【実況】鬼滅の刃RPG【祝100周目】   作:ゆう31

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無限列車が始まるーーー


無限列車リプレイ『真菰』

 

 目を開ける。

 

 

 

「起きた?」

 

 

 聞こえた声に振り向くと、そこには私の親友、誰よりも大切で、守りたい人ーーーーーー戌亥臨花が、床に座りながら、私に声を掛けた。

 

 

「おはよう、真菰」

 

 

 

 ……ああ。

 

 

 

 

「おはよう、臨花」

 

 

 

 

 ーーーーーーーこれは夢なんだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーでね、それで……真菰?」

 

 

「……あ、うん、ごめん、何だっけ」

 

 

「だからーーー」

 

 

 

 ……夢なのは確かだ。

 

 

 だってそうじゃなかったら私の左手は銀色(・・)の筈だから。

 

 だからこれは夢、現実の私は多分寝ている。

 

 

 ……少し思い返してみよう。

 

 

 

 煉獄くんと無限列車に向かって、乗車した、その前に何度か鬼を倒して、お弁当を頂いたのも覚えてる。

 

 そのお弁当を全部買って、とんでもない量を食べる煉獄くんも覚えている、うまい!うまい!って言いながら美味しそうに食べるから釣られて笑ってしまった。

 

 

 彼は人を元気にさせる、良い人だ、それに多分、柱の中で……冨岡さんと不死川さんを除けば、彼が最も臨花に近い実力を持っている。

 

 無一郎くんも呼吸の練度と技術なら十分臨花に近いけど、まだ経験が足りない。その点煉獄くんは経験も高い。

 

 私よりもきっと強くなれる、いや……もしかしたらもう並ばれてるかもしれない。

 

 ああでも確かに、富岡さんの言いたい事が少しだけ分かった気がした、私は冨岡さん程、暗い思考を常にしてる訳じゃないけど、それでも考える時はあるから。

 

 

 でもそれはそれ、私は割り切れてるから、置いておく事が出来る。煉獄くんとの共同任務は初だけど、合わせられる。

 

 そんな風に考えていたら、炭治郎と、それから善逸君と伊之助くんも無限列車に居たから驚いた。

 

 

 柱二人居ても隊士をこの任務に向かわせた采配はきっとお館様の判断だ、だから多分、お館様はこの任務が『十二鬼月』の案件だと睨んでるって事が分かった。

 

 

 炭治郎一人なら厳しいかもしれない、でも三人なら……うん、下弦の鬼は倒せると思う、彼らは凄い、善逸くんは多分、耳が良いし、伊之助くんは感覚が鋭いと思う。

 

 

 炭治郎は私の育手、鱗滝さんと同じく鼻が良い、鱗滝さんがいうには、炭治郎の方が鼻が良いらしい、人が思ってる感情もわかるもんね、凄いよ。

 

 

 私はそういうのはないから、なおさらそう思う。

 

 

 それで、そうだ。

 

 それからだ。

 

 

 ……あの瞬間か?

 

 

 切符を切った時、急に視界が暗くなった気がする。

 

 急に眠くなる事なんてあり得ない、恐らく血鬼術。

 

 

 ならこの夢は、血鬼術で見せている幻のようなものか。

 

 

 

 人の心に土足で踏み入れる、最低で……残酷な血鬼術。

 

 

 

「……真菰?」

 

 

「……ああ、でも」

 

 

 

 ……それでも、頭で理解出来ていても、この夢は甘い。

 

 こんな日常がいつまでも続くのなら、ああ、それは確かに、私が望むモノなのかもしれない。

 

 

 鬼の事だ、幸せな夢を見せた後に、酷い夢を見せて、精神の隙を突くんだろう。

 

 この手の血鬼術は初めてじゃない、一度、過去に受けた事がある、夢ではなかったが精神に揺さぶりをかける血鬼術だった、その時よりもこの夢の血鬼術は強い。

 

 きっかけ一つで夢に落とす、目覚め方がわからない以上、どう抜け出すかも模索しづらい。

 

 

 十二鬼月だ。

 

 

 上弦?下弦?……どちらにせよ、この血鬼術を使う鬼は醜悪だ。

 

 

 

「……臨花」

 

 

「……?」

 

 

「臨花に会えて良かった、あの時助けてくれて、ありがとうね」

 

 

「……むう」

 

 

 少し気恥ずかしそうに目を逸らせる臨花、夢ながらよく出来てる、私の記憶から作っているのだとしたら、まぁそれはそうかと思うが。

 

 

 ……ただ、静かに二人で暮らしたい。

 

 

 

 それが私の思い描く、幸せな夢の定義だと言うのだろうか、ああ、まあ、間違ってない。

 

 臨花だけじゃない、不死川くんや冨岡さん、他の柱の人達、蝶屋敷の民、他の鬼殺隊士、刀鍛冶の里の人達。

 

 皆と、争いのない……鬼の居ない世界で、暮らしたい。

 

 

 ……炭治郎達も回復出来たし、この任務が終わったら、お館様が手配してくれた一軒家で、家が燃やされる前の生活に戻ろうって思ったっけ。

 

 

 

「臨花は、さ。もし、私が……このまま、ずっとここに居たいって言ったら、どう言うかな」

 

 

「……?どういう意味?」

 

 

「そのまんまだよ」

 

 

 臨花は優しいから、私が諦める(戦わない)事を選んでも、許してくれるのかな。

 

 臨花の事だから、きっとそうなっても、私の想いを背負ってくれて、柱としての……ううん、鬼を狩る者としての、責務を、責任を負うのかも。

 

 片手が無くなった時、思わない訳じゃなかった。

 

 上弦の圧倒的な暴力に怖気なかったかと言われると、そうとは言えなかった、義手も直ぐに馴染んだ訳じゃない、絡繰仕掛けだったから、尚更。

 

 

 でも私はこの道を続ける事を選んだ、誰かに強制された訳じゃない、私自身の判断で、鬼殺隊を続ける事にした。

 

 

 理由は……たくさんある。

 

 

 でも決定的な理由は、あの時、臨花が上弦の弐と戦って、最後の最後で負けそうになった時に、臨花の()を垣間見た時。

 

 

 私の心が死んでも守る事を決意させたからだと思う。

 

 臨花は優しい、だけど私には厳しい。

 

 

 これは……少し、私の希望も混ざってるけど、臨花が他の人より少しだけ、私に厳しいのは。

 

 

 臨花も私の事を、大事に思ってくれているからだと、思う。

 

 

 

 ……だから、きっとこう言う。

 

 

 

 ”駄目、起きて“

 

 

 そう、言って、私を立たせてくれる。

 

 だって私は、鬼殺隊の柱だから、柱としての責務を全うしないといけないから。

 

 

 ……もし。

 

 ただの真菰なら、ただの臨花なら、どうかな。

 

 

 

 でも、そうなら、そうだったら、私達は出会っていたのかな。

 

 

 

 

「……真菰、辛い事、あったの?」

 

 

 

 

「ーーーそう、だね……辛い事、ばっかだよ、尊敬してた凄い人も、お姉ちゃんみたいな人も、切磋琢磨してた同期も、同じ育手から教えを受けた人達も……もう、居ない」

 

 

 私が救えなかった人達、間に合わなかった人達ーーー沢山だよ、嫌なんだよ、辛い事だらけな事なんて、あっちゃいけない。

 

 楽しみながら、幸せになりたいだけなんだ、私だけじゃない、皆そうなんだ。

 

 

 

「……そっか」

 

 

「でも……だから、私達のような目に遭わないように、守らないといけない、他の人達を、何より、この悲劇を終わらせたい」

 

 

「……そっか」

 

 

 

 刃を振り下ろす誰かに、私は、私達は(鬼殺隊)ならないといけない、それが私の選んだ道だから、それが臨花の選んだ道だから。

 

 

 だからもう、幸せな夢は終わり。

 

 

 

 私は幸せな現実(未来)に向けて、足を進めたいから。

 

 

 

「行くね、臨花」

 

 

「……そっ、か」

 

 

 

 多分この血鬼術は夢から覚めれば、現実に戻れる。

 

 

 夢から覚める、この夢を終わらせる、どうすれば良いかは……何となくわかる、経験と勘から、こうすれば良いんだろうなっていうのが分かる。

 

 ……直ぐに出来なかったのは、何だかんだやっぱり、この夢を手放したくないから何だと思う。

 

 

「寂しいな、もっと話したいよ、平和な場所で、ゆっくり話したい、遊びたいな」

 

「……そうだね」

 

 

「出来るかな?向こうでも」

 

 

「出来るよ、きっと」

 

 

 

 ……ああ。

 

 夢の中でも臨花は私の味方でいてくれる。

 

 でも、それはそうなんだ、臨花は私の敵にならないし、私は臨花の敵にならない、これが血鬼術で作られた舞台であっても、都合の良い、操作された夢を見せる血鬼術だとしても。

 

 

 私の精神の核は臨花だから、絶対に変わらない。

 

 

 

「……気、楽になった?」

 

 

「少しは、うん……こうして普通に話す機会は、最近は少ないからね」

 

 

「なら、良かった」

 

 

 

 そう微笑む臨花は、現実での臨花と全く変わらないーーー私が好きな、表情だ。

 

 

 いつの間にか、鬼殺隊の服装に、白群色と、薄桜色の小紋羽織に戻っていた。

 

 左手も銀色に変わっている、もう見慣れた絡繰義手。

 

 

 

またね(・・・)、臨花」

 

 

さよなら(・・・・)、真菰」

 

 

 

 

 私は別れを告げて、家の外に出て。

 

 

 右手に持った日輪刀で自らの頸を斬り落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーっ!……戻っ……た!」

 

 

 

 周囲を見渡す、周囲に居るのは……んん?これは。

 

 

 あれ、私が最後に起きた?

 

 

 ……これは、中々面目無いなあ。

 

 

「……状況確認、先ずはーーー!」

 

 

 

 音のする方へ列車を移動する、途中襲ってくる触手のようなものを斬り落とし、寝ている乗客に襲い掛かる触手も斬る。

 

 これも血鬼術?いや、これは……。

 

 

「ーーー煉獄くん!」

 

 

「む!真菰!おはよう!」

 

 

「うんおはよう、ってそうじゃないよ!状況!」

 

 

「竈門少年と猪面の少年は本体を倒しに!黄色の少年と竈門妹は一車両を任せてる!」

 

 

 乗客に襲い掛かる触手を煉獄くんは斬り落としながら端的にまず言うべき事を告げてくれた。

 

 

 成る程。

 

 

 瞬時に考える、私がやるべき事、すべき動き、どうすればいいか、何をすれば良いか。

 

 こういう時、判断を決める時、まず臨花ならどうするか考える、臨花なら先に本体を倒しに行くだろうか、なら私ならどうするか。

 

 

「煉獄くん!手伝うよ!」

 

 

「む、だがしかし……」

 

 

「陽が昇る最後まで何が起きるかわからない!何か起きた時に煉獄くんの体力は少しでもあった方が良い、私もそう……炭治郎達なら大丈夫、きっとやってくれる」

 

 

「ーーーわかった!!ならば半分程任せる!」

 

「楽勝だよ……!」

 

 

 車両を移動するーーーこの触手、血鬼術にしては妙だ、そもそも血鬼術が理外の外にある術だが、それでもどこかこれは異質、鬼の異形化した何かだと言われても納得する。

 

 そう、例えばあの時の、手鬼のような。

 

 

 

「……いや、そうか、取り込んだな、この列車を」

 

 

 列車と一体化して中に入った乗客を喰う……周到な計画、ただそれにしては触手そのものは弱い、上弦の鬼とは思えない、ならばやはり下弦の鬼。

 

 

 

 ……列車と一体化して感覚を共有していると仮定するなら。

 

 

 

「スゥゥゥ……」

 

 

 

 雪のように、津々と。

 

 

 静かに、吸って。

 

 吹雪の様に、吐く。

 

 

 

 

 ……雪の呼吸。

 

 

「肆の型 白染(しらぞめ)冰雪(ひょうせつ)!」

 

 

 

 飛翔、空から円を描く様に刀を振るって、乗客を巻き込まない様にしつつ全方位に剣戟を降り注ぐ。

 

 

 私の雪の呼吸は斬った鬼の体の動きを鈍らせる効果があるらしく、肩から雪が積もっていく様に、徐々に徐々に重りをつける。

 

 私が炭治郎と伊之助くんに出来る支援はこれぐらいしかここからだと出来ない、効果もあるかわからないけど……!

 

 

 暫くした後に、大きく揺れた。

 

 

 

「この揺れーーーやったんだね炭治郎!成長したね……っと、喜んでいる場合じゃない」

 

 

 この汽車はもう崩れる、このままだと乗客が危ない。

 

 ……救ってみせる、誰も死なせない、私だけじゃない、煉獄くんだっているんだ、出来る、出来る筈。

 

 

 そうだよね……臨花……!

 

 

 

 

「ーーーーッ!」

 

 

 

 崩れ落ちる、その瞬間に疾る、駆け出すーーー地面に落ちる前に乗客を抱えて最低限の怪我に済ませて、地面に寝かせる。

 

 それを何度も、何度も繰り返してーーーっこれで最後だ。

 

 

 ……って、あれは?

 

 

 

「善逸くん!……ん?寝てる?あれ?まだ血鬼術掛かってる?」

 

 

 禰豆子ちゃんもいる……大きな怪我はない、なら安心だ、鬼は炭治郎達が討伐してくれたはず、この二人は大丈夫。

 

 

「禰豆子ちゃん、私は炭治郎達を探しに行くから、ここに居てね」

 

「ん」

 

 

 禰豆子ちゃんは私の顔を見て頷いてくれた、よしーーーこれで終わってくれれば良いけど。

 

 

 ……夜が明けない限り油断は出来ない、いつだって鬼は何処にでも潜んでる、全員無事に帰るまで鬼殺は終わらない。

 

 周囲を探る、ここからそう遠くは離れていない筈、炭治郎達が心配だ……伊之助くんも、下弦とはいえ十二鬼月、浅くはない怪我を負っている筈。

 

 

 煉獄くんは大丈夫だろう、最優先は炭治郎達の発見。

 

 

 

「……居た、煉獄くんも一緒だ」

 

 

 倒れている炭治郎に煉獄くんが何かを喋っている、ここからじゃ聞き取れないな……でも良かった、死んでない。

 

 炭治郎達なら大丈夫だと思ってたけど、それでも心配はしてたから、ほっとした。

 

 

 二人に駆け寄ろうとして。

 

 

 経験と勘から、何か大きな、何かが近づいて来るのを感じ取った。

 

 

 

 

「ーーーッ!」

 

 

 

 

 空からナニかが落ちて、大きな衝突音。

 

 

 煙が晴れてそこに居たのは、死人の様な肌の色に紅梅色の短髪。

 

 

 右目に「上弦」、左目に「参」の文字。

 

 

 

 ーーーーーー上弦の参……ッ!?

 

 

 どうして今ここに、いやそれより。

 

 

 

 駆け出すと同時に、上弦の参が炭治郎に向かって拳を振り下ろすーーーより前に、煉獄くんの炎の呼吸が、振るわれた拳を斬り落とす。

 

 上弦の参が距離を取ったと同時に、私は炭治郎の隣に辿り着いた。

 

 

「炭治郎、体は……いや、動かない方が良い、このまま待機、良いね」

 

 

 私の言葉に、悔しそうな顔をして炭治郎は頷いた……わかるよ、助太刀したいよね、だけど今の炭治郎じゃ、助太刀も出来ない。

 

 大丈夫、煉獄くんは死なせない、炭治郎も殺させない、私も死なない。

 

 あの一瞬で既に上弦の参の腕は回復している、恐るべき回復速度、あの時戦った上弦の弐とも勝るとも劣らない。

 

 見た所純粋な武道家の印象を覚える、血鬼術は不明、あの反応速度、動き一つ一つが地面を抉る程の歩法。

 

 

 冷や汗が流れた。

 

 

「スゥゥゥ……」

 

 

 呼吸を整える。

 

 

 数年ぶりの死地。

 

 

 訪れた窮地に、私は。

 

 

 

 

 

 

 心に火を灯した(・・・・・)




次回 上弦の参 猗窩座戦 (明日か明後日出す)


感想めちゃくちゃきてて嬉しかったぞ〜これ!ほな評価もよろしくオナシェス!誤字報告ありがとうナス〜ここすきも、ほな!

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