ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 苦行用BGMを聞きながら執筆したので初投稿です。


セッションその7 えんだあみっしょん

 そろそろ年貢の納め時な実況プレイ、はーじまーるよー。

 

 寒さも和らぎ、訓練場の建設に向けての人足の募集がチラホラ聞こえ始めました。

 

 鉱人の里から依頼の品が出来たので送ったという連絡が早馬で来たため、吸血鬼侍ちゃんをはじめとする関係者はギルドで輸送便の到着を今か今かと待っているところです。

 

 万が一にも受領の現場を見られないよう、牛飼娘さんにお願いしてゴブスレさんは終日牧場のお手伝いです。何件かゴブリン退治の依頼はありましたが、事情を知った重戦士さんが纏めて引き受けてくれました。年少組の実戦訓練になると(うそぶ)いていましたが、女騎士さんに素直じゃないと突っ込まれ仏頂面のまま出発。ギルドに居合わせた冒険者の生暖かい視線を集めていました。

 

「今、街の入り口まで来たわよ!」

 

 待つのに我慢が効かず、屋上から見張っていた2000歳児がギルドに飛び込んできました。お土産を待つ子供じゃないんだから、もうちょっと慎みを持ったほうがいいのでは?

 

 

 

「お待たせしました! 中に入れていただいて大丈夫ですよー!」

 

 業者の差し出す紙片に受領のサインを書き込んだ受付嬢さんが屋内に向かって声をかけると、待ってましたとばかりに外へ飛び出す一党。大きさがまちまちな木箱の山を、あっという間に運び入れてしまいました。

 

 

「さて、まずは私のから開けてみようか」

 

 木箱に添付されていた明細を確かめ、武具店のじいじ(店主)から借りたバールのようなもの(工具)で蓋をこじ開ける森人狩人さん。木屑に埋もれる形で納められていた布包みを取り出し、ウキウキとした手付きで開封していきます。本人はクールな表情をしているつもりなんでしょうが、長耳がピクピクしているので全員にバレバレです。かわいい。

 

「うん、バランスもいい感じだ。それじゃあ……≪雷電(トニトルス)≫!」

 

 形状は以前とさほど変わらないように見える戦棍を二度三度試し振りをした後、みんなに少し離れるよう告げた後に真言を唱える森人狩人さん。先端の球が帯びる雷光は以前に比べ輝きを増し、仕様書によると振り抜けば雷球として撃ち出すことすら可能なんだとか。

 

「凄い……。いいえ、(わたくし)も必ず使いこなせるようになってみせますわ!」

 

 冒険者支援計画から解放され、やっと自らの鍛錬の時間が出来た令嬢剣士さん。基礎体力作りと並行して真言の単語発動を学んでいる彼女のやる気が高まっているようですね。同じ軽銀製の相棒がいるんですから、鍛錬を続ければそう遠くないうちに出来るようになると思いますよ。

 

 

 

「ええと、こっちが私の箱ね。さて、何が出てくるのやら……」

 

 森人狩人さんより少し大きめの木箱を開ける女魔法使いちゃん。同じく木屑に埋もれる形で、愛用の爆発金槌とともに大小2つの革の巾着袋が入っていました。

 

 小さな巾着の中には相談の時に話していた革手袋が。素材となった赤竜の手を模しているそれは、一見すると蜥蜴僧侶さんの手だと錯覚するほど精巧に作られています。

 赤竜の爪から削り出されたのでしょう、両手10本の指先すべてに小さな爪が生え、≪布鎧(キルトアーマー)≫程度なら軽々と引き裂いてしまいそうです。ゴブリンに懐に潜り込まれてもそのまま反撃出来るのは、精神的にも安心ですね!

 

 もうひとつの大きめの巾着の中にも隻眼鍛冶師さんが提案していた外套(クローク)が折りたたまれた状態で入っていました。女魔法使いちゃんが広げてみると、翼の皮膜を重ねて縫い合わせているのでしょうが、何故か薄手の生地の中に細長い芯が何本も埋め込まれているようです。なんでしょうこれ?

 

「ほほう……。おおい眼鏡っ子や、たしかこの間≪浮遊(フロート)≫を覚えとったろ? それを着てからちいと唱えてみろい」

 

「ん、わかったわ。≪(ウェントス)≫……≪一時(セメル)≫……≪接続(コンキリオ)≫」

 

 仕様書を覗き込んでいた鉱人道士さんの言葉に従い、外套を羽織って呪文を唱える女魔法使いちゃん。鉱人の遺跡や知識神の文庫の時など、飛行での移動頻度が増えてきたため、魔術師の位階を上げた際に≪浮遊(フロート)≫を習得していました。

 自力で飛行可能な人数が増えれば吸血鬼侍ちゃんの負担も減りますし、戦い方のバリエーションも増えますからね。あ、でも一番の理由は『吸血鬼侍ちゃんと空中散歩をしてみたかったから』だというのは秘密だそうです。めっちゃかわいい。

 

 呪文が完成し、床面から僅かに浮かび上がる女魔法使いちゃん。するとどういうことでしょうか、身体を覆う形であったはずの外套がシュルシュルと広がり、内に仕込まれていた芯を基点に竜の翼のように展開しました!

 羽ばたく必要はないのか女魔法使いちゃんの動きに合わせて揺れていますが……おや、何やら女魔法使いちゃんが念じると、翼を閉じたり、身体を外から隠すように覆ったりできるようですね。

 

「その外套は着用者が≪浮遊(フロート)≫を唱えている間、術者の意思を感知して動く様になっとるらしい。術者の呪文維持も補助してくれるみたいじゃの。芯材には例の合金に加え、竜血も混ぜ込んだと書いてあるわい」

 

 口は悪いが腕は確かなのが小憎らしいと続ける鉱人道士さんですが、立派なマジックアイテムじゃないですかこれ! 流石鉱人驚異の技術力(メカニズム)とでもいうべきでしょうか。妖精弓手ちゃんと森人少女ちゃんが女魔法使いちゃんの手に掴まってふよふよ浮いている感じから、移動だけなら2人くらいは運べそうですね。……あ、後ろから森人狩人さんが飛び乗ったら流石に墜落しました。3人は無理だな(確信)

 

 

 

 さて、ゴブスレさんの装備一式は一番大きな木箱に入っているということは、この細長い木箱に吸血鬼侍ちゃん用の刀が入っているはずなんですけど……圃人サイズにしてもやけに小さいです。どうみても刀が入っているような大きさじゃありませんよこれ。

 

「まぁまぁ、鍛冶師殿は約束を違えるような御仁ではござらん。まずは中身を確かめてみては?」

 

 蜥蜴僧侶さんがそう言うならしょうがないにゃあ。吸血鬼侍ちゃんが箱から取り出した深紅の袱紗に包まれていたのは、長さ30㎝ほどの短刀。半分以上を柄の部分が占め、鞘は10㎝にも満たない不思議な形状をしています。鞘がこれだと刀身はもっと短いと思うんですが……これどうやって使うんでしょう? ちょっと仕様書を拝借して……ほうほう、またこれはマニアックなモノを鍛えたもんですねぇ。

 

「ていっ」

 

「ちょっ!? 何いきなり馬鹿な事してるのよ!」

 

 もはやキャップといったほうが良さそうな鞘から刀を抜き、黒い刀身にチラつく火の粉の如き刃紋が浮かぶそれを自らの心臓に突き立てる吸血鬼侍ちゃん。それを見て転倒状態から復帰していた女魔法使いちゃんが慌てて止めさせようとしますが……。

 

「おお~……!」

 

 ずるりと胸から引き抜かれた刀は大きく姿を変え、まるで血を吸って成長するように赤い刀身が鍔元から形成されました。鎬には熾火のように僅かな炎が揺らめいて見え、そこから滴り落ちる血は刀身を離れた刹那に燃え上がり、床に着く前に自らの纏う火で燃え尽きていきます。

 

「どうやらちみっ子の血を触媒に力を発揮する魔剣……いや、妖刀と呼ぶべきかの」

 

 けったいなモンばかりこさえよってと憤慨する鉱人道士さんですが、吸血鬼侍ちゃん的には大当たりです! 陽光の届かない場所であればいくらでも再チャージできますし、物理属性以外の攻撃手段が手軽に振れるのは有難いです。後で裏庭で試し振りしなきゃ(使命感)

 

 

 

 さあ、今までの品物はあくまでも前座。メインディッシュはこれからです。

 

 蜥蜴僧侶さんでなければ抱えられないほどの大きさの木箱。厳重に梱包されており、鉱人道士さんもなかなか開けるのに苦労している様子。いっそ外箱を斬ったほうが早いんじゃないですかね?

 

「そのほうが早えか。そんじゃちょっくら頼まあ」

 

 了解ですのん。流石に燃えると拙いので村正を構え、上面をスパッと切断する吸血鬼侍ちゃん。切り離された上部を脇に退かし、露わになった内部を一斉に覗き込む一党の面々。

 

 

「「「「「「「「「「「おお~」」」」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、オルクボルグと可愛いお嫁さんの幸せと、此処に集ったすべての人の輝かしい未来を願って……乾杯!!」

 

 既に場の空気に酔っているっぽい妖精弓手ちゃんの音頭が響くギルドのホール。偶々居合わせた冒険者や牧場の取引相手の人たち、休暇を取っていたギルド職員まで巻き込んでの祝いの宴が始まりました!

 

 中心にはいつもの鎧を脱ぎ、この日のために仕立てられたフロックコート姿のゴブスレさんと、蜂蜜色のロングプリーツドレスを着た牛飼娘さん。流石に純白のウェディングドレスではありませんでした。他の目的に着回しが出来ないですし、そう何着も礼服を買うような社会でもありませんからね。

 

 

 

 結婚式は牛飼娘さんの意向で地母神の神殿で行われ、新婦側の親族として伯父さんが。新郎側は親族が全員亡くなっているために友人として()()()()()()()()がお呼ばれされていました。最初ゴブスレさんから声をかけられた時は2人ともまたゴブリンが牧場を狙っているのかと身構えたそうですが、事情を聞くなり快諾したみたいです。

 

 2人のパートナーとして魔女パイセンと女騎士さんが出席し、ゴブスレさんが自分の一党と吸血鬼侍ちゃん一党、重戦士さん一党を招待。

 

 あの時間、間違いなく地母神の神殿が西方辺境で一番戦闘力が高い場所になっていましたね。

 

 

 式の進行役を務めたのは女神官ちゃん。本来は上司である神官長さんが相応しいものですが、本人の強い希望と牛飼娘さんの意向で彼女が任されたそうです。いつもの気弱そうな雰囲気は霧散し、終始厳かな空気の中で進む婚姻の誓い。最後のキスの場面ではじめて泣き笑いのような表情を見せ、2人に幸せが訪れるよう地母神に祈りの言葉を捧げていました。

 

 

 なお、神殿前で行われた新婦からのブーケトス。圃人の少女巫術師()()や見習い聖女ちゃん、受付嬢さんらが次の幸せを掴まんと手を伸ばす中、勝ち取ったのは女騎士さん。勝利の咆哮を上げる姿は雄々しくも美しいものでした。重戦士さん、ちゃんと面倒みてあげてくださいね?

 

 

 

 

「うっし、そろそろ()()()お色直しといこうかの! かみきり丸よこっちゃ来い来い!」

 

 槍ニキにダル絡みされていたゴブスレさんを引っ張り出し、武具店のほうに連れ出す鉱人道士さん。待機していたじいじ(店主)とともに裏の倉庫へと消えていきました。

 

「あははっ、新婦(わたし)じゃなくて新郎(かれ)がお色直しするなんて面白いね!」

 

 魔女パイセンと会話が弾んでいる牛飼娘さんも、突然のイベントに期待が高まっているみたいですね。事情を知らない冒険者たちもゴブリンの着ぐるみか?それとも花嫁衣裳か?とトトカルチョを始める始末。10分ほどで戻ってきた鉱人道士さんとじいじのやり切った(おとこ)の顔が、皆の期待を高めていきます。え、吸血鬼侍ちゃんが音頭をとれ? しょうがないにゃあ(いそいそ)

 

 

 

「「それじゃあみんな、こえをあわせて~……せーのっ」」

 

 

 

「「「「でてこいゴブリンスレイヤー!!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……呼んだか?」

 

 

 

 

 

 

 呼びかけを受けて姿を現したゴブスレさん。一同が目にした予想外の、ある意味予想通りの姿に皆が声を失ってしまいました。

 

 深みのある赤と山吹色で構成された竜革の鎧(ドラゴンハイドアーマー)。その上に重ねられているのは、艶の無い黒地に赤い紋様が描かれた例の合金製の部分鎧。墨の上から血を垂らしたようなそれは、言われても真銀(ミスリル)製とは思えない禍々しさを醸し出しています。籠手(ガントレット)脚甲(グリーブ)も同様の素材で作られ、首元はこれも竜革と思しき襟巻で、急所を隠すよう意匠を凝らしてありますね。

 

 兜は今まで使っていた量産品と大きく形状が変わったわけではありませんが、かつて側面から突き出ていた角部分は初めから存在せず、その分の重量を全体の厚みに回し着用時の違和感を無くしてあるとのこと。また、兜の素材にも吸血鬼侍ちゃんの血が混ぜられ、着用者に兜を通して暗闇を見通す目を与えてくれるそうです。

 

「鉱人の里の職人が、持てる(わざ)の全てを注ぎ込んで鍛え上げた逸品。隻眼鍛冶師(あの馬鹿)の言葉を借りるなら≪複合素材鎧(コンポジットアーマー)≫とでも言うべき代物だあな」

 

 口調こそ荒っぽいですが、鉱人道士さんの顔には誇らしげな笑みが浮かんでいます。鉱人の持つ技術の成果が、こうやって皆の前に出来上がったのですから。

 

「ようやく銀等級らしい装備になった……って言いたいところだが、ヤベェなそれ。魔法を齧っただけの俺にだって分かるくらい魔力が籠められてやがる」

 

 どこでそんな素材手に入れたんだと問う槍ニキ、少し考えた様子のゴブスレさんが返した答えは……。

 

「……『冒険で』だ」

 

 その答えに絶句した後、爆笑する槍ニキ。そうじゃねえけど、まあそうだよな! と笑い転げています。周りの冒険者たちもゴブスレさんの返答に驚き、そして同じように笑い始めました。その笑いはかつての嘲りや侮りを含んだものではなく、まるで初めて冒険に成功した新人(ルーキー)を祝福する、そんな空気を伴っているように見えます。

 

 

 

 

「ゴブリンスレイヤーさん。その鎧も含めて、多くの人が貴方を応援してくれています」

 

 突然立ち上がり、ゴブスレさんに指を突き付ける女神官ちゃん。さっきまで監督官さんと妖精弓手ちゃんの胃壁をガリガリ削りながら受付嬢さんとヤケ酒をしていたので目が据わっていますよ。

 

「でも、それはゴブリンスレイヤーさんの無事な帰還を願うものであって、より危険な場所に赴くためのものじゃないんです。そこを履き違えてはいけません」

 

 グイグイとゴブスレさんに近付き、兜越しにキスが出来そうな距離まで間合いを詰めていきます。そのまま胸甲を指で撫で上げ、兜を両の手で押さえ少しずつ顔を寄せる女神官ちゃん。

 

「家族だけが、貴方の事を想っているわけりゃないんれふからね~……」

 

 おっと! 酔いが回ったのか話し途中で崩れ落ちてしまいました。ゴブスレさんが支えた彼女を監督官さんが引き取り、同じく酔い潰れた受付嬢さんと並べて毛布をかけています。想いは秘めたままじゃ辛いですからね、酒の力を借りてでも発散したほうが良いこともあるでしょう。

 

 

 

「貴女も、そっちの双子ちゃんもありがとうね。みんなが彼を助けてくれたから、こうやって一緒になれたんだと思う」

 

「たいせつななかま」

 

「たよれるあいぼう」

 

「「ぼくとおなじ『ゴブリンスレイヤー』!!」」

 

「……そっか、ちゃんと彼にも分かり合えるお友達がいたんだ。良かった……!」

 

 吸血鬼侍ちゃんと分身ちゃん、2人に幸せに満ちた笑顔を向ける牛飼娘さん。そのまま2人をぎゅっと抱き締めてくれました。この笑顔を守るためにゴブスレさんは終わりのない戦いを続けてきたんですよね……。

 

 女神官ちゃんの背格好だと牛飼娘さんのお山が顔面直撃コースですが、残念ながら2人の身長ではおへそのあたりが限界です。それでも肌触りの良い服越しに感じる女性特有の柔らかさと暖かさが心地よいのか、2人とも目を閉じてぺたりと顔をくっつけています。

 

 後でみんなに怒られても知らないからね……って、2人とも突然何かに気付いた様子で牛飼娘さんの腰に手をまわし、耳を彼女のおなかにあて、何かを聞き取ろうとしている様子。

 

 え、まさか……。

 

「えっと、どうしたのかな2人とも?」

 

「もうひとつのこどう!」

 

「あたらしいいのち!」

 

 

 

「「あかちゃん!!」」

 

 

 

「……本当か?」

 

 2人の声に静まり返る空間。ギギギ……という擬音が聞こえてきそうな動きでこちらを振り向くゴブスレさん。コクコクと頷く2人を見て、そうか、と呟いた切り動かなくなってしまいました。

 

「え、だって彼としたのって初めてのときだけだから……」

 

 あらら、牛飼娘さんは頬に手を当て真っ赤になっちゃいました。まさか初弾命中とはやりますねゴブスレさん! 流石銀等級!!

 

 男衆にもみくちゃにされた挙句何故か胴上げをされている動かざるゴブスレさんと対照的に、女性陣に囲まれて、おなかや肩を触られている牛飼娘さんは戸惑いながらも嬉しさを隠せない様子。

 

 乗るしかない、このビッグウェーブに!と拳を固めた女騎士さんと、捕食者の眼光を浮かべた魔女パイセンがパートナーを捕獲し、二階へと消えていきました。明日の日を拝めるといいですね!

 

 

 

 

 冒険者の結婚ラッシュが始まる予感を感じますが、実を結ぶまではまだ余裕があるでしょう。その間に訓練場の建設や新人の育成、やることはたくさんあります。吸血鬼侍ちゃんも準備のためにそろそろお暇しましょう「あら、なに素知らぬ振りして帰ろうとしているのかしら?」……か?

 

「結婚式が終わって、漸く纏まった時間がとれるのだから、ちゃんとみんなに付き合ってあげなさい? 義妹(いもうと)ちゃんや後輩とも約束したらしいしねえ?」

 

 ()()()()()()()()って、と笑みを浮かべる女魔法使いちゃんの背後には酒気ではない何かで上気した顔の森人少女ちゃんと令嬢剣士さん。分身ちゃんを両側から挟み込み、そのまま一足先に家路に。森人狩人さんは抱えていた妖精弓手ちゃんを吸血鬼侍ちゃんに渡し、上手くやりたまえよご主人様とちょっと子供には見せられない笑みを浮かべています。

 

「むりやり、ダメ、ぜったい」

 

「そうだね、でも互いの理解があればそれは合意というものだよ」

 

「……あんまり乙女に恥かかせるんじゃないわよ」

 

「おさけのいきおいではちょっと……。はじめてならなおさらだいじに、ね?」

 

 ……どうやら意志セーブと交渉判定には成功したようです。じゃあ()()()()普通に寝ましょという女魔法使いちゃんの言葉に従いギルドを後にすることに。まるで普通じゃない寝るがあるみたいな言い方ですね(震え声)

 

 

 

 自宅への帰り道、最後尾を歩く吸血鬼侍ちゃんにお姫様抱っこされた状態の妖精弓手ちゃん、最初は降ろしなさいよと暴れていましたが、長耳に牙を擦り付けられた途端に大人しくなってしまいました。涙目になって吸血鬼侍ちゃんを睨みつけています。

 

「そうやって他の娘も毒牙にかけてきたんでしょ? このエロガキめ」

 

「そうだよ、わるいきゅうけつきだもの。……けいべつする?」

 

「しないわ。おっぱい女たちは兎も角、森人義姉妹(あの2人)は私があんたっていう甘美な地獄に突き落としたんだもの。その罪から逃げるつもりは無いわ」

 

 だから私も毒杯を呷るの、と言って吸血鬼侍ちゃんの首元に顔を埋める妖精弓手ちゃん。そのまま歯を立て、吸血の真似事をしています。

 

「ジャガーノートよりもいたいかなぁ」

 

「嘘おっしゃい、もう治ってるくせに」

 

 

 

 ……どうやら女魔法使いちゃんと森人狩人さんは、空気を読んで先に歩いて行ったみたいです。姿の見えない2人を探すように視線を彷徨わせる妖精弓手ちゃん。置いてけぼりにされた子供か、或いは迷子の子猫のような表情を浮かべたまま俯いてしまいました。

 

「ぼくでよかったら、ずっといっしょにいるよ?」

 

「『で』なんて言ってるうちはまだまだね。もう少し乙女心を勉強しなさい」

 

「ぼくはおとめじゃなかった……?」

 

 

 

 気の利いたことを言おうとしてバッサリ切り捨てられ、ちょっと凹んだ吸血鬼侍ちゃんを見てほんの少し明るさを取り戻したみたいです。

 

 どんな選択肢を選んでも、それが自分の決めた道であるのなら後悔は無いはず。もし叶うなら、みんな『が』幸せになる道が見つかりますように……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。




MTGAで新しいドラフトが始まったので失踪します。

いつも誤字脱字のご連絡ありがとうございます。
お気に入り登録や感想、評価についても執筆速度が上がりますのでよろしくお願いいたします。

お読みいただきありがとうございました。

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