ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 おや?何故かミドルフェイズが終わっていないので初投稿です。



セッションその12-4

 おやぁ? ライブ衣装にバッチリ髪型までキメて、今日は随分気合いが入ってますね! 

 

 みんなが真似した懐かしの完全装備ですけど……今日って何かイベントありました?

 

 え? ちょっと一曲歌ってくる?? 四方世界で???

 

 いま、まぁ素性がバレなければ大丈夫だとは思いますけど、あんまり世界の音楽を塗り替えないでくださいよ?

 

 何せ貴方の曲は文字通り世界を変える力があるんですからね? 成功神(ロックの神)さん!

 

 演奏(セッション)開始前にあった、無貌の神(N子)とリーゼントヘアーの神が交わした会話より―

 

 


 

 

 前回、決闘に向けて情報収集を開始したところから再開です。

 

 一党(パーティ)のみんな、それぞれ自分が得意とする分野、場所に向かって動き出したところですが、さて誰に焦点を当てて見ていきましょうか。ふむ、吸血鬼侍ちゃんは早速決闘の作法であるお辞儀をすることから教えてもらっている様子。

 

 しばらくは地味な絵が続きそうですので……よし! 吸血鬼君主ちゃん、君に決めた!! 女将軍さんとの会話中に出て来た『約束の報酬』とか『2人をお祭りに連れて行く』など気になるワードもありますので、吸血鬼君主ちゃんが何処へ行くのか追いかけてみましょう!

 

 

 

 訓練場や≪転移≫の鏡で王都へ向かうメンバーを見送り、自宅の庭で一生懸命お辞儀をしている吸血鬼侍ちゃんを上空から眺めていた吸血鬼君主ちゃん。ぽかぽか陽気の春の空を飛び、向かったのは辺境のギルド支部です。

 

 依頼の奪い合いは早々に収まり、落ち着きを取り戻したギルドホールをキョロキョロと見渡す吸血鬼君主ちゃん。どうやら誰かを探しているようですが……。

 

「おや、白いほうの頭目(リーダー)ちゃん。今日は依頼をお探しかな?」

 

 お、窓口で書類と格闘していた監督官さんが吸血鬼君主ちゃんを目敏く見つけ、カウンターにCloseの札を置いて外に回ってきました。流れるような動きで吸血鬼君主ちゃんの両脇に手を差し込んでそのまま確保、あっという間に食堂のテーブル席へと運んでしまいました。獣人女給さんに飲み物を頼むと膝上に乗せた吸血鬼君主ちゃんのうなじに顔を埋め、猫吸いならぬ吸血鬼吸いに興じています。

 

「あ゛~すっごい効く~。……うむ、黒いほうの頭目(リーダー)ちゃんから感じる月の香りも捨て難いけど、やっぱ私はキミの持つ太陽の匂いのほうが好きかな~。むふ~!」

 

「おあ~……」

 

 うなじから始まり、喉元やほっぺた、果ては頭頂部まで満遍なく吸引され、呻き声を上げる吸血鬼君主ちゃん。……今さらっと流しそうになりましたけど、監督官さんってば何気ない口調で『月の香り』って言ってませんでした? 決して一般的な単語(ワード)では無いと思うんですけど。……彼女、一体何者なんでしょうね?

 

「ごめんごめん、最近ストレスが溜まっててさ。癒されたかったのよ」

 

 動き出して早々に疲労困憊な吸血鬼君主ちゃんの口元に飲み物を運びつつ、てへぺろアピールの監督官さん。お肌をツヤツヤにしながら言っても説得力に欠けると思うんですが。グラスを持つのとは反対の手で、吸血鬼君主ちゃんの首に下げられた白磁の認識票を弄んでいます。

 

 それで今日はどんな御用?という問いに対し、お返しとばかりに後頭部でお山をポフポフしていた吸血鬼君主ちゃんが、膝上に座ったまま彼女の顔を見上げました。

 

「あのね、ひとをよびにきたの」

 

「おや珍しい。誰を探しているのかな」

 

 監督官さんを見つめていた吸血鬼君主ちゃんの視線が新たに向いた先には、2人の男性の姿がありました。1人は愛用の武器である巨大なだんびらの手入れをしており、もう1人は獣人女給さんから受け取ったチーズを今まさに堪能しようと大口を開けているところです。

 

 

 

「……ん?」

 

「ム?」

 

 その視線に気付き、吸血鬼君主ちゃんの探し人……重戦士さんと蜥蜴僧侶さんが2人を見つめ返しています。お、吸血鬼君主ちゃんの手招きに応じ、その手に相棒と皿を抱えてテーブル席まで来てくれました! 獣人女給さんに飲み物を頼んだ重戦士さんがテーブルにだんびらを立てかけながら着席。その隣に蜥蜴僧侶さんも椅子を退かして床に直接座り込んでいますね。

 

「どうした、なんか依頼か?」

 

「フム、これは珍しい組み合わせですな」

 

 ……言われてみれば確かに。重戦士さんと蜥蜴僧侶さん、どちらも吸血鬼君主ちゃんと仲良しですが、2人いっぺんに頼み事というのは今まで無かった気がしますね。女騎士さんという回復が出来る前衛がパートナーとしている以上、同じように動ける蜥蜴僧侶さんが重戦士さんと組むという事態はあまり考えられません。吸血鬼君主ちゃんの戦闘スタイルから考えても、依頼で求められる同行者は遠距離支援か呪文遣い(スペルスリンガー)でしょうし。

 

 2人ともそれを理解しているのでしょう、何故呼ばれたのか思い当たる節が無い様子です。ですが、吸血鬼君主ちゃんの話を聞くにつれその表情は大きく変化していきます。片方は得心、もう片方は……逃げ道を全て塞がれた獲物のような表情に。

 

 

 

「……だから、()()()()()()()おまつりにきてほしいの。それが()()()()()()()()()()にしはらうほうしゅうのいちぶだから」

 

 ……ん? 2人を連れてというのは眼前の2人のことではない? もしかして『蜥蜴僧侶さん』と『重戦士さん+【女騎士さん&赤ちゃん】』ということでしょうか。おねがいします、と頭を下げる吸血鬼君主ちゃんの対面。2人の表情は実に対照的なものです。

 

「成程。そういう事であれば拙僧は喜んで参加させていただきますぞ」

 

 腕組みしながら何度も頷く蜥蜴僧侶さん。床面の尻尾もご機嫌に揺れています。一方の重戦士さんは……。

 

「うぐぉ……いや、何時かそうしなきゃならん時が来るのは判っていたんだが……おぁぁ……」

 

 脂汗を浮かべ、両手で頭を抱えた状態で悶えています。まぁ、呼び出しの理由が理由ですからねぇ。ここは男らしくバッチリ決めて欲しいところです。暫くのたうち回っていた重戦士さんですが、やがて覚悟を決めたように立ち上がりました。

 

「……アイツに話してくる。明後日の朝、お前らの家に行けば良いんだな?」

 

「うん、そのままおうとまでちょっこうびん。……ごめんね、むりいって」

 

「いや、謝る必要は無ェ。責任はキッチリ果たさねぇとな」

 

 ギルドの玄関へと歩き出した重戦士さんの後を追うように立ち上がった吸血鬼君主ちゃん。くるりと後ろを振り返り、蜥蜴僧侶さんにも明後日一党(パーティ)の自宅まで来てくれるよう頼んでいます。蜥蜴僧侶さんの首肯を見た後走り出した吸血鬼君主ちゃんの背中に監督官さんから質問の声が投げかけられました。

 

「ねぇねぇ、差し支えなければ教えて欲しいんだけど、おっかない依頼人さんに支払う残りの報酬って何なのかな?」

 

「えっとね、それはナイショ。おんなのこどうしのやくそくなの!!」

 

 振り返って2人に向けた表情は悪戯っ子のそれですね。その言葉だけ残して駆け出していった吸血鬼君主ちゃん。外から聞こえる声から察するに、後方から重戦士さんに抱き着いてそのまま飛び始めたのでしょう。徐々に遠くなる重戦士さんの悲鳴をよそに残された2人が顔を見合わせています。

 

「フム。拙僧の記憶が確かならば、君主殿は兎も角あの将軍殿は『おんなのこ』という齢では無かったような……」

 

 只人(ヒューム)の慣習ですかなと首を傾げる蜥蜴僧侶さんを見て、その鼻先にデコピンをかます監督官さん。痛みと呼ぶにはあまりに微細な衝撃に目を白黒させている蜥蜴僧侶さんに、腰に両手を当てた「私、怒ってますの」ポーズの監督官さんがキッパリと言い放ちました。

 

 

 

「そんなこと言っちゃダメだよ~。恋する女性は何歳になっても『おんなのこ』なんだから」

 

 


 

 

「あ、こんにちわ妹様!」

 

「おねえちゃんのだんなさまのいもうとさまだー!」

 

「ちっちゃーい!」

 

「あったかーい!」

 

「おひさまのいいにおーい!」

 

「おあ~……」

 

 はい、ところ変わってここは牧場。早速吸血鬼君主ちゃんが兎人(ササカ)のおちびちゃんたちに囲まれ、おもいっきり揉みくちゃにされています。

 

 乗り物(君主ちゃん)酔いしたのか、若干青い顔の重戦士さんを女騎士さんに預け、吸血鬼君主ちゃんは現在ゴブスレさん夫妻に魔女パイセン、白兎猟兵ちゃんwithおちびちゃんと一緒にお茶をご馳走になっているところです。

 

 突然の訪問に驚いた様子もなく、冬毛の生え変わり時期に突入したおちびちゃんたちの抜け毛塗れになった吸血鬼君主ちゃんを笑いながら綺麗にしてくれている牛飼若奥さん。鎧下に肩に手拭いという農作業姿のゴブスレさんも微かに笑っているように見えます。

 

「今日はどうした。茶を飲みに来ただけというわけでもないだろう。アイツを運んできた事と関係が有るのか?」

 

「んとね、いまかかわってるあんけんでちょっとききたいことがあるの」

 

 白兎猟兵ちゃんが淹れてくれたお茶で喉を湿らせつつ、王都での一件を話す吸血鬼君主ちゃん。火打石団の横暴を聞いて「ひどーい!」とぷんすこしているおちびちゃんたちの横でゴブスレさん夫妻が顔を見合わせています。

 

「うーん……もしかしてこの間来た人も……」

 

「ああ、可能性は有る」

 

 お、何か心当たりがあるのでしょうか? 思い出すように額に手を当てつつ、牛飼若奥さんが話してくれたのは……。

 

 

 

「えっと、うさぎちゃんたちに牧場の仕事を覚えて貰っている時にお客さんが来たんだ。ほら、ウチって畜産以外にもギルドの訓練場に卸す野菜用の農地があるよね? 去年から地母神の神殿のみんなが頑張ってくれたおかげで牧場の農地も広くなったんだけど、消費地が近いし日持ちもしないから利益のことはあんまり考えてなかったんだ」

 

 ふむふむ、主食である麺麭は焼くのに領主の持つ窯を借りないといけないですし、原料の麦も保存が利くので新規参入は難しいでしょう。それよりも新鮮な野菜のほうが需要がありますし、栄養面から見ても有難いですからねぇ。牧場産のベーコンと野菜を挟んだサンドイッチは訓練場でも大人気です。

 

「そのお客さん、たぶん何処かのお貴族様の御用商人だと思うんだけど、その貴族の庇護下に入るようしつこく迫ってきたの。これだけの敷地があれば葡萄や油菜みたいな商品作物が大量生産出来る。今の何倍も儲けられるから、自分たちで食べるぶんは他所から買えば良いだけだって」

 

 もしかして:モノカルチャー経済

 

「たまたま伯父さんが留守だったから困ってたんだけど、彼と英霊さん2人がその人を取り囲んだらすごい勢いで帰っちゃった。……あの時は助かったよ!」

 

「……甘い話には必ず裏がある。そう判断しただけだ」

 

 うーんこの惚気話、おちびちゃんたちも「ごちそうさまー!」の大合唱です。ですが牧場を傘下に加えようとするのは原作(オリジン)の揺り返しでしょうか。

 

 単なる金儲けならまだマシですが、裏に覚知神さんの囁きで擬似先進農法に目覚めた農学者でもいたら塩害・森林伐採・土壌流出等の環境破壊コンボ待ったなしです。牧場の関係者がみんな利益にあまり興味がないことが功を奏したといえるでしょう。

 

「……調査の必要があるな。スマンが少し出掛ける」

 

 おや、考え込んでいたゴブスレさんが立ち上がり、最近ご無沙汰の複合素材鎧(コンポジットアーマー)に着替えてきました。金貨が入ってると思しき袋を懐にしまい、暗視付きの兜越しに吸血鬼君主ちゃんへと向き直ります。

 

「決闘当日は同行してやれんが今日明日は問題ない。情報屋を当たってみるが、お前も来るか?」

 

「いく!」

 

 ほほう、どうやら辺境の街のならず者の集まり(ローグ・ギルド)へ行くつもりのようですね。あそこなら牧場に干渉してきた人物が何者であるか判るかも。

 

 陛下の駒だった時代にスパイ狩りを行っていた(ウェットワーカーだった)吸血鬼侍ちゃんなら繋がりを持っている可能性はありますが、ぽわぽわちのうしすうの吸血鬼君主ちゃんはそういったコネが全く無い状態です。この先影の世界に顔を出す切っ掛けになるかもしれませんし、是非同行させてもらいましょう!

 

 お、どうやら重戦士さんと女騎士さんの話し合いも決着がついたみたいですね。疲労困憊の重戦士さんに対して呵々と笑い声を上げる女騎士さん、抱きかかえている娘さんもそれにつられて満面の笑みを浮かべています。隣で話を聞いていた魔女パイセンも声を出さずに笑っていますね。

 

 では明後日この子と一緒に行くからな!と声を上げる女騎士さんに手を振り、ゴブスレさんと重戦士さんを抱えて飛び立つ吸血鬼君主ちゃん。飛行能力が向上したのか以前よりも安定性が増したように思えます。これなら2人が酔うことも……あんまりないでしょう! 3人のママと4人の赤ちゃん、そしてたくさんのうさぎさんに見送られながら辺境の街へと飛んで行くのでした……。

 

 


 

 

「しっかし、忍びの旦那に連れられてからこっち一度も顔を出さなかったお方が、まさか嫁さんでも無ェ()同伴で来るたァ驚きですぜ」

 

「戦友だ。わかっているなら言わなくていい」

 

 複雑な符丁と手順が入り混じった挨拶の後、肩を竦めながら灰色頭巾の店主がからかうように笑い、対するゴブスレさんからは憮然とした声。ギルドで重戦士さんと別れてから2人が訪れた場所は、雑貨屋の裏手から繋がったもぐり酒場(スピークイージー)です。

 

 小気味よく走る管弦楽器のフレーズと、それに妖艶に絡みつくピアノの旋律。心躍る演奏が響く店内の注目は、店主とともにやって来た2人へと集中しています。

 

「ほわぁ~……きれいなしっぽだ……」

 

 吸血鬼君主ちゃんがカウンターでグラスを磨くバーテンダーの人魚(バーメイド)さんの尻尾に夢中になっている間にゴブスレさんは店主と交渉を進め、牧場を傘下に入れようと話を持ち掛けてきた人物の素性と何処の紐付きであるかを聞き出しているみたいですね。

 

 

 

「ありャ王都で貴族連中と商いをしている商家の人間ですわ。多少後ろ暗いところはありますが、そのくらいの度量が無きャ生き馬の目を引っこ抜くような連中と渡り合えねェってモンでさぁ」

 

「そんな男が何故この辺境まで赴き、牧場を傘下に収めようとする」

 

 ゴブスレさんの問いをまぁまぁと手で制し、テーブルの上を滑ってきた2つのグラスを手に取り、片方をゴブスレさんに渡しつつ口を付ける店主。続けてバーメイドさんは苦笑しながら、キラキラと期待で満ちた目で見つめてくる吸血鬼君主ちゃんの前にもグラスを滑らせてます。

 

「金髪の陛下の治世のもと徐々に力を失っているとはいえ、未だ政治と経済の多くを握っているのは門閥貴族。蜜月の関係でいるためにゃあ予備(スペア)を飼殺す遊興費くらい必要経費と割り切って当然ってもんです。ただ、飼われている連中(火打石団)がそれを理解して無かったのが誤算なだけで」

 

 あー、遊ぶ金が足りなくて商人を強請ってたんですねわかります。友達料の一部として金銭を都合していたのを予備(スペア)が勘違いして、どんどん図に乗って来た。拒否しようにもそれまで裏社会を牛耳っていた連中と違って加減を知らず、領地に従属している農奴に振るうような気安さで暴力という手段に出てくると。

 

「表向きは有志による王都の治安維持を謳っているいるもんだから当主連中も強くは言えず、報復を恐れて官憲も及び腰。なんとも平和な御時勢なこって」

 

 

 

 やれやれと肩を竦める店主と、いらだちを抑えるようにグラスを呷るゴブスレさん。丹精込めて作った作物が愚かな貴族の遊興費になるところだったと言われたら誰だって同じことをするでしょう。微かに真紅の光を帯びている兜奥の瞳を見て、そうカッカしなさんなと店主が笑っています。

 

「先生が何もせずとも、連中の運命はもう決まり切ってますわ。あの嬢ちゃん……特に黒いほうが動いてるなら猶更に」

 

 店主の顎で示す先。心に染み入るような音楽から一変、心を鷲掴みにする歌を披露する舞台(ステージ)に夢中になっている吸血鬼君主ちゃんの後姿がありました。

 

 

 

 牛革(レザー)ジャケットに揃いのズボン、特徴的な髪型(リーゼント)の男性がギターを片手に歌いながら、足の動きに合わせて腰を揺らし、上半身を躍動させる見事なパフォーマンスを披露。それまで静かに演奏を楽しんでいた仕掛け人(ランナー)たちも彼の動きを真似して皆ステップを踏んでいます。近くにある2人掛のテーブル席では、軍帽を被った青年が同席している赤毛の森人(エルフ)の少女が歌い手の男性に向かって黄色い歓声をあげているのを苦虫を嚙み潰したような顔で見てますね。

 

「あの娘は如何かわかりやせんが、黒いほうの嬢ちゃんは間違いなく影を走る住人(こっちがわ)でさぁ。()()()()()を疎む貴族に雇われた仕掛け人(ランナー)が、()()()の刃によっていったい何人王都の路地に消えていったことやら」

 

 頭巾の下から覗く口元を歪ませながら嗤う店主を静かに見つめるゴブスレさん。フン、と鼻を鳴らし、攻撃色の失せた瞳を吸血鬼君主ちゃんへと向け、断定的な口調で呟くのは……。

 

 

 

「知らんな。どちらのアイツも、俺にとっては同じ冒険者で、隣に並ぶ戦友で、背を預けられる親友だ。アイツがそれを拒まない限り、な」

 

 

 ゴブスレさん渾身のデレに思わず真顔になった店主、やがて肩を震わせながら彼と同じように舞台(ステージ)へと向き直りました。ちょうど演奏が終わったのか、眼前で楽しそうにステップを踏んでいた吸血鬼君主ちゃんを歌い手の男性(ロックの神様)が抱え上げ、舞台へと引っ張り上げています。

 

 突然の事態に目を白黒させていた吸血鬼君主ちゃんでしたが、バンドメンバーが演奏を始めると踏ん切りがついたのか、静かに客席のほうへ向き直りました。

 

 静かなピアノの独奏から始まり、大空を鳥が飛ぶように広がっていく主旋律(メロディー)。吸血鬼君主ちゃんから発せられたのは、その小さな見た目と違わぬ透き通るようなソプラノの、その見た目からは想像出来ない程力強い歌声です。

 

 

 

 それは、冒険者(アドベンチャラー)仕掛け人(ランナー)なら誰もが知っている歌。

 

 時を超え、世界を超え、永遠に戦い続ける戦士の物語。

 

 その姿はワタリガラス(レイヴン)山猫(リンクス)、時には玉葱(カタリナ)と様々であり、その立ち位置も傭兵や騎士、はたまた国を統べる者(大統領)であったりと、てんでバラバラなものばかり。

 

 栄纏神(えいてんしん)の使徒とも異なる、四方世界ではない何処か違う場所から伝わった奇妙な伝説。

 

 己が魂の安息の場所を求め、数多の戦場を彷徨った英雄の歌とされているものです。

 

 

 

 先ほどまで足を踏み鳴らしていた観客も目を閉じて歌に聞き入り、ちょっと不機嫌だった軍帽の青年も、隣の相棒と一緒に吸血鬼君主ちゃんの歌声に合わせて「とぅーとぅーとぅーとぅとぅー」と口ずさんでいますね。

 

「――こんな外れ(モン)が集まる溜まり場(ネスト)で、()()を歌い上げる気概のある嬢ちゃんだ。噂にゃ耳にしておりましたが、やっぱ只者(タダモン)理由(ワケ)ありませんわな……」

 

 

 

 店主の呟きが旋律に溶け込んだところで一旦視点を切り替えて、ほかのみんなの行動結果を確認してみましょう!

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 


 

 

 いやぁ、まさか吸血鬼君主ちゃんが歌を歌えるとは思いませんでしたよ!

 

 アレ仕込んだのは万知神さんですか? え、違う? じゃあ無貌の神(N子)さん……でもない。

 

 うーむ、となると後は……あ、まさか。

 

 (太陽神さんが玉葱を並べている姿を見て真実に気付いた探索者はSANチェック(0/1d3)です)

 




 クライマックスフェイズが遠いので失踪します。

 お気に入りや評価、感想がとても励みになっております。

 なかなか進まないお話しですが、これからもお付き合いいただければ幸いです。

 お読みいただきありがとうございました。
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