ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 なんとか2月中に更新できたので初投稿です。

 ※今回もコンピューター様(Bing Image Creator)による挿絵が入っております。




セッションその19-1

 

 ――さてサブマスターの皆様、シナリオに目を通した感想は如何でしょうか?

 

 ……ふむふむ、なかなか好感触みたいでなにより。必死に頭を下げて万知神さんと覚知神さんに協力してもらったんですから、あの死灰神(たわけ)も少しは改心したみたいですねぇ!

 

 そろそろダブル吸血鬼ちゃんのキャンペーンも〆に入るところさん。彼女たちの物語を『めでたしめでたし』で終わらせるためにも、ここいらで盤面を綺麗にしませんと。

 

 ……というわけで、【彼】には頑張ってもらいましょう!

 

 『愛と正義』の代弁者たる聖騎士(パラディン)様なら、きっと四方世界に新たなる秩序を齎すこと間違いなしです!

 

 

 

 ……そうそう、これは以前知識神さんから聞いた話なんですけどね。

 

 

 

 

 

 ――消極的な善人はみんなから感謝されますけど、積極的な善人は自分以外のだれも満足させないらしいですよ?

 

 


 

 

 やっぱり最後はが勝つ!な実況プレイ、はーじまーるよー。

 

 

「「はっ! はっ! はっ! はっ!」」

 

 

 夏の日差しが強く照り付ける西方辺境、朝早くから牧場にダブル吸血鬼ちゃんの可愛らしい掛け声が響き渡っています。

 

 

 間隔を空けた左右横並びに立ち、伸ばした腕を大きく半回転させながら互いに近付いていく小さな姿。外側に振った両手を相手に向け、タイミングを合わせて指先をくっつける動作を繰り返しているみたいですね。ビシッとポーズを決めたところで周りから湧き上がる拍手、ふたりを指導していた踊り子ママが満足そうに頷いています。

 

 

「うん、息もピッタリだし問題無いでしょう! ごうかーく!!」

 

 

「「わーいやったー!」」

 

「「「「「やったー!」」」」」

 

 

 ぴょんぴょん跳ねるふたりを真似して跳び回るこどもたち。朝からキツい日差しもなんのその、今日も元気いっぱいですね!……と、むふーとドヤ顔なダブル吸血鬼ちゃんを両脇に抱え上げたのは女魔法使いちゃん。ひんやりたわわに顔を埋め甘い香りを堪能しているふたりをまんざらでもない顔で見下ろしています。

 

 

「良い感じに仕上がったみたいね」

 

「うん、ばっちり!」

 

()()()()()()()()()()()()()!!」

 

「まぁ、最初は()()しまっくってたものねぇ……」

 

 

 遠い目をしながらふたりの頭を撫でる女魔法使いちゃん。子どもたちの前で練習できるようになったのはつい最近、それまではしょっちゅう爆発四散してましたからねぇ。

 

 さて、何故ふたりが謎の特訓をしていたのか。その説明をする前に今の王国の状況を理解する必要がある(サム8)。というわけで、ちょっと過去へと映像を巻き戻してみましょうか!

 

 


 

 

「何故陛下は理解されないのだ!? 今こそ混沌の勢力と和平を結ぶ絶好の機会だというのに!!」

 

 

 ――扉越しに聞こえてきた決して看過できない言葉。

 

 スッと無表情になる者。ギリっと歯を食いしばる者、咲き誇る毒花の如き笑みを浮かべる者……反応は様々ですが、声の主に対する好感度は底辺固定間違いなしでしょう。

 

 

「「――――――ッ!!」」

 

 

 ガチガチと牙を鳴らし、扉をブチ抜き推定スゴイ=キライなヤツにアンブッシュを仕掛けようとしたダブル吸血鬼ちゃんですが、背後から伸びてきた腕がその首根っこを掴み、ジタバタと暴れるふたりを捕獲しました。

 

 

「はいはい、ちょっと落ち着きなさいって」

 

 

 赫怒の炎で真紅に輝く瞳のふたりをみんなのほうへと放り投げたのは女魔法使いちゃん。ぽーんと投げられたふたりの落下地点にはエロエロ大司教モードの剣の乙女ちゃんと鎧を解除しピッチリパイスー姿の叢雲狩人さんが待ち構えています。

 

 

「ふふ……怒ってくれるのは嬉しいけど、今はまだその時じゃないかな」

 

「もう、相手の素性も判らないまま喧嘩を吹っ掛けてはいけませんよ?」

 

 

 怒りに震える想い人に頬を寄せ、ゆっくりと後頭部を撫でるふたり。やがて攻撃色のおさまったダブル吸血鬼ちゃんが気まずそうに手を伸ばし、おずおずと二人を抱きしめ返しました。

 

 

「ん……もうだいじょうぶ。あばれたりしないよ」

 

「えう……ごめんなさい」

 

 

 落ち着いたところで床に降ろされ、みんなに頭を下げるダブル吸血鬼ちゃん。後先考えずに飛び出そうとしたことを窘める声が上がりますが、その顔には隠し切れない笑みの色。自分のために怒ってくれたことを嬉しく思わない女の子なんていませんよね……と、どうやらもうひとりブチ切れている子がいますねぇ……。

 

 至高の美に浮かんだ青筋を闇人女医さんの胸の谷間から抜き取った偏光眼鏡(サングラス)で隠し、限界まで後ろに絞った長耳を震わせているのはもちろん……。

 

 

「それじゃ、相手が誰か突き止めてみましょ? 幸いこの国のことに一番詳しい相手が親戚にいることだしねぇ?」

 

 

 吸血鬼君主ちゃんの正室にして上の森人(ハイエルフ)の姫君である、妖精弓手ちゃんです!

 

 

 

 

 

「――で、誰よあのクッソ失礼なヤツ? まさか王宮勤めの騎士なんかじゃないでしょうねぇ、お・()()・さ・ま・?」

 

「うむ、お義兄様呼びは嬉しいがどうか落ち着いて欲しい、上の森人(ハイエルフ)の姫よ」

 

 重厚な机にスラリと長い脚を掛け、胸倉を掴んできた眼前に迫る美貌に冷や汗を流しながら宥める金髪の陛下。執務室に雪崩れ込んできたダブル吸血鬼ちゃん一行の様子から何があったのかを察した赤毛の枢機卿と義眼の宰相も、妖精弓手ちゃんの暴挙を止めようとはしていませんね。

 

 

「ハァ……あんまり君たちを巻き込みたくはなかったんだけど、()()の存在を知ってしまった以上は協力してもらったほうが良さそうだね」

 

 

 ギリギリと陛下の首元を締め上げる繊手に手を添えそっと解きほぐしたのは、酷く疲れた表情の銀髪侍女さん。応接間に移動し、お茶を淹れた後に彼女が語ってくれたのは、声の主によって齎された冒険(災厄)の数々でした……。

 

 

「アレは、所謂『遍歴の自由騎士』ってヤツでね。もとは隣国で活動していたんだけど『王国の危機』を知りわざわざ駆けつけてきたらしい。道中で立ち寄った集落でも住民たちから歓迎され、数々の問題を解決してきたそうだ」

 

 

 呆れた声とともに長机に放りだされたのは上質な紙に綴られた報告書の束。広げたそれを覗き込んだ一行の顔がどんどん渋くなっていくのが容易に見てとれます。互いに視線を交わした一行のなかで最初に声を上げたのは頬を引き攣らせた令嬢剣士さんです。

 

 

「ええと、まずこの『国庫に納める税を誤魔化していた領主を告発し、適正な税を指摘した』ですけれど……」

 

「陛下黙認で積み立てていた備蓄を暴き立て、声高に税逃れを流布したことだね。おかげで領主の領民たちに対する非常時の持ち出しが不可能になったよ」

 

「では、こちらの『森を支配していた魔物を討伐し、危険と隣り合わせの集落を解放した』というのは……?」

 

 

 おお……もう……という感じに肩を落とす令嬢剣士さんを横目にシュッと挙手したのは若草知恵者ちゃんですね。隣に座る若草祖母さんは既に「あっ(察し)」って顔になっているところから視聴神さんたちも想像がついているかと思います。

 

 

「里山のボスだった魔獣を殺し、森の力関係をボロボロにしたことを彼の言葉ではそういうみたいだね。ちなみに鹿が大量に流れ込んできて近隣の農作物に被害が出たことも付け加えておくよ」

 

 

 ですよねー。机に突っ伏した孫娘の背中をおばあちゃんが優しく擦ってあげています。まだまだ続く功績(暴挙)の数々。討伐依頼の出ている怪物(モンスター)を冒険者が相手取っている時に横殴りして仕留め冒険者の行動の遅さを批判したり、ギルドに依頼を出そうとする集落に介入し、大型の怪物(モンスター)を退治したは良いが、残った死体の処理もせずに悠々と歩き去ってしまったりと酷い有様です。

 

 冒険者の行動が遅いのは依頼内容に対して適正な報酬かギルドが判断し、それを冒険者が請け負うためです。また、依頼で討伐した怪物(モンスター)の死体についてもゴブリンのように証明が口頭のみで大丈夫な例外もありますが、基本は特定部位を確保した後埋めるか焼くかすることが依頼に含まれています。それをそのまま放置するとは……と、一枚の紙と睨めっこしていた妖精弓手ちゃんの眉が危険な角度になってますね。深く息を吐き、なんとか気持ちを落ち着けた後に、ピシャリと目を通していた報告書を長机に叩きつけました。

 

 

「この『不当に搾取されていた馬人(セントール)を解放し、違法な労働を強いていた雇用主を連行した』ってのは……」

 

「北方海路の復活と冷蔵技術の進歩で可能になった【鮮魚特急便】の輸送を阻み、雇用主を拘束して王都まで拉致。高給で雇われていた馬人(セントール)は報酬の支払いも無しに放置され、残った荷車は腐敗した魚を満載にしたまま街道に置き去りといった感じだよ」

 

 

 うーんこの。せっかく頭領(ゴジ)奥方(フースフレイヤ)が原子炉の余剰出力を使って冷蔵技術を実現させ、王都まで鮮魚の輸送が可能になったというのに……ちなみにこの数日後、「ウチの子が『お給料貰えませんでしたー!』って泣きながら帰ってきたんだけど!?」と≪光背王(キング)≫ちゃんが王宮に怒鳴り込んできたそうです。

 

 

 

「それで、不幸な雇用主を王都まで連れてきたその足で陛下に面会を求めてきたってわけ」

 

「衛兵からの報告で厄介極まりない類の相手と判ったのでな。放置するよりはと思い早急に顔を拝んでみたのだが……」

 

 

 うんざりとした顔で「ナイナイ」と手を横に振る金髪の陛下。どうやら『早目の爆弾処理』を『自らを待ち望んでいた』と勘違いし意気揚々と乗り込んできた様子。隣国だけに飽き足らず王国にまで足を伸ばすそのバイタリティこそ感心しますが、やっていることは王国にとって害のあるものばかりです。

 

 

「あのさぁ……なんかこう、別件で逮捕とかそういうの出来ない??? 正直言って害悪極まりないじゃないの」

 

「難しいな。実際の現場に居合わせたなら兎も角、伝え聞くだけならば彼の者の行為は正義ともとれる。一部の平等主義者の間では【解放騎士(リベレーター)】などと呼ばれ、持て囃されているとの情報も入っている」

 

「……なに、その【平等主義者】って?」

 

 

 陛下と言葉を交わす度にハイライトさんが死んでいく妖精弓手ちゃんの瞳、トドメとなったのはやっぱり()()の存在でした。輝きの失せた翠玉(エメラルド)に気圧されつつ、陛下が一行へと説明していきます。

 

 

「【背が高いもの】【力が強いもの】【足が速いもの】……様々な種族間での差を【悪】であると断じ、定められた規律の元で平等に生きることを主張する連中の集まりだ。一見すると余が主導する多種族協調路線に沿っているように思えるが、実際は只人(ヒューム)の思想を他種族へ押し付ける善意の押し売りというヤツよ」

 

「規模こそ小さいけど、そういう連中に限って声が大きくてね。やれ『種族専用の椅子を使わせるのは差別だ』だの『耳を隠す意匠(デザイン)の服装は差別だ』だの、本人たち以外の誰も得をしないことばかり主張してるんだよ。一方では空を自由に飛翔する鳥人(ハルピュイア)に対して『飛べない種族に配慮して飛ぶのを控えろ』なんて言ってるんだからお笑い草だよね」

 

 

 いや、まったく笑えないんだけど、と続ける銀髪侍女さんの言葉に「うわぁ……」という顔しか見せないダブル吸血鬼ちゃん一行。

 

 かの先王の時代、王国とは只人(ヒューム)の国家であり、他種族はすべからく『異邦人(エイリアン)』として扱われていた過去があるそうで。多種族連合軍の結成を嚆矢に金髪の陛下が即位してから様々な種族が見られるようになった王国ですが、今でも門閥貴族の間における只人(ヒューム)以外の種族に対する扱いは決して良いものではないんだとか。火打石団の件で半森人夫人さんが触れていましたが、他種族……しかもハーフを迎え入れるなど彼らの常識からすれば言語道断だったことでしょう。

 

 

「そんな連中のなかにも派閥があってね。今回アレと接触しているのは『只人(ヒューム)こそ最も優れた種族であり、遅れている他種族は自分たちが教え導かなければならない』なんて妄想に囚われている馬鹿ばっかさ。あいつら『肌の色で闇人(ダークエルフ)を差別するな』とか『サーカスで圃人(レーア)を働かせるのは彼らに対する侮辱だ』みたいなことを真顔で主張するんだよ?」

 

「……くだらんな。自分らの物言いこそが差別だと気付かんのか、その阿呆どもは」

 

「気付いてたらあんな恥ずかしいこと言えるわけないんだよなぁ……」

 

 

 怒るのも馬鹿馬鹿しいと額に手を当てる闇人女医さんに曖昧な笑みを返す銀髪侍女さん。王都を駆けまわり情報収集をするなかで【平等主義者】たちの馬鹿さっぷりを見続け相当参っているみたいですね……。

 

 

「――で、そんな馬鹿たちが担ぎ上げようとしている大馬鹿は何を考えて和平を結ぶなんて言ってたのかしら?」

 

「本当に聞きたい? 正直に言って、今の段階でも君たちに教えたくないんだけど……」

 

 

 ウンザリした顔で先を促す女魔法使いちゃんに対し、執拗なまでに確認を重ねる銀髪侍女さん。ですがダブル吸血鬼ちゃん一行の意思は固く、ジッと視線で先を促しています。視線の雨にとうとう負けを認めた彼女が懐からスキットルを取り出し、素面では話せんとばかりにラッパ飲み。げふぅと酒精を孕んだ吐息とともに零したのは……。

 

 

 

 

 

『先の常闇ノ皇(プリンスオブダークネス)との戦いを含め、混沌の民たちを殺し過ぎだ! あのような虐殺をおこなった連中は彼らの生命を何だと思っているのか。彼らだって我らと同じこの世界に住まう存在であり、互いに歩み寄り、理解し合い、未来に向かって良き関係を築けるというのに!!』……だってさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「……は?」」

 

「「……ふぅン?」」

 

「「……(ギュッ)」」

 

「「へぇ……」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「――――――あはぁ♪」」

 

 

 

 

 

「うわぁ……」

 

 ……ダブル吸血鬼ちゃんはもとより、血族(かぞく)みんな(約一名(妖術師さん)除く)を本気で怒らせるのには十分過ぎる台詞でした。

 

 

 

 

 

「――さて、そろそろ話を進めても良いかね?」

 

「「はーい」」

 

 

 ダブル吸血鬼ちゃんの怒りゲージが沈静化したのを見計らって切り出したのは義眼の宰相さん。未だ怒り心頭でギリギリと歯軋りをしている妖精弓手ちゃんを横目で眺めつつ、長机の上に広げたるは上質な羊皮紙の巻物(スクロール)です。びっしりと細かい文字が書き込まれており、それを見た瞬間にダブル吸血鬼ちゃんと叢雲狩人さんが机に突っ伏しちゃいましたね。内容を確認する一行に対し、怜悧な口調で話し始めました。

 

 

「例年、王都では馬上槍試合(トーナメント)が開催されているのは知っているかね?」

 

「はいはい知ってます! 私の故郷の(しょう)でも予選が開かれてました!!」

 

「うむ。各地で行われた予選を勝ち抜いた者が王都に集まり、その腕を競い合う。多くの観客が押し寄せ、それを目当てに商人たちも店を出す非常に盛り上がる祭典であるな」

 

 

 小柄な体躯からは想像も出来ないたわわを揺らしながら元気よく答えるのは圃人剣士ちゃん。うんうんと頷く陛下の横では王妹殿下1号2号が冷たい目で陛下を見ていますね。各種族毎に部門が分けられ、体格などによる差が生まれないよう配慮されているものですが……。

 

 

「……『種族差を理由に部門を分けるのは平等ではない』『みな同じ舞台上で競い合うべきだ』なんて声が出始めているんだよ」

 

 

 まぁ君たちの想像している連中だよ、と続ける銀髪侍女さん。どうやら他種族との接触が少なく、それでいて発言力を持っている人々……所謂上流階級の女性が発信源だそうです。

 

 現場の実情を知らず、華美に装飾された宮廷物語に耽溺している女性たちに目を付けた【平等主義者】。資金も発言力も持つ彼女らを取り込むのに【解放騎士(リベレーター)】の英雄譚は最適だったようで、軍の構成が貴族の私兵連合から志願兵を中心とした国軍にシフトしたことも相まって『互いを滅ぼすような争いは止め、未来に向けた関係を構築するべきだ』などと言い出す自称【先進的思想家】も現れているとかなんとか。

 

 

馬上槍試合(トーナメント)の出資者である以上、彼らの声を無視することは出来ぬ。今月の末に各神殿の代表、財界の有力者などが集まり方針を決定するのだが、そこにあの【解放騎士(リベレーター)】が御意見番(オブザーバー)として参加することとなった」

 

「絶対ロクなことにならないわね、馬鹿義姉(ばかあね)の隠し持っている蜂蜜酒を賭けてもいいわ」

 

 

 キッパリと言い放つ女魔法使いちゃんの背後では、勝手に私物を賭けの対象にされ「えー!?」と叫ぶ叢雲狩人さん。まぁ全員同じ側にしか賭けないので賭けは不成立なんですけどね。

 

 

夫人(フラウ)の言う通りだ。馬鹿共の玩具にされぬよう備えておく必要がある……で、なのだが」

 

 

 言葉を切った陛下の視線の先には、激おこ状態が解除され代わりに空腹状態になっていた彼の愛しき義妹たち。少々お行儀悪く焼菓子を口に放り込んでいた彼女たちが視線に気付き、慌てて

口内のものを嚥下しま……あ、吸血鬼侍ちゃんが喉に詰まらせたみたいですね。

 

 

「んぐ!? ……ぷぁ~」

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

「ん、へーきへーき……おまたせ、へーか」

 

「うむ、気を付け給えよ。……さて、余の愛しき義妹(いもうと)たちよ」

 

 

 

 

 

「――そなたたち、()殿()()()()()()()()()()?」

 

 


 

 

「地母神様の代表は巡回牧師(巡業力士)さんたちと地方巡業に出向いていて、太陽神様の神殿長は常闇ノ皇(プリンスオブダークネス)との戦いで負った傷を癒すために療養中……」

 

「はい、ですのでわたしが代理として出席することになりました」

 

「おなじく、(わたくし)神殿長(コーチ)の名代ですわ!」

 

「はー、だからおふたりが此処に……」

 

 

 時間は現在へと移り、場所は御前会議の間。神殿の代表に相応しい装いの王妹殿下1号2号を見て頷いているのは至高神さんの神殿の代表として来ている至高神の聖女ちゃんです。

 

 剣の乙女ちゃんが来ていたのと同じエロ装束大司教の衣を纏い、その肢体は更に成長。神官銃士ちゃんと互角に渡り合えるたわわとなっております。背後に控えている聖騎士君が何故かやつれているように見えるのは、王宮に前泊していたこととは無関係でしょう、きっと。

 

 既に円卓には多くの出席者が集まり、挨拶を交わしたり近況を語り合ったりと情報取集に余念がない様子。令嬢剣士さんも栄纏神さんの信徒代表としてこの場に来ており、今は知識神さんのところの名代――まぁ賢者ちゃんなんですが――と会話を楽しんでいますね。なお交易神さんの神殿の代表の後ろには何処かで見たことのある緑衣の少女が控え、視線の合った至高神の聖女ちゃんにヒラヒラと手を振っています……と、広間の外から歩幅の広い足音が聞こえてきましたね。

 

 

「……っ」

 

「うわ、やっぱり……」

 

「はぁ……やれやれなのです」

 

 

 出席者の内の何人かが顔を顰めているのは、それが誰であるか感じ取ったからでしょう。

 

 嗅いだことのある者にとって耐えがたい、喉にへばり付く灰の臭いとともに【解放騎士(リベレーター)】が姿を現しました!

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 堂々たる体躯を白銀の鎧に包み、甘いマスクには自身に満ちた表情。大仰な身振りで出席者に挨拶をする姿はたしかに貴族の子女からは人気が出るのも頷けます。財界の代表者の一部からは感嘆の溜息が漏れていますが……。

 

 

「酷い臭い……」

 

「鼻がもげるのです……」

 

 

 不審に思われない程度に顔を顰め、思わずといった感じで呟いてしまった女神官ちゃんと賢者ちゃん。緑衣の従者ちゃんは解放騎士に視線が集中しているのをいいことに思いっきり鼻を摘まんでますねぇ……。

 

 

 出席者と挨拶を交わしながら陛下の元へと近付き、騎士の礼を取る解放騎士。両脇に赤毛の枢機卿と義眼の宰相を控えさせた陛下の顔は判り易く無表情です。形ばかりの挨拶を終えたところで解放騎士が出席者へと振り返り、人を惹き付ける仕草を伴いながら声を発しました。

 

 

「さぁ皆さん、早速会議を始めましょう! この国の未来を決める重要な議題です、必ずや有意義なものに……」

 

 

 本人にそのつもりはないのでしょうが、会場のイニシアティブを握るパフォーマンスと思われても仕方がない有様。そもそも御意見番(オブザーバー)である彼には議決権がないのですが……。

 

 

 

 

 

「――いや、まだ全員揃っておらぬよ。それに、卿の席は其処ではない」

 

 

 おおっと、ここで金髪の陛下がインターセプト! 空いていた女神官ちゃんの隣に座ろうとしていた解放騎士を制し、示した先は財界人たちの集まる側の末席。やんわりと手を振る女神官ちゃんに見送られながら指定された席へ座るその顔は赤くなっていますね。隣にイケメンが来た奥様は喜んでいるみたいですが、当の本人は先程座ろうとした席を睨みつけています。

 

 

「この重要な会議の場に遅刻とは、いったい何を考えているのだ! そのような者こそ世の中の平等を乱す『悪』そのものではないか!!」

 

 

 うーんこの、自分もギリギリになって到着したというのにこの言い草。まぁ人目を惹くために最後に入室するのを狙っていたんでしょうが、上手くいきませんでしたねぇ。

 

 

「女性の身支度には時間が掛かるというもの、それがお嬢さん(フロイライン)ならば猶更のこと。卿はもう少し心に余裕を持ったらどうかね?」

 

「何を仰る! 『女性だから』など、それこそが女性蔑視だと思われないのか!?」

 

 

 ……御前会議の間に広がる白けた空気。衛兵たちの顔には青筋が、神殿サイドの表情には呆れと蔑みの表情が浮かんでいます。一部同意するように頷いているのはおそらく【平等主義】の思想に染まった人たちでしょうね。

 

 

「……ええい、まだ来ないのか! いったいどれだけ待たせる気で……っ!?」

 

 

 居丈高に声を荒げ、会場の空気をさらに悪くさせる解放騎士。ですが彼がその言葉を紡ぐ最中、静かに広間の扉が開きました。

 

 

 

 

 

「「「「「――――!?」」」」」

 

 

 

 

 

 ――毛足の長いカーペットをゆっくりと進むひとりの少女。

 

 ほっそりとした肢体を典雅な法衣で包み、手には信仰の証たる古びた事典。

 

 黄金を思わせる豊かな髪を靡かせ歩む姿は見る者の目を奪い、過ぎさまに鼻をくすぐるのは微かな星の香り。

 

 女神官ちゃんと令嬢剣士さんの間に残る最後の席へと静かに腰を下ろし、声を失ったように見つめてくる出席者に向け遅参を詫びる声を発したのは……。

 

 

 

 

 

>『――万知神を奉ずる者の代表として参りました。……身支度に手間取り到着が遅れたこと、深くお詫び申し上げます』

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 ――王妹にして地母神さんと太陽神さんの信徒であるふたり、女神官ちゃんと神官銃士ちゃんによく似た顔つきの、美しい【只人(ヒューム)の少女】です……。

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 

 





 今年中には完結させたいので失踪します。

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