ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ 作:夜鳥空
前回、吸血鬼侍ちゃんがママに首ったけになったところから再開です。
突然おねえさま呼びされて混乱状態の半森人夫人さんでしたが、吸血鬼侍ちゃんの目線にイヤらしいものが含まれていないことを察しコホンと咳払い。年長者の威厳を取り繕いながら会話のイニシアティブを握ろうと動き始めました。スルスルと吸血鬼侍ちゃんに近付くとその手を取り、魅力的な笑みを浮かべて話しかけています。
「あらお上手。ですが、もし貴女が娘を娶って頂けるのでしたら……
>「およめさんをもらうとママがセットでついてくる……!?」
「お、お母様!?」
婿入りをして頂くので正確には貴女を我が家に迎え入れる形ですが、と続ける半森人夫人さん。その言葉に薔薇色の未来を想像したのか吸血鬼侍ちゃんの顔は真っ赤に染まっています。あ、隣の令嬢剣士さんもですね。こちらは羞恥と怒りが半々といった具合でしょうか。冗談はこのくらいにして、と吸血鬼侍ちゃんを抱き上げた半森人夫人さんが、改めて令嬢剣士さんに向き直りました。
「どうやら、良くしてもらっているというのは本当みたいですね。お茶の用意をさせますので、こちらへ。……連絡も無しに帰ってきたのには相応の理由があるのでしょう?」
「はい。ご報告したいこととお聞きしたいことがありますので。……抱き心地、如何ですか?」
「……このサイズ感が堪りませんわね。 ねぇ、本気でウチに婿入りする気はおありかしら?」
>「えっと、もうすこしおたがいについてしりあってからのほうがいいかなって」
……うん、気に入られたようで良かったですね! 後はお茶のお供におなかにたまるサンドイッチやスコーンがあれば良いのですが。吸血鬼侍ちゃんの空腹ゲージは最早限界寸前みたいです。
>「……だから、おねえちゃんにはいつもたすけてもらってるの!」
「成程、家業を継がせるために学ばせておいた甲斐があったというものです。……言ったでしょう? 数学は社会に出ても決して無駄にはならないと」
「ええ、痛感しておりますわ。まさか
身振り手振りを交えながら如何に令嬢剣士さんが冒険で活躍していたかを語っている吸血鬼侍ちゃん。卓上のティースタンドに乗っていた食べ物は綺麗さっぱり無くなり、純粋に紅茶を楽しんでいるみたいです。経済に明るい令嬢剣士さんと森人少女ちゃん、人並み以上の知性を持つ女魔法使いちゃんに、普段はアレですが実は器用万能な森人狩人さんのおかげでガバガバお財布な
栄纏神の神官になったことについては若干顔を顰めたものの、冒険者として順調にキャリアを積んでいることと、訓練場関連で契約を独占出来たことで、半森人夫人さんも令嬢剣士さんが冒険者を続けることを認めてくれているみたいです。大切な1人娘なうえ、家宝の宝剣を持って家出同然に出奔した彼女のことはやっぱり心配だったんですねぇ。
栄纏神の神官についても、信仰に忌避感があるのではなく、戦争に駆り出されないかのほうが気になっている模様。栄纏神の神官といえば激戦地に現れる伝説みたいな存在ですからさもありなんという感じです。
「当家にとっても好ましくない婚約を解消するためとはいえ、その手段に冒険者になるという極端な道を選んだときはどうなるかと思いましたが……貴女は幸せを見つけたのですね」
雪山での出会いから訓練場建設にまつわるネゴシエイト、そして『赤い手』に繋がる一連の
>「こんやく、してたの?」
「いえ、落ち目の貴族が当家の経済力を取り込もうとして、一方的に望んでいただけですわ。相手側の男性も正直あまり良い噂を聞かない方でしたし」
あんまりにもしつこいものだから家に迷惑をかけないように出奔しましたの、と言ったところで実家を訪れた要件を思い出した令嬢剣士さん。街中で暴れていた貴族のボンボン連中についてと、彼らを引き渡す際に家の名前を用いたことを半森人夫人さんに伝えたところ……。
「おそらく『火打石団』のことでしょう。
ああ、
社会の闇に潜んでいた混沌の手勢とその協力者は正体を掴まれぬよう慎重に行動していたため、皮肉にも一般市民への影響は最小限に抑えられていました。彼らが消滅した後、空席に座り込んできたのがあの『火打石団』でした。
しかし、混沌の手勢とは違い、彼らは一般市民を害することに何ら躊躇することはありません。自分たちが特権階級であることを悪用し、好き勝手し放題というわけです。
今日2人が衛兵に引き渡した連中も果たしてどこまで裁かれるのかわかったものでは……おや、何やら騒がしくなってきましたね。門のほうで屋敷の警備と何者かが争っているみたいです。「落とし前」だの「貴族の誇りを穢した」なんて叫んでいるような……あ。
「どうやら彼らは貴女の想像以上に愚か者の集まりだったようですね」
「……申し訳ありませんお母様」
うーん、まさかこんなに早く釈放された挙句、屋敷にまで押し掛けてくるとはこの実況神の目を以てしても……アッハイすいません万知神さん、だいたいこうなると思ってました! 窓から様子を窺った吸血鬼侍ちゃんの目には武装した連中に加え、松明を持った者まで見えています。
>「ちょっとあぶないかも。どうする、しまつする?」
「いえ、先ずは言葉でいきましょう。お母様はこちらでお待ちくだ……」
令嬢剣士さんの言葉を手で遮り、スッと立ち上がる半森人夫人さん。いつの間にか部屋に控えていた老家令さんから受け取った上着に袖を通し、2人に向き直りました。
「あの人が不在な今、この家を護るのは妻である
半森人夫人さんの指し示す先、松明の炎に照らされているのは口元から火をチラつかせている
>「しってるやつ?」
「……私と無理矢理結婚しようと画策していた男ですわ。現当主は真っ当な方ですが、あのアホボンは予備の立場を弁えずに放蕩三昧。家からの仕送りを使い果たした後は借金と踏み倒しを繰り返し、挙句の果てにその借金を私と結婚することで返済しようと考える程度には愚物ですの」
辛辣ゥ! 遠めに見ても整った顔立ちをしていますが、屋敷の衛兵さんに突っかかる男の表情は、イケメンを台無しにする醜悪さを醸し出しています。応接間に飛び込んで来た衛兵に頷きを返しつつ、令嬢剣士さんの顔を見た半森人夫人さんが玄関へと歩き出しました。
「あの男個人での因縁ならまだしも、万一家の名前を出してくるようなことがあれば当主代理として
ああ、半森人夫人さんもマトモな話し合いになるとは考えていないんですね……。ひとつ頬を叩き、貴族としての威を纏った彼女を追いかけるように吸血鬼侍ちゃんと令嬢剣士さんも玄関へと向かいました。
「
玄関に姿を現した3人を目敏く見つけた1人の男が、フガフガと通りの悪い声で吸血鬼侍ちゃんを指差しています。あれは顎に一撃貰ってた男ですね。大袈裟に顔中を包帯でグルグル巻きにしてますが、吸血鬼侍ちゃんの鼻には血の匂いが届いていないあたりとっくに奇跡による治療を済ませているのでしょう。他にもギプスや包帯まみれの男たちがいますけど、吸血鬼侍ちゃんもそんな大怪我はさせていないんだよなぁ。
取り巻きの訴えを聞いたアホボン……放蕩貴族はゴミでも見るように吸血鬼侍ちゃんを一瞥した後、粘っこい視線を令嬢剣士さんと半森人夫人さんへ向け、自身に満ち溢れた口調で話し始めました。
「私との婚約を
う わ ぁ。彼の言葉を聞いた3人の腕に鳥肌が立っています。どういう思考回路をしていたらそこまで自分に都合が良いように物事を捉える事が出来るんでしょうか? あ、吸血鬼侍ちゃんは無反応ですが、
言葉を失った3人をよそにペラを回し続ける
「そこの
「話になりませんわね。罪なき民に手を上げていたのはそちらの男たち。配下の統制も取れない器の持ち主が言いそうな台詞ですこと」
令嬢剣士さんが
「内通者探しを妨害するということは、もしや貴家が
「―――っ!?」
まぁ、
口調から推測するに、目の前の
「では、当家の娘が貴家の郎党を傷付けた代償に、貴方は何を望むのですか?」
口を噤んでしまった令嬢剣士さんに代わった半森人夫人さんの問いに対し、ニチャア……という擬音が良く似合う笑みを浮かべた
「貴族の家同士の諍いはそちらも望んではおりませんでしょう。ここは
……え? それ本気で通ると思ってるの???
呆れを通り越してコイツ実は凄いヤツなんじゃないかという3人の表情を見て、決まったなという顔をしている
「ええと、率直に返事をさせていただきますが……」
「ああ勿論だとも! 答えは決まり切っているからね!!」
「「折角ですが、お断りさせていただきます(わ)」」
「なん……だと……!?」
>「ですよね~」
まあ、そうなるな(ZIUN師匠)。
断られるとは露ほども思っていなかったのでしょう、
「馬鹿な、これほどまでに寛容な条件を呑まないなんて何を考えている!?
「いや、貴方のそれは只の寄生であって、決して共存共栄などではありませんわ。それに……」
真顔でツッコミを入れる令嬢剣士さん。目配せした半森人夫人さんが頷くのを見て、脳内通信で目の前の珍獣を吸血鬼君主ちゃんにリアルタイム中継している吸血鬼侍ちゃんを抱き上げました。すぐ近くまで来ているので、早く直接見るよう吸血鬼君主ちゃんを急かしていた彼女の唇に自らのソレをそっと近づけ……。
>「ん? んちゅ……ちゅる……れる……」
「な……な……っ!?」
互いの舌を絡め合い、唇で扱くように吸い、唾液を送り込み合う濃厚な口付け。横で半森人夫人さんが眼前にかざした指の隙間から真っ赤な顔でガン見するほど情熱的な行為を見せつけた令嬢剣士さんが、口元から伸びた銀糸の橋を舐め取りながら言い放ちます。
「私、この子と既にこのような関係になっておりますので。それに……正直に申し上げて、貴方、私の好みじゃありませんもの」
「何を馬鹿なことを! そのようなどこの馬の骨とも判らない小僧などと情交を結ぶなど、貴族として恥ずかしくは……」
「おや、それは
怒鳴り散らす
「おいおい、いつの間にそんな女たらしになったんだ? おちびちゃんは」
どうやら時間稼ぎは上手くいったみたいですね!
「混沌の勢力の掃討作戦を終わらせて息抜きにレース場を見にいったら懐かしい顔を見かけてな。思わず声をかけたら瓜二つの別人……でもなく、なんともややこしい関係じゃないか。そこの俎板ちゃんとも意気投合して3人で酒盛りをしていたら、おちびちゃんが困ってるとこっちの子が言うもんでね。酔い潰れた俎板ちゃんを抱えて飛んできたってわけだ」
ニィッと頬を吊り上げるような笑みを見せる彼女に対し、呆けた顔を向けていた吸血鬼侍ちゃん。おずおずと手を伸ばし、頬に刻まれた深い傷跡を指でなぞりながら再会の言葉を紡ぎました。
>「えっと、ひさしぶり。はがねのおねえちゃん」
「ああ、久しぶり。おちびちゃんもこっちの子も、あの頃と全く変わってないな!」
ガシガシと乱暴に金属製の手で頭を撫でられながらも、吸血鬼侍ちゃんの顔には笑みが浮かんでいます。おそらく陛下の命で首狩りをしていた時期に彼女……『女将軍さん』と知り合っていたのかな。まだ"祈らぬ者"だった吸血鬼侍ちゃんが覚えているということは、よっぽど強く印象に残っていたんでしょうねぇ……。
一頻り再開の喜びを分かち合った後、状況についていけずに立ち呆けていた『火打石団』に向き直る女将軍さん。吸血鬼君主ちゃんを肩車したまま、肉食獣が牙を剥くような笑顔で話し始めました。
「私が東方でゴミ処理をしている間に、王都は随分と平和になったとみえる。お前たちのような悪童が我が物顔で練り歩けるほどになぁ?」
ん? 違うか? と男たちの顔を見渡す姿は正直おっかないです……。引き攣った顔で目を逸らす面々の中で、1人だけ声を張り上げる勇気、あるいは蛮勇の持ち主がいました。
「武官が口を挟むような真似は止めて頂きたい! これは
「ほう、ほうほうほう。成程、
真っ赤な顔で女将軍さんに対し「引っ込んでろ!」と言える胆力は素直に凄いと思いますが、
「聞けばそちらの御令嬢を巡っての争い。元来貴族同士のもめ事は決闘を以て解決するのが習わし。故に貴公とそちらの圃人による
「望むところだ! 私が勝った暁には御令嬢、貴方には私の妻となって頂く。彼女を穢したそこの
「では決闘は3日後の正午。場所は壁外の練兵場を空けておきましょう。くれぐれも
ニヤリと笑う女将軍さんには気付かず、逃げることなど許されぬと吸血鬼侍ちゃんに捨て台詞を吐いて火打石団は去って行きました。ずっと置いてけぼりだった吸血鬼侍ちゃんですが、暫く考え込んだ後に女将軍さんに向かってペコリと頭を下げました。
>「おねえちゃんとママをまきこまないようにはいりょしてくれてありがとう」
「なに、礼を言われるほどのものじゃあない。
「あの、まだママになったわけでは。それに……」
今日もその会議だったからな。サボったけど! と笑う女将軍さん。今日の謁見がキャンセルされたのは火打石団についての緊急会議だったからなんですね。肩に乗せていた吸血鬼君主ちゃんを天高く放り投げてはキャッチしている彼女に向かって、令嬢剣士さんも深く頭を下げています。
「当家へのご配慮、心より感謝致します閣下」
「それこそ礼を言われるようなもんじゃないさ。何せおちびちゃんが負けたらお嬢さんはあの
悪びれもせず
「
「
2人揃って悪い顔してますねぇ。ダブル吸血鬼ちゃんはそんな2人を不思議そうに見てますが、君らは
今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。
「この酔い潰れている方……もしかして星風の
夏に負けるわけにはいかないので失踪します。
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今回も、お読みいただきありがとうございました。