ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 GW前に進められるところまで進ませたいので初投稿です。



セッションその10-5

 前回、吸血鬼侍ちゃんの過去がちょこっと明らかになったところから再開です。

 

 思わぬ強さのゴブリンに手傷を負った陽動組。『死の迷宮』の恐ろしさと吸血鬼侍ちゃんの波乱万丈な生い立ちを噛み締めながら薄暗い通路を進んでいます。

 

 先頭を歩くのは夜目が効き高い探索技能を持つ妖精弓手ちゃんと、暗視技能を付与する兜を被っているゴブスレさん。クソマンチ師匠に仕込まれているので、妖精弓手ちゃんには及びませんがこちらも探索が出来る前衛ですね。その2人に守られるように中心に立ち、女神官ちゃんが持つ頼りないランタンの灯りに照らされた通路を迷いなく進んでいくのは剣の乙女です。

 

「ああもう、ひっきりなしにゴブリンと遭遇(エンカウント)するせいで何処にいるのか分からなくなっちゃったじゃない!」

 

「先程5-9の転移床(ワープポータル)を通りましたので、今は転移先の15-4付近ですね」

 

「マジか。注意してたつもりだったんだが、魔力の反応なんざ感じなかったぜ……」

 

 地図とにらめっこしながら頭を抱えている妖精弓手ちゃんを見て、苦笑しながら指先で地図の現在地を指し示す剣の乙女。後ろで槍ニキが驚いていますが、どうやら制御室を乗っ取った連中が迷宮全域に探知を阻害するようにジャミングをかけているみたいですね。先ほど他の組を見ている2人からも≪転移(マロール)≫が使えなくなっていると連絡がありました。まぁ直接制御室や最奥に乗り込まれるのは嫌でしょうし、対策はしているということなのでしょう。速攻でのりこめ~出来たら楽だったんですけどね……っと、先導していた妖精弓手ちゃんが複数並んだ玄室の扉の見える場所で立ち止まり、後ろ手に『待て』のハンドサインを出しました。

 

「あの右側の扉の奥からあいつらの出す騒音が聞こえる。一緒に微かに悲鳴みたいなのも聞こえるけど……人のものじゃないみたい」

 

 悲鳴と聞いて一歩進み出たゴブスレさんを制しつつ、困惑した様子で扉を見ている妖精弓手ちゃん。言われてみれば他の扉付近は汚物や腐敗した何かが散乱していますが、妖精弓手ちゃん指差す扉だけはそういったものが見られません。

 

「……あ」

 

「……何か思い当たるものが?」

 

 おや、何かに気付いたのか剣の乙女が口元に手をあてています。貪欲に情報を求めるゴブスレさんの問いに頷きを返し、推測を話し始めました。

 

「先程の扉、あの中には迷宮の悍ましき本質、斃れた冒険者の末路がいる筈。()()を利用していたのならば、ゴブリンの強大化にも説明が付きます……」

 

 右側の部屋……強大化……あっ(察し)。そうか、迷宮が稼働しているのならアレもまた復活してもおかしくはないですね。でも、まさかアレをゴブリンにやらせるとか控えめに言って正気を疑いますよ? 知能はそのまま、力だけが増したゴブリンなんてそうそう御せるもんじゃありませんし。

 

「よくわからないけど、あの部屋の中にあるモノがゴブリンを強くしている原因なんでしょ? だったらさっさと取り戻さないと!」

 

「そうですね、早く解放してあげましょう……」

 

 剣の乙女の言い方にみんな違和感を覚えているみたいですが、先陣を切る様に歩き出す彼女の後を追うように例の扉の前に向かっています。扉に触れられる程の距離まで近付けば、妖精弓手ちゃん以外の耳にも耳障りな声と何かを殴る打撃音、そして人のものとは思えぬ呻き声が入って来ましたね。

 

「ゴブリンは30くらい、それ以外に大型の何かと、ゴブリンに殴られてる何かがいる……ほんとに囚われた人じゃないのよね?」

 

「ええ。この迷宮に囚われてはおりますが、最早人とは言えない存在となっているはずです」

 

 念押しするように問う妖精弓手ちゃんに、悲しげな顔で首を横に振る剣の乙女。剣を抜き放ったゴブスレさんが扉を蹴り開ける位置に立ち、女神官ちゃんに目配せしています。

 

「≪聖光(ホーリーライト)≫で奴らの目を奪う。……今日は煙を吹く奴はいないからな」

 

「……ふふっ、はい! わかりました!!」

 

 緊張を解すためかあるいは素なのか。吸血鬼侍ちゃんがいないことを付け加えるゴブスレさんの言い方に思わず笑っちゃってる女神官ちゃん。ひとしきり笑った後、キリっと表情を変え詠唱に入りました。

 

「俺らはデカブツを先に落とす。悪ィが暫く持たせられるか?」

 

「問題ない。……任せろ」

 

「応、任せた。……征くぞ!!

 

 左の拳を突き合わせた辺境三羽烏。ゴブスレさんが扉を蹴り開け、重戦士さんと槍ニキが玄室の中へと突入! 同時に発動した女神官ちゃんの≪聖光(ホーリーライト)≫が扉に注意を向けたゴブリンたちの視界を奪い、目を抑えてのたうっているところを妖精弓手ちゃんの矢とゴブスレさんの≪小鬼殺し(オルクボルグ)≫によって次々と斃されていきます。殆どが普通のゴブリンですが、やはりどの個体も体つきが逞しくなっていますね。

 

「チッ、小鬼英雄(チャンピオン)人喰鬼(オーガ)なら楽に仕留められると思ってたんけどよ」

 

「ああ、まさかコイツがゴブリンの面倒を見るようなヤツだとは思わなかったな……」

 

 通り過ぎ様に何匹かを排除しつつ重戦士さんと槍ニキが吶喊する先、ゴブリンたちを監督していたと思しき巨大な姿。右手に大剣を、左手に炎を纏った鞭を携え、頭部からは雄々しき双角を生やした異形が待ち構えていました。配下のゴブリンが奇襲によって数を減らしていく様を見て怒りの雄叫びを上げているのは、以前も見たことのある火炎魔神(ヴァララカール)です!

 

「Valararararararara!!」

 

「おっと、そんなへっぴり腰の鞭なんざ当たるかよ!」

 

 縦横無尽に振るわれる鞭を搔い潜り、足首や膝裏など大型生物を相手取る際の定番部位を攻め立てる槍ニキ。その表情には余裕すら感じさせます。分厚い外皮によってダメージの大半は防がれてしまっているようですが、ただでさえ赤い魔神の顔が苛立ちによって燃え上がるような色に変わっていきます。ならばこれならどうだと言わんばかりに、伸ばしていた鞭を左手に引き戻し右手の大剣を大上段に構え、斬り潰す勢いで振り下ろしますが……。

 

「ダメだな。力は強いが、技術が伴って無ぇ。流れに手を加えられりゃあ……そらよ!」

 

 おお、間合いに踏み込んだ重戦士さんが愛用のだんびらで大剣の斬撃に割り込み、綺麗に受け流しました! 砕かれた床材を足場に頭部へ肉薄した槍ニキが、跳躍の勢いそのまま魔神の右目を抉り抜きます。思わず大剣を手放し、傷口を抑える火炎魔神。残った片方の目には、ゴブリンたちの悲惨な死に様が映し出されています。

 

 

 

「8……9……これで10!」

 

「オルクボルグ! そろそろ下がって!!」

 

 ゴブリンが奇襲から立ち直るまでにおよそ三分の一を屠ったゴブスレさんが、後衛を守るために少しづつ入り口付近へ後退していきます。妖精弓手ちゃんの矢も合わせれば半数を()ったところで守勢に切り替え、視界が復活したゴブリンたちを牽制していますね。群れの半数を失いながらも、ゴブリンたちの目には恐怖ではなく馬鹿にされた怒りが満ちているあたり、()()を利用したレベリングは効果を発揮しているみたいですね。ゴブスレさんの後ろに控える女性3人を見る瞳には、綺麗なものを穢し尽くしてやろうという悪意が満ち溢れています。

 

「も、もう一度≪聖光(ホーリーライト)≫を……」

 

 再び聖句を唱えようとした女神官ちゃんを制し、剣の乙女が一歩前に踏み出しました。その豊満な肢体を食い入るように見つめるゴブリンたちに何の感情も浮かんでいない一瞥を向け、至高神への祈りを捧げ始めました。

 

「裁きの(つかさ)、天秤の君よ、罪ある者、咎なき者、遍くへ平等に水を」

 

 あーあー、女神官ちゃんの顔が引き攣っちゃってます。わかります、こんな使い方するなんて普通じゃありませんからね。でも、()()()()()()()()()()()()()()

 

「「「「「GO・・・・・・GOB・・・・・・」」」」」

 

 剣の乙女に跳びかかったゴブリンたちが次々に水へとその姿を変えるあまりにも非現実的な光景に、思わず硬直してしまう火炎魔神(ヴァララカール)。仕方がありません、たとえ思いついたとしても誰もやろうとはしなかった禁忌の使い方ですからねぇ。ですが、戦闘中にその隙は命取りです。

 

「Valara・・・・・・!?」

 

 心臓と眉間、二つの急所を貫かれ地響きを立てて崩れ落ちる巨体。やがて粒子へと変わり、その場には魔神の核と幾許かの金貨が落ちているばかり。損害無しで敵対勢力の排除は完了しました!

 

 

 

「ふむ、どうやら≪浄化(ピュアリファイ)≫されたゴブリンは魔力に還元されないようだ」

 

「ええ。恐らくそれを見越して神々は≪託宣(ハンドアウト)≫を(したた)められたのでしょう」

 

 お、戦闘が終わり各自損耗の確認をしている最中ですが、床面に残り続ける水たまりを見てゴブスレさんが我々(神々)の思惑に気付いてくれたみたいです! 外でのMAP兵器使用はあくまで戦域を限定するための舞台操作、本当の目的は『死の迷宮』が貯蔵している魔力を減少させることにありました。システムが外部と切り離されて運用されている以上盤面外(こちら)から直接干渉するのは難しかったので、急遽万知神さんが考案した方法でしたが、どうやら上手くいきそうですね!

 

「みなさん怪我もされていませんし、このまま上層から浄化していけば……あれ?」

 

「あ、ちょっと何処行くのよ!?」

 

 おや、何かに気付いて女神官ちゃんが駆けだしました。慌てて後を追う妖精弓手ちゃんと一緒に、部屋の奥に鎮座している彫像の傍へと近づいていきます。その手前には、戦闘中には居なかった筈の人影が倒れています。

 

「あの、大丈夫です……ひっ!?

 

「いきなりどうしたの……ヒィッ!?

 

 うつ伏せの状態で僅かな身じろぎと微かな呻き声を上げるだけのそれに近寄り、抱え起こそうとした女神官ちゃんの口から悲鳴が。突き飛ばすように距離を取った女神官ちゃんとの間に割り込むように立った妖精弓手ちゃんからも、同じように悲鳴が漏れました。

 

 プルプルと小刻みに震えながら、人形が繰り動かされるように立ち上がる人型。警戒を促しながら近寄る辺境三羽烏に向き直った瞬間、彼らの口からも困惑の声が流れ出てしまいました。

 

 

 

「A……AhAh……」

 

 重心が定まらないのか、前後左右にフラフラと揺れる立ち姿。時折痙攣するように身体が跳ねるのは絶え間ない苦痛に因るものでしょうか。頬がこけ、年齢はおろか性別すら判別できない程に歪んだ顔。落ち窪んだ眼窩には眼球は無く、ただ赤黒い涙が溢れています……。

 

「……これが、迷宮で斃れた冒険者の行き着く最終地点です。限界まで魔力を削り取られ、もはや個を保つことすら出来なくなった魂の集合体。責められ、嬲られ、痛めつけられることだけが存在意義な半実体の木偶人形。そして……」

 

「……何となく想像出来るけど、教えてちょうだい。シルマリルと正面から向かい合うために」

 

 そこで躊躇うように口を噤んでしまった剣の乙女。妖精弓手ちゃんが唇を噛み締めながら、それでも強い意志を秘めた眼差しで先を促しています。その眼力に後押しされるように、決定的な一言を剣の乙女が口にしました。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「―――っ!」

 

 聞きたくなかったと言わんばかりに耳を塞ぎ、しゃがみ込んでしまった女神官ちゃん。その横を通り、彫像の傍へと近付いていくのはゴブスレさんですね。努めて無感情な声を保っているのか、普段よりも抑揚無く聞こえる問いは剣の乙女に対してです。

 

「つまり、あの残滓は殺しても()()がある限り再生成され続けるのか?」

 

「はい、限界だった魂は完全に砕け散り、その欠片は殺害者に吸収され、糧となるそうです。ここにゴブリンを配置したのも、それを利用するためでしょう」

 

 うーんなるほど、吸血鬼侍ちゃんも強くなるために此処でお世話になってたんですねぇ。冒険者や徘徊する怪物(ワンダリングモンスター)から逃げながらのレベリングは時間がかかったことでしょう。残酷な物言いかもしれませんが、『死の迷宮』に挑戦した時点で自分の命はベットしたようなもんですからね。魂の欠片まで利用し尽くされても文句は言えないでしょう。

 

 この中で、今までに先生にお世話になったことのない冒険者だけが吸血鬼侍ちゃんに石を投げなさい。……今現役の冒険者からはいっぱい飛んできそうですね。

 

 

 

「この像を破壊してもソイツの生成は止まらねえのか?」

 

「像自体が迷宮によって再生成されてしまうので、破壊は意味を成しません。制御室を奪還するまで封鎖しておくのが最善でしょう」

 

 彫像を槍で指し示しながら壊すことを提案する槍ニキに否定の言葉を投げかける剣の乙女。流石にそのあたりはしっかり対策されているんですね。でないとあっという間に破壊されちゃうでしょうし。

 

「それにだ。封鎖するにしても、先ずはアイツらをなんとかしねえと」

 

 重戦士さんがだんびらを向けた先、部屋の入り口からは新たなゴブリンの声が聞こえて来ています。恐怖による統制か、あるいは力が増す事を知って利用するつもりなのか。どうやら先程殲滅した群れはほんの一部だったようですね。交代でやって来たと思われるゴブリンが近付いて来ています。

 

「此処で待っていれば、ゴブリン共は勝手に集まってくる。後は消耗を抑えつつ、適宜≪浄化≫すればいい。それが他の組への援護になる」

 

 懐から油壷を取り出しながら、何でもないように言い放つゴブスレさん。たしかにいつもの巣穴殲滅と比べれば有利な地形で迎え撃てる分楽かもしれませんね! ()る気に満ちたゴブスレさんを見て、やれやれと言った様子で得物を構え直す重戦士さんと槍ニキ。泣きじゃくっていた女神官ちゃんも、涙を拭って立ち上がり、獰猛な笑みを扉へ向けています。

 

「これが他の皆さんの助けになるというのなら……。私、頑張ります!」

 

「近付いてくるゴブリンは私たちが足止めするから、おっぱいと一緒にバンバン≪浄化≫しちゃいなさい!」

 

「お、おっぱい……」

 

 おお、どうやら女神官ちゃんも()る気になってくれたみたいです! 構えた杖の先端を入り口に向け、汚物は浄化せんとする強い意志を感じさせる佇まいです。妖精弓手ちゃんを挟んで反対側にいる剣の乙女が肩を落としていますが、おっぱいで通じるから仕方ないですね。あ、重戦士さんと槍ニキ、そんなにチラ見してたら後で奥様達に報告しちゃいますよ? それは吸血鬼侍ちゃんのものです。

 

「まずは火で足止めをして、纏まった瞬間に一網打尽にする。あとは手札を入れ替えながら繰り返すだけだ。……いくぞ」

 

「「「「「GOBGOBGOB!!」」」」」 

 

 入り口から雪崩れ込んできたゴブリンに油壷が投擲され、先頭が怯んだところに妖精弓手ちゃんの矢が飛んで行ったあたりでそろそろ他の組の様子を見て見ましょうか! 次は万知神さん担当の制御室奪還組、分身ちゃんチームです!! では万知神さん、お願いしまーす!

 

 

 

 

 

 

 はい、モンスター種族実況プレイ制御室奪還組の部、実況と解説は万知神でお送りさせて頂きます。

 

 まず、最初の昇降機(エレベーター)の使用は儀式阻止組と同様なのですが、彼らのほうが深くまで潜りますので先に行ってもらうことに。昇降機(エレベーター)までの道のりにある光を通さぬ空間(ダークゾーン)を抜けるのに時間がかかるかと思っていましたが、吸血鬼侍ちゃん、分身ちゃんが普通に見通せていることが発覚。全員をロープで結び、楽しく電車ごっこしながら難なく通過してしまいました。どうやら『死の迷宮』で生まれた2人は各階層の光を通さぬ空間(ダークゾーン)を無視できるみたいです。これは思わぬ幸運でした。

 

 一階まで戻ってきた昇降機(エレベーター)に乗り込み、四階まで一気に下ってきた一行。進行方向逆側の通路の先、扉の奥から聞こえる断末魔の悲鳴はおそらくもうひとつの昇降機(エレベーター)を守護していたルームガードのものでしょう。ブルーリボンを身に着けた吸血鬼侍ちゃんが嬉々として殴り掛かっている姿が目に浮かびます。合掌。

 

「一階はゴブリンだらけだったけど、この階には居ないみたいだね」

 

「そうですね上姉様。通路や玄室の内部に()()()()がしませんので、恐らく昇降機(エレベーター)を利用しての移動が許されていないのでしょう」

 

 お互いに頷き合っている森人義姉妹(エロフ2人)。彼女たちの言う通り、一階昇降機(エレベーター)までの道のりではうんざりするくらいのゴブリンが襲い掛かって来ていました。儀式阻止組と一緒だったので勇者ちゃんが纏めて通常攻撃(全体化済)で滅してくれましたけど、勇者ちゃん一行が一緒じゃなかったら面倒だったかもしれません。

 

「ゴブリンの代わりに人喰鬼(オーガ)やら巨大蜘蛛(ヒュージスパイダー)がわらわら出て来てはおりますけども……」

 

 困ったような令嬢剣士さんの見つめる先、通路の先のほうからは、何かが壁面に叩きつけられる音と断末魔の悲鳴、ついでに蟹の甲羅をパキっと割っているような音が断続的に響いて来ています。やがて音が止み、大小2つの人影が戻ってきました。手には細長いものを幾つも抱えているようですけど、アレは何でしょうか?

 

「いやー甘露甘露! まさか火を通すことで身が締まり、甘みも増すとは思いもよらぬ幸運ですな!!」

 

「うん、そのままたべるよりもおいしい!」

 

「おう、まさかそりゃ今仕留めたヤツじゃあるめえな……?」

 

 黒焦げになった殻を歯で粉砕し、湯気を上げる中身を頬張りホクホクとした表情を見せる2人。鉱人道士さんと令嬢剣士さんの顔が引き攣っているところから察するに、退治したばかりな採れたて巨大蜘蛛(ヒュージスパイダー)の脚部みたいです。辺り一帯にナッツにも似た匂いが広がり、森人2人もゴクリと唾を飲み込んでいます。

 

 というか、そのままって昔の話ですよね? 今向こうで齧ってたわけじゃないですよね???

 

 

 

「けぷ。うん、ごちそうさまでした」

 

 だいたい一匹ぶん、8本ほど食べてご満悦の分身ちゃん。流石に胴体部は令嬢剣士さんによって止められてしまったみたいです。迷宮内で食べているものを考えると怖いものがありますが、蜥蜴人とアンデッドならきっと大丈夫でしょう。分身ちゃんなら最悪腹掻っ捌いて出しちゃえば良いわけですし。

 

「うんうん、ご機嫌なようで何よりだよご主人様。それで、この先に迷宮の制御室があるんだったかな?」

 

「うん、まりょくじゅんかんシステムやしょうこうきのかんりもそこでしてるはず」

 

 口元の食べかすを森人少女ちゃんに拭われながら分身ちゃんが答えているように、四階の制御室に赤い手の協力者……売国奴と黒狐がいる可能性は高いです。もし最下層に纏まっていたら? 勇者ちゃんが薙ぎ払って終了なのでむしろ楽ですね。……っと、先程から何か考え込んでいた令嬢剣士さんがおずおずと手を上げていますね。

 

「……あの、考えていたのですけど。やはりおかしくありません? 儀式の邪魔をされたくないのでしたら昇降機(エレベーター)を稼働させる必要なありませんし、もしそうされていたら私たちも此処まで容易には来れなかった筈。何か別の思惑を感じませんか?」

 

「フム、あえて懐に飛び込ませる理由があると?」

 

 戦の作法に関してはこの中でいちばん詳しいであろう蜥蜴僧侶さんも、言われてみればという感じに首を捻っています。言われてみれば、≪転移(マロール)≫を使えなくするだけで昇降機(エレベーター)は乗れるというのもおかしな話です。……まさか引き込まれてる?

 

「ここで悩んでてもしょうがないじゃろ。途中で消耗せんで来られただけ儲けと思ってたほうがええ」

 

「そうだね。はやくコントロールをとりもどして、ほかのくみをえんごしなきゃね!」

 

 鉱人道士さんの言葉に頷き、足早に進む一行。進入禁止の標識を無視し、響き渡る警報(アラーム)も意に介さず突き進んでいきます。さて、何も無ければ配置されているガーディアンは固定なんですけど、介入によってどう変化しているのか。注意しておいたほうが良さそうですね……。

 

 

 

「おっすおじゃましまーす」

 

「あの、その言葉使い、何故かイラっとしますので止めていただけませんこと?」

 

 分身ちゃんが勢いよく扉をキックし、突入した制御室。広々とした部屋の中に2人の男が待ち構えていました。どちらもがっしりとした体格の壮年で、浅黒い禿頭にふさふさの狐耳が生えているほうが、混沌の勢力との橋渡し役である商人、黒狐でしょう。自信に満ちた、或いはふてぶてしい笑みを浮かべて一行を品定めしているように見えます。

 

 となると、隣に悠然と立っている貴族風の男。人好きのするような、見方を変えれば薄っぺらい笑みを浮かべているのが旧王派閥の貴族、売国奴でしょうか。同じように一行を……ん? いえ違いますね。特定の誰かをじっと見つめているみたいです。視線の先にいる人物に、大仰な身振りを交えながら話しかけ始めました。

 

 

 

 

 

 

「10年以上の年月を経て、やっとこうして君と逢うことが出来た。これも全ては真の知恵者たる()()()の導きというものだろう。あの日、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()姿()! ああ、やはり君は私の理想とする女性だよ、永遠に幼き吸血姫!!」

 

 

 

 

 

 

「……え?」

 

「「「「「……え?」」」」」

 

 

 

……え?

 

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あ、もしもし覚知神(クソ野郎)? なんかウチの娘に色目使うオッサンが覚知神の導きとか言い出してるんだけど、何か弁明はあるかい?

 

 

 





 間を空けずに更新したいので失踪します。

 いつも誤字脱字のご連絡ありがとうございます。新たにお読みくださった方から初めのほうに残っていた誤字脱字を教えていただき、まだ残っていたのかと思う次第であります。

 お気に入り登録や感想、評価についても執筆速度が上がるかもしれませんのでよろしくお願いいたします。更新の燃料になります故……。

 お読みいただきありがとうございました。
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