ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ 作:夜鳥空
前回、理由なき濡れ衣がゴブスレさんを襲ったところから再開です。
糾弾の声を上げた後、荒く息を吐く少年……女魔法使いちゃんの弟さんである少年魔術師君。杖を突きつけられた形のゴブスレさんは微動だにせず、ギルド内は静寂に包まれて……。
「オイオイオイ、死んだわアイツ」
「流石『辺境最優』、新婚ほやほやで修羅場を迎えるなんて……」
「おい、誰か此処でネタばらしの看板用意しろ!」
失礼、包まれていませんね! テーブルに着いていた一党もそれぞれ違った反応を。妖精弓手ちゃんと森人狩人さんは肩を震わせながら下を向き必死に笑いを堪え、森人少女ちゃんと令嬢剣士さんは曖昧な笑みを、吸血鬼侍ちゃんと分身ちゃんは頭上に大きな『?』を浮かべています。
「……人違いだ」
「ハア!? 此処にいる連中でオマエ以外に誰が姉ちゃんに手を出すって言うんだよ!」
「……ねえ、ちなみに学院ではどんな噂が広まってるのかしら?」
(ゴブスレさんにしては)的確な返答でさらにヒートアップする少年魔術師君。これ、ウチの弟とみんなに紹介しながら女魔法使いちゃんが興味深げに彼に問いかけています。
「女をとっかえひっかえ食い物にするクソ野郎。真理を探究する
「ダ、ダメ……私もう我慢出来ない……ッ」
「まだだ、まだ笑っちゃダメだよ
いやー出るわ出るわ、立て板に水とはこのこととばかりに途切れることなく列挙される罵詈雑言。なにが凄いかって、
「ち、ちなみに何を根拠に彼が
浮かんできそうになる笑みを必死に抑え、なんとか仏頂面を取り繕いながらゴブスレさんを指し示す女魔法使いちゃん。指先が震えているあたりそろそろ限界が近そうです。ここで口を開くとろくでもないことになると悟ったゴブスレさんは沈黙を保ち、それを勝ち誇ったような表情で見る少年魔術師君は自信に満ちた顔で言い放ちます。
「誰が見たって分かるほど邪悪な魔力を帯びた鎧を付けてる上に、この中で一番等級が高いのは認識票を見れば一目瞭然だろ! それ以前に男はコイツしかいないじゃねえか!!」
「俺は既婚者だ。愛する女は1人しかいない」
その言葉が引き金となり、ギルド内に笑いの嵐が吹き荒れました。
一党の面々はもとより事態の推移を面白がって見ていた冒険者たち、ギルドの職員までもがもう耐えきれんとばかりに吹き出しています。その声量に負けて、鎧は仲間からの大切な品だというゴブスレさんの言葉は掻き消されてしまいましたが……ヴァンパイアイヤーには届いたようで、吸血鬼侍ちゃんと分身ちゃんは照れたような顔をしていますね。ヒーヒー言いながら机を叩いている監督官さんの隣にハイライトさんが家出した受付嬢さんが見えた気もしましたが、吸血鬼侍ちゃんのログにはなにもありません!
笑いについていけてない新人と、馬鹿にされたと思って頬を紅潮させている少年魔術師君が取り残されたグダグダ空間。そろそろお姉ちゃんの口から説明してあげないと可哀そうでは?
「あ~、笑った笑った。そうね、それじゃこっちにいらっしゃい」
眦に浮かんだ涙を指で払い、吸血鬼侍ちゃんを手招きする女魔法使いちゃん。伸ばされた小さな手を掴み、机上経由で自分の膝上にキープ。後頭部をたわわな胸元に納め、細い首元に光る真新しい
「この子が
>「ドーモ、おとうと=クン。クソやろうです。コンゴトモヨロシク……」
(ニンジャスレイヤーなのか夜魔ヴァンパイアなのか)これもうわかんねぇな。
「嘘だ……姉ちゃんの恋人がこんなちっこいガキで、しかも女だなんて……」
ブツブツと呪詛を垂れ流しながらシチューを口に運んでいる少年魔術師君。その虚ろな眼差しから察するに、突き付けられた現実を正視出来るまではもう少し時間が必要かなぁ。
流石にあの空気の後ではギルドで食事というわけにもいかず、ゴブスレさんと別れて自宅に戻ってきた一党。硬直したままの少年魔術師君はお姉ちゃんがお米様抱っこで運んできました。現在森人少女ちゃんお手製のシチューでおゆはんの真っ最中。春が来たとはいえ朝晩はまだまだ肌寒く、愛情たっぷりの温かさが嬉しいですね。
先ほどチラッと見えましたが、この春吸血鬼侍ちゃんは紅玉等級に昇進しました。牧場防衛からこっち様々な場面で活躍してきたのを評価されたかたちですね。元が鋼鉄だったので一気に三階級特進!……ではなく、収穫祭までの活躍で一階級昇進、鉱人の城跡でのインゴット発見とそれに伴う冒険者支援計画の推進で二階級特進という扱いなんだとか。
監督官さんに二階級特進って縁起悪くない?と言ったら、もう死んでるからお似合いですね!と返されて納得していた吸血鬼侍ちゃんが可愛かったです(こなみ)
同様に女魔法使いちゃんも紅玉に……はならず、森人狩人さんと同じ青玉に。これは別に生きているから二階級特進しなかったわけではなく、吸血鬼侍ちゃんを名実ともに
活躍の面から言えば充分に昇進できるはずの森人狩人さんは今回青玉に据え置き。本人は人格査定に引っ掛かったと誤魔化していましたが、あれ絶対
冒険者になってまだ日が浅い森人少女ちゃんと令嬢剣士さん。功績だけ見れば吸血鬼侍ちゃんに匹敵する素晴らしいものですが、当人たちから経験不足を理由に保留して欲しいとの申し出があったために白磁のままとなっています。既に仮オープンしているギルドの訓練場で一期生として学び、卒業した段階で鋼鉄まで昇進することを内々で伝えられたそうです。
「ちっこいのもさっさと銀まで上がって来なさいよ。あ、でも
>「どっちもむ~りぃ。そんなすぐにはあがれません」
自分の器から鶏肉をスプーンで吸血鬼侍ちゃんの器に移し、帰路で人参を強奪しながらのたまう妖精弓手ちゃん。でも考えてみれば、勇者ちゃん一党に付き合わされている時点でもしかして既に白金等級なのでは……? いえ、この考えは危険なのですぐに忘れましょう!
「あら、今夜はシチューですか。それに……お客様かしら?」
お、≪転移≫の鏡から剣の乙女がやって来ました。いつもの指定席に座り、眼帯を付けた顔を少年魔術師君に向け微笑みを浮かべています。魔力の波長とかで姉弟だって分かるんですかね?
ついでに空中の女幽鬼さんにもチラ見してましたが、害意がないと判断したのか警戒を解いてくれました。吸血鬼侍ちゃん以外には見えなくなっているはずなんですが、金等級にはバレちゃったみたいですね。
あ、女幽鬼さん。たぶんワンパンで
さて、鏡から人が出てくるという超常現象を目撃した少年魔術師君ですが……そんなことより目が剣の乙女のお山に釘付けになってます。その気持ちは分かりますが、男のチラ見は女性からすればガン見というほど、ましてここまでの生唾ゴックンな凝視となれば誰だって気付くものです。
そういう青少年からの視線に慣れている本人は苦笑していますが、
「わざわざこんなところまでやって来て、学院はどうしたのよ」
ちゃんと卒業しないと実家が煩いわよとジャブを入れるお姉ちゃんですが、生返事しか返って来ず実力行使に。襟を巧みに使った締め上げでほらキリキリ吐けと持ち上げてますけど、多分それ声が出せないと思うんですが(名推理)
「……担当教授にゴリ押しして休学の手続きしてきた。単位は足りてるから問題ねえだろ」
絞められていた喉元をさすりつつ、吸血鬼侍ちゃんをお姉ちゃんそっくりのキッツイ目で睨みつけてきました。紅玉の認識票を下げているとはいえ、見た目は圃人の子供ですからねえ。ここは年長者らしく余裕を持った対応を見せてあげたほうが良いんじゃないでしょうか。
>「いつもおねえちゃんをおいしくいただいてます。そっちのおねえさんたちもいっしょに」
「ぶっ殺す」
先ほどお姉ちゃんにされていたようにギリギリと吸血鬼侍ちゃんの首を締め上げ始める少年魔術師君。残念ながら呼吸を必要としない吸血鬼侍ちゃんには、効果はいまいちなようですね。言い方ぁ!と激しいツッコミを入れてくる女魔法使いちゃんに引き剥がされ、荒く息を吐いています。
うーん、オマエみたいなチビガキが
「あら、それなら話は簡単じゃない。明日朝一でこの子をギルドで登録してくるから、アンタは一足先にみんなと訓練場で準備してなさい」
他の新人ちゃんと纏めて面倒見てあげましょ、とサラッと言ってますが、明日の訓練って結構キツいやつですよ? 痛くしなければ覚えない? まあお姉ちゃんがOK出すならいいでしょうか。
「はーい、いつもは走り回ってばかりだけど、今日はちょっと違った視点からモンスターとの対峙について考えてみようか。進行役の狩人おねーさんだよ」
「みなさまおはようございます。本日も怪我などなさらぬようご安全にお願いいたします」
ヨシ! の唱和とともに始まりました初心者講習会。まだ冒険を経験したことの無い
それ以外に目につくのは黒曜と白磁が入り混じった多種族一党でしょうか。蜥蜴人の戦士を筆頭にバランスの良い構成になっています。……女魔法使いちゃんが先に依頼を手に入れてくれた影響で、陵墓での全滅を免れていたみたいですね。
そんな和気藹々とした冒険者を不機嫌な顔で見ている少年魔術師君。首からはピカピカの白磁の認識票が顔を覗かせています。森人狩人さんの説明も右から左に聞き流して全く頭に入ってなさそうですね。女騎士さんの隣でそれを見た女魔法使いちゃんが大きな溜息を吐いています。
「さて、冒険の経験の有無はひとまず置いておこう。この中で直接モンスターの命を奪ったことの無い子は手を上げてくれるかな?」
森人狩人さんの問いにパラパラと挙手が上がります。まったくの初心者以外でも、後衛を務める呪文遣いだと経験の無い冒険者も多いんですねぇ。
「そのまま次の質問にいこうか。今、手を上げている子の中で、家畜を〆たことのある子は手を下げていいよ。経験の無い子は上げたままでストップ」
半分以上の手が下がり、そのままなのは両手で数えられる程度。その中には女神官ちゃんやナイスなお山を持つ交易神の侍祭さんの姿が見えます。あ。もちろん少年魔術師君も残ってますね。
今手を上げている子は前に、という森人狩人さんの指示に従い施設の前側に集まる数名。それ以外の冒険者はしばらく見学のようです。お、いつの間にか姿を消していた森人少女ちゃんが、布で内部を見えなくしてある台車を押しながら帰ってきました。布の奥からはガサゴソと何かが動き回る音が聞こえてきます……。
「ひゃあん!?」
開けてみて、という指示に従い布を取り去る女神官ちゃん。突然目の前に舞った白いものにビックリしてしりもちをついちゃってます。
「あいたたた……。あれ、これって羽根?」
鼻先に乗っかった羽根を取りながら布の下に隠されていたものの正体を見る女神官ちゃん。そこには急に視界が開けて興奮する鶏が、籠の中いっぱいに入っているではありませんか。
台車のポケットから人数分の牛刀を取り出し、事態についてこれていない冒険者に手渡していく森人狩人さん。ニッコリ笑いながら午前の訓練内容を話し始めました。
「さて、童貞と処女の集まりである君たちにやってもらいたいのは、今日の
給食がタダで食べられるのに、まさか準備が出来ないなんてことはないよね? と挑発的な笑みを浮かべる森人狩人さん。うーんこれは狙ってやってますね……。
「なんでそんなことオレたちがやらなきゃいけないんだよ、冒険には関係ないだろ?」
予想通り噛みついてきた少年魔術師君に振り向きながら、森人狩人さんお得意の煽り芸が火を吹きはじめました。
「おやおやおや? ひょっとして君は糧食が尽きて飢えているとき、偶然前を通りかかった獲物をみすみす逃すつもりなのかな?」
「いや、万に一つの可能性として、切り株に頭を打ち付けて死んだウサギを見つけたとしよう。まさか君は内臓も出さずに丸齧りしても大丈夫な胃袋の持ち主なのかな?」
次々に繰り出される芸術的装飾に彩られた煽り文句の嵐に反論できず黙り込んでしまう少年魔術師君に、
「そもそもだ、家畜を〆ることすら出来ない人間が、モンスターを殺せると本気で思っているのかな? もしそうだとしたら、この世界にゴブリンなんかいるはずもないのにね?」
命を奪う行為をしたことの無い冒険者を、後方からニヤニヤ笑いながら見ていた経験者たちの顔がみるみる青褪めていきます。重戦士さんや女騎士さんは平然としていますが、並の冒険者では受け流せない程の感情が、その言葉には籠っていました。
「……まあそういうわけだから、おなかが空いてくる前にスパッと決めてくれるかな? なーに、命の危険はないからね。精々つつかれる程度だよ」
息が出来ないと錯覚させるほどの感情を掻き消し、おどけたようにニワトリをそれぞれに手渡していく森人狩人さん。あ、吸血鬼侍ちゃんと分身ちゃんが、大きなタライと煮立った湯がなみなみと入っている大鍋を持って奥の控室からやって来ました。本気でここでやらせるのつもりだと悟った面々は、真っ青な顔でニワトリと牛刀を交互に見ています。
>「ためらいきずがはいるとあじがおちるから、いっぱつできめてね?」
>「しめかたをまちがえるとたべられるぶぶんがへるから、きずはさいしょうげんにね?」
「うう……。い、いきます!!」
わざとらしく口の端から涎を垂らしている2人の言葉に唾を飲む
「イヤァァァァァァァァァァァァァァァァァ!?!? なんで走り回るんですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」
命の重さと儚さを教えてくれたニワトリさんは、このあと冒険者が美味しく頂きました。
泣きながら「うめ、うめ……」と言ってた女神官ちゃんに、分身ちゃんがちょっとときめいていたのは内緒です。
今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。
お昼寝すると夜眠れないので失踪します。
いつも誤字脱字のご連絡ありがとうございます。
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お読みいただきありがとうございました。