ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ 作:夜鳥空
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前回、ランチの素材を調理したところから再開です。
昼食を済ませ、再び屋内施設に集合した訓練生たち。何人か顔色が悪い子がいますが、もしかして食欲が湧かなかったんですかねえ(ゲス顔)
少年魔術師君も配られたチキンサンドに手が付けられなかったようで、隣で物欲しそうな顔をしていた圃人の少女ちゃんに押し付けてました。可能性が収束していく……!
「午後はグループに分かれて一組ずつ地下の特別室での実習よ。順番が回ってくるまでは外で銀等級組に扱かれてなさい」
午後の教官役を務める女魔法使いちゃんの、それじゃ4~6人でグループ作ってという無慈悲なコールが響きます。もとより
「ええと、よろしくお願いしますね」
「ガンバルゾー!」
「……ふん」
「まあ、
前の一党が解散したばかりで組む相手がいない圃人の少女ちゃん、最初からあぶれ者と組むつもりだった令嬢剣士さんは問題ないとして、女神官ちゃんが声をかけられなかったのは意外ですね。もしかして毎度毎度銀等級や頭のおかしい連中に付き合わされている様子から敬遠されちゃっているんでしょうか?
もしそうだとしたら、女神官ちゃんへの申し訳なさ半分、それだけ優秀な子を勧誘しなかった他の訓練生に残念半分ってところでしょうか。
順番待ちの時間を利用して屋外へ出たあぶれ一党。大上段から木刀を振り下ろす圃人の少女ちゃんの一撃を左の短剣で受け流しながら、令嬢剣士さんが訓練生に対する不満を垂れ流しています。
「まったく、どの一党も見る目がありませんわね。ちょっと考えれば、地母神の孤児院出身者で家畜を潰したことの無い子供なんて滅多に居ないでしょうに」
「教官役の狩人さんから頼まれていましたし、普段は2人がかりで押さえて〆てますからね。まさか走り回るとは思いませんでしたけど……」
「え、あれって演技だったの!? 迫真過ぎて気付かなかったよ!」
ぷんすこしている令嬢剣士さんに苦笑を返す女神官ちゃん。体勢を崩されて蹈鞴を踏んでいる間に喉元へ右の長剣を突き付けられた圃人の少女ちゃんが、降参のポーズをとりつつ驚いた声を上げています。
「もう慣れた、とは言いませんが、私もゴブリンの命を奪ったことはあります。直接錫杖で打ち据えたこともありますし、≪
それに、最初の冒険の時点でゴブリンの子供を殺せって言われちゃいましたし、と言葉を続ける女神官ちゃん。そういえばそんなこともありましたねえ(遠い目)。あ、それに小鬼の国を助けた時にも錫杖でゴブリンの頭をパッカーン!してましたもんね。サクラとして立派に役目を果たしてくれたわけですか。なお走り回る首無しチキン。
そんなネタバレを話しながら投石紐を利用した的当てに挑戦している女神官ちゃん。流石にゴブリンスレイヤーさんのようには上手くいきませんねとちょっと悔しそうです。
「……たかがゴブリンに、なんでそんなに臆病になっているんだよ。あんな雑魚呪文で一発じゃねえか」
椅子代わりの切り株に腰掛けた少年魔術師君がボソッと零した言葉、これが世間一般から見たゴブリンに対する考え方なんですよねぇ。まずこの偏見を是正することが、訓練場の重要な役割になるはずです。
「同じ白磁の
「……あなたのお姉さんも、最初の冒険でゴブリンに殺されかけました。今、
ハイライトの消えた四つの目で見つめられ、気圧されたように身体を仰け反らせる少年魔術師君。一気に重さを増した空気を払拭するように、屋内施設から出てきた一党に気付いた圃人の少女ちゃんが、ちょっと大袈裟に声を上げました。
「あ、ホラ! 最初に入っていった四人組が出てきた……よ……?」
現れた一党を示していた圃人の少女ちゃんの指先がへにゃりと曲がっています。その四人組……重戦士さんのところのダブルカップルですが、少年斥候君と新米剣士君の服は返り血と思しきもので真っ赤に、少女巫術師さんと見習聖女ちゃんの服は僅かに乱れ、こちらは顔を羞恥で真っ赤にしています。周りを気にする余裕も無く、血のついた得物を引き摺りながらトボトボと洗い場のほうへ歩き去って行きました。
ハイ次の
先の四人組と同様に、男性陣は返り血で、ビキニアーマーの神官戦士さんと交易神の侍祭さんは顔を真っ赤に染め、血塗れの武器を持ったまま、全員
「あんたたちで最後ね。ついて来なさいな」
今までの一党の惨状なぞなんでもないように、涼しい顔であぶれ一党を迎えに来た女魔法使いちゃん。鉄の扉をくぐった先は薄暗い部屋が広がり、訓練用ではなく預けてあった本来の装備と、冒険に使うことの多い道具類が並んでいました。部屋の奥には隠し切れない血臭を放つ、地下へ続く石造りの階段が見えています。
「自分の得物とこの先必要になりそうな装備を身に付けたら訓練開始よ。消耗品も代金を請求したりしないから、好きなだけ持つといいわ」
女魔法使いちゃんの指示に従い物品を漁り始める一党。圃人の少女ちゃんは腰のベルトに
「あの、どちらかを持ってもらってもいいですか?」
女神官ちゃんが躊躇いがちに差し出した
「準備はいいみたいね。それじゃ降りるわよ。
「うっ……すっごい血の臭い……」
扉を開け中に足を踏み入れれば、むせかえるほどの血臭が一党を迎えました。
「ここでは咄嗟の事態にどう対応するかを考えてもらうわ……頑張って生き延びなさい」
「え? どういう意味だよ姉ちゃん……!?」
少年魔術師君の戸惑いの声に反応を返さず、突然爆発金槌の灯りを消す女魔法使いちゃん。同時に≪
松明の頼りない灯りだけとなって焦る一党の耳に、生理的嫌悪感を呼び起こす悍ましい喚き声が部屋の外周から聞こえてきます。
緑色の矮小で醜悪な体躯、獣欲と嗜虐性に溢れた視線、粘性の高い液体を滴らせた粗末な武器、そして圧倒的な数を頼みとする
「「「「「
「ウソ、なんでこんなところにゴブリンがいるの……!?」
「ッ……撤退します!
「わかりました! 後衛の2人は出口の確保を、少しずつ後退します!」
場慣れしている2人は即座に撤退を決断! ≪聖光≫で灯りを確保しつつゴブリンを怯ませ、圃人の少女ちゃんと少年魔術師君に発破をかけ出口に走らせます。10フィート棒を投げ捨てた令嬢剣士さんは、顔を抑えて
「え、なんで、なんで鍵がかかってるの!?」
いち早く扉に取り付いた圃人の少女ちゃんが開けようとしますが、いつの間にか施錠されていてビクともしません。焦る彼女を嘲笑うかのように、ゆっくりとゴブリンたちが包囲を狭め始めました。
「扉から離れてろ! ≪
≪
「ッ! 大丈夫ですか!?」
「ええと、
異変に気付き慌てて駆け寄る2人。解毒薬を取り出そうとしますが瓶の区別が付かずにまごつく圃人の少女ちゃんを見て、即座に懐から自分が持っていたものを取り出す女神官ちゃん。少年魔術師君を抱き起して瓶の中身を口に注ぎ込みます。
「身体は動かせますか? それと残りの呪文は?」
「動くのは問題なさそうだけど、呪文はさっきので……ッ」
悔しそうに口を開く少年魔術師君。部屋の前方では強烈な雷光が複数のゴブリンを昏倒させています。令嬢剣士さんの2回しか唱えられない貴重な≪稲妻≫、しかし単語発動による擬似エンチャントを考えれば2発目は撃てません。
「前線は私が≪
「わかりましたわ……頼みます!」
僅かに逡巡した後、令嬢剣士さんとスイッチして前線に立つ女神官ちゃん。部屋を前後に仕切るように展開された防壁がゴブリンの集結を妨げています。雌に近付けなくなったゴブリンは苛立たし気に声を上げ、邪魔な防壁を破らんと一斉に殴りつけ始めました。
「あああ開かない、開かない、開かないよう!?」
冒険者セットと一緒に袋詰めされていた鍵開け道具を鍵穴に入れ、必死に解錠を試みる圃人の少女ちゃんですが、慣れない作業と焦りからか時間がかかっている様子。彼女を守るために剣を振るい続けている令嬢剣士さんの顔にも疲れの色が見え始めています。
「クソ、オレに代われ! 武器を振り回すのに慣れてないオレより、オマエのほうが足止めに向いてる!」
扉の前から退き、令嬢剣士さんの援護に向かう圃人の少女ちゃんとすれ違った少年魔術師君が、地面に松明を投げ捨てて解錠作業を引き継ぎました。物事に集中できるタイプなのでしょう、切迫した状況でも手付きに乱れはなく、慎重かつ手早く差し込んだキーピックを動かしています。さほど複雑な機構では無かったのか、およそ一分ほどでカチンという音とともに鍵は外れ、鉄の扉が開きました。
「おい、開いたぞ! さっさと脱出……!?」
後ろを振り向き脱出を促そうとした少年魔術師君。その目に移った光景は、複数のゴブリンに纏わりつかれ地面に押し倒されている令嬢剣士さんとゴブリンに邪魔されて助けに向かうことの出来ない圃人の少女ちゃん。そして……。
「あ……ああ……ッ!?」
「
2枚目の≪
開いた
「オレの仲間に手ぇ出してんじゃねぇ!!」
「
女神官ちゃんに跨っていたゴブリンの側頭部を魔術師の証たる杖でフルスイング! 虚を突かれたゴブリンはそのまま吹き飛び、痙攣しています。そのまま女神官ちゃんの手を引いて立ち上がらせ、血のついた杖で令嬢剣士さんを指し示しながら大声で撤退の意思を伝える少年魔術師君。
「アイツらを回収してとっとと逃げるぞ!」
「あ、ありがとうございま……うしろ、危ない!!」
手を引かれて立ち上がった女神官ちゃんの目が恐怖に見開き、少年魔術師君の背後を見つめています。振り返った少年魔術師君の眼前には、毒と思しき液体の滴るナイフの切先が……。
「は~い終了~。お疲れ様~」
唐突に部屋に響く女魔法使いちゃんの声。石造りの天井の上から聞こえてきたそれに一党は動きを止めてしまいました。いえ、一党だけでなく外周を取り囲むゴブリンや、少年魔術師君の眼前にいるゴブリンまでも。動きを止めていないのは令嬢剣士さんを押し倒しているゴブリンと、吹き飛ばされたのを忘れたように起き上がる2体だけです。
そのまま天井をすり抜けて現れた女魔法使いちゃん。唖然とする一党の前に立ち、両手を2回打ち鳴らして注目を集めます
「全員とりあえず深呼吸。それから、心を落ち着かせて部屋を見回してみて」
言われた通りにする一党。あっ、と最初に声を上げたのはやはり女神官ちゃんでした。
「この部屋、もしかして≪
「正解。暗闇と血臭で精神に負荷を与えた状態だと看破し辛くなるのよね」
女神官ちゃんの問いに満足げに頷き、指を鳴らす女魔法使いちゃん。それを合図に、≪
>「う~んナイスショット!」
>「ゴブゴブゴブ……」
「あの、そろそろ胸を揉むのを止めていただけませんでしょうか……流石に恥ずかしいです……」
既に塞がった頭の傷をさすりながらグッと親指を立てて少年魔術師君に向けている吸血鬼侍ちゃんと、幻影が剥がれても令嬢剣士さんを押し倒したままの分身ちゃん。2人の影から伸びた触手が、少年魔術師君と圃人の少女ちゃんの前でゆらゆらと自己主張しています。
「触手の上に≪幻影≫で生み出したゴブリンの群れを被せて、適当に動かしてたの。若干の音ズレなんかは狭い屋内だと気付きにくいし、剣で打ち合ってる時も違和感を感じなかったでしょ」
上手いこと考えたものです。一党が上を見れば天井も先程までに比べて高くなっており、≪幻影≫で偽りの天井を用意して、その上に女魔法使いちゃんが待機していたことがわかるでしょう。
「でも姉ちゃん。オレ、実際に毒で動けなかったんだけど?」
「あれはウチの
「えっと、じゃあ先に入ってた一党の恰好の原因って……」
「女の子は触手とそこのエロガキ2人が全力でセクハラしたから。武器と男衆の恰好に関しては……これからね」
再び女魔法使いちゃんが指を鳴らすと、吸血鬼侍ちゃんと分身ちゃんが部屋の中央へ進み、あぶれ一党に向かってファイティングポーズを取り始めました。
「それじゃ午後の部の最終授業。あの2人を腕が上がらなくなるまで
その言葉を聞いた時の一党の表情は二分されていました。即ち、なんでそんなこと?という疑問の表情を浮かべる少年魔術師君と圃人の少女ちゃん。そして、ああやっぱりという諦めの表情を浮かべる女神官ちゃんと令嬢剣士さんです。
「モンスターを殺す時に、いちいち血や内臓にビビってたらその隙を突かれて死ぬ。それが自分なら自業自得で済むけど、仲間を危険に晒したとなればそれは
あぶれ一党に手本を見せるために爆発金槌に点火しながら2人に近付く女魔法使いちゃん。わざとらしく憐れみを誘う表情を浮かべていた吸血鬼侍ちゃんが、眼前に迫った女魔法使いちゃんを見上げながら口を開きました。
>「きょねんのいまごろとくらべて、カップが3サイズあがったよね!」
「2サイズよこの馬鹿!!」
ドグシャア!!!
ギリギリのところで理性が働いたのか、顔面ではなくどてっぱらに爆発金槌を叩き込んだ女魔法使いちゃんは偉いですね。全身が木端微塵になる中で、残った首だけがポーンと吹き飛ばされ、分身ちゃんが拾いに向かいました。
「ね、姉ちゃん何してんだよ……人殺しじゃねえか……」
荒く息を吐く女魔法使いちゃんにおずおずと話しかける弟君。その言葉に無言で指し示した先には、既に再生を終わらせ元気に走り回る吸血鬼侍ちゃんの姿が!
「安心なさい、ここにいる面子であの2人を殺せるやつなんて……あ、1人いたわ」
女魔法使いちゃんに釣られ、みんなの視線が集まったのは……。
>「「おねがいします、ヒールだけはやめてくださいヴァンパイアスレイヤーさん!!」」
「いい加減そのことは忘れてください!!!」
ギャーギャーと言い争う4人を呆然と見つめる少年魔術師君と圃人の少女ちゃん。そんな2人の肩を叩いたのは令嬢剣士さんでした。誰もが見惚れるような笑みを浮かべながら、2人に優しく語り掛けます。
「諦めましょう。私たちに出来るのは、ただ愚直にあのナマモノ2人を殴ることだけですわ」
その後、地下室から姿を見せた4人は仲良く洗い場へ赴き、血と汗と泥とともに、少年魔術師君の角も取れて少しだけ丸くなったそうです。
今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。
あれ、どうしたんですか
あの少年、彼こそ私が愛するあの人の生まれ変わりに違いない?
困難を前に女の子を庇うイケメンっぷり見間違えようがありませんわって、ええ……?(困惑)
平日は更新が遅れそうなので失踪します。
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