ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ 作:夜鳥空
前回、
竜殺し! 冒険者の中でも一握りの強者しか成しえぬと言われている偉業のひとつですが、二点ほど疑問が。まず近くにドラゴンがいるのかどうか。そして、そのドラゴンは
「ああ、うってつけのが近くに住み着いてやがる。元々は里に出入りする隊商を驚かしては食料を失敬するセコいヤツだったんだが、代わりに害獣除けにもなってたから見逃してやってたんだ。だがデカくなってドラゴンらしく貴金属や宝石に興味を持ち始めてな? 近頃は宝石細工の荷馬車まで襲うようになりやがった!」
憤懣やるかたないといった表情で話す隻眼鍛冶師さん。オマケにだ、といって一党を見回しながら言葉を続けます。
「どうやって嗅ぎ付けたのか分からねぇが、オメェたちが送ってきた軽銀にご執心らしく、毎日のように里の上を旋回するようになっちまった!」
この状況が続くようなら商売あがったりだぜと吐き捨てると、腕組みをしたままドカッと座り込み深い溜息を。生産物が送れなくても、それを代金に購入している食料や日用品が届かなくても問題というわけなんですねぇ。
竜殺しは名誉と嘯きながら力の弱い幼竜を狩る冒険者が後を絶たないため、冒険者はギルドからはむやみに竜を刺激しないよう言い含められているのですが、実際に被害が出ているのならば話は別です。王国の領域では無いため冒険者ギルドはありませんが、ドワーフの有力者、長老などから許可を得られれば討伐に赴くことができるかもしれません。隻眼鍛冶師さん、誰か竜殺しの許可を出してくれそうな偉い人のコネとかありません?
「……ちみっこよぅ。お前さんの目の前にいる樽
……え? そうなんですか? こう見えて商工会の顔役である長老の一人?
>「……たいへんしつれいしました」
気にすんなと笑い飛ばしてくれましたが、考えてみれば軽銀の分析を任されるくらいの人物ですからね。腕の立つ職人が尊敬を集める業界なら当然かもしれません。
討伐の許可が頂けるなら是非狩りに行きたいのですが、もう一点確認しておくことが。
蜥蜴僧侶さん、竜司祭としての立場から見て、竜を討伐することって大丈夫なんですか?
「フム、もっともな疑問ですな。確かに我ら竜を崇め、恐るべき竜に至る道を歩む者。ですがご安心を、竜とは我らが目指す到達点であると同時に、挑むべき目標でもあります故」
機会あれば挑戦すべき存在ですからなぁと胸を張る蜥蜴僧侶さん。なるほど、ただ敬うのではなく、超えるべき壁としても認識されているんですね。
「問題が無いようなら討伐対象の情報収集と準備に取り掛かりましょ? 他の連中に横取りされる前にケリをつけないと」
女魔法使いちゃんの音頭でで各自準備に取り掛かります。商工会や衛兵の詰め所で竜の特徴を聞いたり、討伐やその後の処理に必要な物資を揃えたり。順番に片付けなきゃですね!
「討伐対象は
各々情報収集を終え、一党は現在酒場で夕食をとりながら、ドラゴンについてのおさらいを女魔法使いちゃんから受けています。鉱人道士さんと蜥蜴僧侶さんは火酒を、女魔法使いちゃんと吸血鬼侍ちゃんは葡萄酒を頼み、濃い味付けの煮込みと蒸かした
「赤竜の特徴は炎に対する完全耐性ですな。青年段階ともなれば魔法の武器以外の物理攻撃は通りが悪く、その竜鱗は呪文に対する抵抗を持ち始める時分。逆に冷気に対しては拙僧のように不得手としているかと」
たっぷりとチーズをかけた
「手柄と栄誉に目がくらんだ若僧が10人ばかりで寝床を襲ったが、逃げ帰った一人以外こんがりローストされておった。そいつから寝床への行き道と周辺の地形を聞き出してきたわい」
これらの情報から推察される赤竜の性格は……。
>「ドワーフのせんしをかえりうちにできるていどにきょうりょくで、ちょくせつさとをおそわないていどにあたまがいい。でも、すみかがバレているのにひっこししないのはざんねんしょう」
竜殺しの勝敗は事前の準備でほぼ決まってしまいます。耐性と弱点を暴かれ、
「そうじゃ眼鏡っ子、部屋は二人用を二部屋おさえといたからの。満腹はイカンがちみっこの腹を空かしたままにゃせんようにの?」
「……お気遣いどーも」
はい、時刻は正午をまわったところ、一党は赤竜が寝床としている坑道跡に到着しました!
吸血鬼侍ちゃんは分身ちゃんと一緒に、天井に開いた穴から坑道を見下ろす体勢で待機しています。穴の大きさはドラゴンが飛びながら通り抜けられるほどで、もはや穴ではなく地面の裂け目と言っていいでしょう。
下を覗き込めば……いたいた、赤竜がだらしねぇ恰好で寝こけていらっしゃる。その手前側には、岩陰に隠れるように3人が待機しているのが見えますね。下側の準備は大丈夫そうですので、竜狩りの開始と洒落込みましょう!
まずはおはようの挨拶から。吸血鬼侍ちゃんが≪手袋≫から
突然の痛みに跳ね起きた赤竜。頭上を見ればクッソ小憎らしい顔をした吸血鬼侍ちゃんが見えているでしょう。怒りの咆哮を上げ、上空に飛び上がってきました。
はい、ここで問題です。10メートル近い大きさのドラゴンが、鳥や虫のように真っすぐ上に飛行できるでしょうか? その答えは眼下に見えてますね。頭部は上を向き吸血鬼侍ちゃんを睨みつけていますが、狭い空間を旋回しながら徐々に上がってきています。
恐るべき飛行能力を持つと言われるドラゴンですが、その実成長すればするほど
今この瞬間にも吸血鬼侍ちゃんを噛み砕かんとその顎を開いていますが、上昇速度は遅く、飛行に気を取られているため下の3人が行動していることに気付いていない様子。天井の裂け目から飛び出し、空中で待ち構えていた吸血鬼侍ちゃんを捕捉した赤竜は、その強靭な顎を……。
>「ざんねん、またきてねー」
「DORARAGO!?」
裂け目の反対側で
「任せろい!
どぷん!
ヨシ! 落下地点に先回りするように発動した≪
「≪
双眸を穿たれ悲痛な叫びを上げる赤竜。閉ざされた視界のまま必死に手を伸ばし、液状化していない地面の淵へ手をかけました。ありったけの力を込めて身体を引き寄せ、沼から這い上がらんと唸り声を響かせています。
口からは炎がチロチロと見え、好き勝手やってくれた
>「あったよ!まるたが!」
>「でかした!」
「DOR……!?!?」
天井の裂け目から飛び込んできた2本の太矢に似た影。重力を味方に落下してきた吸血鬼侍ちゃんと分身ちゃんが、抱く様に構えた先端を尖らせた丸太を赤竜の両の手に深々と突き立て、地面に縫い止めました!
必死に引き抜こうと暴れる赤竜ですが、固い地面を貫いた丸太は微動だにせず、まったく抜ける気配がありません。腰部と翼、そして両の手の甲からの出血で徐々に動きの鈍くなる赤竜。その前に進み出たのは、竜を敬い、竜を目指し、そして今竜を己が糧にせんとする蜥蜴僧侶さんです。
「その血肉のすべて、我らが強くなるための糧とさせていただく。いざお覚悟召されい!」
胸から下が泥中に埋まり、頭部を突き出した体勢で蜥蜴僧侶さんの宣言を受ける赤竜。意味は通じなくとも自らに迫る死の気配は察したのか、地面に竜牙刀を突き立てた姿勢の蜥蜴僧侶さんをその牙で粉砕せんと首を伸ばし……。
「GO……DO……」
前に倒れ込むような姿勢で噛みつきを躱し、地面を鞘に見立てた竜牙刀を逆手持ちで跳ね上げるように抜刀。下段からの鋭い切り上げによって、赤竜の首がドサリと地に落ちました……。
血の噴き出る首に大きな革袋をあてがう吸血鬼侍ちゃんと分身ちゃん。竜の血は貴重な触媒になるのでしっかり回収しておきましょう。袋を取り換えながら繰り返し、出が悪くなったところで作業は
強靭な鱗を意に介さず牙を突き立て、吸血する2人。肉に血が回ってしまうと
ちゅーちゅーという音が坑道跡に暫く響き、ぷぁっという声とともに2人が口を離しました。
>「「……まんぞく」」
両手を磔にしていた丸太を造作も無く引き抜き、片腕ずつ2人で握った赤竜の死体を泥沼からすぽーんとぶっこぬくシュールな光景。ブレーンバスターの如く腹を上にひっくり返された体に蜥蜴僧侶さんが近付き、斃した相手を称える祈りを捧げながら胸部に竜牙刀を突き立てます。
2人が吸い尽くしたため傷から血が流れることはなく、そこから両の手を差し込んだ蜥蜴僧侶さんは体内から赤黒い塊……竜の心臓を引き抜きました。
常人であれば眉を顰め、あるいは声高に野蛮だと叫ぶような光景ですが、此処にいる一党の目には祖竜信仰の真髄たる神聖な儀式に映っています。両手に収まらないほどのそれを天高く掲げ、大きく広げた口で齧り付く蜥蜴僧侶さん。倒した相手の力を取り込むように咀嚼し、飲み込む行為を繰り返していますね。
「……流石強き竜。まだ年若くとも拙僧だけでは受け継ぎきれませぬな」
半分ほど残った心臓を吸血鬼侍ちゃんが用意した防水布に乗せ、若干悔し気に呟く蜥蜴僧侶さん。いや、それ残りだけでも20kg以上あるじゃないですか。あとは皆で美味しくいただきましょう?
さて、皮を剥がすのはプロにお任せするとして、先に傷みやすい内臓を処理しておきましょうか。まず頭部は討伐の証明になるのと、その後≪
消化器官系……いわゆる白モツは中に未消化物が入ってますので、破かないよう慎重に取り出し防水布の上に。循環器系である赤モツはそのまま袋に詰め、≪手袋≫へしまっちゃいます。
四肢と翼を含む胴体を収納すれば、残るは防水布により分けておいた白モツです。処理が甘いと臭みが出てしまったり、食感が悪くなってしまうので手早く洗浄したいのですが、残念ながら近くに水場はありません。じゃけんまとめて≪
無傷で戦闘を終えられたので、≪
「綺麗にはなったのはわかるけれど、気分的にさっさとお風呂に入りたいわね……」
わかりみ。あ、鉱人の人たちって温泉が好きみたいなので、結構街中にも入浴施設があるらしいですよ? 採掘や製錬作業が昼夜問わず稼働している都合上、酒場は24時間営業しているそうなので、戻ったらドラゴンのフルコースを楽しみましょう!
「あ、ちょい待てちみっこ!
あ、はい。すぐに回収しまーす……。
「ほんじゃ、旨い酒と、戻ってきた商品と、ついでに珍妙な冒険者たちにぃ……乾杯!!」
時刻は深夜、もうすぐ日が変わろうという頃合いですが、一党は隻眼鍛冶師さんや仕事を終えた職人さんたちとともに宴の真っ最中です。
持ち帰った赤竜は職人の早業で解体され、見事な鉱人風料理へと変貌しました。。机の上には所狭しとドラゴン料理が並べられ、みな酒を片手に舌鼓を打ってますね。
「うん、採れたてだから食感も抜群だし、このタレがまた合うわね~!」
女魔法使いちゃんが口に運んでいるのはモツの串焼きですね。大蒜を効かせた甘辛いタレを塗りながら鉄板で焼き上げたそれを片手に持ち、普段はあまり飲まない麦酒をお供にパクついています。
「こっちの煮込みもなかなかイケるぞ。部位によって味が違うのも堪らんわい!」
「こりゃまた酒が進んでいけねぇ! お~い、樽で追加持ってこいや!!」
鉱人道士さんと隻眼鍛冶師さんはモツ煮を大皿から流し込むように食べてます。
「やはり
ハツとチーズの竜田揚げを口に運んでは雄叫びを上げている蜥蜴僧侶さん。周りの酔っ払いたちが面白がって次々に皿に追加を乗せてますが、消えるように無くなっていってます。まさか本気で1人で心臓を食べ切るつもりなんでしょうか……。
「2人とも、あんだけ吸っておいてよく食べるわねぇ……」
>「おいしいものはべつばらなので~」
>「うめ うめ うめ」
なんだか女魔法使いちゃんが呆れてますが、吸血鬼侍ちゃんと分身ちゃんも何かを食べているみたいですね。分身ちゃんは……タンステーキでしょうか? 香辛料をたっぷり使ってスパイシーに焼き上げた塊をナイフとフォークを優雅に使って口に運んでいます。
一方で吸血鬼侍ちゃんのほうは……? 一心不乱に赤くて薄いものを食べ続けています。なんでしょうアレ?
「お、チビ助は通なモン喰ってるじゃねえか! ドラゴンのレバ刺しなんぞ仕留めた奴しか口に出来ねぇ極上の味だかんな!」
>「うめ うめ うめ」
あ、
>「うめ うめ うめ」
……よっぽど気に入ったんでしょうか? 吸血鬼侍ちゃんの手がまったく止まりません。
>「うめ うめ うめ」
「ちょっと、大丈夫なの……ってフラフラじゃない!?」
>「うめ うめ うめ」
吸血鬼侍ちゃんの様子がおかしいことに気付いた女魔法使いちゃんが慌ててフォークを取り上げ、額に手を当てています。なんだか目もグルグルしてますし、顔も赤くなってますね。
「あー、竜血とレバーの取り過ぎで魔力酔いしてるみたい」
寝かせてくるからみんなは楽しんで頂戴と一党に告げ、吸血鬼侍ちゃんを抱っこして酒場二階の借りている部屋へ運んでいく女魔法使いちゃん。残された鉱人道士さんと蜥蜴僧侶さんの目は、タンステーキを食べ終わり、口元をナプキンで拭っている分身ちゃんに向けられています。
「お前さんは大丈夫なんかの? 同じくらい血を吸ってたと思っとったんだが」
>「あのことちがって、おとなですので」
「フム、やはり≪
分身ちゃんの台詞をサラッと流しているあたり、2人はやはり大物なのか、それともただの酔っ払いだからなのか……。判断に迷うところですねぇ。
さて、二階の部屋に戻った2人ですが、どんな具合でしょうか。ベッドに寝かされた吸血鬼侍ちゃんは、荒い呼吸を続け、心細いのか女魔法使いちゃんの服の裾を掴んで離さなくなってます。
「ちょっと服を緩めるわよ。……大丈夫?」
>「……わからない。からだのしんがあつい。やけちゃいそう」
「典型的な魔力暴走の症状ね。真言呪文に目覚めたばかりの年少者が陥ることが多いけど、いつも空腹が常態なところにいきなり大量の魔力を取り込んだからかしら」
上着を脱がされ、
「そうよ、これは緊急処置。こんな街中で呪文を使わせたらどんな被害が出るかわからないし、安全な方法があるならそれを選ぶべき」
吸血鬼侍ちゃんの首にかけられている
「……じっとしてて頂戴、すぐ楽にしてあげるから」
「うわ、いつもと全然違うじゃない……」
「こら、暴れちゃダメ」
「ん、熱っ……!」
「やだ、私までなんだか身体が……」
「もう、そんなに吸ったってなにも……!?」
「え、嘘、なんで……?」
「ちょっ、落ち着きなさいってば!」
「……あーもう、こういう時はホントに甘えん坊なんだから」
>「おはようございまーす……」
翌朝、鉱人道士さんと蜥蜴僧侶さんに部屋の様子を見てくるよう頼まれた分身ちゃん。
静かに扉を開け、中を窺っていますが……。
「ねぇ分身ちゃん、もしかして此処まで全部貴女の想定通りだったのかしら?」
ベッドに腰かけた姿の女魔法使いちゃん。その腕には狂熱が引き、穏やかな表情で眠ったままお山をちゅーちゅーしている吸血鬼侍ちゃんが抱かれています。普段と違う点があるとすれば、吸血鬼侍ちゃんの口元から一筋零れている色が
>「ぼうだいなまりょくをそそぎこんで、うつわをきょうかするぷらん。いまのそれはちょっとしたふくさんぶつだから、いじょうではありませんのでー」
そう言いながら両手を胸の前に構え、左手の親指と人差し指で輪を作り、右手の人差し指を輪に通す仕草を見せつける分身ちゃん。
>「つまり、けいかくどおり」
「そのドヤ顔と卑猥なジェスチャーをやめなさい! 今すぐ!!」
ベッドに吸血鬼侍ちゃんを放り出し、真っ赤になって分身ちゃんを追いかける女魔法使いちゃん。騒ぎを聞きつけた男衆が駆け付けるまで追いかけっこは続き、その間、吸血鬼侍ちゃんが目を覚ますことはありませんでしたとさ。
今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。
煮物に味がしみこむまで失踪します。
いつも誤字脱字のご連絡ありがとうございます。
お気に入り登録や感想、評価についても併せて入れていただければ幸いです。
お読みいただきありがとうございました。