ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 3桁の大台が目の前なので初投稿です。



セッションその13-7

 前回、ゴブリン養殖の首謀者をしばき倒したところから再開です。

 

 身体に纏わりつくような闇の中を飛行し、蟲人僧侶さんの待つ都の外の船着き場へと急ぐ一行。眼下ではクソマンチ師匠が仕掛けた不審火に加え、吸血鬼侍ちゃんたちによって半壊した謁見の間の爆発によって兵たちが混乱の極みに陥っているのが確認できます。

 

 女性2人を抱えているとは思えない速度で飛行する吸血鬼侍ちゃんを女魔法使いちゃんが必死に追従してますが、やはり暗視が無い分銀髪侍女さんのナビゲートがあっても徐々に離されてしまってますね。

 

「あーもう! こういう時はさっさと眷属にしてもらっておけば良かったと思うわね……!」

 

 あー、吸血鬼になれば暗視能力が獲得できますもんね。悪態を吐きながら女魔法使いちゃんが歯を食いしばって飛行しているのを見て、背中の銀髪侍女さんがまぁまぁと宥めています。

 

 やがて女魔法使いちゃんの進む先に小さな光が見えてきました。松明を手にした蟲人僧侶さんが舳先に立ち、闇を透かすように一行を見上げています。先に船へと降り立った吸血鬼侍ちゃんたちに続いて、女魔法使いちゃんも無事に着地に成功しました!

 

「おじいちゃん、おまたせ!」

 

「予定通りお前たちが先着か。救出班はどうなっている?」

 

「あっちもおんなのこをたすけおわったって。すぐにだっしゅつけいろをつくるほうこうをつたえるね!」

 

 半森人局長さんと銀毛犬娘ちゃんを解放し、蟲人僧侶さんへと抱き着いた吸血鬼侍ちゃん。一頻り硬質な頬にスリスリした後に肩車へ移行し、繁殖場の吸血鬼君主ちゃんへと脳内通信を送り始めました。

 

「あっちの連中が来たら、後は王国に向けて出航で依頼は完了かしら。国境沿いに迎えが来ているんだっけ?」

 

「……うん、その予定だったんだけどね。どうやらもう一仕事しなきゃいけないみたいだ」

 

 ん? やれやれと肩を揉んでいた女魔法使いちゃんの問い掛けに厳しい顔で銀髪侍女さんが答えています。都とは反対の空を睨む彼女にイヤな予感を感じたのか、女魔法使いちゃんの顔にも緊張の色が浮かんでいますね。救出した女性たちを休ませる準備をしていた銀毛犬娘ちゃんも毛を逆立てて同じ方向を見ていますが……。

 

「! ちと、いおうのにおい……」

 

「あ、あら? もしかして……」

 

 微かに漂ってきた異質な臭いに反応した吸血鬼侍ちゃんを見て、半森人局長さんが冷や汗を流しています。砂漠の国について調査していた彼女なら、宰相が切り札として拘束していた()()について知っていてもおかしくはありません。どうやら死に際に宰相が……否、彼を乗っ取って封印を破壊した死灰神(クソッタレ)が言っていた、国を灰燼に帰す存在が向かって来ているみたいですね……!

 

「これはちょっと予想外でしたね……どういたしましょう?」

 

 顔にガバ発生と書いてある半森人局長さんの言葉に沈黙する一行。もし接近する敵性体が予想通りでしたら、流石に分が悪いです。銀髪3人娘は対人特化ですし、女魔法使いちゃんは爆発金槌が使えない上にどう考えても火属性は無効化されそうです。何より空を飛んでいる相手に対抗できるのは吸血鬼侍ちゃんだけなのが……。

 

 おや? ()()()()()()()()で僅かに闇夜に浮かび上がる巨体を眺めていた吸血鬼侍ちゃんが何か思いついたみたいですね。吸血鬼の能力である【脳の瞳】を活用して、先程までよりも細かく吸血鬼君主ちゃんへ射角や方位の修正を伝えているようですが……あ、まさか。

 

「えへへ……せっかくだから、()()もいっしょにぶちぬいてもらっちゃおうよ!」

 

 


 

 

 砂の海から斜めに突き出した青白き光の奔流が闇夜を切り裂き、一行の乗った船の上を空に向かって貫いていく幻想的な光景。空と大地の間にある全てを薙ぎ払いながら、星空へと駆け上がっていきます。

 

 視線さえ通っていれば半径2㎞までのほぼ全てを感知可能な恐るべき視覚によって正確に対象を捕捉し、リアルタイムで射手へと座標を伝えられる通信能力との併用によって発射された一撃は、封印されていたことに対する屈辱を晴らすべく砂漠の都を焼き尽くさんと迫る老年の赤竜(オールド・レッドドラゴン)に過たず命中し――。

 

 

 

「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAH!?」

 

 

 

 ――その片翼を、原子の粒へと分解しました!!

 

 

 

 

 

 

「ふぃ~、やっと地上に戻って来られたぜ……」

 

「おかえり~。あれ、あのこは?」

 

「ちょっと繁殖場で後始末をしてますわ。それよりも……」

 

「なんだ、今の咆哮は?」

 

 ガラス化した隧道(トンネル)を駆け抜け、無事地上へと帰還した救出班の耳に飛び込んで来た苦悶の咆哮。船団から僅か500mほど先に落下した老年の赤竜(オールド・レッドドラゴン)が砂の海でもがく姿を見てみんな目を丸くしています。地上までの道を作るついでに喰らわせたにしては圧倒的な成果を見て、観測手(スポッター)役の吸血鬼侍ちゃんが得意げに鼻の下を擦っています。

 

「やぁみんな、五月蠅くてすまないね。アレは宰相が用意していた対王国の切り札でね。使わせるつもりは無かったんだけど、どうやら長年の待遇に不満があるみたいで砂漠の都を焼き尽くすつもりみたいなんだ」

 

「はぁ!? あんなモンが街に入ったら夜明けまでになんもかんも灰に変わっちまうだろうが!」

 

 あまりに大きな被害予想に声を荒げる重戦士さんに対し、首を竦める銀髪侍女さん。砂漠の国を解放した後にじっくりと解決するつもりだったんでしょうが、動き出してしまった以上何とかするしかありません。放置したら重戦士さんの言う通り一晩で都が焼け落ちてしまいますからね……。

 

「今回は()()()()()()()()()()()()()()、冒険者らしく竜退治ってのも悪かねェ!」

 

 お、兵士やら繁殖場やらでストレスが溜まっている槍ニキはやる気満々ですね! それもそうだなぁと納得したように、重戦士さんも相棒のだんびらを担ぎ直しています。歯を剥く笑みを見せる槍ニキがゴブスレさんに視線を向け、テメェはどうするよ? と問いかけてますね。

 

「……アレは、ゴブリンではない」

 

「まぁ、そうだな」

 

「だが、()()()なら、竜退治に()()()ものなのだろう?」

 

「……へっ、判ってんじゃねぇか! おい! アイツは俺たちに任せて貰って良いよな!!」

 

 おお、ゴブスレさんも竜と対峙するみたいですね。そんなゴブスレさんを見て嬉しそうな槍ニキが銀髪侍女さんに確認を取ってますが……。

 

「勿論だとも。砂漠の国解放に加えて恐るべき竜を撃破、英雄らしくて良いじゃないか」

 

 そこはロマンを解する銀髪侍女さん、グッとサムズアップで答えてますね! HFO3人に加えて令嬢剣士さんと剣の乙女ちゃん、それに吸血鬼侍ちゃんが前へと進み出ました。即席ですが、西方辺境有数の六英雄(オールスターズ)の誕生です!

 

 

 

「あの、その、えっとね……」

 

「もう、判ってるからそんな顔しない。杖も無いし、私じゃ邪魔になっちゃうもの。素直にあの子を迎えるために此処で待ってるわ」

 

 あ、杖を折る原因を生み出しちゃった吸血鬼侍ちゃんの頭を女魔法使いちゃんが苦笑しながら撫でています。流石に爆発金槌無しで参戦するのは無謀ですし、資料漁りに勤しんでいる吸血鬼君主ちゃんを待っててあげる人も必要ですからね。お、吸血鬼侍ちゃんを解放した女魔法使いちゃんがゴブスレさんへと近付いてます。装備の確認をしていた彼に自分の纏っていた竜革の外套を脱いで、鎧の上から羽織らせました。

 

「アンタの鎧と同じで、赤竜のブレスに対して効果があるわ。的になれとは言わないけど、あの子たちを守ってあげて頂戴?」

 

「……ああ」

 

 強く頷き踵を返すゴブスレさん。マントをはためかせて歩く姿はまるで物語の騎士のようですね。カッコよくなったじゃねえかと軽口を叩く槍ニキを睨みつけるゴブスレさんを中心に赤竜がのたうつ砂の海へと進む一行を、少しだけ悔しそうに女魔法使いちゃんが見つめています……。

 

 

 

「まぁ、今の私じゃこれが限界かしらね……」

 

 


 

 

老年の赤竜(オールド・レッドドラゴン)の攻撃は噛みつき、左右の爪、翼と尾による打撃です! 巨体による圧し潰しにも十分注意してください!!」

 

「かみつきはよそういじょうにとどくからきをつけてね~!」

 

 翼で飛行し、上空から戦況を見る2人からの赤竜の脅威を告げる声が響く戦場。片翼を失いながらも戦意までは無くしていない赤竜の咆哮が、冒険者たちの恐怖心を煽らんと木霊します。下腹に気合いを入れて耐えたHFOが愚直に攻めて来るのを忌々し気に睨む赤竜の足元が突然波打ち、ズブズブと巨体が沈み始めました!

 

 万知神さん専用奇跡である≪教授(ティーチング)≫を経由して吸血鬼侍ちゃんが唱えた≪流砂(クイックサンド)≫の呪文。巨体故に劣悪な敏捷も相まって思うように身動きが取れず、赤竜の攻撃は精彩を欠いていますね。

 

 半径30mを流砂へと変える≪流砂(クイックサンド)≫。勿論近接戦闘を挑んでいるゴブスレさんたちもバッチリ範囲内ですが、流砂に沈むことなく、3人とも軽快に赤竜の周りを駆けまわっています。一体どんな方法を取ったのかというと……。

 

「ハッハァ! どんな頓智かと思ったけどよ、まさか本当に()()()()()()走れるたぁな!!」

 

「10分しか持ちませんのでそれだけはご注意を! ……ありがとう、水精(ニンフ)風精(シルフ)。無理なお願いを聞いて頂けて感謝してますわ」

 

 流砂の淵に立つ令嬢剣士さんの周りを飛び回る精霊が、気にすんなといいたげにサムズアップを返しています。いや~、万知神さんから吸血鬼侍ちゃんを通じてやってみるよう伝えてみましたけど、まさか本当に≪水歩(ウォーターウォーク)≫で砂の海を歩けるとは! え、船が浮かんでいるんだから海、つまりに水上に決まってる? うーんこのマンチ理論。

 

 振り下ろされる死神の鎌の如き爪を首を傾げることで躱し、肘の内側や脇の下といった柔らかい部分を攻め立てる槍ニキ。丸太のように太い尾はだんびらを己が腕の延長のように扱う重戦士さんによっていなされ、雑に砂をまき上げるばかり。同族の亡骸(そざい)を身に纏ったゴブスレさんを噛み砕かんと首を伸ばして噛みつこうとすれば、剣の乙女ちゃんのレイテルパラッシュによる上空からの弾丸の雨が眼部に集中し、ゴブスレさんに迫る攻撃を妨害しています。

 

「そろそろ効果が切れますわ! 前衛は一時後退してください!」

 

「GURURU……」

 

 ≪水歩(ウォーターウォーク)≫の効果時間が迫ったことを伝える令嬢剣士さんの声に従い前衛が離れたのを見て、一方的に攻め立てられていた赤竜の口から炎が漏れ始めました! 邪魔な地べた這い共を一息に焼き尽くし、上空で五月蠅い羽虫を叩き落そうと大きな口を開け……!

 

 

 

「いおうくさいおくちはちゃん~ととじようね~!」

 

「GUAA!?!?」

 

 ≪流砂(クイックサンド)≫の維持を止めた吸血鬼侍ちゃんが愛用の二刀で開きかけた顎を貫き、口が開かぬよう縫いとめました! 吐き出す直前だった炎のブレスが口内で暴発し、夥しい血とともに砕けた歯を裂けた口から零す赤竜。強固な鱗で覆われていた喉元から胸部にかけてもズタズタに裂けていますね。あ、衝撃で抜け落ちた二刀を空中で回収しつつ、残っていた片翼も吸血鬼侍ちゃんが斬り落としました!

 

「GU……GAAAAAH!!」

 

 両翼を失い、天を仰ぐような格好で立ち尽くす赤竜。天と地を統べる強者としての意地でしょうか、もっとも近くにいた地虫……同族の亡骸を身に纏う悍ましい人間(ゴブスレさん)に向かって血液混じりのブレスを発射しました!

 

 チャージが不足しているとはいえ、人1人燃やし尽くすには十分な熱量を秘めた火竜の吐息(ドラゴンブレス)。勝利を確信して細めていた赤竜の瞳が、爆炎を突っ切って現れたゴブスレさんを見て驚愕に見開かれています。

 

 竜革の外套と吸血鬼の血入り軽銀製円盾(ミスリルバックラー)の二重防御で赤竜のブレスを防ぎ切り、赤竜へ肉薄するゴブスレさん。立派に役目を果たし燃え散る外套を一瞥した後、ブレスの残り火で照らし出された喉元を見据え、"小鬼殺し"を突き立てた場所は――。

 

 

 

「……昔、姉さんが話していた。強大な竜には唯一か所、弱点が有ると」

 

 ――爆発で他の鱗が剥がれる中で、唯一残っていた逆鱗です!!

 

 

 

「GOA……」

 

 

 

 瞳から光を失い、砂の海へと音を立てて倒れる赤竜。

 

 新たな竜殺し(ドラゴンスレイヤー)が、今ここに誕生しました……!

 

 

 

 

 

 

「おまたせ~! あれ、なんかへんなにおいがする……?」

 

「遅い。もうお祭りは終わっちゃったわよ? いいからさっさと竜の死体を回収してきなさい」

 

「ふぇ? ……ほわぁ~!? おっきい!!」

 

 ……ふぅ。まったく、締まらないったらありゃしませんねぇ……。

 

 


 

 

「みんなお疲れ。流石西方辺境の精鋭だね」

 

「おう、まぁまぁ楽しめたな!」

 

 慌ててすっ飛んでいった吸血鬼君主ちゃんが赤竜の死体を回収して戻って来た冒険者たちを銀髪侍女さんが労いの言葉で迎えてくれました。軽く返事を返す槍ニキを始め、みんなの顔は困難な冒険を成し遂げた充足感に満ちています。ボロボロに散ってしまった外套についてゴブスレさんが謝罪しようとして、苦笑する女魔法使いちゃんに止められてますね。しっかりと装備者の身を守ってくれましたし、新調するための材料はたくさん手に入りましたもんね!

 

「さて、疲れているところ申し訳ないけど、最後の仕事に取り掛かってもらおうかな」

 

 おや、銀髪侍女さんの隣にいつの間にか見覚えのある鏡が設置してあります。賢者ちゃんの呪文とは違い、持ち運びできるサイズで≪転移≫を再現するため色々制限が厳しいとらしく、救出した女性たちを安全な場所へ送るには出力が足りないので馬車を用意したという代物なのですが……。

 

 お、波打つ鏡面の向こうから誰かが出てきました! 豪奢な鎧に身を包み、輝く金髪は獅子の如き威を見る者に感じさせるカリスマ……って、陛下じゃないですか!? 後ろには正装姿の砂漠の姫君に、お仕着せを纏った友人2人も一緒です。え、どういうことなの? 困惑を隠せない冒険者たちを見て、陛下が事情を説明してくれました……。

 

 

 

「つまりだ、卿らには余とともに今一度砂漠の都へ同行して貰いたい。混沌と手を結んでいた宰相一派を排除し、亡国の危機を救った英雄としてな?」

 

「依頼の時に話していたよね? 『君たちには英雄になってもらう』ってさ」

 

 悪戯が成功したような顔でペラを回す陛下と銀髪侍女さんを呆れた目で眺める冒険者たち。どうやら2人のほうが何枚も上手だったみたいですね。

 

 宰相一派の排除と被害に遭った女性たちの救出を見越して王宮で待機していた陛下と姫君たち。銀髪侍女さんの合図で砂漠の国へと転移し、混乱を最小限に抑えつつ姫君の帰還を大々的に民へ発表するつもりだったみたいです。脱出の手引きをした銀髪3人娘の活躍やゴブリン繁殖場の破壊、二重存在(ドッペルゲンガー)の撃退などの戦果はまるっと辺境三羽烏に押し付け、新しい英雄を生み出すことが目的だったんですね。

 

「卿らは今回の活躍で金等級へと昇格し、同時に王国騎士として叙勲される。一代限りの爵位ではあるが、持っていて損はあるまい」

 

 もっとも、貴公は将来貴族の位を継承するかもしれんがな? と揶揄われているのは重戦士さん。女騎士さんが家を継げば自動的に婿入りですからねぇ。あ、興味無さそうに話を聞き流すゴブスレさんに気付いて、半森人局長さんがそっと耳打ちしてますね。

 

「騎士ともなれば商会との遣り取りや土地の購入、あるいは牧場を警備するための人を雇う際の信用が段違いですよぉ?」

 

「後で詳しい話を頼む」

 

 家族と牧場を守るためなら手段を選びませんものね、ゴブスレさん。先程までとは打って変わって真剣に陛下の話へ耳を傾けています。

 

「地母神の尼僧と小さき至高神の聖女にも辺境の街へ向かうよう声を掛けてある。今頃は治療の準備を()()()が音頭を取って進めているだろう。……帝王切開技術を確立した()()()だ」

 

 だから卿らは疾く行くと良い、とダブル吸血鬼ちゃんへ話す陛下の顔は何処か苦々しげに見えます。やっぱり女神官ちゃん、王妹殿下との似姿の件もありますし、何か深い事情があるんでしょうかね?

 

 国境沿いには既に疾風狼人さんと金銀妖瞳半森人さんという王国の双璧コンビが此方に向けて進軍する準備を完了させており、ダブル吸血鬼ちゃんたちが王国へ帰還次第砂漠の国の治安維持のために都へと向かうそうです。辺境三羽烏と銀髪侍女さん、それに英霊さんの半数と往路で乗って来た馬車は一旦此処でお別れですね。半森人局長さんと銀毛犬娘ちゃんは女性たちの治療のために協力してくれるそうなので、一緒に辺境の街まで帰ることになりました。

 

 砂漠の都へと赴く一団が見送る中、闇の中へと漕ぎ出す船団。さぁ、女神官ちゃんたちが待ってます。急いで辺境の街へと戻りましょう!!

 

 


 

 

 令嬢剣士さんの精霊術と蟲人僧侶さん率いる船団の人たちの尽力で夜通し船は進み、翌日の昼前に砂漠の境界まで辿り着いた一行。再開を約束し別れた後に、すぐさま大型馬車で出発しました。

 

 国境で待機していた双璧に陛下からの伝言を伝え、街道をひた走ること半日。日も完全に落ち切った頃に辺境の街へと帰って来ることが出来ました!

 

 街の入り口で待機していた新人たちが伝令として町中を駆け回り、治療のために辺境の街へと集まっていた人々を招集、収容人数を考えてギルド訓練場を治療の場として整えてくれていた為、一行はその足で訓練場へと向かうことに。次々に馬車から降りてくる女性たちの悲しい姿に声を失う新人たちもいましたが……。

 

 

 

全員深呼吸! ……治療の優先度に従って彼女たちを処置室へ搬送してください」 

 

「そこ、ぼさっとしてないの! 消毒用の酒精(アルコール)と清潔な布を運んで!!」

 

「いいか、決して彼女たちを憐れむな! 全員生き延びるために戦ってきた、勇気ある女性たちだ!!」

 

「もう大丈夫です、必ず元の綺麗な身体に戻してみせますから……!」

 

 聖人尼僧さんの一喝が、至高神の聖女ちゃんの発破が、只人寮母さんの獅子吼が、そして、女神官ちゃんの優しい声が新人たちの心に染み渡り、今まで積んで来た訓練に従ってその身体を動かしていきます。互いの役割を完璧に把握しているが故の有機的な連携で女性たちはそれぞれ処置室へと運ばれ、適切な治療が開始されました。

 

「どうかご安心を。私もゴブリンによって何度も胎を膨らませておりましたが、今ではこうやって愛する人の子を宿すことが叶いました。貴女も必ず素敵な恋が出来るようになります……!」

 

「辛かったよね、怖かったよね、苦しかったよね。だが、それで終わらせるには君の人生は勿体無い。しっかりと傷を癒して、どんな方法でも良い、アイツらに復讐してやろうよ」

 

「此処にいるみんな、全員ゴブリンの恐ろしさを知ってるの。だから、誰も貴女を蔑んだり忌避の目で見るような人は居ないわ。もし泣きたかったら、私が胸を貸してあげる。……ちょっと物足りないかもしれないけど」

 

 救出された女性たちに声を掛け、そっと抱きしめたり手を握っているのはお腹の大きな森人(エルフ)の美姫たち。冒険者ギルドで寝泊まりしていた女神官を監督官さんが馬車で送り出す時に便乗して来ていました。至高神さんの奇跡が使える女騎士さんに薬学に詳しい魔女パイセンも一緒に駆け付けてくれています。向こうでは新人たちに交じって半森人夫人さんと若草祖母さんが消化の良い食事を魔法のように作り出し、ゆっくりと治療を終えた女性たちに振る舞っていますね。

 

「では、私も治療に協力してきます」

 

「私は母と一緒に調理へ回りますわ。……こういう時、治癒の奇跡を使えないのが歯痒いですわね」

 

 ゆっくりと至高神の聖女ちゃんに向かっていく剣の乙女ちゃんに、悔し気に顔を歪ませながらも自分に出来ることをやるべく駆け出した令嬢剣士さん。ダブル吸血鬼ちゃんもそれに続こうと踏み出したところで女魔法使いちゃんが2人を後ろから抱きしめました。

 

「ふぇ?」

 

「どうしたの?」

 

「2人とも、ちょっとこっちに来て」

 

 両脇にダブル吸血鬼ちゃんを抱え、女魔法使いちゃんが向かった先は衝立で仕切られた部屋の隅。不思議そうに見上げて来る2人を下ろし、服をはだけさせながら女魔法使いちゃんが床へと腰を下ろしました。

 

「2人とも、居残り組と別れてから辺境の街に着くまでずっと眠りっぱなしだったわよね? 全然生命力が足りてないんでしょ。ほら、いらっしゃい」

 

「うん、いただきます……はむ」

 

「んちゅ……ちう……んむぅ……」

 

 優しく両手を広げた女魔法使いちゃんに誘われ、左右それぞれの吸い口に唇を寄せるダブル吸血鬼ちゃん。女魔法使いちゃんの推測通り、だいぶ消耗していたみたいですね。目をトロンとさせ生命の源を吸い上げる2人。勢いが弱まったところで口を離そうとしましたが、後頭部を女魔法使いちゃんに抑えられお山に再び顔を埋めています。疑問の目で見上げて来る2人に優しく微笑みながら、女魔法使いちゃん口を開きました。

 

「いいから、()()()()()()()()

 

 女魔法使いちゃんの言葉の真意を汲み取った2人、ふるふると震える先端にそっと牙を宛がい、滲み出てきた赤い雫を白の恵みとともに吸っています。それで良いのと言わんばかりに2人の頭を優しく撫でる女魔法使いちゃん。やがて先端に滲む色が桃色から赤一色になったところで漸く頭を解放された2人が、傷を癒すように先端に舌を這わせています。

 

「ごちそうさま。……だいじょうぶ?」

 

「きぶんがわるくなったりしてない?」

 

「大丈夫よ、冒険で怪我した時よりも少ない量しか吸われてないもの。ほら、治療に行ってきなさいな」

 

 心配そうに見つめる2人のお尻を叩いて送り出した女魔法使いちゃん。溜息を吐いた後に服の乱れを整え、腰のポシェットから強壮の水薬(スタミナポーション)を取り出しました。いざ蓋を取ろうとしたところで手が滑ったのか、つるんと手から逃げ出して床に転がってしまいました。コロコロと転がる先には小さな人影。転がって来た瓶を爪先で器用に蹴り上げ、空中でキャッチしたそれをそっと女魔法使いちゃんに差し出すのは……。

 

 

 

「出産もしてない女の授乳風景なんて見て楽しいのかしら?」

 

「ケッ! いいからさっさと飲んじまいな」

 

 陽動を行うために別行動だった、クソマンチ師匠(万知神さん)です。

 

 

 

「いつの間にこっちへ帰ってきてたの? まさか船に乗ってたとは思えないし」

 

「そのまさかよ。脱出方法は自前なんて言われたら、一番楽な方法を選ぶってぇの」

 

 うわ、本当に乗ってたんですか。まぁ本気で隠形されちゃったらダブル吸血鬼ちゃんでも見つけられそうにないですし、流石師匠というところでしょか。一息に水薬を飲み干す女魔法使いちゃんを横目に、衝立の向こう側で行われている人の尊厳を取り戻す戦いに耳を傾けているようです。

 

 

「で、何しに来たの? 正直私なんかに係る理由なんて無いでしょ」

 

「……オメェ、あの向こう側で行われている行為についてどう思うよ?」

 

 ジト目で睨む女魔法使いちゃんに対し、隣に座り込んで目を閉じたまま問いを発するクソマンチ師匠。衝立の向こうを透かして見るように目を細めた女魔法使いちゃんが、驚くほど平坦な声で答えます。

 

「そうね……世界の外側から見たら何の意味も無い行為なんじゃないの? でも、私はそれをとても尊いと思う。生きようと必死に耐え抜いた彼女たちも、彼女たちを救おうとあらゆる手を尽くす冒険者や神官たちも、そして……怖くてたまらないのに、それでも人に寄り添って生きようとするあの子たちもね」

 

「そうかい。そう言えるオメェだからこそ、あの2人はお前を選んだのかもしれねぇなぁ」

 

 女魔法使いちゃんの言葉に納得したように頷き、よっこいせと立ち上がるクソマンチ師匠。座ったままの女魔法使いちゃんに後ろ手を振りつつ、去り際に残した言葉は……。

 

 

 

「君達になら、僕達の愛し子を任せられる。どうか、あの2人を幸せにしてあげて欲しい」

 

 

 

「――アンタたちに言われるまでも無いわ。一流の悲劇なんていらない。三流の喜劇で結構。あの子たちと、その周りに集まったみんな……。他の何を犠牲にしたって、必ず幸せにしてやるわ!」

 

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 

 




 ダブル吸血鬼ちゃんに相応しい異名を考えるので失踪します。

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 また、誤字の指摘も非常に助かっております。もしそれっぽい箇所がありましたらどうか遠慮なくご報告いただければと思います。

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