仮面ライダーツルギ・ANOTHER RIDERS 作:黒井福
新年最初の投稿になります。
今回はドキュメント・レイダーとのコラボの第3話です。
本当はこの第3話が最終話になる予定だったのですが、膨れに膨れて文字数が2万字近くになってしまったので、二話分割で投稿します。
麗美と共に一夜を明かした遊は、窓から差し込む朝日に照らされ目を覚ました。
「んん……?」
目覚めて遊が最初に感じたのは奇妙な温かさだ。布団の温かさとは違う温もり。人肌の温かさだ。何かが自分の左半身に抱き着いている。
重い瞼を開いて自分の左側を見ると、そこには安らかな顔ですやすやと眠る麗美の顔があった。いや、前髪が右目に掛かっているから今は瑠美か。
「ふぁ~ぁ……瑠美、起きてくれ。そんな抱き着かれていたらわたしが起きれないよ」
「ん~ん……ん」
自由に動く右腕で瑠美の肩を揺するが、瑠美は起きる気配を見せない。眉間に皺を寄せ、起きる事を拒むように呻き声を上げながら更に強く遊の体に抱き着いた。ならばと遊は、瑠美の前髪をズラして麗美の方を呼び出した。
「麗美、起きてくれたまえ。朝だよ朝、新しい朝。希望の朝だ」
「ん~……ふぁ~」
こちらは直ぐに起きてくれた。どうやら瑠美より麗美の方が寝起きは良いらしい。寝ぼけ眼を擦りながらもしっかりと遊の顔を見て笑みを浮かべる。
「あ、遊。おはよう」
「はいおはよう。早速だが早く起きてくれ。瑠美の方は寝起きが悪くてなかなか起きてくれなかったんだ」
「瑠美は朝が弱いからね」
麗美は遊から離れ、掛け布団をどかしながら起き上がり伸びをする。寝間着が無かったので下着姿で眠ったおかげで、同年代に比べて遥かに豊かに実った双丘が強調される。
その隣で遊も体を伸ばす。こちらは寝間着をちゃんと着てはいたが、胸に寝間着が引っ張られ麗美に負けず劣らず扇情的だった。
遊の右腕が問題なく動いているのを見て、麗美はその腕を取って頬擦りする。
「右腕、動くようになって良かったね」
「にはは、動かなくなったのは君の所為だけどね」
「怒ってる?」
「いやいや。怒ってないから安心したまえ。それよりお腹空いてるだろ? 朝ごはん一緒に食べていくと良い」
「それじゃ、お布団片付けとくね」
昨夜遊に代わって布団を出したのと逆の要領で布団を麗美が片付け、その間に遊が朝食にホットケーキを焼き始める。
ほのぼのして見えるがこの2人、互いに殺し合いをする仲である事を忘れてはならない。ライダーバトルと言う、ルール無用の殺し合い。
その真っ最中ですぐそこに敵がいると言うのに、遊は暢気にホットケーキの元を混ぜている。
と、布団を片付け終えた麗美が遊の後ろから音も無く近付いた。麗美は無防備な遊の首に手を伸ばし――――――
「何作ってるの~?」
普通に後ろから抱き着き、肩越しに遊の手元を覗き見た。その様子は仲の良い友人同士にしか見えず、とても何度も殺し合いをした間柄には見えない。
「ホットケーキさ。今日は2人分だからたくさん作るよ。ところで麗美は何枚が良い?」
「ん~、三枚で十分」
麗美の答えに少食だね~と遊が返す。因みに一般的なホットケーキミックスは一人前100g=二枚分である。麗美の希望は普通より少し多い程度だ。
以前に炊飯器で作ったホットケーキを1人で全て食べつくすつもりだった、遊の方が食べ過ぎなのである。
程なくして麗美と遊、2人の朝食が出来た。麗美と遊のホットケーキの数は倍くらいの違いがある。
「麗美はホイップクリームとメイプルシロップ、どっちがいい?」
「ちょっと待ってね。瑠美、どっちが良い?…………うん、うん……ん~……うん。半分ずつが良い」
薄々予想してはいた。最初に出会った時、麗美と瑠美はアイスの味で揉めていた。どうも同じ体だが味の好みは微妙に違うらしい。
遊は自分の分にたっぷりとメイプルシロップをかけ、残りとホイップクリームを麗美に渡した。ホットケーキを半分に分けると、一方にホイップクリームをかけた。
「「いただきます」」
バターの香りを含んだ甘い匂いを放つホットケーキを切り分け口に運ぶ麗美と遊。麗美はどこか上品に運ぶのに対して、遊は豪快に切り分けて口に放り込む。
「美味しいね。ちょっと意外だったかも」
「それはわたしが料理出来ないと思ってたのかい?」
「だって昨日はコンビニ弁当だったし」
「こう見えても少しは料理出来るんだよ。そういう麗美はどうなんだい?」
「私はね…………麗美は料理上手だよ。毎日自炊してるし」
他愛ない話をしながら平和に朝食を堪能する2人。
その時瑠美が、遊の頬に付いているメイプルシロップに気付いた。食べている最中に付いたものだろう。遊はそれに気付いた様子がない。
瑠美は何も言わずにスッと指で遊の頬に付いたシロップを掬い取った。そこで漸く遊も己の頬にシロップが付いていた事に気付く。
「おっと、悪いね」
遊の感謝に、瑠美は笑みを浮かべながら掬い取ったシロップを舐めた。
その後も和気藹々としながら朝食を済ませた。そして遊が食器を片付けようとすると――――――
「あ、片付けはアタシがやっとくわ」
「いやいや、それは流石に悪いって」
「いいのいいの。一宿一飯の恩義ってやつで」
「そうかい? それならまぁお願いしようかな」
遊は瑠美の言葉に甘え、彼女が食器を台所に片付けている間にリビングで寛いでいた。瑠美は2人分の食器をシンクに入れ洗い始める。
それを終わらせ、瑠美のまま遊の隣に戻ってきた。戻ってきた瑠美に、遊は早速カードデッキを取り出した。
「さて! 腹も膨れた事だし、腹ごなしにいっちょやるかい?」
食後の運動に誘う的なノリで殺し合いを提案する遊に、瑠美は満面の笑みで頷いた。
「奇遇ね! アタシも同じ事言おうと思ってたところよ! アヒャ!」
「にはは!」
「「変身!!」」
朝も早くから瑠美と遊は仮面ライダーに変身し、ミラーワールドに入っていった。ウィドゥとレイダーは、先程の和気藹々とした雰囲気も何処へ行ったのかと言うくらい全力で殺し合いに臨んだ。
「アヒャヒャヒャ!」
ウィドゥがブラッククローをレイダーの全身に満遍なく叩き込んだ。先日とは違い、今度は毒を全身に隈なく蓄積させタイミングをみて一斉に全身を毒で侵すつもりの様だ。
その作戦に気付き、レイダーはそれを正面から打ち破るべく攻め手を強めた。潔いとも言えるレイダーの行動に、ウィドゥは歓喜の声を上げた。
「思った通りね! 遊ならそう来ると思ってたわ!」
「にはははは! これが一番楽しいからね! 君もそうだろう!」
「そうねそうね! 麗美もとっても喜んでるわ!」
爪と拳がぶつかり合い、すり抜け合って相手に突き刺さる。徐々に互いに蓄積するダメージと毒。前までは釣り合いが取れていなかったそれも、今ではほぼ等倍だ。ブラッククローの持つ毒の威力が上がっているので、前よりも早く毒がレイダーの全身に回る。
毒の効果で、僅かにレイダーの動きが鈍った。その瞬間を見極めたウィドゥの一撃が、鋭くレイダーの体を切り裂いた。
「うぉっ!?」
明らかに以前よりも増している攻撃力に、しかしレイダーは仮面の奥で歓喜の笑みを浮かべた。
「にはははは! 良いね良いねぇ! 良い一撃だ! なら、これはどうかな!」
レイダーは一瞬の隙を突いてウィドゥに至近距離からガッツナックルでロケットパンチを喰らわせた。この近距離ではどう頑張っても避けること叶わず、ウィドゥは大きく吹き飛ばされた。
「あが、はぁっ?!」
「まだまだぁっ!!」
レイダーの隠し技で吹き飛ばされたウィドゥに、更なる追撃が襲い掛かる。ロケットパンチで発射したガッツナックルの回収も時間がもったいないとばかりに、素の拳でウィドゥを直接殴りつける。
上から下から左右から、ウィドゥの顔をレイダーの拳が殴った。
「うがっ!? ぐ、ぎ……アヒャヒャヒャ!」
しこたまに脳を揺すられたが、その痛みはウィドゥにとってこれ以上無い程甘美な痛みだった。レイダーに殴られながら、ウィドゥはレイダーの肩を掴み頭に頭突きを喰らわせた。先日の意趣返しだ。
「ふん!」
「あいだ?!」
まさかの頭突きにレイダーの動きが止まった。
するとウィドゥは、今までにやってこなかった攻撃をレイダーに仕掛けた。素早くレイダーの背後に回ると、後ろから組み付いて更に脇腹にブラッククローを突き刺したのだ。
「うぐぅっ?!」
脇腹に毒を流し込まれたのを合図に、全身に蓄積した毒が一斉に牙を剥いた。全身が痺れ、力が抜ける。崩れ落ちるレイダーを、後ろからウィドゥが抱きしめた。
「アヒャヒャ! つっかまえた!」
後ろからレイダーに抱き着いたウィドゥは、動けないレイダーの腕や足のアンダースーツ部に何度もブラッククローを突き刺した。
「いぎっ!? あ、づ!?」
「うふふふふ…………あ~……遊……」
ウィドゥはレイダーの上げる苦悶の声に、熱の籠った声を上げながらレイダーの血がこびり付いたブラッククローの爪を愛おしそうに眺めた。そして何を思ったのか、その血を自分の頬に塗り付けた。
「ん……遊の匂い…………うふふふ」
仮面越しにも分かる妖艶な笑みを浮かべ、ウィドゥはレイダーをこれでもかと言うくらい抱きしめた。抱きしめると言うが、一切の容赦の無いその抱き着きはレイダーを絞め殺そうとしているかのようであった。もしウィドゥにレイダー並みのパワーがあったら、本当にそのまま絞め殺していただろう。
しかしその時、レイダーの腕が僅かに動いた。ウィドゥがレイダーとの戦いで成長したように、レイダーもウィドゥとの戦いで徐々にだが毒に対して耐性を持ち始めたのだ。
少しだが動くようになった腕で、肘を叩き込みウィドゥを引き剥がす。脇腹に諸に肘を叩き込まれたウィドゥは、思わずレイダーを解放しその場で脇を押さえて蹲った。
「うぐっ!? げほ、げほ……」
「いつつつ……あ、時間だ」
ウィドゥを引き剥がし少し余裕を取り戻したレイダーがふと自分の体を見ると、徐々にだが体が粒子化してきていた。そろそろ時間切れだ。
今日も楽しい時間が終わってしまった事に、レイダーが名残惜しそうにしながら立ち上がりウィドゥに手を差し出す。差し出された手をウィドゥはそっと握り返して立ち上がり、レイダーと共にミラーワールドから出た。
2人が戻ったのは遊の部屋。自分の部屋に戻るなり、遊は残っていた毒の影響もあってかその場で大の字に横になった。
「はぁ~~……今日も楽しかった」
「うふふふふふ……」
満足そうに横たわる遊の姿に、麗美は頬を赤く染めて笑みを浮かべながらその場を立ち去ろうとした。
「あ、帰るの?」
「ん? うん。朝ご飯、ごちそうさま。また今度ね」
「まったね~」
寝ながら手を振る遊に、麗美は手を振り返してその場を立ち去った。麗美が去って行ったのを見て、遊は満足そうに溜め息を吐きながら疲労に身を委ね眠りに落ちていった。
一方の麗美はと言うと、何やら足早に自宅の安アパートに戻ると扉の鍵を閉め窓のカーテンも閉めた。まるでこれから行う事を誰にも見られないようにしているかのようである。
「はぁ……はぁ……」
自宅に戻った麗美の呼吸は何処か荒い。それは戦いの疲労からくるものではなかった。心が昂り興奮して出る呼吸のそれだ。
と、麗美が徐に自分の豊かな双丘の間に手を突っ込んだ。そして胸の谷間から一つのフォークを取り出した。
「すぅ…………はぁ……遊……」
それは先程朝食の時に遊が使っていたフォークだ。朝食の後、食器を洗う時にそれだけ失敬していたのである。
麗美はフォークの匂いを一頻り嗅ぐと、それを逆手に持ち自分の腕に思いっきり突き刺した。
「んん! あぁ、遊!……遊!」
突き刺したフォークを、麗美は肉を抉るように動かした。傷口から血が流れ出て床に垂れるが、そんなことお構いなしだ。
今の麗美にとって重要なのは、遊が使っていたフォークが自分の腕を傷付け血を流しているという事。その一点のみであった。
「瑠美、感じる? 遊が私を愛してくれてるよ!」
「アヒャヒャ! 感じる、感じる! さっきも今も、遊の愛を感じるわ!」
「遊! 遊! 私、遊が好き! 瑠美と同じくらい大好き!」
「アタシもよ! アタシも麗美と同じくらい遊が好き!」
戦いの余韻が冷めぬ内に、麗美と瑠美は遊が使っていた食器で存分に自分の体を傷付けた。
どれだけそうしていたか、気付けばフォークは折れ曲がり、麗美の体は血だらけとなっていた。失血で意識を失う程ではないが、麗美は血だらけの体を床に横たえていた。
「はぁ……はぁ……遊」
血だらけながら、その頬は血の気を失うどころか寧ろ熱に浮かされた時の様に紅潮していた。目は潤み、吐く吐息は燃えるように熱い。
「ねぇ、瑠美……この気持ち、何だろうね?」
『多分これが恋って奴だよ』
「そうか……私、遊に恋してるんだ」
『誰かを愛しいって思う気持ちが恋なら、これは正しく恋よ』
「誰かを恋して愛するのって素敵だね」
『そうね』
麗美は初めての恋をするという感覚に、世界が広がる様な感覚を味わっていた。今までにない高揚感に、麗美と瑠美は酔いしれていた。
それと同時に、麗美の心にある一つの欲が新たに芽生えた。
「ねぇ、瑠美…………私、遊にずっと見てもらいたい」
『アタシもよ。麗美』
「どうすればいいかな?」
新しく麗美の中に芽生えた欲は、独占欲。愛する人を自分一人のものにしたいと言う、ある意味誰もが抱く当たり前の欲である。
『遊に何時でもアタシだけを愛してもらいたいよね』
「うんうん。でもどうしたら良いんだろう?」
2人してどうすればいいか考える。普通の人間であれば大いに思い悩む事でも、彼女の場合は直ぐ身近に相談相手が居るも同然なので答えを出す事が出来る。
ただしそれは、結局同じ人間が鏡に向かって相談している様なものだ。結局根っこが同じなので行きつく結論は一つしかない。
それが例え常人では辿り着かない滅茶苦茶な結論であろうと、彼女の場合は自己完結で辿り着いてしまう。
『あ、そうだ! 他のライダーとか、遊が興味を持つ奴を全部無くしちゃえばいいんじゃない?』
「あ、そっか! 他のライダーとかが居なくなっちゃえば、遊も私だけを見てくれるよね!」
『そうそう! 邪魔な奴がい無くなれば、遊はアタシだけを愛してくれる!』
「遊が……私だけを…………うふ、うふふ! うふふふふふふふふふふ!」
麗美が淀んだ目で虚空を見ながら壊れたように笑い続ける。その視線の先には、彼女にとってのバラ色の未来――彼女以外にとっては血みどろの地獄――が見えていた。
それから数日後、遊はレイダーに変身して野良のモンスターと戦っていた。
「だぁあああありゃあぁぁぁぁっ!」
野良モンスターであるミスパイダーをガッツナックルを装着したレイダーが殴り飛ばす。堅い拳がミスパイダーの甲殻を砕く。
一方的にボロボロにされ、ミスパイダーは満身創痍だ。
レイダーはモンスターにトドメを刺すべく、必殺の一撃を放つ。
【FINAL VENT】
ガッツバイザーにファイナルベントを装填すると、彼女の相棒であるガッツフォルテが姿を現す。レイダーは右手で地面を強く叩いて跳躍し、反転した彼女をガッツフォルテが掴んで振り回しミスパイダーに向かって発射した。
「『ウォオオオオオオオオッ!!』」
彗星の如くミスパイダーに突撃し、拳が大きな風穴を開ける。一瞬の間を開けてミスパイダーが爆発し、解放されたエネルギーをガッツフォルテが喰らう。
『ウホォオオオオオオッ!』
ご馳走を平らげ勝鬨の声を上げるガッツフォルテ。
だがその主人であるレイダーの胸中には違和感が燻っていた。
――最近静かだな?――
ここ最近、仮面ライダーと戦った覚えが無かった。探しても見つからず、こうしてミラーワールドで騒いでも全くライダーが出てこない。気配すら感じさせないのだ。
最後に戦った仮面ライダーは、麗美のウィドゥだった。
「何か……う~ん?」
違和感を感じつつ、その正体に気付けず首を傾げながらも体が粒子化する前に現実世界に戻る。
その時、現実世界に戻って変身を解いた遊の耳にまたしても耳鳴りが響く。
「ッ! 次はライダーだと良いなぁ!」
今し方モンスターと戦ったばかりだと言うのに、再びレイダーに変身しミラーワールド内をライドシューターで移動する。
耳鳴りの発生源は程なくして見つかった。現場は海沿いにある倉庫街。
そこに数人のライダーが集まり、既に戦いが始まっていた。
「おぉ! 皆やってるやってる! よぉっし、わたしも久しぶりに!」
レイダーもライダー達の戦いの輪に加わろうとした時、彼女の目の前にウィドゥが姿を現した。空間から溶け出るように姿を現したところから見るに、クリアーベントで姿を消していたようだ。
最早好敵手とも言えるウィドゥの登場。しかしレイダーは違和感を覚えた。何かがおかしい。
「麗美?」
「今はアタシよ! そ・れ・よ・り! やっぱり来ちゃったのね?」
「そりゃそうさ! 最近仮面ライダーと戦えてないんだ。久々に楽しまないとね!」
「じゃあアタシが楽しませてあげる!」
他のライダーに続いて戦い始めるレイダーとウィドゥ。だがその戦いはどこかおかしかった。
ウィドゥは相変わらずダメージ上等な戦い方をしているのだが、意識が時々レイダーから離れている。何かを気にしているかのようだ。
「瑠美? 何か今日おかしいよ?」
「え? そう?」
「うん。何時もの君らしくない」
レイダーの知るウィドゥは、戦いで与え与えられる痛み以外を全く意に介さない。何時だって、目の前に居るレイダーにのみ意識を集中させていた筈だ。
その指摘を受け、ウィドゥは歓喜に身を震わせた。
「あぁ! 素敵! 遊はアタシ達の事なんだって分かってくれるのね! ねぇ麗美!」
「うん! 私やっぱり遊が大好き!」
自分で自分の体を抱きしめるウィドゥの姿に、レイダーは違和感が大きくなっていくのを感じる。
と、ライダー達の体が粒子化し始めた。この一斉ライダーバトルの中で何人かは他のライダーにやられて脱落したのか、先程よりもライダーの数は減っていた。
その瞬間、ウィドゥがレイダーに背を向けて他のライダー達に向けて駆け出した。あまりにも予想外過ぎるウィドゥの行動にレイダーが唖然としていると、ウィドゥは1枚のカードを切った。
【FINAL VENT】
「な、何!?」
「体が、動かない!?」
ウィドゥ特有の契約モンスター・ブラックスキュラの糸が多くのライダー達の動きを拘束する。体が粒子化しつつある中で動きを拘束され、レイダーとウィドゥ以外のライダー達が焦りの声を上げる。
だが彼女達に降りかかる不幸はこれだけではない。ポイズンストライクを発動したウィドゥが次々と彼女達の体を貫いたのだ。
「うふふ! アヒャヒャ!」
「ひっ!?」
「まっ?!」
「やだぁぁぁっ?!」
レイダーの視線の先で行われる殺戮劇。次々とライダーがウィドゥのブラッククローで刺し貫かれ倒されていく。連続とは言え一人一人順番に倒されていくので、後の方に残されたライダーは涙声で命乞いをしていた。
「待ってお願い!? 降参するから助けて!!」
「だ~め♪」
当然、ウィドゥが命乞いなんて聞く訳がない。残っていたライダーを一人残らず殺し尽くし、後に残されたウィドゥは両手を血で赤黒く染めながら笑い声を上げていた。
「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ! アーッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ!」
「瑠美…………」
血の海の真ん中で笑い続けるウィドゥを、レイダーは何とも言えぬ顔で見つめていた。
その後、消滅を回避する為にミラーワールドから出たレイダー。変身を解いた遊は、何時になく難しい顔をしていた。
「瑠美……一体どうしたんだろう?」
今日の彼女は明らかに異常だ。レイダーを放置して他のライダーの始末に全力を挙げるなど、彼女らしくない。
生憎とこの場に瑠美は居ない。彼女はレイダーとは別の鏡面から出てしまった。姿を見せる様子が無い所から見るに、向こうは遊と話すつもりは無いようだった。
何だか分からないが、嫌な感じだ。胸がざわつくのを感じる。瑠美――或いは麗美とは、何が何でも話をしなければならない気がする。
そう思って遊が彼女の家に向かったが、彼女は一晩経っても家には帰ってこなかった。
一体何処に居るのかと疑問に思っていた遊だが、ここで彼女は先の一斉ライダーバトルでのウィドゥの行動からある結論に辿り着いた。
「まさか麗美、ライダー狩りしてる?」
その考えに至れば、ここ最近遊が他の仮面ライダーと戦えていない理由も説明がつく。戦えるライダーの数そのものが減っていれば、なるほどライダーとの戦いそのものが出来ないのも当然だ。
問題は、何故麗美がそんな事をしているかである。彼女は戦果とかそう言うのに拘るタイプではなかった。遊と同じく、戦いそのものが目的でライダーバトルに参加していた筈だ。
一体彼女にどんな心変わりがあったのか、遊には見当もつかなかった。
それから数日程、遊はとにかく麗美を探していた。このまま彼女を放置しておくと、遊が戦えるライダーが居なくなってしまう。
しかし彼女が行きそうな所を虱潰しに捜したが、一向に見つからない。一体何処に居ると言うのか?
行き詰って遊が悩んでいると、彼女の目の前にアリスが姿を現した。
「はいは~い! お久しぶりですね、遊ちゃん!」
「お、アリスか! ちょうどいい所に来たね。実はちょっと聞きたい事があるんだけど」
ゲームマスターのアリスであれば、麗美の現在地も知っているかもしれない。そう思ってアリスに問い掛けようとしたが、遊の質問をアリス自身が制した。
「おっと! まずは私の話が先ですよ。今日は遊ちゃんに折り入って話が合って来たんですから」
「わたしに? アリスが?」
「はい! と言っても、これはきっと遊ちゃんにも関係のある話だと思いますよ!」
遊はピンときた。アリスは麗美に関して何か情報を持ってきたようだ。
「実は最近、麗美ちゃんが好き放題し過ぎてて困ってるんですよ。別にルールがある訳ではないんですが、勝手に集団ライダーバトルをセッティングしたりされるとこちらとしても色々と調整したりする必要があってですねぇ」
「ちょっと待って。この間のライダーバトルって麗美が仕組んだの?」
「そうですよ~。ライダーバトルに熱心なのは結構ですが、こんなに短期間にライダーの数を減らされると新しい参加者を探すのも一苦労なんですよ~」
アリスは鏡の中で困った困ったと腕を組んでウンウン頷く。一方の遊は、アリスの勿体ぶる様な言い方に言い知れぬ不安を感じていた。
「それで? わたしに何をしてほしいんだい?」
「難しい事を頼むつもりはありません! 遊ちゃんにはいつも通り、ライダーバトルをしてほしいだけです。ただし今回は、私の方でお相手を指定させてもらいますがね」
「その相手って……聞くまでも無く麗美の事だよね?」
先手を取って麗美の名前を出すと、アリスは何処からか取り出したクラッカーを鳴らして遊の言葉を肯定した。
「正解でーす! 遊ちゃんにはこの後、麗美ちゃんこと仮面ライダーウィドゥと戦ってもらいまーす! 所謂緊急クエストと言う奴ですね! 見事達成できた暁には、美少女アリスちゃんからの祝福と言う名誉が与えられちゃいますよ!」
「ん~、そんなものよりもわたしはスイーツの方が嬉しいかな~。それで、相手を指定したという事は麗美の居場所は教えてもらえると思っても良いんだよね?」
「遊ちゃんつれないですねぇ。まぁいいですけど。麗美ちゃんなら今学校です。遊ちゃん、夏休みとっくの昔に終わってるのに気付かなかったんですか?」
遊はすっかり忘れていた。世間では既に夏休みは終わり、高校は二学期が始まっている。学業は基本サボり気味の遊はその事を失念していたのだ。
そしてこの後、遊は学業を疎かにしていた事を後悔する事になる。
「早く行った方が良いですよ。何しろ今の麗美ちゃん…………割と本気で見境なくなってますから」
「え?」
「麗美ちゃん、仮面ライダーだけじゃなく遊ちゃんに近い人も狙い始めたみたいです。この言葉の意味……分かりますよね?」
そのアリスの言葉に、流石の遊も胃袋が縮むのを感じた。自分がこんな感情を抱けることに驚きつつ、遊は一目散に聖山高校へと向かって駆け出した。
あの学校で、遊に近しい人物など1人しかいないからだ。
「佳奈――――!?」
と言う訳でコラボ第3話でした。最終話前編でもありますね。
麗美が狂いました。いや、元々狂ってましたけど遊ちゃんとの出会いでそれが更に歪みました。ツルギ本編では自分の愛を否定されて宗教に走りましたが、こちらでは心から愛したい相手と出会ってしまったが為に独占欲に走りました。
この続きである最終話後編は直ぐに投稿します。