ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 まだだ、まだやれる!ので初投稿です。

 気付けばもう50話。ここまでモチベーションが保てたのはお読みいただいている皆様のおかげです。これからも拙作を見ていただければ幸いです。

 ……もしよろしければ、お気に入り登録や評価、感想を頂けると一層頑張れるかもしれませんので、気が向いたらで結構ですのでお願いいたします。


セッションその8.5

 王都の休日な実況プレイ、はーじまーるよー。

 

 前回、勇者ちゃん一党と王宮に行くところから再開です。

 

 賢者ちゃんとの会話の後、不覚にもスケベ森人(エロフ)に誘拐された吸血鬼侍ちゃんと分身ちゃん。なんとか撃退には成功したものの、負担の大きかった分身ちゃんが真っ白に燃え尽きてしまいました。

 

 休ませてあげたいのはやまやまなんですが、義眼の宰相への説明が出来るのは分身ちゃんだけなので、心を鬼にして再召喚します。若干ハイライトさんが出張中のようですが、吸血鬼侍ちゃんもおんなじような目をしてますので許容範囲です、たぶん。

 

「あの愚義姉(ばかあね)の面倒はこっちで見ておくから、気にしないで行ってらっしゃい」

 

 犯人である森人狩人さんは気持ちよさそうに寝ていますので、女魔法使いちゃんにお説教をお願いしつつ、陛下に面会する組と宰相にレポートを提出する組は早速王宮へ≪転移≫しましょうか。

 

 

 

 

「おや、随分遅かったじゃないか。陛下も首を長くして待っていたよ」

 

 一行を迎えてくれた銀髪侍女さん。まさか勇者ちゃん一党が一緒だとは思っていなかったようで、普段は眠そうな目をちょっとだけ丸くしています。宰相殿の執務室はもう案内は不要だろうと言って令嬢剣士さんたちを先に行かせ、勇者ちゃん一党と吸血鬼侍ちゃんを陛下の執務室に案内してくれました。

 

 

 

「……というわけで、しんじんのゴブリンごろしたいけんはひじょうにこうかてきなので、ぜひほかのギルドでもどうにゅうしてください」

 

「うむ、どうやら卿は疲れているようだな。泥鰌の行方について聞くつもりであったが、それはまた機会を改めることとしよう」

 

「あるぇ~?」

 

 

 訓練場の調子はどうだという世間話に答えた結果がこれだよ! まあグルグルおめめで新人のゴブリン童貞を奪った手順を嬉々として語っている吸血鬼侍ちゃんを見たら当然でしょうか。

 

 どじょうだして?やくめでしょと言われた時に備えて赤竜が貯めこんでいた財宝は持ってきていたんですが、どうやら出す必要は無さそうですね。今日はもう帰っていいよという感じで執務室から退出を言い渡されてしまいました。吸血鬼侍ちゃんを送り出す赤毛の枢機卿が何かを言おうとして結局口を噤んだままでしたが、伝えたいことでもあったんでしょうか?

 

 

 

 さて、早々に追い出されてしまいましたがこれは予想外の事態。レポート組はいつも報告後の昼食会までがセットなので、昼過ぎまで手持無沙汰になってしまいました。学院で半鬼人先生とお茶でも良いのですが、最近少年魔術師君が出入りしていて顔を合わせると気まずいんですよねぇ。

 

 

 

 とりあえず街に出てから決めようとガバい考えで王宮内を歩く吸血鬼侍ちゃんですが、不意に足を止めてしまいました。訝し気な視線の先には、キョロキョロと周囲を警戒しながら柱の影から影に移動している一人の少女。陽光を反射しキラキラと輝く金髪に青い瞳、冒険を共にする地母神の神官たる少女に似ていながら、より女性らしさを感じさせるプロポーション。あれはまさか……。

 

「なにをしていらっしゃるんですか、おうまいでんか?」

 

「ファッ!?」

 

 吸血鬼侍ちゃんの問いかけにビクッと身を竦ませ、慌てて左右に目を向ける少女。視点を下げたところで吸血鬼侍ちゃんに気付き、息を吐きながら胸を撫で下ろしています。

 

「なんだ、侍女かと思ってビックリしたじゃない。驚いて損した・・・・・・じゃなくて! 私は……そう、貧乏貴族の三男坊の妹よ! 決して王妹殿下なんていう可憐で聡明な女の子じゃないわ!!」

 

「そ~なのか~……」

 

 堂々と豊かなお山を張りながら嘘を吐く少女。ジト目でそれを眺める吸血鬼侍ちゃんですが、少女を挟んだ反対側に銀髪侍女さんがいることに気付きました。何やら目にも止まらぬ速さでハンドサインを繰り出していますね……。

 

「(急な依頼で申し訳ないのだけれど、今日一日殿下の我儘に付き合って貰えないだろうか? 報酬は弾むと約束するから)」

 

「(こいつちょくせつのうないに・・・!)」

 

 いや、ハンドサインとアイコンタクトですからね? どうやら久しぶりに陛下と遠乗りに出掛ける予定だったのが、勇者ちゃん一党の帰還によって取りやめになってしまいご機嫌斜めなご様子。このままだと脱走を計画しかねないということで、暇をしている吸血鬼侍ちゃんに白羽の矢が立ったようです。

 

「(そんなにぼくのことしんようしていいの? きゅうけつきだよ?)」

 

「(少なくとも、王宮に巣食う混沌の勢力との内通者よりは信頼しているさ。実績もあるしね)」

 

「(ひかくたいしょうがうれしくないなあ……!)」

 

 少女の言い訳を聞き流しながら銀髪侍女さんと迫真の交渉をする吸血鬼侍ちゃん。報酬の魅力に抗えなかったのか、王妹殿下の騎士を引き受けることにしたみたいです。

 

「よろしければ、ぼくにぶりょうをなぐさめるエスコートをまかせていただけませんか、おじょうさま?」

 

「……その認識票、冒険者よね? わかったわ、今日一日私の騎士となる栄誉を授けましょう!」

 

 王宮を抜け出す算段が付いてご満悦の王妹殿下お嬢様。はじめての冒険に興奮しているみたいですけど、銀髪侍女さんの目が凄いことになってますので覚悟しておいたほうがいいでしょうねぇ。

 

 

 

 

 どうやら銀髪侍女さんが予め申し送りをしてくれていたのでしょう、驚くほどスムーズに王宮の外へ出ることができました。衛兵のみなさんがこちらを見る表情が引き攣っていたのはご愛敬ですね。

 

「おじょうさま、どこかあんないをきぼうされるばしょはございますか?」

 

「そうね、まずは冒険者の酒場に行ってみたいわ!」

 

「かしこまりました。それではおてをしつれい。……まいごになるといけませんので」

 

 子ども扱いしないで頂戴と文句を言うお嬢様の手を取って歩き出す吸血鬼侍ちゃん。紅玉の認識票を下げた圃人と貴族のお嬢様という非常に目立つ組み合わせの2人に、道行く人の視線が集まります。殆どが微笑ましいものを見るものですが、稀に良からぬ考えを孕んでいる視線も。

 

「ん? なにかあったの?」

 

「なんでもありませんよ? ほら、あそこのかどをまがればもくてきのみせですから」

 

 お、吸血鬼侍ちゃんが後ろから近付いて来た破落戸の股間に村正の柄を捻じ込みました。声も無く崩れ落ちるそれを放置して何事もなかったかのようにお嬢様を案内しています。同様に隙を窺っていた連中は肝を潰して逃げてっちゃいました。この場合は玉を隠してでしょうかね?

 

 

 

 

 

 2人がやって来たのは古びた店構えの酒場。外からでも店内の喧騒が伝わってくるほど盛況なようです。勇み足で踏み出そうとしているお嬢様を制し、護衛らしく先に戸を潜る吸血鬼侍ちゃん。

 

「「「「「……」」」」」

 

 一瞬店内が静まり2人に視線が集中しますが、吸血鬼侍ちゃんの紅玉の認識票を一瞥すると先程までの喧騒が戻ってきました。これが白磁や黒曜だったらベテランの洗礼が待ち構えていたかもしれませんが、上にまだ二等級あるとはいえ紅玉まで上り詰める冒険者はそう多くありません。白金と金は別枠扱いですしね。

 

「らっしゃーい! おや、貴族のお嬢様のちょっと刺激的な社会見学かい?」

 

「そんなとこかな。レモンすいふたつとドネルサンドひとつ、ソースはヨーグルトとチリソースのハーフあんどハーフで」

 

 給仕の軽口を流しながら手慣れたように注文する吸血鬼侍ちゃん。もしかしてこの店に来たことがあるんでしょうか? ん? 奥で調理をしていた店主さんが吸血鬼侍ちゃんを見て驚いた顔をしています。吸血鬼侍ちゃんが口元に指をあてて内緒のジェスチャーをすると、納得したように調理に戻っていきました。

 

「もしかして此処を利用したことがあるのかしら?」

 

「たまにですが。ちがうばしょにあったときはよくりようしたものです」

 

 違う場所(死の迷宮直上)ですねわかります。ってことは店主さんとは10年以上のお付き合いというわけですか。そりゃ驚いた顔をするわけです。

 

 店内を興味深げに見渡しているお嬢様。壁に所狭しと貼られた一党(パーティ)募集の張り紙や、昼前から祝杯を挙げている冒険に成功したと思われる一党に目を輝かせています。魔神を滅ぼした一撃の解説や宝箱に仕掛けられた悪辣な罠を解除する際の緊張感、そして手に入れた財宝の分配に沸き立つ歓声……。そこかしこから聞こえる栄光と勝利の凱歌。うんうんと頷くお嬢様の顔に喜色が溢れています。

 

「やはり冒険とは素晴らしいものですわね! お兄様……ゲフンゲフン、国王陛下もかつて冒険者として活躍していたのです、私もそんな経験を味わってみたいのに……」

 

 紅潮した頬を冷ますように両手を当て溜息を吐くお嬢様。ですが、冒険とはそんな輝かしいモノばかりではありませんよね?

 

「……おじょうさま、すみのテーブルにすわる3にんぐみがみえますか?」

 

 吸血鬼侍ちゃんの小さな呟きに怪訝な顔をしながら言われた方向を見るお嬢様。そこには四人掛けのテーブルに座る3人の冒険者の沈鬱な姿がありました。誰も座っていない席には3人の前に並んでいるのと同じ麦酒が置かれ、周囲に掻き消されてしまうような声で会話をしているようです。

 

「たぶん、なかまがひとりしんだのでしょう。そのわかれのいっぱいですね」

 

 その言葉を聞いてハッとした様子で周囲を見渡すお嬢様。先ほどまで気付かなかった、否、彼女が見ようとしていなかったもうひとつの冒険の結末がそこには広がっています。

 

 失った腕の根元を押さえて苦笑する只人の戦士。泣き止まない神官を痛ましい表情で見ている斥候。そして一人寂しく杯を傾け続けている森人の魔術師……。

 

「ぼうけんは、せいこうがやくそくされているものではありません。ダイスのでめしだいで、よそうはかんたんにくつがえるものです」

 

 お嬢様の頬から朱の色が抜け青みが増していく最中、通路を挟んだテーブル席の一党が漏らしている話題が2人の耳に入ります。

 

「聞いたか? 西の辺境の話。なんでも白磁の連中にタダ飯食わせてやってるらしいじゃないか」

 

「ああ、銀等級が雁首揃えて冒険にも行かずに手取り足取り仲良しこよしで棒振りから教えてるっていうじゃないか……」

 

「オマケにゴブリンを集めて新人に殺しの練習をさせたとか。あんな雑魚そのへんの農民だって相手に出来るってのなぁ!」

 

 俺たちもそんな恩恵に預かりてえなあと笑う声に、吸血鬼侍ちゃんの顔からあっという間に表情が消えていきます。豹変した吸血鬼侍ちゃんを見て、声をかけようとしていたお嬢様の口も閉じられてしまいました。

 

 

 

 

 

「おーまたせしましたー! 檸檬水2つとドネルサンドのハーフ&ハーフ、食べやすいように半分に切っておいたよ!!」

 

 重苦しい空気を払拭するように響く給仕さんの声。カウンターに置かれた注文品を見て、なにやらお嬢様が戸惑っている様子。

 

「ええと、これはどうやって食べたらいいの?」

 

「そのままてづかみでどうぞ。しろいソースのほうがまろやかで、あかいソースのほうはちょっとからいです」

 

 では、と言いながらおずおずと手を伸ばすお嬢様。細長い麺麭に切れ目を入れ、溢れんばかりに酢漬けの玉葱と甘藍を敷き詰め羊肉を挟み込んだ豪快な見た目。半分に切られたそれは、赤白別々のソースがかけられています。

 

 赤いチリソースがかけられたほうを掴み、口に運ぶお嬢様。大口を開けるのははしたないと考えてか、少しづつ啄むように食べています。あ、チリソースが唇についてその刺激に驚いてますね。普段の食事では唐辛子系の香辛料は少なそうですし、もしかしたら初めての味なのかも。

 

「か、辛すぎじゃありませんかコレ!? 冒険者は皆こんなものを食べられるんですか!?」

 

「からいものはしょくよくがましますし、ぼうけんしゃはみなけんたんかですからね。ぺろっとたべちゃいますよ」

 

 そっちは辛くないですよという吸血鬼侍ちゃんの言葉に従い、白いヨーグルトソースのほうを手に取るお嬢様。全体を纏め上げる甘めのソースが気に入ったのか、頬を緩めながら美味しそうに食べ進んでいます。

 

「あの、貴女のぶんは注文しなかったの?」

 

「あさがおそめだったのと、まんぷくだととっさのうごきがにぶりますので。ぼくのことはおきになさらず」

 

 ヨーグルトソースがかかった分を食べ切り、檸檬水で口内をさっぱりとさせたお嬢様がはたと気付いたように訪ねています。もっともらしい答えを返している吸血鬼侍ちゃんですが、おそらく口に合わずに残してしまう可能性を考えていたんでしょうね。

 

「あー、このチリソースだっけ? ちょっと辛くて私の口には合わなかったから、出来れば代わりに食べてもらえる?」

 

「……そういうことでしたら、いただきます」

 

 残りの半分と吸血鬼侍ちゃんを交互に見つめ、お皿をスーっと差し出して来るお嬢様。彼女の不器用な気遣いに感謝しながら、小さな口をめいっぱい大きく開けてかぶりつく吸血鬼侍ちゃん。そのワイルドな食べっぷりを見てお嬢様は目を丸くしています。

 

 

「こういうのは、おもいきってまるかじりするのがいちばんおいしいたべかたです」

 

「もう、なんで最初に言ってくれなかったの!」

 

「きかれなかったので~」

 

 うがーと声を上げるお嬢様。どうやらお店とメニューのチョイスは成功だったみたいですね! 

 

 

 

 

 

 ブランチを済ませ、街中を冒険する2人。冒険者御用達の武具店に入って、重戦士さんが持っているような巨大だんびらを吸血鬼侍ちゃんが片手で振り回して周囲の度肝を抜いてみたり、お嬢様に甲冑を身に着けさせて一歩も歩けない残念な姿を店員さんと一緒に笑いを堪えながら眺めたり、小腹が空いたところで最近流行りの氷菓子(あいすくりん)に舌鼓を打ってみたりと王宮では味わえない刺激にお嬢様も大満足のようです。

 

 時刻はだいたい午後三時くらいでしょうか。歩き回って少し疲れた様子のお嬢様の休憩を兼ねて、広場で吟遊詩人の語りを聞いているところです。くるくると二本の棒を回して水飴を練る2人は、南方で大暴れしている凶悪なサメの物語に夢中になっている様子。なんでも邪悪な魔術によって生命を歪められたサメは復讐のために海を跳び出し、地上を、空を、そして霊界(アストラル)までも我が物顔で泳ぎ回っているとか。

 

「サメ……なんて怖ろしいモンスターなのでしょう……ッ」

 

きょうてん(ルルブ)のどこにも『サメはうみいがいをおよげない』ってかいてないですから~」

 

 それは万知神さまだけの理屈なんだよなぁ……。とまれ、その臨場感に溢れた語りは聴衆に好評を博し、吟遊詩人が手に持つ帽子には次々と硬貨が投げ入れられています。

 

「さて、つぎは何を見せてくれるのかしら?」

 

「ん~、じゃあせいれいじゅつしが≪しえき(コントロール・スピリット)≫でよびだしたせいれいどうしをきそわせるやみのとうぎじょうに……あ」

 

 水飴をしゃぶりながら、次に行く場所を考えていた吸血鬼侍ちゃんの口からポロリと棒が落ちてしまいました。その様子を見て、吸血鬼侍ちゃんの視線の先に顔を向けたお嬢様の顔も引き攣っています。凍り付く2人の視線の先には……。

 

 

 

 

「ンンン~? 今回はお忍びデートですかぁ! 後で刺されても知りませんよぉ?」

 

「そんなんじゃないから。でもよかった、ちょうどたのみたいことがあったから」

 

 え、よりにもよってソイツ(フラック)に頼み事? ドン引きしているお嬢様を放置して、道化師に話しかける吸血鬼侍ちゃんはちょっとシュールですね。

 

「にしのへんきょうではじまったくんれんじょう、しってるでしょ? あれは()()()()()()()()()のわがままでおこなわれてるってひろめてほしいの」

 

「ええ構いませんとも! ただ、こう見えてワタクシけっこう高給取りでして。お高いですよ?」

 

「もんだいない。さきにほうしゅうはわたしておく……ねっ!!」

 

ゴシャッ

 

 ≪手袋≫から金の延べ棒を取り出した吸血鬼侍ちゃん。そのまま大きく振りかぶって投擲し、メイクの濃い顔に叩き込みました! アフンという気の抜けた声とともに吹き飛ぶ様を見て満足げな笑みを浮かべています。っていうかこっそりガメてたんですね延べ棒。頭脳担当からいざという時に備えて秘匿するよう言われてたんでしょうか。

 

「すこーし多く貰いすぎちゃいましたねぇ。お釣りといっては何ですが、チョットだけ忠告させていただきましょうか!」

 

 何事もなかったかのように立ち上がり、いそいそと延べ棒を懐にしまい込む道化師。クルクル回転しながら2人に近付き、天を仰ぐようなポーズを決めながら口を開きます。

 

()()()()()()()()()()()()()()。生贄に狙われるのは、いつだって麗しき乙女と相場が決まっているのですから……」

 

 その言葉を最後に路地裏へと姿を消す不死の蛞蝓(フラック)。怒涛の勢いで襲い掛かる衝撃に呆然としていたお嬢様が再起動し、彼が消えて行った路地裏を覗き込んでいます。

 

「今の道化師は一体何者? 随分仲が良さそうだったけど……」

 

「みなかったことにしてください。めをあわせるとふこうがうつるので」

 

 (別に仲良しじゃ)ないです。しかし赤い手ですか。どうやら吸血鬼侍ちゃんには聞き覚えの無い単語みたいですね。強いて言えば女魔法使いちゃんの新調したグローブが赤いですけど、別にそういう意味じゃ無さそうですし……。

 

 

 

 

 道化師に絡まれている間に、いつの間にか夕暮れ時が近付いてきてしまいました。お嬢様の冒険の時間もそろそろ終わりとなってしまいますね。

 

「おかえりなさいませ主さま。おつとめご苦労様でした」

 

 王宮の入り口には訓練場の運営について話し合っていた3人と義眼の宰相、それに銀髪侍女さんの姿が。どうやらお待たせしてしまっていたみたいですね。みんな厳しい遣り取りを行って疲れているでしょうに、微塵も顔に出さずに吸血鬼侍ちゃんを出迎えてくれました。

 

「今日は私の我儘に付き合ってくれてありがとう。……また、一緒に遊んだり出来るかしら?」

 

「こんかいはぐうぜんにめぐまれておきた、まほうのようなひとときです。どうか、おんみのたちばをおもんぱかってくださいませ」

 

 お嬢様……いえ、王妹殿下の乞い願うような視線を真っ直ぐ見つめ返し、甘い希望を断ち切るように言葉を紡ぐ吸血鬼侍ちゃん。そうですよねと俯く殿下に、ただ……と言葉を続けます。

 

「おうきゅうのなかでおはなしをするくらいでしたら、へいかもおゆるしくださるかもしれません。そのときは、ぜひおこえかけを。ですがこれだけはこころにとめおいてくださいませ。ぼうけんでつかむしょうりとえいこうのうらには、かならずはいぼくとしがえがかれていることを……」

 

「……ええ、明るい面だけではなく、その裏に隠された暗い一面を知ってこその真実よね。お兄様を説き伏せて、必ずまたお話し出来るようにするから!」

 

 宰相に先導されて王宮内へ消えていく王妹殿下。何度も振り返っては吸血鬼侍ちゃんに手を振っていました。

 

「随分気に入られたみたいだね。殿下にも手を出す気かな?」

 

「そんなんじゃないよ。ただ、ほんのちょっとげんきがでるまほうをかけただけ」

 

 ≪転移≫の鏡がある部屋まで一党を案内しながら吸血鬼侍ちゃんをジト目で見てくる銀髪侍女さんと、彼女から視線を逸らしながら今日の出来事を報告する吸血鬼侍ちゃん。不死の蛞蝓(フラック)の言っていたことについては銀髪侍女さんのほうでも注意してくれるそうです。

 

 鏡を起動して、これで依頼は完了だと告げる銀髪侍女さん。報酬については後日リストを用意してくれるとのことなので、期待して待つことにしましょうか。突然湧いた休みの時間が、なんだかとても長いひとときに変わった一日でしたね。

 

 

 

 

「それではまた、次の報告会でお会いしましょう」

 

「ああ。訓練場の成功、期待しているよ」

 

 一党を代表して令嬢剣士さんが別れの挨拶を告げ、鏡を通り抜ける一党。光が収まったそこは、見慣れた自宅のリビングです。

 

「あ、おかえり。結構時間かかったのね」

 

 長耳をピクピク動かし、視線を向けずに一党を迎えたのは妖精弓手ちゃん。なにやら大きなはっぱを睨んでいます。

 

「あれは私たち(森人)が用いる葉書(はがき)でございます。おそらく里より届いたものかと思うのですが」

 

 首を傾げていた吸血鬼侍ちゃんをフォローするように森人少女ちゃんが教えてくれました。後ろから覗き込む吸血鬼侍ちゃんには読めませんが、装飾のように美しい森人(エルフ)語の手紙を舐めるように読んでいた妖精弓手ちゃん。どうやら読み終わったのか、ひょいっと頭を上げ、事もなげに一党に言いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結婚することになったみたい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「……え?」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 




 もう一話!もう一話!!なので失踪します。

 いつも誤字脱字のご連絡ありがとうございます。
 お気に入り登録や感想、評価についても執筆速度が上がりますのでよろしくお願いいたします。

 お読みいただきありがとうございました。
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