ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 ワクチン接種後に震えて寝ていたので初投稿です。




セッションその13-3

 いやー、いつ見ても限界ギリギリ(エッジ)を攻めるキャラデザとロールプレイですよねマンチ師匠!

 

 普段は冷静沈着な(ペルソナ)しているクセに、ああやって盤面に登場した時は普段のキャラを忘れてハジケるんですから面白いですよねぇ万知神さん()も。毎度毎度覚知神さん(腐れ縁)死灰神(困ったちゃん)の相手を一手に引き受けてくれてますし、ストレスが溜まってるのかなぁ。

 

 ……まぁ、覚知神さんのやらかしの尻拭いをするために化身(アバター)で向かった先で、唯一生き残っていた少年にその場のノリで口プロレスと108のマンチ技を仕込んだんですから、ある意味2人の乳繰り合いからこの物語(キャンペーン)が始まったと言っても良いのかもしれませんね。

 

 あ! 勿論これはこの物語(キャンペーン)独自の舞台設定(レギュレーション)なんで、原作(オリジン)とはまったく異なりますので視聴神のみなさんはそこんとこよろしくお願いしますね! 無貌の神(N子)さんとの約束ですよ!!

 

 


 

 

 前回、セクハラ師匠がエントリーしたところから再開です。

 

 ダブル吸血鬼ちゃんの警戒を嘲笑うかのようにすり抜けセクハラをキメた隠密の技術(テク)を目の当たりにして、目の前の老圃人(レーア)が只物ではないということを察した冒険者の面々。大切なパートナーへのボディタッチにがるる……と牙を剥き出しに威嚇するダブル吸血鬼ちゃんでしたが……。

 

「うう~……あれ?」

 

 師匠から向けられるからかい混じりの視線を通して万知神さん(パパ)からの父性なアクセスを感じたのか、吸血鬼侍ちゃんの瞳から徐々に攻撃色が薄くなっていきました。唯一被害を免れていた女魔法使いちゃんを守ろうと彼女の前で両手を広げて唸っていた吸血鬼君主ちゃんも、ゴブスレさんが溜息とともに自分の師匠だと説明してくれたことで臨戦態勢を解除しましたね。まぁまだ警戒はしているのか、女魔法使いちゃんの背中にしがみ付いて所有権は主張していますけど。

 

「やはり"辺境最優"とは知り合いだったんだね」

 

「ケッ、昔ちぃとばかし小突き回してやっただけよ」

 

 お、松明を手に持った銀髪侍女さんがマンチ師匠の隣までやって来ました。お互い軽口を叩き合う姿から察するに、影の中を走るもの(ランナー)と雇用主としての関係は長いのかもしれません。困惑気味の冒険者たちに向き直り、彼が12人目だとみんなに話しています。どうやら姫君たちを辺境の街まで脱出させている間、時間稼ぎのために宰相の息のかかった連中を砂漠の都で足止めしてくれていたみたいですね。

 

「姫さんが居なくなったモンだから、連中泡を喰って右往左往しとるわい。姫さんに化けさせた≪二重存在(ドッペルゲンガー)≫に白のバルコニーから手を振らせて都の民を飼いならす一方で、王国との国境に向けて兵を動かしとる。ついでに使いモンにならねぇゴブリンも放流してやがるぜ」

 

 ゴブリンの選別、いや品種改良のつもりかねぇと嘯くマンチ師匠。一定の力量(レベル)に達しなかった個体を処分ついでに王国への嫌がらせとして国境付近でリリースしているっぽいですね。背後には砂漠が広がっているだけですし、飢えた連中の向かう先は王国領一択、と。

 

「……最近変に知恵を付けたゴブリンがいるって報告がギルドに多いってあの監督官が言ってたけど、その原因って……」

 

「だろうな。付け焼刃とはいえ軍事教練を受けた個体。他のゴブリンも見よう見まねで覚えるかもしれん」

 

 最悪だな、と女魔法使いちゃんの推測を肯定するゴブスレさん。ゴブリンを駆除するときに一番大切なのは、生き残りを出さないこと。知恵を身に着けた生き残りが他の巣に辿り着き、それを広めればあっという間にゴブリン全体の脅威度が底上げされてしまいます。最初の冒険で女魔法使いちゃんや女神官ちゃんたちがやったように、赤子だろうと殲滅しなければあっという間に天秤はゴブリン側に傾くことでしょう……。

 

「知恵を付けたゴブリンと、それを覚えさせている連中。両方殲滅しなければ、この小鬼禍は決して終わらない」

 

 ギリッと拳を握るゴブスレさんを見て、強く頷く一同。人為的に引き起こされた災厄であれば、人の手で止められぬ道理なし! 決意に満ちたゴブスレさんを見て、ダブル吸血鬼ちゃんもやる気MAXの様子。この依頼(クエスト)、絶対に失敗は許されません! 気合い入れていきましょう!!

 

 


 

 

「一時はどうなるかと思いましたが、あの子たちのおかげで何とかなりそうですね」

 

「そうだな。砂嵐をやり過ごすにしろ避けるにしろ、都までの行程は遅れていただろう」

 

 船の舳先に近い甲板で針路を見ながら話している剣の乙女ちゃんと蟲人僧侶さん。船団と合流した翌日、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、船は快調に進んでいます。帆柱(マスト)に設置されている小さな櫓には吸血鬼君主ちゃんと令嬢剣士さんの姿があり、2人とも呪文でお仕事をしている真っ最中。先刻までは浮足立っていた冒険者一行や船員たちも、船の周囲に広がる幻想的な光景に目を奪われているみたいですね。

 

「こりゃ……なんつーか、すげぇな……!!」

 

「もうちょいマシなコト言えねぇのかよ。……まぁ、気持ちは判るけどよ。テメェはどうだ?」

 

「今までに、見たことの無い景色だな」

 

 右舷(スターボード)に並ぶ3人も語彙力を失い、ただただ眼前の光景に目を奪われています。恐るべき大自然の驚異と、過酷な環境が生み出す幻想的な風景、そしてそれを生み出した太陽神の奇跡にも驚いているみたいですね。左舷(ポートサイド)で背中に吸血鬼侍ちゃんを乗せ、銀髪3人娘と一緒に並んでいる女魔法使いちゃんの口から、思わずといった感じで言葉が零れました。

 

()()()()()()こんな快適な旅が送れるなんて、誰も想像出来ないわよ……」

 

「ね~!」

 

 

 

 

 

 

「「「「「speed up(バクシン)! speed up(バクシン)!! speed uuuuup(バクシーン)!!!」」」」」

 

「ええ、ありがとう風の乙女(シルフ)たち。船体も安定してますので、増速しても問題無さそうですわ」

 

 自分の周囲を楽しそうに飛び回る風の乙女(シルフ)に微笑みかけ、もっと船速を上げたいとおねだりする小さな姿に頷きを返す令嬢剣士さん。彼女の言葉を受け精霊たちが帆に近付くと、更なる風が生まれ船は速度をグングン上げていきます。

 

 若草祖母さんの手ほどきを受け、精霊使いとして目覚めた令嬢剣士さん。半森人夫人さんから受け継いでいた素質もあって瞬く間に精霊との対話が上達し、真言・奇跡・精霊術の三系統を使いこなす魔法戦士という全盛り属性にまで成長してしまいました。

 

 当の本人は「私の力なんて、それぞれの専門家には到底及びませんの」と謙遜してますけど、それを克服しちゃったら特化型の人が泣いちゃいますし、現時点で既に一党(パーティ)で一二を争うユーティリティープレイヤーですからね?

 

 ちなみにもう1人は産休中の森人少女ちゃんです。同じく産休中の森人狩人さん(義姉)から真言魔法を教わり、こっそり吸血鬼侍ちゃんからも死霊術を学んでいるため恐るべきガチ後衛になりつつあります。信徒であり推しの恋人でもある2人の成長には万知神さんと破壊神さんもニッコリ。剣の乙女ちゃんが幸せを掴み全力でドヤっていた至高神さんと3()で祝杯を上げていました。

 

 そんな令嬢剣士さんと一緒に櫓に上がっている吸血鬼君主ちゃん、ぺったんこな胸元に緑色に光り輝く球体を抱え、太陽神さんへの感謝の祈りを捧げている様子。なるほど、これほどの砂嵐の中で船の周囲だけずっと台風の目みたいになっていると思ったら、吸血鬼君主ちゃんが≪晴天(サニーデイ)≫を唱えていたんですね!

 

 船が進むのに伴ってピタリと静まる砂嵐、半径3kmのまるで空間を包み込むように砂のカーテンに覆われた不思議な光景。手を伸ばせば届くと錯覚するほどの距離にある人の生命を容易く奪う自然の猛威。ですが、奇跡によって阻まれているそれは、何処か神々しいまでの美しささえ感じさせるものですね……。

 

 

 

 よしよし、このまま進んでいけば夕刻には都の近くに到着出来そうですね……っと、船首のほうがなんだかざわついてますね。女魔法使いちゃんの背中から剣の乙女ちゃんのお山へと移動していた吸血鬼侍ちゃんが何かを見つけたみたいです。あれは……。

 

「ばしゃが……ひいふうみい……4だいかな?」

 

晴天(サニーデイ)≫の効果範囲に入ったことで砂嵐が止み、砂塵に埋もれかけていた馬車の集団が船の前に姿を現しました! 突然の砂嵐によって立ち往生していたのでしょうか? 横転した車体の下から砂を掻き分けて顔を出す人影が見えますが……おや? 蟲人僧侶さんの顔が(多分)厳しいものになってます。雰囲気の変化を感じ取った剣の乙女ちゃんが小さな声で話しかけてますね。

 

「どうかなさいましたか?」

 

「……面倒なことになったな」

 

 ギチギチと顎を鳴らす蟲人僧侶さん、要領を得ない彼の言葉に首を傾げていた剣の乙女ちゃんですが……。

 

 

 

「冒険者諸君、向こうに気付かれぬよう戦闘準備を頼む。アレはこの国の兵士たちだ」

 

 異国風の装束に身を包み、冷たい視線で馬車の一団を睨む銀髪侍女さんの声がみんなの意識を切り替えさせました。彼女と同じように頭に布を巻き、口元を覆い隠した半森人局長さんと銀毛犬娘ちゃんも船の縁から顔を出して一団を吟味していますね。

 

「さて、箱の中身はどっちだと思います? 宝物(おたから)か、それとも塵芥(ゴミ)か」

 

「中身が大事なモノだったら、真っ先に心配している筈。そうじゃないってことは、正解は考えるまでもない」

 

「でしょうね。……ちょっといいですか? 貴女に頼みたいことがありますの」

 

「……ふぇ?」

 

 お、半森人局長さんが吸血鬼侍ちゃんを呼んでこっそり耳打ちしてますね。何か企んでいるのでしょうか……? 注意しておいたほうが良さそうですね。

 

 


 

 

「砂嵐に巻き込まれたか。災難だったな」

 

「あ、ああ。このまま全員生き埋めと思っていたが、俺たちは()()()()()()()いなかったらしい」

 

 至高神の聖印を下げた剣の乙女ちゃんを伴って彼らへと近付く蟲人僧侶さん。突然の異貌に驚いた表情を見せた男たちでしたが、分隊長と思しき1人が感謝の言葉を述べています。その周囲では砂の中から這い出てきた男たちが負傷や装備の確認をしていますね。

 

「申し訳ないのだが、都まで乗せて行ってはくれないだろうか? 助けてもらった礼は向こうでしっかりとさせてもらう」

 

「構わん、遭難者を救助するのは船乗りの義務だからな」

 

 蟲人僧侶さんの言葉にほっと肩を撫で下ろす部隊長と思しき男。乗せて行って貰えるぞ! という彼の声にまわりからも歓声が上がっています。ここまでは普通の対応ですが、さてどうなるか……。

 

「其方は何人だ? 人数によっては複数の船に分かれて乗ってもらうことになる」

 

「俺と副長、それに兵士が10人の合計12人だ」

 

「そうか。ふむ……」

 

 ギチギチと顎を鳴らしながら横転したままの馬車を眺める蟲人僧侶さん。どれも金属で補強された頑丈な車体ですね。転がっているのは4台で、内3台は後部の乗降口を固く閉ざしたまま放置されています。蟲人僧侶さんの視線に気付いた分隊長が慌てて「人員輸送用の車体は1台だけで、残りは消耗品が入っているんだ」と取り繕うように説明しています。……うーん、これは怪しいですねぇ。

 

「軍が必要としている物資を捨て置くわけにもいかんな。一緒に回収してやろう」

 

「い、いや!? 君たちの船を俺たちの都合で圧迫するのも申し訳ない、あれはこのまま放置してほしい」

 

「そうか、不要ならば売って金銭の足しにさせて貰うとしよう」

 

「駄目だ!! あ、いや、違うんだ。機密に係るものもあるのであのまま砂中に沈めるんだ。だから出発は少しだけ待ってくれ」

 

 どうしても中身を見られたくないみたいですねぇ。しかも後で回収ではなくこのまま埋めてしまうとか……。これは銀毛犬娘ちゃんの言う通り中身は塵芥(ゴミ)の可能性が高そうです。周囲の兵たちも何処か浮ついた様子で頻りに腰に下げた武器を気にしています。これはもう間違いないでしょう。

 

 

 

「話にならんな。やってくれ」

 

「は~い! ……てぃっ!!」

 

 やれやれと首を振る蟲人僧侶さんの合図で、船の影に身を潜めていた吸血鬼侍ちゃんが飛び出して行きました! 静止の声を上げる兵たちの間をすり抜け、手近な馬車の扉に村正を一閃。そっと扉を開けたところで……。

 

 

 

「「「GOBGOBGOB!!」」」

 

「おあ~……」

 

 ……突然伸びてきた()()()()()()()()()()()によって、車内へと引きずり込まれていきました。

 

 

 

「ガキがっ、余計な事しやがって!!」

 

 剥がれかけていた仮面をかなぐり捨て、剣を抜き放つ分隊長。隊員たちもそれに続く様に得物を構え、船団の代表と見た蟲人僧侶さんと剣の乙女ちゃんの2人にジリジリと近寄っています。人質にして船団を脅すつもりみたいです。

 

「そこを動くなよ? 俺たちは荒事に慣れてるんで……な!?」

 

VVVRROOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOM!!

 

 お、牛の鳴き声のような射撃音とともに、分隊長や兵士の足元をなぞるように砂煙が上がりました! 驚いた兵士たちが見上げた先、船の縁に足を掛けて身を乗り出しているのは、切先から余剰魔力を煙のように放出している魔剣を構えた令嬢剣士さんです! 同時に兵士たちの背後からは、馬車の構成部品と何か()()()()()()が砂漠へとぶちまけられる音が二度三度と続けて響いて来ています。

 

「動くなというのは此方の台詞ですわ。全身粉々で砂漠と同化したくなければ、武器を置いて跪きなさい!」

 

 未知の脅威によって戦意を喪失し、両の膝を砂地へと着く分隊長。何か逃げる切っ掛けはと周囲を見渡したのが彼の不幸でしょう。

 

「あ、ああ……」

 

「あ~あ、よごれちゃった……」

 

 金属や木材と区別されることなく平等に粉砕され、砂漠へとばら撒かれた積み荷だったモノ。

 

 王国に捨てて来る筈だったゴブリン、3台に分けて積んでいた50匹近くが汚らしい肉片へと変貌し、白い砂地の一部を赤黒く染める光景でした……。

 

 


 

 

「ゴブリンの生き残りは無し、良い仕事だったよ」

 

「ふふん!」

 

 馬車の残骸を検分していた銀髪侍女さんの声にフンスと平らな胸を張る吸血鬼侍ちゃん。人間用のものは壊さなかったみたいですが、ゴブリンを詰め込んでいた馬車は完全にバラバラになってますね。辺境三羽烏を中心に兵士たちの武装解除が行われ、彼らは平服に日除け用の外套という姿で一所に集められています。手足を拘束していないのは砂漠のど真ん中で逃げる場所など無いということと、船上から令嬢剣士さんが狙っているからですね。

 

「んで、こいつらが例の……」

 

「そう、処分予定のゴブリンを王国に不法投棄し、帰りに隊商(キャラバン)や集落を襲って()()を調達する部隊さ。……()()()()()

 

 ああ、やっぱりそういう部隊ってありますよねぇ。銀髪侍女さんの言葉に今まで辛うじて抑えていたであろう殺気を撒き散らしながら兵士たちを眺める槍ニキ。上位魔神とタイマンを張れる圧に押されて兵士たちが縮み上がっています。半森人局長さんが無傷の馬車内で見つけた周辺地図の存在もあって、この計画が周到に準備され、また彼らの日常になっていたことも判りました。

 

 冷たい視線を向けられて焦ってるのは分隊長。せっかく助かったと思ったら今度は人間に殺されそうになってますからねぇ。必死に助かる道を探して智慧を巡らせているようですが、こういう時に出て来る言葉ってだいたい相場が決まっていると思いませんか?

 

「お、俺たちは命令に従っていただけなんだ。そうしなかったら宰相と兵士長に殺されちまう! 悪いのはあの2人なんだ!!」

 

 分隊長の言葉に乗っかるように、口々に責任を擦り付ける兵士たち。命令されていただけ、悪いのは全部上役なんだ。うーんこの判り易い責任転嫁。聞くに堪えない言い訳を制したのは、スッと前に進み出た剣の乙女ちゃんです。豊満な胸元に手を添え、分隊長と目線を合わせるようにしゃがみ込む姿を見て、兵士たちの目に好色の光が浮かんできましたね……。あ、船上で≪晴天(サニーデイ)≫を維持している吸血鬼君主ちゃんが真顔になってます。これはいけませんよ……!

 

()()()()()()()()()()……このような作戦は命令されてこなしていただけで、貴方達は決して愉しんでいたわけでは無いのですね?」

 

「そ、その通りだ! 俺たちだって好き好んで守るべき国の民を攫っているわけじゃない!、国を強くする為に必要な犠牲だって言うアイツらの言葉に騙されていただけなんだ!!」

 

「成程……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘘ですね」

 

「ヒィッ!?」

 

 凪いだ水面のように静かな表情で、分隊長の言葉を切り捨てる剣の乙女ちゃん。ハイライトの消えた瞳のまま、淡々と、しかし途切れる事無く質問を続けていきます。

 

「ゴブリンを王国に廃棄する際、どんな気持ちでしたか? 自分たちと比べて豊かな国を貶めることが出来て気分が良かったのでは?」

 

「そ、そんなことは無い!? 悪いとは思っていたが、仕方なくやって……」

 

「それも嘘」

 

「な……!?」

 

「面倒なゴミ捨ての帰りに隊商(キャラバン)を見付けた時、どんな気持ちだったのか教えて下さい。特別報酬(ボーナス)が転がり込んできたと心躍っていたのではありませんか?」

 

「……」

 

「言えませんか。では代わりに私が皆に教えてあげましょう」

 

 黙り込んでしまった分隊長に対して凄絶な笑みを見せる剣の乙女ちゃん。櫓から彼女の気配を感じ取った吸血鬼君主ちゃんが飛び出そうとして、令嬢剣士さんと入れ替わりに見張り台に来ていた女魔法使いちゃんに引き止められています。そっと胸元のお守り(アミュレット)を握りしめ、何かを探るように目を瞑りました。やがて目を開けた彼女の語りに、分隊長は心底恐怖することになります。

 

 

 

「――小太りな商人の男性と美しい褐色の女性が2人。この2人は姉妹でしょうか? 年の若い女の子は武闘家かしら。少し年上の神官の男の子と魔法使いのお爺さんで一党(パーティ)を組んだ冒険者みたいですね」

 

「!?」

 

 まるで現在進行形でその情景を見ているかのように、すらすらと話し始めた剣の乙女ちゃんを驚愕の表情で見つめる分隊長。兵士の中にも何人か同じ顔をしている者がいますね。

 

「友好的に近付いて行き、最初に一番鈍そうな商人を不意を突いて斬殺。浮足立ったところで副長が武闘家の少女を人質に取って神官と魔法使いの動きを封じ、その後女性たちを拘束ですか。良く訓練された動きですね? それとも手慣れていらっしゃるのかしら」

 

 なんて判り易い暴漢の手口。現場の光景が目に浮かんでくるようで……あ、もしかして剣の乙女ちゃん、≪読心(マインド・リーディング)≫を使ってる? でも詠唱はしていなかったですし……ん、そういえばあの胸元のお守り(アミュレット)ってたしか……。

 

「散々痛めつけて抵抗できなくなった男性2人の前で一党(パーティ)の仲間を凌辱し、絶望させたところで放置ですか。帰りの馬車の中でも散々お楽しみだったみたいですね? 『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』そうですし」

 

「あ、あああああああああああああああ!!」

 

 精神の限界を超えてしまったのか、錯乱状態で剣の乙女ちゃんへと掴みかかろうとした分隊長。咄嗟に間に割って入ろうと蟲人僧侶さんが前に駆け出しましたが、それよりも早く落ちてきた何かが分隊長を地面に叩き伏せました!

 

「ぼくのたいせつなひとにさわるな、クソやろう」

 

 突然空から降ってきた吸血鬼君主ちゃんに驚く兵士たちを尻目に剣の乙女ちゃんのお山へと抱き着く吸血鬼君主ちゃん。その頭をそっと撫でながら、剣の乙女ちゃんが蟲人僧侶さんへと向き直りました。

 

「あまり船乗りの作法には詳しくないのですが、航砂中に罪を犯した者の処罰はどのようなものになるのでしょうか?」

 

「船員同士の個人的な争いであれば当人同士の決闘で裁くこともあるが、そうでなければ刑はおのずと決まってくる」

 

 くるりと兵士たちに背を向け、船へと引き上げていく蟲人僧侶さん。その姿を見て、降りていた面々も続々と船へ乗り込んでいきます。どんな刑が下されるのか理解してしまった分隊長が、必死の形相で去り行く一行を引き止めようと立ち上がりましたが……。

 

「ま、待ってくれ!? 頼む……ヒィッ!?」

 

 足元に着弾した≪力矢(マジックミサイル)≫によって体勢を崩し、無様に転倒する分隊長。砂まみれの姿で見上げた先には、櫓の上で杖を構えた女魔法使いちゃんの姿がありました。

 

 全員が乗り込んだことを確認し、兵士たちの目の前で船内へと引き上げられていく舷梯(タラップ)。呆然とそれを見ていた男たちの頭上から、ギチギチと言う音とともに落とされた言葉は……。

 

 

 

「砂漠では誰の命も平等だ。砂漠で奪った命は、砂漠に委ねなければならない」

 

 

 

 

 

「お前たちは其処で乾いてゆけ」

 

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

「……まぁ、あの子にしては我慢したほうかしらね」

 

「カッカッカ! テメェのオンナに手を上げられそうになって飛び出さねぇ男がいるものかよ」

 

「いや、あの子一応女の子だし。……で、何? あの子の護衛が外れたから胸でも触りに来たの?」

 

「ハッ! 触られても何とも思わねぇ娘っ子の乳なんざ触るつもりは無ェよ。それよりいいのか? ……このままだとあのチビッ子、()()()()()()()()?」

 

「いずれ向き合わなきゃいけなかった問題だもの。たとえ今回目を閉じさせたって、いつか必ず対面しなきゃいけなくなる。ゴブリン退治と同じよ」

 

「それでアイツがぶっ壊れても構わないってか? ……怖ろしいオンナだよオメェは」

 

「何とでも言いなさいな。あの子の傍には支えてくれる()がいるし、私はあの子が乗り越えられるって信じてる。それに……」

 

「それに?」

 

 

 

 

 

 

「――たとえあの子が壊れたとしても、私はずっとあの子の傍に居るわ。それが、私が()()()()()()()()()()()()()唯一の方法でしょ?」

 

「……やっぱり怖い女の子だね、君は」

 

 

 




 失った元気を取り戻すために失踪します。

 評価や感想、いつもありがとうございます。

 体調は元通りになりましたので、また週一くらいのペースで投稿出来たらと考えております。

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 お読みいただきありがとうございました。
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