ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 まだまだ止まれないので初投稿です。




セッションその8 いんたーみっしょん

 未来のPC①を放流しちゃった実況プレイ、はーじまーるよー。

 

 新人たちを教育した案件から時は過ぎ、ちょっと動くと汗ばむ陽気になりました。

 

 あの時恐怖に引き攣った顔でゴブリンに剣を振り下ろしていた新人たちも、今では立派な冒険者。白磁の認識票をゴブリンの返り血で汚しながら、毎日朝から依頼の争奪戦を行っています。

 

 ショック療法が良い結果を生んだのか、毎年ゴブスレさんが片付けていた大量のゴブリン退治が奪い合いとなる事態に受付嬢さんは嬉しい悲鳴を上げ、ゴブリンの返り血で染まった姿で凱旋する冒険者は辺境の街の風物詩となりそうな勢いに。

 

 早期に依頼を引き受けるようになったため、被害に遭う女性の数も減少傾向にあるようです。理想は被害ゼロを達成することですが、やはり現実は厳しいところ。依頼を受けた冒険者が集落に到着した際に、次は必ずゴブリンを見かけた時点で討伐依頼を出すよう言い広めているのが結果に繋がれば良いんですけどね……。

 

 

 

 吸血鬼侍ちゃん一党肝入りの計画である訓練場も予定の工事が終了し、研修生たちが生活できる宿舎も完成。基本は三か月、希望する者は最長で半年まで無償で訓練が受けられる体制が構築されました。

 

 もちろん訓練をサボるような不届き者は叩きだされ、ギルドのブラックリストに登録されてしまい、後に他の地方に同様の施設が建設されても利用できなくなるほか、悪質なものは冒険者登録自体を抹消し、二度と登録不可となる厳しい処分が下されることになりました。兵士ほどではありませんが、冒険者1人を食べさせる費用は決して安いモノではありませんから、当然の措置と言えるでしょう。

 

 また、怪我や引退で一党(パーティ)が解散したり、負傷からの復帰でリハビリが必要な冒険者などは格安で利用可能だそうです。ここで新たに一党を結成するもよし、他の一党に合流するもよしという考えみたいです。場合によっては教官として採用される道もあるそうなので、冒険者引退後のセカンドライフとしても人気が出るかもしれませんね。

 

 冒険者支援体制が軌道に乗ったことで、森人少女ちゃんと令嬢剣士さんは再び義眼の宰相閣下に提出するレポートの作成にかかりっきりに。女魔法使いちゃんと森人狩人さんは教官役が気に入ったようで、訓練場での指導やゴブリン退治の引率など引っ張りだこになっています。夕方には自宅に集まるとはいえ、いつも一緒に行動していた昨年と比べるとみんな成長した実感が湧く半面、ちょっと寂しい気持ちも吸血鬼侍ちゃんの中にあるみたいです。

 

 

 

 さて、そんな寂しがりやの吸血鬼侍ちゃん。去年はヒャッハーしながらゴブリン退治をローテしていましたが、今年はちょっぴりまったり進行。今日は分身ちゃんと一緒に空を飛んで、ゴブスレさんと牛飼娘さんにお呼ばれして牧場に向かっています。

 

「いらっしゃーい! 2人ともよく来てくれたね!!」

 

「すまんな、手間を取らせた」

 

「おきになさらず~」

 

「ママのからだがだいじ~」

 

牧場入り口で迎えてくれた夫婦の前に勢いを殺しながら着地し、そのまま牛飼娘さんにハグする2人。耳をおなかにくっつけて、ふむふむと何かを調べています。

 

「「うん、()()()()()げんきにおっきくなってる!!」」

 

 その言葉に顔を綻ばせ、2人を優しく抱き締める牛飼娘さん。ゴブスレさんもどこかホッとしているように見えますね。

 

 結婚の宴の時にはまだ判断出来なかったみたいですが、夫婦が授かったのはなんと双子ちゃんでした! おなかが大きくなるのが早いと気付いた女神官ちゃんが、吸血鬼侍ちゃんに調べて欲しいと頼んだことで発覚したものです。夫婦的には嬉しいものですが、単胎妊娠に比べると様々なリスクがあるため、今日みたいに定期的に通って確認しているんですね!

 

「ゆだんはしないでね? ちょっとでもへんかをかんじたらすぐにしらせて」

 

「それと、まんがいちのときはおなかをひらくかもしれないから、そのことだけはおぼえておいてね?」

 

 真剣な2人の顔を見て、そのときはよろしくと笑う牛飼娘さん。

 女神官ちゃんと話し合ったのですが、母体に負荷がかかり過ぎて母子双方に危険が迫った場合、地母神の神殿で帝王切開を行うことを計画しているみたいです。吸血鬼侍ちゃんは牙狩りの面々に依頼して、知識神の文庫(ふみくら)と学院の書庫で文献を探し、女神官ちゃんとともに可能な限り安全性を高める術式を構築中なんだとか。もしこれが確立すれば、母子の生命を守ることや、将来の人口増加につながる素晴らしい成果になるでしょう。

 

 ちなみに吸血鬼侍ちゃんが女神官ちゃんに黙って草案の写しを陛下に見せたところ、なーぜーかー女神官ちゃんの等級が一段飛ばしで青玉になり、地母神の神殿への寄付金の桁が一つ増えたそうです。いやー不思議なこともあるもんですねー(棒)

 

 

 

「それじゃあ、ちょっとだけゆびにきずをつけるから、でたちをこのうえにたらしてね」

 

 お、どうやらもう一つの依頼を果たすために召喚の準備に入ったみたいですね。

 

 つい先日までゴブスレさんが寝泊まりに使っていた納屋。結婚した今は古い装備の保管庫になっているのですが、そこの床に吸血鬼侍ちゃんが自分の血で複雑な文様を描いています。その上には鉱人の城跡で回収した真銀(ミスリル)の装具が人型に2体分並べられ、頭部に当たる部分には以前首あり首無し騎士(デュラハン)さんに被ってもらっていた角付きゴブスレさん兜が据え付けられた状態です。

 

 爪で自分の指を傷つけ、甲冑の心臓に当たる場所にそれぞれ一体ずつ血でサインを刻む吸血鬼侍ちゃんと分身ちゃん。その上に2人の血を垂らすよう、ゴブスレさんと牛飼娘さんにお願いしています。

 

「えっと、これでいいのかな?」

 

 先にゴブスレさんが垂らし、後に続いて牛飼娘さんが指先から赤い雫をポタリ。それが最後の鍵だったのでしょう、周囲から魔力が集まるとともに、甲冑がひとりでに動き始めました!

 

 おおー!という牛飼い娘の感嘆の声に反応するように立ち上がる2体の甲冑。()()()()()()()()()()を慌てて定位置に据え、何事もなかったように一礼をしています。……やっぱりしまらないですね()()()()()……。

 

「まさか、城跡の時に世話になった……?」

 

「せいかい! またつきあってくれるって!!」

 

「てんせいもじゅんばんまちでひまなんだって。やたらちがうせかいからまぎれてくるみたい」

 

 どこもかしこも転生者ばかりで行政も混乱しているみたいですね(白目) というわけで、順番待ちに飽きた2人がわざわざ下界に帰って来てくれました! 位階は若干下がって動甲冑(リビングメイル)としての召喚ですが、今回のお役目ならば十分すぎる強さでしょう。吸血鬼侍ちゃんに促されて、牛飼娘さんがたどたどしく()()()()()を唱え始めました。

 

「うう、緊張するなあ……。わ、私たち夫婦の子供が大きくなるまで、どうかこの牧場の平和をお守りください! ……これで大丈夫?」

 

 目をギュッと瞑って祝詞を言い切った牛飼娘さん。そろりそろりと開けた先で見た光景は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 動甲冑(リビングメイル)に両側から肩を組まれ、脇腹を小突かれている困惑したゴブスレさんの姿)

 

 

 

 

 

 うん、牛飼娘さんが吹き出すのもしょうがないですよ、この光景は。

 

 予め召喚予定の2柱から、文面なんて気にしない、気持ちが籠ってればヘーキヘーキと言われていましたが、ほんとにあんなのでも良いんですか……。

 

 でも、これでゴブスレさんが懸念していた『自分が牧場を離れているときに、家族や神殿から預かっている子供を守る手段』は問題なさそうですね!

 

 春になってゴブリンが活動を活発化させる季節となり、吸血鬼侍ちゃんたちから新人がヒャッハーしているのを聞いたゴブスレさん。どうしても気になってソワソワしているのに牛飼娘さんが気付き、そんなに心配なら見てきたら?と言ったのが召喚のきっかけでした。

 

 ゴブリンの動向と新人の習熟度は気になるけど、牧場の守りと母子の安全はもっと気になる。そんな悶々とした思いを吸血鬼侍ちゃんに打ち明けてくれたので、彼らに再登場願ったわけですね。

 

 こうやって言葉に出して相談を持ち掛けてくれるあたり、丸くなったというか、ゴブスレさん本来の素顔が見えてきたというか……。吸血鬼侍ちゃんもまんざらでもなさそうな顔をしてますね。

 

 

 

 

 

 そろそろお昼だけど、2人とも食べてかない?という牛飼娘さんの嬉しい誘いに諸手を上げて喜びを表現する腹ペコ吸血鬼×2。神殿から来た子たちもみんないっぱい食べるから作ってて楽しいんだよと笑う顔は、ちょっと汚れた2人には眩しすぎたみたいですね。目を押さえて転がり始めちゃいました……。

 

 大丈夫!?と心配そうに聞いてくる牛飼娘さんですが、その純真さにやられているだけなので、放置しとけばそのうち復活しますから。

 

 調理は朝のうちに終わらせてあるから、温めればすぐ食べられるよーという声とともに歩く4人ですが、母屋のほうがちょっと騒がしいですね……。家畜が逃げ出したか、作物を狙った動物が姿を見せたんでしょうか? みんな揃って空を指差してますけど……あ、あの空から舞い降りてくる特徴的なシルエットは……!

 

 

 

 

「いたいた! 健康チェックの日にごめんなさい。悪いんだけど、そこの2人回収させてもらえるかしら?」

 

 外套(つばさ)を器用に操って降りてきたのは女魔法使いちゃんでした。呪文回数を消費するとはいえ、早馬と同等の速度を出せる≪浮遊(フロート)≫で飛んで来たってことは何か緊急事態でしょうか。今日はたしか訓練場で真言の単語発動を教える予定だったと思いますけど……。牛飼娘さんが気を利かせて持ってきてくれた井戸水を飲み干しながら、汗を拭っています。

 

「突然訓練場近くの広野の上空に裂け目が出来て、そこから白金等級一党(パーティ)の3人が落ちてきたの。騒ぎになると厄介だから、とりあえずウチに案内したんだけど……」

 

 あ、そっか。訓練場建設の起工が原作より二ヶ月以上早かったので頭から抜け落ちていましたが、今の季節は初夏、勇者ちゃん一党が帰ってくる時期でした! 見つけたら速攻で回収しようと思ってましたが、まさか牧場訪問の日と重なるとは……。とりあえずすぐ戻りましょう、牧場ランチはまた次の機会ということで。

 

「おじゃましましたー」

 

「またらいしゅう、ようすをみにくるからねー」

 

「ありがとー! 3人とも気を付けてねー!!」

 

「……またいつでも来い」

 

 うん、なんかこう、良いですね。2人の幸せ、吸血鬼侍ちゃんが守護(まも)らねばならぬ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっほー久しぶり! お昼ご飯もらってるね!!」

 

「食べながら口を開くな。……む、何やら面白い剣の気配が」

 

「そういうのは後回しにするのです。……また新しい女を引っ掛けましたね?」

 

……この圧倒的なキャラの濃さ、コレを感じると勇者ちゃん一党だなって実感が湧きますよね!

 

 ちょうど在宅でレポート作成をしていた森人少女ちゃんがお昼を用意してくれて、令嬢剣士さんを含め5人で待っていてくれたようです。いつもと変わらない明るい笑顔の勇者ちゃん、クールを気取っていますが美味しい料理で頬が緩んでいるのを隠せていない剣豪さん。そして吸血鬼侍ちゃんをスンスンと嗅いで何かを確信している賢者ちゃん……って最後はちょっと不味いですって!?

 

「話は2人から聞いたのです。陛下を動かして冒険者の訓練場を作り上げるとは、なかなか良い仕事をしたのです。褒美に撫でてあげるのです」

 

「おあ~」

 

 先ほどの疑惑を誤魔化すように吸血鬼侍ちゃんの頭を全力で撫でる賢者ちゃん。摩擦で煙を吹いているように見えますが、きっと気のせいでしょう。森人少女ちゃんが吸血鬼侍ちゃんたちのご飯も用意してくれたので、積もる話をする前にいただいちゃいましょうか。

 

 

 

 

「……でね、ボクはこう言ってやったんだ。『それがどうした!』って!!」

 

 身振り手振りを交えながら語られる三千世界の冒険譚。時には笑いを呼び、時には手に汗握り、そしてめでたしめでたしで終わる物語。つっかえることもありましたが、その度に剣豪さんや賢者ちゃんが的確にフォローして話が進んでいきます。

 

 目を輝かせながら夢中になって聞き入る森人少女ちゃん。時折ツッコミをいれながらも楽しそうに耳を傾けている令嬢剣士さん。勇者ちゃんの口が閉じるころには、すっかり日は暮れてしまいました。今夜は泊って、明日の朝≪転移≫の鏡で王宮に顔を出しに行くそうです。宰相へのレポートを提出する日でもあるので、みんなで向かうことになりました。

 

 

 

 おや、じゃあ今日は寝ようかというところで、吸血鬼侍ちゃんが賢者ちゃんを呼び留めています。どうやら帝王切開に関する術式について、賢者ちゃんの意見も聞きたいみたいですね。

 

「なるほど、では陛下が持っている草案に目を通して、意見を添えて返すことにするのです」

 

「ありがと。やれるだけのことはしたいから、おねがいね?」

 

 良かった、どうやら目を通してもらえるみたいですね。勇者ちゃんは勇者ちゃんですし、剣豪さんは剣豪さんなので、最終戦闘(クライマックスフェイズ)以外で一番忙しいのは賢者ちゃんですからね。王国随一の知力と魔術の知識を持つ彼女に手伝ってもらえるのは非常に助かります。

 

「てつだってもらうおれい。なにをすればいい?」

 

 吸血鬼侍ちゃんの言葉を聞いて一瞬剣呑な光を宿した目になっていましたが、何事もなかったかのように四次元ポシェットから金属製のカードのようなものを取り出す賢者ちゃん。吸血鬼侍ちゃんに差しだして、表面に血でサインをするよう求めています。

 

「ん、できた。これってなににつかうの?」

 

「これはサインを書いた対象を霊界(アストラル)を通じて一時的に召喚する呪物なのです。また手が足りないときにいちいち探すのは面倒なので、これで一発ツモなのです」

 

 暗月警察かな??? 吸血鬼侍ちゃんは一応太陽の戦士のつもりなんですが(ダクソ並感)

 

 つまり、また世界の危機的なサムシングに呼ばれるってことじゃないですかヤダー!

 

「私に言われずともわかっているのではないのですか? 自分という存在が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……うん」

 

「いずれ、望まずとも世界の危機が自らの周りに現れる日が来るのです。それまでに、大切な人との絆を強く結んでおくのですよ」

 

 摂理(ルール)からの逸脱、変わる周囲の環境(システム)、そしてそれを乗り越えるための(パス)の大切さ。

 

 これは……つまりカオスフレアじゃな? やっぱり白金等級はそっちの規則(レギュレーション)で動いているんですね……。

 

 そう焦らずとも、頼れる仲間がいるのでしょうと吸血鬼侍ちゃんの頭を撫でる賢者ちゃん。今はまだ、摂理(ルール)に守られた存在でいればいいのですと言い残して来客用寝室に入って行きました。

 

 一歩前進したと思えば、また新しい障害が目の前に現れる。これ乗り越え続けることもまた、冒険と言っても良いんでしょうか。

 

 自ら諦めない限り、吸血鬼侍ちゃんには無限の時間がありますから。ほんの僅かずつでも構いません、きっとみんな『が』幸せになる道を探し続けることでしょう。

 

 

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つ~かま~えた。ふふ、最近相手してくれなくて寂しかったんだよご主人様? 分身ちゃんも一緒に、今夜はじっくりお話ししようじゃあないか……」

 

「「ヒエッ」」

 

 




 休み中にもう一話くらい更新したいので失踪します。

 いつも誤字脱字のご連絡ありがとうございます。
 お気に入り登録や感想、評価についても執筆速度が上がりますのでよろしくお願いいたします。

 お読みいただきありがとうございました。

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