ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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次のセッションが待ち遠しいので初投稿です。



セッションその11-6

 前回、令嬢剣士さんが米国面栄纏神(えいてんしん)の神官としての力を継承したところから再開です。

 

 魔剣アヴェンジャーの一斉射撃で魔神"冬将軍"を消し飛ばし、長冬の原因を物理的に排除することに成功しました! 

 

 どうやらこの魔剣は扱う者の奇跡の回数を弾丸に変換して発射する機構らしく、まだ神官として目覚めたばかりの令嬢剣士さんでは一斉射が限界みたいですね。冒険で成長して奇跡の回数が増えれば一党(パーティ)随一の面制圧力の持ち主になってくれることでしょう。

 

 さて、吸血鬼君主ちゃんが妖精弓手ちゃんをお姫様抱っこし、新たに令嬢剣士さんの使徒(ファミリア)となったワートホグ(イボイノシシ)の背に残りの3人が乗り込んだところで、カメラを見習い聖女ちゃんサイドに戻してみましょう!

 

 

 

 

 

 時間はちょっと進み、現在吸血鬼侍ちゃん組が雪男(サスカッチ)氷巨人(フロストジャイアント)を撃退した日の翌朝です。夜明けとともに氷の魔女が配下を引き連れてお礼参りに来ると想定し、最低限の見張り以外はしっかり休息していたんですが……。

 

「……来ないわね」

 

「こないね~」

 

 暗視持ちで睡眠が不要なために夜通し警戒に当たっていた吸血鬼侍ちゃん、眠気覚ましのお茶を持って来てくれた見習い聖女ちゃんと一緒に首を傾げています。眼前には昨夜遅くから降り出した雪によって生み出された銀世界、足跡一つない綺麗な状態を保っていますね。

 

 昨日のうちに矢玉の準備と周到に張り巡らされている塹壕の確認は済ませており、馬車に積んであった予備の食料で兎人さんたちもおなかいっぱい元気いっぱい状態にしてあるので何時襲撃が来ても大丈夫なんですけど、ちょっと肩透かしです。

 

「おかしいね……いつもなら暢気に大声で歌いながら雪男が歩いてきたり、氷の魔女の先触れとして人狼(ルーガルー)が来ると思うんだけど」

 

 同じく徹夜で見張りをしていた垂れ耳の兎人(ササカ)さんも、乾燥ニンジンをポリポリしながら現状を不審に思っているようですね。にしても人狼とはこれまた()()()相手がいるものです。

 

「人狼って、たしか人に化ける狼のほうだよね? 狼の姿に成れる獣人(パットフット)じゃなくて」

 

「うん、ひとざとはなれたしゅうらくでおきる、じゅうにんどうしがつるしあうげんいんになるほう。ギルドのくんれんじょうでおべんきょうしたやつだね!」

 

「ふわぁ……たしか、銀か魔法の武器じゃないと深い傷を負わせられないんだったか。俺たちは兎も角此処のみんなにゃちょっと厳しい相手じゃないかな?」

 

 欠伸を噛み殺しながら外に出てきた新米戦士くん、そのまま大口を開け新雪に顔からダイブ! しばらく顔を擦り付けた後に口をモゴモゴさせながら起き上がり、口内で溶かした雪で口を濯ぎペッと吐き出してました。冒険者三大職業病のひとつである虫歯を防ぐには毎日の歯磨きが欠かせませんからね。ちなみに諸説ありますが、残りは水虫と皮膚病であるとされてます。どれも衛生状態に左右される病気ですので、冒険者はみんな可能な限り冒険中の清潔に気を付けています。それもあって、≪浄化(ピュアリファイ)≫を使える神官が非常に重宝されるんですね。

 

「とかげさんのかたなもあんまりこうかがないとおもう。……まっぷたつにひきちぎればさいせいできないけど」

 

「「うわぁ……」」

 

 吸血鬼侍ちゃんや蜥蜴僧侶さんが嬉々として人狼を八つ裂きにしている光景が容易に想像出来たのでしょう、垂れ耳の兎人さんと新米戦士くんの顔が面白いように歪んでいます。どうやら4人とも、人狼の特性についての知識は持っているようですね。

 

「旦那さま~! 朝ごはんの用意ができましたよ~!! ……あれ、小父さんたちどうしたの? なにか変なものでも食べた?」

 

 朝ごはんを報せに来てくれたのは、三角巾とエプロン姿が眩しい白兎猟兵ちゃん。変顔になった男性陣を見てくりっと首を傾げる仕草は、どことなく兎の習性を感じさせて可愛いですね!

 

「ま、腹が減っては何とやら。私は先に貰って来たから、とりあえず食べてきてちょうだい。あ、アンタは私と一緒に見張りよ!」

 

「ありがたい、それじゃお言葉に甘えさせてもらうよ」

 

「なにかあったらすぐによんでね!」

 

 手提げから麺麭の腸詰挟み(ホットドッグ)を取り出す見習い聖女ちゃんに対して、ぺこりとお辞儀をした垂れ耳兎人さんと一緒に、地下へと続く入口へ向かう吸血鬼侍ちゃん。なんで俺が……と言いかけた新米戦士くんの口にもうひとつ持って来ていたパンを捻じ込みながら、見習い聖女ちゃんが警戒を引き継いでくれました。それにしても随分ハイになってますね吸血鬼侍ちゃん。寝なくても平気でも、徹夜明けのテンションにはなるのかなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「敵襲! 総員戦闘準備!!」」

 

 

「ふぁっ!?」

 

 突然耳に入ってきた新米コンビの大声に驚きの声を上げる吸血鬼侍ちゃん。朝ごはんをいただいた後、誘惑に負けて剣の乙女のお山を枕にうつらうつらしていたところでした。まわりで面白そうに眺めていた兎人たちが素早く武器を手に駆け出していくのを見ながら、蜥蜴僧侶さんもゆっくりと立ち上がっています。

 

「さて、鱗の身に寒さは堪えますが、暖は戦の熱と狩猟戦利品(トロフィー)にて取ることに致しますかな」

 

「おみやげになるといいね!」

 

 歯を見せる獰猛な笑みで剥ぎ取りを宣言する蜥蜴僧侶さんと目を合わせ、ニッコリと笑う吸血鬼侍ちゃん。その目にも狩りに対する悦びの色が浮かんでいます。≪分身≫から一個の独立した存在になって、吸血鬼が持つ攻撃性、嗜虐性は吸血鬼侍ちゃんのほうに集中したように思われます。まぁ吸血鬼君主ちゃんが専守防衛になったのかと言えば、そんなことはないんですけどね!

 

「私は兎人たちの援護に回ります。昼になればあの子たちも駆けつけてくるでしょうから、それまで負傷者を出さぬよう立ち回ってくださいね?」

 

「は~い! じゃ、いってくるね!!」

 

 一度剣の乙女のお山に顔を埋めてから全速力で地下居住区を飛び出した吸血鬼侍ちゃん、白兎猟兵ちゃんの声援を背に上空まで飛翔し、攻め手の陣営を確認したところ……。

 

「あれ? ゆきおとこもきょじんもいない……」

 

 眼下に見えるのは白地に歪な線を描きながら雪中を駆ける人狼ばかり。首を捻りながらもとりあえず手近な一体に狙いを定め、村正を抜刀しながら急降下。周囲に漂い始めた濃密な血臭が頭上から生じていることに気付き、反射的に見上げてしまった人狼は……。

 

「Ga……!?」

 

「あ、はんぶんにしたらけがわがだめになっちゃうんだった……」

 

 正中線で左右に分割され、雪の絨毯(カーペット)に沈む人狼。零れ落ちる中身が白を朱色に染め、進撃の終着点を彩っています。刃の血を振り払い、次なる獲物を探す吸血鬼侍ちゃんの目に、塹壕から顔を覗かせたまま迫り来る人狼に震える石弓を向けている兎人さんが写りました。あの毛色はたしか白兎猟兵ちゃんの弟妹の筈です!

 

「Grrrrr……Gaaaaah!!」

 

「くるな~こっちこないで~」

 

 ……ん? なんだか声に悲壮感が無いというか、切羽詰まった感じがしないというか。あ、吸血鬼侍ちゃんの視線に気付いた兎人ちゃんが可愛いウインクを飛ばしてきましたよ? 恐怖で震えるその肉を裂いて喰ってやろうという勢いで雪を掻き分けて兎人ちゃんへと迫る人狼。そういえば()()辺りって確か……。

 

「Gro!?」

 

 突然間抜けな声を上げて消えた人狼。雪原には大きな穴が空いています。あっけにとられた様子でそれを見ていた吸血鬼侍ちゃんに、怯えたフリをしていた兎人……あ、末の妹ちゃんですね、が大きく手を振りながら人狼消失のからくりを教えてくれました。

 

「このあたりには雪が大地を割って出来た深い裂け目がいっぱいあるんです! その近くにおとうさんたちがトンネルの出入り口を作ったって言ってました、おねえちゃんのだんなさま!!」

 

 あーなるほど、クレバスじゃありませんけど水が凍結する際に大地を割断するように、深い裂け目を生み出したんですね。興味を惹かれた吸血鬼侍ちゃんがぽっかりと空いた穴から下を覗き込んでみると……。

 

「G、Grr……」

 

「お~……」

 

 底のほうでもがく小さく見える人狼。どうやら落下途中に負傷し、そのまま動けなくなっているようです。もしかしたら頭部を打ち付けたりして即死していたほうが、彼にとっては幸運だったかもしれません。砕けた足が岩の間に挟まった状態で歪な形のままに再生し、完全にはまり込んだ状態。自ら足を切断しようとしても、持ち前の再生力が瞬く間に傷を塞いでしまっています。

 

 天井の裂け目から覗く赤い双眸に希望を見出したのか、プライドを捨てて哀れな声で鳴く人狼。その姿を見た吸血鬼侍ちゃんのとった行動は……。

 

「……」

 

「!? Ga、Gaa……!?」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()、でした。

 

 既に脅威ではなく、また助けることにメリットを見出せないとはいえ、なかなかに厳しい対応です。慈悲の一撃を与えないのはあの人狼を救助しに来るかもしれない群れの仲間を釣るためか、あるいは単に時間と手間をかける価値を感じていないだけなのか。どちらにせよ、敵と見做した対象への苛烈さも吸血鬼君主ちゃんより上かもしれませんね。……それが悪いとは、口が裂けても言えませんけれど。

 

 どうやら同様の裂け目は各所にあるようで、上空から見ればあちこちに大穴が空いているのが見て取れます。出入口の近くに準備してあった岩を使って、兎人さんたちが裂け目の上に蓋をしています。落下防止と落ちた相手の心を折るためのものでしょうか? 振り向けば、先程の末妹ちゃんも小さな身体で頑張って岩を運んでいました。どうやらこれが彼らの正式な落ちた敵への対処法みたいですね。通常の矢玉では効果が薄いですし、わざわざ銀の矢を用意するまでもないということなのでしょう……。

 

 

 

 人狼の処理が終わったあたりでこめかみに手を当てる吸血鬼侍ちゃん。吸血鬼君主ちゃんから連絡が来たみたいです。同時に麓のほうから黒い雲がせり上がってくるのが確認できました。どうやら本体のお出ましのようですね! あまり良い話では無かったのか、苦い顔をした吸血鬼侍ちゃんが、負傷者の確認と全体の指揮を執っていた見習い聖女ちゃんの所へと降りていきます。

 

「たぶんあのくものなかにこおりのまじょがいる。あと、あのこかられんらく。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「それって、まさか!?」

 

 応急処置を施した兎人さんを抱いたまま悲鳴にも似た声を上げる見習い聖女ちゃん。力が入ったのか抱かれている兎人さんが暴れています。その手をゆっくりと引き剥がしながら、努めて平静を保った声で剣の乙女が断じます。

 

「吸ったのでしょう。己が配下の血を。しかも恐らく、極めて乱暴且つ杜撰に……」

 

 

 

 

 

 

「……つかいすてのこまにするなら、ほとんどちからをわけなくてもいいからね~」

 

 集まっていた兎人たちの毛が一斉に逆立ち、新米戦士くんが思わず剣を向けた先。双眸を赫怒の炎に燃やした吸血鬼侍ちゃんが牙を剝き出しにした笑みを浮かべていました。怒りの向く先は吸血鬼が増えたことでしょうか、それとも統制の取れない配下を生み出した氷の魔女に対してでしょうか。兎人たちが怯えるその瞳を隠すように、剣の乙女が吸血鬼侍ちゃんの頭を胸元へと抱き寄せました。

 

「あの子や上の森人(ハイエルフ)の姫が彼方にはいます。皆で力を合わせれば、吸血鬼禍を起こす種を残すことなどありませんわ」

 

 だから落ち着いてくださいという剣の乙女の呼びかけによって、なんとか周囲に巻き散らかされていた吸血鬼侍ちゃんの怒りは収まったようです。怒りでは無く羞恥によって赤くなった顔をお山から覗かせて、みんなにごめんなさいしてます。……ちゃんとあやまれてえらいぞ~。

 

 うーむ、吸血鬼君主ちゃんが子どもっぽいのは休眠期間が長かったからだと思ってましたけど、よくよく考えてみれば吸血鬼侍ちゃん……『"死の迷宮"の吸血鬼(ヴァンパイアロード)』も祈る者になってからそんなに時間が経ってないんですよね。しかもその大半が迷宮での死と隣り合わせの日々かその後の混沌勢力の首狩り……まともな情操教育を受けられる環境じゃあないです。もしかしたらまともに人とコミュニケーションをとったのは女魔法使いちゃんと出会った時からなのでは……。やはり女魔法使いちゃんが2人のママだった?

 

 

 

 

 

 

「随分と手間をかけさせてくれたねぇ、泥ウサギども!」

 

 立ち込める暗雲の下、吹雪を伴って現れた冷たい視線の美女。僅かに理性を保っている部下を引き攣れた氷の魔女が、忌々し気に一行を睨みつけています。配下の目が一様に赤く染まっているあたり、全員を吸血鬼化させたのは間違いないようです。理性を持たぬ喰屍鬼(グール)を吸血鬼君主ちゃんたちに嗾け、自身は兎人の集落を落とすために出てきたのでしょう。

 

「素直に従ってりゃ牧場扱いで生かしておいてやったものを、どうやら本気で死にたいらしいねぇ……ッ!」

 

 寒気と共に浴びせられた殺気で兎人さんたちの毛が逆立つ中、一歩前に進み出たのは見習い聖女ちゃんです。手に持つ天秤の剣を突き付けるように向け、高らかに言い放つ姿は修行中の身とは思えないほどの威厳に溢れていますね。

 

「幾許かの兎人が雪男の糧となるのは自然の摂理、それを罪とは言わないわ。でも、生者である配下を全ての生あるものに害を為す喰屍鬼(グール)従属種(レッサー)にしたこと、断じて認めることは出来ない!」

 

「ほざけ小娘、(あたし)を誰だと思っている! かつて北の大地を氷の下に沈め、静謐な世界を支配していた氷の魔女だぞ!! 誰も(あたし)の邪魔をする事なぞ出来やしない、たとえそれが(あたし)の封印を解いた愚か者であったとしてもね!」

 

 あー、なるほど。混沌の勢力が西方辺境を冬に閉じ込めるために採った手段は一つじゃなかったのか。冬将軍の召喚も、氷の魔女の封印を解くのもそのうちの一つであったと。ところが氷の魔女は制御出来ずに自由意思で活動し始め、それを見た至高神さんが≪託宣(ハンドアウト)≫に利用したんですね。

 

 ということは、吸血鬼である氷の魔女が日中に活動できるのは、冬将軍による天候操作では無くて彼女自身の力に因るもの。あの吹雪による日光遮断は彼女自身が行っていることなんですね。獅子に凹まされたのが100年前なだけで、実際にはもっと長い時を過ごしているのかもしれません。

 

 影を伴わぬ腕を持ち上げ、とある1人を指し示す氷の魔女。嗜虐的な笑みを浮かべ、配下である従属種(レッサー)に命を下しました!

 

「さぁオマエ達、餌の時間だよ! ()()()()()()()()()()()()()()()()、後は好きにしな!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ?」

 

 

 

 

 

 

「うわヤバッ!? 兎人のみんなは地下壕に退避、良いって言うまで絶対に出て来ちゃダメだからね!!」

 

 まぁ、そうなるな(ZIUN師匠)

 

 予想通りブチ切れた吸血鬼侍ちゃん。普段からハイライトさんがいない瞳が吸血鬼君主ちゃんばりに収縮し、怪しい輝きを放ち始めました。横でそれを見てしまった見習い聖女ちゃんが慌てて兎人さんたちに避難指示を出しています。実に的確な判断ですねぇ。全員が退避したのを確認した見習い聖女ちゃんが扉に背を預け、一息入れたところにスッと差し出されたお茶。お礼を言いながら受け取り一気飲みした後に、差し出してきた()()()()()()()に向かってツッコミを入れてます。

 

「いやぁ、旦那さまってばすっごく怒ってますねぇ」

 

「なんでアンタ避難してないの!? 今から此処は地獄めいた戦場になるの確定なんだから!」

 

 まぁまぁもう一杯どうぞと言いながら陶製のポットからお茶を注ぐ白兎猟兵ちゃん。蜥蜴僧侶さんに首根っこを掴み上げられて落ち着くよう宥められている吸血鬼侍ちゃんを見ながら、普段通りの口調で返す言葉は……。

 

「や、好きな人が頑張る姿を見てみたいって思っただけですよ?」

 

 うーんこの素直さ。見習い聖女ちゃんも毒気を抜かれたようで、好きにしなさいと投げちゃいました。向こうでは吸血鬼侍ちゃんが雪原に逆さまに突き刺さった状態から復活中。どうやら蜥蜴僧侶によって物理的に頭を冷やされたみたいですね。感情豊かなことを悪いとは言いませぬが、激情に支配されるようでは大切なものを護れませぬぞ?と諭されシュンとしちゃってます。女魔法使いちゃんがママなら蜥蜴僧侶さんがパパなのかも。随分と濃い顔ぶれの家族だなぁ……。

 

 

 

 おっと、そうこうしているうちに吸血鬼化した(ヴァンピリック)雪男(サスカッチ)氷巨人(フロストジャイアント)が斜面を駆け上がって来ました! 雪原に適応した種族特徴は残っているのか、雪の下に潜む裂け目を器用に避けながら迫っていますね。竜牙刀を肩に担いだ蜥蜴僧侶さんが、何やら思案している様子。どうしたんでしょう?

 

「ふむ、竜牙刀では傷を負わせるのが精々、足場も此方が不利。さて、如何したものか……」

 

「あら、それでしたら私がお手伝い出来ますわ」

 

 お、吸血鬼の防護を抜く算段を考えていた蜥蜴僧侶さんに剣の乙女が微笑みかけ、持っている竜牙刀に触れながら呪文を唱えました。強い魔力の光を放ち始めた刀……≪力与(エンチャント・ウェポン)≫ですね! 感嘆の声を上げている蜥蜴僧侶さん腕に触れ、これはオマケですと言いながら追加の呪文を唱えると……。

 

「お? おお! 何やら拙僧の身体が腕竜(ブラキオン)の如き大きさに!?」

 

「10分で効果が切れてしまいますので、時間にはお気を付けて」

 

「ご助力感謝! では参りますぞ!!」

 

 氷巨人が子供に見えるほどに巨大化した蜥蜴僧侶さんが驚きと歓喜の咆哮を上げ、斜面を滑降する勢いで走り出しました。その足元には裂け目がありますが、身体に比して小さすぎるために落ちる心配はありません。おや? 脳も身体に合わせて巨大化したハズの蜥蜴僧侶さん(サイズ10倍)が、何故かちのうしすうが下がったようにヒャッハーしている姿を羨ましそうに見ていた吸血鬼侍ちゃん。目をキラキラさせながら剣の乙女の袖を引いてます。

 

「あのね、あのね!」

 

「申し訳ありません。≪巨大(ビッグ)≫の呪文に大人になる効果はありませんし、そもそもアンデッドには効果を発揮しませんので……」

 

「そんな~……」

 

 そういう呪文じゃないんだよなぁ……。先刻までの殺気を撒き散らしてした姿と、今のしょぼくれた姿のギャップに頭を抱えていた見習い聖女ちゃんが、すげぇ!かっけぇ!!と叫ぶ語彙力の不足している新米戦士くんの頭を小突き、正気に戻しました。そのまま何やら相談し、吸血鬼侍ちゃんと剣の乙女に声をかけた後に地下通路へと消えて行きました。はて、何をするつもりなんでしょうか? 2人の姿が見えなくなったのを確認して、吸血鬼侍ちゃんも前線に向かうことにしたようです。

 

「それじゃあ、こおりのまじょからはいかをひきはがしてくるね!」

 

「はい、お気を付けて」

 

「旦那さま、がんばってください!」

 

 2人の声援を背に吹雪舞う空へと飛翔する吸血鬼侍ちゃん、視界の悪さをものともせず一直線に向かう先は赤目の雪男の群れ。氷巨人の頭を掴み上げてバックブリーカーを決めている蜥蜴僧侶さんの足元をすり抜けようとしているところへ上空から迫り、抜き放った村正の一太刀で次々と首を刎ねていきます。斃した相手が増えるほど血臭に紛れて補足出来なくなる吸血鬼侍ちゃんを雪男は捉えきれず、ただ屍の山を築いていくばかり。宙を舞う雪が朱に染まるほど流れた血が、その勢いを物語っています。

 

 

 

「チッ、なんだってんだあの蜥蜴野郎!? オマエ達も行け、さっさとアイツを始末しな!!」

 

 業を煮やした氷の魔女が直掩と思しき氷巨人も戦線に投入し始めました! 巨人を千切っては投げ千切っては投げの活躍をしている蜥蜴僧侶さんですが、巨大化した状態での活動時間は長くありません。時間切れになったタイミングで圧殺するつもりなのでしょうが、残念ながら状況は既に詰んでいます。吹きすさぶ風音と戦場の奏でる音楽の中に紛れて、巨大な生物が迫る足音が響いているのですから。そして、天候をひっくり返す緑光の輝きと共に、彼らがやって来ました!!

 

 

「騎兵隊の到着ですわ!!」

 

 暗雲と吹雪を掻き消し、燦々と降り注ぐ陽光に焼かれ悶える雪男や氷巨人を跳ね飛ばしながら停止した巨躯。その背に跨った令嬢剣士さんが会心のドヤ顔をキメています、かわいい。同じく背に跨っていた少年魔術師君は青い顔をしており、不良闇人さんが憐れみを孕んだ顔で彼を介抱しています。酔ったわけでは無さそうですけど、どうしたんでしょう?

 

「クソッ、どんだけバケモンなんだよアイツ。それに、コイツ(女幽鬼)があんな簡単に喰屍鬼(グール)を滅ぼせるなんて、オレ知らなかった……」

 

「まぁその、なんだ。周りがアレ過ぎて気付いてなかったんだと思うけどよ、オマエが従えている生ける風(相棒)ってのはそれだけ怖ろしいモンなんだ。相手が吸血鬼やその眷属だったら、俺よりもオマエのほうが脅威度高いんだぜ? ……そして、その力を以てしても倒せる気がしねぇクソチビのヤバさ。早めに知れて良かったと思っとけ」

 

 ……背中に妖精弓手ちゃんを背負った吸血鬼君主ちゃんがテヘペロしていることから察するに、随分と派手にやったみたいですね。「生ける風」が邪悪なる者に対してどれだけ脅威となるのか、そしてそれを向けようとしている吸血鬼君主ちゃんがどれ程常識から乖離した存在なのか。彼が越えなければならない壁は随分と高いようです。

 

 

 

「……なんなんだ、オマエ達は一体なんなんだよ!?」

 

 配下が白煙を上げて悶える中で、半ば狂乱状態で叫ぶ氷の魔女。その周囲にはキラキラと輝く何かが広がっており、彼女だけが陽光に灼かれていません。あれ、微細な氷の結晶を纏うことで光を遮断しているみたいです。ふむふむ、だから彼女に影が無いんですね!

 

 え、違う? 吸血鬼には元から影が無い? いやでもダブル吸血鬼ちゃんには影が……やっぱりありますよね。ほうほう、太陽神さんが2人の背後(バック)についてるから影が生まれている。なるほど、だから最初にギルドを訪れた時に怪しまれなかったんですね! ……ってまさかのギャグ!? もう、いいんですかそんな理由で。

 

 おっと失礼しました。蜥蜴僧侶さん目掛けて突撃していた氷巨人も体中から白煙を上げて地に伏し、残るは氷の魔女ただ1人。地下通路を抜けて現れた人影が、彼女に終わりを告げるべく天秤の剣を掲げ言い放ちます。

 

「冒険者よ。生まれも育ちも、種族さえも違うけど、同じ目的のために集まった冒険者。氷の魔女、此処がアンタの終着点よ」

 

「ほざくな小娘! (あたし)は悠久の時を支配し、静謐なる世界を統べる吸血鬼(ヴァンパイア)だ!! 決してオマエ達如き定命(モータル)に滅ぼせるような存在では……!?」

 

 憎々し気に見習い聖女ちゃんに向けられていた視線が逸れた先、そこに在ったのは太陽と月の香りが入り混じった2つの小さな人影。異なる衣装に身を包み、同じ顔で興味深げに彼女を見つめる4つの赤い瞳。その輝きに射竦められたように固まる氷の魔女の口から零れた呟きは、絶望の()()()に掻き消され最後まで紡がれることはありませんでした。

 

「ま、まさかオマエ達は……オマエ達も吸血(ヴァンパイ)……ガッ!?

 

「……悪いけど、俺は弱っちい人間だから。まさか卑怯なんて言わないよな?」

 

 氷の魔女を挟んで見習い聖女ちゃんと反対側に回り込んでいた新米戦士くんの、キュルキュルと回る粉砕剣1/6(カシナート)を振り抜きながらの呟き。遮断結界ごと氷の魔女の半身を抉り取った一撃は、結界を失った彼女に容赦なく陽光を浴びせています。青白い身体を炎で焼き焦がされている氷の魔女の頭上から降り注ぐのは、祈りの聖句と共に繰り出された見習い聖女ちゃんによるトドメの一撃です……!

 

「裁きの司、つるぎの君、天秤の者よ、諸力を示し候え!!」

 

 天から降り注ぐ雷光に打ち据えられ、崩れ落ちていく氷の魔女。五体を維持できなくなり灰の山になったところで、最後の維持を見せました!

 

「こんな……こんな所で滅びるものか! (あたし)は……氷の魔女だ!!」

 

 ほんの僅かな氷のヴェールを頼りに、雪風に乗って逃げ去る氷の魔女。限界突破(オーバーキャスト)による追撃の≪聖撃(ホーリー・スマイト)≫を放とうと祈念を始めた見習い聖女ちゃんですが、緊張の糸が切れたのか膝を付いてしまい、駆け寄ってきた新米戦士くんに支えられています。悔し気に氷の魔女が飛び去った方向を睨む見習い聖女ちゃんですが、ダブル吸血鬼ちゃんが近付いて来たのを見てポツリと呟きます。

 

「あのさ、あんまり気乗りしないかもだけど……」

 

「ん、わかってる。あとはまかせて?」

 

「ぼくたちにもつごうがいいから、きにしないで?」

 

 申し訳なさそうな見習い聖女ちゃんの頭を背伸びしながら撫でる2人。どうやら徹底的に()()を利用するつもりのようです。注意を喚起する一行に手を振りながら、陽光に照らされた空へと飛び立ちました。山の向こうへと消える2人を見送った妖精弓手ちゃんが、何処か納得出来ないという表情で剣の乙女の傍に座り込み、空を見上げながら口を開きました。

 

「シルマリルとヘルルイン、あの女吸血鬼を喰うつもりよね……」

 

「ええ。それは恐らく力を取り戻すため、私たちの眷属化を早めるためなのでしょう」

 

「なんていうか、他の女を利用ってところにモヤモヤするあたり、私も随分イカレてるみたい」

 

「……私も、同じ気持ちです」

 

 ……綺麗に晴れ渡った冬空とは違い、恋する乙女の心情はなかなか複雑なようです。2人とも、帰ってきたらちゃんと説明しなきゃですね。

 

 

 


 

 

 

 手を繋いだまま血の匂いを辿って飛翔する2人。辿り着いたのは氷で覆われた洞窟のような場所です。恐らく雪男たちの生活空間であったと思われる凍り付いた()()()()や遺品の散らばる広間を抜け、彼らが通り抜けられない狭い通路の先。最奥の部屋に彼女は待ち構えていました。

 

「ハッ! 吸血鬼(ヴァンパイア)矜持(プライド)を知らぬ新参者(ニオファイト)が、永世者(エルダー)を前にしての礼儀も知らぬとみえる!!」

 

 拠点にあった≪邪な土≫を用いたのでしょう、外見は美しさを取り戻した氷の魔女の悪態に顔を見合わせるダブル吸血鬼ちゃん。彼女が何を言っているのか理解出来てない表情ですねクォレハ……。

 

「れいぎさほう、きいたことある?」

 

「ううん、だれもそんなこといってなかったね」

 

 

 

 

 

 

 

 

>「「みんな、おはなしするまえにぼくをころそうとしてきたもの」」

 

 

 

「ま、待て!? どうやらオマエ達は世界というものを知らないようだ。そ、そうだ、(あたし)がオマエ達に吸血鬼(ヴァンパイア)の社会というものを教えてやろう! 血族の種類や位階ごとの作法、それらを身に着ければ夜の世界で蔑ろにされることも無くなる。どうだ、(あたし)の従僕……いや、同盟者になれ!!」

 

 予想外の反応に慌てて自分を生かす事の有用性をアピールする氷の魔女。真に彼女が永世者(エルダー)ならば、()()()()宿()()()()は2人にとっても貴重なものでしょう。笑みを浮かべながら近付く2人に向かって、安堵の笑みを浮かべながら手の甲を差し出す氷の魔女。なるほど、接吻によって契約は為されるみたいですね。壊れ物を扱うように手を取る2人を満足げに見ていた彼女の顔が恐怖に塗り潰されたのは、僅か数秒後の事でした……。

 

「なっ!? オマエ達何を……があァァァァァ!?

 

 腕を抑え込まれ、両の首筋に食い込む同族の牙の激痛に悲鳴を上げる氷の魔女。その瞳には「何故だ?」という疑問がありありと見て取れます。血を失い徐々に霞む意識の中で、彼女の疑問に答えるように口元を赤に染めた2人の悪鬼が耳元で囁きます。

 

「あのね、きゅうけつきのれいぎとかはいらないの」

 

「ほしいのは、そのみにながれているちしきとけいけん、それだけ」

 

>「「だって、このへんきょうにのこっているきゅうけつきはぼくたちだけだから」」

 

「う……あぁ……ま、まさか、オマエ達……同族殺し(キンスレイヤー)……んむぅ!?」

 

 うわ言の様に呪詛を垂れ流す口を自らのソレで塞ぎ、口内を蹂躙していく吸血鬼君主ちゃん。その精髄一滴すら残さずに貪るような行為は氷の魔女の冷え切った心を犯し、蓄積されていた叡智や経験の全てが吸血鬼君主ちゃんに奪い取られていきます。やがて恍惚とした表情へと変貌した氷の魔女。最後に燃え上がる蠟燭の如く熱を求めてくる彼女に対し、愛しい者にするように2人は冷たい肢体を抱き締め、吸血鬼侍ちゃんがその喉元に最期の口付けを行いました……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう。とってもおいしかったよ。……ごちそうさま」

 

 

 

 

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。 

 

 

 




 ゴミ漁り系ドワーフちゃんのレベルアップ作業を行うので失踪します。

 業務が捗ると更新速度が落ちる悲しみの中、評価やお気に入り登録をしていただきありがとうございます。

 やはり感想や評価をいただきますと、更新速度の向上に良く効きますので、よろしくお願いいたします。

 お読みいただきありがとうございました。
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