ポンと両手を合わせ微笑みながら応じる奥方(フースフレイヤ)。どうやらお土産は気に入ってもらえたみたいですね! 闇人女医さんの嗜虐神さんトークで心象を良くし、たたみかけるような(ウォトカ)攻めは効果抜群! 王妹殿下1号2号とダブル吸血鬼ちゃんとの対面も何事も無く終わって良かったですね。

 

 宴まで時間はあると思うので、その間は信仰の暴力で癒しまくりタイムです! ゴブスレさんと英雄雛娘ちゃんがソワソワしてるので、辻ヒールついでに街中の観光もしちゃいましょうか!!

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 





 文化がちがーう!を上手く表現したいので失踪します。


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