ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 カツとカレーの組み合わせは悪魔的美味しさだったので初投稿です。




セッションその18 りざると

 前回、太陽を盗んだ魔神を薪にしたところから再開です。

 

 『常闇ノ皇(プリンスオブダークネス)』の封印(加工)を終え、異界から帰還した吸血鬼君主ちゃん一行。権能返還のお礼にちょっぴり太陽神さんが手助けしてくれたため、四方世界の帰還ポイントは吸血鬼侍ちゃんのところです。

 

 

「あ、おかえりー!」

 

「ただいまー! これおみやげー!」

 

「わーいおみやげだー!」

 

 

 なーんてあたまゆるゆるな会話とともに差し出された星の力(擬似太陽炉)を見て何人かが宇宙猫顔になったり、白兎猟兵ちゃんの身に纏った鎧を見て「めっちゃカッケーですわ!」と王妹殿下1号が興奮する一幕があったりしましたが……。

 

 


 

 

「――人界の秩序と平和のため、勇敢に戦っていった将兵たちに……敬礼!」

 

 

 戦の痕が残る平原に朗々と響く猪武人さんの声。それに続いて捧げられるのは一糸乱れぬ敬礼……戦いの中で命を落とした将兵たちを送り出す、葬送の儀にダブル吸血鬼ちゃんたちも参加しています。

 

 

 疾風狼人さんと金銀妖瞳半森人さんの双璧コンビの追撃によって混沌の軍勢に痛撃を与えた王国軍。西方辺境の冒険者たちの熱心なゴブリン狩りとエルフの森における殲滅戦の結果、戦力の補充が困難になった混沌の勢力はしばらく攻勢には出て来られないだろうというのが軍上層部の出した結論です。

 

 ですが、軍勢の衝突が発生して損害無しとはいきません。MAP兵器で数をゴッソリ減らしたものの、やはり数というものは脅威であり、少なくない将兵が戦場で散っていきました……。

 

 折悪く季節は初夏。遺体を放置して腐敗が進めば疫病の発生源となり、また悪しき死霊術師(ネクロマンサー)によって尊厳が傷付けられてしまう可能性もあります。本来であればそれを防ぐために遺体は戦場で荼毘に付され、遺族の元へは認識票と運が良ければ遺品だけが戻るのですが……。

 

 


 

 

「あのね、インベントリーにしまえばふはいさせずにかぞくのところにかえしてあげられるの……ものあつかいしちゃうことになるけど」

 

「ふむ……」

 

 

 戦後の処理に頭を悩ませていた金髪の陛下、思わぬ申し出に暫し考え込んだ後、懸念事項を口にします。

 

 

「その場合、彼らの魂はどうなる?」

 

「からだをしまうまえに、むくなるたましいとしてえんかんのことわりにかえるようみちびいてあげる」

 

「たましいさえかえしてあげれば、のこったからだをわるいネクロマンサーにあやつられるしんぱいもなくなるの!」

 

 

 ちっちゃなからだで大きく身振り手振りしながら懸命に理を説くダブル吸血鬼ちゃん。ふたりの声に耳を傾けていた陛下が大きく頷き、そっとダブル吸血鬼ちゃんの頭に手を乗せました。

 

 

「成程。よし、そなたたちの提案を是とする。……兵たちを家族の元へ帰してくれるか?」

 

「「うん! まかせて、おにいちゃん!!」」

 

「……ふぅ、やはり義理の妹は何人居ても良いものだな!」

 

「馬鹿言ってないでさっさと将軍たちに伝えなよ。丁重に遺体を集めろって」

 

 

 抱き着いてきた義妹ふたりを両手にイイ笑顔を見せる陛下。銀髪侍女さんに後頭部を引っ叩かれ慌てて伝令兵に指示を出しました……っと、陛下の膝上で甘えていたダブル吸血鬼ちゃんが何やら悪い顔に。陛下の耳元に顔を近付け何か囁いてますねぇ。

 

 

「……なんだけど、どうかな?」

 

「判断は当人たちがするであろう。余がそれを止める理由はあるまいて」

 

「えへへ……ありがと! じゃあきいてみるね!」

 

 

 陛下からGOサインを貰って満面の笑みになったダブル吸血鬼ちゃん。いったいナニをするつもりなんでしょうか(白目)。

 

 


 

 

 軍勢に踏み固められ土面の多い平原に整然と並べられた遺体たち。欠損部位を補うことは出来ませんが、装具や肌に付着していた血や汚れは≪浄化(ピュアリファイ)≫で綺麗に浄められ、その表情も穏やかなものに整えられています。

 

 ちなみに混沌側の死体に関しては容赦なく身ぐるみを剥がされ、魔法の武具や情報伝達書などを根こそぎ回収された後に叢雲狩人さんによって遺伝子の欠片まで焼き尽くされてました。普段は兵たちが埋めたり従軍神官たちが嫌々≪浄化(ピュアリファイ)≫しているのですが、叢雲狩人さんのおかげでそのリソースを亡くなった戦友たちに使えるとみんな大喜び。なお戦場に付き物の死体漁りが一切見られないあたり、王国軍のモラルは非常に高いですね!

 

 

 猪武人さんが仮設の演説台から離れ、続いて将兵たちの視線を集めながら壇上に姿を見せたのはダブル吸血鬼ちゃんと若草知恵者ちゃん、そして妖術師さんの善き死霊術師(ネクロマンサー)組。一同とともに死者への黙祷を捧げた後、この場にいる()()に聞こえるよう、ゆっくりと言葉を紡ぎます……。

 

 

「みんな、おつかれさま。これでおうちにかえれるよ」

 

「なくなったみんなのたましいは、ちゃんとあるべきばしょにみちびいてあげる」

 

 

 ダブル吸血鬼ちゃんの言葉に惹かれるように、遺体から浮かび上がる淡い光。ふたりの背後に立っていた若草知恵者ちゃんと妖術師さんが、ダブル吸血鬼ちゃんに続いて彼らへと語り掛けていきます。

 

 

「その上で、皆様にお願いしたいことがございます。……もしこの世界に未練がおありでしたら、(わたくし)たちと一緒に戦っていただけないでしょうか」

 

屍人(ゾンビ)になってくれって言ってるわけじゃない。轡を並べた戦友たちを、街に暮らす人々を、そして、君たちの家族を護る手助けをして欲しいんだ。無理強いはしないし、いつでもあるべき場所に還ることが出来る。転生するまでの待機時間の有効活用って言ってもいいかな」

 

 

 それは、仮初の霊体(からだ)でなお護るべき者のために戦う()霊への誘い。顔を見合わせるようにふよふよと浮かんでいた光たちでしたが、やがてその肉体は鎧姿へと変わっていきます。王国軍の武具に身を固めた白き兵たちが集い、傅く先にいるのは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わ、(わたくし)ですの!?」

 

「「だよねー!」」

 

 

 ――王国の将兵たちのアイドル、令嬢剣士さんですね!

 

 

 

「その、お気持ちは嬉しいのですが……」

 

 

 死してなお推しの子に尽くそうとするファンの鑑たちに困惑気味の令嬢剣士さん。困ったような顔で死霊術師(ネクロマンサー)組に助けを求めますが、返ってくるのは生暖かい笑みばかりです。

 

 

「だれでもさいしょははじめてだからヘーキヘーキ!」

 

「むしろみんなきょうりょくてきだからラッキー?」

 

(わたくし)たちが手取り足取りお教えいたしますので♪」

 

「いや、むしろ吸血鬼(ヴァンパイア)なんだから死霊術使えて当たり前なんじゃ……」

 

 

 そんな遣り取りをしている間に白霊さんたちは何やら集まって相談中の様子。やがて話し合いに決着が付いたのか、ひとりの白霊さんがダブル吸血鬼ちゃんのところにやってきました。恭しく片膝を着きふたりに差し出すのは、今回白霊となったメンバーが記載された目録ですね!

 

 

「えへへ……ありがとう!」

 

「じゅんばんによぶから、みんなまっててね!」

 

 

 ダブル吸血鬼ちゃんの言葉にジェスチャーで返し、召還エフェクトを伴って消えていく白霊さんたち……あれ? 何柱か還らない白霊さんがいますね。

 

 鎧姿の他の白霊さんとは違い、動きを阻害しない軽装姿。相棒と思しき半透明の馬を隣に令嬢剣士さんへと近付くその背中には()()()()()を背負っています。ひょっとして彼ら、竜騎兵――この場合は火竜将軍さんとは違って銃火器を装備した騎兵のほうですね――でしょうか? 

 

 煙のように姿を変えた彼らが目指す先は、令嬢剣士さんが背負う魔剣。どうやら魔剣の命中精度を高めるべく内部で支えてくれるみたいです! 状況が呑み込めず令嬢剣士さんが首を傾げていますが、彼ら推しのすぐ傍に居られると喜んでますし、良いんじゃないですかね?

 

 

「うわ、アイツらクッソ羨ましい……」

「死んでからも一緒に戦えるとかどんなご褒美だよ……」

「ちっちゃい身体でハグされてからプニプニほっぺの頬擦りコンボ……うっ! ふぅ……」

 

「はっはっは、どうやら我が軍の兵は酔狂な者ばかりのようだな!」

 

「そりゃそうだよ。なんせ吸血鬼(ヴァンパイア)と共同で混沌の軍勢と戦うくらいなんだからさ」

 

 

 笑う陛下の視線の先では魂の抜けた遺体をひとりひとり抱きしめ、感謝を告げながらインベントリーへと格納していく()()()()()()()()()の姿。いいなぁと指を咥える兵士たちをジト目で銀髪侍女さんが睨んでますねぇ。

 

 

「みんながんばったね! ぎゅー……」

 

「これからもよろしくね! ぎゅー……」

 

 

 魂は既に離脱しているはずなのに、どことなく嬉しそうな表情でインベントリーへとしまわれていく遺体の皆様。通常の戦に比べれば少ないものの数百人の将兵が亡くなっており、吸血鬼君主ちゃんひとりでは結構な時間が掛かってしまいます……そう、()()()()()。次々に遺体をしまっていく()()()の姿を眺める妖精弓手ちゃんの言葉が、現在の状況を的確に表しているでしょう。

 

 

 

 

 

「――星の力(擬似太陽炉)を作るときにシルマリルのからだを素材に使ったからって、まさかヘルルインまでアレが使えるようになるとはねぇ……」

 

 

 


 

 

「それじゃあ、れっつそうにゅー!」

 

「がんばえー!」

 

 

 手渡された星の力(擬似太陽炉)を胸元に押し当て、祈るように抱きしめる吸血鬼侍ちゃん。トプンと漆黒の球体が彼女の体内に格納された直後、ダブル吸血鬼ちゃん一党(パーティ)の面々に変化が現れました。

 

 

「ん……っ」

 

「これは……!」

 

「とても、あたたかな……」

 

 

 不意に訪れた感覚に自らの身体を抱きしめる女の子たち。ダブル吸血鬼ちゃんから供給される魔力量が増えたことに身体が反応し、艶っぽい表情になっちゃってます。熱の籠った視線を供給源であるダブル吸血鬼ちゃんに向ければ、そこには驚きの光景が広がっていました。

 

 

「なじむ じつに! なじむぞー!!」

 

 

 ほっぺを指でむにむにしつつご満悦な吸血鬼侍ちゃんは体内を循環する魔力の多さにテンアゲMAX。吸血鬼君主ちゃん成分がたっぷり配合されたヒヒイロカネの効果で擬似的な吸血鬼稀少種(デイライトウォーカー)へと変貌し、気持ち良さそうに太陽神さんの光を浴びています。

 

 

「ふわぁ……ぱわーがたかまる……あふれるぅ……!」

 

 

 ……なんか伝説の超野菜人みたいなことを言ってる吸血鬼君主ちゃん。活動維持のために常時吸血鬼侍ちゃんへ行っていた魔力供給の必要がなくなり、星の力(核融合炉)の出力全てを自分に使えるようになって肩の荷が下りたような感じみたいですね。

 

 

「……あの、おふたりとも? 何か光ってませんか?」

 

「こ、これはもしや進化の前兆!?」

 

 

 一番最初に気付いたのは、他の女の子たちと違って魔力が供給されていないため羨ましそうに指を咥えていた王妹殿下1号2号でした。ストレッチをするように調子を確かめていたふたりの身体が白と黒の光に包まれていきます。

 

 輝きが収まり、手で光を遮っていたみんなが眼を向けた先には……。

 

 

「「いぇーい、ぱわーあっぷ!」」

 

 

 ふよふよと浮かびながらドヤ顔でポーズを決めるダブル吸血鬼ちゃんの姿が!! ……ですがふたりを見るみんなの目の多くは???な感じです。

 

 

 

「はて、どこが変わったんだいご主人様?」

 

「内包する魔力量は跳ね上がったみたいですが……」

 

「むー、みてすぐにわかるでしょ!」

 

「こんなにかわったのに!」

 

 

 困惑の表情を浮かべる叢雲狩人さんと令嬢剣士さんに対しブーブーと不満の声を上げるダブル吸血鬼ちゃん。たしかにこちらで観測している魔力量(戦闘力)は大きく上昇していますが、あんまり変わったようには見えませんねぇ……と、おや?どうやら妖術師さんと英雄雛娘ちゃん、それに圃人(レーア)コンビは変化に気付いた様子。首を傾げている面々にマウントを取ってドヤ顔を披露してますね。

 

 

「……もしかして。ふたりとも、ちょっとこっち来なさい」

 

「「はーい……むぎゅっ!?」」

 

 

 おっと、わかりみ面子のドヤ顔を見ていた女魔法使いちゃんが何かに気付いたようにダブル吸血鬼ちゃんを手招き、ぽてぽて近付いてきたふたりをたわわに抱き寄せました。お山に顔を埋めて幸せそうなふたりの身体をペタペタと撫で、その変化に気付いて頬を緩めながら話しかけます。

 

 

「ちょっとだけ背が伸びたのね。あっちのコンビと同じくらいかしら」

 

 

 はい、女魔法使いちゃん正解! 圃人剣士ちゃんより頭半分くらい小さかったふたりですが、今はなんと同じくらいまで大きくなってます! ほんのり顔つきも大人っぽくなった気がしないでもないですし、圃人侍女(おかあ)さんの姿に似てきた感じですかね。なおふたりのお胸は彼女と異なり、見事なまでにまっ平らなままです。

 

 

「……ぷぁ。せがのびただけじゃないよ、みて!」

 

 

 たわわから顔を上げた吸血鬼侍ちゃんの掲げた手に握られているのは一枚のシャツ。それを見た圃人(レーア)コンビが目の色を変えて飛び掛かるのを妖精弓手ちゃんが空中でアイアンクロー。匂いフェチコンビを元保護者である重戦士さんにブン投げつつ、真っ赤な顔でシャツを回収しちゃいました。

 

 

「えへへ……ぼくのからだにじゅうぶんなじんだそざいをつかったから、ふたりともつかえるようになったの!」

 

「……うん、まぁ便利になったから良いんじゃない?」

 

「もうちょっとマシなことに使いなさいよヘルルイン!?」

 

 

 そのへんに脱ぎ散らかしてたのが悪いのでは?(名推理)

 

 


 

 

 とまぁ、そんな感じで吸血鬼侍ちゃんもインベントリーが使えるようになったおかげで遺体の収容速度も二倍、おおよそ一刻(二時間)で完了しました。ちなみにインベントリーの中は共有しているため、どちらが入れても自由に出し入れできるそうです。……なんか流通にとんでもない影響が出る予感がしますが、悪用されるのは冬が近付いてからでしょう、きっと。

 

 さて、遺体の収容は終わりましたが兵士たちは会場に残ったまま。先程までの厳粛……厳粛?な雰囲気は何処かへと吹き飛び、浮ついた空気が一帯に満ちています。常ならば上官に注意されるのでしょうが、その上官たち……どころか、金髪の陛下や将軍たちまでもが期待に胸を膨らませていますね。

 

 戦闘糧食(レーション)を加工して作られた揚げ菓子やワインが兵たちに振るまわれ、祭りの気配が色濃くなる会場。期待が最高潮に達したところで壮麗な衣装に身を包んだ一団が足音高く現れました!

 

 

「それじゃみんな、気合いれていくわよ!」

 

「りょうかーい!」

 

「がんばるぞー!」

 

「こんなこともあろうかと、持ってて良かった一張羅!」

 

 

 土煙を置き去りにする勢いで舞台(ステージ)へと駆けてきたウマ娘(セントール)たち。彼女たちが身に着けているのは、一人前として認められ、故郷を離れる際に氏族から贈られたひとりひとりの特別な装束。

 

 競技(レース)戦争(ウォー)関係なく、彼女たちが負けられない戦いに挑む際に誇りとともに身に纏う文字通りの勝負服です!

 

 二脚の娘、四脚の娘。スラリとした体躯の娘、見上げるほどに立派な恵体の娘。頭部が馬の形状の娘、何故か厚紙で出来たウマ耳と尻尾を付けている娘……最後の娘は本当にウマ娘(セントール)なのか?

 

 ゴホン、みんな姿は違えども、内に秘めた情熱はおんなじです! 普段見慣れた鎧姿とのギャップに目を丸くする戦友たちに向かって舌をペロペロ見せながら流れるように所定の位置へ。軍楽隊と指揮者からのアイコンタクトに頷きを返した光背王(キング)ちゃんが大きく息を吸い込み……。

 

 

「生者も死者も関係ない、みんな大切な戦友だもの! だから……!」

 

 

 

 

 

「わたしたちの歌を聴きなさーい!!」

 

 

 ――ウイニングライブの開始を宣言しました!!

 

 

 

 

 

「皆戦いで疲弊しているだろうに、それを一切感じさせないとは……!」

 

「ウム、誰もが太陽のように輝いているな!!」

 

 

 センターでみんなを引っ張るように踊り、歌う光背王(キング)ちゃんを見ながら呟く大人たち。そこには思うように力を発揮出来ず悔し涙を隠していた少女の面影は無く、見る者を魅了しその脳を焼き焦がす【(キング)】の姿があるだけです。普段の朴訥とした仕事中に道草を食む(物理)姿からはかけ離れた可憐な大柄な馬人の女の子(ばんえいウマ娘ちゃん)によって少なくない兵たちの脳が焼かれ、あちこちから煙が昇ってますねぇ。

 

 軽快な歌、静かな歌、勝利を祝う歌、戦死者を悼む歌……曲目が変わるたびに新たな面を見せるウマ娘(セントール)たち。女子には負けられないとウマ息子(セントール♂)たちが乱入し、破損した装具を打楽器に見事な演奏を披露しています……あ、我慢できなくなった吟遊詩人さんも相棒の空飛ぶ蝲蛄(ファンタズマ)から飛び降りて参加しちゃいましたね。

 

 

 やがて演目はすべて終わり、興奮の熱が残る会場に弛緩した空気が戻ってきました。いつものふにゃりとした表情に戻った大柄な馬人の女の子(ばんえいウマ娘ちゃん)のところへ脳をこんがりと焼かれた兵士たちが押し寄せ、求婚合戦があちこちで勃発しております。

 

 

「おつかれさま! もう立派な王様じゃない!」

 

「とってもかっこかわいかったよ! ぎゅーっ!!」

 

「ちょ、だから汗まみれのときに抱き着いたらダメって……うにゃあぁぁぁ!?

 

 

 恒例のキングコールに応え、やり遂げた表情で戻ってきた光背王(キング)ちゃんに勢いよく抱き着く2000歳児&その夫。うにゃうにゃ悶える汗と泥まみれの姿は妖精弓手ちゃんに負けない美しさを感じさせるものです。

 

 

「……それで、長年の悩みは消えたかしら?」

 

「ええ、もう迷わない。――私は、私を信じ一緒に走ってくれる子がいるかぎり、(キング)であり続けるわ!」

 

 胸を張り、眉を立てた笑みでそう宣言する光背王(キング)ちゃん。その熱量はダブル吸血鬼ちゃんの野望()に引けを取らないものでしょう! これには後方王様面な陛下もニッコリ、隣の猪武人さんは男泣きしています。

 

 

「うむ、そなたが己の道を見つけることが出来てなにより。……そうだ、余としてはちょっと聞きたいことがあるのだが」

 

 

 おや、ゆるゆるだった表情の陛下が何やらキリっとした顔に。唐突なシリアスに場の緊張が高まってきましたね……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――で、どちらの義妹を伴侶とするのかね? できれば子作りは妹たちより後にしてくれたほうが余としても王国としても嬉しいのだが……」

 

「こ、子作りって、そんな……ッ!?」

 

「「お、お兄様!?!?」」

 

 

 うーんこの貧乏貴族の三男坊。顔を真っ赤にした妹ふたりにギリギリと締め上げられる陛下を前に頬を染める光背王(キング)ちゃん。ん、でも今の言い方だと……?

 

 

「落ち着きなさいふたりとも。お兄さんの言葉をよーく考えてみなさい?」

 

 

 吸血鬼ぱわーで陛下からふたりを引き剥がした女魔法使いちゃんに促がされ、うーうー唸るのをやめて先ほどの言葉を反芻するふたり。徐々にその顔が驚きのものへと変わるのを見て、陛下が皆聞くがよいと語るのは……。

 

 

「今回の魔神討伐の功績を以て、【辺境最悪】の頭目(リーダー)ふたりは金等級へ昇格となる。同時に貴族位を授け、城塞都市跡を中心とする領地を任せる。……叔父たち入り江の民(ヴァイキング)と協力し、北狄から王国を守護する盾となってくれるな?」

 

 

 ダブル吸血鬼ちゃんが土地持ち貴族となり、完全に秩序の勢力としての任を担うということ。それは同時に……。

 

 

「砂漠の国を安定させ、門閥貴族を黙らせ、混沌の勢力を削る。そなたらを嫁がせる下地を作るのに随分と時間が掛かってしまった、すまぬ」

 

 

 ――女神官ちゃんと神官銃士ちゃんの婚姻を、陛下が、王国が認めるということです!

 

 

「それは……っ」

 

「お、お兄様……!」

 

 

 不意の言葉に心が追い付かず、呆然としたままのふたり。……ですが、周りがそれを放っておくはずがありませんよね?

 

 

「おめでとうございます!」

 

「おめでとう!」

 

「ふふ、良かったわね」

 

「これでおふたりも血族(かぞく)ですよぉ!」

 

「わたしたちも続かなきゃ……!」

 

「乗るしかない、このビッグウェーブに……!」

 

 

 押し寄せる奥様戦隊に担ぎ上げられ、あれよあれよという間に胴上げされる王妹殿下1号2号。美しい華ばかりですがその何割かは吸血鬼(ヴァンパイア)、すごい高さまで飛んでますねぇ。

 

 

「あわわわわ………」

 

「ちょ、怖……きゃんっ!?」

 

 

 お、20フィート(6メートル)ちかく打ち上げられ可愛らしい悲鳴を上げるふたりを小さな影がキャッチしました! お姫様抱っこでふたりを抱え、翼を広げてゆっくりと地上へ降り立つのはさっきちょっぴりおおきくなったダブル吸血鬼ちゃんです。静かにふたりを地面に立たせ、眦に浮かんだ涙を舐め取りニッコリ笑顔。そのままギュッとそれぞれをハグし、朱に染まる耳元で囁きます……。

 

 

「「えへへ……ぼくたちと、かぞくになってくれますか?」」

 

「「――はいっ! ずっと、ずっといっしょです!!」」

 

 

 祝福の声が飛び交うなかで熱い抱擁を交わす新たな血族(かぞく)。途中でダブル吸血鬼ちゃんを交換してハグやちゅーをしているあたり、他のお嫁さんたちと同様どちらか片方ではなくふたりを伴侶として受け入れてくれているみたいですね!

 

 

「むふー! ……あ、そうだ」

 

 

 おや、女神官ちゃんを背中から抱きしめていた吸血鬼侍ちゃんが悪戯っ子の顔をしてますね。女魔法使いちゃんの胸元に右手を伸ばし、地母神さんの聖印(シンボル)と一緒に首から下げていた例の指輪を弄んでいます。左手は女神官ちゃんの左手を取り、ゆっくりと自分のぺったんこなボディラインを喉元から下腹部に向かってなぞらせています……。

 

 

「あのね、あのこがコピーしてくれたのはインベントリーだけじゃないの。てのまがものもそうだし、それに……」

 

 

 星の力(擬似太陽炉)の影響で上昇した体温を感じさせる内股へと導かれた女神官ちゃんの左手。震える指先に触れるのは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――まけんもそうびできたんだ。だから、このゆびわはもういらないよね?」

 

 

 

 

 

 ……至近距離で炸裂した核撃発言による被害は甚大です。

 

 万歳三唱をして倒れる剣の乙女ちゃん、鼻から溢れるお嬢様分を必死に抑える令嬢剣士さん、英雄雛娘ちゃんは瞬時に沸騰し、妖精弓手ちゃんの薄い胸に受け止められています……あ、白兎猟兵ちゃんが妖精弓手ちゃんを背中から強襲し、はむっとその長耳に致命の一撃(クリティカルヒット)を叩き込みダウンさせました。

 

 若草知恵者ちゃんと圃人(レーア)コンビは「着☆剣!着☆剣!!」と叫びながら重戦士さんの拘束から抜け出してダブル吸血鬼ちゃんへと飛び掛かり、妖術師さんの触手と珍しく正気を保っている叢雲狩人さんが阻止……ふたりとも吹っ飛ばされたー!?

 

 

「あ、あわわ……落ち着きなさいわたし、(キング)は狼狽えない!」

 

 

 収まりの尽きそうにない場をなんとか鎮めようと光背王(キング)ちゃんがあわあわしてますが、残念ながら経験が足りず失敗しちゃってます。崩れ落ちる彼女の肩に手を当て、代わりに場を強制的に落ち着かせたのは……。

 

 

 

 

 

「――他の人の迷惑になるから、そういうのは家に帰ってからにしなさい。……返事は?」

 

「「「「「ごめんなさい」」」」」

 

 

地面をパイルで穿ち、震動と轟音で正気を取り戻させることに成功した女魔法使いちゃんでした……。

 

 


 

 

「ムッツリさんを挑発するようなことしちゃダメでしょ? ただでさえ色々溜まってるんだから」

 

「えぅ……ごめんなさい」

 

「アンタも同罪。しばらくちゅーちゅーするの禁止。子どもたちと一緒に寝ること、いいわね?」

 

「はーい……」

 

 

 ≪転移≫の鏡を通って牧場へと帰還した一行。遺体は一時ダブル吸血鬼ちゃん預かりとし、王都の受け入れ態勢と遺族との連絡がとれ次第小出しに進めていくことになりました。

 

 鏡を抜けてきたみんなですが、辺境三羽烏とその奥様以外のあたまにはおっきなたんこぶができてますね。「義妹(いもうと)君、今回私は悪くないだろう!?」という叢雲狩人さんの抗議は黙殺された模様、残当と言わざるを得ませんね。

 

 件の金等級昇格や貴族位授与については後日また改めてということで陛下から解散を告げられ、将兵たちの大きな歓声に見送られて戦場から戻ってきたわけですが……おや? ご立派なたわわをたゆんたゆんと揺らしながら走ってくるのは牛飼若奥さんですね。狼さんと英霊さんを引き連れ療養所のほうから近寄ってきました。

 

 

「今戻った……なにかあったのか?」

 

 

 ゴブリンか?と目を紅く光らせるゴブスレさんを手で制し、呼吸を整える牛飼若奥さん。大きく息を吸う度揺れるお山に持たざる者たちが膝から崩れ落ちるのはいつもの光景ですね。

 

 

「はぁはぁ……うん、おかえり……じゃなくて! あのね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「妊娠中のふたりのおなかが()()()()()()()()、産気付いちゃったみたいなの! 今はお義母(かあ)さんが看てくれているんだけど、原因が判らなくて……」

 

 

 

 

 

「「……あ」」

 

 

 

 

 

「ぜ、全員集合! まずは残り体力と呪文回数の申告、それから≪浄化(ピュアリファイ)≫による消毒です!!」

 

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 





 冷蔵庫の中身がすっからかんなので失踪します。

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 お読みいただきありがとうございました。
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