【実況】鬼滅の刃RPG【祝100周目】   作:ゆう31

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ま た せ た な
続きです。


特殊戦 上弦の弐『童磨』後編

 

 朝日まで残り一時間五分。

 

 

 童磨は目の前の鬼殺隊士達が態勢を整えている間、はてさてどうするかと屈託なくにやにやと笑みを浮かべながら考えていた。

 

 撤退?まさか、それだけは無い。如何に優位に事を進めながら情報を抜き取れるか、鬼殺隊は自分にとっても、無惨様にとっても癌のようなもの。

 

 はてさてどうやって有益な情報を持ち帰られるかな。

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーわあ速い……ね!」

 

 

 

 戦いの音を奏でたのは不死川だった、獰猛な獣の如く、暴風の嵐の如く童磨に刃を振るう。

 

 

 振われた刀を童磨はいつの間に回収した鉄扇で対処し、もう片方の鉄扇で“もう一つの風”を対処する。

 

 粂野は不死川とほぼ同時に攻撃したにも関わらず、だが童磨には届かない、風の呼吸使いの二人の連携は、だが童磨には対処できる範囲内で。

 

 だからこそそこにもう一人、二人の実力に遜色無い、煌めく一撃は。

 

 

「ーーーわわっ、足切られちゃった」

 

 

 確実にその刃を届かせる。足が切られ、崩れた体を狙った二つの斬撃に、だがその刀が届く前に冷気をまとった二つの扇子を連続で振るい、湾曲した氷柱を生み出す技がその刀を届かせない。

 

 その次には足を回復させた童磨が鉄扇を粂野に振るい、だがその鉄扇は臨花の刀に防がれる、その僅かな硬直を不死川は逃さない。

 

 

「風の呼吸 弐ノ型 爪々・科戸風!」

 

 

 右肩へ刀を大きく振りかぶり、一回で爪のような攻撃を多数繰り出す、その猛攻に童磨は大きく後退する。

 

 

 後退した所を粂野が狙うが、その前に上方から無数の鋭く尖った巨大なつららの落下に対応せざるを得なく。

 

 

 一対三にも関わらず、攻撃を転じ切れない現状に不死川は思わず舌打ちした、漂う霧は、極小の毒は風の呼吸の型で薙ぎ払える、霧散できる、呼吸の心配は油断しなければ平気だ。

 

 だというのに、この実力、そして何より未だに“底が知れない”

 

 

 いつかに戦った下弦の壱とはまるで大違いだと不死川は“笑み”を浮かべた、彼にとって相手が弱いか強いか、そんなことはどうでも良い。

 

 

 醜い鬼共は俺が殲滅する。

 

 

 ただ、それだけだ!

 

 

 

「風の呼吸捌ノ型 初烈風斬り!」

 

 

 童磨を中心に回転するように攻撃する不死川に童磨は冷静に対処しつつ、評価を改めた。

 

 この中で一番強い隊士はこの風の呼吸使いの男だ、この呼吸の攻撃も此方が攻める隙が少ない、一対一なら対処できるが、この男だけに構っていればーーーーほら来た。

 

 

 

 “煌の呼吸…… 壱の型  光彩奪頸!

 

 

 雷の様な閃光で踏み出し流れる水の様に刀を頸に向け、大地を踏み出し回転斬りの要領で風を生み出す、煌びやかな白い閃光。

 

 その一撃に長けた攻撃に童磨は両方の鉄扇で受け止める、受け止めた隙を突いて不死川が左腕を切断した。それとほぼ同時に粂野が右腕を切断する。

 

 

「あれ、ピンチ?」

 

 

 絶好の機会。

 

 

 臨花の振るった刀が童磨の頸を捉えるーーーその瞬間、氷の御子の上体像が三人の目の前で錬成され、凍てつく風吹が解き放たれた。

 

 

 

「ーーーっくそ、おい!無事かテメェら!」

 

 

「平気、戌亥ちゃんは!?」

 

 

 “大丈夫……!次は決める!”

 

 

 

 三者ともに童磨の攻撃を避けられたが、既に童磨の腕は元に戻り、鉄扇を手にして笑顔を浮かべる。後一歩が届かない。

 

 

 だが、そこに。

 

 

「ーーーごめん、待たせた、次からは私も」

 

 

「俺もやる」

 

 

 応急手当を終わらせた真菰と冨岡が次の戦闘に加わる動きを見せて、臨花は態勢が整った事を悟った。

 

 

 三人では後一歩が届かなかった、なら次は五人で届かせる、目の前の鬼は確かに強い、今までの鬼より、遥かに。

 

 

 だが、だからこそ五人揃ったこの状態なら。

 

 

 次の攻防ならば。

 

 

「うーん、五人かあ……みーんな柱みたいに強いし、実際三人は柱っぽいし?さすがに厳しいかなあ、負けちゃうかも俺」

 

 

 

ーーーーーああ、確かに五人ならば、上弦に届くだろう、それは目の前の上弦の弐、童磨であっても苦戦を強いられ、頸を落とされる“かもしれない”と思わずにはいられない。

 

 臨花は正しかった、卓越した実力者である五人の鬼殺隊士ならば、上弦の頸に刃を振るう事は可能だ。

 

 

 

「だからうん、ちょーと本気出そうかな(・・・・・・・)

 

 

 

 ああ、童磨一人(・・)なら。

 

 

 

 だが、こと童磨に限ってその常識は通用しない。

 

 

 最初に“ソレ”と対峙したのは、粂野匡近だった。

 

 

 唯一一人だけやや孤立した立ち位置におり、そして最も童磨に近く、だからこそ、その現象に一番最初に遭遇し。

 

 

 刀を振るうよりも前に、両足が切断された(・・・・・・・・)

 

 

 

 

「ーーーーー匡近ァ!」

 

 

 

「……嘘でしょ……?」

 

 

 

 それは童磨の腰程の、自分を模した氷人形、その氷人形の一人が、粂野の両足を切断したのだ。

 

 

 数にして“二つ”の氷人形が、童磨の血鬼術から生み出された。

 

 

 

 血鬼術 結晶ノ御子

 

 

 

 「さぁて、まだまだこれからだぜ?鬼殺隊」

 

 

 未だに夜は深く、三回戦目を告げる鐘の音は、絶望にも似た音で奏でられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結晶ノ御子。

 

 

 それはおそらく、数ある童磨の技の中でも最も凶悪な技で、氷人形は完全な自律戦闘が可能なだけでなく、あろう事か本体と同じ血鬼術を同等の威力で使用する。

 

 分身の人形1体1体の攻撃力が童磨本体と同等の氷人形は、この手の血鬼術にありがちの欠点が何一つ存在しない。

 

 分身を出す事によって童磨自身の攻撃力が下がる事もなければ、分身が受けた攻撃が童磨に返ってくる事もない。

 

 

 もし、童磨が本気ならば、それこそ”2体“と言わず、5体、6体と量産し、この戦いを勝利する事など造作ではないのだ。

 

 

 ソレをしないのは単に、情報のため、今後の戦いに活かす為である。

 

 氷人形が得た情報は記録されて童磨本人へ送られる、氷人形の一つは水の呼吸使いの男とやや優勢に対峙してるのも童磨本人に伝わるし、もう一つの氷人形は風の呼吸使いとほぼ互角の戦いをしているのもわかる。

 

 

 では童磨自身は?残った雪の様な呼吸を使い出した少女と、煌びやかな見ていて“目がチカチカ”する少女と戦っている。

 

 

「君たちの連携、すごいなあ!まるで阿吽の呼吸ってやつだね!でも残念!その攻撃じゃ俺に届かないぜ?ほら、次はどうする?何して遊ぼうか!」

 

 

 

 その言葉に臨花は苛立ちながらも冷静に、どうすれば良いか必死に考える。

 

 

 この口ぶりから、恐るべき事だが、未だに油断と慢心がある、つまりまだ底が見えない、あの氷人形を出しても尚、そうであると思わされてしまう。

 

 だからといって諦めるか?否、諦めるわけが無い、必ず勝つ、その頸を落とす。だが気力だけでは、想いだけではこの目の前の鬼は遥か上過ぎる。

 

 

 突破口だ、何かの突破口が必要だ。

 

 

 

「ーーーッぅ!」

 

 

 

 真菰が思わず呻く、その声を聞いて臨花は即決した。

 

 

 続く攻防で傷が増えた、自分はまだ動けるが、一番傷を受けている真菰は限界に近い、応急手当をした傷口も広がってしまう。

 

 それになにより、不死川さんも冨岡さんも何とか持ち堪えているが、これ以上傷を受けたら寒さも相まって動きが鈍る、それは自分にも当てはまる、全力が出せなくなる。

 

 粂野さんも戦線を離れているとはいえ、この攻防が一気に劣勢になったら、あの鬼は確実に殺しにくるはず。

 

 

 

 もう時間がない、決めるなら、やるなら、直ぐにでもやるしかないーーー!

 

 

 

 バァン!!!

 

 

 

 背に背負った銃を片腕で取り出して、冨岡の方の氷人形に向けて放つ、弾丸は三人が参戦した時に装填済み、日輪刀と同じ素材で作られ、同じ素材の特殊な弾丸は、防御に徹した童磨であっても腕を破壊する一撃!

 

 火縄銃を片腕で撃つのは適切ではない、ただの火縄銃なら兎も角、日輪刀と同じ素材で作られた唯一無二のこの武器は、身に掛かる反動が大きい。

 

 

 衝撃が腕に伝わる前に仙術の要領で外に流す、それでも痺れは残るが、現状を突破するならこれしか方法はなかった。

 

 

 

 

「え、うそでしょ」

 

 

 

 分岐点は正にこの瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 冨岡は上半身が破壊された氷人形を見て、考えるまでもなく本体の童磨の方へと駆け出した。

 

 

 それとほぼ同時に不死川は、本体が動揺し、分身が一瞬動きを止めた隙に強力な一撃を叩き込んで、破壊し、その勢いのまま本体に向けて飛翔する。

 

 

 

「ーーーーーッ!雪の呼吸 弐の型桜吹雪・雪崩れ!!

 

 

 

 真菰は臨花に向けられた鉄扇を、その鉄扇から血鬼術が放たれる前に、刀を振るい、受け止め、水から雪へと形を変え、雪崩の様な剣戟を繰り出した。

 

 長時間の戦闘で、遂に真菰の持つ刀は負担に耐えきれず、その攻防でヒビが入り、ついには折れた。

 

 だけど、この一瞬なら。あの鬼の頸に届く!

 

 

 攻撃を止められ、追い詰められた童磨は、自らの立ち位置と他四人の隊士の位置を冷静に精査し、おっとこれはこれは……と、ここまでの長い戦いで、初めて。

 

 

 

 

 笑みを消した。

 

 

 

 

「水の呼吸壱の型 水面斬り!」

 

 水平に刃を入れた、決死の一撃。

 

 

 

「風の呼吸壱ノ型 塵旋風・削ぎ!」

 

 直線に伸びる、決死の一撃。

 

 

 

“煌の呼吸壱の型 光彩奪頸!“

 

 煌びやかに頸を狙う、決死の一撃。

 

 

 

 冨岡と不死川に臨花、現柱の三人の全力の一撃が童磨に襲いかかる。

 

 

 

 久々に感じた命の危機、生命としての最大の危機に、追い詰められた童磨は一瞬の熟考の後、行動した。

 

 

 

 

 ーーーーーーーまぁ十分楽しんだし、もういいか。

 

 

 

 

 その頸に三つの刃が届くかと思えたーーーその瞬間、巨大な氷の仏像(・・・・・・・)が童磨と四人の鬼殺隊士の間に出現した。

 

 

 足を切り落とされ、戦線から離れた粂野はその光景をみて、尚もまだ強力な血鬼術を持っているのかと驚愕し、慄いた、あの鬼は自分の分身を増やしても、まだ本気を出していなかった。この氷の像こそが、本当の奥の手なのかーーー!

 

 

 

 

 血鬼術 霧氷・睡蓮菩薩

 

 

 

 その質量を駆使した単純な打撃だけでも十分過ぎる程に強いのにも関わらず、一瞬で全身を凍結させる程の冷気を仏像は放ち、四人に襲いかかる。

 

 

 真菰は回避を試みて、だが受けた傷が、体の冷えが回避し切る前に凍結させる冷気が襲いかかり、左手が凍り、手首から先が”破壊“された。

 

 

 

 それ以上先に、完全に凍りついて砕かれる前に、冨岡が即座に真菰を庇い、土壇場で無数の斬撃で、自分の間合いに入った仏像の冷気を、質量を切り刻む。

 

 それは後の冨岡義勇が編み出した水の呼吸の奥義、拾壱ノ型 「凪」そのものであった。

 

 だが、それでも尚捌き切れず、大きく傷を受けて、その場に留まってしまう。

 

 庇われた真菰もまた、無くなった左手首の応急処置の為に動ける余裕は無い。

 

 

 不死川は咄嗟に回避を試み、時に風の呼吸で突破し、持ち前の身体能力の高さから何とか切り抜けるものの、両腕が凍ってしまい、一歩でも動けば簡単に腕が体から離れてしまう状態になってしまった。

 

 日が登るまで血鬼術は解かれない、これ以上の戦闘は出来ない。

 

 

 

 

 そして臨花は、今までの経験の中で後にも先にもこれ以上の実力をもった鬼は今後先現れないかもしれないと言わしめる、思わされるまごう事なき“強敵”に相対して。

 

 

 走馬灯の様に記憶が駆け巡った。

 

 それは気しくも真菰の時の様な、時間が止まったかの様な、感覚。

 

 

 最初に思い出したのは、やはり父だった。

 

 

 厳格な、厳しく、岩の様な父は、だけども愛情を持って私を育ててくれた。

 

 母の顔は思い出せない、物心がつく前に居なくなってしまったから、鬼に殺されてしまったから。

 

 

 真菰の笑った顔が、不死川さんの真剣な顔が、しのぶの冷静にみえて、照れるような表情が、カナエさんの穏やかな微笑みが、師匠達の温かな思いやりが、冨岡さんの凪の様な、悲鳴嶼さんの大きな背中が、宇髄さんの助言が、煉獄さんの……煉獄くんの、今まで出会った、みんなの記憶が。

 

 

 頭の中で駆け巡って、巡り回って、ふと、声が聞こえた。

 

 

 

 

 

「俺とあいつの子であるおまえに……不可能は無い」

 

 

 それは確かに父の声のようだった。

 

 

「臨花なら、大丈夫」

 

 

 それは、赤子の時に聞いた声にそっくりだった。

 

 

 

 

 限り限りの命の奪い合いというものが、どれ程人の実力を伸ばすのか。

 

 

 

 火を付けた私のこの心は、誰にも消す事は出来ない、私が付けた火は、私自身が消すものだ。

 

 

 他の誰にも邪魔させない。

 

 

 

 目の前を覆い尽くすほどの大仏は、巨大で強力な血鬼術は、刻一刻と臨花の体に襲いかかる。

 

 

 それを見て、臨花は。彼女は。

 

 

 

 

 

 一瞬、ほんの一瞬だけ心を無にして。

 

 

 

 

 万力の握力で刀を握った(この一瞬に命を賭した)

 

 

 

 

 

「ーーーーーーー煌の呼吸 参の型 星流れ・破天御剣(はてんみつるぎ)!!

 

 

 

 煌びやかな流星が、まるで隕石の様な広範囲攻撃は一点に大仏へと向かい、その一撃は霧氷菩薩の半身が崩れ掛ける、ただ完全に崩壊してない。

 

 

 この一撃でも完全に落とせない、崩れた氷が臨花に降りかかろうとした時。

 

 

「水の呼吸 陸ノ型 ねじれ渦!」

 

 

 冨岡が最後の力を振り絞るように、間に入って、身体を大きくねじって、渦のように回転して斬る。

 

 

「行け」

 

 

 

 “ーーーーありがとうッ!”

 

 

 

 飛翔。

 

 

 終わらせる、この絶好の機会を、皆が生み出したこの瞬間を、ここまで繋げてきた一撃を、あの鬼の頸に刃をーーー!

 

 

 

 

 童磨は本当に本心から驚愕した、霧氷菩薩が崩される一撃は想定していなかった、これを繰り出せば終わると睨んでいた。

 

 結果は誰一人死んでいない、雪の呼吸使いは後一歩の所で水の呼吸使いに邪魔され、見たことない呼吸で反撃し、風の呼吸使いは腕こそ凍らせたが、日が登れば元通りになってしまう、未だに命が残っている。

 

 

「ーーーーっ結晶ノ御子!

 

 

 童磨は反射的に分身を繰り出した、霧氷菩薩に多くの神経を使った為、瞬時に作り出した氷人形はたったの一人だが、それでも本体と変わらない性能の氷人形は強力で。

 

 

 だが彼女は、戌亥臨花は止まらない。

 

 

 極限の中、死地の中で彼女はたった今、覚醒(・・)した。

 

 

 

 “どけーーーッ!肆の型 虹霓!“

 

 

 

 氷人形が臨花の前に立ち、対の鉄扇を、血鬼術を繰り出そうと向けて、だがその攻撃が臨花に当たる前に、氷人形は破壊された。

 

 対の先の究極、一瞬の間に相手の動きと同時に刀を抜き、即座に切り刻む、必殺の反撃攻撃、覚醒に至った臨花は、本体と変わらない実力を持つ氷人形にその呼吸を完璧な瞬間で使った。

 

 

 距離にして、三歩。それが童磨と臨花の距離だった。

 

 

 

 一歩目。童磨は体勢を整え、臨花は赫くした刀(・・・・・)を童磨に向けた。

 

 

 

 二歩目。振われた鉄扇から繰り広げられる血鬼術、左右から別の血鬼術が臨花を襲う。その動きは童磨から見て、完全に、完璧に自分の動きを前持ってわかっていないと回避など到底不可能であった。

 

 だが臨花は、透き通った視界(・・・・・・・)で、己の姿を残像にして避け、それでも避けきれない血鬼術を縦横無尽に稲妻の如く動いて最小限の傷に留める。

 

 

 

 

 三歩目。童磨の頸に臨花の刀が届く距離に至った。

 

 

 童磨は本能で理解する、あの刀はダメだ(・・・・・・・)、あの赫い刀が頸に届いた時が自分の最後だ。

 

 もう霧氷菩薩を使える気力は無い、分身を繰り出す余裕も無い、粉凍りすらも出せない、持ち前の強力な血鬼術は今この瞬間に限ると扱えない、対の鉄扇で受けきる他ない。

 

 

 

 臨花もまた限界だった、如何に覚醒を得たとしてもこれまでの長時間の戦闘で体力は、気力はとっくに限界の先にいる。

 

 氷の仏像を破壊し、氷人形に反撃攻撃を決め、童磨の攻撃を回避するのにも呼吸を使った今、煌の呼吸の型を使う余力すらない。万力の力で赫くなったこの刀を頸に向けて振るうしかない。

 

 

 

 刹那、童磨と臨花の目が合う。

 

 

 互いが互いを見ていた。

 

 

 いつ出現したのか陽の光の様な()が、童磨の目に。

 

 

 そこにある確かな“恐怖”の感情が、臨花の目に。

 

 

 

 

 ーーーーー激突音。

 

 

 

 

 己の頸を守る為に振るう対の鉄扇と、相手の頸を落とすべく振われた赫刀が激突し、衝突し。

 

 

 

 

 

 “くたばれよ……ッ!ここで消えろ!上弦の弐ッ!童磨!”

 

 

 

 

「やっと俺の名前を呼んだねッ……!臨花ちゃん!」

 

 

 

 

 

 

 

 その拮抗は互いに譲らず、一瞬かはたまた永遠に続くのでは無いかと思われる様な、互いの生存を賭けた一撃は。

 

 

 

 一瞬、たった一瞬、されど一瞬、臨花に軍牌が上がった。

 

 

 

 童磨は悟った、防ぎきれない、この一瞬の攻防に限りこの目の前の少女は自分に勝ったーーー!

 

 

 

 

 

 

 童磨の頸に刃が振われる。

 

 

 

 

 

 

 そして、その瞬間。

 

 

 

 

 童磨の頸が落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーーーっ……はぁ……っ、めちゃくちゃ痛い、けど……俺の勝ちだぜ」

 

 

 

 

 

 確かに童磨の頸は落ちた、だがそれは童磨が赫刀で斬り落とされる前に、自分で頸を斬り落として直ぐに繋げたからだ。童磨も賭けだった、少しでも判断が遅かったら童磨が自決する前に臨花の赫刀が頸を斬っていた。

 

 

 だが結果は童磨の勝ちだ。赫刀の強烈な痛みが体を蝕み、鬼であるというのに息も絶え絶えで、再生も遅い。血鬼術を使う体力もない。

 

 

 だがそれでも、この鉄扇を下ろし、目の前の、同じく息も絶え絶えで、刀はこの激戦で遂に折れ、童磨を殺す手段はもう無い。だがその目だけは、爛々と、火が付いたかの様に燃えている少女を殺す術はある。

 

 

 童磨は考えるまでもなく、この少女をここで殺さなければならないと結論付けた。

 

 

 

「楽しかったよ、臨花殿(・・・)

 

 

 

 油断なく、慢心なく振り落とした鉄扇は。

 

 

 

 

 

「ぐっ……?!」

 

 

 

 飛んできた日輪刀に阻害された。

 

 

 

「ぐぅぅ……!やらせない、お前に、その子を殺させないッ!」

 

 

 

 それは粂野匡近だった、両足が斬られてもなお、水蓮菩薩の強大さに、童磨の底知れなさに驚きながらも、確かに恐怖を感じても、鬼殺の心は、その火は消えなかった。

 

 だからこそ対局を見て、臨花の行動に目を見張って、その命が奪われようとした時に、両足が無いのならと、思いっきり日輪刀を投擲し、童磨の腕に直撃し、貫通し、行動を阻害する事に成功させた。

 

 

 

 そしてその時間稼ぎは、この中で唯一、まだ動ける者の動きを可能にさせた。

 

 

 

「臨花は、私が守るーーーッ!」

 

 

 

 真菰は駆けた、親友の危機に、自身の傷すら厭わず、折れた刀を握って、限りなく疾く、走って、駆けて。

 

その様子を見た童磨は、少しばかりだが体力の回復した今なら左手の無い、刀の折れた鬼殺隊士程度、未だ傷が痛むが問題ないと判断した。

 

 

 

 童磨が対の鉄扇を構え、真菰が折れた刀を構えーーーーー

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー日が、登ろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 瞬時に童磨は影に姿を隠した、これ以上は無理だ、潮時だろう。

 

 

 誰一人殺せず、食べることも出来ない……ああこれは確実に無惨様に怒られるし叱られるなあと“表面上”は苦笑を浮かべた。

 

 

 

「あーあ、時間切れかあ、結局誰も殺せないし、食べられなかったし……まぁでも、君達の事を知れたのは、良い情報かな?」

 

 

 

 ”くっ……!はぁ……っ待て!“

 

 

「待てないかな、死にたく無いし。俺も悔しいよ?君を殺せなくて……次会ったら、必ず食べてあげるからね、臨花殿」

 

 

 

 上弦の弐は影に消える様に姿を消した、後一歩で、後ほんの少しの”ナニカ“さえあればと、誰もが思った程の、激闘、激戦。

 

 

 太陽は暖かく日の出を迎える、もはや限界を超えた臨花は、握った刀の力を抜いた、それと同時に透き通った視界が元に戻って、体の熱も戻った。

 

 臨花は、ふらふらな体で、限界の思考で、寿命の前借りをした事を漠然と理解した。

 

 一瞬だけだったがあの瞬間、人としての限界を確かに超えた。

 

 

 駆け寄る音が聞こえる、視界に映った安心しきった真菰の表情を見て、臨花は安心して、真菰と同じ表情を浮かべて。

 

 

 

 

 全ての力を出し切ったように、倒れた。

 

 

 

 

 

 ★☆★☆★ 勝利!称号【花を咲かす者】を獲得しました。★☆★☆★

 

 

『 〜BOSS 上弦の弐 童磨戦 悪鬼撤退!!!

 戦闘評価 A−

 戦死者 0

 共闘補正+++

 最終評価 A』

 

 

 

それは、その戦いは鬼殺隊の歴史に残る一欠片。十二鬼月の中でも上位に位置する鬼の一人、上弦の弐、童磨戦。

 

 

 

 参加者六名。

 

 

 軽傷な人物は誰一人居なかった、されど一人も戦死者を、この戦闘での死者を出さなかった。

 

 

 冨岡義勇は傷が深く、半年間は床に就く必要があり、不死川実弥もまた傷と、氷漬けにされた腕の治癒に半年の休養。

 

 

 その二人よりも受けた傷が大きく、更に左手首を失った真菰は、傷口から冷気を長時間浴びた事もあり、万全に回復するまでに七ヶ月の休養を必要とした。

 

 

 足を斬り落とされた粂野匡近は命こそ別状は無いが、もう二度と立つことの出来ない体になり、鬼殺隊士として活躍する事は不可能になった。

 

 

 胡蝶カナエはもっと酷い、体内の様々な臓器が壊死、利き手の腕は動かす事すら出来ず、視界も殆ど霞む様になり、そして何より、肺が壊死し、もう二度と呼吸は使えない、普通の呼吸が出来るだけでも奇跡であった。

 

 

 

 

 

 

 

 そして最大の功績者である戌亥臨花は、浅くない傷は多かったが、深刻な傷は一切無かった、この中で一番の軽傷者は臨花だろう。

 

 だが最後の一瞬、限界を超えた力と体力を、気力のみで踏ん張った事が原因なのだろうか。

 

 

 二週間経ち一ヶ月経ち、三ヶ月が経ち、半年、七ヶ月、月日が過ぎていく、それでも戌亥臨花は、目を覚ます事はなかった。

 

 

 だが彼女に関わりのある人物達は、目覚める事を確信していた。いつか、必ずと、確信していたのだ。

 

 

 

 

 

 

 それは確信ではなく、願いだったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 童磨戦から10ヶ月後。

 

 

 戌亥臨花の目覚めた日は奇しくも、胡蝶カナエの代わりに、胡蝶しのぶが”蟲柱“として就任した同日の出来事だった。

 

 




対戦ありがとうございました、感想評価、誤字報告ありがとうございマ、ここすきも待ってるぜ。

こいつここまでしても死なないのなんなん、強すぎ。戦闘描写も長引くわ(満足)
炭治郎も二ヶ月寝たし臨花ちゃんも10ヶ月寝かせてなピィ。

山場を越えたので次回は金曜ぐらいになると思います、よろ。
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