ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 なんとか半期〆の業務が片付いたので初投稿です。




セッションその17-6

 

 

 前回、入り江の民(ヴァイキング)にアイドル文化を伝播させたところから再開です。

 

 しっとりと愛する人への激重感情を歌い上げた森人(エルフ)コンビと、可愛らしい振り付け(ダンス)とともに無茶ばかりする夢追い人への応援歌を披露してくれた英雄雛娘ちゃんたち3人娘によって宴のボルテージは最高潮。ダブル吸血鬼ちゃん&王妹殿下1号2号に対する期待はいや増すばかり! 何処から調達してきたのか、入り江の民(ヴァイキング)の戦士たちも背中に嗜虐神さんの聖印(シンボル)を染め抜いたド派手な法被と鉢巻き姿で応援の準備はバッチリみたいです。

 

 

「――というのはどうでしょうか?」

 

「「おもしろそう!!」」

 

「うう……ちょっと恥ずかしいですけど、頑張ります!」

 

 

 さて、先に歌うのはどちらの……おや? 4人で集まって何やら相談してますね。神官銃士ちゃんの言葉に頷きを返し、炉床の周囲ではなく宴会の席の間に散らばるような立ち位置に付く4人。左右に大きく開いた手を頭上で打ち鳴らし、ゆっくりとしたリズムを刻み始めました。

 

 

「それではみなさま~」

 

「おてをはいしゃく~」

 

「えっと、ちょっと意味が違うような……」

 

「細かいことは気にしない! ――さぁ皆様、ご一緒に手拍子をお願い致しますわ!!」

 

 

 神官銃士ちゃんの張りのある声にまず反応したのは冒険者たち。同様に戦士たちの間に分散すると、4人に合わせるように楽し気に手拍子を始めます。こういうのには慣れて無さそうなゴブスレさんも英雄雛娘ちゃんに引っ張られ、彼女の隣で躊躇いがちに手を叩いてますね。

 

 

「ふむ。では率先垂範(example by leadership)といこうではないか」

 

『はい、旦那(おど)様!』

 

 

 高座から降りてきた頭領(ゴジ)奥方(フースフレイヤ)がそこに加わり、戦士たちも2人に続くようにその節くれだった頑丈な手を打ち鳴らします。会場の空気が整ったところで、眉を立てた笑みを浮かべた4人が一斉に歌声を紡ぎ始めました……!

 

 

 

うじゃけた顔してどしたの

 

つまらないなら ほらね

 

輪になって踊ろ みんなで

 

遊びも勉強もしたけど

 

わからないことだらけ なら

 

輪になって踊ろ 今すぐ

 

 

 ――それは、混沌の軍勢に立ち向かうべく秩序の勢力が結成した多種族連合軍の間で歌われていたもの。言語も文化も社会規範も異なる彼らが互いを尊重し、認めあう中で紡がれた友誼の証。

 

 

悲しいことがあればもうすぐ

 

楽しいことがあるから

 

信じてみよう

 

 

 過酷な戦場において、傷付いた仲間に手を差し伸べる勇気を、戦功を挙げた者を称え、命を散らした勇者を悼む優しさを忘れないよう心に刻むための誓いの言葉。全ての種族に伝わるよう、判り易い共通語(コイネー)の歌詞とメロディーによって織り込まれたそれは、平和と安寧を求める人々の間に瞬く間に広がっていきました。

 

オーオー さあ輪になって踊ろ

 

ララララ すぐにわかるから

 

オーオー さあ輪になって踊ろ

 

ララララ 夢を叶えるよ wow

 

 

 ちっちゃな身体をのびのびと動かし、ステップを踏みながら大きく腕を左右に振るダブル吸血鬼ちゃん。女神官ちゃんと神官銃士ちゃんの歌声に合わせ、聴き入っていたみんなに向かって意味深なウインク。一度見れば誰でも簡単に真似出来るそのシンプルさに惹かれ、1人また1人と立ち上がり、踊りに参加していきます……。

 

 

 

大好きな娘がいるなら

 

はずかしがってちゃダメね

 

輪になって踊ろ みんなで

 

大人になってもいいけど

 

忘れちゃダメだよ いつも

 

輪になって踊れ いつでも

 

 

「成程、単純な旋律と平易な歌詞が集団帰属意識を生み出し……ひゃん!? な、なにをする我が主!」

 

「むずかしくかんがえちゃダメ、いっしょにおどって?」

 

「わ、判った! 判ったから胸から手を……んっ」

 

 

 後方解説面をしていた闇人女医さん、いつの間にか忍び寄っていた吸血鬼侍ちゃんに背後から抱き着かれ、可愛い悲鳴を上げちゃってますね。厚手の布越しにもハッキリとわかるナイスたわわを下から掬い上げるように揉みしだかれ、艶めいた吐息が唇から漏れています……あ、令嬢剣士さんがエロ吸血鬼を引っぺがして、むくつけき男たちの中心に投げ混んじゃいました。イケメンよりも武骨な男性がタイプな吸血鬼侍ちゃんは好みの男衆に囲まれ胴上げされて大喜びですね。

 

 

一人ぼっちの時でさえも

 

誰かがいつも君を

 

見ててくれる

 

 

「ほ~ら、そんな顔してないの! こういう時は楽しまなきゃ、ね?」

 

『お、おう……!』

 

 

 いかつい顔に似合わぬ繊細な心の持ち主らしく、なかなか踏ん切りがつかない若き戦士の手を取るのは妖精弓手ちゃん。誰もが見惚れる笑みで彼を立ち上がらせ、すでにノリノリで踊っている輪の中に彼を導いていますね。物語の中から抜け出してきたような上の森人(ハイエルフ)の姫を間近に見た戦士は陶然としたまま仲間たちと合流し、彼らから向けられる羨まし気な視線にも気付かず頬を赤らめて踊っています。

 

 

オーオー さあ輪になって踊ろ

 

ララララ すぐにわかるから

 

オーオー さあ輪になって踊ろ

 

ララララ 夢を叶えるよ wow

 

 

「えへへ……どう? たのしいかな?」

 

「はい、とっても!」

 

「――ああ、悪くない」

 

 

 吸血鬼君主ちゃんの問いに満面の笑みで返す英雄雛娘ちゃん。ぎこちないながらもみんなを真似て鎧兜姿でダンスを披露していたゴブスレさんも楽しんでくれているみたいですね! 種族も性別も、生者と死者の違いもあるみんなが同じ気持ちを共有することが出来た魔法の時間は、酔いが回ってみんな潰れるまで笑い声を伴いつつ続くのでした……。

 

 


 

 

「――つまり、鰓人(ギルマン)たちの後継者争いの影響で交易船の運航が止まっちゃったってコト?」

 

「うむ、簡単に言えばそういうことだな……うむぅ……」

 

『もう! 飲み過ぎはいけませんとあれ程言いましたのに……っ』

 

 

 騒がしくも温かな宴の翌朝、宴の料理で発生した魚のアラと干し蕃茄(トマト)のシチューを手に首を傾げる妖精弓手ちゃん。彼女の言葉に頷きを返す頭領(ゴジ)の顔色は悪く、どうやら二日酔いみたいですね。隣の奥方(フースフレイヤ)がぷんすこと怒りながらも甲斐甲斐しく氷嚢を首筋に当てたり貝の煮汁を飲ませたりしています。

 

 北の海は生者に厳しく、交易に携わることは命がけの仕事。潮流や風を読み違えればあっという間に流され、季節によっては氷に閉じ込められてしまう危険だってあります。見渡す限りの氷原に取り残されてしまったら採れる手段は極僅か。

 

 救助を信じ日々減っていく食料を横目に耐えるか、あるいは何処にあるかも判らぬ人里を目指し自殺的な行進に臨むか。どちらにしろ生き延びる可能性は骰子(ダイス)目次第といったところでしょうか。

 

 そのような厳しい環境であるため、船乗りたちの多くは海中に暮らす鰓人(ギルマン)たちと契約し、比較的安全な海路を案内してもらったり不足した食料を調達したりするんだとか。大抵の場合海域に差し掛かったところに彼らは待機していて、積み荷の1割かそれと同等の貴金属を代価に案内人(ナビ)を引き受けてくれるそうです。

 

 危険を冒して運んできた荷物を渡すことを渋りガイドを雇わない者もいるそうですが、たいてい航路の何処かで沈み積荷は海中に消えてしまうため多くの船乗りは案内人(ナビ)に払う報酬を惜しまないんだとか。鰓人(ギルマン)たちにとっても海産物以外の良い外貨獲得手段であるため、わりあい誠実に仕事をしてくれていたらしいのですが……。

 

 

「なんでも彼らの信仰する神の落とし子がとんでもない怪物だったらしくてな、そいつを鎮めるべく赴いた族長は頭から喰われ、怪物が眠っていた彼らの神殿は酷い有様。流れの料理人(コック)によって退治されるまで付近の海域は船が近寄ることすら出来なかったらしい」

 

「……なんで料理人(コック)が落とし子を退治してるのかという疑問はありますが、怪物が居なくなった以上海域は安定したのではないのですか?」

 

 

 蜆エキスが効いてきたのか顰め顔が薄らいできた頭領(ゴジ)の言葉に曖昧な笑みを浮かべながら疑問点を指摘する女神官ちゃん。跡目争いが起きていたとしても、傾きかけた暮らしを支えるには案内人(ナビ)の仕事は欠かせない筈。他にも何か理由があるんでしょうか?

 

 

「……禁制の品を運んでいた連中が、案内人(ナビ)無しでその海域に入り込んだそうだ。当然無事に通過できるわけも無く、積荷諸共海に沈んだらしいのだが……」

 

「……なにか、あぶないものをつんでたの?」

 

 

 令嬢剣士さんの膝上に乗り黒豆茶(コーヒー)を楽しんでいる吸血鬼侍ちゃんの言葉に同意の頷きを見せる冒険者たち。ビンビン感じるイヤ~な予感は残念ながら正解です。

 

 

「ああ。現場の近くで救助されていた水夫が口を割ったよ。なんでも船の倉庫の最奥には鉛で出来た分厚い宝箱があり、積み込むのに相当難儀したらしい。積み込んだ後に船長が中身を確認している現場を偶然目撃したそうだが……」

 

 

 

 

 

 

「――仄かに青白く光る見たことも無い貨幣がギッシリ詰まっていたらしい」

 

 

 ……んん? 四方世界で貨幣といえば金貨(gp)銀貨(sp)、それと銅貨(cp)ですよね? よっぽど大きな街でなければ金貨の使用は釣銭の関係でイヤな顔をされたり贋金を疑われて使用を断られてしまいますし、銀貨や銅貨も縁を削り取られた粗悪なものが出回ったりと散々な代物。冒険者ギルドで報酬として支払われる新貨幣が一番信用されている有り様という、陛下の頭を悩ませる多くの問題のうちのひとつです。

 

 他に考えられるものといえば……四方世界を形作る基盤(元ネタ)のひとつであるダ〇ジョンズ&ド〇ゴンズに登場する白金貨(pp)くらいしか思いつきませんが……

 

 

 

 

 

 

 ……まさかとは思いますがGM、もしかしてプルトニウム貨(新和版の誤訳ネタ)!?

 

 

「族長が死亡し統率を失った鰓人(ギルマン)の一部が海底に沈んでいたその貨幣を奪って逃走、神殿跡を根城に悍ましい怪物の群れを使役して海域を荒らしまわっている。新たに族長となった者もなんとか奴らを抑えようとしているが、残念ながら上手くいっていないのが現状だ」

 

『交易にも出られず漁も満足に行えない親戚一同が、嫁取りにかこつけて食料と金をせびりに来たのが昨日の祭りなんです……』

 

 

 ふむふむ、それで王国に入ってくる交易品が激減していたわけですね。このまま放置していては入り江の民(ヴァイキング)たちの生活が立ちいかなくなり、北方の護りが喪失してしまうかもしれません。早急に何とかしなきゃいけませんよ!

 

 

「我らとしてもこのままでは生活が危うい。そこで鰓人(ギルマン)たちと共同で暴れ回っている連中を止めるべく奴らの根城に赴くことになっているのだが……」

 

 

 そこで言葉を区切り、姪っ子たちに視線を向ける頭領(ゴジ)。王国と同盟を結んでいるとはいえ、それは従属ではなく対等な関係。迂闊に頭を下げてしまっては彼らの面子に関わってきます。とはいえダブル吸血鬼ちゃんたちが貴重な戦力であることも事実、上手いこと落としどころを見つけなければ……。

 

 

 

「――判った、引き受けよう」

 

「ん、そうだね!」

 

「がんばろ~!!」

 

 

「ちょっと、そんな簡単に……!?」

 

 

 フンスと鼻を鳴らしやる気満々な3人の姿に慌てた様子の神官銃士ちゃん。下手に引き受けて今後の王国と入り江の民(ヴァイキング)たちの関係に問題が生じるのを恐れているのでしょう。ですが、その心配は無用というものです! 吸血鬼君主ちゃんを抱き上げ頬擦りしている妖精弓手ちゃんが、そんな彼女の疑問を打ち砕いてくれます。

 

 

「あら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「ここまでは王国の使者として、そしてこれからは【辺境最優】と【辺境最悪】としての仕事です。……それでよろしいですね、殿下?」

 

「――ヨシ!」

 

 

 暫しの葛藤の後、晴れやかな笑顔とともにちょっと許されざる角度でポーズをキメながら追認する王妹殿下1号……もとい神官銃士ちゃん。立場なんてものは使いよう、状況に応じて使い分ければ良いってことは暴れん坊陛下(お兄様)が証明してますからね!

 

 昨夜の宴で気力体力共に充実した冒険者たちの瞳には、未知なる環境での冒険に挑む悦びの光が宿っています。爛々と眼を輝かせる彼らを呆気にとられた表情で見ていた頭領(ゴジ)ですが、やがて堪え切れぬとばかりに笑い出しました。

 

 

「はは……! そうか、冒険者とはそういうモノであったな!! ならば諸君、共に北海の怪物退治に出航だ!!」

 

「「「「「おー!!」」」」」

 

 

 傷の癒えた右腕を高く掲げ狼の如く吠える頭領(ゴジ)に合わせ、勇ましい掛け声を上げる一同。そこには冒険者と戦士の違いは無く、ただ困難に向かい漕ぎ出す挑戦者たちの姿があるのでした……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――あ、そうだ。ちょっといいですか? 船で向かうなら試してみたいことがあって」

 

 

 おや、妖術師さんの様子が……。

 

 


 

 

『なんとまぁ……』

 

「まさか、これほどのモノを呼び出すとは……!」

 

 

 頭領(ゴジ)奥方(フースフレイヤ)、そして入り江の民(ヴァイキング)たちが言葉を失うのも無理はありません。集落の港には交易船が短艇(カッター)にしか見えないほどの大型船が停泊し、一行が乗り込んで来るのを()()()()()()()()が今か今かと待ち構えているのですから!

 

 全長は約150フィート(40m以上)、大型の帆と二段式の櫂を備えた威容は入り江の民(ヴァイキング)の様式よりも南洋の船に近く、船首に優美な櫓と巨大な衝角(ラム)を備えた美しい木造の船体を惜しげも無く晒しています。船員とともに沈んだ船の魂を基礎とし、仮初の船体を構築したため様々な船の構造が合わさった造りになったのかもしれませんね。

 

 桟橋に横付けされた短艇(カッター)に分散して乗り込み、船へと招かれる一行。死してなお戦いを望む戦士たちが敬礼を捧げるのは、彼らをこの地に召喚した妖術師さん……ではなく。

 

 

『えっと、よろしくお願いしますね?』

 

 

 入り江の民(ヴァイキング)にとってのトップアイドルである、嗜虐神さんに愛されし奥方(フースフレイヤ)ですね!

 

 

 

「どうして……?」

 

「彼らにだって推しを選ぶ権利くらいあるってコトじゃない?」

 

「言霊の力と戦い続ける歓びに溢れた彼らの思念を最大限引き出して、やっとの思いで成功させたのに……船体や霊体の維持も私がしてるのに……」

 

 

 現場猫顔で固まる妖術師さんに容赦なくトドメを刺す妖精弓手ちゃん。魔力とともに大切な何かを失い膝から崩れ落ちる彼女を見て溜息をひとつ吐き、パチンと指を鳴らせば背後から現れる小さな影が2人ぶん。甲板に手を付き咽び泣く妖術師さんを左右から挟み込んで……。

 

 

 

「もう、そんなになかないで? きみがとってもがんばってくれたこと、ぼくたちはちゃ~んとしってるから!」

 

「まりょくをつかいきっちゃったよね? いまからしっかりほきゅうしてあげる! ……もちろん、()()()()()()()、ね?」

 

「ふぁっ!?」

 

 

 さほど身長の変わらぬ妖術師さんを左右から2人掛かりで抱き上げ、半透明の船員の誘導で船内へと消えていくダブル吸血鬼ちゃん。やがて船内の一室からは湿った音と必死に快楽を押し殺す妖術師さんの艶めいた息遣いが響いてきました……。

 

 

 

「……んっ、んむぅ……ひぁぁ……!?」

 

「おおきなこえをだすと、みんなにきかれちゃうよ?」

 

「それとも……きかれたいの? ん~……ちゅっ」

 

「やっ、そんな……だめぇ……」

 

 

 漏れ聞こえる声の方角をガン見する王妹殿下1号2号の背後では、妖精弓手ちゃんが英雄雛娘ちゃんの耳をピッチりと塞ぐ教育的な配慮をしていますね。思春期真っ只中な反応を示す2人に苦笑を隠せない様子ですが……おや? 悪戯を思い付いたのか英雄雛娘ちゃんを闇人女医さんに預け、ピコピコと長耳を動かしながら息も荒く夢中になっている彼女たちの背後に近付いて……。

 

 

「フフ、ああなった2人は()()わよぉ? 相手を幸せにするのに夢中になっちゃって、こっちの言うことなんてち~っとも聞いてくれないんだから。おまけに……」

 

 

 

 

 

 

「『待って』は『はやく』に、『ダメ』は『いいよ』に、『無理』は『もっと』だと思ってるから、相手がトロトロになっちゃうまで絶対に……あら?」

 

 

 あ~あ、耳元で囁かれた刺激的な内容に王妹殿下1号2号の精神はオーバーヒート、茹蛸みたいな顔で失神しちゃってますね。2人を見て慌てて駆け寄ってきた令嬢剣士さんに神官銃士ちゃんを任せ、妖精弓手ちゃんは女神官ちゃんを抱きとめてあげてます。

 

 

「もう! あまり揶揄ってはいけませんよ? 頭目(リーダー)たちも()()()()()()()()()()ですのに……」

 

「あ、やっぱり判る?」

 

「当たり前ですっ。それに……どんなに夢中になっていても一言『嫌だ』『やめて』と言えばすぐに止まってくれますもの、あの可愛らしい2人の暴君は」

 

 

 良かった、昼間からおっぱじめてたわけでは無いんですね! どうやら妖精弓手ちゃんはその鋭敏な聴覚で吸血の音から、令嬢剣士さんは微かに漂う2人の血の匂いから何をしているのかを把握していたみたいです。最近自分の気持ちに素直になり過ぎている2人をちょっとだけ落ち着かせるには丁度良かったかもしれませんね。

 

 

「いやーやっぱ師匠たちの直吸いは効くなぁ……げふぅ」

 

 

 お、妖術師さんがツヤツヤになって帰って来ました。唇の端っこに血が付いてるあたりダブル吸血鬼ちゃんからちゅーちゅーしてたのは間違い無さそうです。

 

 

「ただいま~……あれ?」

 

「ふたりともねちゃったの?」

 

「んー? 昨日はしゃぎ過ぎて疲れが抜けてなかったのかもねぇ。――それよりもほら、2人ともいらっしゃい?」

 

 

 王妹殿下1号2号の様子に首を傾げるダブル吸血鬼ちゃんを呼び寄せ、そっと吸い口を露出させる妖精弓手ちゃん。2人も素直にちゅーちゅーしてますし、結構な血を吸われてたのかもしれませんね。女神官ちゃんを膝枕しつつ2人を抱き寄せる妖精弓手ちゃん、その全身からは溢れんばかりのオカン(ちから)が感じられます。

 

 魔力を補給したところで妖術師さんがサッと手を挙げれば、帆を張ると同時に動き出す無数の櫂。半透明の船員と生身の戦士たちの視線を受けた頭領(ゴジ)が出航の号令を高らかに宣言しました!

 

 

「微速前進! これより本船は鰓人(ギルマン)の族長との邂逅予定地である北東の岩礁地帯……寄群(よぐ)へと向かう!!」

 

 

 寄群(よぐ)……ヨグ……ああ、やっぱり今回はそっち方面なんですね……。

 

 


 

 

 寒風を帆に受け、荒波を切り裂いて進む大型船。幽霊船(ナグルファル)の伝説にあやかって召喚されたことでその帆にはいつでも最適な向きの風が当たり、また荒れた海上にありながらもまるで海面に吸い付いたように船体は揺れること無く同じ姿勢を保っていますね。森人(エルフ)の森では船酔いに悩まされていたダブル吸血鬼ちゃんもケロっとした顔をしていますし、乗り心地は抜群みたいです!

 

 

「実に良い船だ! 船員の練度も高く、何より揺れが少ないのが良い!! ……俺も船酔いしやすい体質でね、航海中は碌に食事が喉を通らないのだ」

 

『此方に来たばかりの頃の旦那(おど)様、船の上ではそれはもう酷い顔色でしたからねぇ……』

 

 

 船内を見回っていた頭領(ゴジ)奥方(フースフレイヤ)も快適な航行に満足げな様子。婿入り当時を思い出し苦い顔をする夫と、クスクスと笑う妻。最初は文化の違いからお互い戸惑うことも多かったでしょうが、今では周囲の者が砂糖まみれになるほど立派な甘々夫婦に進化したんですね。

 

 

「どうだろう召喚士(サマナー)殿、(いくさ)を終えた後もこの船を維持することは出来るだろうか?」

 

「うーん……ちょっと難しいかな。航海途中で沈んだ船やその乗組員の無念が核になってるから、無事に港まで戻れたら満足して還る魂が多いと思う。その後も付き合ってくれる物好きがいれば船は維持出来るだろうけど、船の大きさはだいぶちっちゃくなるかも」

 

「そうか……漕ぎ手奴隷でも無い者に航海を強制するわけにもいかんしな。その物好きが多いことを願うとしよう」

 

 

 ダブル吸血鬼ちゃんをちゅーちゅーした後も維持コスト支払いのために竜血(スタドリ)を飲み続ける妖術師さんによる解答に残念そうに首を振る頭領(ゴジ)。船酔いしない船は彼にとっても喉から手が出るほど欲しいでしょうしねぇ……。

 

 

 

「――そういえば、これから会う鰓人(ギルマン)ってどんな種族なのかしら?」

 

「ん~?」

 

「たぶんあったことないかなぁ……」

 

 

 特製の焼菓子をみんなに振る舞いながらの妖精弓手ちゃんの問いに首を傾げるダブル吸血鬼ちゃん。一緒に焼菓子を頬張っている英雄雛娘ちゃんや闇人女医さんも首を横に振っていますね……お、竜血(スタドリ)片手に焼菓子を貪っていた妖術師さんは知ってるみたいです。指に付いた欠片を舐め取り、びっしりと付箋や書き込みが顔を覗かせる年季の入った怪物図鑑(モンスターマニュアル)を鞄から取り出し、ペラペラとページを捲り始めました。

 

 

「ええと……『鰓人(ギルマン)。水中に暮らす種族で魚に似た顔を持ち、多くが鱗に覆われた身体を持つ。族長である男性と複数の女性を中心とした家族社会を形成しており、銛や投網を用いての漁法はそのまま恐るべき戦闘術となる。その特異な外見から別名【海ゴブリン】とも呼ばれ』……」

 

「ゴブリンか?」

 

「……『ることもあるが、所謂小鬼(ゴブリン)とはまったくの無関係であり、秩序にも混沌にも属する可能性のある蜥蜴人(リザードマン)のような立ち位置である』」

 

「ゴブリンではないのか……」

 

鰓人(ギルマン)の方々を海ゴブリンと呼ぶのは、圃人(レーア)に対しての地べた摺り(ロードランナー)呼びと同じくらい喧嘩を売ってますので、十分に注意してくださいね?」

 

 

 ゴブスレさん、ステイ! ちょっとは落ち着きなさいと妖精弓手ちゃんに兜の後頭部をぺしりと叩かれ、大人しくなるゴブスレさん。令嬢剣士さんの捕捉に黙って頷きを返しています。ちょっと見た目が変わっているとはいえ鰓人(ギルマン)も立派な人型種族(ヒューマノイド)、ゴブリンなんかと一緒にするのはスゴイ=シツレイです。

 

 陸で難儀していた使い魔(ファミリア)の亀を助けてくれた只人(ヒューム)を海底の御殿に案内し、盛大に歓待したという物語があるくらい彼らは受けた恩にはそれ以上の礼を返す種族。もっとも面子を重視する傾向もあるので、馬鹿にされたり誇りを傷付けられたと感じたら全力で報復するのもまた事実。お調子者の兎人(ササカ)が彼らを足場代わりにして皮を剥がれた話もまた四方世界で語られる説話のひとつですね。

 

 

 

「――さて、そろそろ彼らの斥候が姿を現す頃合いだが……」

 

 

 船が進むことおよそ半日、島というには小さすぎる岩が無数に頭を覗かせる岩礁地帯が進行方向に見え始め、船上は俄かに慌しさを見せ始めています。ダブル吸血鬼ちゃんたちも念の為装備を身に着け、甲板の上に集まっていますね。

 

 

「おっ、見えましたぜ!」

 

 

 1人の戦士が指差す先、海面に何本も突き出た銛の先端が並んでいます! 少しずつ伸びる銛の根元からは鱗に覆われた手、そして鍛え上げられた肩口が顔を覗かせていきます。船の航路を塞ぐように2列の縦陣を組み、鰓人(ギルマン)たちが上半身を海面から出した状態で姿を現しました!! 奥方(フースフレイヤ)を伴って船首から姿をさらした頭領(ゴジ)が、張りのある大きな声で彼らへと呼びかけます。

 

 

「船上から失礼! 北の海を荒らすものに対抗すべく、勇敢なる戦士を連れて参った!! 其方の族長殿は何方に?」

 

 

 

 

 

 

「――あら、噂に違わぬ良いオトコ! 今そっちに行くわねン!!」

 

 

 瞬間、爆ぜるように水飛沫を上げる海面。鰓人(ギルマン)たちの中から飛び出した何かが上空高く舞い上がり、鈍い陽光を反射しながら甲板へと降りてきます! ちょうど入り江の民(ヴァイキング)組と冒険者組の間に着地したその威容に、みんな言葉を失っています……。

 

 スッと立ち上がるその身の丈はおよそ8フィート(2メートル半)。深く割れたシックスパックの腹筋は白く細かな鱗に覆われており、そこから徐々に桃色に変化して全身に広がっています。ポタポタと雫を滴らせる身体はダブル吸血鬼ちゃんが見惚れるほど鍛え抜かれており、咄嗟に妖精弓手ちゃんが2人の首根っこを掴んでいなければ頬擦りに突撃していたこと間違いなしです。

 

 魚の相を強く感じさせる頭部は何処かユーモラス。大きな瞳には深い叡智と慈愛を称え、キラキラした瞳で自分を見つめるダブル吸血鬼ちゃんに対しバチコーンとウインク。水中でも視覚を確保出来るように透明な瞼があるみたいです。ん~と伸びをする仕草から何とも言えぬ色気を放ちつつ、族長と思しき鰓人(ギルマン)がぷっくりとセクシーな唇を開きました……。

 

 

 

「はじめまして、陸に棲むオトモダチたち(フレンズ)! アタシがこの辺りを仕切っている族長よン!! ……って、ゴメンナサイね? ついこの間までオンナだったもんだから、まだオトコとしての振る舞いに慣れていないの」

 

 

 クネクネと身体をくねらせながら野太い声で笑う鰓人(ギルマン)の族長。これまで遭遇してきたなかで一二を争うほどに濃いキャラに硬直する一行、ダブル吸血鬼ちゃんを除いて一番早く復帰したのは女神官ちゃん。今まで培ってきた異種族コミュニケーション能力を発揮し、若干引き攣り気味の笑顔で彼?に話しかける姿からはベテラン地雷処理のオーラを感じさせます。

 

 

「ええと、はじめまして。私たちは入り江の民(ヴァイキング)の方々に協力している王国の冒険者です。その、この間まで女性だったというのはいったい……?」

 

「あら、可愛い冒険者さん! アタシたちは1人の夫に対し複数の妻がいる一夫多妻制なんだけど、何らかの事情で夫が死んだ場合、妻の中の1人が新しい夫になって群れを引き継ぐのヨ。その際、性別もオンナからオトコに変わるってワケ!!」

 

 

 まぁ見た目は殆ど変わらないけどネ!としゃがみ込んで女神官ちゃんに目線を合わせながら笑う族長……えぇと、蛸神さんより彼?のことは族長姉貴兄貴と呼んで欲しいと要望がありましたので、以後はそう呼称するということでひとつ。魚にはメスからオスに性転換する種類もいるみたいですし、群れを維持するためにそういった進化を遂げてきたのかも……あ、進化論は四方世界的には異端でしたっけ。まぁその辺りは深く追求しないようにしましょう!

 

 族長姉貴兄貴に続いて屈強な鰓人(ギルマン)の戦士たち――みんな女性なんですよね――も次々に甲板へと飛び移ってきました。楽々と海面から飛び出してくるあたり身体能力は高そうですし、水中における戦闘能力は四方世界の人型生物でもトップクラス! 一部の蜥蜴人(リザードマン)鳥人(ハルピュイア)が対抗できるかどうかというレベルですので、その恐ろしさが判っていただけると思います。

 

 

 さて、無事に鰓人(ギルマン)たちと合流出来ましたし、後は北海を荒らす不届き者を懲らしめるだけです! 彼らが根城にしている神殿跡、まったくもって嫌な予感しかしませんが、みんな頑張って欲しいですね!!

 

 

今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 

 





月末〆の業務が待っているので失踪します。


評価や感想、いつもありがとうございます。

もうすぐダブル吸血鬼ちゃんの冒険も2年を迎えそうなところまでやって来ました。お読みいただいた方からの感想や評価の後押しが無ければ何処かでエタっていたかもしれません。

もしよろしければ、引き続きダブル吸血鬼ちゃんたちの冒険にお付き合いいただければ幸いです。


お読みいただきありがとうございました。

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