ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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お正月休みが終わってしまうので初投稿です。

気付けばUA25000を超えていました。
拙作をお読みいただきありがとうございます。


セッションその5ー2

 前回、ダブルデート(物理)午前の部が終了したところから再開です。

 

 分身ちゃんたちBチームが集合場所の酒場に到着しました。午前中に銀玉入れをやっていたお店ですね。中には既にAチーム一行が待っていて、席取りを兼ねて注文を済ませていたようです。隣の卓では異種族3人組が口喧嘩を楽しみながら昼食を取っている様子。うん、平常運転だな!

 

「ごめん、遅くなったわ」

 

「いえ、店の前の遊戯を楽しんでいたので、此方が早く着いただけですから」

 

 (一応)常識枠の女魔法使いちゃんと森人少女ちゃんが挨拶を交わす一方で、分身ちゃんを抱えながらスッと席に滑り込む森人狩人さん。早速隣の妖精弓手ちゃんをからかい始めています。吸血鬼侍ちゃんは剣の乙女の膝の上でチーズ入りの腸詰を頬張り、隣に座っている蜥蜴僧侶さんと一緒に「甘露!」状態。それを眺めている剣の乙女の前には米を鶏肉や野菜と一緒に炒めて炊いたもの(チキンピラフ)羊肉の串焼き(シシュ・ケバブ)馬鈴薯のマヨネーズ和え(ポテトサラダ)が並んでおり、女性にしてはなかなかの速度で口に運んでいます。デスクワークが多いとはいえ流石金等級、健啖家ですねぇ。

 

 後続が来たのを見計らって、獣人女給さんが他の料理を運んできてくれました。ガーリックオイルのパスタに川鱒のムニエル、塩漬け豚肉の煮込み(アイスバイン)に付け合わせの甘藍の漬物(ザワークラウト)と種類も豊富です。

 普段は硬いパンにシチュー、付け合わせに腸詰や揚げ芋の冒険者メシがデフォルトの一党。食事療法やおやつ代わりに別メニューを頼むこともありますが、基本は質素な食事で過ごしていますので目の前のちょっと奮発した料理にみんな目を輝かせています。っていうか朝のエビといい今回のパスタといい結構ニンニクをガッツリ食べてますね吸血鬼侍ちゃん。苦手なのは花の匂いらしいので食べるぶんには問題ないんですねぇ。

 

 

 さて、おなかもいっぱいになったところで午後の部開始です。先手は分身ちゃん率いるBチーム。メンバーは女魔法使いちゃんと入れ替わりで剣の乙女が加入しています。

 お昼を食べたばかりですし、午後も買い食いというのは芸が無いですね。なにか面白い物でもあればいいんですが……おや、複数の天幕が集まっている場所に人が群がっていますね。なんでしょう?

 

「どうやら蚤の市みたいだね。引退した冒険者や骨董品店なんかが色々珍しいものを並べていたよご主人様」

 

 先行して見に行った森人狩人さんによると、胡散臭い代物からマジックアイテムかもしれないものまで玉石混交で売られている様子。外れ商品を買ってしまったら大損ですが、こっちには稀代の名鑑定家が一緒にいますからね! 掘り出し物を探しに行ってみましょう!

 

「お、なかなか良いモンに目を付けるじゃねぇかお嬢ちゃん!」

 

 頬に大きな傷跡の残る大柄な男性が店主の露店を覗いていた分身ちゃん。おそらく元冒険者なのでしょう、使っていた武具や防具とともに興味深い品物が並んでいました。

 

「そいつは遺跡で発見した古代の遺物でな、頭に装着すると装備した者の語尾を強制的に変える魔法がかかっているんだ」

 

 いや、呪いのアイテムじゃん。しかも外見がケモミミの生えたカチューシャって、製作者の性癖の歪みが具現化したような品物じゃないですか。

 

「世間には何種類か出回っているらしくてな、そいつは語尾を【にゃん】にする猫耳仕様だ。他にも犬耳(わん)兎耳(ぴょん)も発見されたことがあるらしいぜ」

 

 古代人は未来に生きてんなー。でも効果が分かってるってことは、まさか店主がこれ装着したんじゃ……。

 

「いやいや、そいつをうっかり装備したのが俺のカミさんでな、おかげで2人して冒険者を引退する羽目になったってわけよ。ハメちまっただけに」

 

 これ以上子供を増やしちゃ大変だから、装備と一緒に養育費に変えるために今回売りに出したとのことですが、最後下ネタじゃないですかまったく! 嬢ちゃんにはまだ早かったかなって? その時代の最先端は一生現在(いま)が追い付かないヤツだよ! こんな怖ろしい呪いのアイテム買う人なんていな……ってなに横から取り上げているんですか森人狩人さん!? 店主よ言い値で買おうって正気ですか?

 

「逆に考えるんだご主人様。普段強気の義妹(いもうと)君や、きみに恋する少女(剣の乙女)これ(ネコミミ)を装着した時の姿を……実に捗るとは思わないかい?」

 

 

 

 

 

 ……半分出しますね。あと他の人には直前まで内緒ということで、はい。

 

 

 

 

 

 ……ふぅ、世に解き放つには危うい古代の遺物を確保する事ができました! 危険物(ネコミミ)に夢中で忘れていましたが、そういえば剣の乙女の姿が見えませんね。違う店を見ているんでしょうか。

 

 あ、いました。どうやらガラクタ山(ジャンクヤード)化した一画で掘り出し物を探しているみたいですね。腕に下げた籠の中には≪鑑定≫で探し出したのでしょう、いくつも用途不明の物品が放り込まれています。また何かを手に取っていますが、アレは指輪かなぁ。ちょっと興奮した様子で籠に入れ、会計を済ませてご満悦の様子。なにかいいものありましたー?

 

「ふぇ!? え、ええ色々と。神殿で保管している壊れた遺物の補修に使えそうな部品や、単品では不完全な効果しか発揮しない魔道具などがありましたので……」

 

 結構散財してしまいましたと照れる剣の乙女。なるほど、まさにジャンク漁りをしていたわけですね。そういう時には≪鑑定≫能力は便利で羨ましいなぁ。どれが一番の掘り出し物なんです?

 

「うぅ……な、内緒です! 他の方が揃ってからお伝えしますので、今はまだ内緒です!!」

 

 おおう、随分本気で隠したがってますね……。ちょっと聞き出せそうにないので、後のお楽しみにしておきましょうか。一旦買ったものを置きに家に戻るとして、Aチームのほうはどうなってますかねぇ……。

 

 

 

 

 というわけで吸血鬼侍ちゃん率いるAチームです。一党は現在吟遊詩人や大道芸人が集まる区画に来ているようですね。自慢のパフォーマンスや王都で人気の詩、超絶技巧の演奏に調教(テイム)した動物を操るサーカスなど様々な演目が所狭しと行われています。

 失敗した者にはヤジをとばし、見事な技術を披露したものにはおひねりを投げ入れる。日頃娯楽に飢えている人々にとって夢のようなひと時なのでしょう。

 3人はというと、濃いアイシャドウが特徴的な道化師の恰好をしたパフォーマーの前で演目を楽しんでいる様子。ジャグリングやナイフ投げといった目を楽しませる演目を終え、次は楽器を取り出し詩を歌うようですね。

 

 

 深き深き闇の中 愛欲し光求める小さきものの姿あり

 

 其は地べたを這う裸足の鼠 血の海を泳ぎ 寄る辺を探す一匹の鼠

 

 天を見上げ 星に前足を伸ばし 醜く藻掻く事幾年月

 

 やがて鼠は天鼠(てんそ)へと転じ 己が影を友として羽搏く

 

 されど天鼠 光に焼かれ 羽根焼け落ち 焦がれし心は灰と散る

 

 其は黒にして天鼠 只の鼠から生まれ 大山鳴動させる一匹の鼠

 

 

 不思議な韻を踏んだ詩です。森人少女ちゃんが教えてくれた英雄譚に似ていますが、彼女も聞いたことがないもののようですね。歌い終わった道化師はお客さんの歓声に大仰な仕草の礼で応えた後、聞き入っていた3人に近付いてきました。……何故か腰を激しくグラインドさせながら。

 

「ンンン、久しぶりの再会と思えば、随分と変わり果てた姿になったものですねぇ?」

 

 この変態アンタの知り合い? と率直に聞いてくる女魔法使いちゃんすこだよ。いや、「経歴」にもこんな知り合いはいなかったと思うんですが。

 

「ああ、私は悲しい。あんなにも長い間、仄暗い地の底で同じ時を過ごしていたというのに……」

 

 口では悲しいと言いながら、その表情は歪んだ笑みのそれです。その口からは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のが見え……あっ(察し)

 

「……フフフ、ハハハハハハ。イーヒッヒッヒッヒッ! 思い出していただけたようで何より! ……ああご心配なく、私は既に役割(ロール)を終えた身、世界(ルール)に干渉なぞしませんとも」

 

 貴女と違ってね、と嘯く不死の蛞蝓(きみょうなどうぶつ)。他人のことは言えませんが、お前も迷宮から出て来てたんか……。

 

「今の私は道化にして辺境を渡り歩く吟遊詩人! 王都にまで聞こえてきた吸血姫(カーミラ)の噂を確認しに馳せ参じたまでのこと」

 

 いやぁ随分稼がせていただきました、と悪びれもせず語る道化師(フラック)。一応確認するけど、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「もちろんですとも。どちらかというとワタクシ、無貌の神(月の魔物)とは相容れないスタンスですので」

 

 おおう、やっぱりこいつ「四方世界の囲い(第4の壁)」を認識してますね……。とりあえず君の営業活動を邪魔する気はないので、敵対しないことを祈ってるよ……。

 

「ええ、ええ。貴女の活躍を詩にして広める。さすればいずれ多次元界への(ゲート)は開かれる事でしょう! その日まで、陰ながら応援してますよ……ではまた」

 

 大仰な一礼とともに一瞬で姿を消す道化師。周囲に配置してあった商売道具ごと霞のように消えてしまいました。2人とも彼が忽然と消えたことに驚き、魔法か手品かと話していますが、まぁ恐らく()()()()()()()()んだろうなぁ……。っとそろそろ勇者ちゃん一党との待ち合わせの時間ですね。また例の酒場まで戻りましょうか。

 

 

 

「んで、分身ちゃんと一党はこっちで、ちっこいのは別行動ってわけね」

 

 酒場に戻ると、そこには完全装備の異種族3人組とBチーム、それに勇者ちゃん一党が待ち構えていました。Aチームの装備も運んで来てくれていたので、吸血鬼侍ちゃんと女魔法使いちゃんも戦闘準備はバッチリです。酒場で三好圃人斥候の密会を聞き耳していた妖精弓手ちゃんが、纏まった戦力である吸血鬼侍ちゃん一党をゴブスレさんの増援に加えるために分身ちゃんに協力を要請したという流れですね。

 ほんとは吸血鬼侍ちゃんもそっちの応援に行きたいところなんですが、ちょっと世界の危機が迫っているみたいでして……。

 

「まぁ、そっちはそっちで大変みたいだし、死なないように気を付けなさいよ?」

 

 あら、いつもと違って優しいじゃないですか。え、同胞2人の想い人が死ぬのを望むほど落ちぶれちゃいないって? そりゃ失礼しました。あーでも森人少女ちゃんにはギルド支部にでも避難してもらったほうが良かったかなぁ……。ん、どうしたの森人少女ちゃん? ポシェットに手を突っ込んで……ってそれはもしかして精霊術の触媒!? まさか森人少女ちゃん……。

 

「戦うことはできませんが、精霊術で傷を癒したり足止めをすることは可能です。お許しいただけるのでしたら、御傍に置いてくださいませ」

 

 いつの間にそんなの覚えてたの……ってそうか、鉱人道士さん! 例の手ほどきを行ってくれてたんですね。耳長の新芽っ子にしては筋が良い? これは後で樽酒を用意しないと(使命感)

 

 森人少女ちゃんは良いとして、あとは剣の乙女ですね。妖精弓手ちゃんからゴブスレさんが動いていることを聞かされたのでしょう、青ざめた顔で分身ちゃんを抱き締めて震えています……。

 金等級の大司教(アークビショップ)という戦術兵器な剣の乙女ですが、ゴブリンだけはやはりダメみたいですね。ちょっと惜しいですが避難して……っと森人狩人さんその手に持っているのは。良い機会だから彼女にもトラウマを克服してもらいたい? いざという時のフォローはする?

  ……わかりました、やってみましょう! 

 

 森人狩人さんからあるものを受け取り剣の乙女のもとへ近付く吸血鬼侍ちゃん。それに気付いて分身ちゃんを開放する剣の乙女。胸の前で合わせられた手は恐怖に震えたままですね。その手を取り、自分の手と重ね合わせながら吸血鬼侍ちゃんが話し始めます。

 

「こわいよね、身体も心もボロボロに傷つけた相手が近くにいるのは」

「ぼくもこわい。きみや、ここにいるみんながゴブリン(あいつら)に傷つけられるのが」

 

「でも、それとおなじ、いやそれ以上にこわいことがあるんだ」

「それは、きみがずっとゴブリン(あいつら)をこわがっていること」

「ぼくやなかまがいないときに、きみが動けないでいること」

「恐怖に震えたまま、ゴブリン(あいつら)の玩具にされること」

 

「だから、恐怖に立ち向かってほしい」

「恐れをなくしてなんて、いわないしいえない」

「でも、ほんの少しだけ勇気をだしてほしい」

「おなじ恐怖に立ち向かうみんなのために」

「おなじ恐怖を感じているぼくのために」

「どうかおねがいします、一緒に恐怖を乗り越えてくれませんか?」

 

 

 森人狩人さんから渡された真紅のマフラーを剣の乙女の首にかけ、太陽の直剣を差し出す吸血鬼侍ちゃん。無意識のうちに触れていたのでしょう、貧相な襟巻に秘められた力に驚きを隠せない様子の剣の乙女。やがて意を決したのか、直剣を受け取り胸元にしっかりと抱き締めました。

 

「皆恐怖を感じていないわけではない。それは彼女たちを見ていれば分かっていた筈なのに。弱い女ですね、私は……」

 

 でも、という彼女の瞳には僅かですが意志の炎が宿ったように見えます。安心して! いざという時は全力で守るから! ……分身ちゃんが。

 

「馬鹿、そこは嘘でも見栄でも自分が守るって言いなさいよまったく……」

 

 これは手厳しい。でも分身ちゃんも大切な仲間だし、もう1人の吸血鬼侍ちゃんだからね。女魔法使いちゃんに苦笑を返しつつ、腰の村正を分身ちゃんに渡す吸血鬼侍ちゃん。多分こっちの戦いでは威力不足なんで、また二刀流に使ってちょうだいな。

 

「話は纏まったみたいね。オルクボルグはどうせ1人で行こうとするだろうから、驚かすために先回りしてやるわよ!」

 

 妖精弓手ちゃんの音頭で酒場から出撃する混成一党。負けることはないと思うので、あとはみんなが怪我をしないように祈るだけです。

 

「いいなぁ、不謹慎かもだけど、ボクもああいう冒険をやってみたいなぁ」

 

 腹が減っては戦は出来ぬと言わんばかりに腸詰の麺麭挟み(ホットドッグ)を両手に持って頬張っていた勇者ちゃんが零します。そりゃ毎度毎度世界の危機ですからねぇ……。たまには小さな冒険もしてみたいという気持ちがあるんでしょうか。

 

「言い方は乱暴だが、私たちは私たちにしか立ち向かえない問題を解決せねばならん」

「それをやり遂げなければ、この世界は早晩混沌の渦に飲み込まれてしまうのですよ?」

 

 一党の厳しい言葉にわかってるよーと返す勇者ちゃん。ケチャップの付着した指を舐めとり、椅子を蹴るように立ち上がります。

 

「ボクたちが世界を救っても、帰る場所が無くなってたら意味がない。それを守ってくれてるのが彼らなんだ。感謝することはあっても不満に思ったりはしないよ!」

 

 うーん、その発想はやはり勇者ちゃん。常人から見れば困難な道のりでも、やれることをやってるだけと言い切れる強さは尊敬の念しか浮かんできません。付き合わされるのは正直辛いですが。

 

「いい加減諦めるのです。≪託宣(ハンドアウト)≫では同行(PC④)は暫く続くようなのです」

 

 ああやっぱり……。この先もハードモードは続くんですね。

 

 そろそろ儀式の時間なのですという賢者ちゃんの声で一党の顔つきが変わりました。女神官ちゃんが巫女役を務めている儀式の祈りを利用して、霊界(アストラル)に乗り込んでの巨人殺しです! 賢者ちゃんから渡された≪巨人殺し(ストームルーラー)≫を担いだら準備はOK。いざ最終決戦(クライマックス・フェイズ)へ!!

 

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 え、今日は吸わなくていいのかって? いやぁ初心で純真な2人(勇者ちゃんと剣聖さん)の前で吸うのはちょっと……。いや、なんで微妙に残念そうな顔をしてるんです???

 




明日から仕事なので失踪します。

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