ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 オンセキャンペーンが始まったので初投稿です。

 お外で集まらなくても遊べるTRPGは良い文明、古事記にもそう書かれている。


セッションその11-5

 前回、童貞2人を盛大に煽ったところから再開です。

 

 吸血鬼君主ちゃんのとってもむごーい仕打ちにキレた青少年たち、宣言通り吸血鬼君主ちゃんに襲い掛かりましたが……。

 

 

 

「人様の御宅を訪問する際はノックをしたまえ。それが礼儀というものだろう?」

 

「「はい」」

 

 間に割って入った栄纏神(えいてんしん)の神官さんによって鎮圧され、現在お説教の真っ最中。小柄な神官さんよりも低い正座をキメたまま、頭上から懇々と降り注ぐ有難いお話しに耐えているところです。時折お互いに責任を擦り付けるように小突き合いが起きますが、背後の大砲鳥がその大きな嘴を見せつけてその都度黙らせているようです。

 

 

 

 さて一方、2人を煽り立てた吸血鬼君主ちゃんたちですが……。

 

「君たちもだお嬢さん(フロイライン)方。先ほどの振る舞いはいささか淑女としての品位に欠ける行為だとは思わんかね?」

 

「「「はい……」」」

 

 少年魔術師君と不良闇人さんのとなりで同じように正座をして、お説教を受けています。あ、マッパで事に及んだ2人ですが、妖精弓手ちゃんは掛毛布を、吸血鬼君主ちゃんは自前の翼をそれぞれ上着代わりにしているので、現在は見られても大丈夫な格好になっていますね。

 

 

 

「……まぁ説教はこのくらいにしておこう。少年たちは何をしに此処へやって来たのかね?」

 

 お、どうやらお説教は終わったみたいです。足が痺れて悶えている男子2人に対して、栄纏神(えいてんしん)がこの地への来訪理由を尋ねています。先に復活した不良闇人さんが、まだ痺れと戦っている少年魔術師君の足を責め立てながら答えてますね。どうやら少年魔術師君に憑りついている女幽鬼(レイス)さんの制御方法を教えてやって欲しいという半鬼人先生からの依頼で、秋口からこっち彼を様々な場所へ引っ張りまわしているみたいです。

 

 困難に直面したときにこそ制御する力が身に付くらしく、今回真冬の雪山で一狩りするつもりが色々あって遭難しかけていたんだとか。あ、吸血鬼君主ちゃんが女幽鬼(レイス)さんに手を振ると、ちゃんと返してくれてますね。どうやら少年魔術師君とは上手くやれているっぽいです!

 

 

 

「ああ、そういやアンタも妖精に憑かれてるんだったっけ。すっかり忘れてたわ」

 

「あぁ? 2000歳のクセにもうボケが始まってんのか? それにコイツは妖精なんて可愛い奴じゃ……()っちぃ!?」

 

 あ、妖精弓手ちゃんの呟きに反応して悪態をついた不良闇人さんが発火しました!? よく見ると彼の首筋に抱き着く様に、炎で編まれた真っ赤なツインテールの女の子の姿が見えますね。彼女が不良闇人さんの相棒の妖精さんでしょうか?

 

 あれ、どうしたんです無貌の神(N子)さん、彼女を見てそんな顔を引き攣らせて。え、昔住んでいた別荘()に放火した奴に似ている? そういえばアイツもわりかしメンヘラかつスイーツ脳だったって。……それじゃあの女の子、妖精じゃなくて何処かの神の化身(アバター)? いやまさかそんな……なんで目を逸らすんですがGM神さん???

 

 

 

「あの、それでしたら私たちに手を貸していただけませんか?」

 

「手? 分身(アザーセルフ)が居ないみたいだけど、ソイツだけで大概の事は何とかなるだろ? なんでわざわざ……」

 

 令嬢剣士さんのお願いに難色を示す少年魔術師君。吸血鬼君主ちゃんを睨みつけながら言う台詞は至極真っ当ではありますが、背後の女幽鬼(レイス)さんは興味を示してくれているみたいです。将を射んとすればまず馬を射よ、ここは彼女から口説き落としてもらいましょう!

 

「あのね、このちかくにいるふゆしょうぐんっていうまじんをやっつけないと、ふゆがおわらないの。もし()()といっしょにこのじけんをかいけつできたら……ふたりのあいしょうはバッチリだってみんなにしってもらえるんじゃないかな?」

 

「あ、オマエもしかしてアイツに話しかけて……!?」

 

 吸血鬼君主ちゃんの思惑に気付いた少年魔術師君が割って入ろうとしましたが、突然ガクっと崩れ落ちてしまいました。同時に彼の周りに()()が集まり、次第に女性の形へと変化していきます。実体を得た女幽鬼(レイス)さんと力を失い彼女に膝枕されてぐぬぬ顔の少年魔術師君の姿を見た吸血鬼君主ちゃんが、何かに気付いたように頷いていますね。

 

「クソッ、呼んでもいないのに出てくるんじゃない……ッ」

 

「ヴァンパイアハンターへのだいいっぽ、おめでとう!」

 

 少年魔術師から向けられる忌々し気な目をスルーしながら拍手をする吸血鬼君主ちゃん。ひょっとして女幽鬼(レイス)さん「生ける風」扱いになったんですか? 少年魔術師君の頭を撫でながら首肯しているのできっとそうなんでしょうねぇ。……というか少年魔術師君、黙って実体化を解除すれば良いのにしないあたり順調に女幽鬼(レイス)さんのバブみに浸食されているようですね。お姉ちゃん離れする日も近いかもしれません。

 

 

 

「それでクソチビは2人に分かれたってワケか。テメェも難儀な生まれだったんだなぁ……」

 

「あのこともあえたし、みんなとなかよくなれたからわるいことばかりじゃないけどね」

 

 おや、いつのまにか吸血鬼君主ちゃんと不良闇人さんが仲良くなってます。ダブル吸血鬼ちゃんの生い立ちが自分と重なって見えたのでしょうか、若干ですが眼差しが柔らかくなった気がしますね。それがどうも面白くないのか、彼の背中に抱き着いている仮称火の妖精さんが不満げな顔をしています。「やっぱ女の身体って柔らかいのか?」なんて中学生男子みたいなことを吸血鬼君主ちゃんに聞いてる不良闇人さんの首元に、赤々と燃えるツインテールを巻き付けて……。

 

()っちぃ!? ナニ誤解してやがる、俺がこんな事故物件に色目使うワケ無ぇだろうが!?」

 

「……!」

 

 どうやら仮称火の妖精さんは嫉妬の炎も操ることが出来るみたいですね(白目)。必死に宥めようとする不良闇人をジト目で睨みつけながら、うねうねと動くツインテールで相棒に焼印を付け(マーキングし)ています。その光景を見ている吸血鬼君主ちゃん、あんまりな言われようにちょっと涙目になってますね……。

 

「ぼくはじこぶっけんだった……?」

 

「まぁ、まともな神経の持ち主がお付き合いするのは難しいですわね」

 

 でも、それも含めて皆頭目(リーダー)を愛してますのよという令嬢剣士さんの言葉に安心したのか、照れたように彼女のおなかに顔を埋めちゃいました。そんな2人のスキンシップを食い入るように見つめているのは半実体の淑女さんたち。いつかは私も相棒に……という決意が、熱気と瘴気になって周囲に溢れています。……それ絶対身体に悪いモノですよね?

 

 

 

「ほら、遊んでないで全員集合! 明日の作戦を伝えるわよ!!」

 

 お、地図を広げて栄纏神(えいてんしん)の神官さんと話し合っていた妖精弓手ちゃんがみんなを呼んでます。どうやら明日の冬将軍討伐の作戦が決まったみたいですね。令嬢剣士さんが淹れてくれたお茶を片手にみんなで地図を覗き込み始めました。

 

「現在我々のいる村が此処。徒歩でおよそ半日ほどの距離に遺棄された神殿がある。夕刻に上空から見た限り、辺境一帯に冬を留めている冬将軍は現在その神殿跡を拠点としているようだ」

 

「なぁ、これってやっぱり……」

 

「ああ、俺たちが見て来たモンはこれが原因だな」

 

「ふたりともなにかしってるの?」

 

 地図の印が付いている場所を見て頷き合っている2人。何やら訳知りっぽいですね。吸血鬼君主ちゃんの問いに答えるように少年魔術師君が地図の上に指を滑らせています。

 

「この村に辿り着いたのは、道に迷ってた時に氷漬けになった森や動物を辿って来たからなんだよ。……もし反対に向かってたらヤバかったかも」

 

「オマケに辺りの精霊たちも怯えっぱなしで人里の方角も聞けやしなかった。魔神の仕業ってなら納得がいくぜ」

 

 見れば2人の肩口に手をあてて浮かんでいる相棒(カノジョ)たちもうんうんと頷いています。今回の討伐対象である冬将軍という魔神、その名の通り冬を引き連れて移動しているみたいですね。

 

「彼奴は常に吹雪を纏って行動する。視界も遮られるがそれ以上に飛び道具が威力を発揮できないのが問題だな」

 

「私も当てられないとは言わないけど……普段通りに射られるかと言われるとちょっとねぇ……」

 

 自然の化身である精霊たちとは違う理で吹く風を読むのは、流石に妖精弓手ちゃんでも厳しいみたいです。となれば何とかして吹雪を止ませないといけないのですが……。

 

「いちじてきにでだいじょうぶなら、ふぶきはなんとかできるとおもう」

 

 お、吸血鬼君主ちゃんがしゅたっと挙手して任せて欲しいと言ってます。妖精弓手ちゃんの確認に対しても大きく頷きを返してますので、自信はあるみたいですね。話し合いの結果、吸血鬼君主ちゃんが吹雪を解除したタイミングで栄纏神(えいてんしん)の神官さんが上空から先制爆撃、敵集団が混乱しているところを各個撃破するということで纏まりました。また対象が移動して被害が拡大するのは宜しくないので、夜明けとともに出発して朝のうちにケリをつけるつもりのようです。

 

「それじゃ今日は早めに休みましょ。……アンタたちも此処で寝ていいけど、変な事考えるんじゃないわよ?」

 

「ハッ! そんな硬い抱き枕こっちから願い下げだっつうの……痛ェ!?」

 

 あーあー……妖精弓手ちゃんの化鳥蹴りで窓から不良闇人さんが飛び出て行きました。寒風が吹き込んで来るそこを吸血鬼君主ちゃんがシーツで塞ごうとしていますが、ちょっと届かないみたいですね。むっとした表情で飛行しようと……おや?

 

「……ったく、貸してみろ。相変わらずチビの癖になんでも自分1人でやろうとしてやがる」

 

「アンデッドはせいちょうしないからしかたないの。でもありがと」

 

 吸血鬼君主ちゃんの背後からシーツを奪い取った少年魔術師君が割れた窓を塞いでくれました。相変わらず言葉はキッツイですが、吸血鬼君主ちゃんのお礼にそっぽをむいているあたり若干の関係改善は望めそうですね! 妖精弓手ちゃんが吸血鬼君主ちゃん(核融合湯たんぽ)を小脇に抱えて毛布にくるまったのを見て、背嚢を枕代わりに横になった少年魔術師君。女幽鬼(レイス)さんが目と目がくっつきそうなほどの距離でその寝顔を眺めてますが……直接の被害が無いようなのでそっとしておきましょうか。 それじゃ襲撃まで少しカットしちゃいましょう!

 

 

 

 

 

 

「そうだ、只人(ヒューム)お嬢さん(フロイライン)。少しいいかね? 君に渡しておきたいものがあるのだが……」

 

「はい? なんでしょうか。……!? こ、これは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーおー、こりゃまた随分派手にやってくれてるじゃねえの!」

 

 神殿跡を見下ろす位置にある小高い丘の上。周囲を探っていた不良闇人さんが感嘆の声を上げながら見つめる先には、渦巻く様に吹雪が固まっている場所から天に伸びるように立ち昇る暗雲。上空にて相棒に騎乗して待機している栄纏神(えいてんしん)の神官さんよりも高度まで上がったそれは、寒空全体を覆い尽くすように広がっています。やはりあそこにいるであろう冬将軍が、西方辺境に長い冬を齎している元凶で間違いありません!

 

「それじゃあはじめるね。じゅんびはいい?」

 

 栄纏神(えいてんしん)の神官さんからの合図で吹雪を解除する準備を始めた吸血鬼君主ちゃんが、体内に秘めている星の力(核融合炉)を起動させました。頭上に掲げられた両手の間に生み出された小さな輝き、炉心から直接魔力を供給されたそれは翠玉の光を放ち、周囲で待機しているみんなにも感じられるほどの熱が感じられます。頭と同じくらいの大きさにまでなった光球を構えた吸血鬼君主ちゃんが、太陽神に捧げる共通の詠唱とともに立ち昇る暗雲の中心へと投擲しました!

 

 

 

たいようらいさん! ひかりあれ(ストナーサンシャイン)!」

 

 

 

 それ進化の光!? いや陽光をブン投げているからあながち間違いでは無いのかも……。

 ドワオ!という効果音と共に不規則な軌道を描きながら天へと突き進む≪晴天(サニーデイ)≫の奇跡(軌跡)。上空に立ち込める暗雲と接触した瞬間、爆発と錯覚するほどの閃光が一行の視界を奪いました。目を瞑っていても感じられるほどの眩しさが終息した後、一行の眼前に広がっていたのは……。

 

「フム、見事なものだな」

 

 周囲一帯(半径3km)にわたって顔を見せた青空と、突然冬の結界を剥がされて混乱している魔神の集団の姿です。集団の中心に位置していた上位魔神(グレーターデーモン)栄纏神(えいてんしん)の神官さんの投槍で爆散したのを見て、呆然としていた面々が一斉に動き出しました!

 

「私は此処から援護するわ! 怪我しないように暴れて来なさい!!」

 

 言葉とともに矢を放つ妖精弓手ちゃん。周囲には吸血鬼君主ちゃんがインベントリーから取り出した矢筒がいくつも置いてあります。地上の敵だけではなく、上空の栄纏神(えいてんしん)の神官さんへ向かっている魔神まで撃ち落とす見事な業。流石ですね!

 

 

 

「行くぜシスコン小僧! 遅れるんじゃねぇぞ!!」

 

「わかってるっつーの! ……頼んだぞ?」

 

 お! 丘の上から勢いよく飛び出していった2人が、半実体化した相棒(カノジョ)に支えられながら斜面を飛ぶように駆け降りていきました! 不良闇人さんは勢いのまま敵集団へと躍りかかり、血刀に触れるを幸いに縦横無尽に斬り斃す大暴れ。攻撃の隙を狙って近寄る抜け目ない奴は、寄り添うように彼と背中合わせに立つ火の妖精?(K子)さんが、その両手から放つ炎で焼き払っています。……無貌の神(N子)さん、やっぱり彼女と知り合いなんじゃないですか? 顔が引き攣ってますし、なんか顔や腕に火傷の痕みたいなのが浮かび上がって来てますけど……。

 

 派手に動き回る不良闇人さんコンビとは対照的に、淡々と敵を処理しているのは少年魔術師君と女幽鬼(レイス)さんのコンビ。「生ける風」としての彼女を維持するために集中している少年魔術師君を背後から抱き締めたポーズのまま、目に映った敵を次々に黒い炎で焼き尽くしています。明らかに火が点きにくそうな液状の身体を持つ魔神すら燃やしているところから察するに、ただの色違いの炎では無さそうですが……。お、令嬢剣士さんをお姫様抱っこして横を通り過ぎようとしていた吸血鬼君主ちゃんが目を丸くしています。

 

「彼らの炎、傍に居るだけで何か身体に絡みつくような感覚が有りますわね……」

 

「えっとね、ぼくがまえつかってたちかたなとおなじで、もやしているのはぶっしつじゃなくてたいしょうのせいしんとかたましいってよばれているものだとおもう。だから、ほんのうてきにいやなかんじがする……たぶん」

 

 あーなるほど、強固な外皮や呪文耐性を持つ魔神があっさりと燃えているのはそういうことだったんですね。恐らく牙狩りの人たちの業と同様に人間以上の存在……吸血鬼や魔神に特化した術式なのでしょう。どうやら吸血鬼殺し(ヴァンパイアスレイヤー)を目指すという誓いは順調に叶いつつあるみたいです!

 

 

 

「おそらくあの祭壇のようなものが冬をこの地に留めている呪物なのでしょう。冬将軍らしき魔神の姿が見えないのが不安要素ではありますが」

 

「さいしょにふきとんでたのはただのグレーターデーモンだったし、どこにいるんだろう?」

 

 妖精弓手ちゃんと栄纏神(えいてんしん)の神官さんの援護射によって空いた隙間を縫うように駆ける吸血鬼君主ちゃんと令嬢剣士さん。2人の目指す先には暗雲を発生させていたと思われる金属製の祭壇らしきものが見えてきました。1()0()m()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。投槍によって砕かれた魔神の武具や岩の破片が当たっていましたけど、その表面には傷一つ付いていません。どうやら相当強固な造りになっていそうですが……。んん? なんか上部が回転して2人に棒状の部分を向けているような……

 

 

 

「!? ふせて!!」

 

「Staaaaaaaaliiiiiiiiiin!!」

 

 

 

BAM!!

 

 

 

「いたた……」

 

 雷鳴の如き轟きと共に放たれた()()1()2()2()m()m()()()()()。何とか令嬢剣士さんの前に割り込み円盾()で逸らすことには成功したようですが、その衝撃の強さを物語るように、吸血鬼君主ちゃんの両腕は裂け純白の大地を赤く染めています。重厚な駆動音を響かせてゆっくりと旋回する()()は怪しく光り、装甲の隙間から溢れる有機的な粘体。上空から降下してきた栄纏神(えいてんしん)の神官さんが2人への射線を遮るように大砲鳥を着陸させ、忌々し気に眼前の脅威を睨みつけています。

 

「……どうやら冬将軍はあの戦車と一体化しているようだな」

 

「戦車? アレは戦車(チャリオット)なんですの?」

 

 栄纏神(えいてんしん)の神官さんの呟きに驚きの声を上げている令嬢剣士さん。まぁ普通"戦車"って言ったらソッチですからねぇ……。此方でも無貌の神(N子)さんが「今度化身(アバター)不死の蛞蝓(フラック)を動力源にして、思いっきり乗り回してやろうと思ってたのに!?」と悲鳴を上げています。轟音を上げながら一行を轢殺せんと迫ってくる鋼鉄の獣(スターリン)に向かって、後方から赤と黒の炎が放たれますが……。

 

「クソが! ガワが頑丈過ぎて中まで火が通らねぇ!?」

 

「こっちもだ。どうやら装甲は純粋な金属で出来ているらしい……ッ」

 

 他の魔神たちのように炎上することも無く、悠々と炎の海を乗り超えて迫る冬将軍。砲塔と同軸の機銃から放たれる魔力弾から逃れるように、不良闇人さんと少年魔術師君は慌てて岩陰へと退避しました。その隙を見て相棒の脚に吸血鬼君主ちゃんと令嬢剣士さんを掴ませ、上空へと退避した栄纏神(えいてんしん)の神官さん。冬将軍も空に向けては砲撃出来ないみたいですね……。

 

「フム、中々に厄介だな。空から少しずつ削るのが安定だろうが……」

 

「まぁ、たいさくはしてくるよね……」

 

 空から様子を窺う3人の眼下で、鋼鉄の獣(スターリン)が各部のハッチを解放しました。内部に潜んでいる冬将軍が無数の口と思われる器官を生み出し、そこから吹き出す猛烈な吹雪が周囲へと展開されていきます。みるみるうちに冬の結界が車体を覆い尽くし、再びそこから暗雲が昇り始めました。遠距離では冬の結界で射線を通さず、近距離では一撃必殺の砲撃とひき逃げアタック。相手の攻撃は分厚い装甲で防ぎ、結界を解除しても離れればまた張り直す……これは難攻不落ですねぇ。

 

頭目(リーダー)の一撃……太陽神の神官様から拝領した(ケイン)は使えませんの?」

 

「けっかいをかいじょするのにけっこうちからをつかっちゃって、もういっかいかいじょしたらちょっとまりょくがたりないかも……ごめん」

 

 令嬢剣士さんからの問いに申し訳なさそうに答える吸血鬼君主ちゃん。流石に高達成値≪晴天(サニーデイ)≫の連発は厳しいみたいです。地上では童貞コンビに妖精弓手ちゃんが合流してますが、冬の結界に阻まれて攻めあぐねているようですね。

 

 

 

吸血鬼(ヴァンピーア)お嬢さん(フロイライン)が再び結界を解除したタイミングで、私が一撃を加えるのが妥当だろう。すまないが頼めるかね?」

 

「ん、もういっかいくらいならなんとか。かいじょしたらそのままちじょうでこうげきをひきつけるね」

 

 頷き合った後、大砲鳥の脚から離れ地上へと落下していく吸血鬼君主ちゃん。先ほどと同じように光球を生み出し、今度は冬将軍が内部に潜む冬の結界へと直接投擲しました。ひび割れるように解除されていく冬の結界、後方から飛んでくる炎や矢を援護に吸血鬼君主ちゃんが冬将軍の注意を引き付けようと接近していきます。同時に直上から一撃を喰らわせるべく、栄纏神(えいてんしん)の神官さんが両手に槍を構えて……!?

 

「ダメ、よまれてる。よけて!」

 

「……ッ!?」

 

 あ! 降下体勢に入っていた大砲鳥に向かって、無数の粘体が触手のように伸びてます!? 既に攻撃の姿勢になっていたために大砲鳥は避けることが出来ず、牙の生えた触手に絡め捕られてしまいました。嫌らしい笑い声を上げる冬将軍の一部は、背中に乗った2人ごと大砲鳥を地面に叩きつけるつもりなのでしょう。悲鳴を上げる令嬢剣士さんを見た栄纏神(えいてんしん)の神官さんが、咄嗟に相棒に命じたのは……。

 

「我が半身よ、お嬢さん(フロイライン)を護れ!!」

 

 相棒の言葉に従い、身体を振るわせて背中から令嬢剣士さんを振るい落とす大砲鳥。自由落下に入る寸前翼で彼女を覆い、そのまま地面へと叩きつけられました……。

 

「……怪我は無いかねお嬢さん(フロイライン)

 

「ええ、私は大丈……!? そんな、どうして……?」

 

 柔らかな羽根によって保護された令嬢剣士さんとは異なり、もろに地面へと打ち付けられた大砲鳥と栄纏神(えいてんしん)の神官さんの姿は悲惨なものへと変貌していました。金属製の義足は根元からへし折れ、優雅に空を舞っていた翼はあらぬ方向へと曲がり、両者の身体からは白い粒子が漏れ始めています。……どうやら化身(アバター)の損傷が許容範囲を超えたために送還が始まってしまったようですね。目の前の事態に声を無くした様子の令嬢剣士さんを見て、栄纏神(えいてんしん)の神官さんが笑みを浮かべながら語り掛けています。

 

「言ったはずだぞお嬢さん(フロイライン)栄纏神(えいてんしん)の神官とは戦友を助けるために現れるものだ。その源は人々の想いであり、その存在は仮初のものに過ぎない。ただ1人、()()()()を持つ者を除いてな……」

 

 震える手で彼が示す先は令嬢剣士さんの胸元、そこに着けられているひとつの勲章です。眩い光を放つ黄金と金剛石で彩られたソレ(黄金柏葉・剣・ダイヤモンド付騎士鉄十字章)は、昨夜令嬢剣士さんが彼から渡されていたもの……。

 

「君たちが吸血鬼(ヴァンピーア)お嬢さん(フロイライン)と共に歩もうとしている道は、とても険しく他人から理解されがたい道だ。その勲章は君の旅路を助けるものであり、たとえ人の道を外れたとしても、君たちが人の隣を歩んで行くのだという証明となるだろう……」

 

「……私に務まるのでしょうか、そのような大役が」

 

 徐々に透けながら送還される栄纏神(えいてんしん)の神官さんとその相棒。2人の視線を受け止めた令嬢剣士さんの不安げな表情を見て、駆け寄ってくる吸血鬼君主ちゃんを指し示す栄纏神(えいてんしん)の神官さん。その顔にはからかうような色が浮かんでいます。

 

「彼女たち姉妹(シュヴェスター)と添い遂げること以上に難しいコトなど無いと私は思うがね? 大いに悩み、考え、自らの在り方を問い続けたまえよ。君には永遠に等しい時間が待っているのだから……」

 

「ありがとう、かみさま。またいつか……」

 

 光の粒子となって消えゆく栄纏神(えいてんしん)の神官さんの傍らに駆け寄ってきた吸血鬼君主ちゃん。太陽神さんの化身()と同じ気配を感じていたのでしょう、彼の正体(破壊神さん)には薄々気が付いていたみたいですね。では、善き旅路をという言葉を残し彼らが消え去っていった空を見上げています。ですが、感傷に浸っている暇はありませんよ!

 

「Staaaaaaaaliiiiiiiiiin!!」

 

「おいクソチビ! 一旦下がって体勢を立て直すぞ! ……聞こえてんのかコラ!?」

 

「シルマリル、おっぱい娘を連れて下がりなさい!!」

 

 装甲の隙間から触手を展開している鋼鉄の獣(スターリン)……冬将軍が砲塔を2人に向け始めています。砲撃に対して吸血鬼君主ちゃんは回避するかもう一度円盾()で受け流すか考えているようです。背後からは撤退を促す声と共に炎と矢が飛んで来ていますが、冬将軍はまったく反応せず狙いは前2人に固定されたまま。吸血鬼君主ちゃんが悔し気に舌打ちをしながら令嬢剣士さんに撤退するよう伝えようと……おや? 振り向いた吸血鬼君主ちゃんが何かに気付いたみたいですね。開いた口からは言葉が出ず、令嬢剣士さんを見つめています……。

 

 

 

頭目(リーダー)、お忙しい時に申し訳ないのですが、ひとつお願いを聞いていただけませんか?」

 

 背後で勲章を握ったまま俯いていた筈の令嬢剣士さんからの問い掛け。そこに込められた意志の強さは吸血鬼君主ちゃんの身を竦ませるほどの感情に満ちています。狙いを定めていた冬将軍すら怯えさせるほどの気迫を纏った令嬢剣士さんが、吸血鬼君主ちゃんに目線を合わせるようにしゃがみ込み、その頬をゆっくりと撫でています。

 

「私に、人の境界を踏破する最後の一歩を踏み出す勇気を。そして、頭目(リーダー)と共に歩む最初の一歩を踏み出す勇気をいただきたいのです」

 

 頬に添えられた指先から微かに伝わる震え。令嬢剣士さんの抱く恐怖や不安を感じ取った吸血鬼君主ちゃんがその手を握り、ゆっくりと顔を近付けていきます。触れ合う唇から送られたのは残っていた僅かな魔力……そして、めいっぱいの好きという気持ちでしょう。銀糸を残して離れた吸血鬼君主ちゃんの口から、熱い吐息と少し照れたような言葉が零れました。

 

「いまはこれがせいいっぱい。でも、かえったらあのこといっしょにつづきをしようね?」

 

「ええ、十分ですわ。……あとは恋の旅路を邪魔する不届き者を成敗するだけです!」

 

「……Staaliiiin!!」

 

 強い視線を向けられたことで、呪縛が解けたように動きを取り戻した冬将軍が砲塔の旋回を完了させ、自慢の122mm砲を発射しました! 咄嗟に庇おうとする吸血鬼君主ちゃんを手で制した令嬢剣士さんが、胸元から外した勲章を天高く掲げながら誓いの言葉を高らかに唱えます!!

 

「我は自由と秩序を守護せし者(ホーリーオーダー)にして戦場にて苦難に喘ぐ者に手を差し伸べる者(ホスピタラー)! そして、故無くして斃れた者の無念を力とし、正当なる復讐を果たす者(アヴェンジャー)なり! 我が意志を貫き通す力よ、顕現せよ!!」

 

 戦場に令嬢剣士さんの宣誓が響いたのと同時に、爆炎に包まれる2人。声にならない悲鳴を上げた妖精弓手ちゃんの視線の先、ゆっくりと煙が晴れた場所には、まるで2人を庇うように立ちはだかる巨大な姿が!。

 

 小さな納屋ほどもある体躯と、それを覆う巨人の精髄が変化した金属(チタン)製の全身鎧。太く長大な牙にびっしりと見える細かな傷は幾度も戦を経験した証でしょうか。本来は穏やかであろう瞳を憤怒の色に染めた栄纏神(えいてんしん)使徒(ファミリア)が、冬将軍と生き残りの魔神を威嚇するように雄々しき咆哮を上げました!!

 

 

 

「Bmooooooooooooo!!」

 

 

 

「おっきいブタさん? ……じゅるり」

 

イボイノシシ(ワートホグ)ですのよ頭目(リーダー)。あとそんな目で見てはいけません、私の大切な相棒ですから」

 

 庇われる形になった2人は無事みたいですね! 見上げるほどの巨体を涎を垂らしながら見ている吸血鬼君主ちゃんをやんわりと窘めている令嬢剣士さん。その手には栄纏神(えいてんしん)の神官の象徴たる武器が握られています。鼻息も荒く冬将軍に突撃せんと構える使徒(ファミリア)の額に手を当てて落ち着かせながら、無傷で砲撃を防がれて狼狽しているように見える冬将軍に向き直り言い放ちます。

 

「無辜の民を殺め、その亡骸をゴブリンに弄ばせたこと、まこと許しがたき行為。大人しく討伐されるのであれば元の世界に還ることも出来るでしょう。しかし、抵抗するのならば……」

 

「Staa……liiiin!!」

 

 魔神のプライドか、はたまた召喚者との契約に因るものなのか。本体である粘体を内部に引き込み、最高速度で突撃してくる冬将軍を見て無言で武器を構える令嬢剣士さん。魔力を注ぎ込まれ起動したそれを冬将軍に向け、暴発寸前まで高まった力を解放する聖句(キーワード)を唱えました!

 

 

 

ぶっとばしてさしあげますわ(Enemy is in sight. Open fire)!!」

 

VVVRROOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOM!!

 

 

 

 七つの切先(銃身)から放たれる発射速度毎分3900発の魔力弾。牛の鳴き声とも評される砲声が実際に続いたのは1R(30秒)にも満たない時間でしょう。根こそぎ魔力を奪われて膝を付いた令嬢剣士さんを、傍らで見守っていた吸血鬼君主ちゃんが支えています。

 

頭目(リーダー)、私は貴女と共に歩み、人々を護る栄纏神(えいてんしん)の神官になれるでしょうか……」

 

「うん、きっとみんなきみにえーてんしんのかごをかんじるとおもうよ。まじんのかくまでくだいちゃうとはおもわなかったけど」

 

 2人が見る先には、()()()()()()()。装甲の破片も、飛び散って然るべき肉片も、強制的に送還された魔神が遺す残滓である()()()すらも。すべて消し飛んでしまったみたいですね。射線上にいた不幸な魔神も同様に消滅し、僅かな生き残りは後方で様子を窺っていた3人+αと使徒(ファミリア)によってあっとういうまに蹂躙されました。

 

 

 

「優雅には程遠いけど、とんでもない威力だったわねぇ……」

 

「いや、何でそんな平常運行なんだよ? アレか、クソチビの周りはこんなトンデモばっかりってヤツなのか???」

 

「オマエが言えた義理かよ……いやオレは違うからな! 一緒にすんなよ!?」

 

 魔神の落とし物を拾いながら集まってくるみんなを見ながら、ころんと大の字に寝っ転がった吸血鬼君主ちゃん。冬将軍が生み出していた暗雲が消えて空に太陽が顔を覗かせたので、日光浴で魔力の回復をしているみたいです。

 

「おなかすいた~……」

 

「申し訳ありません、私が魔力を強請ったせいで……」

 

 そんな吸血鬼君主ちゃんを膝枕している令嬢剣士さんも浮かない顔、口付けの際の魔力譲渡で吸血鬼君主ちゃんがすっからかんになったことに後ろめたい気持ちがあるのでしょうか。しばらく天日干ししていれば勝手に回復するので気にしなくても良いと思うんですが。

 

 

 

「んで、結局あの神官は何者だったの? 空から落ちた後に消えちゃったみたいだけど。それにあのでっかい猪にアンタの持ってる物騒な得物。私にゃさっぱりわかんない!」

 

「……まぁ、おせっかいな神様がいらっしゃったということにしておきましょう」

 

 日光で少し回復したのか、令嬢剣士さんの使徒(ファミリア)に乗ってモフっている吸血鬼君主ちゃんを見ながら首をふりふり唸っている妖精弓手ちゃんを見て、曖昧な笑みを浮かべたまま答える令嬢剣士さん。まさか単に破壊神さんが暴れたかっただけだなんて想像できないでしょうねぇ……。巨体の背中ではしゃいでいる吸血鬼君主ちゃんに向かって、疲れの滲む声が飛んできました。

 

「これでテメェの依頼は終了なのかクソチビ? 流石にちょっと休みてぇんだが」

 

 声の主はしゃがみ込んで賦活剤(エリクシル)を一気飲みしていた不良闇人さん、疲れの色が濃い顔で吸血鬼君主ちゃんを睨みつけています。隣の少年魔術師君も女幽鬼(レイス)さんを非実体に戻してどかっと座り込んでますね。2人の頭上では火の妖精?(K子)さんと女幽鬼(レイス)さんが互いの相棒の活躍を自慢し合っているようです。2人とも女子力高いなぁ……。

 

「うん、これでぼくのほうはおわり……んお?」

 

 お、吸血鬼君主ちゃんが虚空を見上げながら何度も頷いています。なるほど、このタイミングで吸血鬼侍ちゃんからの連絡が来たんですね! 連絡が終わり、訝し気な視線を向ける一行に対して、吸血鬼君主ちゃんが鮫のような笑みを浮かべながら告げた会話の内容は……。

 

 

 

「あのね、あっちのぼくたちがむかったうさぎさんのむらに、わるいきゅうけつきのいきのこりがこぶんといっしょにせめてくるんだって! ……キンスレイヤー(どうぞくごろし)のかり、みてみたくない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「……いや、意味わかんねぇよ!?」」

 

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 あ、お疲れ様です破壊神さん! どうでしたか久しぶりの下界は? 楽しんでいただけたようで何よりです。

 

 にしても随分大盤振る舞いでしたねぇ。アヴェンジャー(魔剣)ワートホグ(使徒)も使いこなすには時間がかかりそうですけど。

 

 え、彼女の魂が奥さんに似てたからついプレゼントしちゃった? えぇとその奥さんってどこちほーの奥さんですかねぇ? インド(パールヴァティー)北欧(ゲルズ)日本(クシナダヒメ)……。色々想像出来ますけど、深くは触れないでおきましょうか……。

 




 ゴミ漁り系2Hメイスブンブン型ドワーフ娘を組み上げるので失踪します。

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