ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 どうして想定外の事態(イレギュラー)は発生するのかわからないので初投稿です。



セッションその12-6

 前回、ヒーローが惨状(誤字に非ず)したところから再開です。

 

 大見得を切った義眼の宰相さん布鎧豚男(着ぐるみ)に会場の雰囲気が呑まれた決戦の場、最初に反応したのはやはりというべきか死灰神の信徒(アホボン)ですね。怖気付いた取り巻き連中に発破をかけ、悪い意味で一番目立つ布鎧豚男(着ぐるみ)へと嗾けてきましたが……。

 

「フン、少し奇抜な姿をすれば貴様らのような愚か者がとびついてくる……」

 

 やれやれと肩を竦めながら向かってくる一団に向かって悠然と歩きだし、彼らが振るう剣へと無防備に進んでいきますが……当たりません! その見た目からは想像も出来ないほど軽やかなステップによって相手を幻惑、紙一重のところで躱し続けています!! それどころかすれ違う敵の鎧が砕け、次々と倒れ伏していくではありませんか!

 

「クソ、何だコイツ! 変な動きしやがっ……グギャア!?

 

「まったく、何所を見ている?」

 

 シャウッ!という掛け声とともに繰り出される拳撃。胸の前で交差させた両腕を目にも止まらぬ速さで振るい、蹄の先に生みだした真空の刃で相手の二の腕や腿を切り裂いています! 左右にぶりぶり揺れるケツの動きも相まって、その動きはさながら蒼天を舞う白鳥のような……すいません、やっぱクリーチャーにしか見えませんね。

 

 

 

「フム、なかなかのカラテ。あの御仁相当な遣い手のようですな」

 

「なぁ、やっぱ俺ァ帰ってもいいか? ダメか? ダメだよなぁ……」

 

 お、連中が縦横無尽に練兵場を駆け回る布鎧豚男(着ぐるみ)へ夢中になっている間に、観客席から蜥蜴僧侶さんと重戦士が来てくれましたね! 感嘆の声を上げる蜥蜴僧侶さんとは対照的に死んだ目でトンチキ空間を見つめる重戦士さん。残念ながら逃げ場はありませんよ?

 

 さて、貴族の決闘において今回のように勝敗に納得がいかず、片方が勝負をぶち壊しにかかった場合ですが、相手側も同数を動員することが慣例として認められているそうです。死灰神の信徒(アホボン)の号令で練兵場に乱入してきた取り巻きの人数はおよそ30、つまり一党(パーティ)やその関係者が全員参戦しても十分お釣りが出るほどなんですが……。

 

「まぁここは男子に任せて私たちは観戦してましょ。あ、ヘルルインも行っちゃダメよ? 一応重傷ってコトになってるんだから」

 

 観客席の最前列に被り付きになっている妖精弓手ちゃんの言葉通り、女性陣は全員(けん)に回っています。あまり味方が多くても動きづらいですし、節操の無い連中が女の子に傷でも付けたらその場で血風呂(ブラッドバス)待ったなしですからねぇ。観客席に被害が出た時の救助役という面もありますので、女将軍さんからリクエストのあった男子2人のみ参戦と相成りました。

 

 

 

「来たか、待っていたぞ2人とも。女を待たせるとは感心せんな?」

 

「これはしたり。さすれば遅参の責は戦場(いくさば)での功にて雪がせていただきたく」

 

 からかうような口調の女将軍さんに合わせ、畏まった返事を返す蜥蜴僧侶さん。2人の間に流れる空気に重戦士さんが居心地悪そうにだんびらを抱え直しています。目敏く新たな参戦者に気付いた火打石団の連中が、背を向けている女将軍さん目掛けて剣を振りかざしてきました!

 

「そんな虚仮脅しの鎧、バラバラにして鋳潰してやる!」

 

「では試してみるかい? 虚仮脅しかどうかを……な!」

 

 振り向きざまに腰に佩いた太刀の柄を握り、抜き放つ女将軍さん。鯉口が切られ、顔を覗かせたのは膨大な熱を秘めた実体無き光剣(スパッド)です! 交差した剣がまるで飴細工のように融かされ呆然とした様子の男でしたが、次の瞬間には鋼鉄製の籠手(ガントレット)ごと腕を落とされ、絶叫を上げながらのたうち回っています。その傷口はブスブスと音を立てるほどの高熱で焼かれたために、一滴の血も流れていません。あんぐりと口を開けてその様子を眺めていた男子2人に向き直ると、命令することに慣れた者特有の威圧感を乗せた声で女将軍さんは命令を下します……。

 

「決して殺すな。だが痛みは与えろ。逃亡阻止と従軍神官の練習相手を兼ねて、腕や足の1本は奪え。……返事はどうした?」

 

「「イエスマム!!」」

 

 跳ねるような勢いで布鎧豚男(着ぐるみ)のほうへと駆けて行く2人。突然の乱入者に浮足立った火打石団の連中に突撃し、固く握った拳やだんびらの腹で次々に相手を戦闘不能にしていますね! それを見た布鎧豚男(着ぐるみ)は戦いの舞台を空中へと移し、取り巻きの頭を足場にしながら華麗なブーンを決めています。観客席まで吹っ飛んだ取り巻きは待ち構えていた蟲人英雄さんと聖人尼僧さんが捕獲、死なない程度に治療を施してくれているようです。

 

 

 

 さて、金髪の陛下金剛石の騎士(K・O・D)の肩にブッピガァン!!していた吸血鬼君主ちゃんですが……おや、2人とも火打石団の連中に取り囲まれちゃってますね。流石に悪名高い噂の金剛石の騎士を前にして、死灰神の信徒(アホボン)も慎重になっている様子。ジリジリと包囲を狭めてくる相手に対し、腕組みをしたポーズを維持していた金剛石の騎士が頭上の吸血鬼君主ちゃんに声をかけました。

 

「卿もそろそろ働いたら如何かね? 余は枢機卿に剣を抜くなと止められているのでな」

 

「は~い。これはおしおき、ころしちゃダメなんだよね?」

 

「うむ、この国は法治国家である以上、法に則り裁きを下さねばならん。たとえ相手がどんな屑であろうとな」

 

「狂人がほざくな! 貴族こそが国の中枢、民など貴族の所有物に過ぎん! 我らに使()()()()ことを光栄に思うことこそあれ、逆らうなど烏滸がましいにも程があるわ!!」

 

 死灰神の精神汚染を受けてもなお保つのは死灰神の信徒(アホボン)が信奉する貴族の誇りとやら……。彼の強靭な精神を賞賛すべきか、心根まで染み付いた歪んだプライドを嗤うべきか。どちらにせよ確かなのは、吸血鬼君主ちゃんに対して最高値で喧嘩を売ったことでしょう。

 

 怒りによって煌々と輝く瞳を前髪の奥から覗かせたまま、胸元で合わせていた両手を勢いよく左右に広げる吸血鬼君主ちゃん。その軌跡から現れるのは、宙に浮かぶヒヒイロカネ製の歪んだ球体(勾玉)です。クルクルと衛星のように吸血鬼君主ちゃんの周囲を旋回する数は全部で6つ。徐々に速度を上げ、まるで光帯のようにも見える輪から射出された光弾が……。

 

ていくざっとゆーふぃーんど(これでもくらえ)!!」

 

 ――2人を包囲している男たちへと襲い掛かりました!

 

 

 

「ガッ……!?」

 

「ま、曲がる!?」

 

「クソ、何で追いかけて来るんだ……グェ!?」

 

 辛うじて視認できる程度の速度で宙を舞う光弾。初撃(プライマリー)で6人が鎖骨や膝を砕かれて地に伏し、追撃(セカンダリー)が残った敵に喰らいつかんと猟犬のように追い立てています。取り巻きたちも光弾を打ち落とそうと必死に得物を振り回していますが、その悉くを掻い潜り男たちを戦闘不能にしていきます。取り巻きが櫛の歯が欠けたように倒れたのを呆然と眺める死灰神の信徒(アホボン)に対し、金剛石の騎士がまだ続けるかねと尋ねますが……。

 

「まだだ、もうすぐこの場に王都中の同志が集まってくる! キャプテン率いる別動隊さえ来れば貴様らなぞ……ッ!!」

 

 なるほど、最初からこちらを逃がすつもりは無かったみたいですね。貴族の権威を民衆に恐怖とともに知らしめんとする行為、上手くいっていたら王都の勢力図が一気に塗り替えられたかもしれませんね。辛うじて平静を保ちながら火打石団を取り仕切る首魁の称号を口に出す死灰神の信徒(アホボン)に対し、周囲の獲物を全て打ち倒した光弾をしまいながら、吸血鬼君主ちゃんが絶望の一言を告げました。

 

「こないよ」

 

「……何?」

 

「ここにはもうだれもたすけにこないよ。みんなつかまってるから」

 

「ハッ! 言うことに事欠いてそのような戯言を! 我ら貴族に剣を向ける愚か者がこの王都にいるわけが……」

 

 吸血鬼君主ちゃんの嘘と断じ嘲笑を浴びせる死灰神の信徒(アホボン)。確かに報復を恐れずに剣を向ける気概のある人物はそう多くないでしょう。そう、()()()()

 

 

 

「――ちぼしんさまとたいようしんさま」

 

「……?」

 

「おまえたちがけんかをうったのは、このおうこくでいちばんこわいひとたちのところだよ。わかっててやったんでしょ?」

 

「何を馬鹿なことを。所詮弱者と農民が縋る力無き神殿ではないか! 坊主共は表社会に口を出さずただ祈っておれば良いのだ!! 我が正義を邪魔するというのならば、奴らも悪を焼き払うための薪として聖なる炎にくべてやろう!!」

 

 首元の聖印(シンボル)を握りしめながら哄笑する彼の目は完全に己が正義に酔っています。口では幾ら言っても通じないと理解したのでしょう。金剛石の騎士がパチリと指を鳴らすと、観客席の銀髪侍女さんが懐から宝玉のようなものを取り出しました。膨大な魔力を秘めたそれを見て、隣にいた吸血鬼侍ちゃんと女魔法使いちゃんが目を輝かせています。銀髪侍女さんが合言葉(キーワード)を唱えると宝玉から光が溢れ、練兵場の空に何かを映し始めました!

 

「ねぇねぇ、それはなぁに?」

 

「これは離れた場所の様子を映し出す呪物だよ。そら、クッキリと見えてきただろう?」

 

「うわ、あの連中ってもしかして……」

 

 映像を見た妖精弓手ちゃんの顔が面白いように引き攣っていくのが見て取れます。まぁ見た目のインパクトが強い方々ですからねぇ。上空に浮かぶ映像を見た観客たちの間からも、戸惑いと感嘆の声が上がり始めました。

 

「なぁ、あの方々って……」

 

「ああ、あの()()()()()()()()()()()、間違いねえ!」

 

「それに周りにいる()()()()を被った神官様もだ!!」

 

 

 

「馬鹿な、何故あの連中が王都にいる? 辺境へ出向いていたのでは無かったのか!?」

 

 ありえないと叫ぶ死灰神の信徒(アホボン)を憐れみの目で眺める金剛石の騎士。まさか空を飛んで王都に駆け付けたなんて言っても信じられないでしょうしねぇ……。広場と思われる場所にはボコボコにされた火打石団の連中が積み上げられ、一番下には性別や年齢すら判別できないほど顔を腫れ上がらせた人物が下敷きになっています。おそらくあれが「キャプテン」を名乗る貴族なのでしょう。

 

 巡回説教者さんと核武僧さんの一団によって期待していた応援が絶たれ、まだ立っていた残り少ない取り巻きたちも戦意を喪失したみたいです。得物を地面に放り捨てながら必死の形相で何かを訴え始めているようですが……。

 

「ま、待て! 俺は子爵家の次男だ! 俺に何かあったら家が黙っちゃいないぞ!?」

 

「そうだ! 我らは王国の藩屏、我らを害するということは王国に害を為すことと同義だぞ!!」

 

 おおう……。この期に及んで家の名に縋るとかどんだけ必死なんですかねぇ。腕や足を押さえながら引き攣った笑みを浮かべ声高に特権を主張する連中に注がれている観客の視線は冷え切っています。今まで散々好き勝手しておいてその罪から逃げようというのは、ちょっと虫が良すぎる話なわけで。

 

「そうだ、卿らに伝えねばならん事があったな。既に卿らは各家の当主より縁を切られている。『我が家にそのような人物は存在しない』という花押入りの証文がここにあるわけでな?」

 

 金剛石の騎士さんの言葉を受けて、吸血鬼君主ちゃんがインベントリーから取り出したのは上質な紙の束。ばら撒かれたそれを手にした取り巻きからは信じられないという声が上がっています。嘘だ、こんなもの偽物だと呻く姿に嘆息を零し、金剛石の騎士がその兜を外しました。

 

「まぁ、そのような証文が無くとも余が貴様らを貴族として認める筈が無かろう。……王国の血肉たる民を貪り、国家の命を掠めとる寄生虫共が!

 

 獅子の如き一喝によって、今度こそ絶望に崩れ落ちる火打石団の構成員たち。どうやら抵抗は無駄であると悟ったようですね。あとは連中を拘束して水の街へ送る手筈を……おや? 火打石団本体が壊滅した映像を見てから沈黙していた死灰神の信徒(アホボン)の様子が……。

 

 

 

「成程、どうやら貴女とは今世では結ばれぬということか」

 

「ならば、今更生にしがみついたところで何になるというもの」

 

 ……あ、なんか嫌な予感が。

 

「我らの愛は不滅! 一時の死が2人を別つとも、来世で再び結ばれるは必然!!」

 

「ご安心召されよ。貴女の柔らかき肢体は欠片も残さず喰らい、我らは一つとなるのですからな!」

 

 令嬢剣士さんを見つめる死灰神の信徒(アホボン)の瞳はどろりと蕩け、その身体からはチリチリと火の粉のような魔力が溢れ出しています。既に戦意を喪失した取り巻きたちからも立ち上がるソレは、紛れもなく死灰神の奇跡の前兆……ッ!

 

 

 

「お前もっ! お前もっ!! お前もっ!!!」

 

 

 

「我が愛の為に死ねっ!」

 

 

 

 

 

 彼の叫び声と同時に身体の内から吹き出した炎によって燃える取り巻きたち。その火を消さんと地面を転がりまわりますが、勢いは衰えることなく彼らの生命を燃やし尽くしていきます。やがて僅かな灰を残し、奪われた血肉と魂は死灰神の信徒(アホボン)へと集まっていき……。

 

 

 

「AWOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOON!!」

 

 

 

 見上げるような巨躯、血の色に染まった瞳、とめどなく涎を溢れさせる裂けるように広がった口、剛毛で覆われた逞しい腕。歪んだ愛に酔い獣に堕ちた1人の男(灰に塗れた獣)の姿が、そこにはありました。

 

 

 

「なんて悍ましい姿。あれが愛に狂った者の成れの果てとでも……ちょ、ちょっと頭目(リーダー)。何処へ行くんですの!?」

 

 おや、令嬢剣士さんに抱えられていた吸血鬼侍ちゃんが腕の間から抜け出してますね。背中から貫通していた鎧貫きを引っこ抜き、地面に投げ捨てながら睨む先は灰に塗れた獣。その瞳に浮かんでいるのは憐れみでしょうか。

 

「あれは、このよのことわりからはずれた()()()。あいてできるのはおなじ()()()()だけ」

 

 視線の先では蜥蜴僧侶さんが剣を抜き放とうとする陛下を抱え、女将軍さんと重戦士さんが牽制しつつ観客席へと後退してきています。布鎧豚男(着ぐるみ)こと義眼の宰相さんも対面の蟲人英雄さんと聖人尼僧さんのほうへ脱出しており、戦いの場に残っているのは、大小2つの人外の姿のみ。

 

「だから、あれをたおすのは()()()()のやくめ。ちょっといってくるね!」

 

 そう言い残し駆け出す吸血鬼侍ちゃん。呼び止めようとする令嬢剣士さんを制したのは、宝玉をしまい込んだ銀髪侍女さんです。今にも飛び出していきそうな彼女の肩に手をやり、淡々と言葉を紡いでいきます。

 

「あの子の言う通り、ここから先は逸脱者の戦場だよ。死の迷宮に挑戦していた(あの頃)の陛下なら喰らい付けたかもかもしれないけど、戦いの場を政治へと移した今じゃ無理だろうね」

 

 なおも戦場へ向かおうとして赤毛の枢機卿に絞め落とされた陛下を眺めている銀髪侍女さん。悔し気に唇を噛み締める令嬢剣士さんの頭を撫でながら、だが君たちに出来ること、君たちがやらねばならないことがあるじゃないかと一党(パーティ)の面々に語る姿からは、何処か定命の存在から外れているような不思議な雰囲気が感じられます。

 

「そうね、私たちにはやらなきゃならないことがあるわ」

 

 女魔法使いちゃんの声に同意するように頷く面々。口に出さずとも考えていることはみんな同じなのでしょう。2つの小さな刃が獣を圧倒する光景を見ながら、僅かな怒りと、それ以上の母性に満ちた声で女魔法使いちゃんが全員の気持ちを代弁するように呟きます……。

 

 

 

「2人がまた無茶したのを叱ることと、ちゃんと帰ってきたのを褒めてあげること。――それが、あの子たちを怪物にしないために私たちが望んだ、寄る辺としての役目だものね」

 

 


 

 

「かたいね~」

 

「ごうもうだね~」

 

 振り回される剛腕を掻い潜りながら言葉を交わすダブル吸血鬼ちゃん。どうやら灰に塗れた獣の分厚い防護点に阻まれ、なかなかダメージを与えられていないみたいです。ヒヒイロカネの剣(天叢雲)と村正であれば斬り込めはするようですが……うーん、傷口が綺麗すぎるためか目に見える速度で再生し、僅かに動きを阻害する程度の効果しかありません。

 

 本来であれば獣が忌み嫌う炎属性である血刀で焼くのが正当解なんでしょうが、死灰神(クソッタレ)がメタを張っているのか炎耐性が高く体表に火すら点きません。腹立たしいことこの上ないですが、『灰に塗れた獣』という名称は伊達ではないようです。

 

「AWOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOON!!」

 

「おっとっと」

 

「あぶないなぁ」

 

 オマケに凶悪な形をした鉤爪は魔法付与(エンチャント)されているらしく、吸血鬼侍ちゃんが来る前に掠っていた吸血鬼君主ちゃんの傷がまだ残っています。流石に不死殺しまでは無いみたいですが、サイズ的に直撃を喰らうのは不味そうですね……。

 

 さて、如何したものでしょうか……っと、2人が戦いながら遠くを見ています。視線の先にいるのは……蟲人英雄さんですね。2人を見つめる真っ赤な眼に導きの光を見たのでしょうか、横薙ぎの剛腕を大きく跳躍して回避し距離を取った2人が頷き合い何事か決心したみたいです。

 

「はじめてのきょうどうさぎょうで……」

 

「ぶっつけほんばんだけど……」

 

「「ふたりなら、だいじょうぶ!!」」

 

 村正を鞘に納め、反対側から暗月の剣(サタンサーベル)を抜く吸血鬼侍ちゃん。吸血鬼君主ちゃんはおへその下に手を宛がい、何かを引き抜くようなポーズを……あ、おなかから離れた手には光り輝く(ケイン)が握られてます! 2本の神器から迸る魔力は獣の生存本能が警鐘を鳴らすには十分過ぎる存在感を放ち、恐怖に駆られた獣が2人を握り潰さんと両腕を振りかざして突進してきました!!

 

 

 

「ぼくがとっぱこうをひらいて……!」

 

 突き込まれた腕を紙一重で躱し、相手の勢いを利用しカウンター気味に叩き込まれた一撃。分厚い毛皮と筋肉を切り裂き、傷口からは激しく鼓動する心臓が顔を覗かせました! 

 傷口を押さえようとする反対側の腕には無数の触手が絡みつき、傷と腕の拘束による痛みによって、獣は悲鳴にも似た咆哮を上げています!! それでも再生能力に翳りは無いのか、徐々に傷口は狭まっていきますが……。

 

「ぼくがぜんりょくをたたきこむ!!」

 

 脈動する心臓目掛け、身体ごと突っ込む勢いで(ケイン)を突き刺す吸血鬼君主ちゃん。吹き出す血液が吸血鬼君主ちゃんの身体に付着する前に蒸発するほどの膨大な熱を孕んだ一撃が、身体の内部から獣を焼き焦がしていきます。星の力(核融合炉)から直接流し込まれるエネルギーに耐え切れず、獣の身体のあちこちから光が溢れ出しました……!!

 

「ばいばい、ありえたかもしれないぼくたちのみらい……」

 

「さよなら、あいをしらなかったぼくたちのかのうせい……」

 

「「――ヲヤスミ、ケダモノ……」」

 

 

 

 愛を知らぬ獣が崩れ去り、灰の山となったのを見て沸き立つ練兵場。果たして灰に塗れた獣に2人の言葉は届いたのでしょうか? ……おっと、灰被り(シンデレラ)となったダブル吸血鬼ちゃんのもとへと、一党(パーティ)のみんなや集まってくれた面々が駆け寄って来てくれました! 吸血鬼君主ちゃんが両腕を広げてハグ待ちポーズをしているところに、先陣を切って走ってきた妖精弓手ちゃんが……。

 

 

 

「そこの金ぴか騎士と昨晩ナニしてたのよシルマリル!!」

 

「へぷっ!?」

 

 見事にタックルを決められ、2000歳児ごと再び灰塗れになっちゃってますね……。

 

 


 

 

「……えっと、じゃあ一晩かけて全身の傷や欠損を癒してたの? 2人で仲良くえっちなことしてたんじゃなくて???」

 

「うん。ほら、まえとちがって≪そせい(リザレクション)≫がとなえられるようになったから。けっとうのばをよういしてもらうほうしゅうとして、はがねのおねえちゃんにおねがいされてたの」

 

 前後に激しく揺さぶられて半ばグロッキーになりながらも事の次第を説明する吸血鬼君主ちゃん。向こうでは兜を脱いだ女将軍さんが涼やかな()()をみんなに披露しています。両の籠手を外せば鍛えられながらも女性らしいしなやかさを保つ両腕があり、軽々と跳躍する姿から両脚も復活していることが見て取れますね!

 

 女騎士さんから姪っ子となる赤ちゃんを受け取り、優しい手つきで頭を撫でる女将軍さん。まさか「可愛い姪っ子を、自分の手で抱いてやりたい」というのが≪蘇生(リザレクション)≫の理由だったとは。一般に噂される女傑らしさとはかけ離れた姿ではありますが、とても尊みに溢れてますねぇ……。

 

 ん、でもあの時確か豊穣の霊薬も持ってましたよね吸血鬼君主ちゃん。一晩しっぽりコースで無かったということは、アレには別の使い道が? 同じ疑問に到達した妖精弓手ちゃんが訪ねると、悪戯が成功したような顔で吸血鬼君主ちゃんが笑っています。

 

「えへへ、あれはね~……」

 

 ちっちゃな指で指し示す先には暴れたりないのか布鎧豚男(着ぐるみ)と手四つをしている蜥蜴僧侶さん。ウェイト差をものともせず互角に渡り合っている義眼の宰相さんに戦慄を禁じ得ないのですが、そっちは横に置いておきましょう。姪っ子を女騎士さんの腕の中へ帰し、あんぐりと口を開けた妹夫婦にウインクを飛ばした女将軍さんが蜥蜴僧侶さんへと歩み寄って行きます。その手には件の豊穣の霊薬が……あ、もしかして!?

 

 

 

「なぁ竜司祭殿、おちびちゃんから聞いたんだが……なんでも『鱗があったら拙僧の子を産んで貰いたい』な~んて言ってたらしいじゃないか……?」

 

 突如背後から囁かれた猫撫で声に尻尾をビクンと跳ねさせながら振り向く蜥蜴僧侶さん。その顔には戦場で劣勢に追い込まれた時にも見たことが無いほどの焦りの色が見て取れます。

 

「い、いやそれは酒の勢いで出た冗句(ジョーク)であって、拙僧はそんな節操の無い事を言ったりは……」

 

「それで上手いこと言ったつもりかい? どうやらおちびちゃんとは遊びだったらしいねぇ?」

 

「そんな、ぼくのこころをもてあそんだの……?」

 

 しどろもどろに返事をする蜥蜴僧侶さんを追い込むように、即興で連携攻撃を繰り出す女性2人。涙を浮かべて見つめてくる吸血鬼君主ちゃんから目を逸らせば、一党の女性陣(奥様戦隊)がヒソヒソと話をしている光景が飛び込んで来ます。

 

「ちょっと聞きました奥様。あの方戦場で轡を並べた女性だけに飽き足らず、あんなちっちゃな子の心臓(ハート)まで奪っちゃって……」

 

「乙女の純情を弄ぶとは、なんて冷血漢なんだろうね。蜥蜴人(リザードマン)は皆恒温動物らしいけども」

 

「俺の卵を産め! なんてもはや告白と変わらないのでは? 母はそう思います」

 

 ……なんか本物の奥様も混じってません??? 耳に届く女性たちの囁きに顔を引き攣らせる蜥蜴僧侶さん。それを見た女将軍さんが一気に勝負に出ました!! 手に持つ豊穣の霊薬を蜥蜴僧侶さんに見せつけるように掲げ、誰もが見惚れる笑顔で声を張り上げます!

 

 

 

「この霊薬があれば種族の差を超えて子を成せるのだろう? 鱗の有無など愛の前では些細な事だ。私は、お前の子が欲しい」

 

 衆人環視のなかで繰り出された大胆な告白。その漢らしい言いっぷりに女性陣はほぅと熱い溜息を吐き、男性陣は蜥蜴僧侶さんに絡みつく薔薇色の鎖を幻視し、優しい視線を向けています。

 

 鰓人(ギルマン)のように口をパクパクさせていた蜥蜴僧侶さんですが、どうやら覚悟が決まったみたいですね。女将軍さんの前に膝を着き、籠手を外した彼女の手を己の両手でそっと包んで胸元に引き寄せました。ヒューヒューと牙の隙間から浅く息を吐いているのは緊張によるものでしょうか? グッと下腹に力を籠め、彼女に告げた返事は武骨ながらも慈愛に満ちた蜥蜴僧侶さんらしいものでした。

 

貴女(きじょ)との間にならば、強き子が産まれること相違なし。是非とも我が子を産んでくだされ!!」

 

 咆哮の如き返事に黄色い声を上げる女性陣。何時の間にか復活していた陛下の目にもうっすらと涙が浮かんでいます。王国に欠かせない人材とはいえ、傷を負いながらも戦い続ける彼女の幸せについて思うところがあったのかもしれませんね。

 

 

 

 

 

 

 さて、あとは2人がキッチリお説教とお褒めの言葉を貰えば今回の騒動はおしまいに……あれ? なんか吸血鬼君主ちゃんの足元に見覚えのある召喚陣が。同時に聞こえる声は賢者ちゃんのものですね。これはもしや……。

 

 

 

「もしもし、聞こえてるのですか? ちょっと地下でゾンビが盆踊りしていて大変なのです! 早く滅却しないと地上に溢れそうなので今すぐ手を貸すのです!!」

 

 

 

「おあ~……」

 

「……ざんぎょう、がんばってね!」

 

 ……うん、頑張れ吸血鬼君主ちゃん。きっとお説教は軽くなるよ!

 

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 




 塩沢ボイスを聞いていたら耳が孕みそうになったので失踪します。

 評価、感想いつもありがとうございます。

 ちょっと今後の話の持って行き方に悩んでおりますので、アンケートなるものを用意してみました。お時間がありましたら、ポチって頂けると幸いです。

 お読みいただきありがとうございました。

ダブル吸血鬼ちゃんが次にちゅーちゅーするお相手は?

  • 女魔法使いちゃん
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