ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 大変お待たせいたしました。

 夜勤に慣れなかったりルビコンに出掛けていたりゴブスレ2期が放送されたりしたので初投稿です。



セッションその18-5

 

 前回、恐るべき魔神の存在が明らかになったところから再開です。

 

 太陽神官3人がダブル吸血鬼ちゃん一党(パーティ)を訪れた日から半月ほど。夜明けを前に牧場では慌しく人が動き回っています。

 

 太陽戦士さんたちが掴んだ魔神……『常闇ノ皇』ですが、どうやら四方世界に侵入するためには適切な星辰の位置が必要らしく、その顕現に合わせて大規模な日蝕が発生する可能性が高いとのこと。

 

 ある程度予測可能な盤外(こちら)のものとは違い、大規模な魔術儀式や神々の降臨で引き起こされるソレは混沌の勢力にとって逆撃に打って出る絶好の機会。王国を筆頭とする秩序勢力の軍は大規模な侵攻に備えなければならないそうです。

 

 また、後方攪乱を目的にゴブリンが放たれる可能性が高く、西方辺境で鍛え上げられたゴブリン狩りに特化した冒険者の投入も行われるんだとか。ダブル吸血鬼ちゃん一党(パーティ)や辺境三勇士は彼らを統率し、軍では手の回らない部分を補うことが期待されています。そのため『常闇ノ皇』と相対する面子を残し、他のみんなはギルド支部を拠点に活動することになりました。

 

 吟遊詩人さん曰く『常闇ノ皇』には他の魔神を召喚することが可能らしいので、みんなには不意にポップしてくる野良魔神討伐も期待されているみたいです。なお集団の中には兎人猟兵ちゃんのパパとその親友たちの姿も……これは本気ですねぇ!

 

 

「それじゃみんな、いってらっしゃーい!」

 

「はいはい、アンタも頑張んなさい……んっ」

 

「では、留守を頼む」

 

「うん! ……みんな、怪我しないで無事に帰ってきてね?」

 

 

 夜明けを待たずに出発する面々を見送る吸血鬼君主ちゃん。女魔法使いちゃんにむぎゅっとハグし、そのたわわをたっぷりと堪能していますね。いつもと変わらぬ甘えん坊さんを引き剥がした女魔法使いちゃんが情熱的な口付けを披露し、女性陣からは黄色い歓声が上がっています。その隣ではゴブスレさんと牛飼若奥さんが兜越しのキス。うーん……口から砂糖が出そうな光景です!

 

 

「――みんな、戦うのが怖くないのかしら……」

 

 

 街道を歩いていくみんなの背を見ながら呟く光背王(キング)ちゃん。族長として仲間を率いるためある程度の訓練は積んでいるものの、今まで実戦経験の無い彼女からすれば、軽口を叩き合う辺境三羽烏や半分眠ったままたわわに埋もれている吸血鬼侍ちゃんの姿は余裕があるように見えるのかもしれませんね。

 

 

「んとね、みんなこわくないわけじゃないよ?」

 

「そうだな。恐れを知らぬ戦士は強いが、同時に酷く脆い。僅かな危険を見落とし、自分のみならず仲間を危機に追いやることになる」

 

「恐れを知り、そして恐れと向き合う。恐怖も己が感情の一部であると認め、共に歩むことが重要なのだ」

 

 

 そんな彼女に戦士としての心構えを語る後方先輩面な3人。うんうんと頷いている吸血鬼君主ちゃんですが、神官銃士ちゃんに抱っこされている姿からは威厳というものが欠片も感じられませんねぇ。

 

 

 さて、現在牧場に残っている面子は絶賛妊娠中の若草祖母さんと闇人女医さん。魔神討伐に向かう太陽神官ズである4人に加え、太陽神さんの託宣(ハンドアウト)が送られた光背王(キング)ちゃん。それから……。

 

 

「ふふ、主さまとの冒険は久しぶりで御座いますね♪」

 

 

 悦び抑えきれぬと長耳をピコピコさせる小柄でスレンダーな立ち姿。久々のメインパーティ参加となる若草知恵者ちゃんです!

 

 


 

 

「――ウーム、やはりもう1枚切り札が欲しいところだな……」

 

 

 バケツ兜を傾かせながらウンウン唸る太陽戦士さん。『常闇ノ皇』と戦う面子を選出する際、光背王(キング)ちゃんを頭数に入れてもどうしても太陽神さんの信徒が1枠足りないということでみんな頭を悩ませていた時のこと。

 

 狼さんが尻尾をブンブン振ってますが、残念ながら今はただのわんこなので乗騎としては兎も角戦力としてカウントするのはちょっと厳しいところさん。いっそ核武僧さんならどうかという意見もありましたが、周辺被害を考えるとちょっと……ということで残念ながら見送りに。誰か適任はいないものかというタイミングでスッと手を挙げたのが……。

 

 

「そのお役目、是非とも(わたくし)にお任せください!」

 

 

 森人(エルフ)の森の一幕を例外に、冒険お預け期間の長かった若草知恵者ちゃんでした。

 

 視聴神さんたちもご存知の通り、若草知恵者ちゃんは太陽神さんではなく万知神さんを信仰する神官です。今回のミッションに必要なのは太陽神官なので彼女では条件を満たせないのでは?という意見が出て来そうですが、そこは万知神官のエロイところ。

 

 油まみれのダムを攻略した際にダブル吸血鬼ちゃんが用いた手段……そう、万知神さんを通しての間接的な祈りです! 真言、奇跡、死霊、精霊の四系統に習熟し、≪模倣(イミテーション)≫を経由しての専用奇跡へのアクセスも可能なガチ後衛である彼女の参加によって、『常闇ノ皇』討伐メンバーが決定しました!

 

 


 

 

「っし! 今日は万歳のキレも良い感じですわね、お姉様!!」

 

「うん、みんなバッチリだね!」

 

「背筋が伸びて、『やるぞー!』って気持ちが湧いてまいりました、主さま♪」

 

 

 ようやく顔を出した太陽神さんに向かっていつものポーズを決めていた一行。たゆんとご立派なたわわを揺らす神官銃士ちゃんの隣では、一緒にばんじゃーいしていた若草知恵者ちゃんがちょっと恥ずかし気に初体験の感想を口にしていますね。表情の読めない複眼&バケツ兜な年長者二名からも『ドヤァ・・・』というやり遂げた男のオーラが溢れている気がします。

 

 

「フム、それにしても……」

 

 

 身体の調子を確かめるように様々なポージングをしていた蟲人英雄さんが呟く先には、緊張した面持ちでステップを踏む光背王(キング)ちゃんの姿。視線に気が付いた彼女が首を傾げるのを見てウンウンと満足そうに頷いています。

 

 

「俺のような武骨者ですら一目見ただけで逸品だと判ったが、そうやって朝日に照らされるとまさに陽光を編んで作られたように輝くんだな!」

 

「ウム! 斯様な衣装を半月足らずで完成させるのだから驚きである!!」

 

 

 見事!と後方保護者面で語る大人組。まぁ彼らが褒めちぎるのも無理はありません。光背王(キング)ちゃんが身に着けているのは何時ぞやの練習着でも冒険者らしい実用一辺倒な装備でもなく……。

 

 

「『せんそーぶとーふく』っていうんだっけ? かっこかわいい!」

 

「ええそうよ! これこそ一流の馬人(セントール)が戦いに赴く際に身に纏う一流の勝負服、馬人競争(レース)の時に着る衣装の元にもなった一流の証、『戦争舞踏服(ウォードレス)』よ!!」

 

 

 白を基調としたノースリーブのインナーに肩口を露出させたカクテルドレス風の上着を合わせたデザイン。ほっそりとした葦を包む黒の二―ソックスはショートスパッツの裾にガーターベルトで留められており、光背王(キング)ちゃんのイメージカラーである緑をベースに纏められたデザインに特注のブーツが良く似合っています!

 

 もともとは己の人生を賭けた勝負に赴く際に自らの手で縫っていたみたいですが、今ではそれも少なくなり専門のデザイナーに依頼することがほどんど。ちょっぴり若草祖母さんの手を借りたとはいえデザインから縫製までをこなしてしまうとは……光背王(キング)ちゃん、やはり一流か。

 

 戦いに向いているとはとても思えない見た目ですが、そこはやる気が出力に直結する馬人(セントール)。不思議な加護によってAC(アーマークラス)に対する鎧ボーナスはマシマシ。フルプレートを凌駕するカチカチっぷりを発揮するため、部隊長クラス以上の馬人(セントール)は隊の士気向上効果も兼ねて戦争舞踏服(ウォードレス)姿で戦場を駆けるんだとか。

 

 

 「いやまったく! 次々に新鮮なフレーズが浮かんできますなぁ!!」

 

 

 そしてもうひとり、太陽神さん信仰でないのにこの場に残っていた人物。パピルス紙に筆を走らせ悦に至っているのは良い声の吟遊詩人さんです。

 

 魔神討伐という一大イベントを前に座して待つことなど出来ぬと同行を申し出た彼。当然のことながら危険過ぎるのでみんな止めるよう説得したのですが……。

 

 

「英雄譚をこの目で見る権利……それは俺のものだ……俺だけのものだ……!」

 

 

 ――とおめめグルグルさせながら断固拒否。自分の身は自分でなんとかするのを条件にオッケーが出た感じです。

 

 題材を求めて四方世界を流離う吟遊詩人さん。ある程度の自衛能力はありそうですが、魔神相手には流石にちょっと……と思っていたのですが……。

 

 

「此方の準備は完了です。さぁ皆様、心躍る冒険へと参りましょう!」

 

 

 テンション高めにみんなを急かす吟遊詩人さん。戦闘には参加しないこともあり微妙に浮いた存在になってますね。……()()()()()()()()()()()()()()

 

 ――吟遊詩人さんを背に乗せ、ふわりと空中を飛行する真紅のボディ。強固な外骨格は重装鎧以上の防御力を秘め、巨大な鋏と尻尾は武器としても振るえる優れもの。背中に跨った吟遊詩人さんの左右には秘密道具満載のバックパックまで背負っています。眼前を優雅に浮遊するアレな存在に、とうとう我慢出来なくなった光背王(キング)ちゃんが……。

 

 

「な、な、なんでそんなお化けみたい(ファンタズマ)な巨大蝲蛄(ザリガニ)が空を飛んでるのよー!?」

 

 

「はっはっは! 長い旅のなかで苦楽を共にし、幾度となく窮地を救ってくれた私の自慢の相棒ですので!!」

 

 

 飛行する説明になってないんだよなぁ……。まぁ一行のなかで驚いているのは光背王(キング)ちゃんだけ。蟲人英雄さんと太陽戦士さんは「まぁ偶に見るよね、何故か空を飛ぶへんなの」って顔してますし、ダブル吸血鬼ちゃん一党(パーティ)は空飛ぶサメを筆頭にトンチキな怪物は見慣れてますからねぇ。……あ、そこ! ダブル吸血鬼ちゃんが一番トンチキとか言うのは禁止です!!

 

 閑話休題(それはそれとして)、対『常闇ノ皇』一行の目的地はとある遺跡。かつて疫病の魔神が召喚されたことのある古い神殿跡に再び魔神が現れるとの≪託宣(ハンドアウト)≫が太陽神さんより配られております。え? 何処かで聞いたことがある? まぁそうですよねぇ……。

 

 


 

 

「私が皆と初めて冒険に赴いた場所が、いま再び魔神降臨の場所になるとはなぁ……」

 

 

 かつて仲間とともに足を踏み入れた遺跡の入り口を前に、しみじみと呟く太陽戦士さん。予定日より早く到着し早速討伐の準備をしようとする一行でしたが、その眼前には見慣れたいつものヤツが……。

 

 

「……トーテム、で御座いますね」

 

「わふぅ……」

 

 

 頬に手を添えながら溜息混じりに声を漏らす若草知恵者ちゃん。その傍らでは『やれやれだぜ……』と言いたげな狼さんが首を左右に振っています。どうやら本番前に一仕事しなければいけないみたいですねぇ。

 

 

「おふたりの護りは私にお任せください! 指一本触れさせたりはしませんわ!!」

 

「ん、おねがいね」

 

 

 両の籠手を打ち鳴らし、フンスと胸を張る神官銃士ちゃん。白兵戦の不得手な若草知恵者ちゃんと冒険に慣れていない光背王(キング)ちゃんの護衛に付いてくれるみたいですね。暗視持ちの吸血鬼君主ちゃんと蟲人英雄さんが前衛、神官3人を真ん中に太陽戦士さんが背後を固めてくれる安定感のある隊列です。

 

 

「あんまり緊張しないでね? 後ろにはいかせないようにするから!」

 

「ええ、でもいざという時はこの(キング)が守護らなきゃダメ。それが王たるものの務めよ!」

 

「フフ、頼りにさせていただきますね♪」

 

 

 吸血鬼君主ちゃんの言葉に頷きを返す光背王(キング)ちゃん。左右の手には隻眼鍛冶師さん謹製の武器が握られています。棒状の金属から垂直に握り(グリップ)の伸びた独特な形状、敵の攻撃を受け流す盾であり打突武器としても優秀な旋棍(トンファー)ですね!

 

 

「では皆様、頑張ってください! 私は上から応援しておりますので!!」

 

「貴公……いや、そのほうが安全であるか……」

 

 

 ニッコニコ笑顔の吟遊詩人さんは相棒と一緒に天井近くをホバリング。どうやら元は大型種族・あるいは魔神が出入りしていたためか、遺跡全体が大型種族用のサイズになっているのでザリガニさんも飛びやすそうです。

 

 呆れた様子の太陽戦士さんの隣では狼さんが若草知恵者ちゃんを背に乗せ、彼女のナイスなおしりの感触にご満悦な様子……と、おや? 何か大切なことを思い出したように、神官銃士ちゃんが吸血鬼君主ちゃんを抱き上げました。胸元で不思議そうに見上げる吸血鬼君主ちゃんの頭を撫でながらそっと法衣の合わせを開き……。

 

 

「今日はお義母(かあ)様のお乳だけで、まだ血を吸われてませんわよね。戦いの前にしっかり補給しておきましょう!」

 

「むぎゅっ。……ん、それじゃあいただきます……ちゅっ」

 

 

 顔いっぱいに押し付けられた豊満な膨らみ。丹念に舌と唇でご挨拶すれば、可愛らしい吸い口がぷっくりと存在を主張し始めます。柔らかい果汁飴(グミ)のようにプルプル震える周りごとツンと尖った吸い口をちっちゃなお口に含み、そっと牙の先端を当て……。

 

 

「んっ……お味のほどは如何ですか、お姉様……?」

 

 

 ゆっくりと、パートナーに負担を掛けないようちゅーちゅーする吸血鬼君主ちゃん。遠慮がちな小さな暴君の後頭部を神官銃士ちゃんが優しく撫で、もっと吸うよう促しています。ゆらゆらと左右にリズムよく身体を揺らし、胸元に抱いた小さな想い人をあやすような立ち居振る舞い……実に背徳的ですねぇ! 上空で見ている吟遊詩人さんも、ペン先から白煙が上がる勢いで二人の艶姿を書き記しています。

 

 

「――ぷぁっ、ごちそうさま。……だいじょうぶ? きぶんわるくなったり……むぎゅっ!?」

 

「大丈夫、鍛えておりますので。……それよりも、次はお姉様からお願いいたしますわ!」

 

 

 ふむ、ちゅーちゅータイムはそこそこ長かったですが、吸血量は僅かだったみたいですね。貧血で青くなることもなく上気した顔の神官銃士ちゃんに応えるように、吸い口に感謝のキスを繰り返す吸血鬼君主ちゃん。そのままんーっと背伸びをして、期待に満ちた表情の神官銃士ちゃんへと顔を近付け……。

 

 

「えっと、その……やっぱりちょっとえっちすぎじゃないかしら?」

 

「ふふ、主さまに良し、吸われる側も良し。『うぃんうぃんの関係』というものです!」

 

 

 指の隙間からガン見している光背王(キング)ちゃんの隣で後方お嫁さん顔な若草知恵者ちゃん。無意識なのでしょうが、己の下腹部に手を当て撫でる姿はあっちの二人よりも余程えっちなんですがそれは……と、口づけで魔力胸供給をしていた吸血鬼君主ちゃんが神官銃士ちゃんの胸元からぴょんと飛び降り、インベントリーからヒヒイロカネ製の剣を取り出しました!

 

 

「むー……ちゅーちゅーしたあとのおはなしあいが、ふうふえんまんのひけつなのに……!」

 

「もう、()()夫婦ではありませんわよお姉様?」

 

 

 手早く服装を整え、神官ズを護衛する位置へ戻る神官銃士ちゃん。吸われる前よりも動きのキレが良くなっているあたり、即効性もあるみたいですね、ちゅーちゅー。

 

 

「質はともかく数は多そうだ。通常個体だけならば大した手間にはならないが……」

 

「ぼくしってるよ、そういうの『フラグ』っていうんだよね?」

 

「「「GOBGOBGOB!!」」」

 

 

 

 赤く明滅する複眼が睨む先、暗闇の向こうに見えるのは無数の獣欲に塗れ濁った黄色い光。雌の匂いを嗅ぎつけた無数のゴブリンが押し寄せてくるいつもの光景。ですが、その構成は普段とは異なるようで……。

 

 

「おやおや、呪術師(シャーマン)呪文使い(マジシャン)がこれほどの数揃っているとは……」

 

 

 暗視付与の黒眼鏡(ゴーグル)越しに群れを見ていた吟遊詩人さんの呟きに顔を顰める一行。新人冒険者にとって脅威となる田舎者(ホブ)戦士(ファイター)ですが、ベテランにとっては状況をひっくり返せる手段を持たない与しやすい相手。むしろ追い込まれて何をしでかすか判らない呪文持ちのほうが厄介です。

 

 たとえ練度の低い呪文でも数を撃ち込まれれば抵抗に失敗する可能性がありますからね。何か教材となるものがあったのか、あるいは渡りで知識と技術を教えてまわっているレアな個体でもいたのか。……まぁどちらにせよやることは変わらないのですが。

 

 

「――では、先ずは厄介な呪文を封じることにいたしましょう」

 

 

 そう言葉を紡ぎながら、聖句を唱え始めたのは若草知恵者ちゃん。()()()()()()()()()に展開される儀式呪文(エンチャント)は、相対した呪文使いにとって死刑宣告に等しい効果を発揮します……!

 

 

「GOB!」

 

「「「GOBGOBGOB!!」」」

 

 

 酋長(チーフ)と思しき羽根飾りを身に着けたゴブリンの号令に従い、一斉に詠唱を始める後衛のゴブリンたち。呪文の種類はてんでバラバラ、効果範囲に突出した前衛が含まれていても構い無しに発動するあたり、通常個体に肉壁以上の役割を期待していないのでしょう。

 

 ≪石弾(ストーンブラスト)≫や≪火矢(ファイアボルト)≫、≪火球(ファイアボール)≫が乱れ飛ぶなか、こっそりと≪惰眠(スリープ)≫を唱える酋長(チーフ)。精霊術だけでなく真言まで使えるあたり優秀な個体なのでしょう。目に見える脅威に気を取られ、≪惰眠(スリープ)≫に対する警戒を忘れさせるとは随分と考えたものですね。温存という考えを持たない初撃から全開の呪文が馬鹿な冒険者たちと肉壁どもへと殺到し……。

 

 

 

 

 

 ――吸血鬼君主ちゃんたちを覆う形で空間に刻まれた≪神聖の力線(Leyline of Sanctity)≫によって、前衛のゴブリンが壊滅したという結果だけが残りました。

 

 

「これで小鬼(オルク)たちの呪文は此方を対象とすることは出来ません。地面や物体を目標に選ぶ呪文は防げませんが……」

 

「十分過ぎる効果ですわ!?」

 

 

 ほぅっと艶やかに一息を入れつつ一行に微笑む若草知恵者ちゃん。何故防がれたのか理解出来ず、再び呪文を一斉射するゴブリンたちに向ける瞳には憐れみも蔑みの色も無く、ただただ塵芥(ゴミ)を見るソレ。三度目の呪文斉射が無駄に終わったあとには、文字通り全滅した肉壁だった何かの山と、呪文を使い切り呆然と此方を眺める後衛たちの姿しかありません。そして、状況をひっくり返せる手段を失った彼らに残された未来は……。

 

 

「――ぜったいにあいつらをにがしちゃダメ。ここでいっぴきのこらずころす、ころしつくす。どんなにじひをこうても、どんなにあわれになきさけんでもかんけいない。ここでころさないと、ほかのだれかがあいつらのせいでけがされちゃう」

 

 

 視認出来るほどの殺意を纏い、にじり寄る小さな姿に恐慌状態となるゴブリンたち。じりじりと後ずさり隙を見て逃げ出そうというところで、上空から男の声が響きます……。

 

 

「成程、では私も少々お手伝いを。――吟遊詩人の呪歌(まがうた)、存分に聴いていただきましょう!」

 

 

 大型種が行き来出来るほどに広大な通路に朗々と響き渡る吟遊詩人さんの歌声。冒険者が好む英雄譚(サーガ)とも、従軍神官が戦場で披露する戦歌(バトルソング)とも違うソレに聴き入る吸血鬼君主ちゃんたち。冒険者たちが足を止めたのを見たゴブリンたちが一斉に逃げ出そうとしたところで、彼らは呪歌(まがうた)の恐るべき効果を知ることになりました……。

 

 

「GO、GOB!?」

 

「「「GOBGOBGOB!?!?」」」

 

 

 一刻も早く逃げねばという意思に反し、力強く冒険者たちに向かって駆け出す己の脚。発動体である杖やナイフを握る手には力が漲り、悲鳴を漏らす精神とは裏腹に勇ましい声が彼らの喉からとめどなく溢れています。敵に逃走を許さず、文字通り死ぬまで戦うことを強制する恐るべき呪歌(まがうた)。禁じられたその名は……。

 

 

「――≪突撃行軍歌(ガンパレードマーチ)≫。混沌の軍勢との戦いの最中、秩序の勢力が追い詰められ存亡の危機に瀕した時に生み出されたとされる呪歌(まがうた)です。本来は聴く者の勇気を奮い立たせ、恐怖に打ち勝つための歌だったのですが……」

 

 

 敵味方問わず聴く者に逃走を許さず、どちらかが全滅するまで戦う禁断の歌となってしまいまして、とのたまう吟遊詩人さん。……最初から一向に退く気が無かったので良いですが、これ一歩間違えれば大惨事ですよね!?

 

 

「ヌゥ……絶対に負けられぬ戦いというのは確かにあるが……」

 

「栄纏神の神官殿の前では、決して歌ってはならんな……!」

 

 

 足並みを揃えることもなく突っ込んでくるゴブリンを始末しながら言葉を漏らす大人組の二人。確かに、令嬢剣士さんのいる場所で歌ったらブチ切れ待ったなしですねぇ……。

 

 

「ですが、使い方を誤れば危険なのは他の呪文も一緒。すべては使いようで御座います」

 

「そうかな……そうかも……」

 

「ぜったいに拘束を緩めちゃダメよ! ぜったいなんだからね!?」

 

 

 顔面から様々な液体を垂れ流しながら死への一本道を突き進むゴブリンたちを恍惚の表情で眺める若草知恵者ちゃん。その腰には影の触手が巻き付き、前線に行かないよう吸血鬼君主ちゃんがしっかりと拘束していますね。その隣では同じく触手に絡めとられた光背王(キング)ちゃんが青褪めた顔で前を見ています。タッチの差で拘束を免れた神官銃士ちゃんが大人組に交じって残存ゴブリンを殲滅する姿を見て、改めて一党(パーティ)のトンデモっぷりを確認しちゃったみたいですね……。

 

 

 この後、ゴブリンを殲滅したことで呪歌(まがうた)の効果が切れ、やり遂げた男の顔で吟遊詩人さんが降下してきて……。

 

 

「教育的指導ッ!!」

 

はわわ……やはり怒っていらっしゃ……へぶし!?」

 

 

 蟲人英雄さんからSEKKYOUを喰らい、相談なしに呪歌(まがうた)を使わないよう約束させられておりました……残当。

 

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 

 





 ジマーマンとスタンニードルランチャーに変わる相棒を探しに行くので失踪します。

 ちょっとずつ書いては消し書いては消しを繰り返しているうちに随分と間が空いてしまい、期待してくださっていた方には申し訳ありませんでした。

 モチベが下がったわけではなく、書きたいという意欲はあったのですが……どうにも納得がいかず、更新が遅くなってしまいました。

 なるべく間を開けずに次話を更新したいと思いますので、応援して頂ければ幸いです。


 お読みいただきありがとうございました。
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