ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ 作:夜鳥空
兵站の概念が崩壊する実況プレイ、はーじまーるよー。
前回≪転移≫の鏡の使用料としてソロプレイをこなしたところから再開です。
あ、女魔法使いちゃんには嘘偽りなく事情を話したらちゃんと許してもらえましたよ! 単独で動いていたことは怒られてしまいましたが、今度からは必ず
「魔法の遺物を借り受けてきたというお話ですが、どんな効果を持っているのですか?」
仕事が早く終わったのか、あるいは禁断症状を見かねて侍祭さんが許可を出したのか、珍しく剣の乙女が日が出ている間にこっちへ来ています。吸血鬼侍ちゃんの顔を見るなり分身ちゃんを出すようせがみ、今は分身ちゃんに膝枕してもらってご満悦の様子。完全にたれ乙女になってます。
それじゃ試しに使ってみましょうか。背嚢を降ろして中を漁る吸血鬼侍ちゃん。複雑な刺繍が施された一対の手袋を引っ張り出しました。右手用が白、左手用が黒に染められた手袋を小さな手に装着すれば準備完了です。
さて、手頃な物は……あ、あれがいいかな。森人少女ちゃんが淹れてくれたお茶と一緒に、テーブルの上に剣の乙女が持参した焼き菓子が並んでいます。その一つに左手で触れ、握り込むように手首をスナップ。そうすると……。
「や、焼き菓子が消えてしまいました
ナイスな反応ありがとう森人少女ちゃん。驚きのあまり( ゚×゚ ) な顔になっていて、実にぐうかわですね。次に何も持っていない右手をくるりと回すと……はい! 先ほど消えた焼き菓子が、今度は右手に現れました。さぁ女魔法使いちゃん、このアイテムの効果が分かるかな?
「小規模な物質転移? にしては現出までにラグがあるし、そうなると……」
おお、流石学院主席。早速目の前で起きた現象を理解しようと考察を始めましたね。もう一度お願いいたしますとキラキラした目で追加の焼き菓子を差し出してくる森人少女ちゃん。天使かな?
思考の海に沈んだまま中々浮上してこない女魔法使いちゃん。後ろに回り込んだ森人狩人さんにお山を持ち上げられても気付いてな……あ、流石に気付いた女魔法使いちゃんに殴り飛ばされました。おひさまが見ていない時間にお願いすれば断られないのに、欲望に突き動かされるから……。
「ダメね、降参。情報が足りなさ過ぎて答えを纏めきれないわ」
お手上げポーズをとる女魔法使いちゃん。そのまま殴り飛ばした森人狩人さんをひっ捕らえて正座させてます。あの顔、まったく反省してないですね森人狩人さん。そこに痺れないし憧れない!
「あの、私にも
お、分身ちゃんの膝枕で堕落しきっていた剣の乙女が復活しましたね。吸血鬼侍ちゃんに手渡された手袋を持ち上げ、大司祭としての知識と手袋から読み取れる意匠や内包している魔力から、遺物の来歴を突き止めようとしています。
「なるほど、
◆【
むかし、中国の明に楊良(よう りょう)というたいそう腕の良い庭師がおったそうな。
狗羅太(く らふた)や毘劉陀亜(び るだあ)と共同で、山渡朴巣(さんどぼくす)という庭園を造っていた時の話じゃ。 楊はいつも手ぶらで仕事に出向き、手ぶらで帰っていたのだが、仕事場ではしっかり弁当を食っておった。 不思議に思った依頼主が訪ねると、楊はニヤリと笑うと目にも止まらぬ速さで両の手を衣の中へ。楊の手が懐から抜かれれば、なんと其処には昼食の弁当と酒が。 依頼主これを見て腰を抜かし、「飲弁当裏衣(いんべんとうりい)!」と叫んだそうな。
傍らで見ていた依頼主の妻が面白がり振る舞いの菓子を楊に渡すと、楊これ幸いと次々に懐へしまい込む。やがて菓子の重さに耐えかね、足を滑らせ庭園の池に落ちてしまった。 必死に浮かび上がろうと菓子を懐から出す楊であったが、菓子の代わりに池の水がどんどん入り込み、結局楊は二度と浮かび上がって来なかった。
大事な命を失い、無駄なものを抱えたまま死ぬ悲劇を忘れぬために、飲弁当裏衣の警句は口伝にて後世まで盛大に語り継がれていったそうな……。
なお現在使われている「インベントリーがいっぱいです」や「容量がいっぱいです」というポップアップは、楊の悲しき死に様が原典なのは言うまでもない事実である。 |
出典は民明書房かな??? アレな名称は置いておいて、効果は剣の乙女が説明してくれた通りです。簡単にまとめれば、時間経過による劣化を気にせずに大量の物資を持ち運び出来る冒険者垂涎の品というわけですね。
「まぁ、今までもゴブリンや追剥から奪還した物資の持ち運びには苦労していたけれど、そんな小さなことに使うためにご主人様はそれを用意したわけじゃないんだよね?」
いつの間にか正座から抜け出し吸血鬼侍ちゃんを抱きかかえている森人狩人さんが、猫にするように吸血鬼侍ちゃんの喉元を撫でながら疑問を投げかけてきました。森人狩人さん、今ギルドで増加している依頼ってなにがあったか覚えてます?
「収穫を終え、村に保管されている食料を狙うゴブリンの討伐依頼と、冬を越すための物資輸送……ああ、なるほどね」
納得がいった様子で頬擦りに移行する森人狩人さん。まだおひさまが見てるのでそれ以上はダメです。丹精込めて育てた作物や家畜を利用して作った保存食をゴブリンに盗まれては堪らんと、現在ギルドには多くのゴブリン討伐依頼が集まっています。
今年は新人のモチベーションも高く、例年通り張り切っているゴブスレさんと手分けして依頼をこなす毎日を送っている様子。吸血鬼侍ちゃん一党も勿論参加していますが、冬になると人々の行き来が少なくなり、それに比例して依頼の数も減少してしまうため、春までの生活費を貯蓄するために頑張る新人から仕事を奪うのはちょっと……と心苦しく感じていたところでした。
そこで今回目を付けたのはもうひとつ増加している依頼、冬を越すための物資輸送になります。
こちら3パターンありまして、予め契約した商人に金銭や換金できる特産品を渡しておき、冬が近づいてきたときに物資に換えて冒険者に運んでもらう契約便と、その年の収穫量から必要な物資をギルドに発注する通常便。それと作物の不作や災害、ゴブリンによる襲撃などで想定外の物資が必要になった場合の緊急便があります。契約便や通常便で運んでいた物資が、賊やゴブリンに奪われて村まで届かないといった事態もここに含まれます。
村の生活が懸かっている以上ギルドも輸送依頼に関しては信頼できる冒険者にしかまわさないように注意しているようです。
万が一不届き者が物資を持ち逃げした場合、損失はギルド持ちになってしまうため人格面に問題の見られる冒険者はお断りなんだとか。逆に輸送任務を任されるということは等級が低くともギルドからは信用されているという証明になるため、依頼を持ち掛けられて断る冒険者は少ないみたいですね。
3パターンの中で吸血鬼侍ちゃん一党が狙うのは通常便と緊急便の2つ。契約便に関しては商人のほうから馴染みの冒険者に依頼を振ることが殆どなので新規参入が難しいのと、余裕を持たせた計画で動いているため、あえて急ぐ必要が無いという点が除外理由となります。
一方で通常便ですが、収穫時期によっては冬間近になってからの発注でギリギリになってしまったり、村までの距離が遠く時間がかかることがあり、場合によっては食料の欠乏を招く可能性があります。緊急便に至っては依頼を出した時点で食うや食わずになっていることもあるくらいですので、可能な限り急いで物資を届けなければなりません。
いざ物資を運ぶ段階になっても、村一つが求める物資は膨大で荷馬車を使わねば到底運べない量になりますが、量が増えれば当然運ぶ速度は遅くなり、物資を護衛する人数は増え、賊に襲撃される危険性も増してしまうという悪循環が待ち受けています。
そのような条件の中で、『昼夜関係なく』『大量の物資を』『非常に高速で』運べるとしたら……どうでしょうか監督官さん? 吸血鬼侍ちゃんに任せてみませんか?
「全部引き受けていって、どうぞ」
吸血鬼侍ちゃんの脚に縋りつき、アリガットウ、アリガットウと虚ろな目で呟き続ける監督官さん。ほら、受付嬢さんと森人少女ちゃんがドン引きしてるから正気に戻ってください。
ギルドとしてもこちらの申し出は願ったり叶ったりだったようで、是非にという形でたくさん引き受けさせてもらえました! 優先順位に応じて順に輸送する流れになりますが、ここでひとつ問題が。それなりに大きいとはいえ辺境の街だけで物資を集めてしまうと、急な値上がりなどで街の住民の生活に影響を及ぼす可能性が出てしまいます。もちろんある程度は経済を回すために調達しますが、なるべく廉価で仕入れて供給量を多くしたいんですけどねぇ……。
おや、どうしたの森人少女ちゃん、手を上げちゃったりして。
「主さま、
手袋を嵌めた状態で分身ちゃんを呼び、現在分身ちゃんは辺境の街で買い付けを、本体と森人少女ちゃんは他の街へ買い出し巡りを行っています。剣の乙女に紹介状を書いてもらい、訪れた街の交易神の神殿に突撃。事情を説明したうえで、適正な価格で必要な物資を大量に入手できるよう取り計らってもらう契約を取り付けました。コネは持っているだけではダメです。お互い使ってこその人脈ですからと微笑む森人少女ちゃんは本当に頭の良いお方。
生まれ持った誠実さと一流の商人顔負けの交渉術を使い分け、交易神の神官と丁々発止のやりとりを行う森人少女ちゃん。その姿は小さくも輝いて見えました。
「この倉にお買い上げの小麦粉が保管してありますが、おふたりでどうやって運び出されるおつもりで?」
只人の番頭さんに案内されて2人が訪れたのは小さな石造りの倉庫。丈夫な木製のドアの閂を外し、中を見せてもらえばそこには山と積まれた小麦の袋。粉にして保存しているのかと思ったら粒のままなんですね。粉にすると吸湿しやすっくなって劣化が早くなる? なるほどなー。
クンクンと袋越しに匂いを嗅ぎ、細い竹を袋に突き刺し粒の状態を確かめる森人少女ちゃん。どうやら満足のいく品質だったようで番頭さんに取引成立のお礼を言ってますね。見た目からは年齢が分からない森人とはいえ、美少女に笑顔を向けられて嫌な気持ちになる男は少ないですからね。森人少女ちゃん、怖ろしい娘!
それじゃしまっちゃおうね~。主さまお願いしますという声とともに手袋を嵌めた左手で袋に触れる吸血鬼侍ちゃん。次々にインベントリーに収納していきます。僅か30分ほどで倉の中は綺麗さっぱり空っぽになりました。
「さぁ、次は干し肉と燻製、それに葡萄酒でございます。その後は燃料と毛布になりますので、手早く参りましょう」
あっけにとられた様子の番頭さんに向かってにっこり微笑みながら急かしてますね。これは番頭さん今夜森人少女ちゃんの笑顔が悪夢に出てくるんじゃないですかねぇ……。
同様の手段で他の街もまわり、辺境の街へ戻ったのは日が落ちた後でした。どうやら分身ちゃんたちの買い付けは既に終わったようで、おゆはんを準備して2人の帰りを待っていてくれたみたいです。ただいまー。
「おかえりなさい。こっちでも穀物と干し魚はまとまった量を用意できたわ。少しだけど建物補修用の木材や釘なんかもね」
「オルクボルグが下宿している牧場の娘さんに掛け合って、見てくれが悪くて売りに出せなかった燻製なんかも買い取らせてもらったよ。チーズは
みんな方々を駆けずり回ってくれてありがとう。明日から緊急度が高い順に吸血鬼侍ちゃんが特急輸送を開始するので、分身ちゃんは引き続き森人少女ちゃんと買い付けでよろしく。
女魔法使いちゃんと森人狩人さんはゴブリンの湧き潰しをお願いします。歯抜けの一党で行動するよりも、ゴブスレさんと一緒のほうがある意味安心できるかなぁ……。
「了解。気分が高揚してきたよ……ところでご主人様、今日は指輪を嵌めてくれないのかな?」
森人狩人さんが艶やかな流し目を送ってきますが暫くお預けです。普段の吸血ならともかく、あっちは吸血鬼侍ちゃんの抑えが効かないので明日に響きかねませんから。
「それなら仕方ない。かわりに抱き枕になってもらおうかな。それならいいよね?」
このわざとらしい
「今夜は
アッハイ。それじゃ森人少女ちゃん、よろしくお願いしますね……。
「ありがとうございます! これでなんとか冬を越すことができそうです……」
はい、あの後誰一人欠けることなく朝を迎え、無事に輸送依頼を開始することができました。数日かけて既に両手足の指では足りない数の村を巡り、発注を掛けていた村には依頼通りの物資を、緊急支援が必要な村にはギルドで準備してもらった証書に記入の上、必要な物資を置いていくスタイルですね。
どうしても代価が準備できない場合は翌年の収穫から支払ってもらうことになりますので、その証明書として後ほどギルドへ提出し、立替分の清算となります。
うーん、やはり2件ほど襲撃を受けて物資が届いていない村がありました。知恵を付けたものがいるのか、あるいは≪祈らぬ者≫に堕した冒険者が出てしまったのか。もしかしたら近いうちに調査依頼が来るかもしれません。
減った物資の調達は分身ちゃんと森人少女ちゃんが精力的に取り組んでくれていますので問題はないでしょう。もし余ってしまっても、収納している限り品質は劣化しないので持ち続けていても大丈夫というのも大きいです。
一瞬だけ投機に役立てようかという考えが頭をよぎりましたが、森人少女ちゃんと交易神の神官、2人から絶対ダメと念を押されてしまいました。ギャンブルダメ、絶対。
「主さま、少しだけお時間をいただいてもよろしいでしょうか」
おや、なにかな森人少女ちゃん。まだ暗いうちに今日の輸送依頼に出発しようとしていた吸血鬼侍ちゃんをパジャマ姿の森人少女ちゃんが呼び止めました。その表情は真剣で、どこか緊張を孕んでいるようにも見えます。
「先程、
万知神さまから!? ってアレ? 森人少女ちゃんって万知神さまを信仰していましたっけ?
「いえ、特定の神を信仰してはおりませんが、主さまが奉ずる方ですので敬意は抱いております」
それは嬉しいなあ、ありがとうね。それで万知神さまはなんておっしゃってたの?
『
『
ちょっと私怨に溢れかえってませんか万知神さま??? え、
なるほど、これは重要なイベントに繋がりそうですね。≪託宣≫的には一党全員で行くのがよさげな感じ? え、ゴブスレさんたちも? じゃあみんなを起こしてギルドへ向かいましょうか。
なにやら行く先からクッソ重たい変動重力源を感知した気がしないでもないですが、そんなんじゃ吸血鬼侍ちゃんを止めることはできないのだ! さぁ、冒険だ!!
今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。
好きなキャラのプライズ景品が手に入ったので失踪します。
いつも誤字脱字のご連絡ありがとうございます。
お気に入り登録や感想、評価についても併せて入れていただければ幸いです。
お読みいただきありがとうございました。