ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 職場環境が激変していたので初投稿です。



セッションその18-2

 

 前回、『(キング)』が華麗に登場したところから再開です。

 

 額に貼り付く前髪もそのまま、自身に満ちた笑みで言い放つ馬人の女の子(ウマ娘ちゃん)動きやすい服装(体操着&短パン)でありながらも何処か優雅な佇まい、その動きの端々からは気品が感じられます。

 

 良く鍛えられた肉体は瑞々しい生命力に溢れており、同じ自然が生み出した芸術である妖精弓手ちゃんをはじめとする森人(エルフ)たちが持つ静的な美しさとはまた違った美しさを観る者に抱かせるもの……お、彼女の声を聞いた馬人(セントール)たちが集まって来ましたね!

 

 

「やりました! おれ、黒色槍騎兵隊の入隊試験に受かりました!!」

 

「私もスカウトされました!」

 

 

 息を切らせ、汗まみれの顔で誇らしげに笑う少年少女。夢への第一歩を踏み出した子たちがいる一方、結果を出せなかった子もいるわけでして……。

 

 

「すみません、『まだお前では力不足だ』って言われちゃいました……」

 

「グスっ、スタートで出遅れちゃって……」

 

 

 堪え切れぬ悔しさで俯き、涙を流す勝利を掴めなかった子たち。勝者と敗者、どちらも集まってくるあたり彼女が如何に慕われているかが伺えますね。明暗分かれた顔ぶれを前に、『(キング)』を自称する馬人の女の子(ウマ娘)――以後は光背王(キング)ちゃんと呼びましょうか――は大きく息を吸い、そして……。

 

 

「みんな、まずはお疲れ様!」

 

 

 一息に放たれた力強い声。聴衆を引き込む威厳と少女特有の可憐さを併せ持つそれは天性の魅力(カリスマ)と言えるでしょう。皆の視線が集まったところで、彼女は言葉を紡いでいきます。

 

 

「上手く結果を残せた子はおめでとう! でもこれは終着地点(ゴール)じゃないわ。今日の勝利に慢心せず、常に自らを磨き続けなさい!!」

 

「そして、残念な結果になった子たち。負けたことは悔しいかもしれないけど、必要以上に落ち込んじゃダメよ。その悔しさを力に変えて、次に備えなさい!」 

 

 

 激励の言葉に顔を上げる夢叶わなかった馬人(セントール)たち。浮かぶ不安を一掃するように、眉を立てた笑みで光背王(キング)ちゃんが宣言するのは……。

 

 

「――大丈夫、あなたたちなら出来るわ。だって、みんながとっても頑張っているのを私はずっと見てきたもの! それとも、この『(キング)』の言葉は信じられないかしら?」

 

 

 

 

 

 

「もちろんです! ぜったい諦めたりしません!!」

 

「次の機会(チャンス)に備えて、みっちり鍛え直しますッ!」

 

「おれたちだって! 此処が出発地点(スタート)なんだ!!」

 

「夢を掴み取るまで、走り続けますッ!」

 

 

 次々に叫ばれる決意の表れに笑みを深める光背王(キング)ちゃん。皆の盛り上がりが最高潮に達したところで始まったのは……!

 

 

「さぁ、皆を信じる私はーっ!?」

 

 

光背(ヘイロー)を受け継し血統っ!」

 

「みんなが憧れる一流のウマ娘(セントール)!!」

 

「我らが『(キング)』ッ!」

 

 

「「「「キーング! キーング!! キーング!!!」」」」

 

 

 

 

 

 

「……あの子、ただの兵士にするのは勿体無くない???」

 

「お兄様とはちょっと違いますが、あれもまた『王の器』というものなのでしょうね」

 

 

 会場中に響き渡るキングコールに目を丸くする妖精弓手ちゃん。いつのまにやら馬人(セントール)だけでなく、黒色槍騎兵隊の将兵や競技(レース)関係者までコールに参加しています。ちっちゃな身体をぴょんぴょんさせながら一緒に盛り上がっているダブル吸血鬼ちゃんを微笑まし気に眺めつつ、女神官ちゃんが光背王(キング)ちゃんの類稀なる素質を見抜いていますね。

 

 

「そういえば、なんで『女王(クイーン)』じゃなくて『(キング)』なのかしら? 女の子なのに」

 

馬人(セントール)は性差による身体能力の差が殆ど無くてな。それに部族の長の呼び名は周りが適当に言い出したもので決まるようで、かつては『(キング)』以外にも『帝王(エンペラー)』や『(プリンセス)』、『若造(ボーイ)』なんてのもあったらしいぞ、上の森人(ハイエルフ)の姫よ」

 

 

 おお、隊員に馬人(セントール)が多いからか詳しいですね猪武人さん。キングコールが落ち着いたのを見計らって光背王(キング)ちゃんを大声で呼ぶと、くるくる周りを回るダブル吸血鬼ちゃんを衛星のように引き連れて戻って来ました。

 

 

「御免なさいね、待たせてしまって。落ち込んでた子たちもこれで大丈夫でしょう」

 

「みんなえがおになってたね!」

 

「おうさまはすごいね!!」

 

「ええ、そうよ! 思い悩む子たちを導いてこその『(キング)』ッ! 『(キング)』は決して諦めたりしないわ!!」

 

 

 

 

 

 

「――で、あれば。お前もまた『王』に導かれるべきだ、若き馬人(セントール)の長よ」

 

 


 

 

「――つまり、この私に冒険者の真似事をしてみろってこと?」

 

「そうだ。……ハッキリと言わせてもらうが、(俺達)ではお前を並の兵士にすることは出来ても一流には鍛えられん。それは競技(レース)に関わる者たちだってそうだろう。どちらも只人(ヒューム)、或いは馬人(セントール)に対する教えしか持ち合わせていないからな」

 

「……混ざり者(ハーフ)の私じゃ、一流にはなれないって言いたいのかしら」

 

 

 猪武人さんの言葉に長耳を後ろに絞り、無意識のうちに爪先で地面を削る光背王(キング)ちゃん。瞳に浮かぶ怒りの奥には僅かながらの諦念が見え隠れしています。自分を慕う馬人(セントール)たちに混ざって受けた試験において平均以下の結果しか残せなかったことが彼女の心中に暗い影を落としているのでしょう。そんな光背王(キング)ちゃんの様子に猪武人さんは首を横に振り、彼女の勘違いを否定します。

 

 

「いや、そうではない。お前を一流に出来ないのは俺たちの力不足が原因だ。――だからこそ、卿らに彼女を任せたいのだ。……頼む」

 

 

 鬣のような剛毛に覆われた頭を下げた先は、ダブル吸血鬼ちゃんを始めとする冒険者一党(パーティ)。ダブル吸血鬼ちゃんが周りを見渡せば、グッとガッツポーズを返してくる王妹殿下1号2号と少女剣士ちゃん。ニヤニヤと笑う鷲頭様の隣では半森人夫人さんが卑猥なハンドサインを……って、光背王(キング)ちゃん相手にそれは絶対にダメですからね!?

 

 

「さて。シルマリル、ヘルルイン。困っている女の子が目の前にいるけど……どうしたい?」

 

 

 ダブル吸血鬼ちゃんの肩に手を置き、悪戯っ子のように笑う妖精弓手ちゃん。2人の返事はもちろん……。

 

 

「わかった! ぼくたちにまかせて!!」

 

「ぜんりょくでおてつだいするね! いっしょにがんばろう!!」

 

 

 矢よりも速く飛び出し、左右から光背王(キング)ちゃんを抱きしめるダブル吸血鬼ちゃん。そりゃもう汗まみれになって頑張る女の子なんてダブル吸血鬼ちゃんの大好きなタイプですものね! 唐突なハグに目を白黒させていた光背王(キング)ちゃんも瞳に力を取り戻したみたいです。

 

 

「――ふふ、いいわ! あなたたちに『(キング)』を鍛える権利をあげるわ!! 遠慮なんかいらない、トコトン鍛えてちょうだい!」

 

 

 ダブル吸血鬼ちゃんを左右に抱え、高らかに宣言する光背王(キング)ちゃん。一頻り2人をぶん回して満足したところで、思い出したように彼女が問いかけたのは……。

 

 

「……そういえば、さっき『王』に導かれるべきだって言ってたわよね。知らなかったわ、私と陛下以外にもこの国に『(キング)』がいるなんて」

 

「そうだね~」

 

「ぼくたちもみたことないかなぁ。……みんなはあったことあるの?」

 

 

 ……え?

 

 

「えっと、お姉様?」

 

「さすがに冗談ですよね?」

 

 

 2人に視線を向けられ、頬を引き攣らせる王妹殿下1号2号。妖精弓手ちゃんと半森人夫人さんは頭を抱え、少女剣士ちゃんと鷲頭様は我慢出来ずに笑い転げています。緊迫した空気の中、隊員に背中を押された猪武人さんがみんなを代表してダブル吸血鬼ちゃんに真実を告げます……。

 

 

 

「――『不死王』を名乗る吸血鬼(ヴァンパイア)や恐るべき死霊術師(ネクロマンサー)であった『塚人覇王(ワイトキング)』を滅ぼし、王国の平和と秩序を守護する善き吸血鬼(ヴァンパイア)。『昏き太陽の子(ブラックサン)』『暗月の騎士(シャドームーン)』の呼び名とともに、2人の吸血鬼の『王』(ヴァンパイアロード)の存在は混沌の連中にとって『死』と同義なのだぞ、卿ら……」

 

「「えへへ……そうなんだー」」

 

「ふぅん、あなたたち2人が吸血鬼の王(ヴァンパイアロード)……って、えええええ!?

 

 

 またしても何も知らないダブル吸血鬼ちゃん(1X)。知らないのは2人だけなんだよなぁ……。

 

 2人のぽわぽわっぷりに一同が言葉を失うなか、光背王(キング)ちゃんの驚愕の声が会場に響くのでした……。

 

 


 

 

 あの後なんとか落ち着きを取り戻した光背王(キング)ちゃんを説得し、半森人夫人さん&鷲頭様と別れ自宅へと帰還した一行。剣の乙女ちゃんは泊まり込みで会議のため別行動、令嬢剣士さんは実家に泊まりながら暫くは栄纏神さんの神官として軍での布教活動……いや、あれはもはや軍事教練ですね……に従事するそうです。久々の休みを勝ち取った王妹殿下1号2号はダブル吸血鬼ちゃんを抱えてご満悦。しばらくは此方に留まるつもりみたいですね。

 

 ≪転移≫の鏡で酔うことも無く、牧場へとやってきた光背王(キング)ちゃん。まずはみんなに挨拶を、と自宅から外にでたところ……。

 

「あ、パパとママかえってきたー!」

 

「しらないおねえちゃんがいっしょだー!!」

 

「みたことないおみみとしっぽだー!!!」

 

「え、ちょっ、うにゃあぁぁぁぁぁぁ!?

 

 

 ……ちょうど外で遊んでいた子どもたちと鉢合わせ。ウサ耳でもエルフ耳でもない長耳を見たみんなは大興奮、我先にと彼女に群がりあっというまに芝と砂だらけになっちゃいました。慌てて割って入ろうとしたダブル吸血鬼ちゃんも子どもたちのパワーには勝てず押し倒され、一緒くたにドロドロになってますねぇ。

 

 

 

「こーら! お客様に失礼しちゃダメでしょ。ちゃんとおねえちゃんに『ごめんなさい』して?」

 

「「「「「ごめんなさーい」」」」」

 

「え、ええ! 『(キング)』は寛容だからその謝罪を受け入れてあげるわ!! でも、流石に身を浄めたいのだけど……」

 

 

 試験会場から直で来たうえにちびっこのタックルをもろに受け、泥化粧の似合う光背王(キング)ちゃんも汚れが気になるみたいですね。……おや、頬に付いた草を摘まみ上げる彼女の周囲をちびっこたちが取り囲みました。どうやら泥んこにしたお詫びに、自慢のお風呂へ案内するみたいです! 浴室へと連れて行かれる光背王(キング)ちゃんの後を着替えを持ったダブル吸血鬼ちゃんたちが追いかけていきました。

 

 

 

 

 

 

「――怪我の治療で湯に浸かることはあっても、こうやって身を浄めるために入るのは初めてね……」

 

「ふふ、気持ち良いでしょ? まぁ私も最初はビックリしたんだけどねぇ」

 

 

 例によって洗いたがりな妖精弓手ちゃんの手で全身余すところなく綺麗にされ、赤くなった顔で浴槽へと身を沈める光背王(キング)ちゃん。やり遂げた顔の2000歳児(子持ち)がその隣に腰を下ろし、ふにゃりと蕩けた顔で全身を弛緩させています。

 

 

「つーかまーえた!」

 

「えい、あわあわー!」

 

「「きゃー♪」」

 

 

 洗い場では大きな木桶に『あわあわ』を準備したダブル吸血鬼ちゃんが、子どもたちを1人ずつ捕まえて泡塗れにしています。森人(エルフ)秘伝の『あわあわ』は全身洗いに対応した優れもの、目に入っても沁みず、髪の毛やデリケートな長耳も『あわあわ』だけで大丈夫なんだとか。吸血鬼君主ちゃんに耳を丁寧に洗ってもらっている星風長女ちゃんが気持ち良さそうに鼻歌を歌っていますね。

 

 パパ大好きな叢雲次女ちゃんはパパに対して身体を用いた全身洗いを要求、吸血鬼侍ちゃんが泡だらけの叢雲次女ちゃんを抱きしめ、四肢やぺったんこな胸で全身を洗ってあげています。全身泡塗れになった子たちは少女剣士ちゃんが頭から湯をかけて『あわあわ』を落とし、浴槽の縁で待機していた王妹殿下1号2号にパスしてますね。

 

 

「えぅ……あし、つかない……」

 

「大丈夫、私と一緒に入りましょうね」

 

 

 女神官ちゃんにしがみついているのは白兎四女ちゃん。冬の間は全身を覆っていたふわもこは夏毛に変わり、とうとう毛並みが判明しました。ママである白兎猟兵ちゃんと同じで、長耳と尻尾だけが獣の相を残しています。……原作(ほんへ)では四肢の先端も毛に覆われていましたが、銃器を使いやすいように設定改変があったみたいですね。

 

 

「驚いたでしょ? こーんなに私たちの血族(かぞく)が多くって!」

 

「そうね……私たちの場合、より良い血を残すために近しい者同士で結ばれることが多いのだけど。……まさか種族の違う、それもアンデッドと子を為すなんてね」

 

 

 妖精弓手ちゃんから聞いたダブル吸血鬼ちゃん一党(パーティ)爛れた特異な繋がりに驚きを隠せない様子の光背王(キング)ちゃん。血統主義に傾倒した馬人(セントール)からすれば、異なる種族同士の婚姻は血が薄まる原因にしか見えないのかもしれません。

 

 

「でも、先代の長である私の母は只人(ヒューム)の父を(つがい)の相手として選んだ。2人とも早くに亡くなってしまったから後継ぎは私しかいないのだけど、母はどうして父を選んだのかしら……ひゃん!?」

 

 

 おっと、考え込んでいた光背王(キング)ちゃんのたわわに神官銃士ちゃんの腕から抜け出した若草三女ちゃんが衝突しちゃいました。器用に浴槽内を泳いできた三女ちゃんですが、顔の下半分をたわわに預けた状態でなにやら考えているみたいです。引き剥がして良いものか考えている光背王(キング)ちゃんの眼下でスンスンと鼻を鳴らしていましたが、やがて確信を得たのかたわわの持ち主と視線を合わせました。

 

 

「おねえちゃん、パパと、それからあっちのおねえちゃんとおんなじ、おひさまのにおいがする。……このにおい、すき♪」

 

 

 たわわに顔を埋めながら三女ちゃんが示したのは、吸血鬼君主ちゃんと神官銃士ちゃん。……つまり、光背王(キング)ちゃんも太陽神さんの信徒ということなんでしょうか? 彼女の言葉で何かに気付いた光背王(キング)ちゃんが手を伸ばしたのは、自身の右耳飾り。丁寧に外されたそれは表面の擦り切れた小さな金色のメダルです。サイズこそ異なるものの、それは吸血鬼君主ちゃんや太陽戦士さんが持つ聖印(シンボル)とよく似ていますね。

 

 

「これは、父の形見なの。王都の冒険者ギルドに問い合わせても判らないほど等級が低かったらしい父の、唯一の手掛かりなのよ」

 

 

 ふーむ、猪武人さんは『父親は冒険者』って言ってましたけど、そんなに有名な人じゃなかったんですかね? どうやら冒険者登録票が無いうえに名前も平凡だったため、該当する人物が多過ぎて特定出来なかったみたいです。

 

 

「私が物心ついた時、母は既に亡くなっていたわ。父も私が産まれる前に……。生前母は友人に『混沌の軍勢との戦いの最中、危ういところを助けてもらったのがあの人との出逢いなの』って話してたみたいだけど、本当は……私は、愛する2人の間に産まれた生命じゃなかったのかもって……」

 

 

 聖印を胸に掻き抱きながら滔々と語る光背王(キング)ちゃん。試験会場で見た王気(オーラ)満ちた姿とは異なる、自らの出生に悩む1人の少女の姿が其処にはありました……。

 

 

 

 

 

 

「――よし! じゃあ探してみましょ、あなたのお父さんを知る人を!!」

 

「……え?」

 

 

 勢いよく湯から立ち上がり、宝石のような肢体を惜しげも無く晒しながら言い放つ妖精弓手ちゃん。色々見えちゃいけないところまで見せちゃってる彼女から目を逸らしながら、光背王(キング)ちゃんは力無く首を横に振ります。

 

 

「そんな、軍や冒険者ギルドでも判らなかったのよ。それに父が冒険者だったのは20年近く前の話、それを知っている人なんて……」

 

 

 出来る限りの手は既に打ったのでしょう。否定の言葉を紡ぐ彼女。しかしそれをよしとしない者こそが……。

 

 

 

 

 

 

「――おもいなやむこをみちびいてこそのキングッ!」

 

「キングはけっしてあきらめたりしない!!」

 

 

 

「「……それとも、このキングのことばはしんじられない?」」

 

「あ、あなたたち……っ」

 

 

 ――そう、『(キング)』と呼ばれるのですから!

 

 


 

 

「――というワケで、この子のお父さんのこと、お父さんを知っている人をみんなで探しまーす!」

 

「はぁ……また勝手にそんなコト決めて……」

 

 

 お風呂から上がり、泊りの人以外が揃ったおゆはんの席でそうのたまう妖精弓手ちゃんに対し、呆れた様子で額に手を当てる女魔法使いちゃん。……口ではそう言ってますが、その口の端が緩んでいるのがバレバレですねぇ。

 

 

「でもさ、ギルドに記録が残ってないんじゃ探すの難しくない?」

 

「冒険者の活動期間は然程長くはない、それが只人(ヒューム)なら猶更のことだ。数年なら兎も角、20年近く前となると既に引退している者が多いのではないか?」

 

 

 妖精弓手ちゃんが感情で突っ走っていると判断し、冷静に指摘する妖術師さんと闇人女医さん。2人の指摘はもっともです。短期間で驚くほどの成長を遂げる反面、能力の低下が早いのも只人(ヒューム)の特徴。とくに入れ替わりの激しい低等級ともなれば昨日見た顔が居なくなっていることも珍しくありません。ですが2人の冷静な意見を聞いてなお、妖精弓手ちゃんの自信ありげな表情を保ったままです。

 

 

「そうね、『記録』は当てにならないと思う。だから、本命は『記憶』よ」

 

「『記憶』……当時を知る冒険者を探すということでしょうか?」

 

「うん。冒険者もそうだけど、それ以外にも繋がりは残ってると思うの。そうね……例えば、私たちみたいな長命種(エルダー)だったり、おなじ太陽神の信仰だったりとか」

 

 

 なるほど! 冒険として記録されていなくても、何らかの活躍をしていればそれは誰かの記憶に残っているかもしれません。神話の時代から世界を見続けてきた上の森人(ハイエルフ)らしい発想ですね!!

 

 

「となると、話を聞く相手はまずベテランの冒険者、それに各種族の名士たちでしょうか……」

 

「太陽神の信徒ということでしたら、神殿長様も何かご存知かもしれませんわ!」

 

「あとは……あ! 旦那さまのお友達の太陽万歳な方とかもどうでしょうか!!」

 

「白金等級の皆さんも何かご存知かもしれませんね!」

 

 

 次々に出てくる調査対象の数に目を丸くする光背王(キング)ちゃん。部族の中、あるいは軍部だけでは知ることの無かった世界に驚きを隠せていない様子です。浮かんできた涙を慌てて袖口で拭い、赤くなった瞳で一行を見回し深々と頭を下げました。

 

 

「みなさん……ありがとう……っ!!」

 

「いいのいいの! 私たちが好きでやるんだもの、だから頭を上げてちょうだい?」

 

 

 明るく笑う妖精弓手ちゃんに促がされても、なかなか頭を上げようとしない光背王(キング)ちゃん。そんな彼女に近付く小さな影が……。

 

 

「む~……おうさまらしくない!」

 

「もっとカッコよく、しけんかいじょうのときみたいなのがいい!!」

 

「……ふふ! ええ、そうね。それじゃあ私らしく……!」

 

 

 左右にダブル吸血鬼ちゃんをぶら下げ、大きく胸を張る光背王(キング)ちゃん。そして高らかに言い放つのはもちろん……!

 

 

「――いいわ、あなたたちにこの『(キング)』を支える権利をあげる!!」

 

 

 

 

 

 

「え、なにあの可愛い生命体? 滅茶苦茶に撫でくり回したいんだけど???」

 

「すごいですよね、みんなに慕われるのが良く判ります」

 

「あぁ、我が主に気に入られる理由が魂で理解出来たよ……!」

 

 

 ……うん、一党(パーティ)からの反応は上々ですね!(白目) どうやら光背王(キング)ちゃんのカリスマ()によってみんなメロメロになっちゃったみたいです。ダブル吸血鬼ちゃんのが始めたコールを子どもたちが真似して、自宅はキングを称える声でいっぱいになっています。

 

 

「それじゃあ、明日からみんなで手分けして……」

 

「いや、それは許可出来ない」

 

 

 ……おっと、妖精弓手ちゃんの音頭に割り込むように手を挙げたのは闇人女医さんですね。膨らんだおなかをニットワンピースに包み、その上から白衣を着たセクシーな服装です。ヒラヒラと動かしている片手にはおゆはん前に光背王(キング)ちゃんを診察したときのカルテを持っています。カルテを皆に見えるように机に並べ、診断内容を示しながら彼女の口から出たのは……。

 

 

 

 

 

 

「無茶な訓練(トレーニング)と休息不足で貴様の身体はボロボロだ。最低でも一ヶ月は訓練(トレーニング)を禁止させてもらう。もしそれが嫌だというのなら……」

 

 

 ちょいちょいと光背王(キング)ちゃんを手招きし、近寄ってきた彼女の耳元で何事か囁く闇人女医さん。その言葉を聞いた光背王(キング)ちゃんの顔がみるみるうちに真っ赤になっていきます。

 

 

「さぁどうする? 休息期間をちゃんと守るか、それとも()()()()()()()()()……」

 

 

「わわわわ判ったわ! ちゃんと休む!! それにそういうのはホラ、愛し合う者同士でするものでしょう!?」

 

 

 あっ(察し)。蕃茄(トマト)の如く真っ赤な顔で休むことを誓う光背王(キング)ちゃんの後ろでは、太陽神さんと万知神さんさんからの託宣(メッセージ)を受け取ったダブル吸血鬼ちゃんが安堵の表情を浮かべています。

 

 ……GL(ガイドライン)神さんの設けた禁止事項に抵触してしまったら最後、物語(キャンペーン)はひっそり幕を閉じることになってしまいますので……。

 

 

 闇人女医さんとの話し合いの結果、まず一ヶ月間はしっかりとご飯を食べ、よく眠り、子どもたちと遊ぶことに。その後は畑仕事などと並行して軽い負荷から開始するそうです。

 

 

「まぁ気長にいきましょ? 私の探してる相手もいつ現れるか判らないし、みんなそれぞれ依頼や教官の仕事もあるし」

 

「まずはリフレッシュしてから!」

 

「みんなのつくるごはんはおいしいから、ふとりすぎちゅういだよ!」

 

「まさか! この『(キング)』に限ってそんなコトありえないわ!!」

 

 

 

 

 

 

 ――半月後、借りていた部屋着からお腹がはみ出したため、闇人女医さんに土下座して訓練(トレーニング)開始を前倒ししてもらった『(キング)』の姿があったそうな……。

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 

 





 今後の働き方について考えるので失踪します。


 評価や感想、お気に入り登録ありがとうございます。モチベーションの低下が酷く更新に時間がかかってしまいました。やる気アップに繋がりますので、感想や評価を是非お願いいたします。


 お読みいただきありがとうございました。
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