ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 湯豆腐が冷ややっこにクラスチェンジしたので初投稿です。




セッションその11-4

 お、ナニ読んでるんですかGM神さん? 次の物語(セッション)のネタ探しですか?

 

 ペロッ! これは……動物擬人化モノ? ああ、ちょっと前に流行ってましたし、最近は娘化して競技場で走ったりしているジャンルですよね! (N子さん)的には猫党忍伝とか名探偵犬と紅の豚野郎とかがフェイバリットなんですが……。

 

 え、豚は違うだろって? こまけぇことはいいんですよ! あぁでも、兎が主人公っていうのは結構珍しい気がしますねぇ。

 

 タイトルはなになに……猫の糞1号? なんかミリタリーモノっぽいですけど……。あのGM神さん、なんでこの兎たち上着はちゃんと着てるのに、下は誰も履いてないんですか?

 

 ―セッション前にあったGMとルーニーの会話より抜粋―

 


 

 前回、食べ損ねた吸血鬼のいることが判明したところから再開です。

 

 普段のぽわぽわした雰囲気をかなぐり捨て、ハイライトの無い瞳で白兎猟兵ちゃんを見上げる吸血鬼侍ちゃん。あ、吸血鬼君主ちゃんが三白眼なのに比べて、瞳の大きさは普通ですがデフォでハイライトさんが不在なのが吸血鬼侍ちゃんです。まぁそれは置いておいて、ちょっと身体から殺気が漏れてるんで落ち着きましょうか。すわ何事かと蜥蜴僧侶さんと新米戦士くんが馬車の中に飛び込んで来ましたし、白兎猟兵ちゃんが殺気に中てられてお耳の毛がぶわっと逆立っちゃってますからね?

 

 

 

「フム、つまり侍殿が同族狩りをしている期間、ずっと休眠していたために生き延びたということですかな、その氷の魔女とやらは」

 

 結局全員集まってしまった馬車の中。剣の乙女のお山に包まれてようやく落ち着きを取り戻した吸血鬼侍ちゃんを見ながら、白兎猟兵ちゃんから聞いた話から予想される氷の魔女の幸運さを蜥蜴僧侶さんが語っています。どうやら遥か北方で手勢を率いてブイブイ言わせていたらしいのですが、百年ほど前に高貴なる獅子にフルボッコにされこの地まで逃げ延びて来たんだとか。傷を癒すために眠りについていたところを何者かによって目覚めさせられ、この長い冬に乗じて暴れまわっているみたいですね。

 

「それで、ぼくらにも自分に従うよう言ってきたんですけど、高慢な態度が気に入らなかったお父さんと、その親友たちが一斉にこう言ったんです。"俺のケツを舐めろ(消え失せろ)!!"

 

 そしたらもう怒っちゃって怒っちゃって、と笑う白兎猟兵ちゃん。その返しを聞いてベテラン組は爆笑していますが、新米カップルはドン引きしちゃってますよ……。

 

「幸いぼくたちが住んでいる古い防衛陣地(おしろ)跡は護るのに適した地形でして。狩りに使っている石弓(クロスボウ)とみんなで掘った隧道(トンネル)を駆使して氷の魔女の下僕を迎え撃っていたんですが、だんだん食べ物が少なくなっちゃって……」

 

「それで、単身応援を呼ぶために包囲を突破したと。まったく、無茶するじゃないの」

 

 ジト目の見習い聖女ちゃんに呆れられてもあははーと笑っている白兎猟兵ちゃん。これは筋金入りの兎人(ササカ)ですねぇ。臆病だけど勇敢、非力だけど強い意志を持つ彼ららしい考え方です。食料もだけど()()もそろそろ尽きるかもという彼女の言葉通り、試練(クエスト)を達成するには急ぐ必要があるかもしれません。馬車中の視線が、頭目(リーダー)である見習い聖女ちゃんへと集まっています。暫く俯いて考え込んでいた彼女が、意を決したように顔を上げ、一行へと自分の考えを話し始めました……。

 

 

 

「危険かもしれないけど、一党(パーティ)を分割しようと思う。空を飛べる2人が先行、案内役として彼女と……それから私を運んで頂戴。アンタは先輩と一緒に馬車を護りながら後から追いかけて来て」

 

 後詰にまわされて不満そうな新米戦士くんですが、アンタ一発カマしたらすぐ()()切れでしょと言い返され、その場に崩れ落ちてしまいました。何故かへへっと鼻の下を指で擦っている吸血鬼侍ちゃん、そういう意味じゃないですからね? 男泣きしている新米戦士くんを励ましていた剣の乙女が、微笑みを浮かべたまま見習い聖女ちゃんに疑問を投げかけました。

 

「速攻をかけるという点では良いと思いますが、それでしたら貴女ではなく私が先行するほうが良いとは思いませんか?」

 

 その言葉を聞いて、同じように微笑みを浮かべて見習い聖女ちゃんを見るのは吸血鬼侍ちゃんと蜥蜴僧侶さん。ほんとこのベテランたちは意地悪ですねぇ。みんなわかってて言ってますよねと溜息を吐きながら、見習い聖女ちゃんが返答しました。

 

「そりゃ先輩に任せればあっという間に解決すると思う。けど、この試練(クエスト)()()()に与えられたモノ。全部先輩たちに任せて『いやぁ氷の魔女は強敵でしたね』なんて、そんなの試練(クエスト)を乗り越えたなんて言えないじゃない!」

 

「……ごうか~く!!」

 

 文句ある!?とばかりに自分よりも遥かに高い等級の冒険者を睥睨する見習い聖女ちゃん。その足がガクガク震えているのにみんな気付いているでしょうが、恐れを知らないことと知りながらも抗うことは違いますからね。見事な啖呵を切った彼女に吸血鬼侍ちゃんが飛び込んでいきました。

 

「ウム、功名心や焦りの色が見えたならば止めようとも思っておりましたが、どうやら杞憂であった様子」

 

「ええ、今の彼女でしたら問題ありませんわ。それに……あの子もいますから」

 

 えらいぞ~!と言いながら見習い聖女ちゃんの頭を抱えて撫でまくっている吸血鬼侍ちゃんを見て笑い合うベテラン2人。新米戦士くんに吸血鬼侍ちゃんを引っぺがすよう頼んでますが、先程のダメージが思いのほか深かったようで彼の再起動には時間がかかるみたいですね。ぼくもいきますよ~!という気の抜けた声とともに白兎猟兵ちゃんも加わり、馬車の中はもうしっちゃかめっちゃか。明日、戦場へ行くとは思えない和やかな空気のまま、夜は更けていくのでした……。

 

 

 

 

 

 

「はぐ、はぐ……ごくん。あ、見えてきましたよ旦那さま! あすこがぼくたちの暮らしている山です!」

 

 払暁とともに出発した先行組、太陽が顔を出し切った頃に目的地が見えてきました。非常食として持たされていた焼菓子(レンバス)を吸血鬼侍ちゃんからもらって頬張っていた白兎猟兵ちゃんの指差す先には、小高い丘に築かれた砦跡と、山肌に空いた無数の隧道(トンネル)入り口。そして何重にも掘られた()()の織りなす線画が上空から確認できます。

 

「ほほう、隧道(トンネル)に加えてあの地面を掘って作られた狭い通路。成程、巨体から見れば随分厄介な代物ですな」

 

 戦に関しての造詣が深い蜥蜴僧侶さんが唸るほどの陣地構築、遺構を利用したにしても実に見事なものです。裾野から攻め上がろうとしている雪男(サスカッチ)に対して、塹壕からひょこっと顔を出しては石弓(クロスボウ)で一撃を与えている兎人(ササカ)の姿があちらこちらに見えてますね。

 

「……なんか、メチャクチャ軍隊っぽい動きしているように見えるのは、あたしの目の錯覚かしら?」

 

 蜥蜴僧侶さんの背からその戦いを見ている見習い聖女ちゃんの呟きを聞いて、吸血鬼侍ちゃんにお姫様抱っこされている白兎猟兵ちゃんの耳がピコピコ動いてます。あ、ダメですよ吸血鬼侍ちゃん、これから戦闘が始まるのに耳をしゃぶろうとしたら! なんとか誘惑に耐えた吸血鬼侍ちゃんには気付かず、白兎猟兵ちゃんがその疑問に答えてくれました。

 

「昔はみんなバラバラだったみたいなんですけど、お父さんと2人の親友が、みんなに戦い方や地面の効果的な掘り方を教えてくれたんだそうです」

 

「おとうさんたちはべつのところからやってきたの?」

 

 未だに長耳を目で追っている吸血鬼侍ちゃんの問い掛け。あまり行動範囲の広くない兎人にしては珍しい出自ですが、白兎猟兵ちゃんの返答は吸血鬼侍ちゃんの予想を超える驚きのものでした。

 

 

 

「お母さんから聞いた話だと、ある日突然砦の中に3人が現れたんだそうです。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「そ~なんだ~」

 

 

 

 

 

……んん???

 

 

 

 

 

 

「あ、見てください。あれがお父さんです。親友のお2人も一緒ですよ」

 

 白兎猟兵ちゃんの示す先、塹壕の中を歩く3人の兎人、彼女とは違って()()()()()()()そのものな姿ですね。お揃いの真っ白な上着(雪原迷彩服)と同じく白いニット帽。左右の2人は細長い金属の棒のようなものを持ち、真ん中の1人は一際大きな金属の筒のようなものを抱えています。

 ……あの、GM? 彼らの下半身がマッパに見えるんですが……。え、大至急病院に行け? いやでもあれ絶対履いてな……アッハイ、彼らはしっかり服を着ています。ちぃ覚えた。 

 

 真ん中の灰色毛に垂れ耳(ロップイヤー)な兎人がハンドサインを出すと、左右の2人が塹壕から顔を出し、兎叩きに躍起になっている氷巨人(フロストジャイアント)へ手に持つ棒を向けました。白毛に短めの耳の兎人が狙いを定め、棒の下部にある()()()を引いた瞬間……。

 

TOTOTOTOTOTOTONK!!

 

「GIGAAAAAAAS!?」

 

 ……棒から放たれた無数の()()が強靭な氷巨人(フロストジャイアント)の皮膚を突き破り、その右足に少なくないダメージを与えました! 突然の痛みに悲鳴を上げながら射手に向き直った氷巨人(フロストジャイアント)の左足に、黒毛に長耳の兎人が追撃を浴びせ始めました。

 

「へへ、命中命中!」

 

「コラッ! もう補給は出来ないんだから無駄弾は使うなって!!」

 

 得意げに鼻を鳴らす黒毛の兎人を垂れ耳の兎人が窘めています。どうやら残弾が心もとないというのは本当みたいですね。……というか、アレどう見ても自動小銃(M16)……。それに、垂れ耳の兎人が持っているのって……。

 

「GIGAGAGAGA!!」

 

 あ! 両足から流血したまま氷巨人(フロストジャイアント)が3人へと近付き始めました! 怒り狂った瞳は3人を睨み、その巨大な拳で叩き潰さんと迫っています。腰を抜かした黒兎さんを庇うように前に出た垂れ耳兎さんが、抱えていた大筒(スティンガー)を巨体へと向け……!

 

 

 

BUH-FOOOOOOOM!!

 

 

 

毒針(スティンガー)の一撃は過たず命中し、爆炎の中から2本の足だけが現れ、音を立てて倒れ込みました。

 

「すっごーい!」

 

「ほわ~、いつも大切そうに手入れしてるのは見てましたけど、まさかあんな威力があったなんて……あ、お父さん危ない!?」

 

「え? なんでオマエ空飛んで……ウワァー!?

 

 あ、不味い! 銃撃音を聞きつけてやって来た別の氷巨人(フロストジャイアント)が爆炎を突っ切ってきて白兎さんを掴み上げてます!! すぐに黒兎さんが腕に狙いを定めて引き金を引きましたが……。

 

「ウッソ、弾切れ!?」

 

「だから無駄弾は撃つなって言ったじゃないか!!」

 

 慌てる黒兎さんを叱りつけながら、垂れ耳兎さんが副兵装(サイドアーム)短筒(ガバメント)で射撃をしていますけど……やはり威力不足らしく氷巨人(フロストジャイアント)の手は緩む様子はありません。このままだと兎の()()()が出来ちゃいます! お、上空から機を窺っていた吸血鬼侍ちゃんと蜥蜴僧侶さんがアイコンタクトを取っています。どうやら突っ込む気みたいですね!

 

「侍殿!!」

 

「ん! うさぎさんをおねがい!!」

 

「え、ちょっ、まさか!?」

 

 抱きかかえていた白兎猟兵ちゃんを蜥蜴僧侶さんの背に向かって放り投げ、急降下する吸血鬼侍ちゃん。両腕が翼に変じている蜥蜴僧侶さんが受け止められるはずもなく、その役目は強制的に見習い聖女ちゃんのものに。背に増えた荷重に従うように蜥蜴僧侶さんも降下体勢に入っています。

 

「このっ、は~な~せ~よ~!」

 

 捕まっている白毛の兎人……白兎猟兵ちゃんのお父さんも銃床で懸命に巨人の腕を叩いていますが、やはり兎人の腕力ではダメージには程遠いようです。もはや瞬刻の余裕も無いと判断した吸血鬼侍ちゃん、腰部から影の触手を射出して、氷巨人(フロストジャイアント)の肩口へと打ち込みました!

 

「GIGA!?」

 

 肩口を抉る鋭い痛みに思わず怯んでしまった巨人。僅かに緩んだ手から白兎猟兵ちゃんのお父さんがこぼれ落ちて……ふぅ、親友の2人が下でキャッチしてくれました! 獲物を逃した怒りに燃える瞳で肩口から伸びる触手を追った先には、ワイヤーを巻き取るように触手を縮めながら突っ込んでくる小さな人影。妖刀(ムラマサ)魔王剣(サタンサーベル)を抜き放ち、独楽のように高速回転する吸血鬼侍ちゃんが繰り出すのは、まごうことなき巨人殺しの一撃です!

 

 

 

「ひっさつ! へ~ちょ~あた~っく……!? おあ~……」

 

「GI……GA……」

 

 原典は延髄を削ぎ落す一撃ですが、ちょっと回転が強すぎたのか巨人の頸部は爆発四散。勢いを殺せなかった吸血鬼侍ちゃんは頭部と一緒に雪原にダイブしちゃいました……。立て続けに2体も氷巨人(フロストジャイアント)がやられたことで雪男(サスカッチ)たちの戦意は駄々下がり。そんな彼らに追い打ちをかけるように、着陸した蜥蜴僧侶さんの背から飛び降りた見習い聖女ちゃんの宣言が、辺り一面に響き渡ります。

 

「次にこうなりたい奴は前に出て来なさい! 首から下を立派な毛皮のコートに変えてやるわ!!」

 

「「「「「ヒエッ……」」」」」

 

 巨人の頭部を踏みつけながら放たれた見習い聖女ちゃんの啖呵にビビったのか、雪男(サスカッチ)の群れは散り散りになって逃げていきました。ふぅ、なんとか防衛には成功したみたいですね!

 

 

 

「アイテテ……危うく肉団子になるところだったよ……」

 

 親友2人に支えられた白兎猟兵ちゃんのお父さんが、彼女とともに見習い聖女ちゃんのもとへとやって来ました。さかさまに雪原に突き刺さっていた吸血鬼侍ちゃんも、引っこ抜いてくれた蜥蜴僧侶さんと一緒に傍で待っていますね。脱いだ防寒具の上にお父さんを寝かせ、怪我の具合を確かめていた白兎猟兵ちゃんの表情が安堵のそれに変わりました。

 

「あちこち青痣になってましたけど、骨や内臓には異常ないみたいです」

 

 ありがとうございます旦那さま、と深々と頭を下げる白兎猟兵ちゃんをお父さんが驚いた表情で見ていますね。まぁたった一日で娘にそんな人が出来たら驚くのも無理はないでしょう。どういうことだってばよと娘に詰め寄ろうとするお父さんを抑えながら、隊長格と思われる垂れ耳兎さんが一行に提案してきました。

 

「彼女になにがあったのか聞きたいし、助けてもらったお礼もしたいから、とりあえずボクたちの家に行かないかい?」

 

「ええと……もうすぐ連れが到着するから、そっちと合流してからでも良い? 馬車の中に食料も積んできたから」

 

 そいつぁナンバーワンだ! と飛び跳ねながら全身で喜びを表現する黒兎さんと垂れ耳兎さん。やっぱりこの3人、別の世界線から迷い込んだんじゃ……。

 

 

 

 

 

 

「ふむふむ、つまりキミたちは氷の魔女をやっつけに来てくれたってことで良いのかな?」

 

「ええ。至高神さまからの託宣(ハンドアウト)により、この集落の危機を救うことが彼女に与えられた試練ですので」

 

 白兎猟兵ちゃんのお父さんの問いに対し、彼に癒しの奇跡を使いながら剣の乙女が一行の来た目的を伝えています。山肌に掘られた穴を潜り、一行が案内されたのは巣穴の中心と思われる広々とした空間。具だくさんのポトフが入った大鍋を中心に、たくさんの兎人がひしめき合っています。

 

「ほら、そんなに慌てなくたってまだまだあるから! あ、そこ! 隣の碗から人参をくすねるな!!」

 

 馬車に積んであった食料を使って手早く作られたそれをお椀いっぱいによそい、ハフハフと頬張る兎人たちを疲労した腕をさすりながら見習い聖女ちゃんが監督しています。新米戦士くんや吸血鬼侍ちゃんが手伝ったとはいえ、彼らが持ち寄ったいくつもの大鍋で同時に調理するのは大変だったと思います。 カゴいっぱいのジャガイモの皮を剥いた新米戦士くんは「俺もう二度と剣を握れないかも……」などとぼやきながらポトフを貪っていますね。

 

 そんな2人を懐かしいものを見る目で眺めていた垂れ耳兎さんが「()()を見るのは何十年ぶりかなぁ……」と呟いてます。たしかに、垂れ耳兎さんの異世界転移はこれで2回……おっと、これは某合衆国の最重要機密でしたね! あぶないあぶない……。

 

 

 

「この人がぼくを助けてくれた旦那さまだよ!」

 

「「「「「「「お姉ちゃんを助けてくれてありがとー!!」」」」」」」

 

「ほわぁ~……ふわふわともこもこがおしよせてくる……!」

 

 あ、吸血鬼侍ちゃんが白兎猟兵ちゃんと7人の弟妹ちゃんたちに一斉にむぎゅ~っとされて尊死しそうになってます! 3人の妹ちゃんたちは白兎猟兵ちゃんと同じ耳と尻尾だけ、4人の弟くんたちはそれに加えて膝下が兎になっているみたいですね。こども特有の体温に加え、あたたかいポトフをおなかいっぱいに食べたぽかぽか攻撃によって、吸血鬼侍ちゃんの幸福ゲージが振り切れんばかりに上昇しています。

 

 もこもこに埋もれた吸血鬼侍ちゃんの隣では、蜥蜴僧侶さんも子供たちの抱き着き攻撃の餌食になってますね。外界との交流が絶えて久しい集落では、蜥蜴人は物語の存在でしかなかったのでしょう。ペタペタと鱗を触られてもにこやかに笑う蜥蜴僧侶さん、やはり辺境ギルド一の聖人なのでは……?

 

 

 

「ハッタリと勢いで雪男(サスカッチ)は追い返せたけど、次は氷の魔女が直接乗り込んで来る……よね?」

 

「まぁ間違いないでしょうなぁ。舐められたまま放置しては、部下たちの統率も維持出来ぬかと」

 

 おなかいっぱいのこどもたちをそれぞれの家に帰した後、広間に残った者たちで今後についての話し合いが始まりました。見習い聖女ちゃんが憂鬱そうに口火を切り、蜥蜴僧侶さんが相槌を打っています。

 

「手持ちの弾薬……おっと、()()()()()は殆ど使い切っちゃったから、これからは普通の石弓しか撃てないんだ、ゴメン」

 

「となると、面制圧力に不安が残りますわね……」

 

 黒兎さんが申し訳なさそうに告げる内容は今後の戦況が不利になる事を示しています。剣の乙女の言う通り、雪男(サスカッチ)なら兎も角氷巨人(フロストジャイアント)が相手では、石弓は威力不足と言わざるを得ません。また、構造上連射が効かないのも辛いところですね。

 

「真夜中に攻めて来られると、夜目の効かない俺たちは不利だよなぁ……」

 

「あ、その心配はないと思いますよ?」

 

 新米戦士くんのぼやきに反応して、吸血鬼侍ちゃんを膝枕していた白兎猟兵ちゃんが会話に入って来ました。どうやら夜間の戦闘の場合夜目の効く兎人が有利なため、もっぱら日の出ているうちに攻めて来るんだとか。

 

「あれ? そうすると氷の魔女って、日光はどうやって防いでいるの?」

 

 見習い聖女ちゃんの疑問ももっともですね。近くに日光を気にせず活動している2人が居るので忘れがちですが、普通の吸血鬼は日光を浴びたら滅んじゃいます。何らかの手段で日光を遮っているのか、あるいは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。一行の視線が垂れ耳兎さんに集まります。

 

「アイツが来るときはいっつも吹雪と一緒だったから、雲と雪で日光を防いでいるんじゃないかなぁ……」

 

 自信なさげに首を捻っていますが、相手がデイライトウォーカーでないならやり様はいくらでもあるでしょう! あとは大将首を獲った際に残党が残ると面倒なんですが……。お、吸血鬼侍ちゃんが膝枕から上体を起こし、虚空を見上げながらしきりに頷いてます。もしかして君主ちゃんと連絡を取っているのかも……。脳内通信が終わったのか、くるりと体勢を入れ替えて白兎猟兵ちゃんの背後に回り、頬擦りをしながらみんなに会話の内容を話し始めました。

 

「あのね、むこうのようじはおわったから、あすのひるにはこっちにこられるって! しかも、サプライズゲストもいっしょ!!」

 

 ほほう! 見習い聖女ちゃん組を見ている間にあちらでも動きがあったみたいですね。どうやら氷の魔女が攻めてくるのは明日になりそうですし、その間に冬将軍討伐組へ再度視点を向けて見ましょうか。万知神さん、録音機材(アカシックレコーダー)の操作をお願いします!

 

 

 


 

 

 

 では改めて吸血鬼君主ちゃん組に移りましょう。現在時刻は午後9時くらい、おゆはんを済ませた一行は就寝準備の真っ最中。この少人数だと男女別はかえって危険な可能性があるため、みんな集まって大部屋で寝るつもりみたいです。

 

 栄纏神(えいてんしん)の神官さんは相棒の翼を布団代わりに、妖精弓手ちゃんと令嬢剣士さんは薄い掛毛布と吸血鬼君主ちゃん(核融合湯たんぽ)を併用して温まる気満々ですねぇ。

 

「ほらシルマリル、愛する恋人2人が寒くならないようにあっためてちょうだい?」

 

「……なんだか日向ぼっこしていた猫を抱き締めてるのに似てますわね」

 

 左右からギュッとされてまんざらでもなさそうな吸血鬼君主ちゃん、微妙な調整を行って最も就寝時に適した温度を探しているようです。インナー姿の令嬢剣士さんは良いとして、栄纏神(えいてんしん)の神官さんがいるのに全部脱ぐのは如何なものでしょうか妖精弓手ちゃん。まぁ抱き枕と化した吸血鬼君主ちゃんもマッパなんですけどね!

 

「あ~……今の温度がちょうどいかも……って、どうしたのシルマリル?」

 

 吸血鬼君主ちゃんの平坦な胸に長耳をくっつけていた妖精弓手ちゃんが見上げる先、君主ちゃんが何かを探るように目を閉じています。やがて目を開けた君主ちゃんが、ぽつりと呟きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ど~ていのにおいがする……しかもふたり……」

 

「「は?」」

 

 

 

 意味の通じぬ呟きに頭上に?を浮かべる2人。しかし次の瞬間、妖精弓手ちゃんの鋭敏な聴覚に複数の足音が聞こえてきました。

 

「人型の足音が近付いて来る。数は2、ゴブリンじゃないわね。歩調からすると……多分男だと思う」

 

 その言葉を聞いて、それぞれの相棒に手を伸ばす一行。掛毛布の中で弓と双剣が握られています。部屋の反対側を見れば、片目だけうっすらと開けた栄纏神(えいてんしん)の神官さんが、相棒の翼の下で双槍を手にしているのが見えますね。

 

 やがて全員の耳に入るドタドタという足音。同時に罵り合うような声も聞こえてきました。どうやら寒さに対する悪態と準備不足を相手に擦り付ける醜い争いのようですが……。

 

 

 

「だから精霊任せにしないでちゃんと防寒対策をしろって言っただろ! おかげで俺まで凍死しそうだよ!!」

 

「あぁ!? テメェが道を間違えたのがそもそもの原因じゃねぇかこのシスコン野郎! いい加減姉離れしやがれ!!」

 

「お前に言われる筋合いは無いねこの白粉(おしろい)童貞! メンヘラに付き纏われてそのまま寂しく生きて死ね!!」

 

「お前だって童貞だろうが! それにメンヘラはお前の相棒!! どんだけ拗らせればそんな悍ましい魔力を出すようになるんだっつーの!?」

 

 

 

「「「……」」」

 

「知り合いかね?」

 

 だんだん味わい深くなる表情を見て問いかけてくる栄纏神(えいてんしん)の神官さんに対し、無言のまま動き始める3人。わざと上半身が見えるように毛布をずり下げ、扉に背中側を向けるように身を捩る左右の2人。真ん中の吸血鬼君主ちゃんに抱き着き、顔だけを迫り来る2人のほうに向けた姿勢で待つこと暫し。蹴り開けられた扉の向こうから飛び込んで来た赤毛の少年と褐色肌の青年を、これから始まるであろう情事を想像させるポーズで迎え撃ちました。

 

「「……あ」」

 

歓迎されざる訪問者2人の目に飛び込んで来たのは、女性らしい曲線を強調する黒インナー姿の只人(ヒューム)と、自然が生んだ至宝と言うべき上の森人(ハイエルフ)のシミ一つない背中。そして不満げな2人を抱き寄せるように腰に手を伸ばす、小さな暴君の歪んだ微笑み。クレバスが割れるように開かれた口から湧き出す言葉は、停止していた彼らの思考を誘導するのに十分すぎる威力を発揮しました……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これからおたのしみだったのに……。じゃましないでくれる? ど~ていさんたち」

 

「「ぶっ殺す!」」

 

 

 

 

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 




 新しい業務がスタートしたので失踪します。

 お気に入り登録に評価や感想、非常に励みとなっております。

 お時間がありましたら、一言でも構いませんので感想を頂ければ幸いです。今後の作品の方向性にも影響してくると思いますので。

 お読みいただきありがとうございました。
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