ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 大変お待たせいたしました。転職活動で忙しかったので初投稿です。


セッションその18-3

 

 前回、光背王(キング)ちゃんがBS:太り気味になっちゃったところから再開です。

 

 時計の針がちょっとだけ進み、緑色濃くなった西方辺境。牧場も青々とした牧草に覆われ、畑に植えられた作物はグングン成長しています。日ごとに背を伸ばす彼らに追い付かんと、子どもたちもどんどん大きくなってますね!

 

 

「それじゃあ、あされんをはじめま~す!」

 

「じゅんびうんどうはしっかりとね~!!」

 

 

 太陽神さんが『もう辛抱たまらん!』と顔を出し始めた頃、牧場に響き渡るダブル吸血鬼ちゃんの声。夜明け前の澄んだ空気の中、お揃いの運動着に身を包んだ集団が協力してストレッチをしていますね。

 

 

「ふわぁ……昨晩もご主人様が激しかったから、まだ眠いんだけどねぇ……」

 

「ナニ言ってんの。一晩中あの子を貪ってたのは自分でしょうが、馬鹿義姉(ばかあね)

 

 

 半分寝ているような顔つきで地面に座り、上体前屈をしている叢雲狩人さん。その背を押している女魔法使いちゃんが呆れたようにツッコミを入れてます。上体がペタリと地面に付くほどの柔軟さとその背に押し付けられたゆんと形を歪めるたわわを見せつけられ、体操服&ブルマ姿の王妹殿下1号2号が崩れ落ちていますね。

 

 

「うう……また昨日もお預け……ッ!」

 

「こんなの、生殺しですのよーッ!!」

 

「「「わーい、かけっこだー!!」」」

 

 

 ……どうやら連日の交渉の結果『ほっぺすりすり』や『ちゅー』『あむあむ』までは達成できたものの、本番までには至らず2人とも欲求不満みたいですね。悶々とした感情を発散させるように駆け出すその背中を、ちょうちんブルマ姿の眩しい白兎猟兵ちゃんの妹たちが楽しそうに追いかけています。

 

 

「ったく、朝から元気なこって。――姫サンもいい加減慣れてきたみてぇだな?」

 

「そうね。最初は驚いたけど……より良き血を繋ぐために複数の相手と(つが)うのは、私たち馬人(セントール)も同じだもの」

 

「……マジか」

 

「でもそれももう限界。近親での交配が進み過ぎて、怪我や病気に罹りやすい子が増えてきているの。――濃くなり過ぎた血を薄め、新たな活力を得る。お母様が只人(ヒューム)のお父様と(つが)ったのにはそういう意図もあったんだと思うわ」

 

 

 兎人(ササカ)のおちびさんたちに追い付かれもみくちゃにされている王妹殿下1号2号を眺めながら呟くのは、色違いの青い運動着(ジャージ)に身を包んだ槍ニキですね。念入りに柔軟運動を行う光背王(キング)ちゃんに軽口を向け、返ってきた馬人(セントール)の夜戦状況にちょっと引いているみたいです。

 

 彼女の言う通り、馬人(セントール)の社会は血統を重視し優秀な者同士での交配が進むあまり、無数にあった氏族はいまや片手で数えられる程度。遠くない将来血の行き詰まりが発生するのは避けて通れなくなっています。遠い地方から別の氏族を招き、血を交換するなど対策を講じてはいるようですが、環境が変わり体調を崩したり、なかなか子を授かれないなど上手くいっていない様子。

 

 

「なるほど、そこで、『豊穣の秘薬』の、出番なわけ、ですね~」

 

「そっか! 種族はそのまま、相手の特徴……新たな因子を、継承出来る!!」

 

「女の子、しか、産まれないのは、まぁ、仕方ないです、けどね~」

 

 

 2人の傍で納得がいったように頷いているのは、背中合わせになって担ぎ合いをしていた圃人(レーア)コンビですね。少女剣士ちゃんが上になるたび、ちっちゃな体格でありながらしっかりと存在を主張するお山が体操服を押し上げています。それを目撃した光背王(キング)ちゃんが真っ赤になって目を逸らした先は2人の足元ですね。

 

 

「やっぱり、走るのに適した脚をしているのよね、2人とも……」

 

「うん、まあね。靴を履かずに素足で駆け回るのが圃人(レーア)だから」

 

「すっごいカチコチなので、頭目(リーダー)さんみたいなプニプニが羨ましいんですけどね~」

 

 

 羨望交じりの言葉を受け、面映ゆそうな顔で足裏が見えるようにポーズを取る圃人(レーア)コンビ。圃人剣士ちゃんは見事なI字バランスですし、圃人巫術師さんも軽々とY字バランスを決めてます。頑強さと柔軟性を併せ持つナイスな圃人(レーア)ボディですね!

 

 王都の試験会場で見た通り、只人(ヒューム)馬人(セントール)のハーフである光背王(キング)ちゃんの脚は只人(ヒューム)のそれ。ウマ耳と尻尾以外は只人(ヒューム)との外見的差異は殆どありません。だからこそ軍では彼女の才能を磨くことが出来ないと判断され、ダブル吸血鬼ちゃんたちに託されたわけです。俯いて自らの足元を見つめる光背王(キング)ちゃん。前髪で隠れ表情の見えない彼女に、槍ニキが挑発的に声を掛けます。

 

 

「……だが、そこで諦めるのは性に合わない。だろう?」

 

「――そうよ、私は『(キング)』! 躓き転び、泥に塗れても、決して頭を下げたりなんかしないわ。この身に流れる血が一流であることを証明するために!!」

 

 

 勢いよく上げた顔には眉を立てた笑み。実績も、何の根拠が無くても、その内に抱く誇りと放たれる『王気(オーラ)』は人を惹き付けるカリスマに満ちています。……お、光背王(キング)ちゃんの獅子吼を耳にして散らばっていたみんなが集まって来ましたね! 放牧地に目印となる旗を立ててまわっていた女魔法使いちゃんがスタート地点の印となる白色のロープを地面に置き、本日のメインイベントの参加者を整列させました。

 

 

「みんな準備は良いみたいね。それじゃ、王様のその言葉が嘘でないところ、しっかりと見せてもらいましょうか」

 

 

 

 

 

「それではみなさん、いちについて~……!」

 

「よ~い……!!」

 

「「「どん!!!」」」

 

 

 王妹殿下1号2号、そして白兎猟兵ちゃんの妹たちの合図で一斉に駆け出す走者たち。放牧地を利用した即席のレース場は長さ約1マイル(1600m)、目印として点々と置かれた旗の外側をU字型に走る大型トラック半周に似た設定ですね。

 

 

「ハッハァー! 【辺境最強】の名は伊達じゃねぇところを見せてやるよ!!」

 

 

 見事なスタートダッシュを決めたのは槍ニキ。長い脚を発条(バネ)のようにしならせ、ストライドの広い走りでグングンと加速していきます。ひとたびバランスを崩せば顔面から転倒してしまいそうな前傾姿勢を維持出来るのは鍛え上げた肉体の賜物でしょう!

 

 

森人(エルフ)が機敏に動けるのは樹上や自然の中だけじゃあない。地上だってなかなかのものだよ?」

 

 

 その背後にピッタリと追従するのは叢雲狩人さん。槍ニキと同じ脚幅の広い走りですが、彼が蹴り脚を主にしているのに対し、踏み込んだ爪先をフックに全身を前に引っ張る走り。まるで猫科の肉食獣が獲物を追いかける時のような走り方です。あえて先頭(ハナ)を譲り背後から槍ニキに圧を掛けているのも実に狩人らしいですね!

 

 

「今回のコースは約1マイル(1600m)、今までで最も距離が長いコースです。道中のコーナーは高低差も大きく、持久力(スタミナ)はもちろん、位置取りがカギとなります」

 

「どうしたのよ急に」

 

「前走で1着だった【辺境最強】様ですが、その際のコースは0.5マイル(800m)の直線。彼の走法を見る限り、コーナーは苦手としている可能性が高いですわね。おそらくそれは追従する彼女も同様と思われますわ……」

 

「貴女までどうしたのよ???」

 

 

 唐突に解説面に目覚めた王妹殿下1号2号に対し、左右からダブル吸血鬼ちゃんにハグされた状態でツッコミをいれる女魔法使いちゃん。困惑した視線をレースに向ければ、先行する槍ニキと叢雲狩人さんがちょうどカーブに差し掛かったところです。速度を維持したままコーナーに突入する2人ですが、女神官ちゃんと神官銃士ちゃんの言葉通り遠心力に引かれて位置取りが外へと膨らんでいきます。そして、隙間の生まれた内側に切り込んで来る小さな影が!

 

 

「どうりゃぁぁぁぁぁ!!」

 

「そう、体格で劣る以上相手の土俵で戦う必要はありません。圃人(レーア)の持ち味を生かすのです!」

 

 

 水分補給のお茶を用意しつつレースを見守っていた圃人巫術師さんの声に応えるが如く、目印となる旗を掠めるほどに内側ギリギリを疾走する圃人剣士ちゃん、小さく歩幅を刻み、細かく方向を修正しながら最短距離を駆けて行きます! コーナーの終わりに差し掛かった時点で先頭は彼女に移り、抜かれた槍ニキと叢雲狩人さんの瞳に驚きと喜びの色が浮かんでいますね。

 

 

「――さて、この時点でまだ最下位。ここから抜き返せるかしらね」

 

 

 呟く女魔法使いちゃんの視線の先には、ようやくコーナーの中程を過ぎたあたりを走る光背王(キング)ちゃんの姿。先頭の圃人剣士ちゃんとは10バ身(25m)以上離れていますが、その顔に焦りの色は見えません。女魔法使いちゃんの言葉を耳にしたダブル吸血鬼ちゃんがたわわに預けていた顔を上げ、確信に満ちた表情で答えました……。

 

 

「だいじょうぶ! もんだいなし!!」

 

「いまのおうさまなら、()()()()()()()()()()()!!」

 

「「「おうさまー! がんばえー!!」」」

 

 


 

 

馬人(セントール)の力を只人(ヒューム)の脚では受け止められず、身体が無意識に制限を掛けている。自分が思うほど速度が出せないのはそれが理由だろう」

 

「そんな……ッ」

 

 

 ある日の訓練(トレーニング)終了後に行われた診断の際、闇人女医さんに言い渡された言葉に愕然とする光背王(キング)ちゃん。無理に全力を出せば容易く砕け散ってしまう自らの身体の真実を知り、その眦に涙が浮かんでいます。いっしょに診断結果を聞いていた一行にも不安の色が見えますね……。

 

 

「既に骨格は完成している以上、無暗に筋肉だけ増やしても負担が増えるだけだ。むしろ脚を痛める原因となる可能性が高い」

 

 

 淡々と告げられる言葉に耳を絞り、落ち着きなく尻尾を揺らす光背王(キング)ちゃん。ですが、一度ギュッと瞑った後に開かれた瞳には、既に断固たる決意が満ちていました。

 

 

「……たとえそうだとしても、それが歩みを止める理由にはならない。無理のひとつやふたつ乗り越えられずして、なにが『(キング)』よ!」

 

「そうだ、その言葉が聞きたかった! 苦難の道を進む貴様に渡すものがある。――鍛冶師殿」

 

「応よ!」

 

 

 闇人女医さんの呼びかけに応え一行の中から進み出たのは、黒光りする巌のような体躯に自信に満ちた表情を浮かべた隻眼の鉱人(ドワーフ)。訓練場に卸す武具を生産する傍らでダブル吸血鬼ちゃん一党(パーティ)の装備の開発、整備、牧場の蒸留施設を運営している隻眼鍛冶師さんです! その手には光背王(キング)ちゃんの使っている競技用の靴と、片手で持てるくらいの木箱が抱えられていますね。

 

 

「お前さんの靴、見させてもらったぜ。……これまで何足も履き潰してきてんだろ?」

 

「え、えぇ。様々な素材のものを何種類も試してみたけど、肌に合わず怪我をしたり、逆にすぐにダメにしてしまったり。やっぱりわたしの走り方が悪いのかしら……」

 

「いや、そうじゃねぇ。()()()()()()()()()()()()()()。お前さんの脚は特別製だ。店売りのモンはもとより、専門の業者に頼んでも変わらんだろうよ」

 

 

 隻眼鍛冶師さんの言葉に目を丸くする光背王(キング)ちゃん。どうやら馬人(セントール)向けに頑丈に拵えたものでは肌が負けてしまい、只人(ヒューム)用では耐久力が足りなかったみたいです。訓練(トレーニング)もそうですが、ハーフである彼女に適したものが必要だったんですね。呆然とする光背王(キング)ちゃんにニヤリと歯を剥く笑みを見せ、隻眼鍛冶師さんが手に持つ木箱を押し付けます。促されるままに光背王(キング)ちゃんが開けたその中身は……。

 

 

「うそ、これって……!?」

 

 

 艶めかしい光沢を放つ黒革のレッグ。靴紐(シューレース)は金糸を編み込んだように煌びやかで、鳩目もどこかで見たことのある気がする金属製。そして、一際目を惹くのは蹄鉄を模した造りの靴底(アウトソール)。艶の無い黒地に赤い紋様が描かれたそれは、ゴブスレさんの鎧につかわれているのと同じ素材です。つまり……!

 

 

吸血鬼(ヴァンパイア)由来の素材に稀少な真銀(ミスリル)を贅沢に使用した、世界に一足しかないお前さん専用の競技靴だ!」

 

「な、なな……」

 

 

 

 

 

「なんてものをつくってるのよーーーーー!?!?」

 

 


 

 

吸血鬼(ヴァンパイア)の皮膜を幾重にも重ねた素材は強くしなやかで、繊細な脚を保護しつつ通気性も抜群。力が掛かる部分を真銀(ミスリル)で補強し、2人の髪の毛をより合わせて作った靴紐は呆れるほど頑丈で走ってる間に切れる心配も無し」

 

「最も強度が要求される靴底には自動修復機能を持つ合金を使用。それ以外の箇所も真銀(ミスリル)製ですので、摩擦や衝撃に対しての備えもバッチリですわ!」

 

「それでいて魔法的な効果は持っていないので、競争規約(レギュレーション)には抵触していないのがズルいですよね。……上等な魔法の武具以上のコストがかかっていますけど」

 

「そのあたりはちゃんとかんがえてるからだいじょうぶ!」

 

「レースのきやくは『やっちゃダメ』なことがかいてあるの。だから『ダメってかいてないものはぜんぶおっけー!!』」

 

 

 女魔法使いちゃんのたわわを堪能した後、王妹殿下1号2号に肩車してもらいながらドヤ顔でのたまるダブル吸血鬼ちゃん。すべすべの太股で両頬を挟まれ、太陽と月の香りが直撃している姉妹の顔が大変なことになってますねぇ。

 

 あ、そうだ(唐突)。吸血鬼侍ちゃんの発言、万知神さんの信徒らしいアレな言い分と思われるかもしれませんが、これ結構重要なんです。

 

 所謂『ポジティブリストとネガティブリスト』の違いってヤツで、競争規約(レギュレーション)には『競争(レース)では【魔法効果を持つ装具を】【使用してはならない】』とは書いてありますが『競争(レース)では【特別な効果を持たない装具を】【使用すること】』とは何処にも書いてありません。つまり素材由来の効果や非魔法的な機能は問題ないわけでして。複数の素材を使用したり、特殊な加工で耐久力や使い心地を改良するのが職人さんたちの腕の見せ所さんというわけです。

 

 ……それを『競争(レース)では【特別な効果を持たない装具を】【使用すること】』だと勘違いする人が意外と多く、高額な素材、装具を使用することに対し根拠の無い批判を浴びせたり『公平ではない』などと言い出す者が出てくるという。……何処かで聞いたことがある気がしますねぇ?

 

 

 ――おおっと、話が横道に逸れてしまいましたね! 競争(レース)は最終局面、コーナーで稼いだマージンを食い潰しながら先頭を行く圃人少女ちゃんを槍ニキと叢雲狩人さんが捕捉しかけています。直線に入り猛然と加速する2人の圧を感じながらも振り返ることなく走っていますが、徐々にその差は縮まっていくばかり……。

 

 

 

 ミシィ……

 

 

「「「――!?」」」

 

 

 

 

 

 ――ドゴォッ!!

 

 

 

 突如背後から響いた炸裂音に息を乱す3人の走者。連続する≪火球(ファイアボール)≫の着弾にも似たソレは瞬く間に接近し……!

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 汗と土埃、そして撒き上がった草を化粧とし、ただゴールだけを見て駆ける光背王(キング)ちゃんが、地面を抉るほどの豪脚を魅せ、瞬く間に3人を抜き去っていきました!!

 

 

 

 

 

「「「すごーい! おうさまがいっちゃくだー!!」」」

 

「はぁ、はぁ……ちょ、ちょっと? 今は酷い有様だからくっついちゃダメよー!?」

 

「そんなことないよ? ぎゅー!」

 

「いまのすがたがいっちばんきれい!! ぎゅー!」

 

 

 大差でゴールに飛び込んで来た光背王(キング)ちゃんに群がるふわふわおちびさん&ダブル吸血鬼ちゃん。息が整う前の攻勢に為す術も無く押し倒され、ふわもこ塗れになっちゃってますね。彼女から遅れて他の3人も走り切りました。最後の伸びで槍ニキが2着、僅かの差で圃人剣士ちゃんが3着。驚きで呼吸が乱れた叢雲狩人さんが4着というレース結果でした。

 

 

「いや、速ぇなオイ! それが負荷を気にせずに出せる本気の走りってワケか!!」

 

「抜かれる時、間違いなく地面が揺れてましたよ……!」

 

「うーむ、これは完敗だねぇ……!」

 

 

 纏めて撫で切られた3人の顔に悔しさの色は無く、本来の走りを見せた彼女への驚嘆と祝福に満ちています。女魔法使いちゃんの差し出す手を取り立ち上がった光背王(キング)ちゃんが、いまだに実感が湧かないのかキョロキョロとみんなを見回してますね。

 

 

「えっと、私……勝ったの?」

 

「ええ、貴女が1着よ」

 

「素晴らしい走りでした!」

 

「まさに【王の誇り(Pride of KING)】って感じでしたわ!」

 

「――――ッ!!」

 

 

 女魔法使いちゃん、そして王妹殿下1号2号の祝福の言葉と表情を見て、ようやくこれが夢ではないと感じたのでしょう。フルフルと全身を震わせ、声も無く両腕を天に突き上げる姿にみんなが笑顔で拍手を送っています。うんうん、まさに一流の走りでしたね!

 

 

「さて、喜ぶのはそれくらいにして疲労抜きに軽く流してきなさい。そしたら改めて靴の調整を……」

 

 

 お? 闇人女医さん製作の訓練メニューを見ていた女魔法使いちゃんが空を見上げてますね。すっかり顔を出した太陽神さんの照らす空、辺境の街方面から向かってくるのは2組4人分の人影です。1組は触手を編み込んだような翼を展開している妖術師さんと、彼女に抱えられている妖精弓手ちゃん。その後ろから飛んできている硬質な翼の令嬢剣士さんが抱えているのは1人の男性です。まだ地面まで30フィート(9m)ほどある高さで妖術師さんの腕の中から抜け出した妖精弓手ちゃんが華麗に着地、駆け寄ってきたダブル吸血鬼ちゃんを抱きとめながら涼やかに口を開きます。

 

 

「や~~~っと捕まえたわよ、貴女のお父さんを知ってそうなヤツ!」

 

「今日までほぼ一ヶ月、普段は毎日ギルドに入り浸っているクセに、用がある時に限って捕まらないぃ……」

 

 

 うんざりといった様子の妖術師さん、まぁ無理もありません。彼が顔を出すまで交代で夜通しギルドに通い、()が現れるのを待っていたんですから。ゆっくりと降下してきた令嬢剣士さんの胸元から抜け、一行に一礼するのは洒脱な身なりの男性。背中に背負った相棒の琴と若くも老いても見える不思議な相貌、そして……。

 

 

 

 

 

「いやぁ、どうもお待たせしてしまったようで申し訳ない。皆さんのご活躍は聴衆の方々にとても好評、私も随分稼がせて頂いておりますよ」

 

 

 聴く者の耳を孕ませるとまで言われている落ち着きのある魅惑の低音! 視聴神の皆様はもうお判りですね。妖精弓手ちゃんや鉱人道士さん、蜥蜴僧侶さんたちがゴブスレさんと出会う切っ掛けとなった歌を歌っていたあの人、吟遊詩人(CV:速水奨)さんです!!

 

 


 

 

 整理運動と後片付けの後、他のみんなが起床したところであさごはんタイムな一行。良いお天気なので庭に敷物を敷き、牧場夫妻や新進夫婦家族も一緒ですね! お野菜たっぷりのスープに焼き立ての麺麭、身体作り中の光背王(キング)ちゃんと英雄雛娘ちゃんには産みたてのものを使った茹で卵が添えられています。仕事上がりの一杯をキャンセルして連れて来られた吟遊詩人さんも相伴に預かっている様子、ちゃっかりしてるなぁ……。

 

「なるほど、それで私を探していらしたわけですか……」

 

「うん。ギルドでもさがしようがなくて、ほかにしってるひともいなかったの」

 

「たいようしんでんでもきこうとおもったんだけど、ずっとおでかけちゅう……」

 

 

 ダブル吸血鬼ちゃんの言葉にふむふむと頷く吟遊詩人さん。どうやら妖精弓手ちゃんってば碌に事情も話さず引っ張ってきたみたいで、何故自分を探していたのかの説明もされてなかったみたいです。そして他の手掛かりとなりそうだった蟲人英雄さんとは連絡が取れず、調査は行き詰っていたっぽいですね。

 

 

「話は理解しました。記録に残らずとも記憶に残る冒険者、幾つか思い当たる節があります」

 

「ほんとぉ~? あの時のオルクボルグの歌も実際とはけっこう違ってたんだけど???」

 

 

 若干の胡散臭さを感じる笑みに対し、ジト目を向ける妖精弓手ちゃん。ま、まぁアレはアレでけっこう好評ですし。「物語性を重視すべく、若干の脚色はありましたねぇハッハッハ!」と言ってのける吟遊詩人さんも大概にタフだと思います……お、じゃあ早速と言いかけた妖精弓手ちゃんを吟遊詩人さんが制しましたね。

 

 

「お話しするのはやぶさかではありませんが、私もコレ()を生業とする身。つまり何が言いたいのかと申しますと……」

 

「あーはいはい、報酬を払えってコトね」

 

 

 うーんこの吟遊詩人。ニッコリと笑いながら両手を突き出す仕草は愛嬌があり、同時に絶妙なイラっとさを感じさせます。青筋を浮かべる妖精弓手ちゃんに両側から頬擦りしつつ、ダブル吸血鬼ちゃんがくりっと可愛らしく首を傾げています。

 

 

「えっと、ほうしゅうじゃたぶんおかねじゃないよね?」

 

「となると、ここはやっぱり……」

 

「はい。皆様の冒険について、生の声を聞かせて頂けますかな? 砂漠の国ので大立ち回りまで(シーズン2)の話は巷で大好評! ぜひともその続きを題材に歌を生み出したいのです」

 

 

 おお、これはなんとも吟遊詩人さんらしい報酬ですね。それじゃあ前払いねという言葉とともに、ダブル吸血鬼ちゃんが語り出したのは冒険の思い出の数々。冒険から離れていた新進夫婦や、日常に暮らす牛飼若奥さん、そして子どもたちが2人の冒険譚を夢中になって聞いています。

 

 

「そっか、2人にはそんな過去があったんだね……」

 

「きっと2人のママも、遠いところで親友と仲良くしてるわよ!」

 

「「ふわぁ、ふかふか……」」

 

 

 特に圃人侍女(おかあ)さんと伯爵夫人の深い絆には奥様2人も感じ入るものがあったようで、ダブル吸血鬼ちゃんを抱きしめそのたわわでトロトロに甘やかしちゃってますね。

 

 

「素晴らしい! 愛憎複雑に絡み合う物語、堪能させていただきました。良いでしょう、私の知る全てをお話しします!!」

 

 

 なんやかんやと3組のヒトウサカップルや牧場夫婦のお義父さんと只人寮母さんの新婚カップルまで集まってきた冒険譚はランチタイムを挟んで半日続き、吟遊詩人さんもその内容には大満足なご様子。おゆはんを済ませた後、星明りの元で彼の知る『記録に残らない冒険者』の話をしてくれることになりました! 果たして吟遊詩人さんの知る人物は本当に光背王(キング)ちゃんのお父さんなのでしょうか? 次回、乞うご期待!!

 

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 

 





 引っ越しの準備をするので失踪します。


 投稿まで随分と間が空いてしまいました。モチベが下がったわけではないのですが、仕事関係で色々と時間を取られなかなか筆が進まずこの体たらく。悲しいなぁ……。

 また次話の投稿まで暫く時間が掛かるかもしれませんが、続きは気長にお待ちいただければ幸いです。


 お読みいただきありがとうございました。
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