ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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勢いに乗って書き散らしたので初投稿です。

直接的な表現は避けたつもりですが、露骨な描写がありますのでお読みいただく際はその点ご留意いただければと思います。



セッションその13-5

 ・・・・・・えー皆様、大変長らくお待たせいたしました。

 

 これより救出班がゴブリン繫殖場に突入するとの連絡が、現場の万知神さんより送られて参りました。

 

 予てから懸念されていた闇堕ち案件、同行者は彼女をフォロー出来る面子で固めてはおりますが、決して油断出来る状況ではないと思われます。

 

 視聴神の方々につきましては、むやみに信徒へ≪託宣(ハンドアウト)≫を送ったり直接現場へ押し掛けたりせず、温かく彼らを応援して頂きたく存じます。

 

 また、逃亡中の死灰神に関しましては、引き続き私こと無貌の神(N子)が行方を追っておりますので、捕縛時に投げつける石と罵詈雑言はしっかりと用意しておいて頂ければ幸いです。

 

 それでは、実況神さんへ中継を繋げたいと思います……。

 

 


 

 

 前回、魅了した兵士に繁殖場への道案内を命じたところから再開です。

 

 松明の光に照らされた、石造りの螺旋階段を下り続ける一行。地下深く潜るにつれ陰鬱なオーラが漂ってきているように思えます。一定間隔で灯りが設置されているため足元は十分に見えていますけど、不意に足を取られてしまうような、そんな嫌な感じがしますねぇ。

 

 階段を下りながらひっきりなしに話しかけてくる兵士に塩対応しつつ、何処か落ち着かない様子で首元のマフラーを弄ぶ吸血鬼君主ちゃん。1人で駆け下りたい気持ちを必死に我慢しているみたいですね。現在進行形で囚われの女性たちが苗床として尊厳を冒されている以上、むしろ良く耐えていると褒めてあげたいくらいです。

 

「ここからはゴブリン脱走防止の罠があるから注意してくれ」

 

 お、階段を下りきったところで周囲の様子が変化しましたね。今までは剥き出しの石で覆われていた通路が、一面白い化粧石で覆われた造りに。床面に化粧石より僅かに濃い灰色で導線が描かれており、どうやら繫殖場へ続く道を示しているみたいです。

 

「ゴブリンは暗視を持つ代わりに色の濃淡が判別し辛い。上手い遣り方だ」

 

「ほー、そいつぁ知らなかったぜ」

 

 色の境界を指でなぞっていたゴブスレさんの声には僅かな感嘆が混じっています。どうやらこの施設を造り上げた人物は相当ゴブリンの生態に詳しい人物なのかも。あ、ゴブスレさんと視線を交わした吸血鬼君主ちゃんが、ものっそい嫌そうな顔で兵士に近付いて行きました。

 

「ねぇねぇ、このはんしょくじょうはだれがつくったの?」

 

「此処の責任者の神官だよ。宰相閣下が何処からか連れてきた男でね、胡散臭い上に人の話を全く聞こうとしない異常者みたいなヤツさ。でかい傷跡でもあるんだか、()()()()()()()()()()()()()()()若いのか年寄りなのかも判んねぇ」

 

 うーんこの匂い立つマッドの香り。装いから考えれば加虐神さんの信徒の可能性が高いですが、死灰神(ヤツ)が成りすましていた可能性も捨てがたいところです。まぁどちらにしても善良な人物ではなさそうですね。

 

 

 

 灰色の線に導かれるように歩を進める一行。やがて一行の目の前に、分厚い鋼鉄の扉が姿を現しました。僅かな床面との隙間からは薬品と思しき刺激的な臭いが漏れ出ており、鋭敏な嗅覚を持っている吸血鬼2人が顔を顰めています。

 

「この先が繁殖場だ。君にはあの2人と一緒に、ここで働いてもらうことになる」

 

 おお、どうやら吸血鬼君主ちゃんに好意は抱いていても、苗床となる女性を連れて来るという考えは揮発していなかったみたいです。下手に突っ込むと矛盾から正気に戻ってしまう可能性がありますので……。

 

「あんないありがとう。おれい、してあげるから、ちょっとかがんでほしいな?」

 

 もじもじしながら両手を伸ばす吸血鬼君主ちゃん。鼻の下を伸ばした兵士がしゃがみ込み、期待に震えながら目を閉じたところで……。

 

 

 

「……てい」

 

 

 

 小気味よい音を立て、粉々に砕かれた頸椎。力を失った身体を床に打ち捨て、吸血鬼君主ちゃんがゴミを見るような目で死体を見ながら吐き捨てました。

 

>「いままでさんざんたのしんできたんだ。ゆめみごこちのまましねただけありがたいとおもえ」

 

 

 

 眼前で行われた突然の凶行、しかしその場に居合わせた者の中に、吸血鬼君主ちゃんを咎める人は1人もいません。誰もが救いようのない男だったと理解しているからでしょう。みんな無言で吸血鬼君主ちゃんが取り出した本来の装備に着替え、粛々と突入の準備をしています。全員の準備が終わったところで、剣の乙女ちゃんが扉に手を当てながら一行へと向き直りました。

 

「それでは、開きます。……準備は宜しいですね?」

 

 彼女の言葉に頷きを返す一行。重戦士さんは相棒の握り具合を確かめ、槍ニキは咄嗟の魔法に備えて発動体である耳飾りに手を添えています。英霊さんたちは兵士姿のまま隊列を組み、その先頭にゴブスレさんを立てて突入の構え。頭に使徒(ワートホグ)を乗せた吸血鬼君主ちゃんは令嬢剣士さんと手を繋ぎ、これから目にする()()から決して目を背けないよう真っすぐ前を見つめています。各々の覚悟を見た剣の乙女ちゃんが≪解錠(アンロック)≫の呪文を唱え、重たい扉がゆっくりと開かれていきます……!

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 ――それが地獄であったのなら、どれだけ救いがあったことでしょう。

 

 責め苦を受けるのは罪を雪ぎ、輪廻に戻るために必要な罰なのだから。

 

 ――それが悪夢であったのなら、どれだけ安堵があったことでしょう。

 

 如何に辛い事があっても、夜が明ければ必ず平穏が訪れるのだから。

 

 

 

 ――でも、彼女たちがいる場所は何処までも現実の世界。

 

 効率的にゴブリンを増やし、可能な限り母体を長持ちさせることに特化した、理想的な繁殖場。

 

 人の知恵と神の知識の交配によって形成された、異形の揺り籠です……。

 

 

 

「これが、同じ人間に対してやることかよ……ッ!!」

 

 ぎしり、と奥歯を砕かんばかりに噛み締めた槍ニキの言葉が全てを物語っています。

 

 ギルドホールよりも広い空間は通路と同じ白い化粧石で覆われ、継ぎ目が見えないほど精緻な作りになっているのが見て取れます。

 

 ゴブリンが生活する場所特有の汚物や腐臭は何処にも無く、ある種病院のような清潔を保ち、衛生的な環境を維持しているようです。……部屋の中央にある悍ましき軟体を除けば。

 

「うぅ……もうイヤァ……」

 

「産みたくない……」

 

「おごぉ……うぶぇ……!」

 

 部屋の半分を占めるほどの軟体に半ば埋め込まれるような形で拘束されている女性たち。体表を粘液質な触手が這いまわり老廃物や汚濁を拭き取るとともに、生存に必要なエネルギーを送り込むためか、彼女たちの口内に侵入し、無理矢理に体液を流し込んでいます。

 

「……なぁ、あのゴブリン共なんかおかしく無ぇか?」

 

 身動きの取れない女性たちに覆い被さり、腰を振るゴブリンを見て呟いたのは重戦士さんです。長い鎖に繋がれた首輪を着け、一心不乱に女性たちを喰い荒らす悪鬼。ですが、ある意味彼らですらも人間の底知れぬ悪意の犠牲者です……。

 

「……!!」

 

 己が欲望を吐き出し、動きを止めたゴブリン。しかし次の瞬間、首輪から伸びている鎖が巻き上げられ、引き摺られるように女性から引き剥がされていきます。首を圧迫する首輪に手を伸ばし必死に抗おうとするその姿を見て、令嬢剣士さんの口から悲鳴にも似た声が上がりました。

 

 

 

 局部を曝け出したまま、無様に引き摺られていくゴブリン。その目は焼かれ視界を失い、その喉は潰され声を発せず、その耳は塞がれ孕み袋の悲鳴を聞けず。首輪に伸びた手は全ての指を斬り落とされ、ゴブリンを増やす行為を除いた、女性たちに苦痛を与える可能性のある全ての要因が排除されています……。

 

 引き摺られていった先には同様のゴブリンが無数に繋がれ、臭いだけを頼りに餌に群がっています。鎖の緩んだ個体がよろよろと女性たちのほうへ向かって歩いているあたり、完全に行動を縛られているようですね……。

 

 

 

「おや、新しい苗床を持って来てくれたのかい?」

 

 あまりに非現実的な光景に動きを止めていた一行の耳に届いたのは、この悍ましい光景とはそぐわない、しかしこの場に相応しい男の声でした。吸血鬼君主ちゃんの視線の先には、1人の女性の傍にしゃがみ込む神官風の男の姿。顔を黒い布で隠し、ボサボサな髪の側面からは黒色の長耳が見えています。

 

「ちょっと待っていてくれ、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ぐったりとした女性の傍に蠢く小さな緑色の物体。身を捩るように身体を動かし、本能的に栄養を求めて女性へと這い寄っていきます。やがて胸元まで到達し、光を失った瞳で股座からひり落とされた汚物を見る女性を気にも留めず、望まぬ乳を蓄えた母親の器官へと口を近付け……。

 

 

 

「――あぁ、君の食事は()()じゃ無いよ」

 

 初乳を口にする前に男に掴み上げられたゴブリン、全身を舐めまわすように見られ、不快な金切り声を上げるそれを男は感情の浮かばぬ瞳で観察しています。やがて溜息を吐き、片手でゴブリンの口を塞ぎ、反対の手で懐から取り出した短刀を突き立てました!

 

「うーん、育成に回す価値無し! 最近は質が落ちてきたなぁ……」

 

 そのまま力を無くした小さな身体を軟体へと放り投げる男。軟体の中には半ば融けた死体がいくつも浮かんでおり、回りまわって女性たちの栄養になっているのでしょう。立て続けに行われた悍ましい行為、常人が見たら発狂してしまう可能性が高いです……。

 

「それで、君たちはいったい誰かな?」

 

 綺麗に死体を投げ込んだことで満足そうな男……闇人繁殖者(ブリーダー)が一行に近寄ってきて、興味深そうに女性3人を観察しています。そういえば圃人(レーア)との交配はまだやってなかったあぁと暢気に呟いてますが……近付いて来た吸血鬼君主ちゃんを警戒することも無く、視線を合わせるようにしゃがみ込みました。

 

「ふむ、ちょっと発育状態は悪いけど、サンプルとしては良いかもしれないねぇ」

 

「……ねぇ、なんでこんなことするの?」

 

「??? 質問の意味が判らないね。出来るからやってるんだけど?」

 

 感情の抜け落ちた顔で問いただす吸血鬼君主ちゃんに、お前は何を言ってるんだという顔で返答しているあたりヤバいですってこの男。ペラペラと話し始めた内容は、倫理観や人間性をドブに捨てた実験の素晴らしさについてです。

 

「――可能な限り苗床への苦痛を取り除き、生産性を高めるために導入したあの軟体(ウーズ)は正解だった。分泌液には鎮痛作用が含まれてるし、苗床の出す老廃物や()()()()を栄養にして育ってくれる。実に経済的だ」

 

「――繁殖用の個体は苗床を傷付けることがあったから、可能な限り危険な部位は()()することにしたんだ。本当は嗅覚も無くしたかったんだけど、苗床の匂いを察知しないと興奮しなくなっちゃうからね」

 

「――生産直後に基準に満たないやつは全部廃棄処分さ。()()はもっと生産数を上げろと五月蠅いんだけど、不良品を出したりしたら僕の腕が疑われちゃうからね」

 

「――ああ、国を出て正解だった! 地上にはこんなにも生命が溢れている、もっともっと生命を増やさないと!!」

 

 留まる事無く続く生命賛歌の演説。どうやら彼は地下帝国から抜け出して、地上で歪んだ生産活動を行う悦びに目覚めてしまったみたいです。明らかに兵士ではない面々に囲まれて顔色一つ変えず持論を展開出来る胆力は素直に凄いと思いますが、まさかこの惨事を引き起こしておきながら無事で済むと思っているのでしょうか……?

 

 

 

「――さぁ! 君たちも協力してくれたまえ! 可能な限り苦痛は取り除くと約束するし、安心して身体を委ねたまガッ!?

 

「お前と話すことなど何一つとして無い」

 

 闇人繁殖者(ブリーダー)の言葉を途絶えさせたのは瞳を赤く輝かせるゴブスレさんの刃。水平に胸へと突き込んだ剣をぐるりと捻り、傷口を広げてから蹴り倒す姿は怒りに満ちています。男を貫いた"小鬼殺し"がうっすらと輝いて見えるのは気のせいでしょうか? もしかして「お前もゴブリンだ」って感じでそこはかとなく小鬼特攻が効いたのかもしれませんね。

 

ゴフッ……な、何をするお前たち!? 僕の作品をどうするつもり……」

 

 倒れ込む男を放置して鎖に繋がれたゴブリンへと駆けるのは槍ニキと英霊さんたちです。薬品の臭いに交じって血臭を嗅ぎ取ったのか、興奮しているゴブリンたちに躍りかかり次々に仕留めていきます。血の混じった咳をする闇人繁殖者(ブリーダー)が静止の声を上げる中、軟体(ウーズ)へと近寄る姿が。強い意志を秘めた瞳の剣の乙女ちゃんと、彼女を守るように先陣を切って歩く吸血鬼君主ちゃんです!

 

「じゃまは、させない……!」

 

 他の女性たちのように剣の乙女ちゃんを拘束しようと迫る触手を吸血鬼君主ちゃんが輝く(ケイン)で打ち払っています。自分を守る小さな想い人が、泣いちゃダメだと必死に歯を食いしばっているのを見た剣の乙女ちゃんが紡ぐのは、あらゆる穢れを清める奇跡を乞い願う聖句です……!

 

 

 

 どうでしょうか至高神さん!? 『赤い手』の時は賛成多数でGOサインが出ましたけど、今回は打ち合わせ無しの突発的詠唱です。死灰神(バカ)が絡んでいるのでOKしてあげても良いと思うんですけど……了承? やったぜ。

 

 

 

「≪裁きの司、天秤の君よ、罪ある者、咎なき者、遍くへ平等に水を≫……!」

 

 

 

 剣の乙女ちゃんから発せられた光によって、輝きに満たされていく繁殖場。白き壁を貫通し、恐らくこの要塞全てを覆うほどの効果を齎したそれは、彼女の願いを叶え、範囲内全ての軟体(ウーズ)とゴブリンを清らかな水へと変化させていきます……。

 

「えーれいさん、これをつかって!」

 

 拘束から解放された女性たちを英霊さんたちが抱え起こし、吸血鬼君主ちゃんが取り出した清潔な布で包んでいきます。ゴブスレさんと槍ニキも駆けつけ、意識のある女性たちに声をかけているみたいですね。

 

「わたし……助かるの……?」

 

「ああ、そうだ。胎の中の糞虫も、必ず取り除いてやる」

 

 腹の膨らんだ少女の囁きを聞き逃さず、手を握りながら強く言い聞かせるゴブスレさん。安心したように意識を失った少女の首には白磁の登録票が……! ≪読心(マインド・リーディング)≫で見た武闘家の女の子です!!

 

 英霊さんたちが介抱している女性たち……その殆どが只人(ヒューム)と砂漠森人(エルフ)の女性ですが、その中に南方出身者に多い褐色の肌の女性がいますね。酷く消耗しているようですが、命に別状は無さそうなのが救いでしょうか。……お、繁殖場の奥に向かっていた重戦士さんと令嬢剣士さんが戻ってきました! 傍らには巨大化した使徒(ワートホグ)も一緒です。

 

「奥にあった昇降機(エレベーター)はぶっ壊しておいた。これで暫く時間は稼げるだろう」

 

「ですが、ゴブリンの異常を見て此処に兵が来るのは時間の問題ですわね……」

 

 なるほど、ゴブリン搬出用兼移動用の昇降機(エレベーター)があったんですか。確かに此処は繁殖専門の場所っぽかったですし、ゴブリンの軍事訓練はもっと上層で行われていたのかも。脱走を見逃さないために監視は居るでしょうし、突然ゴブリンがパシャっと水に変わったら闇人繁殖者(ブリーダー)を呼びに来るのは間違いないでしょう。……おや? 吸血鬼君主ちゃんが軟体(ウーズ)のいた部屋の中心で何かゴソゴソ始めました。インベントリーから水薬(ポーション)や女性用の着替えを取り出した後に、英霊さんたちにちょっと離れるようお願いして……!

 

「よっこい……しょ!!」

 

 うわ、往路で使用していたものよりも二回り近く大きな馬車を取り出しました!? すぐさま英霊さんたちが女性たちを馬車へと運び始めましたが……流石にちょっと大きすぎでは? ハリボテ2頭で牽くのは無理そうですし、そもそも部屋の扉を通り抜け出来ないサイズなんですけど……。

 

「ええ、そのままこっちへ……そう、そこで止まってくださいな!」

 

 ん? 令嬢剣士さんが馬車の前面に使徒(ファミリア)を呼んでますね。指示に従って停止した使徒の頭を撫でて、何やら聖句を唱えてますが……おお!? イボイノシシ君のサイズが馬車と同じくらいまででっかくなりました! 御者席に座っていた英霊さんの投げた太いロープを己が使徒に繋いでます。そうか、イボイノシシ君にこの大きな馬車を牽いてもらうんですね!

 

 

 

「装具の固定は完了ですわ! あとは……頭目(リーダー)、お願いしても?」

 

「ん、まかせて!」

 

 全員が馬車に乗り込んだことを確認した令嬢剣士さんに呼ばれた吸血鬼君主ちゃんが、(ケイン)片手に部屋の中を歩き回り始めました。目を閉じたまま何かを確認するように呟きながらぽてぽてしている姿を見て、息も絶え絶えな闇人繁殖者(ブリーダー)から疑問の声が飛んできました。

 

「何を訳のわからんことを……している……? 全員が乗り込めたところで、到底脱出できるものでは無いだろうに……」

 

「うるさい、ちょっとだまって」

 

 殺意マシマシの視線を向けられ口を閉じる闇人繁殖者(ブリーダー)。吸血鬼君主ちゃんはどうやら地上の何処かにいる吸血鬼侍ちゃんと交信しているみたいです。何度か遣り取りをした後、もう1人の自分のナビゲートに従って体の向きを変え始めました。

 

「えっと、ほうがくはこっちで、かくどはこのくらい……」

 

 ぽてぽてと歩いた終着地点は、何も無い壁の前。ガリガリと(ケイン)で目印を付けて、馬車に乗り込んだみんなに声を掛けました。

 

「みんな、しっかりめをかくしておいてね!」

 

 吸血鬼君主ちゃんの声を聞いて、それぞれ目を伏せたり布で覆い始めた一行。自分では動けない女性たちに英霊さんが目隠しをしています。その様子を見て、吸血鬼君主ちゃんが体内の星の力(核融合炉)を稼働させ、膨大なエネルギーを生成し始めました! あ、まさか……!?

 

「しゅつりょくちょうせいよし……ほういしゅうせいよし……」

 

 体内で生み出されたエネルギーを全て(ケイン)へと集め、刺突の構えを取る吸血鬼君主ちゃん。呪文や奇跡ではない、純粋な破壊の力が蓄積されていきます。全力で抑え込まなければ容易く暴走してしまうであろう原初の力に指向性を持たせ、印を刻んだ壁目掛けて一気に解き放ちました!!

 

 

 

「ぜんぶ、まとめて、いっちょくせんに……ぶちぬく!!」

 

 

 

 夜明けの輝き(カオスフレア)とも、黄昏の輝き(ダスクフレア)とも異なる青白き光(ヴァイスフレア)の奔流。もし賢者ちゃんがこの光景を目撃していたら、三千世界で暗躍するとある組織を連想していたかもしれません。瞼越しにも感じられる星々の輝きが収まった後に一行が目にしたのは、綺麗な真円を描いてくり抜かれた地上へと続く長い隧道(トンネル)です!

 

 崩れやすい砂の層を貫通したハズなのに、何故隧道(トンネル)の壁面が崩れて来ないのか。馬車から顔を覗かせた槍ニキがその理由に気付き頬をヒクつかせています。

 

「うへぇ、どんな熱を加えたら砂がガラスみてぇに固まっちまうんだよ?」

 

 ……だいたい1700度以上かなぁ。幸い隧道(トンネル)自体は通り抜け可能な温度みたいなので、特別な熱対策をしなくても大丈夫そうです。通過している最中に蒸し焼きになってしまったら大惨事ですからねぇ……。急激に冷えたことで網目状の模様が入った隧道(トンネル)へと突入していく馬車から、早く乗るよう剣の乙女ちゃんが呼び掛けていますが……。

 

「すぐにおいつくから、さきにいってて? だいじょうぶ、いっぽんみちだからまいごにはならない!」

 

「……判りました。早く、来てくださいね?」

 

 輝きを失った(ケイン)をしまいながら両手をブンブン振る吸血鬼君主ちゃんを、剣の乙女ちゃんが切なさを秘めた瞳で見ています。恐らくこの後吸血鬼君主ちゃんが何をするのか概ね察しているのでしょう。ですがそれを口には出さず、黙って許してくれたんですね。

 

 お待ちしてます、という声を残し先発した馬車を見送った吸血鬼君主ちゃん。やり残した仕事を果たしに向かった先は……。

 

 

 

カハッ! 素晴らしい力だ!! 決して地下では見ることの出来ない星々の輝き、君を苗床にすれば素晴らしい生命が誕生するだろう!!」

 

 星の力に目を焼かれ、心を奪われた闇人繁殖者(ブリーダー)のところです。

 

「そこにいるんだろう? 最早目も見えないが、その身体に纏う香りで判るとも! ああ、今まで知らなかった香りだ……」

 

 うわ言の様に口を動かす闇人繁殖者(ブリーダー)を抱え上げ、そっと頬に触れる吸血鬼君主ちゃん。ほの温かい小さな感触に頬を緩ませ闇人繁殖者(ブリーダー)が、見えぬ瞳で何かを見付けたように宙を見据えながら喝采の声を上げ始めました。

 

「そうか、真理は……生命の源は……こんなにも近くにあったのか……!」

 

 死に瀕した男の妄言か、あるいは高まりを極めた啓蒙による閃きか。「わかったぞ! わかったぞ! わかっ……」と無邪気に喜ぶ闇人繁殖者(ブリーダー)の声を止めたのは彼の喉元に食い込んだ吸血鬼君主ちゃんの牙です。残り少ない血液とともに蓄えた叡智を吸い上げられながらも満足げな笑みを浮かべる闇人繁殖者(ブリーダー)。彼の耳元で囁かれたのは、至福に包まれたまま旅立つはずだった彼の魂を冒涜する呪いの言葉……。

 

 

 

「さようなら、おろかなたんきゅうしゃ。おまえからまなんだことは、なにひとつみらいへのこさない。すべてかこにおきざりにしてやる……!」

 

 

 

 薄れゆく意識の中で刻まれた呪いの言葉。理解が脳に到達したと同時に首を捩じ切られた彼の頭は、悲痛の表情のままその思考を止めるのでした……。

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 

 




 もう後は駆け抜けるだけなので失踪します。

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