前回、圃人剣士ちゃんの戦意に灯がともったところから再開です。
解放騎士のスゴイ=シツレイな振る舞いにヒートアップしていた圃人剣士ちゃんですが、我らが超勇者ちゃんによってなんとか鎮静化。滾る殺意を大太刀に籠めてウォーミングアップに取り組んでおります。
試合のほうは順調に進み、何度か小鬼と相対するカードも出てきました………といっても圃人用の防具に身を包んだだけの雑魚小鬼だったので、普通に蹴散らされていましたね。むしろ慣れない装備で重量がかさみ身軽さが失われたことで普段よりも脅威度は落ちていた気がします。
槍ニキと勇者ちゃんは相手選手を一蹴し、無事に対戦が決定。蜥蜴人の戦士との試合となった圃人剣士ちゃんも体格差を逆手に取った立ち回りで見事初戦を突破! エネルギー補給にかこつけたダブル吸血鬼ちゃんのハグでトロトロに蕩けちゃってますね。神殿騎士君もカシナート1/6を使いこなし、フル装備のHFOをイチゴ柄パンツ一丁にしておりました。
一方で対戦対手にひっどい傷跡を刻み込んだのは叢雲狩人さん。地方予選を突破し、見事本戦出場を果たした少年剣士が相手だったのですが……。
「ふふ……さぁ、おねーさんを捕まえてみたまえ♪」
「くっ……イヤーッ!!」
伝統と信頼のアタリハンテイ力学に則ったやーなむステップで純朴な少年を翻弄し……。
「おやおや、背中ががら空きだねぇ……ていっ♪」
「ふぁっ!?」
少年がばててきたところで背後から膝カックン。体勢を崩した彼を抱き留め、その下腹部に軽銀製の戦棍を押し当てながら反対の手でそっと首筋を撫でつつ……。
「残念、キミのぼうけんは終わってしまった! ……なーんてね♪ 気が向いたら訓練場に来るといい、おねーさんがキミを一人前の冒険者にしてあげるよ♪」
「あっあっあっあっ……」
「ああ、またひとり犠牲者が……」
「なんてことだ、もう助からないゾ!」
「ひでぇ……あれが教官のやることかよ!?」
耳元で囁かれる甘ったるい声と鼻をくすぐる芳香で少年の脳を無残に破壊した叢雲狩人さんへ飛ぶ、観客席にいた元教え子たちからのブーイングの嵐。こうやって前途有望な若者を確保しているんですね。
そしてもうひとり、ある意味で観客をドン引きさせたのは……。
「お願いします、その武器だけは勘弁してください……っ!」
「えぇと……?」
ノコギリ鉈をガシャガシャ変形させている叢雲狩人さんとよく似た狩装束(外套なしタイプ)姿の白兎猟兵ちゃんの前で見事な土下座を披露する人狼。巨体を縮こませプルプル尻尾を震わせる姿から伝わる本気の度合いに白兎猟兵ちゃんも困惑を隠せないようでした……よっぽど怖いんですね、ノコギリ特攻。
話し合いの結果、駆逐猟兵へスタイルチェンジした白兎猟兵ちゃんがインチキくさい装甲で爪と牙を防ぎつつ、分厚い毛皮の上から長剣でポカポカして試合終了。頭に三段重ねのたんこぶをこさえながらも「あのヤベー得物じゃなくてよかった」とコメントを残し担架で搬送されていくのが印象的でした。
そうそう! ダブル吸血鬼ちゃん一行とは別部屋だったのでカウントしてませんでしたが、先日の宣言通り少年魔術師君も無差別部門に出場しています。初戦は鉱人の戦士と当たり、無事に一回戦突破。初代牙狩りの長から受け継いだ月光の聖剣を振るい、叢雲狩人さんや吸血鬼侍ちゃんのようにステップで相手の攻撃を躱す姿は剣聖さんも思わず腰の愛剣に手が伸びるほどの成長を見せてくれました。
なお試合後、秘められし導きの光に気付いた鉱人たちに周囲を取り囲まれ、暑苦しい質問攻めにあう姿が一部のお姉さまがたに好評であったこともお伝えしておきます。
さて、そんなところでいよいよ吸血鬼君主ちゃんの第一試合が始まりそうです。おみみしゃぶしゃぶやほっぺすりすりで英気を養い、空から降り注ぐ太陽神さんの加護で生命力も充実! ふわふわロングブーツに包まれた足で元気よく舞台に駆け上がりました。
「鎖骨、腋、太腿……いい、実にいい……!」
「肌面積しか見てないとかオマエ素人か? 通が見るのは……あの秘匿されたオデコだぜ?」
「あのちっちゃいおくちで『ちゅーちゅー』してほしい、いやむしろ全身余すところなく『ちゅーちゅー』したい!」
観客席から聞こえる黄色い歓声にぽややんとした笑みで応える吸血鬼君主ちゃん……ですがその笑顔は、対戦相手が登場した瞬間、能面の如き無表情へと変わりました。
「GARAB……!」
>「…………」
煌びやかな全身鎧に身を固めた只人に比肩する体躯。これ見よがしに首から下げた聖印には灰の積もった天秤が刻まれ、その瞳には自らの正義を狂信する危うい光が浮かんでいます。解放騎士が連れてきた小鬼のなかでもっとも優秀であろう個体………小鬼聖騎士のエントリーです!
騎士を気取ってか、抜き放った長剣を眼前に構え、アイサツと思しき姿勢をとる小鬼聖騎士。相対するは無手のまま、塵芥に向けるのと同じ眼差しでそれを眺める吸血鬼君主ちゃん。自分よりも小さな存在からの冷え切った視線が不愉快なのか、小鬼聖騎士は苛立たし気に唸り声を上げていますね。審判の合図と同時に駆け出し、アイサツを返そうとしていた吸血鬼君主ちゃん目掛け右手の長剣を思い切り振り下ろしました!
「――ふむ。ゴブリン退治の専門家として、キミはあの小鬼をどう思う?」
VIP席の手摺に肘を置き、小鬼聖騎士の繰り出す連撃を危なげなく躱す吸血鬼君主ちゃんを見ながら隣で食い入るように試合を見つめるゴブスレさんへと問い掛ける頭領。小鬼の出る試合すべてをつぶさに観察していたゴブスレさんでしたが、溜息とともに紡がれるのは辛辣な意見です。
「………以前、別の聖騎士と戦ったことがある」
腰に佩いた『小鬼殺し』を撫でながら語り始めるゴブスレさん。たぶん雪山で宗教戦争を吹っ掛けた時のことを思い出しているのでしょう。
「半端に只人の剣技を真似ていたアレとは違い、解放騎士とやらは正統な剣を教え込んだように見える」
余計なことを………と続ける兜の奥には危険な赤い光が覗いています。前後にステップを繰り返し攻撃を回避し続ける吸血鬼君主ちゃんに業を煮やしたのか、左手の盾を捨てた小鬼聖騎士が両手持ちの剣で薙ぎ払いを繰り出すのを見ながら言葉を続けます。
「だが、相手が悪かったな。アレの仕込まれた剣は騎士の業、自らよりも小さな相手に振るうのは想定の外だろう。それ故………容易く地金が剥き出しになる」
「GARARA………!!」
そうゴブスレさんが呟いた直後、小鬼聖騎士が今まで立てていた刃を寝かせ、剣の腹の部分で叩き潰さんと振り回し始めました! 優雅さの欠片もない戦いに解放騎士の顔が歪んでいますが、剣から離した左手が吸血鬼君主ちゃんの頭を鷲掴みにしたことで笑みにも似た形に変わりましたね。
「GARA! GAB!! GARARA!!!」
優越感に満ちた瞳で何度も何度も石床へと吸血鬼君主ちゃんの頭を叩きつける小鬼聖騎士。その振る舞いに参加者たちは眉を顰め、観客席からは悲鳴が上がっています。甚振ることに飽きたのか、石床に叩きつけた吸血鬼君主ちゃんの頭を踏みつけ、丹念に踏みにじる姿は醜悪極まりないですね………。
「GARB………!」
嬲っていた玩具がピクリとも動かないことに満足したのか、審判が止める間もなく両手持ちに構えなおした長剣を振り下ろし………!
>「――まだぼく、アイサツをかえしてないんだけど? それにふいうちはいっかいまででしょ?」
――胸甲を紙のように突き破って鳩尾に叩きこまれた小さな拳が交叉法で決まり、自らが地べたを舐めることになりました。
>「ほら、はやくたってよ。ちゃんとアイサツしなきゃ」
石床でのたうち回る小鬼聖騎士に対し、ひどく優しい声で促す吸血鬼君主ちゃん。その手には杖が握られ、リズムを刻むように振られています。
>「ごしゅじんさまにおしえてもらったんでしょ? あいてのめをみて、それからしっかりとおじぎするの………そうだ、おてほんをみせてあげるね」
そう言ってくるりとその場で一回転し、誰もが見惚れるお辞儀を繰り出す吸血鬼君主ちゃん。狩人の一礼ではなく簡易拝謁なあたり『わかってる』感があって良いと思います。よろよろと立ち上がった小鬼聖騎士の瞳には屈辱と恐怖の色がありありと浮かんでいますね。
>「はやくおじぎしてよ。じゃなきゃしあいがはじまらないでしょ?」
少しは共通語が判るのでしょうか、まだ試合は始まっていないという言葉に身を震わせる小鬼聖騎士。あれほど痛めつけたにも関わらず、眼前の吸血鬼君主ちゃんには傷ひとつないのですから。
「GOB………マ、マ………ケ………」
剣を持つ手をだらりと下げ、たどたどしく喋る小鬼聖騎士。その姿に興味を失ったように吸血鬼君主ちゃんが背を向けますが………。
「マ………マヌケ! オマエマヌケ!!」
跳ね上がった剣先が向かうのは吸血鬼君主ちゃんの無防備な背中。勝利を確信した小鬼聖騎士の表情は、すぐに絶望へと変じました。
鎧に敏捷、反発に清浄etc………尋常ではない高さのACに阻まれ、純白のジャケットに傷ひとつ付けられずに止められた切っ先。敏捷ボーナスの乗らない不意打ちだったらワンチャンあったかもしれませんが、残念ながら小鬼相手に吸血鬼君主ちゃんが油断するはずもなく………ゆらりと振り返る吸血鬼君主ちゃんの瞳からはハイライトさんが逃げ出しており、暗い虚のような穴がふたつ空いています………。
「GO………マ、マケ! マケッ!?」
剣を放り投げ、必死にアピールする小鬼聖騎士に叩きつけられる小さな拳。頬を打ち抜いたままベクトルを下方向に変えた一撃は石床に小鬼聖騎士を沈め、地面に転がった剣が杖で砕かれたところで審判が決着を宣言。吸血鬼君主ちゃんの一礼に観客席からは歓声が飛び交っていますね! 戦闘不能状態の小鬼聖騎士が屈強な神官によって囚われた宇宙人スタイルで運ばれていくのを見ながら頭領がうんうんと頷いています。
「あの子が好き放題されているときはどうなるかと思ったが、終わってみれば圧倒的だったな」
「己の学んだ技術を他人に教えるという発想が湧かないのが小鬼だ。『なぜ自分を脅かすようなヤツを増やさねばならない』とな」
「………だからこそ、ここで始末をつけねばならぬのだよ、あの男のな」
ゴブスレさんを挟んだ頭領の反対側で呟く陛下。眼下では解放騎士が救護班に食って掛かり、鉄面皮の神官たちに小鬼聖騎士を投げ渡されて何か抗議しているみたいですね。たぶん「降参しようとしている相手を殴るなど卑怯極まりない!」とかその辺だと思うのですが(名推理)。
「――そんな陛下に良い報せだよ。神殿の準備が間に合ったってさ」
「ほう、あの3人もよくよく我が愛しき義妹たちが好きとみえる!」
「………まぁ、とくにエロ尼僧は、ね?」
スッと音もなく現れた銀髪侍女さんの言葉に相貌を綻ばす陛下。………エロ尼僧というと地母神さんのとこの神殿長さんでしょうけど、残りの2人はいったい誰なんですかね(すっとぼけ)。
「城下で火遊びをしようとしてた連中は既に批評家たちと影を走る者が対処済み。直轄領外縁に布陣してる貴族連中も動きなしだってさ」
「そうか、では余もそろそろ出陣の準備を………む?」
おや、いそいそと金剛石の騎士の準備をしようとする陛下に抱き着くちっちゃな人影が。優しく抱き上げられたのは大きな瞳の中に宇宙が煌めく若草三女ちゃんです。どうしたのだという陛下の問いかけに対し、必死に何かを伝えようとしています。
「あのね、いっぱいくるの。みんながキライなのがいっぱい。みどりのつきから………っ」
「フム。それは街の外にではなく、ここに来るということかな?」
コクコクと頷く若草三女ちゃんの言葉に静まり返る一行。『緑の月から来る』『みんなが嫌いなの』『いっぱい』という言葉から連想されるものと言ったら………。
「――【辺境最悪】に伝達。『不測の事態に備えよ』とな」
「了解。ついでに手隙な面子にも声を掛けておくよ」
消えるようにその場を後にする銀髪侍女さんと入れ替わるように駆け寄ってきた若草知恵者ちゃんに三女ちゃんを手渡し、一行を見渡す陛下。程度の差こそあれ、みんなの顔には旺盛な戦意と澄み切った狂気の色が浮かんでいます(妖術師さんを除く)。
「そっか、地母神様はこれを見越して………」
「鍛冶神様、素敵な贈り物はちゃんとマスターから受け取りました! ありがとうございます!!」
肩の羽衣に指を滑らせ、得心がいったように頷く女神官ちゃん。英雄雛娘ちゃんも"おひいさま"が吸血鬼君主ちゃんに託していたブツ………冒険用背嚢にも似た新しい鞄を大事そうに掲げていますね。他のみんなもそれぞれの相棒に手を当て、意識を戦いのソレへと切り替えていきます。
「――盤面は決着に近づきつつある。この国の未来のため、そして親愛なる友人たちを護るため、そなたらの尽力を期待する」
陛下の言葉にそれぞれが最大の敬意を以て応じる一行。さて、神官たちに論破された解放騎士はどんな様子ですかね………。
「ええい、騎士の手合わせに剣を用いぬなど、これだから社会の常識を弁えぬ輩は………!」
映像を切り替えて早々に飛ばしてますね解放騎士。小鬼聖騎士がアイサツの途中で斬りかかったことを棚に上げ、吸血鬼君主ちゃんへの不満を噴出させています。部屋の中には気絶したままの小鬼聖騎士のほかに頬を腫らした小鬼たちが座り込んでおり、恨みがましい目で彼を睨んでいますね。
「お前たちもだ! 種族を代表して戦った結果があのザマか! 自らが選ばれた者であるという自覚は無いのか!!」
「「「GOB………」」」
ヘコヘコと頭を下げる小鬼ですが、その顔に反省の色などあるはずもなく。あるのは無様に気絶している小鬼聖騎士への嘲りと、試合会場で見かけた雌たちに対する歪んだ欲望だけです。
「………まあ良い。私がこの不平等極まりない大会で勝利し、真に公平である律をこの国に敷くのだ。それこそが私の使命、私が示す正義なのだから! その暁にはあの悍ましき吸血鬼はすべて滅ぼし、彼奴等に魂を売り渡した連中に償いを受けさせてやる………!!」
「「「GOBGOBGOB!!」」」
表情から彼が何を考えているのか読み取ったのでしょう、媚びを売るように小鬼たちが賛同?の声を上げるさまを心地よさげに聞く解放騎士。その瞳は蕩け、獣性に満ちているのが判ります。
平等を謳いながらその実多様性を否定し、すべての尺度を強制的に統一しようとする姿はちょっと見るに堪えません。小鬼たちを下等であると決めつけ、導いてやらねばならないという考えもなかなかに刺激的ですね。そもそも《真実》さんと《幻想》さんが仲良くしているのに嫉妬した《豊穣》さんが無理矢理盤面に捻じ込んできた駒が小鬼なので、ふたりからはあんまり良く思われていないんですよね小鬼の存在………あ、これオフレコでお願いします!
コホン! とはいえ彼の持つ歪んだ熱意は紛れもなく本物。死灰神の信徒としては最上級の意志の強さを持っているため、盤面に狂いを生じさせないとも限りません。万知神さんと無貌の神さんが色々動いてくれているみたいですが果たして………と、そうこうしているうちにまた面白そうな試合が始まりそうです! ちょっと見てみましょうか!!
「おとうさん、がんばってー!」
「応よ! 親父の活躍、良ーく見ておきな!!」
「おねえちゃんもがんばってねー!」
「へへっ、ボクも負けるつもりはないからね!」
泣き黒子長男君の声援に相棒を掲げて応える槍ニキ。ハラハラした様子の長男君の手を握る太眉長女ちゃんが応援しているのは、同じく槍を手に歯を見せる笑みを浮かべる勇者ちゃん(サマルトリアver)ですね。槍使い同士の対戦ということで会場も大いに盛り上がっております。
「セヤァッ!」
「てぇい!!」
審判の合図とともにぶつかり合う両者。突き、払い、打ち、弾く……互いの間合いを削りあう速さ比べは生命を奪う技でありながらも芸術的な美しさを秘めており、見る者の心を奪う輝きを放っています。
「「オォォォォッ!!」」
渾身の突き同士がぶつかり合い、穂先の一点で均衡を保つ暴威。磁石が反発するように互いに距離をとったところで、槍ニキが獰猛な笑みを浮かべたまま勇者ちゃんへと話しかけます。
「槍同士なら或いは……とも思ってたが、やっぱ強ぇな嬢ちゃん!」
「えへへ……ボクもビックリだよ、押し切れない相手がいるなんてね!!」
「このまま競り合いを続けるのも悪かねぇが、この戦いはなんでもアリだからな……使ってくれや、嬢ちゃんの相棒をよ?」
「……いいの?」
相棒を構えなおし、身を地に伏せるように深く沈み込む肉食獣の姿勢で笑う槍ニキ。幾ばくかの逡巡の後、勇者ちゃんが槍を石床に突き立て、右手を高々と掲げました! 眩い光が会場を包み、輝きが収束した手には彼女の呼び声に応え、世界のどこからでも駆けつける伝説の聖剣が!!
夜明けの輝きを纏う己が半身ともいえる剣をゆっくりと振るい、槍ニキへと切っ先を向ける勇者ちゃん。相対する槍ニキの姿はまるで魔王へと挑む勇者が如き迫力に満ちています。
「――あんまり時間をかけると結界が割れちゃうから、悪いけど1分で決めるよ!」
「――ハ、そこは『30秒で十分だ』って言うところだろうが……よ!!」
――交差する鋼と星の煌めき。観客たちの目に映ったのは、頬に一筋の傷を負いながら僅かに立ち位置を変えて剣を振りぬいた姿勢の勇者ちゃんと………。
「………くっそ。やっぱ姐さんにもっと詳しく教わっとくべきだったなぁ………!」
悔しさのなかに『届いた』という達成感を隠しきれない、槍ニキの崩れ落ちる姿でした。
「むむむ………なんと羨ましい! 今からでも飛び入り参加ということで………」
「おいバカやめろ。………どうだゴブリンスレイヤー、英雄に指先を引っ掛けたぜ、アイツ!」
もう辛抱堪らん!とVIP席から飛び出していきそうな女騎士さんを羽交い絞めにして必死に抑え込む重戦士さん。その顔には同じ冒険者として遥か高みに座する白金等級に刃を届かせた槍ニキの奮闘に対する敬意と対抗心が溢れていますね。
「――俺には届かん世界の話だ。だが………」
重戦士さんの言葉にそう返し、周囲を見渡すゴブスレさん。彼の目に映るのは、槍ニキの敢闘に盛大な拍手を送る観客たちと、それを喜びに満ちた瞳で見ている子どもたちの姿。
「『英雄』というのも、きっと悪いものではないのだろうな」
「――あら、アンタも立派な英雄じゃないの、オルクボルグ」
そう声を掛けたのは、両脇に牧場姉弟を抱えた妖精弓手ちゃんです。そっとふたりを下ろし、パパへと駆けよる姿を見ながら言葉を続けます。
「子供たちにとって、パパはいつだって『英雄』よ! それにアンタがいなきゃシルマリルにヘルルイン、ほかのみんなだって此処まで辿り着けなかったもの。そこんとこ、しっかりと誇りなさい!!」
「――そうか」
姉弟を抱き上げ、周りを見渡すゴブスレさん。みんなの顔には賛同の笑みが浮かんでいます。妖精弓手ちゃんの言う通り、『彼』がいなければ、この【ゴブリンスレイヤー】たちのお話は成り立ちませんからね!
さて、次回はいよいよ圃人剣士ちゃんvs解放騎士………の前に、少年魔術師君による吸血鬼殺しチャレンジです! はたして彼の刃は恐るべき吸血鬼に届くのでしょうか、乞うご期待!!
今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。