ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 セカンドブリット直前なので初投稿です。



セッションその13-2

 前回、隣国の惨状を知ってしまったところから再開です。

 

 銀髪侍女さんの言葉に色めき立つ冒険者たち。国に働きかけ、訓練場を整備し、新人たちに教育を施しているのも、すべてゴブリンをこの世から消すための行い。そのゴブリンをわざわざ増やすなど理解出来る話ではありません。顔を顰める重戦士さんに青筋を立てる槍ニキ……ゴブリンの生み出してきた数々の悲劇を知り、新たな生命を授かったばかりの父親である2人にとって決して許せる事態ではないでしょう。そしてそれは、赫怒の炎によって瞳を赤に染める3人の小鬼殺し(ゴブリンスレイヤー)にとっても同じことです。

 

「ゴブリンか、何時出発する?」

 

「たすけだすひとはなんにんくらい?」

 

「だれをころせばいい?」

 

 ゴブスレ院×3……! 表面上は冷静ですが、3人とも腸が煮えくり返っているのが容易に想像できます。銀髪侍女さんが噛みつかんばかりに情報を要求する3人に手のひらを見せてステイさせながら、ひとつずつ順番に質問の回答をしています。

 

「王都で必要な物資を確保するから、出発は明朝。彼女たちの情報が確かならば、救出対象の数は判っているだけで2()0()()()()……もしかしたら更に増えているかもしれない」

 

「にじゅっ……!?」

 

 予想以上の人数に思わず声を上げてしまった令嬢剣士さん、ハッと口を抑えそれ以上の言葉をなんとか飲み込みました。情報源である護衛対象の3人、その代表である只人(ヒューム)の女性が強張った顔で銀髪侍女さんに縋るような顔を向けています。

 

「首謀者は国の実質的な支配者である()()。武官筆頭である兵士長と手を組んで()()()を設け、国の象徴である先王の1人娘である姫を利用して実権を握ろうと画策している男だ。この2人を排除しない限りゴブリンは際限無く増え続けるだろうね」

 

 計画を知って止めようとした彼女が狙われていたところを潜入していた私たちで保護、なんとか此処までお連れしたんだと肩を揉みながらぼやく銀髪侍女さん。となると犬耳ちゃんと半森人(ハーフエルフ)さんも密偵なんでしょうかね? 彼女の後を引き継ぐように只人(ヒューム)の女性……砂漠の姫君が国での悪夢を語り始めました……。

 

 

 

「国を強くする素晴らしい計画があるという宰相と兵士長の案内で私が目にしたのは、非現実的なまでに悍ましい光景でした。最初は信頼できる人物……此方の2人に王国へと我が国の惨状を報せて貰い、私自身は万に一つの可能性に賭けて説得の為に国に残るつもりでした。ですが……っ」

 

 瞳から溢れる涙は、愛する国を守れなかった悔しさに因るものでしょうか。爪が皮膚を突き破り、血が滴るほどに手を握り、絞り出すような声で紡ぐのは……。

 

「2人を城から脱出させようとしていた私の前に現れた宰相は、嘲笑うようにこう言ったんです。『先王の娘という象徴は2つは不要、貴女にはゴブリンを増やす苗床になって頂きましょう。友人である其方の2人と一緒にね』と。そして、彼の背後から現れたのです……」

 

 

 

「私と同じ顔、同じ姿の、絶対に私だと認めたくないほど歪んだ笑みを浮かべた、もう1人の私が……っ!!」

 

 

 

「オイ、そいつぁまさか……!」

 

 血を吐くような姫君の叫びに頬を引き攣らせる槍ニキ。姫君の見たものが幻や錯覚ではないとした場合に、その似姿が変装や魔術に因るものでは無く、もっと厄介なものである可能性に気付いたみたいです。女魔法使いちゃんと剣の乙女ちゃんも同様に顔を強張らせているあたり、同じ推測に至ったみたいです。ゴブリン以外に興味ナッシングなゴブスレさんとぽわぽわちのうしすうな吸血鬼君主ちゃんが頭上に?を浮かべているのを見て、吸血鬼侍ちゃんが苦笑しながら皆の脳裏に浮かんだ似姿の正体を話してくれました。

 

「んとね、たぶん≪にじゅうそんざい(ドッペルゲンガー)≫。ひとのすがたをうつしとって、たにんになりすますグレーターデーモンのいっしゅ。けんやまほうのぎじゅつもうつしとるからめんどくさいあいて」

 

 うげ、≪二重存在(ドッペルゲンガー)≫!? なんつーモンを引き連れてやがりますかまったく! 人間社会に入り込んでは疑心と混乱を撒き散らす歩く災厄、観察するだけで対象の記憶まで写し取るから正体を暴きにくいことこの上ない厄介な魔神です。武器や防具などの装備と生来の能力まではコピー出来ないのが不幸中の幸いではありますが、それでも相手にするのは面倒極まりないですね……。

 

「陛下が姫様を保護し、彼の国を糾弾したところであちらには完璧に姫様を再現できる魔神がいる。下手に口を出せばそれこそ此方が影武者を利用していると言いがかりをつけられるだけだね」

 

「だからこそ、軍を動かさず秘密裏に処理しなければならないというわけですのね……」

 

 ゴブリンを戦力化しようとしている以上戦争を仕掛ける気満々なのは判っていますが、王国も先年の『赤い手』の騒動によって疲弊しているので戦争という事態は避けたいところ。それを探る為の内偵だったのでしょうが、このタイミングで姫君が確保出来たのはある意味好機と言えるかもしれません。

 

 外道に堕ちた上層部の首を挿げ替え、先王が健在だったころの関係に戻ることが出来れば両国の平和に繋がることでしょう。令嬢剣士さんの言う通り、国同士の争いに発展させることなく事を為す必要がありますね。

 

「此処まで話しておいて今更かもしれないけど、依頼を引き受けて貰えるだろうか?」

 

 今なら何も聞かなかったことにして出て行ってくれても構わないよという銀髪侍女さんの言葉を聞いて、席を立つ冒険者はいません。みんなそれぞれに強い意志を込めた瞳で話の先を促すばかりです。ありがとう、と小さく笑い、銀髪侍女さんが作戦内容を話し始めました!

 

 

 

「まず、私たち3人を含めた此処にいる11人と、後から合流する1人を合わせた合計12人をふたつのパーティに分ける。辺境三勇士と大司教、栄纏(えいてん)神官の御令嬢と白いほうの君は女性たちの救出だ。お膳立てされているようで気分が悪いと思うが、君たちには"英雄"になって貰う」

 

「……"英雄"だと?」

 

 "英雄"という銀髪侍女さんの言葉に強く反応したのは槍ニキですね。『英雄になること』を夢見て冒険者となり、魔女パイセンと一緒に在野最高位である銀等級まで上り詰めた一流の戦士である槍ニキ。家庭を持ち子どもが産まれた今でも……いえ、子どもが産まれたからこそ、その夢を未だに諦めてはいないのかもしれません。そんな彼が「英雄になれ」と言われて素直に頷けるとは考えにくいところさんです。

 

「言葉通りだよ。人為的に小鬼禍を引き起こした国から先王の遺児たる美姫を救出し、囚われの女性たちを開放した英雄。それが陛下と宰相の作り上げた脚本(シナリオ)であり、君たちに期待されている役回り(ロールプレイ)だ」

 

「……では、残りの面々の役回り(ロールプレイ)は……?」

 

 淡々と語る銀髪侍女さんの言葉に遣り切れんとばかりに首を振る槍ニキ。憧れの英雄にこんな形でなるなんて想像すらしていなかったことですもんね。半ば確信めいた口調で訪ねる剣の乙女ちゃんに対し、判っているんだろうとシニカルな笑みを浮かべ、銀髪侍女さんはもうひとつのパーティの()()について語り始めました。

 

「光ある所に必ず影あり。黒いほうの君とその保護者君、そして私たち3人と特別招待者(ゲスト)()()は小鬼禍の引き金を引いた連中の抹殺だよ。決して他人に誇れるものでは無いが、誰かがやらねばならない事だ」

 

 宰相に兵士長、魔神に協力しているであろう邪教の神官、狩らなければならない獲物は多いと話す銀髪侍女さん。だが、という前置きの後、視線を向けた先は女魔法使いちゃんです。

 

「君は表の世界に生きる冒険者(アドベンチャラー)仕掛け人(ランナー)ではない。……もし暗殺者(アサシン)じみた依頼が嫌であれば……」

 

 断ってくれて構わない、と続けようとした銀髪侍女さんと手で制し、ゆっくりと立ち上がる女魔法使いちゃん。両隣で不安そうに見上げているダブル吸血鬼ちゃんの頭を撫でながら自分の意思をみんなに対して明らかにしました。

 

 

 

「この2人と一緒に歩むことを決めた時点で、真っ当な生き方なんてするつもりないわ。人の道を外れた行為上等! それで外道を始末出来るなら、喜んで血の斑道を築いてあげるっての」

 

 うーんこの覚悟ガンギマリ勢筆頭。壮絶な決意に目を丸くする一同をフンスと見回し、左右の小さな想い人を無理矢理に抱き寄せてお山に埋もれさせています。「あら^~」と頬を染める姫君を同じく赤い顔の森人(エルフ)の侍女さんがしばき倒し、圃人(レーア)の侍女さんは大笑い。銀髪侍女さんの左右に座る銀髪の2人はダブル吸血鬼ちゃんをどこか眩しそうに見ていますね。あれ、どうしました無貌の神(N子)さん、そんなふ~やれやれみたいな顔して。まるでギリギリのところで爆弾の解体処理に成功したように疲れて見えますけど……?

 

 


 

 

「それじゃあ一度お別れだ。明日また此処で会おう」

 

「ばしゃとおUMA(ウマ)さんのじゅんび、おねがいね!」

 

 救出の手筈と脱出方法の打ち合わせを終え、王都に姫君と侍女さん2人を護送するために一度解散となった一行。一党(パーティ)の自宅から≪転移≫の鏡を使ってショートカットするために銀髪侍女さんが残る面々に手を振っています。吸血鬼君主ちゃんと剣の乙女ちゃんも一緒に応接室から出て行きました。金髪の陛下と義眼の宰相への説明と、王都で砂漠越えと救出作戦に必要な物資、資材を調達し、ぜーんぶインベントリーにしまっちゃうつもりみたいです。こういう時にすっごく便利ですよねインベントリー。必要度が低そうなものも纏めて持ち運べるので、いざという時に慌てなくて良いのは非常に助かります。

 

 監督官さんも通常業務に戻り、残されたメンバーには微妙に気まずい沈黙が。「この2人は置いていくから、明日まで友好を深めておいてくれたまえ」という銀髪侍女さんの熱い無茶振りが光ります。

 

 こういう時に先陣を切ってくれるのはやっぱり【辺境最強】たる槍ニキの良いところですね! 互いを知るには飯を一緒に喰うのが一番だということで、ギルドの食堂へと移動。ちょっと遅めの朝食を獣人女給に頼み、テーブルへと全員を誘導してくれました。注文した料理が到着しみんなが口を付け始めたところで、さりげなく目の前の2人の戦闘力(意味深)を確認しながら胸元の聖印を話題のとっかかりにして会話を試みていますね。

 

「あー、お前さんたちはやっぱり仕掛け人(ランナー)なのか? 見たところ冒険者じゃ無さそうだし、あまり見ない聖印を下げてるしな」

 

 良かったら教えてくれねぇか? という槍ニキの言葉に同じタイミングで頷く大小2人の銀髪さん。口火を切ったのは半森人(ハーフエルフ)の女性です。

 

「いえ、私たちは宰相直属の密偵……陛下の側近であるあの方(銀髪侍女さん)とは間接的な同僚といったところでしょうか。普段は秘書の真似事をしております」

 

 胸元に下げる聖印を見せながら微笑む姿は何処か蠱惑的で、槍ニキも思わず生唾を飲んでしまっています。……ゴブスレさんの膝上に腰掛けている吸血鬼侍ちゃんが悪い顔をしてますねぇ、後で魔女パイセンに密告す(チク)るつもりですねアレは。

 

「私は正道(ルタ)神を、この()奪掠神(タスカリャ)を信仰しています。冒険者の方々にはあまり馴染みがないかもしれませんね」

 

「ああ、あのいつも忙しそうに走り回っている……」

 

 お、重戦士さんは正道(ルタ)神さんを知ってたみたいですね。偉い勢いで昇級したり、無茶な冒険に挑む走者が稀に良くいますから、それを目撃したことがあるのかも。真円をモチーフとした聖印を撫でる彼女の隣で、()()()()()()()()()()を美味しそうに頬張っている犬耳の少女が大きく頷いています。

 

「貴方達3人の評判は仕事柄良く耳にしている。腕も人格も良い冒険者だと」

 

可愛らしい耳をピコピコさせながらの言葉に面映ゆそうな男性陣。ですが次に彼女の口から出た言葉は、その場にいる冒険者を凍り付かせるには十分な威力を秘めていました。

 

 

 

「――養父(ちち)も『早く金等級に上がってくれないものか』といつもボヤいている」

 

「……あの、ちなみにお養父(とう)様がどなたなのか、お伺いしても?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このあいだ、貴族のアホボンたち相手にハジケてた全身布鎧(着ぐるみ)の中の人」

 

 

 

 え? 結婚してたんですか宰相さん???

 

 

 

 

 

 

「――というわけで、行く当てのない孤児や訳アリの子を保護して、養育するのが義父(ちち)の数少ない趣味なんです。私とこの()も、血の繋がりはありませんが義理の姉妹扱いですね」

 

 衝撃の事実に混乱する冒険者たちを見てクスクスと笑う半森人(ハーフエルフ)の女性。おや? 吸血鬼侍ちゃんは驚いていないですね。ひょっとして前から知ってたんでしょうか。膝上からずり落ちないようにさりげなく吸血鬼侍ちゃんの腰に手を回していたゴブスレさんも気付いたようで「知っていたのか?」と尋ねています。大ぶりな腸詰(ソーセージ)に夢中になっていた吸血鬼侍ちゃんが小さな口で先端を齧り取り、何故かヒエッ……とした顔になっている重戦士さんと槍ニキに流し目を送りながらゴブスレさんの問いに答えを返しました。

 

 

 

「むぐむぐ……。うん、しってた。だって、ぼくやよいどれ(銀髪侍女)さんをつかって、こんとんのせいりょくとつながってたきぞくやないつうしゃをしゅくせいしてたほんにんだもの」

 

 

 

 え? まさかの王国安全保障局局長(久々にワロタ)ポジなんですか???

 

 

 

 ねー♪ と笑い合う2人を味わい深い表情で見ている冒険者たち。奪掠神(タスカリャ)神官の犬耳の少女……銀毛犬娘ちゃんは我関せずと鶏肉を貪っています。よく見たら銀色の毛並みに黒斑が混じってますが、もしかして彼女もそのポジションなんですかねぇ……。

 

 ん? でもそうなるとこの半森人(ハーフエルフ)の女性……半森人局長さんのほうが義眼の宰相さんよりも年上なんじゃ……ヒッ!? す、すいません正道(ルタ)神さん、半森人局長さんは裏表の無い素敵な美少女です!!

 

 


 

 

 そんな感じで友好を深めつつ翌日。ギルドが所有する中で一番大きな馬車に乗って出発した一行。荷物のほぼ全てをインベントリーにしまっているのもありますが、10人以上乗ってもスペースに余裕があるのは流石といえるでしょう。勿論それだけ大型ですと馬車を牽くのにも相応の力が必要になります。サスペンションを備えているため通常のものより更に重量を増した馬車ですが、そのスピードはまるで早馬の如し。サスペンションが無かったら本日お留守番の2000歳児辺りは腰が痛いと文句をいうこと間違いなしです。

 

 

 

「あのよぅ、タダ乗りしている身分であれこれ言うのはお門違いだってのは俺もじゅーぶん判っているんだがな……?」

 

 あ、次第に草木が姿を消し、足元が砂地になってきた頃、外を眺めていた槍ニキがとうとう我慢の限界に達したようです。もう慣れてしまって諦めの表情を浮かべるダブル吸血鬼ちゃん一党(パーティ)の女性陣と、相変わらず(ウォトカ)を呷っている銀髪侍女さん。若干酔ってしまっている重戦士さんとそれを介抱しているゴブスレさん。スヤァ……と寝息を立てている銀髪義姉妹以外の注目を集めた槍ニキが、馬車の前側を指差しながら叫びました。

 

 

 

「あれの何処が馬なんだよ!? ()()()()()なんざ聞いたことも無ぇよ!?」

 

「五月蠅ェ……頭に響くんだよ……。別にいいだろ、脚が何本あってもよォ……」

 

 青白い顔の重戦士さんが凄んでも屈することなく頭を掻き毟る槍ニキ。彼の指摘通り、馬車を牽引しているのは惚れ惚れするほどの馬体を誇る2頭のおUMA(ウマ)さんです。8本の脚それぞれに接地面を増やすためのかんじきを履き、砂漠迷彩に塗装された胴体にゴキゲンなダブル吸血鬼ちゃんを乗せて、灼熱の太陽をものともせずにバクシンしています。なんせ砂漠にはコーナーがありませんからね!

 

 毎度お馴染み英霊さんたちを召喚したわけなんですが、今回は現地での救出活動にも参加していただくため選出作業は難航。人数とコストのバランスについて細心の注意を払った結果、ハリボテスレイプニールの姿で召喚に応じてくれました!

 

 戦闘を考慮していないため防具無しの全身タイツ姿ではありますが、その分コストはお安く通常の首無し騎士(デュラハン)2体のコストで最大8人に分離するお買い得っぷり。なお、みなさん頭部は頑なにゴブスレヘッドのため、ゴブスレさんからは微妙なオーラが出ていることはここに記しておきます。

 

 

 

「あんまりカッカしてると、そこの後輩みたいにぶっ倒れるわよ?」

 

「うう……申し訳ありませんわ……」

 

 やれやれと首を振る女魔法使いちゃんの視線の先では、ブラウスの前を全開にしている赤い顔の令嬢剣士さんが、エロエロ大司教モードな剣の乙女ちゃんに抱きしめられてるちょっとえっちな光景が。薄布に包まれた一党(パーティ)第一位のお山をクッション代わりに令嬢剣士さんの頭を受け止め、剣の乙女ちゃんがそっと彼女の額に手を当てています。吸血鬼のひんやりした体温が心地よいのか、令嬢剣士さんの顔色も少しずつ良くなっているみたいですね。

 

 風通しこそ良いものの、上昇する一方の気温は容赦無く体力を奪っていくため、見張り担当のダブル吸血鬼ちゃん以外はそれぞれ楽な格好になっています。

 

 元から露出過多な剣の乙女ちゃんはまぁ置いておいて……。重い鎧を脱ぎ捨て上着のボタンを大きく開けている重戦士さん。胸元から覗く逞しい胸板はダブル吸血鬼ちゃんがバッチリ視姦しています。赤竜の外套が熱を遮断してくれているのか、女魔法使いちゃんは涼しい顔。2つボタンを外している魅惑の谷間では、見張りに立つ前に吸血鬼君主ちゃんがお昼寝していました。

 

「……おいゴブリンスレイヤー。嬢ちゃんたちの恰好を見て、なんつーかこう、言うことはないのかよ?」

 

「知らん。戦友(とも)が止めないのだから、俺が口を挟む事ではない」

 

 やたら南方風模様の(アロハ)シャツの似合う槍ニキがゴブスレさんに突っかかってますが、対するゴブスレさんは塩対応。見た目は暑そうですが、女魔法使いちゃんと同様に竜革の鎧(ドラゴンハイドアーマー)が熱を防いでくれているみたいです。舌打ちをした槍ニキがうっかり女性陣に視線を向けかけ、慌てて馬車の外に向き直ってますね。

 

 

 

「さて、そろそろ合流場所だ。馬車から降りる準備をしようか」

 

 お、手品のようにスキットルをしまった銀髪侍女さんが、いつの間にか起き出していた銀髪義姉妹とともに荷物の整理を始めていますね。3人とも服装が昨日とは異なり、どこか異国情緒を感じさせるものに変わっています。どうやら砂漠に暮らす森人(エルフ)の民族衣装みたいですね。頭部を保護するターバンに同色の外套、厳しい日光から身体を保護するとともに、人相を判り難くするのにも役に立つんだとか。

 

 協力者との合流場所は砂漠にポツンと存在していた小さなオアシス。乗って来た馬車を吸血鬼君主ちゃんがインベントリーにしまい、代わりに日除けの天幕(テント)を設営して待つこと暫し。砂の色が赤く染まり始めた頃、地平線の彼方から一行へ近付いて来る船団がやって来ました!

 

 砂の海を掻き分け力強く進む船。その舳先に立つ人影を見たダブル吸血鬼ちゃんが勢いよく飛び出して行きました! 突然空から近付いて来る小さな飛行物体に一瞬長銛を構えた人影ですが、2人の姿を確認するとゆっくりとそれを降ろし、船へと降り立った2人と相対しました。

 

 

「「えへへ……ひさしぶりだね、おじいちゃん!」」

 

「双子だったのか? ……まぁ良い。今は再会を祝う時だろう」

 

 跳び付いて来る2人を抱き留め、ギチギチと顎を鳴らす蟲人(ミュルミドン)……今は船団を率いる長たる蟲人僧侶さん。『吸血鬼侍』ちゃんとの仲は良かったみたいですね。やがて舟板を上がってきたもう1人の戦友に気付き、一行へと近付いて行きます……。

 

「お久しぶりです。お変わりないようで安心しました」

 

「いや、随分と年を取った。そちらは……良い方向に変わったみたいだな」

 

「はい。ずっと好きだった子と、想いが通じました……!」

 

 蟲人僧侶さんの肩から飛び移って来た吸血鬼君主ちゃんを抱き締めながら、少女のように微笑む剣の乙女ちゃん。肩に残った吸血鬼侍ちゃんと2人を見比べながら、長年の謎が解けたと蟲人僧侶さんが頷いています。

 

 

 

 

 

 

「成程。ずっと女だと思っていたが、男だったのか。どうりで頭目(アイツ)が反応しなかったわけだ」

 

「いえ、2人とも女の子ですよ……?」

 

「え?」

 

「え?」

 

 

 

 あ、あのおっぱい星人……そこでしか判断してなかったのか……!

 

 


 

 

「しっかし、まさかこんな所で()()六英雄(オールスターズ)の1人と会えるたぁ思わなかったぜ!」

 

「そうだな……。ん? いや待て、1人とは何度も顔を合わせているだろ?」

 

 夜の移動は危険だということで、日が暮れたオアシスに火が焚かれ、現在互いに持ち寄った食料を使ってささやかな宴会が始まっています。良い感じに酒のまわった槍ニキと重戦士さんが、『死の迷宮』の話を聞こうと蟲人僧侶さんのところへ押しかけているみたいです。『死の迷宮』で『吸血鬼侍(ヴァンパイアロード)』だった時代……まだ祈らぬ者(ノンプレイヤー)だった頃の記憶はダブル吸血鬼ちゃん両方とも穴だらけですし、当事者の生の声が聞きたいというのは冒険者のサガというものでしょう。

 

 淡々と蟲人僧侶さんの口から語られる冒険の数々に、ゴブスレさんも含め若い冒険者はみな夢中になっています。悲劇と喜劇を縦横の糸に、栄光と挫折を織り込んで編まれた灰と青春の物語。剣の乙女ちゃんも懐かしむように耳を傾けていました……。

 

 長い物語が終わり、宴も終わりが見えてきた頃、ふと思い出したように女魔法使いちゃんが口を開きました。

 

「すっかり忘れていたのだけれど、ここで合流する12人目っていうのは貴方なの?」

 

「いや、違う。俺は只の運び屋(ポーター)だ。()を届け、囚われの女たちを安全な場所へ運ぶ……な」

 

 ああ、そういえばそうでしたね! もう若くないと嘯く蟲人僧侶さんの口振りからすると、どうやら男性みたいですけど……。宴に参加していた船団の面々は蟲人ばかり、ちょっと自分には区別が付きにくいですねぇ。

 

 おや? 突然水辺の際に設置されていた焚火が消えてしまいました。誰かが間違えて水でも掛けてしまったんでしょうか……。

 

「ひゃん!?」

 

 ん!? 今のは令嬢剣士さんの声です! 槍ニキと一緒に半森人夫人さんが見せてくれた『魔法剣』について話してましたが、突然真っ赤な顔でお尻を押さえて周りを見渡しています。槍ニキが必死に顔を横に振っているので彼がお触りの犯人では無さそうですが……。

 

「きゃっ!?」

 

 こ、今度は剣の乙女ちゃんです! 恥ずかしそうにたわわを隠しているということは……あ、ダブル吸血鬼ちゃんの顔がマジになってます。怒りによって真っ赤に染まった瞳で暗闇を見渡しながら、不届き者を探しているようですが……。

 

「にゃあっ!?」

 

「ひぁ……っ!?」

 

 ええ……? どうやら2人の索敵すら潜り抜けられてしまったみたいです。恥ずかしそうに太股の間を押さえる仕草はクッソ可愛いですが、愛し子へのセクハラによって太陽神さんが激おこ寸前になってます! これじゃもう1人の親である万知(ばんち)神さんも……あれ? いない???

 

 あの、無貌の神(N子)さん、覚知神さん。万知神さんどこ行ったか知りませんか? これ伝えないでいたら後々酷いことに……え? なんで盤上を指差しているんですか? ……あ、まさか。

 

 

 

 

 

 

「カッカッカ! 魔剣『女殺し』の持ち主と聞いておったのに、2人とも()()ではないか! それともナニか? 湯に浸からなければ抜けん()()なのかのう? ん?」

 

 暗黒の世界に響く下品な声。暗闇に目を凝らす一行の中で、ゴブスレさんだけが暗視の付与された兜越しに声の主を見付けました。腰から抜き放った信じられないほど邪悪な形をした武器(アフリカ式投げナイフ)を投擲した先は、オアシスに1本だけ生えている棗椰子(ナツメヤシ)の頂点です!

 

 闇を切り裂いて飛翔する刃を避け、地面へと降り立つ小さな人影。ダブル吸血鬼ちゃんよりは大きいですが、ゴブスレさんの腰辺りまでしかない体格は間違いなく圃人(レーア)のものです。

 

 松明によって照らし出され、剣を向けられながらもその顔からは笑みは消えず、浮足立った冒険者たちを品定めするような瞳で見つめるその老人は……。

 

 

 

 

 

 

「年甲斐も無く何をやっている。師匠」

 

 

 

 ナニをやってるんですか、万知神(マンチキン)さぁん!?!?

 

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 




 体力を温存するので失踪します。

 評価や感想、いつもありがとうございます。

 体調が悪化する気しかしないので、次話は少し遅れるかもしれません。お待ちいただければ幸いです

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 お読みいただきありがとうございました。
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