ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 寒暖の差が激しく体調不良気味なので初投稿です。



セッションその12.5

 おほー、妖精弓手ちゃん頑張ってますねぇ! 以前矢傷の治療の際に噛みつかれた内腿を甘噛みされて、あわや一発昇天かと思いましたが、なんとかギリギリのところで耐えきったみたいです。

 

 お返しと言わんばかりに祖霊たちの知識を駆使してイニシアティブを握ろうと果敢に攻めてますけど……祖霊が蓄えているのはあくまで対草食系森人(エルフ)男子用の知識であって、無尽蔵の持久力(タフネス)を持つ吸血鬼君主ちゃんには効果が薄いんですよねぇ……。合間合間に長耳や腋、おへそにカウンターをもらって、また出来上がっちゃいそうになってます。

 

 なんとか花托(かたく)に吸血鬼君主ちゃんを押し倒してご立派な魔剣を抜かせることに成功しましたが……あーあー、自分の手首と魔剣の刀身を見比べて真っ赤になっちゃいました。星の力(核融合炉)が生み出す魔力によって脈打つ刀身に躊躇いがちに触れ、その硬さと熱に思わずゴクリと生唾を飲み込んでいますね……。

 

 あ! 無理はしないでという吸血鬼君主ちゃんの言葉に反応して妖精弓手ちゃんが動き出しました!! 仰向けの吸血鬼君主ちゃんを上四方固めのように抑え込み、吸血鬼君主ちゃんの頭を太股でガッチリホールド。柔らかな感触と甘い体臭によって存在感を増した眼前に掲げられている魔剣へと、てらてらと艶めかしく輝く桃色の舌を近付けて……。

 

 

 

 

 

 

 ……うん、こっちの2人はま~だ時間かかりそうですねぇ。妖精弓手ちゃんがいつまで攻勢を続けられるのか気になる所ではありますが、この先は齧り付きでガン見している地母神さんと知識神さんにお任せしちゃいますか。あ、ちゃんと記録はしておいてくださいね!

 

 さて、次シナリオは砂漠が舞台だったと思うんですが……おや? 万知(ばんち)神さんと覚知神さんの凸凹コンビがGM神さんと3人で深刻な顔して話し合ってますね。セッション準備に不具合でも起きたんでしょうか?

 

 お三方、どうしました? GM神さんは頭抱えて万知神さんは苦虫を纏めて噛み潰したような顔、覚知神さんなんて白を通り越して顔面真っ青じゃないですか。また破壊神さんが遊びに行っちゃったとかですか?

 

 ……は? ()()沿()()()()()()()()()()()()()()()()()? 

 

 いや、この間話したときに、例の原作イベはダブル吸血鬼ちゃん一党(パーティ)にぶつけるのはちょっと……ってことで、砂の海を航海しながらドラゴンの秘宝を追い求める冒険活劇に変更するって言ってませんでしたっけ?

 

 ……えー!? 誰かが覚知神さんの名を騙って勝手に≪託宣(ハンドアウト)≫を送った!?

 

 いや、まぁそんなことをするヤツは1人しか思い浮かばないですケド……。じゃあ隣国は絶賛牧場中? しかも本来よりも規模が大きくなってる!? ……大丈夫? 一党(パーティ)のみんな人間に絶望して闇堕ちしちゃったりしません?

 

 ええい、仕方ありません! とりまカワイイ無貌の神(N子)さんが時間稼ぎをしますので、凸凹コンビは脚本(シナリオ)の修正をお願いします。せっかくGM専だった神さんや視聴神の皆さんが楽しんでいるところなのに、アレの自己満足で物語(キャンペーン)を台無しにされるワケにはいきませんからね! あ、正道(ルタ)神さんと奪掠神(タスカリャ)さんはあの馬鹿の捜索をお願いします。どうせどっかの"啓示"板(吹き溜まり)で妄言を垂れ流しているでしょうから。

 

 

 

 

 

 


 

 

 平和とは、戦争と戦争の間の準備期間な実況プレイ、はーじまーるよー。

 

 前回、吸血鬼君主ちゃんと妖精弓手ちゃんがえるぴょいしたところから再開です。

 

 生理現象から解放されていたとはいえ、一週間ものあいだえるぴょいしていた2人。視聴神さんたちの予想通り、妖精弓手ちゃんのおなかは見事に大きくなっております。妹の劇的ビフォーアフターに花冠の森姫が卒倒する一幕もありましたが、豊穣の霊薬について現物を交えてお話しし、何とか納得して貰うことに成功しました。

 

 元気いっぱいな吸血鬼君主ちゃんは兎も角、幸せそうにおなかをさする妖精弓手ちゃんは完全に腰が抜けてしまっており、このまま帰るのはちょっと不味いよねという意見で全員の考えが一致。せっかくの里帰りですし、姉妹水入らずでお話ししたいという姉妹の希望もあり、もう一泊してから帰ることになりました。

 

 ひとつ上の森人(ハイエロフ)の異名をまざまざと見せつけられたのか、花冠の森姫に絞り尽くされ背中が煤けている従兄殿と吸血鬼君主ちゃんが肩を叩き合って友情を深めたり、既に孫のおなかが大きくなっていることを聞いた若草祖母さんが帰宅に同行を申し出るといったイベントをこなし、背中におばあちゃん、前に妖精弓手ちゃんという姿で自宅へと帰還した吸血鬼君主ちゃんを迎えたのは……。

 

 

 

 

 

 

「やぁお帰りご主人様。妹姫(いもひめ)様とはお楽しみだったみたいじゃないか」

 

「そうね馬鹿義姉(ばかあね)。ピンク色の思念を送られ続けたこの子が暴走するくらいにね」

 

「ヒック……グスッ……」

 

 

 

 ……森人狩人さんにしがみ付き泣き顔で睨んで来る吸血鬼侍ちゃんと、その肩を優しく抱き寄せる()()()()()()()森人狩人さん。そして青筋を浮かべた笑みで爆発金槌を起動している女魔法使いちゃんと、そんな修羅場を遠くから見ている一党(パーティ)の面々でした。

 

 

 

「えぇとつまり、シルマリルの昂ぶりがヘルルインにまで伝播しちゃって、我慢しきれなかったヘルルインを受け止め続けた結果こうなったと……」

 

 ソファーに腰掛けた妖精弓手ちゃんが顔を引き攣らせながら事の次第を確認するように呟く声が響くリビング。「おなかがそうなってなかったらエロガキと一緒に一日説教コースよ」と女魔法使いちゃんが額に手を当てています。どうやらえるぴょい中の吸血鬼君主ちゃんの思考がヒヒイロカネによる脳内通信を経由して吸血鬼侍ちゃんに流出してしまい、意図せぬ暴走状態に陥ってしまっていたみたいですね。

 

 最初は吸血鬼侍ちゃんもその変調を隠していたのですが、一日二日であれば我慢出来ても三日も続けば限界になるわけで……。頬を上気させどこか上の空な吸血鬼侍ちゃんを不審に思った森人狩人さんが不意打ちでスキンシップを図ったところ、あえなく理性が崩壊。こちらでもえるぴょいが発生してしまったそうです。

 

 リビングで獣のように森人狩人さんが求められていたところに偶然賢者ちゃんが≪転移≫の鏡からやって来て事態が発覚。最初は強制的に魔力を発散させて理性を取り戻させようと考えていたらしいのですが……。

 

「いきなりこの森人(エロフ)が『今が絶好の機会だから豊穣の霊薬を渡して欲しい』なんて言い出して、もうしっちゃかめっちゃかだったのです」

 

「だってそうだろう? 只人(ヒューム)の子どもたちと同じ時間を過ごさせるのなら子作りは早いほうが良いし、一党(パーティ)でも足並みをそろえたほうが子育ても都合が良いじゃないか」

 

 君の予想通り妹姫(いもひめ)様も立派なおなかになっているしねぇ、と勝ち誇った笑みを浮かべる森人狩人さん。盤面を読み切った森人狩人さんが凄いというべきか、そこで無理矢理にでも吸血鬼侍ちゃんの暴走を止めなかった賢者ちゃんを賞賛すべきか微妙なところですね……。

 

 

 

 一方で自分の行為がそんな事態を引き起こしていたと知った吸血鬼君主ちゃんですが、現在女魔法使いちゃんの膝の上で絶賛おしおき中。後ろ抱きされた体勢のままひたすら耳元で「スケコマシ」「エロガキ」「節操無し」「女殺し(レディキラー)」などと囁かれながら、剣の乙女ちゃんの吸血の練習台にされております。

 

 服の前面をはだけた状態の首筋を剣の乙女ちゃんの舌が這いまわり、反応して動こうとする身体を女魔法使いちゃんに抑え込まれ、吸血鬼君主ちゃんはその肢体をびくつかせるばかり。抜刀させられていないのが唯一の救いでしょうか。

 

「ひぁぁ……ごめんなさい……ひぅ……ゆるして……」

 

「あら、アンタ謝るようなコトしたの? お姫様に赤ちゃんが出来たのは喜ばしいことよ?」

 

「えう……」

 

「ちゅ……そうですわ……新たな生命は祝福こそされても、決して忌避されるものではありませんもの……れる……」

 

「おあ~……」

 

 ……もはやお仕置きというよりもそれにかこつけたスキンシップのような気もしますが、2人が満足そうな顔をしているのでヨシ!としましょう。

 

 


 

 

「そう、そのまま手のひらに座っている精霊を感じ取ってください」

 

「……あ。これが、精霊のあたたかさでしょうか……?」

 

 戦慄の夜が明けた翌日。自宅の庭に敷物を広げ、一党(パーティ)の面々が集まっています。若草祖母さんを中心に女魔法使いちゃん、森人狩人さん、令嬢剣士さんが座り、両手を胸の前で掲げ何かを掬い上げるようなポーズをしていますね。

 

 若草祖母さんに促がされるまま目を閉じ、意識を集中する令嬢剣士さん。そっと目を開けた先にはちょこんと手の上に乗った火花散らす光の球(雷の精霊)の姿がありました。驚いた表情の令嬢剣士さんに対して森人少女ちゃんが祝福の言葉を送っています。

 

 母親が半森人(ハーフエルフ)だからでしょうか、すんなりと精霊を視認することが出来た令嬢剣士さんですが、一方で渋い顔をしているのは女魔法使いちゃん。なまじ理詰めで物事を考える傾向が強いからか、なかなか精霊の姿を見ることが出来ないみたいです。

 

 隣で涼しい顔をしている森人狩人さんといえば……うん、日頃の不摂生のためか精霊たちからエンガチョされてますね。手に乗るようお願いしてもプイっとそっぽを向かれ、教師役の若草祖母さんも苦笑い。生活習慣の改善が必要ですねクォレハ……。

 

 

 

 昨日、吸血鬼君主ちゃんのお仕置きの裏でこっそり発生していた若草の祖母と孫の邂逅は、終始理想の形でございました。

 

 新たな命を宿したおなかを幸せいっぱいの顔で撫でる森人少女ちゃんの顔を見て、若草祖母さんも涙を堪え切れず号泣。「(わたくし)決めました! この子だけでなく、血族(かぞく)みんなの……貴女たち全員のおばあちゃんになります!!」と涙ながらの宣言には妖精弓手ちゃんもニッコリ。でも年齢的には若草祖母さんのほうが年下なんだよなぁ……。

 

 既に外交の仕事に関しては後進に道を譲っており、半ばオブザーバー的な立場だったそうで、相談の結果みんなの赤ちゃんが成長するまで同居してくれることになりました。

 

 ダブル吸血鬼ちゃん、そして一党(パーティ)の女性たちが抱える複雑な事情を聞き、今後の方針を尋ねられた若草祖母さん。しばし考え込んだ後、ゆっくりと瞳を開きながら口にした方針は……。

 

 

 

 

 

 

「まずはもっと広い家にお引越しいたしましょう。家族が増えたらこの家では少々手狭ですし、なにより子供の教育によろしくありません。きちんと社会に適応する倫理観を持たせるのであれば、昼夜の顔はしっかりと区別いたしませんと」

 

 

 

 なんて真っ当な意見! こういうので良いんですよこういうので!!

 

 

 

「それで、新しい家を建てる場所を探しにシルマリルとおっぱい乙女が出掛けたのね」

 

「うん。できればぼくじょうのちかくにたてたいっていってた」

 

 うんうん唸りながら頑張って精霊を見ようとしている女魔法使いちゃんを樹上から眺めている妖精弓手ちゃん。その身体を背後から抱きしめ、幹に背を預けるように吸血鬼侍ちゃんが一緒に座っています。敷地さえ確保できれば家そのものは≪死王(ダンジョンマスター)≫で一発ですし、セキュリティ強化も後付けし放題ですからね。街の大工さんたちの仕事を奪ってはいけないので多用は禁物ですけれども。

 

 牧場の近くというのは街から離れた場所が良いというのもありますし、今後新たに施設を立てる際にも話を通しやすいという点もあるからでしょうか。牧場の実習生を新たに迎える宿舎や、冒険者が産休・育休の際に長期滞在できる施設も併設できればそれだけ牧場周辺の重要度も上がりますし、地母神の神殿や知識神の文庫(ふみくら)から人を集め、出産関係の技術を学ぶ教育機関なんかも設けることが出来るかもしれません。

 

「その時はこの木も植え替えないとだけど……新しい(いえ)を創るっていうのは飽きがこなくて面白そうねヘルルイン!」

 

「がんばってしゃかいにこうけんして、ぼくたちをうけいれてもらいやすくしないとね!」

 

 長命種(エルダー)らしい長期的な考えですけど、そういう一歩一歩進む姿勢が大切なのかもしれませんね! それでは続けて吸血鬼君主ちゃんと剣の乙女ちゃんのほうに視点を向けてみましょうか!!

 

 

 

 

 

 

「なるほど。それで直接ウチに来たんだ!」

 

「ええ、まずはお話しをしたかったのと、ご相談がありまして……」

 

 うんうんと頷く牛飼若奥さんと剣の乙女ちゃんの声が響く牧場の母屋の一室。牛飼若奥さんの左右にはゴブスレさんと伯父さんが座り、あの頃モードの剣の乙女ちゃんの膝上には吸血鬼君主ちゃんがホールドされています。TPO的にはちょっとアレな光景ですが、吸血鬼君主ちゃんを見る伯父さんの目には諦観にも似た優しさが滲んでいますね。牧場防衛ミッションからこっち様々な事件、イベントで顔を出してますのでこの光景にも慣れちゃったのかもしれません。

 

 土地を購入するにあたり資金についてはまったく問題は無かったのですが、一党(パーティ)には不足しているものがあり、それを解消するために牧場を訪れた2人。人気・実力とも辺境でも有数の一党(パーティ)ですが、残念ながら社会的信用が不足しているんですよねぇ……。

 

一党(パーティ)の最高等級が紅玉というのは、低くはないのですが高いともいえません。冒険者としての実力は『辺境最高』の一党(パーティ)にも負けないと自負しておりますが、活動期間が短く街での認知度というのは決して高くはありませんの」

 

「しんゆうみたいにぎんとうきゅうまであがると、それもかわるんだけどね~」

 

「……そうだな。俺のような男が曲がりなりにも社会に信頼されているのは、等級に因るものが大きいだろう」

 

 そのため、一番の土地所有者である領主との繋がりもなく、それ以外の耕作放棄地なんかを持っている地主からも信用が得られにくいというのがダブル吸血鬼ちゃん一党(パーティ)の欠点ですね。これが山間の集落であったりすると、冬季の緊急輸送などの依頼をこなした関係で下へも置かない持て成しになるのですが、今度は≪転移≫の鏡以外の交通の便が悪くなるというのが痛いところ。

 

「ですが、最近事業が好調なこの牧場ならば土地を新たに購入してもおかしくはありませんし、銀等級冒険者が後継ぎということで、信用という点でも問題が起きる可能性は低いと考えられます」

 

「こうにゅうしきんはこっちがだすし、ちゃんとおやちんもはらうよ。しょうらいてきにはしゅっさんかんけいのぎじゅつをまなぶしせつや、あたらしくママになるひとがあんしんしてしゅっさん、こそだてできるばしょもつくりたいの」

 

 熱意の籠った2人の言葉を聞き、顔を見合わせる牧場夫婦。先に動いたのは牛飼若奥さんです。対面から吸血鬼君主ちゃんを受け取り、ギュッと抱きしめながらゴブスレさんへ問いかけます。

 

「私は良いと思うよ。この子やみんなのおかげで『あの日』を乗り越えることが出来たし、こうやって君と結ばれることも出来た。可愛いおちびさんたちや英霊さんを連れて来てくれたのもそうだよね」

 

「――ああ。俺もそう思う。あの日、友がいなかったら、牧場を……お前を守り切れなかったかもしれない。その後の冒険でも幾度となく助けられた。可能な限りその恩を返したい。だが……」

 

 そこまで口に出して言い淀むゴブスレさん。兜を身に着けていない、素顔を向ける先にはこれまで沈黙を保ち続けている伯父さんの姿。目を瞑ったまま会話を聞いていた彼が、みんなの視線に気付き口を開きました。

 

 

 

「私は、反対だ。実力がどうであれ、この話を持ってきた君たちは白磁等級。世間では破落戸と変わらない扱いをされる犯罪者予備軍だ。少なくとも世間はそう受け取るだろう」

 

 否定の言葉を上げようとした牛飼若奥さんをゴブスレさんが制し、彼女が座り直したのを横目で見た伯父さんは話を続けていきます。

 

「牧場の経営に関してもだ。ギルドとの契約で生活は安定し、これ以上事業を拡大しなくても十分に暮らしていける。分相応を超えた財は余計な諍いを生む原因になるかもしれない」

 

 それもまた真理。日々を安定して暮らしていけること以上に、幸せなことがあるでしょうか? その大切さが判るがために、吸血鬼君主ちゃんも牛飼若奥さんの胸元で俯いてしまっています。

 

 

 

 

 

 

「だが……それは私個人の意見。この牧場の後継ぎは君たち2人だ、好きにしなさい」

 

「!? いいの……?」

 

「おあ~……」

 

 伯父さんの言葉に立ち上がる牛飼若奥さん。無意識に胸元の腕に力が入り、吸血鬼君主ちゃんが幸福死しそうになっています。やんわりとそれを指摘し、傍らの移動式寝台(ベビーカー)でスヤスヤと寝息をたてている双子の頭を撫でながら笑う伯父さん。

 

「構わないさ。君たちは親として、何よりも子どもたちの幸せを考えなければならない。そのために必要ならば、悪魔や()()()にだって魂を売る。親とはそういうものだからな?」

 

「ふふっ。もう……面白くないよその冗談!」

 

 普段の姿からは想像出来ない伯父さんの言動に思わず笑い声を上げてしまった牛飼若奥さん。その隣でゴブスレさんも微かに笑っているように見えますね。お、移動式寝台(ベビーカー)から離れた伯父さんが牛飼若奥さんの傍に屈み、お山に埋もれて昇天しかかっていた吸血鬼君主ちゃんと視線を合わせました。

 

「小さな吸血鬼くん、約束してくれるだろうか。この牧場で暮らす者を、護ってくれると」

 

「……うん! ぼくと、ぼくのかぞく、ぼくのなかまは、しんゆうとそのかぞく、そのおともだちを、ずっとずっと、まもります!!」

 

 何ら強制力のない、ただの口約束。でもだからこそ、吸血鬼君主ちゃんと吸血鬼侍ちゃん、そして血族(かぞく)のみんなは決して約束を違えることなくゴブスレさんの家系とその仲間を守り、ともに生きていく事でしょう……。

 

 

 

「ありがとうね、お義父(とう)さん!」

 

「ありがとう、ございます」

 

 口々に伯父さんに礼を言う2人。……おや? 伯父さんは何故か渋い顔のままですね。何処か不満そうな彼を見てゴブスレさんが躊躇いがちに尋ねてみたところ……。

 

 

 

「その、なんだ。……君は何時になったら私を『義父』と呼んでくれるのかね?」

 

 あー、そういえばゴブスレさん、伯父さん相手だといっつも敬語ですし、他人行儀に受け取られがちな会話しかしてませんでしたもんね。お互い相手が自分の事を苦手だと思っていたために、双方とも歩み寄りのタイミングが掴めなかったのかもしれません。

 

 キョトンとした顔のゴブスレさんに溜息を吐きながら、どこか懐かしむように伯父さんは過去を振り返ります。

 

「君は、変わった。ゴブリンに対する苛烈さはそのまま、絶対に生きて帰ってくるという意志を感じるようになった。かつての君にはそれが無く、何処か自分の生命を軽んじているように私には見えていたんだ」

 

「……はい」

 

 伯父さんの言葉を否定することもなく、首肯するゴブスレさん。銀等級に至るまでの只管にゴブリンを狩り続ける姿勢は人間味を感じさせないものだったことは想像に難くないですし、実際に近くでそれを見ていた伯父さんからすれば、到底安心できるものではなかったことでしょう。

 

「だが、あの日……牧場にゴブリンが押し寄せてきた日から君は少しずつ変わっていった。他人を頼ることを知り、表情も柔らかくなった。牧場を訪れる『友人』と呼べる人たちも増えた」

 

 そこで言葉を区切り、部屋の扉へと目を向ける伯父さん。僅かに開いた隙間からは兎耳と発光が見え隠れしています。

 

「牧場の経営も順調になり、力を貸してくれる子たちも来てくれるようになった。彼らとともに土へと向き合う君の顔は、姪の……義娘(むすめ)のツレに相応しい面構えだったよ」

 

 もっとも、出産を控えた妊婦が押し寄せる事態になるとは思ってもみなかったがね、と苦笑する伯父さん。つられて苦笑する後継ぎ夫婦を見て、笑みを柔らかなものへと変えています。

 

「君が笑う顔など数年前は想像も出来なかった。人は変わるものだとつくづく実感したよ。……改めて、義娘(むすめ)と牧場を頼む」

 

「はい……義父(とう)さん」

 

 

 

 固く握手をする親子を見て、ヘヘンと鼻の下を指で擦る女性陣たち。扉の向こうからはおちびさんたちと英霊さんが飛び込んできて、やいのやいのとおおさわぎです。

 

 白兎猟兵ちゃんの妹ちゃんに抱き着かれた伯父さんが困った顔で頬を描く姿を見ながら、牛飼若奥さんのお山から抜け出てきた吸血鬼君主ちゃんが定位置に戻り、そっと剣の乙女ちゃんの手に自分の小さな手を重ねています。

 

「かぞくって、いいよね」

 

「ええ。私たちも、彼らのような素晴らしい家族になりましょうね?」

 

 

 お引越しについてはまた今度お話しすることにして、今日は絆の深まった家族をお祝いしましょうか。夏が近付き牧場はますます忙しくなっていきますが、今日は特別なお休みということで神様たちにも大目に見てもらいましょうね!

 

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 


 

 

 

 

 

 

「死灰神の痕跡を確認。既に別の次元()へと逃亡した模様」

 

「……まぁそうでしょうね。手口は杜撰ですが、嫌がらせとしては一級品の爆弾を投下していったものです。余計なイベントが発生してしまった以上、今回の物語(キャンペーン)は再走案件なのでは?」

 

否定(ネガティブ)。このまま放置すればジャンル変更(闇堕ち√)の可能性が高まるが、十分に修正可能」

 

「そのためには脚本(シナリオ)の修正が必要……この後すべてのイベントに成功すれば今回のロスは挽回できますし、リセットせずに続行しましょうか」

 

肯定(ポジティブ)。この物語(キャンペーン)最速を求めるもの(any%TAS)でもなければ全てを救う英雄譚(100%RTA)でもない。手の届く範囲で最大限の幸福(三流のハッピーエンド)を手に入れるために奔走する姿、それを見て楽しむものだから」

 

「ええ、ならば私たちのやることは決まっています。視聴神たち()が望む物語(キャンペーン)へ針路修正を行うために、これより冒険(セッション)への介入を開始します」

 

 

 




 気候が安定したら運動を始めたいので失踪します。

 お気に入り登録に評価や感想、ありがとうございます。

 お時間がありましたら、一言でも構いませんので感想を頂ければ嬉しいです。今後の作品の方向性にも影響してくると思いますので。

 お読みいただきありがとうございました。
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