ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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日間ランキングに顔を出し始めたので初投稿です。

……え?


セッションその3 りざると

 前回、牧場防衛ミッションを成功させ、無事に夜明けを迎えたところから再開します。

 

 現在吸血鬼侍ちゃん一党はゴブリンの死体の始末と怪我人の治療に従事しています。呪文の回数が回復したので《分身》作成からの奇跡連打、酷使無双で合計20回使用可能です。やっぱり《分身》はチート魔法。はっきりわかんだね。

 

 奇跡だけ使って分身ちゃんを消すのは勿体無いので、死体焼却に《火球》も使っちゃいましょう。ゴブリンの死体を一ヶ所に集めて着火! 臭いがキツいので《天候》で牧場と反対側に吹き散らして、苦情が出ないよう配慮もしないとですね。

 

「ご主人様、ちょっといいかな……」

 

 分身ちゃんを派遣した後に、今更になって本体が血塗れだと分身ちゃんまで血塗れになることに気付いた吸血鬼侍ちゃんが井戸で返り血を洗い流していると、深刻な顔をした森人狩人さんの声が。どうしました森人狩人さん?

 

「……会ってもらいたい森人の()がいるんだ。理由は……すぐにわかるよ」

 

 森人狩人さんに案内されて向かったのは幾つかある倉庫のうちのひとつ。入口を塞ぐように女騎士さんが立ち、中からは女性の啜り泣きが聞こえてきます。あー……。

 

 女騎士さんに会釈して中に入ると……ああ、やっぱり。そこにはゴブリンに囚われていた女性たちがいました。夜が明けて、漸く助かったという実感が湧いてきたのでしょう、毛布にくるまった身体を震わせながら泣いています。女神官ちゃんをはじめとする治療の心得のある冒険者が話しかけ、落ち着かせようと努めてますね。

 

「……あの娘だよ」

 

 森人狩人さんの視線の先には毛布を頭から被せられ泣いている森人の少女と、それを抱き締めて涙を流す妖精弓手ちゃん。聞いてみると肉の盾として使われていたのではなく、ゴブスレさんと女神官ちゃんが潰してきた巣で保護したそうです。小鬼王(ロード)が保険として確保しておいた、()()()()()()()()()()()()使()()()()()()。つまり、そういうことでなのしょう。

 

「あの()、王に仕える従者一族の出身なんだって。まだ100歳にもなってないって、妹姫(いもひめ)様が……」

 

 これはいけません。このままですと森人狩人さんはおろか妖精弓手ちゃんまで第二第三のオルクボルグに変貌してしまうかも。ねぇねぇ森人狩人さん、吸血鬼侍ちゃんを此処に呼んだ理由、なんとなくわかるけど、本気でその結論に辿り着いたの?

 

「無論本気だよ。正気かどうかはわからないけどね。凌辱を受けたとはいえ、私はまだ折れずに済んだ。けれど彼女は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙! わかった吸血鬼侍ちゃんにまかせろ無理やりにでも幸せにしてあげちゃうからね! 森人狩人さんも助けてあげてね!! ぜったいだかんね!!!

 

「もちろんだとも。いつか地獄に落ちる時は、ちゃんと君の手を引いて歩いてあげるからね」

 

 よっしやってやろうじゃん! 女神官ちゃん! ここの人たちの身柄はどういう扱いになる? いったん神殿預かりでその後は各自の希望に沿って? じゃあ今ここで希望を聞いてもいいよね?

 

 

 森人少女ちゃんに近寄り、妖精弓手ちゃんに目配せをして場所を変わってもらう吸血鬼侍ちゃん。森人少女ちゃんの正面に跪き、そっと頬に手を触れながら話しかけます。がんばえー。

 

 

 

「誇り高い森人のお嬢さん」

「もし、何一つ生きる理由が無くて、貴女が死を望むのなら」

「苦しみの無い安らかな死を貴女に捧げましょう」

 

「でも、もし何か一つ理由が生まれて」

「それがあれば生きてゆけるのならば」

「ぼくは貴女が欲しい」

 

「ぼくは吸血鬼(ばけもの)です」

「血が無ければ生きられません」

「血があればゴブリンを殺せます」

「ずっとずっと、ゴブリンがいなくなるまで」

 

「だから、貴女の血をわけてください」

「ゴブリンを殺し尽くすその日まで」

「……あるいは、それが生きる理由とならなくなるその日まで」

 

 

 

 

……どうでしょう審査員の≪幻想≫さん≪真実≫さん、吸血鬼侍ちゃんの告白にしか聞こえない交渉は(どきどき)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ごぉーうかぁぁぁぁぁぁく! by≪幻想≫&≪真実≫)

 

 

 

 

 

 

 

 やったぜ。

 

(わたくし)、正直言ってまだ状況が呑み込めておりません」

 

 被っていた毛布を外し、頬に添えられた吸血鬼侍ちゃんの手を自分の手で包み込みながら森人少女ちゃんが呟きます。

 

「ですが、姫様と狩人殿の雰囲気から察するに、あなたは優しい方なのでしょう」

 

「いつまで生きる意思があるかはわかりませぬが、暫しの間、止まり木とさせてくださいませ」

 

 なんとか交渉に成功しました! ここで2人が復讐者(アヴェンジャー)になると今後の冒険に致命的なエラーが出かねません。今後も経過を観察しないといけませんね……。

 

 表の片付けもひと段落したようです。そろそろギルドへ帰って、報酬の受け取りと祝勝会です!

 

 

 

 

 

「……あの変なのに、かんぱーい!」

 

 というわけでギルドの酒場です。森人少女ちゃんは分身ちゃんに預けて一足先に宿へ。しっかりケアするようにお願いしておきました。向こうでは妖精弓手ちゃん(同志耳長ちっこいの)がテーブルの上に乗っかって乾杯の音頭をとっています。無事に生還した喜び。仲間を失った悲しみ、様々な思いを酒とともに冒険者は飲み干しています。そんな中、吸血鬼侍ちゃんはといいますと……。

 

「その、大変申し上げにくいのですが、報酬の査定に時間がかかりそうなんです……」

 

 受付嬢さんにひたすら頭を下げられています。原因はぶっぱした魔法ですね、はい。

 参加した冒険者、退治されたゴブリンの数ともに多いため、今回討伐数は自己申告となりました。もっとも互いにだいたいの数は把握しているため、過大に申告しようとする不届き者はいないみたいです。吸血鬼侍ちゃんも最終局面で討伐した田舎者(ホブ)の金貨は貰っているのですが、≪苦悶の触手≫で喰らい尽くした軍勢の総数がわからないんです。なんせ肉片一つ残っていないもので。

 

「他の冒険者(みなさん)から半数以上のゴブリンを討伐したというお話は聞いていますので、報酬が出ないということはありません。ただ、正確な数が分からない以上今すぐ全額お支払いというのは難しいのが正直なところなんです……」

 

 うーんと、例えばなんですが、金貨以外で報酬をもらうことはできます? 現物、具体的に言うと不動産で。

 

「ええ、住んでいた冒険者が亡くなったり別の街へ拠点を移したりして、ギルドが一時預かりしている物件でしたらありますが……」

 

 じゃあそっちでお願いします。一党で住めるような大きめの一軒家がいいんですけど。

 

「もちろん! 管理の費用も馬鹿にならないですし、この街を拠点としていただけるのでしたら願ったり叶ったりですので!」

 

 あと、女魔法使いちゃんの昇進もできれば。2人がかりとはいえ、小鬼英雄(チャンピオン)を討伐したのは大きいですよね?

 

「はい! 一党全員の昇進が既に議題に上がってますので近々面接が行われます! ちょっとだけ待ってくださいね!」

 

 めっちゃ受付嬢さんの押しが強いです。まぁ大量破壊兵器持ちが面子にいる一党を昇進と不動産で囲い込めるのなら、ギルドにとっても十分に利益が見込めるでしょう。

 

 今後の予定についてはまた後日ということで受付嬢さんと別れ、テーブルのほうへ戻りましたが……おおう、ゴブスレさんの素顔イベはもう始まっちゃってました。乗り遅れて残念です。とりあえずは約束を果たしちゃいましょうか。 そこのおにーさんふたりー!

 

「……来たか」

「随分待たせるじゃねぇか……」

 

 うわ、めっちゃ気合入ってる。どうも2人が耐えられるかどうかのトトカルチョが始まってたみたいですね。あの顔つきから察するに自分が耐えられるほうに賭けてるんでしょうねぇ。

 それじゃまずは重戦士さんから。ちゅー。

 

 

「う、うぐおああああああああああああ!!」

 

 ちゅー。

 おお、見事に耐えきりました。男衆から尊敬の眼差しと女騎士さんから味わい深い表情が向けられています。

 

「っしゃあ!次ぁ俺の番だ! さぁ来い!!」

 

 魔女パイセンと受付嬢さんがびみょい顔で見てますけどいいのかなぁ。まぁいいか、ちゅー。

 

「ふおおおおおおおおおおおおお!? あっ」

 

 ちゅー。堕ちたな(確信)。

 大切な何かを失った表情の槍ニキを、魔女パイセンが何処かへ連れ去っていきました。振り向きざまに吸血鬼侍ちゃんに向けられたウインクはいったい何を意味しているのでしょうか。

 

 お、急に周りがざわつき始めましたね。なにが……ってゴブスレさん!? 兜を脱いだゴブスレさんがケツイに満ちた表情で吸血鬼侍ちゃんの前にやって来ました。本気かゴブスレさん!?

 

「……約束だからな」

 

 あの、嫌なら嫌って言ってね? そ、そういえばほとんど怪我無しで小鬼王(ロード)を倒したみたいだけど、どんな手を使ったの? え、スクロール? ああ!本来オーガに使うはずだったアレ!!

 ゴブリン相手に使ったのなら想定の使用法だろうけど、ちょっと勿体無くない?

 

「血を流すわけにはいかなかった。後で吸われる予定だったからな」

 

 ……なんかほんとごめんなさい。あ、というか槍ニキに命差し出せって言われたときにダメって言ってたじゃないですか。吸血もそれとおんなじだからちゃんと断らなきゃダメですって!

 

「そうなのか?」(ピタッ)

 

 そうわよ(必死)。ほら、向こうで女神官ちゃんと牛飼娘さんが心配そうな顔してるから早く戻って! 今度ゴブリン退治に連れてってもらえればそれでいいから!

 

「わかった」

 

 なんとか誤魔化し切れました。流石にゴブスレさんから吸血は敵を増やしすぎます……。

 

 さて女魔法使いちゃんと森人狩人さんは……おわ!? 急に後ろから細い腕が! ってなんだ妖精弓手ちゃん(同志耳長ちっこいの)か。なんですか急に抱き着いてきて、ボリュームが不足していましてよ? え、少ない友達が他の子と話してて相手がいないボッチを慰めに来た? ほっといてくださいまし!

 

「それから、あの()たちのこと、ありがとね。2人とも、身体の奥底には怨嗟の炎が燻ってるから。身を焼き尽くすほど燃え上がっちゃダメだけど、消えたら多分2人とも生きられない」

 

 長い生の中で、熱を失った森人は枯れるように死んじゃうんだから、と寂しそうに呟く妖精弓手ちゃん。……だから火を絶やさぬよう、燃え上がらせないよう見守るのが吸血鬼侍ちゃんの役目なんでしょ?言われなくてもわかってるって心配性だね2000歳児は。

 

「んなっ!? アンタが何歳か知らないけど、年上に対する敬意ってものを持ちなさいよ! 生意気な小娘はこうしてやる!」

 

 あ、ちょっフードはとっちゃ駄目! 吸血鬼侍ちゃんのアイデンティティがクライシス帝国しちゃう! あ、女魔法使いちゃんバカ笑いしてないで助けて! 森人狩人さん……寝てるぅ!? 

 

「ほーら酔っ払いどもちゅうもーく! ロリ貧乳金髪メカクレ吸血鬼侍とかいう属性過多娘の隠されたオデコちゃんが今明らかに!」

 

 

 

 

 やっ…ヤメロォー!

 

 

 

 

 

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 




心の整理をするために失踪します。

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お読みいただきありがとうございました。

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