イリアちゃんかぁいいなぁ!
グレン先輩をおd…………説得して数日、私の配属とグレン先輩の教師生活の初日。
アルザーノ帝国魔術学院の卒業生でもある私は、まだ時間的余裕があるにもかかわらず学院長室へ挨拶に来ていた。
OGとして校長先生に挨拶、強キャラ感出すにはもってこいじゃないですかね!
ほら、よくあるじゃないですか。学園もので先輩か卒業生が来て主人公とそのクラスメートをもむ回…………私は好きでしたね!
こほん、話が逸れましたね。
想像を頭から一旦消し、敬礼とともに学院長に挨拶をする。
「お久しぶりですね学院長! イリア=イルージュ、ここに推参しました!」
「おお、よく来てくれたねイリア君! きみが副担任を引き受けてくれて本当に助かった!」
そう、表向きは副担任ということで学院に紛れ込ませてもらっている。
まったくの赤の他人であれば操って仕事を終え次第、記憶を事実と矛盾しすぎない程度に改変するのがセオリー。
しかし、学院長には数えきれないほどの恩がある。
できれば記憶を弄くるようなことはしたくない。
「いえいえ、後輩の育成の手助けになるでしたらいくらでも協力致しますとも!」
嘘は言っていない。
後輩を育てることには相違ないものの、限度はある。
私は炎系の魔術を教えられないし、ことと次第によっては授業をほっぽりだすかもしれない。
もっとも、そのような事態にはそうそうするつもりはない。
ここで帝国宮廷魔導師団特務分室の執行官の私に仕事が回ってくるということは、天の知慧研究会の襲撃がそう遠くないうちに行われることは想像に難くない。
あるとすれば、魔術学会で教師が出払っている日、私の担当の二年次生二組は前担任の失踪で授業の進行がかなり遅れているはず。
そうなると…………
「イリアちゃーんッ!」
「…………はぁ」
立ち位置をひょいっと横にずらすと、先程まで私が立っていた場所に綺麗な白髪と肌に刻まれた赤い紋様が特徴的な顔立ちの美しいセラさんが子供がするように頬をぷっくりと膨らませ、立っていた。
「酷いよ! 避けるなんて!」
「いや、避けますよ。ラグビー選手並の抱きつき食らったら、私死にますよ?」
「らぐびー?」
しまった、この世界にラグビーとかないんでした。
「こちらの話です。それはそうと、お久しぶりですセラさん。手紙ではちょくちょく近況報告を聞いてましたが、問題ありませんか?」
「うん、久しぶりだね! イリアちゃんが色々手を回してくれたお陰!」
セラさんは例の事件の後、私の情報操作と様々な暗躍の結果軍を抜けている。
私にとっても喜ばしいことなので、大して苦ではありませんでしたが。
「ところでグレン君は? イリアちゃんと一緒に来るって、セリカさんが言ってたんだけど…………」
「ああ、そのことならご心配なく。何故なら…………」
今頃主人公特有の女難にあっているでしょうし……ね…………
同時刻、【ゲイル・ブロウ】で打ち上げられ、噴水で気絶している男がいるということをイリアだけが知っていた。
◆◆◆
授業開始時間から数分前、グレン先輩が何処かで昼寝と洒落こむのは予想がついていたので事前に配置しておいた刺客(異能で操った)を送り込んだ。
セラさんのあまり迫力のないお説教に私はほっこりしつつ、開始時間ぎりぎりというところで教室前にたどり着く。
先にセラさんが入って軽めの紹介だけ済ませておくので、私たちは話に合わせて教室に入る段取り。
生徒たちにはセラさんの友人ということで信頼を得て、満を持して入室する私たち。
すると、おおっと生徒たちが声をあげた。
半分は驚き、もう半分は…………
「「美少女先輩来たぁああああああああああああッ!!」」
グレン先輩のずぶ濡れの格好を見て驚いたものもいたようですけど、大半は私に向けられたものでした。
何処の世界でも女の子が突然教室に来るだけで男子が大騒ぎするのは変わらないのだと実感し、ちょっと嬉しいと思った。
学院のOGということもありましたが、私の数々の学院での実績や噂が彼らを大きく興奮させたらしい。
食堂のメニューにドーナツを追加したとか(事実)、魔術競技祭でクラスを優勝に導いたとか(事実)、後輩の女の子の恋人がいるとか(真っ赤な嘘)。
全員が私を知っているようなので自己紹介は不要かとも思いましたが、常識知らずとは思われたくないので適当に自己紹介を始めた。
「皆さん初めまして。私はイリア=イルージュと申します。皆さんとはそう年も離れていませんし、軽く呼び捨てで構いません。あ、敬語も不要ですからね?」
(このコミュ力先輩まじパネェ!!)
私の自己紹介も一通り済ませ、次はグレン先輩の番となったところで驚愕のあまり自分の目を疑った。
あれだけ来るのを渋っていたグレン先輩が、しゃきっとした目で生徒たちを見据えていたから。
「俺はグレン=レーダス。本日から一ヶ月、お前らの勉学の手伝いをすることになった。期待されてないのは分かるが、お前らに魔術のド基礎からみっちり教えるつもりだ」
今まで何かを言いたげだった女子生徒、確かシスティーナ=フィーベルでした。
その娘が口をパクパクさせながら何も言えないでいると、隣の金髪美少女ルミア=ティンジェルもまた驚愕していた。
「グレン君、そろそろ…………」
「ああ、分かってるよ。…………おいおい、まじか…………」
グレン先輩の反応が気になり、セリカさんから渡された教科書を覗き込むとその反応に私は同意を示した。
「ユゥユゥ、いつものお願いします」
『はーい。でもいいの? 教科書燃やすなんて…………』
私は『相棒』に声をかけるとすぐに声が返ってきた。
「いいんですよ。むしろあったら邪魔です」
『イリアちゃんが良いって言うならいいですけど…………』
すると、私の教科書を持っていた手から青白い火が燃え上がり文字通り跡形もなく教科書は完全消滅した。
燃やしておいてなんだが、さすがに生徒の視線が気になっているとふと違和感に襲われる。
生徒の数がさっきと違い、少なくなった気がしたからだ。
窓際に席のほうに不自然な空白を見つけ、グレン先輩とセラさんに了承をもらい私が近づいていくと、やがてなにかと目立つ赤髪の美少年がぷるぷる震えながら机の下に隠れていた。
まあ、気づいてはいたのであえて知らないフリをしたのですけどね。
エシュア=イグナイト。
イグナイト家の嫡男で、あのクソ親父を越える才をもつ者。
弟との久しぶりに会ったことで嬉しさを感じていたが、罪悪感でいっぱいになった。
原因はあの炎だろうか、そう思いエシュア君の記憶を覗くといてもたってもいられなくなり、廃棄王女の護衛という任も忘れて食堂へエシュア君を連れて食堂に向かった。
どんな重要な仕事よりも、弟の方が大事だったから。
オリキャラのエシュア君ついに本格的に出番がありそうです!
今回は短めで。
ユゥユゥ…………何者なんでしょうかねぇ…………