Pocket Monster 〜∞sword ∞shield〜 作:レイバース
集団幻覚から抜け出せない者の妄想です
差し支えなければどうぞ
夢を見る
たちどころにわく拍手喝采
目の前の青年を称える声
そして私も彼を称える
「チャンピオンおめでとう、ホップ」
夢はいつもそこで終わった
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目覚ましが鳴り響き、目を覚ます
すっかり住処と化した部屋が目に入る
乱雑に投げ捨てられたトロフィー、破り捨てられた賞状や写真、その中でも唯一残っているのは顔の塗りつぶされた少女と前チャンピオンの面影のある少年の写真だった
毎日の事だが最悪の気分だ
私がチャンピオンになってから、早三十年
その間、私の体は一切合切成長しなかった。
ムゲンダイナの影響で老いる事が無くなったと、専門家に言われた。
まるで一人だけ取り残された気分だ、私は…私の心は、あの日から一歩も進んで無い
ホップはソニアと結婚し、子供がいる
マリィやビートは成長し、年相応にジムリーダーをやっている
それに比べて、私は乙女心に動かされるように、ジムチャレンジの旅をし、何か想いがあるわけでも無く、チャンピオンになってしまった
ホップの願いを奪いさってしまった
結果として、ホップはポケモン博士の道を目指した
あの時、ホップに勝ってしまったがために
吐きそうなくらい気分が悪くなる、ぐちゃぐちゃの感情に押しつぶされそうになる、なりたくもなかったチャンピオンの重圧が、さらに吐き気を誘う
ホップと結婚したソニアへの嫉妬、そんな醜い自分への自己嫌悪、楽しかったあの頃を望む憧憬、ホップが私に挑んで来ると言う妄信的な執着、キバナさんや、ホップの理由を奪った罪悪感
ソニアさんにしても、優しくしてくれた思い出が邪魔をして、妬ましいと思いつつも、何も出来ないでいる
「………はぁ」
思わずため息が出る
今日はジムチャレンジの開会式がある
ガラルの人々の為にも、自分を偽って振る舞わないといけない
普通ならば吐き出すようなくらいの濃さの珈琲を飲みながら、支度を始める
そういえばあの人に例の話を持ちかけられたのも、今日みたいな朝だった
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「何度も言っても無駄です、ムゲンダイナを利用するだなんて事に協力は出来ません。」
多忙な中、目を覚ましてから数分とたたない頃、一本の電話がかかってきた
『そう言わずに、ムゲンダイナのエネルギーは放っておくにはもったいない、それに、協力して頂ければガラルは救われるのですよ?』
「それこそ、かつてのブラックナイトの焼き回しですよ・・・今回は黙っておきますので、もう今後はそんな提案…『もし』…」
『もし、ムゲンダイナのエネルギーで、過去が変えられるとしたら?』
「っ!………詳しく聞かせてください」
それは、疲れ果てた私には、願ってもない提案だった
恋心から始まった、無間地獄のようなこの感情に、終止符を打てるとしたら………夢に見ていた出来事を、現実にできるのなら…
飛びつかない筈がなかった
内容は、ムゲンダイナのムゲンダイマックスのエネルギーを利用して、過去に干渉し、改変を行うと言うもの
「それは、実現可能なのですか?」
『…可能性は低いでしょう、ですが0ではありません、であれば出来ないなんて保証もありません、どうですか?乗る価値はありますよ?』
そこからの流れは早かった
マリィを説得し、キバナさんを引き入れ、組織を大きくしていった
ビートが来たのは予想外ではあったが、納得できないわけではない
表の事情として、慈悲活動とエネルギー研究をしている団体だと公表した
裏の目的を知っている人も増えて、ガラル以外の地方にも組織は拡大した
ムゲン団の総帥
気が付けば、そんな肩書きが付いていた
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過去に意識を向けていると、電話が鳴り響いた
ありえないと否定しつつ少し期待をしながら電話とった
「もしもし」
『もしもし、ユウリさん、ローズです』
湧いて出たのは、苛立ちと落胆だった
ホップじゃなかった、今年も挑んではくれなかった
隠しきれない理不尽な苛立ちを抑えつつ、緊急だろうと思い、対応をする
「何ですか?研究に不具合でもあったんですか?」
『準備が整いました、後は待つだけです』
事務的な連絡、楽しげなものでも無いその報告に、少女は見た目相応のように、狂ったように歓喜した
「ーっ……わかりました、開会式を終えたら詳しい話を伺います」
電話を切る
思わず笑いが溢れる、漸く、漸く叶うのだ
ムゲン団の願いが、無限団の願いが、夢幻団の願いが
私の願いが
「待っててねホップ、もうすぐだから」
ポケットの中のボールが、静かに揺れた
出来る限り続けます
バトル描写は苦手ですが頑張って書きます