ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 ブラックサンが気になって仕方が無いので初投稿です。




セッションその17-7

 

 前回、族長姉貴兄貴率いる鰓人(ギルマン)たちと合流したところから再開です。

 

 

 不吉過ぎる名前の岩礁地帯を後にし、海域を荒らす謀反人たちが根城にしている神殿跡へと舵を切った幽霊船(ナグルファル)。船の周囲には鰓人(ギルマン)の女戦士たちがローテーションで周囲を警戒しており、航海は順調といったところです。甲板では挨拶もそこそこに頭領(ゴジ)夫婦と冒険者たちが族長姉貴兄貴から北海の近況を聞いていますね。

 

 

「そもそもの発端は、前の族長であるアタシたちのダンナが()()気持ち悪い落とし子を目覚めさせちゃったからなのよ……」

 

 

 肌が乾燥しないよう大きな木桶に海水を張り、バスタブのように浸かった姿で嘆息する族長姉貴兄貴。彼の言葉には只人(ヒューム)に馴染みの薄い独特な表現が多く、ダブル吸血鬼ちゃんにはちょっと難しいみたいですね。あとで判りやすくお話ししますねいう令嬢剣士さんの言葉に頷きを返し、吸血鬼侍ちゃんは闇人女医さんのたわわに後頭部を預ける姿勢でその胸元に収まり、吸血鬼君主ちゃんは自らの爪で傷付けた指先を妖術師さんの口に突っ込んでちゅーちゅーさせています。

 

 

「ねぇ可愛らしいお嬢さん。見た感じ地母神の神官っぽいけれど、どうして人は神を信じると思う? 深く考えず、アナタの言葉で話してちょうだい?」

 

 

 ヒレの付いた指先をつい、と向けた先は女神官ちゃん。族長姉貴兄貴の口調こそ軽いですが、神を信ずる神官にとっては非常に重要な問い掛けですね。突然の指名に驚いた様子の女神官ちゃんでしたが、胸の前に手を合わせ、己の内から零れる思いをそのまま口にします。

 

 

「えっと……私たちの暮らしを見守り、作物や野山の恵みを豊かにして下さることに対して感謝の気持ちをお届けするためでしょうか?」

 

「そう、その通り! 言い方は乱暴だけど、信仰を捧げる代わりに何らかの恩恵……地母神なら豊穣や怪我、病気の治癒なんかが得られるから人は神を信ずるのよね」

 

 

 もちろん、祈りが先か加護が先かなんて()()()どっちが先に産まれたのかと同じで結論は出ないでしょうケド、と続ける族長姉貴兄貴。彼の言う通り、推したちの祈りに応えて加護を授けたり奇跡を発現させるのが盤外(こちら)から四方世界を除いている存在の在り方。思うように祈りが集まらなければ加護は薄れ、忘れ去られてしまうことだってあります。破壊神さんの側面のひとつである『栄纏神』もそんな歴史の中で消えゆく神の一柱でしたが、令嬢剣士さんの活躍によって王国の将兵の間でもその信仰が広まり、徐々に往年の力を取り戻しつつあるみたいです。

 

 

「アタシたち鰓人(ギルマン)が大いなる蛸神を信仰しているのは、ひとえに子孫繁栄のため。長生きすればするだけ、たくさん食べれば食べただけ大きくなるアタシたちだけど、大人になるまで成長出来るのはほんの僅か。荒れ狂う海の中で生きていくには強い生命力が求められるの。だからアタシたちは強いオスと(つが)ってたくさんの卵を産み、より強い子が産まれるよう神に祈ってるの」

 

 

 それなのにねェ……と肩を落とす族長姉貴兄貴。どうやらよっぽど酷い目に遭ったみたいですねぇ……と、話し合うみんなのところへ1人の鰓人(ギルマン)が近寄ってきました。警戒ローテから戻ってきた彼女が差し出す木桶を族長姉貴兄貴が受け取り、そこから摘まみだしたのは……おお、大きなエビです! 好奇心の塊である妖精弓手ちゃんが覗き込めば、木桶の中にはどっさりとエビが入ってますね。人によっては虫のように見た目で敬遠されることもありますが、そこは昆虫食を推進している森人(エルフ)。特に蝲蛄(ザリガニ)が好物の妖精弓手ちゃんからすれば宝の山に見えることでしょう。涎を垂らさんばかりの顔な2000歳児を見て、族長姉貴兄貴が食べ方を教授してくれています。

 

 

「死ぬとすぐに臭みが出ちゃうから、出来るだけ鮮度の良いものを選ぶのがコツよ? (オカ)で食べる時は火を通すみたいだけど、ここではこうやって……」

 

 

 口で説明しつつ、鋭い爪の生えた指で器用にエビの頭をもぎ取る族長姉貴兄貴。そのままペリペリと殻を剥がし、プリっとした身を取り出しました。身に残っている汚れや殻の欠片を木桶の中の海水で洗い、バチコーンとウインクをキメながら艶やかな身を妖精弓手ちゃんへと差し出します。

 

 

「ささ、人目なんか気にしないでパクっと一口でいっちゃいなさい!」

 

「え、ええ……!」

 

 

 寄生虫が怖いため、生食はご法度なことが多い淡水生の魚介類に慣れている王国民にとって生のエビはなかなか勇気がいるかもしれません。受け取ったエビの尻尾を摘まみ、小さな口を恐る恐る近付ける妖精弓手ちゃん。僅かに伸ばした舌先に弾力のある身を乗せ、尻尾の付け根辺りまで咥え込んでちゅるりと口内へご案内。ギュッと眼を瞑った状態で咀嚼していましたが……。

 

 

「うわ、何コレ!? プリッとした歯応えも良いけど、身の甘さが海水のしょっぱさで引き立ってすっごい美味しい!!」

 

「ンフフ、でしょう? 海に生きる者しか味わえない、特別な美味ってヤツよ! みんなも遠慮せずに食べてみてちょうだい?」

 

 

 初めての生の味わいに瞳を輝かせる妖精弓手ちゃん。族長姉貴兄貴の進めるまま手を伸ばす冒険者たち、我先にピチピチ跳ねるエビの頭をもぎ、その殻を剥いて……あ、流石に神官銃士ちゃんはちょっと及び腰ですね。吸血鬼君主ちゃんが剥いたヤツをそっと手渡しています。海水に浸し、フルフルと震えるエビの身を口へと運び……。

 

 

「ふわぁ……!」

 

「「あま~い!!」」

 

「これは……果実の甘さとも肉の脂の甘さとも違う、今まで味わったことの無い甘さですね……っ!」

 

『フフ、私たちも滅多に口にすることの出来ない珍味ですから……あ、頭は捨てないでくださいね? とても良い出汁が取れますので!』

 

 

 恍惚の表情を浮かべる冒険者たちを優しく見守る奥方(フースフレイヤ)、エビの頭を回収する椀を持っているのはポイント高いですよ! あとで干し魚や乾燥野菜と合わせてスープにしますからという声にダブル吸血鬼ちゃんも大喜びですね!

 

 

 

「北海の幸は美味しいでしょう? 子孫繁栄とともにアタシたちが望んでいるのは大漁祈願。さっきも言ったケド、アタシたち鰓人(ギルマン)が大きくなるにはたっくさんの食料が必要なの。だから、子宝と大漁を約束してくれる限りアタシたちは大いなる蛸神とその眷属を祀り奉じているのよ」

 

 

 あっという間に無くなったエビの山に満足そうに頷く族長姉貴兄貴。エビの頭を摘まみながら語られるのは彼らが抱く信仰に対する思いの内です。利益第一の考えと思われるかもしれませんが、ダブル吸血鬼ちゃんをはじめとする神官の技能持ちが奇跡を行使できるのも信仰を捧げた代価ですし、四方世界的に不思議なことではありません。

 

 

「そんな感じで長い間信仰を捧げてきたアタシたちだけど、何が切っ掛けだったのか、神殿で深い眠りについていた落とし子が目覚めちゃったのヨ。奉ずる神の眷属なら丁重に扱わなきゃってんで、一族の戦士を連れて前の族長……アタシたちの元ダンナが供物を持って拝謁に赴いたんだケド……」

 

「「あっ(察し)」」

 

 

 ()()()がまぁとんでもないヤツだったのよね~と肩を落とす族長姉貴兄貴。その後の展開が読めたのか、ダブル吸血鬼ちゃんの目が死んだ鰓人(ギルマン)みたいになってますね。

 

 

「そのクソッタレな落とし子は、供物と一緒に族長含めた一族の戦士を『捧げもの』と思ってみ~んな食べやがったの! アタシたちが祈りを捧げてたヤツは、子孫繁栄どころかあたしたちをただの『餌』としか見てなかったワケ!! ……そしたらもう後は戦争しか無いわよね?」

 

 

 一族存亡の危機に族長を失いながらも立ち上がり、神の眷属に戦いを挑んだ鰓人(ギルマン)たち。多くの仲間を失いあわやというところで偶然通りかかった流れの料理人(コック)によって落とし子は調()()され、その死体は生き残ったみんなで分け合って食したそうです。なお、その料理人は只人(ヒューム)の男性っぽかったそうですが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。……種族が違いますし、他人との区別が付かなくても不思議じゃありませんね!(白目)

 

 その後、新たな長となり放置していた海路の整備と関係者へのあいさつ回りに奔走していた族長姉貴兄貴。以前と同じ……とは流石にいきませんが、なんとか体裁を整えることが出来たところで身内からの離反者発生&モヒカン化。鱗と粘液に覆われた顔からその心情は判り難いですが、だいぶお疲れみたいです。(おか)の種族と協力することを決めたのも鰓人(ギルマン)だけでは対処しきれないと判断したからなのかもしれませんね。

 

 

 

「それで、海域を荒らす離反者たちの戦力は如何程なのでしょうか?」

 

 

 愚痴交じりな鰓人(ギルマン)たちの状況を把握した後、これからの事について話し合う一行。口火を切ったのは戦に長けた神格を信奉する令嬢剣士さんですね。手持ちの札と相談しながら出来るだけ少ない被害で勝利しなければいけませんので、戦い前の段取りはとっても重要です。さて、敵戦力の規模は……。

 

 

「まず、首謀者は元第二夫人だったヤツよ。しきたりを無視して勝手に雄化した挙句、自分の子どもや子飼いの連中を引き連れて集落を飛び出して、あの落とし子がいた神殿を拠点にしてるわ。正直オツムは大したことないケド、海底に沈んでいた怪しい硬貨の影響か、連中メチャクチャ強靭な身体に変化してるの」

 

 

 ふむふむ、どうやら族長姉貴兄貴が第一夫人だったみたいですね。族長である夫を失い、新たな群れの指導者となる際雄に変化するのは次に力を持った雌の筈。勝手にポンポン雄になられたら群れの維持も出来ないでしょうし、今回の討伐作戦には種族の秩序を乱した落とし前をつけるという面もあるみたいです。

 

 

「それから、従えている怪物も厄介ね。どいつもこいつも通常より大きく、そして凶悪になってるわ。自らの弱点を克服した奴らもいるし、海中はもちろん海上でも油断は禁物よ!」

 

「そ、それはもしかして空を飛ぶサメがいたりとかですかっ!!」

 

 

 うわ、神官銃士ちゃんめっちゃ喰い付きが良い。キラキラした瞳の圧に冒険者たちは若干引き気味です。しかし空飛ぶサメ、王国デートの時に話題にしてましたっけ。南方には生息しているみたいですが、まさかこの北の海にいるなんてそんな……。

 

 

 

 

 

 

「アラ、良く知ってるわね! いるわよぉ……空を飛ぶだけじゃなく、口から火や雷のブレスを吐いたり、竜巻の中を集団で泳いでるやつらがそりゃもうわんさか!!」

 

 

 え、いるんですかやだー!?

 

 

「サメだけじゃあ無いわ、体表のトゲを撃ち出して来る海栗(ウニ)とか頭の先端に綺麗なチャンネーの疑似餌(ルアー)を付けた鮟鱇(あんこう)なんかも……」

 

 

「どんだけ魔境なのよこの海は……」

 

 

 水かきの付いた指を折り曲げながらウキウキと話す族長姉貴兄貴にドン引きの妖精弓手ちゃん、実に同意見ですね。一体だれがこんな混沌とした海を生み出(設定)したんでしょうか? ……ですよね蛸神さん、≪豊穣≫さん?

 

 

「流石のアタシたちも空を飛ばれちゃうと手出し出来なくてねェ。アナタたちにはそっちの対処をお願いしたいの」

 

「「は~い!!」」

 

 

 族長姉貴兄貴のお願いに元気良く応えるダブル吸血鬼ちゃん。幸い飛行可能な人員と飛び道具持ちは多いですし、残りは神官なので問題は……あ。

 

 

「ふむ、そうすると俺たちが若干浮き駒になってしまうかな」

 

「其方は指揮官だろう。俺は……まぁ幾らでも手はある」

 

 

 ちょっぴり残念そうなHFOの2人。頭領(ゴジ)は全体の指揮を執るとして、ゴブスレさんは投擲メインか≪水歩(ウォーターウォーク)≫をかけて貰っての近接ってとこですかね……っと、おや? そんな2人にダブル吸血鬼ちゃんがニコニコしながら近付いてますね。背後をとって首筋に抱き着きながら、そっと耳元に口を近付け……。

 

 

「えへへ……しんぱいごむよう!」

 

「ふたりへのしえんはちゃ~んとかんがえてるの!」

 

 

 ムフー! と自信ありげに眉を立てた笑みを浮かべてますけど、いったいどんな考えがあるんですかね? この場で話すつもりは無いみたいなので、本番に期待しましょうか!

 

 


 

 

「さぁ到着よ! あそこが落とし子の眠っていた神殿、外見がボロボロなのは戦闘の余波の影響なの」

 

「う……なんて淀んだ空気。精霊たちも苦しそうですわ……!」

 

 

 令嬢剣士さんが眉を顰めるのも無理はありません。船上の一行の前に現れたのは、ただ見ているだけでもSAN値を削りそうなほどに歪んだ光景。見る度に角度を変える外壁や直線と曲線が不条理に交わる石畳の参道、そして四方世界の生物の造形からかけ離れた醜い石像の数々です。族長姉貴兄貴の言葉通り幾つかは壊れ無残な姿を晒していますが、それらがより現実離れした空間を形作るのに貢献しているように思えます。

 

 

「――ホラ、どうせ覗いてるんでしょう? さっさと姿を見せなさい!!」

 

 

 大きな木桶(バスタブ)から船の縁まで移動し、侮蔑と怒りに満ちた声を張り上げる族長姉貴兄貴。その声に応じるかのように、船首側の海面が大きく渦巻いていきます! 同時に海底から響くような悍ましき声が、みんなの耳に飛び込んできました……!!

 

 

「……フン、相変わらず耳障りな声だ。尾鰭を巻いて逃げ出し、今度は鰭無し共に泣き付いたのか? なんと情けない……!」

 

 

 渦を突き破るように出てきたのは……粘液と鱗に覆われた大きな腕! 指1本が人間ひとりと同じくらいある巨大な腕が海面から現れました!! 内に秘めた筋肉で隆起した山脈の如き腕に続き、肩、そして頭が海面から生えていきます。

 

 どこか愛嬌のある族長姉貴兄貴とは違い、どこまでも酷薄そうな鋭い瞳に細く面長な頭部。裂けるように開いた口元には無数の鋭い牙がぞろりと並び、自らがこの海の頂点捕食者であることを無言で主張しているかのようです。甲板に立つ冒険者と入り江の民(ヴァイキング)たちを睥睨するその大きさは、見えている半身から考えても船と同等かそれ以上ありそうですね……。あまりのサイズに言葉を失っている一行を見て、さも愉快そうにその巨大鰓人(ギルマン)が言い放ちます……!

 

 

 

 

 

 

「どうした、力の差を感じ取り声を失ったか! フハハハハハ!!」

 

 

 

 ……えっと蛸神さん、あのでっかい鰓人(ギルマン)の呼び名は……あ、やっぱり秋刀魚頭(サンマーヘッド)ですか。

 

 

「すごく……大きいです……!」

 

「いや、デカ過ぎるでしょ……」

 

 

 哄笑けたたましい秋刀魚頭(サンマーヘッド)を見上げ、呆然と呟く英雄雛娘ちゃんと妖精弓手ちゃん。大きさ=強さではありませんが、巨体に備わった膂力と生命力は的の大きさを補って余りある利点です……お! 群れを率いる元彼女(モトカノ)現在彼氏(イマカレ)秋刀魚頭(サンマーヘッド)に続き一回り小さな……それでも巨大な鰓人(ギルマン)たちが船を囲むように海面に浮上してきました!!

 

 

「「「「「怖いか人間よ!! 己の非力を嘆くが良い!!」」」」」

 

 

 (彼らから見て)矮小なる存在を見下し、その魚眼に酷薄な光を浮かばせ、口々に叫び声を上げる鰓人(ギルマン)たち。歴戦の戦士たちですら気圧されるほどのプレッシャー、強大な竜が持つ『畏怖すべき存在』にも似た威圧感に晒された一行は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ぜ~んぜん?」」

 

「まぁ、そうだな」

 

「そもそも師匠たちの放つオーラのほうが怖いですし……」

 

「その巨体、人型である必要はあるのか? むしろ海中で動く邪魔になりそうだが???」

 

 

 自分より大きな脅威に立ち向かうなんてこと、冒険では日常茶飯事ですからね! 全く動じないダブル吸血鬼ちゃん達を見て浮足立ちかけていた戦士たちも平静を取りもどし、頭領(ゴジ)奥方(フースフレイヤ)の号令に従い戦闘配置に着きました!! 絶望に染まる顔を見て楽しむつもりだった秋刀魚頭(サンマーヘッド)たちもこれには大激怒、器用に鱗越しに血管を浮き上がらせてますねぇ。

 

 

「この……鱗無しどもがぁ……っ!」

 

 

 忌々し気な呟きの後、甲高い奇声を上げる秋刀魚頭(サンマーヘッド)鰓人(ギルマン)以外には耳障りな音にしか聞こえぬそれはおそらく召喚の呪文だったのでしょう、海面が波打ち、次々と恐ろしい怪物が浮かび上がってきました! 無数に生えた棘を威嚇するように打ち鳴らす住居ほどもある大きさの海栗(ウニ)に、何処からともなく現れた竜巻の中を泳ぎ回るサメの群れ、そして極めつけは……!

 

 

「ZGOOOOOOOOOK!!」

 

「あらヤダ、あの馬鹿ったら魔蟹(MSM-07)まで投入してきたわ。しかも激レアな赤いヤツ(MSM-07S)までいるじゃないの」

 

「まがに……カニさんなの?」

 

「ええ、図体に似合わない俊敏さと陸上でも活動できる適応力を持った巨大蟹よ。大きくて鋭い爪はヒトガタ(RGM-79)の分厚い皮膚を一撃でブチ抜くし、ハサミからは光線も発射するわ。ちなみに生でも火を通しても美味しいわよ」

 

「ほんとう!? ・・・・・・じゅるり」

 

 

 進化の過程で変化した巨大な単眼をぐぽ~んと光らせ、威嚇するように振り上げたハサミから謎の蟹光線(biim)を放つ蟹の群れに食欲塗れの瞳を向けるダブル吸血鬼ちゃん。獲物がいたぜと言わんばかりに飛び出そうとする2人ですが、妖精弓手ちゃんに首根っこを引っ掴まれて宙ぶらりんになってますね。

 

 

「こ~ら、2人とも欲望で動いちゃダメでしょ! ……んで、どうするの? なんだかんで言ってもサイズ差は如何ともし難いし、どいつもこいつも急所以外抜けそうになくて面倒なんだけど」

 

 

 それ急所なら抜けるってことですよね妖精弓手ちゃん。流石は一矢で飛竜(ワイバーン)を二枚抜きする技量の持ち主というところでしょうか。みんなからの視線を受けたダブル吸血鬼ちゃんが、空を飛ぶサメにも負けない牙を見せた笑みを浮かべながら作戦を話し始めました。

 

 

「まずは、おふねをまもるのをだいいちに! あながあいてもさいせいできるけど、ひっくりかえされちゃったらたいへん!!」

 

「おっきいやつらをちかづけないように、そらをとべるひとはなるべくふねからあいてをひきはなすようにしよう!!」

 

「うん、ちょっとくらいの損傷なら直ぐに修復できるから、そう簡単に沈まないと思う。任せて」

 

「仰せのままに、頭目(リーダー)!」

 

 

 ダブル吸血鬼ちゃんと令嬢剣士さんの飛行ユニット隊は巨大鰓人(ギルマン)の気を引いて船から引き剥がすことを優先するみたいですね。いくら力持ちなダブル吸血鬼ちゃんたちでも乗員全員を運ぶことは出来ないので、船が沈んでしまったら大惨事確定です。アンデッド特有の再生能力もあるのでそう簡単に幽霊船(ナグルファル)も沈まないでしょうが、油断せずにいきましょう!

 

 

「しんかんのひとは、≪せいへき(プロテクション)≫でとびどうぐをふせぎつつふしょうしゃのちりょうをおねがい!」

 

「妥当な判断だ。万一船に乗り込まれても私に任せておけ、我が主よ」

 

「わ、わかりました!」

 

「お姉様、私は援護に回らせて頂いてもよろしいでしょうか。≪聖壁(プロテクション)≫はまだ授かっておりませんが、代わりに此方がありますので」

 

「ん……わかった! でも、むりしないでね?」

 

 

 胸の谷間から神編の綱紐(SM〇ープ)を引っ張り出し妖艶に笑う闇人女医さんと、その光景をガン見しながら頷く女神官ちゃん。神官銃士ちゃんは……とうとう腰に下げたヤバい銃のお披露目みたいです! 太陽神がヤンチャしてた頃に作ったトンデモ神器の威力が明らかになりますねぇ!

 

 

「ええと、私もまだ≪聖壁(プロテクション)≫を使えないのですが……わぷっ!?」

 

「だいじょうぶ、きみはせいれいさんのちからをかりてかいめんをあるけるようにしてもらうから、おもうままにたたかってみて!」

 

「あぶなくなったらちゃんとフォローするから、ぜんりょくでいってみよう!!」

 

「……はい、頑張りますマスター!!」

 

 

 おずおずと手を挙げ、不安げな表情を浮かべる英雄雛娘ちゃんですが、ダブル吸血鬼ちゃんにハグされてほわほわ顔に、令嬢剣士さんの≪水歩(ウォーターウォーク)≫で海面を疾走出来れば彼女の機動力と火力が存分に活かせるでしょう! 早速ゴブスレさんと頭領(ゴジ)を含めた3人に呪文を掛けるために令嬢剣士さんが精霊に話しかけてますね。

 

 

「呪文による援護感謝する。……これで鎧の重さで沈む情けない最期は迎えずに済みそうだな!」

 

「ああ。あとは立ち回り次第で……ん? どうした戦友」

 

 

 おや、≪水歩(ウォーターウォーク)≫をかけてもらったHFOの2人の袖をダブル吸血鬼ちゃんが掴んでニコニコと笑ってますね。もしかしてさっき話してた追加の支援ですかね?

 

 

「えへへ……あのね、『じぶんがおっきくてつよい!』っておもってるやつのあたまをおさえるのって、すっごくそうかいだとおもわない?」

 

「ん? ああ……そうだな。油断している相手の横っ面を殴りつけるのと同等の気持ち良さはあると思うが……」

 

「だよね! じゃあふたりとも、ちょっとくすぐったいけどがまんしてね?」

 

「――待て戦友。一体何をするつもり……!?」

 

 

 発言途中で唐突に途切れる2人の言葉。僅かに露出する素肌に触れたちっちゃな2人の手から流れ込む膨大な魔力の引き起こす快感にも似た衝動に、上がりそうになる声を必死になって耐えています。

 

 吸血鬼侍ちゃんの唱えた万知神さん専用奇跡の≪教授(ティーチング)≫によって異界から探し出(サーチ)されたのは、叢雲狩人さん()少女巫術師さん()、を基盤(ベース)大量の魔力(合計5マナ)を消費して唱えられる儀式魔法(Enchantment)。呪文の対象に竜の如き(8/8)膂力(パワー)生命力(タフネス)に変化させ、相対したものを蹂躙する巨体(Trample)まで与えるという、その名も判り易い≪巨身化(Gigantiform)≫の呪文(スペル)です! おまけに吸血鬼君主ちゃんからパスを通じて供給される追加の魔力(キッカー4マナ)によって、呪文の数がプラス1回!! この効果でHFO2人を纏めて対象にとったんですね!

 

 

「身体が大きくなっても反応速度はそのままか。悪くないな」

 

「ああ、これなら普段通りに剣を振るえそうだ」

 

「んな!? ……この私を見下すとはなんたる不遜! 許し難し!!」

 

 

 下半身を海中に沈めた状態で頭の上から見下ろされたことに激怒した秋刀魚頭(サンマーヘッド)、ざばーんと全身を露わにし、2人と同じように海面に立ちましたね。呪文によって大きくなったことで、2人の頭部はおおよそ秋刀魚頭(サンマーヘッド)の腹部あたり。手乗りサイズだったことを考えれば十分に対処可能なサイズ差になったといえるでしょう! オーなんとかさんと戦った時はもっとサイズ差がありましたからねぇ……。

 

 

「あーあー、オルクボルグも張り切っちゃって……」

 

 

 やれやれと苦笑しながら矢をつがえる妖精弓手ちゃん……ん? そういえば≪巨身化(Gigantiform)≫を彼女にもかければ東方の強弓武者ばりの威力が出るんじゃ……アッハイ、巨女vs巨大鰓人(ギルマン)の絵面はB級過ぎて禁止なんですね……っと、巨大HFOを送り出したダブル吸血鬼ちゃんがまだ何か企んでますね。2人で手を揃えて掲げているのは金属の(カード)みたいです。裏面には複雑な紋様が刻まれており、表面には……蜥蜴僧侶さんの肖像画(ポートレート)? あ、まさか……!

 

 

「あの、師匠? その膨大な魔力を感じる(カード)は……?」

 

「えへへ……いままではぼくたちがしょうかんされてばっかりだけど、とうとうよぶがわになったの!」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、ぼくたちとのあいだにつながりがあるの!」

 

 

 

「たすけて、とかげさ~ん!!」

 

 

 天高く放り投げられた(カード)を中心に、爆発的に広がる眩い光。その場にいる全ての者が目を覆うほどの輝きがおさまった後、甲板にズシリと着地するのはもちろん……!

 

 

 

 

 

 

「拙・僧・参・上!!」

 

 

 黒く硬質な鱗で全身を覆い、その隙間から蒸気のように余剰魔力を放出する偉丈夫。星の力(核融合炉)の稼働率が上昇するに従い、その身体に力が満ちていくのが見て取れます! パスを通じて状況は把握しているのか、吸血鬼君主ちゃんが差し出す高純度の竜血(スタドリ)を飲み干した彼の身体がみるみるうちに大きくなり、巨大HFOを越える高さにまで到達しました!!

 

 

「こんなにも早く声が掛かるとは実に僥倖! 拙僧の相手はあちらの硬派な者たちで宜しいですかな?」

 

「うん、よろしくおねがいします!」

 

「とってもおいしいみたいだから、せんどをおとさないようにたおしてね!」

 

「ハッハッハ! それはまた難しい注文ですな!! 戦神官殿、拙僧にも呪文をお願いしても?」

 

「ええ、すぐに。……ご武運を!!」

 

 

 蜥蜴僧侶さんが船から飛び降り、吸血鬼3人が飛翔したところで次回は決戦! 巨体同士のぶつかり合うダイナミックな戦闘に期待ですね!! 

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 

 





 ゴチックメードを観に行くので失踪します。

 お気に入り登録数が1200に到達しました。たくさんの方に目を通して頂き嬉しい限りです。

 評価や感想もいつもありがとうございます。3年目に入る前にキリの良い話数まで書けたらいいなぁと思っております。更新速度が向上するかもしれませんので、お時間がありましたら是非お願いいたします。

 お読みいただきありがとうございました。

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