『風の戦巫女を継ぐもの』と平行して書くので進みは遅いかもですが、読んで感想をいただけると嬉しいです!!
────突然ですが、私は転生者です。
何故そんなことがわかるのかって?
そんなこと言われても、記憶があるんだからそうと言うしかないです。
そして、自分の状況がどうなっているのかを改めて観察します。
たくさんの本やなんらかの資料があるようですが、それはほとんどどうでもいいものでした。
執務室らしきその部屋でひときわ目を引いたのは────────────目の前の男性の手のひらから炎が出ていることでした。
それは恐ろしくもあり、どこか好奇心をくすぐられるほどに魅力的に映りました。
しかし、その炎は自分に向けられているのだと遅まきながら理解した。
私は目の前の男性────
「ずいぶんと余裕だな、
貴様がいつの間にかたくましくなったものだ」
私の名は────アリエス=イグナイト。
イグナイト家の次女として生まれ、炎の魔術の才能がないからとこうして父親によって始末されようとしている。
────そして、唐突に前世の記憶がフラッシュバックします。
『この、親不孝者!!』
『あなたなんか産まなければよかった!!』
両親に毎日罵詈雑言を浴びせられ、いわれのない暴力を受け続ける日々。
ああ、思い出しただけで腹がたちますね。
「…………ふざ」
「む?」
「ふざけるなぁあああああああああああ!!」
私は何故か持っていたリモコンのようなものを父に向け、ボタンを押した。
「な、なんだ!? 身体が動かん! アリエス、貴様何をした!?」
答えてやる義理はない。
私は再度ボタンを押すと、父は意識を手放した。
(本当なら殺してるところですが、さすがに今は不味いですね)
「…………アリエス?」
「…………姉さん」
開かれた扉の先にいたのは、アリエスこと私の姉のリディア=イグナイトでした。
燃え上がる炎のような真っ赤な赤髪、紫炎色の瞳で見るものすべてが振り返るような美貌の持ち主。
アリエスの記憶からもリディアという人物がとても優しく、信頼に足る存在であることがわかる。
「…………これは、どういうことなの? 説明してくれるよね?」
「…………!!」
今すぐにリディアに飛びついて泣きはらしたい、もう嫌だとわめき散らしたいという衝動に駆られる。
私は…………もう、アリエスではいられないから。
「…………多くは言えません。ただ、もうアリエスはいない…………それだけです」
父にしたようにリモコンを姉に向け、ボタンを押した。
「…………アリ……エ……ス」
姉の意識を奪った後、私は二人の記憶を書き換えることにしました。
アリエスは無惨にも父の炎で焼かれ、姉に助けられ遠い家に逃がされたこと。
父は私のことを病死で処理することも私の指示通り、多少の疑問は持たれるかもしれませんがそれだけです。
姉…………リディアに対しては罪悪感で一杯になった。
私のことを愛してくれた、たった
執務室を後にした私は…………
扉を開けて中に入れば、弟のエシュア=イグナイトがすやすやと穏やかな寝息を立てていた。
「…………まったく、お姉ちゃんが殺されそうだったのにいい気なものですね」
言葉でどうこう言ったところで恨みの感情が沸くこともなく、私は淡々と執務室で伸びている二人と同じ処置をした。
「…………さようなら」
私は家から出ると、とある場所に向かいました。
────最強の魔術師と名高いセリカ=アルフォネアの屋敷へ。
◆◆◆
「ごめんくださーい!!」
ガンガンガン!!
乱暴に玄関の扉をノックし、ただひたすら呼び続けた。
近くに人の家らしき家もないようですし、これぐらいなら大丈夫ですよね?
「ごめ…………」
「なんだ、騒々しい。…………? お前、イグナイトか?」
私の特徴的な容姿である真紅色の髪と紫炎色の瞳から判断したのか、私の家名…………いいえ、元家名を言い当てた女性セリカ=アルフォネアが訝しむような視線を送ってくる。
妖艶な美女でスタイルのいい彼女から向けられる視線は迫力もありましたが、どこか魅力的に私の目には映った。
「悪いが、イグナイトの相手をしているほど私も暇じゃ…………」
「…………家出してきたんです、父親に殺されかけて」
「!!」
セリカは驚愕と怒りに顔を染めました。
すると、扉を開けると私を中に入るように促した。
「…………話を聞こうか?」
リビングらしき部屋の椅子に腰かけて待っていると、セリカは暖かいココアを入れて私の前に置いた。
出されたものを飲まないのも失礼なので口をつけると、けっこう美味しかった。
そうしてセリカに心を許した私は口が軽くなったのか、自分の過去を洗いざらい話しました。
話を聞き終えたセリカは心底腹立たしいというような顔をした後、私を安心させるように微笑んだ。
「…………そうか、お前も大変だったんだな」
「…………私はこのままで終わるつもりはありません。姉と弟をこのままにはできませんし、イグナイト家もこのままではろくなことにならないでしょう。ですから…………私に魔術を教えてください!!」
土下座までしたことに自分でも驚きましたが、すぐに納得できました。
あくまでもアリエスの記憶であり、私の記憶ではないが、それでも私は姉と弟がとても大切なのだと分かった。
二人を守るためならなんでもやってやる、そのような衝動が私の胸の中でいまにも溢れだそうとしていた。
今、セリカがどういう表情をしているのか分からない。
ただ、一言だけ問われた。
「本気なんだな?」
「…………はい」
「…………ならいい」
「え?」
思わず顔を上げると、どこか不遜な笑みを浮かべたセリカが仁王立ちしていました。
「お前を弟子にしてやるよ。イグナイトに逆らうなんて大口を叩いたんだ、生半可な覚悟じゃ乗り越えられないからな。厳しくいく。それでも…………やるか?」
「もちろんです!」
迷わず差し出されたセリカの手を取ると、悪戯に成功したいたずらっ子のような顔になっているのを自覚する。
「弟子になったんだ、名前ぐらい聞かせてくれるよな?」
「私はアリ…………イリア。イリア=イルージュです!!」
そうして私は、兄弟子のグレン先輩とともに研鑽を積み数年後、アルザーノ帝国魔術学院に入学。
主席で卒業した私は、帝国宮廷魔導師団特務分室にグレン先輩と同時に引き抜かれ、帝国宮廷魔導士団特務分室執行官ナンバー18《月》のイリア=イルージュとなったのです。
イリアちゃんに憑依した女の子にも重たい過去が…………あったのですよ…………