ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 うまぴょいから逃げられなかったので初投稿です。

 お気に入り登録700件ありがとうございます。新年度が近付き投稿ペースが落ちるかもしれませんが、今後もお読み頂ければ幸いです。


セッションその9 りざると

 前回、女魔法使いちゃんに正座させられたところから再開です。

 

 思いが通じたのに任せて夜通しちゅーちゅーしてしまい、全裸で怒られていた吸血鬼侍ちゃんと妖精弓手ちゃん。なんとかお説教を乗り切った後に、身支度を整えて他のみんなにごめんなさいしに行くことになりました。そりゃ半死半生(もともと生きていない)で寝かされていたのに、起きるなりちゅっちゅしてたら謝罪案件ですよねぇ。

 

 手っ取り早く≪浄化(ピュアリファイ)≫でいろんなものを綺麗にして、洗濯済の服に着替えたら向かいましょうか。ちょっと内股で歩いてる妖精弓手ちゃんを見たら、2人がナニしてたか一発でバレちゃいますね……。

 

 

 

 

 

 女魔法使いちゃんに先導されて着いたのはエルフの森の中心近く、おそらく外からの来訪者をもてなすための迎賓館的な場所でしょうか。ゴブスレさんを筆頭にいつものメンバーと勇者ちゃんたち3人、それに川で救助していた女巫術師さん一党もいますね。ん? さらに見たことのない男女2人組の冒険者がいますけど、何処かで会っていましたっけ……?

 

「ああ、アンタが居ない間にあの城塞を調べていた時に見つけた2人ね。油塗れのゴブリンから隠れていたところを保護したのよ」

 

 あ、原作で圧搾機にかけられてた冒険者ですか! 吸血鬼侍ちゃんが呼ばれちゃったので忘れてましたけど、無事に助けられたんですね。下層のゴブリンも汚染している可能性は高かったのですが、みんな女神官ちゃんの≪浄化≫で消滅したために難を逃れたのでしょうか。

 

「起きたか。……なんだ、怪我でもしたのか?」

 

「ふふん、名誉の負傷ってヤツよ!」

 

「ふかくはついきゅうしないで……」

 

 妖精弓手ちゃんに抱きかかえられた状態で現れた吸血鬼侍ちゃんを見て、僅かに安堵を滲ませるゴブスレさん。同時にぎこちなく動く妖精弓手ちゃんに目を向けますが、どうやら一党のみんなには致したことがバレバレのようですね。スケベ森人(エロフ)姉妹と令嬢剣士さんは生暖かい目で見てきますし、女神官ちゃんは「あっ(察し)」という顔をしています。

 ≪浄化≫で匂いも落ちたのが気に入らないのか、マーキング(所有権を主張)するように頬擦りを続けている妖精弓手ちゃん。そんなことしなくても吸血鬼侍ちゃんは逃げやしませんよ。

 

「おや、もう目が覚めたのですか。ちょうどいま、他の一党(パーティ)を送るところだったのです」

 

 四次元ポシェットから≪転移≫の鏡を取り出していた賢者ちゃんが吸血鬼侍ちゃんに気付いて声をかけてきました。どうやら各一党を拠点に送り届けようとしていたところみたいですね。たしかに筏も無い状態でエルフの森(ここ)から帰るのは厳しいでしょうから、王都なりなんなりに送り届けてあげたほうが彼らも助かるでしょう。吸血鬼侍ちゃんたちは急いでませんので、先に彼らを送ってあげてくださいな。

 

「ではそうするので、もうちょっとエルフの森(ここ)で待ってるのです。そちらの姫の姉とその新郎も、貴女が起きたら話したいことがあると言ってたのです」

 

「ん、わかった。まってるね」

 

「それじゃみんな、ボクに着いて来て! だいじょうぶ、危なくなんかないよ!!」

 

 おや、詫び石ですか?(ソシャゲ並感) まあ吸血鬼侍ちゃんも本調子では無さそうですし、従兄殿と森姫さまが話したいというのならもう少しお邪魔させてもらっちゃいますか。賢者ちゃんが開いた≪転移≫の門に、勇者ちゃんの先導で次々に消えていく冒険者たち。みんなお礼を言いながら笑顔で去って行きました。ここで拾った命を無駄遣いせず、頑張って活躍してもらいたいですね。

 

 

 

「勇者殿から聞き及んでおりますが、召喚先では侍殿も随分危ういところだったようで」

 

「うん、すっごいひさしぶりに"あれ、もしかしてあぶないかも"っておもった……

 

「そうね、そういえばまだそっちはお説教してなかったわねぇ?」

 

 労うように声をかけてくれた蜥蜴僧侶さんに思わず本音を漏らしてしまった吸血鬼侍ちゃん。気付いた時には既に手遅れ、顔面を女魔法使いちゃんに鷲掴みに。そのまま妖精弓手ちゃんのハグから引っこ抜かれ、再び正座されられちゃいました。

 

「いきなり分身ちゃんが消えた時はみんな慌てたのよ? 向こうも世界の危機とやらで手が足りないから呼んだんでしょうけど、それでアンタが帰って来なかったらどうなるか。わからないアンタじゃないでしょ?」

 

「うん。……みんな、心配かけてごめんなさい」

 

 正座のまま一党に頭を下げる吸血鬼侍ちゃん。空気を読んだのか読んでいないのか、シュルシュルと伸びてきた蔓が「私は一党の仲間に心配をかけたダメ吸血鬼です」の札を吸血鬼侍ちゃんの首にかけていきました。その姿を見ながらうんうんと頷いている森人狩人さん。あ、なんか嫌な予感が……。

 

「そうだよご主人様。きみがいなくなったら、私も義妹(いもうと)ちゃんも生きる理由が無くなってしまうよ? 私たちを虜にした責任はしっかり取ってもらわないと、ね?」

 

「そうやってプレッシャーをかけるのは止めなさいって言ってるでしょこの馬鹿義姉(ばかあね)。義妹ちゃんもそこで頷かないの。……まぁ、これでわかったでしょ?」

 

 いけしゃあしゃあとのたまう森人狩人さんにツッコミをいれながら、吸血鬼侍ちゃんを諭す女魔法使いちゃん。既に何人もの命を背負っているんですから、自分の命を軽んじるような行動は慎まないといけませんね。

 

 

 

 

 

「侍従から聞いて耳を疑ったが、本当に目が覚めたようだな」

 

「ちょっと、小さき不死者の足をつついて、いったい何をしているのかしら?」

 

 お、正座にやられた吸血鬼侍ちゃんが、妖精弓手ちゃんに足をツンツンされているところに従兄殿がやって来ました。後ろにはおっぱ……花冠の森姫も一緒にいますね。悶える吸血鬼侍ちゃんを見て楽しんでいた妖精弓手ちゃんが、誤魔化すように吸血鬼侍ちゃんを抱きかかえて頬擦り(マーキング)を再開し始めました。

 

「見ての通りちょっとしたスキンシップよ、ねえ様、あに様。それより()()()()()に話したいことがあるんじゃなかったの?」

 

「……その前に。どういうことかしら、()()()()()()()

 

 うん? 妖精弓手ちゃんが昨晩から吸血鬼侍ちゃんを呼ぶのに使い始めた単語を聞いたとたんに2人の表情が変わりました。2人だけじゃありません、森人義姉妹(エロフ姉妹)も驚いた様子で妖精弓手ちゃんを見つめています。やはり森人特有の言い回しなんでしょうか?

 

「あの、その()()()()()って、どんないみなの?」

 

 抱きかかえられたままの体勢で手を上げ、従兄殿に向かって訪ねる吸血鬼侍ちゃん。眉間を押さえ、どうしたものかという表情をしていた従兄殿が、躊躇いがちに口を開きました。

 

「我々森人(エルフ)の生は永い。その中で見つけた自分にとって最も大切なもの、何よりも大事なものを表す言葉だ。本来は世界のどこかに眠る三つの宝玉を意味するものだが、今では最愛の人、愛しき者という意味合いが強い」

 

「ええと、だいすきなひとってこと?」

 

「端的に言えばそうなる。相応しくない者が手にすれば、その身を焼かれる運命の宝玉。たとえそうだとしても求めずにはいられない至高の光。……つまりそういうことだ」

 

「おおう……」

 

「あら、こーんな公衆の面前で意味を聞くなんて、シルマリルったら随分大胆じゃないの!」

 

 思っていた以上に情熱的な内容だったために恥ずかしそうに腕の中で悶える吸血鬼侍ちゃんを、抱き締めた状態から離さずにからかうような視線を向ける妖精弓手ちゃん。今まで積み重なってきた好感度も作用していると思いますが、愛されてますねぇ吸血鬼侍ちゃん。おや、バカップルの如くスキンシップを続けている妖精弓手ちゃんに硬い表情で花冠の森姫が近付いています。その真剣な顔を見て、妖精弓手ちゃんも吸血鬼侍ちゃんを弄る手を止めました。

 

 

 

「一応聞きますが、本気なのですね? 定命の存在から外れた、自然の摂理に反したモノを、貴女はシルマリルと呼ぶのですか?」

 

「そうよ、この子が私のシルマリル。たとえこの身が焼け落ちることになろうとも、掴んだ手は絶対に離したりしないわ。それに2人が結婚するんですもの、私が跡継ぎの心配をする必要はないわよね?」

 

「んなっ!? 結婚して早々世継ぎの話なんて、そんなはしたない!」

 

「あら、愛する人と繋がるのって、とっても幸せよ? ねーシルマリル」

 

「こんのクソチビ、巨乳のネーチャンやロリママだけじゃ飽き足らず、ちっぱいまで毒牙にかけやがって……痛ェ!?」

 

 同意を求めるように頬擦りをする妖精弓手ちゃんを見て、顔を真っ赤にしている花冠の森姫。どうやら妹が大人の階段を上ったことに気付いてしまったみたいですね。あうあうと意味のない声を出し続ける彼女の後ろで血涙を流す不良闇人さん。迂闊なことを口にしたせいで妖精弓手ちゃんの怪鳥蹴りを喰らっています。

 美しく優雅というイメージをぶち壊す森人の惨状に呆気にとられた様子の冒険者を見て、大きく咳ばらいをした従兄殿。気を取り直したように侍従から何かを受け取り、マウントポジションで不良闇人さんを殴っていた妖精弓手ちゃんに差し出しています。

 

 

 

「その辺にしておけ星風の娘よ。『如何なる時も上の森人(ハイエルフ)としての優雅さを忘れることなかれ』だ。それよりも、我が従妹の新たなる門出に際し渡しておくものがある。手を出すのだ」

 

 不良闇人さんにとどめを刺せず不完全燃焼な妖精弓手ちゃん、手渡されたのは細長い葉を編んで作られた小さな包み。上側を解いた妖精弓手ちゃんの隣から覗き込んだ吸血鬼侍ちゃんの見たものは、ふかふかの黒土から顔を覗かせている小さな新芽でした。

 

「あに様、これってもしかして……」

 

「ああ、昨夜我らが放った木芽鏃と同じ場所から選り分けた森の新芽だ。そなたが住処としている場所にこれを植え、心を込めて育むのだ。さすれば、やがて新芽は木となり、そして大樹へと育ち、そなたとそなたの家族の住む(いえ)となるだろう」

 

「まったく、随分気の長い話ねぇ。でも、ありがとうあに様。ねえ様のこと大事にしてあげてね」

 

 なるほど、森の株分けみたいなものなんでしょうか。離れていても気持ちが繋がるようにという願いが込められているのかもしれませんね。

 

「小さき不死者よ、我が従妹と同胞(はらから)のこと、頼むぞ。それと例の赤い手についてなのだが」

 

「! なにかわかったの?」

 

 おお、出発前に請け負ってくれていた赤い手についての情報ですか! 現状あの装飾品と蛞蝓野郎(フラック)以外の情報がありませんから、ちょっとでも詳しい話が聞きたいところですね。

 

「古老の1人に若いころ数多の世界を巡ったと嘯く御仁が居るのだが、かつて此処ではない世界を旅していた時に同じシンボルを見たことがあったそうだ。他の古老たちはまた法螺を吹いていると笑っていたが、私にはそうは思えなんだ」

 

 ふむふむ。その古老さんは、もしかして次元渡り(プレーンズ・ウォーカー)だったりしたんですかねぇ。ふとした拍子に次元を超えて()()()()()に足を運んでいたとしても不思議ではないのかも。こちらの予想が正しければ、混沌の勢力に大幅なテコ入れが入りそうですね……。

 

"赤い手は滅びのしるし"。ゴブリンやオーガ、トロルを束ね、強壮なる邪竜を率いし世界喰らいの悪竜。森人(エルフ)只人(ヒューム)鉱人(ドワーフ)が協力して外方次元界に追い返したその幻影は、今でも虎視眈々と生命の輝きに満ちた世界を狙っていると古老は言っていた」

 

 その手は既にこの世界にも伸びていると言ってその古老は口を閉ざしたと語る従兄殿。うーん、出来れば直接話を伺いたいところですが、今回は時間があまり無さそうですので諦めましょう。

 

「おしえてくれてありがとう。このはなしはゆうしゃパーティにも?」

 

「ああ、只人の王に伝えるよう頼んである。……注意せよ、秩序の勢力を切り崩すために内通者を作るのは奴らの常套手段。既に王国内部にもその手は伸びていることだろう」

 

 そうなんですよねぇ。銀髪侍女さんや部隊長と間違えられたところから始まる大恋愛で王宮付きのメイドさんと結婚したリア充将軍さんが洗っていると思いますが、何処かのタイミングで内通者を一掃しないと陛下や王妹殿下が危ういかもしれません。吸血鬼侍ちゃんも注意を払っておきましょうか。

 

 

 

 

 

「おまたせなのです。送り先はそちらの拠点で良いのですか?」

 

 お、ちょっとシリアスに会話をしていたら賢者ちゃんが戻ってきました。特に他に行く場所もありませんので、ゴブスレさんたちも一緒に吸血鬼侍ちゃん一党のハウスに送ってもらいましょう! 中空に浮かぶ≪転移≫の鏡に手をあてて座標を入力する賢者ちゃん。波打つように風景が切り替わり、鏡には見慣れたリビングが映し出されました。

 

「陛下には古老の方々の未来予想、しっかりと伝えておくのです」

 

「ああ、こちらも遺跡の封印と混沌の勢力の動向には注意するよう徹底しておこう」

 

 互いに確認を取り合い、別れの挨拶をする賢者ちゃんと従兄殿。1人また1人と鏡へと入って行く中で、吸血鬼侍ちゃんを呼び止める声が。これは……花冠の森姫ですね。

 

「正直、彼のように貴女を信用することは、私には出来ません。貴女個人の在り様はどうあれ、吸血鬼という生命を冒涜する存在であることに違いはないのですから」

 

「ちょっとねえ様、シルマリルがそんなヤツじゃないってことは……むぐ!?」

 

 反論しようとした妖精弓手ちゃんの口を触手で塞ぎ、花冠の森姫に続きを促す吸血鬼侍ちゃん。その様子を困ったように眺めながら、花冠の森姫は言葉を続けています。

 

()()()()()。他の全てを投げうってでも手に入れようとしてしまう至高の宝玉。貴女に執着するあまり、妹が変わり果ててしまわないとどう証明出来ましょうか……」

 

「……」

 

 伝承の通りならば、花冠の森姫が恐れているのも無理はありません。誰が好んで愛する妹が破滅の道を歩むのを見過ごせるというのでしょう。悲し気に俯く花冠の森姫に、吸血鬼侍ちゃんが答えを返します。

 

「あなたのいもうとも、ほかのみんなも、みをやかれるようなあしきこころのもちぬしなんかじゃないよ? それに、いっしょにいてくれるかぎり、ぼくはみんなをまもりつづけるから」

 

 安心は出来ないだろうけど、信じて欲しい。そう言って頭を下げる吸血鬼侍ちゃんを後ろから抱き締め、触手を吐き出した妖精弓手ちゃんが言葉を引き継ぎます。

 

「もし、万が一シルマリルが見境なく血を吸い、死を撒き散らすようになったら……その時は私が、私たちがこの子を()()()()()。それがシルマリルとともに生きるって決めた血族(かぞく)としてのケジメよ」

 

「……まだ子供だと思っていましたが、いつの間にか大人になっていたのね。わかった、貴女の生は貴女の好きなように謳歌しなさい。……でも、偶には顔を見せに来て頂戴ね?」

 

 決意に満ちた妖精弓手ちゃんの姿に虚を突かれた様子の花冠の森姫。大きく息を吐くと、微かに微笑みを浮かべながら妖精弓手ちゃんの頭を撫でています。どうやら認めて貰えたみたいですね! 既に他の面子は鏡を潜り、残っているのは2人だけです。

 

「うん、またみんなで遊びに来るから! その時は、私も叔母さんて呼ばれるようになってるかもね!!」

 

「またそんな破廉恥なこと! ちょっと、聞いているのですか!?」

 

 花冠の森姫の怒声をバックに吸血鬼侍ちゃんを抱えたまま≪転移≫の鏡を通り抜ける妖精弓手ちゃん。一瞬の浮遊感の後、みんなが待つリビングが目の前に広がっていました。

 

 

 

「これで全員通過なのです。忘れ物がないようなら通路を閉じるのです」

 

「だいじょうぶ、ありがとう」

 

 2人が現れたのを確認して鏡を停止させ、四次元ポシェットにしまい込む賢者ちゃん。おや? 代わりに何かを取り出して、吸血鬼侍ちゃんに近付いてきましたよ。

 

「やはり本体を召喚中に≪分身(アザーセルフ)≫が消滅するのは、戦闘中だと致命的な危機を及ぼす可能性があるのです。今回の急な召喚のお詫びと言ってはアレなのですが、ちょっと良いものを王宮の宝物庫からガメて来たのです」

 

 ちょっと≪分身(アザーセルフ)≫を唱えるのですと催促しながら凄いことを言っている賢者ちゃん。ガメてきたってそれ義眼の宰相や銀髪侍女さんが激おこなんじゃ……あ、この間の王妹殿下の護衛の報酬扱いで強請ってきたんですか。それならばヨシ!

 

 4日振りくらいに呼び出された分身ちゃん、本体を通して状況は理解しているのか困惑した様子は見られません。いつも通り背後から迫ってきた森人狩人さんを触手で迎撃しながら賢者ちゃんが手渡して来たものを見つめています。精緻な装飾が施されたチョーカーのようですが、これは一体何でしょうか?

 

「【呪文維持の護符(アミュレットオブパーマネンシー)】。術者にかけられた呪文の効果を、そのチョーカーを身に付けている間維持してくれる呪物なのです。普通は≪加速(ヘイスト)≫や≪円盾(メイジシールド)≫を維持させるのですが、分身が装備すれば呪文維持が不要で≪分解(ディスインテグレイト)≫の直撃でも解除されない≪分身(アザーセルフ)≫になるのです」

 

 ほほう! ということは分身ちゃんがいつでも好きなように動けるというわけですね! あれ、でも≪分身(アザーセルフ)≫って乱用すると人格に悪影響が起きるとかっていう話があったような……。

 

「だから、普通の魔術師は≪分身(アザーセルフ)≫を維持などという遠回しな自殺はしないのです。貴女たちの場合、既に別個の人格として目覚め始めているので大きな影響はないと思うのです」

 

 賢者ちゃんの言葉を聞いて、お互いを見つめ合う吸血鬼侍ちゃんと分身ちゃん。そう言われると、問題ないというか、もう手遅れというか。そんな感じもしますね。

 

 

 

「ぼくはきみだし」

 

「ぼくもきみだね」

 

「ぼくときみはちょっとちがうかもしれない」

 

「でも、ぼくときみはきっとおんなじだから」

 

「「ふたりになっても、ずっといっしょ!!」」

 

 

 

「どうやら自己同一性(アイデンティティ)は問題なさそうなのです。今後おそらく性格や嗜好といった面で差異が現れてくるのです。たまに≪分身(アザーセルフ)≫を解除して、知識や経験の共有を行うのも良いと思うのです」

 

 どちらが本物かで争ったりしたらどうしようかと危惧していましたが、2人ともそんな細かいこと気にしていないみたいですね。万が一本体側が一回休み(邪な土)になっても分身ちゃんがいてくれるなら、一党に迫る危険は大きく下がるでしょう。毎日再召喚する手間とコストも無くなりますし、一石二鳥以上の効果が望めそうですね!

 

 

 

 

 

「ほんじゃ、今日は解散ちゅうことで。ギルドへの報告は明日すればええじゃろ」

 

「ですな。拙僧そろそろ牧場のチーズが恋しくなっております故、食べ歩きでも行いますかな」

 

「あ、面白そうですね! ゴブリンスレイヤーさんはこの後牧場へ?」

 

「ああ。……また週末、健康確認を頼む」

 

「「はーい!」」

 

 

 

 みなさんお疲れモードなので、本日はこのまま解散。明日改めてギルドへ報告するために集まることとしました。吸血鬼侍ちゃん一党も荷物の片付けだけ終わらせて、早めにご飯とお風呂、そのあとゆっくり休みたいところですが……。吸血鬼侍ちゃんと分身ちゃんを囲うように魔術師組が顔を突き合わせ、なにか話し合っています。

 

「ちなみに、この状態でさらに≪分身(アザーセルフ)≫を唱えたらどうなるのかしら」

 

「戦略的には火力も機動力も増すので、可能なら嬉しいのですけれど……」

 

「正直お勧めはしないのです。今こうやって互いを認め合っているのが奇跡みたいなものなのです。下手に人格分裂を起こして知能の低い吸血鬼の側面が現れたら目も当てられないのです」

 

「それは残念だね。1人に1人ずつご主人様が傍に居てくれたら最高だったんだけど」

 

 なんて怖ろしいことを考えているんですかねえ森人狩人さんは……。吸血のコストも上がるでしょうし、2人でじゅうぶんですよ!

 

「なんにせよ、これから2人は別個の人格として変化していくのです。それぞれの個性を尊重してしっかり手綱を握るのが肝心なのです」

 

 2人に対する心構えを講釈しつつ、滑るように吸血鬼侍ちゃんへと近付いてくる賢者ちゃん。危険を察知して瞬時にバックステップをした分身ちゃん。それと対照的に、その場から動けなかった吸血鬼侍ちゃんを抱き上げて……。

 

「というわけで、こっちのちょっと抜けているほうに私の魅力を教え込むのです……あむ」

 

「ふぁ!?」

 

 小柄な体格にそぐわぬ立派な果実を押し付けながら、元圃人らしくちょっぴり尖った吸血鬼侍ちゃんの耳を舐る賢者ちゃん。突然の感触にビックリして、吸血鬼侍ちゃんの宙ぶらりんの手足がピンと伸びきっています。

 

「あら、てっきり攻めっけの強い分身ちゃんのほうが好みだと思ってたんだけど」

 

「ふーん、シルマリルはやっぱりおっきいほうがいいのかしら……」

 

 感心したように賢者ちゃんを見ている女魔法使いちゃんと、押し付けられて潰れているお山をジト目で眺めている妖精弓手ちゃん。助けを求めるように伸ばされた吸血鬼侍ちゃんの手を取り、自分の胸部に宛がっています。

 

「大丈夫よ。このエロガキ、大きいのも小さいのも楽しめる性癖だから。そうよね?」

 

「お、おっきいのもちいちゃいのも、みんなちがってみんないい……」

 

 素直に自分の好みを曝け出す吸血鬼侍ちゃん、まあ男らしいというかなんというか。その様子を見て胸を撫で下ろしている分身ちゃんですが、残念ながら魔の手は既に分身ちゃんを射程圏内に捉えているのでした。

 

 

 

「さてご主人様、約束を果たしてもらおうじゃないか。その護符があれば、中途半端なところで居なくなったりしないんだよね? とても辛いんだよ? 火を点けられて放置されるのは……」

 

「ま、まって……あっ……」

 

 約束……してましたねえ、磔の乱立していた川岸で。絡みつく様に森人狩人さんに抱き着かれ、戸惑いの声を上げる分身ちゃん。既にベッドの上には臨戦態勢の森人少女ちゃんと、胸元をはだけた令嬢剣士さんがスタンバっています。

 

「主さま、あつかましいお願いなのですが、(わたくし)、ご褒美を所望いたします」

 

「その、胸が張ってしまって苦しくて……。楽にするのを手伝って頂きたいんですの」

 

 自分は安全圏にいると思い込んでいた分身ちゃんの顔が引き攣っていくのが良くわかります。呪文維持に失敗した振りをして消える逃げ方も最早使えませんので、諦めて3人を満足させてあげるしかないですね(愉悦)

 

 それぞれがベッドへと運ばれ、周囲には濡れた瞳の美女美少女の艶姿。明日はギルドへ報告に行く約束があるので、ちゃんと朝起きられるようにしないといけません。互いに視線を交わし、覚悟を決めた表情でベッドに寝転ぶ吸血鬼侍ちゃんと分身ちゃん。その闘志を反映するように影の触手が蠢き、部屋中を覆い尽くしていきます。

 

「わかった。みんな、こっちにきて?」

 

「ぜんりょくで、めいっぱいしあわせにしてあげる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「だからおねがい。……みんな、()()()()()()()()」」

 

 

 

 

 

「「「「「「(あ、これまずいかも……)」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝ギルドに姿を見せた吸血鬼侍ちゃんと分身ちゃんに、他の面子はどうしたのだと代表してゴブスレさんが聞いたところ、「「みんなつかれがでてまだねてるよ?」」と返答するお肌ツヤッツヤな2人がいたそうな……。

 

 

 

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 

 




 花粉症からも逃げられないので失踪します。

 いつも誤字脱字のご連絡ありがとうございます。
お気に入り登録や感想、評価についても執筆速度が上がりますのでよろしくお願いいたします。

 お読みいただきありがとうございました。
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